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特許6606612航空宇宙用シーラントのためのブロック化1,8−ジアザビシクロ[5.4.0]ウンデカ−7−エン重炭酸塩触媒
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  • 特許6606612-航空宇宙用シーラントのためのブロック化1,8−ジアザビシクロ[5.4.0]ウンデカ−7−エン重炭酸塩触媒 図000007
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6606612
(24)【登録日】2019年10月25日
(45)【発行日】2019年11月13日
(54)【発明の名称】航空宇宙用シーラントのためのブロック化1,8−ジアザビシクロ[5.4.0]ウンデカ−7−エン重炭酸塩触媒
(51)【国際特許分類】
   C08G 59/68 20060101AFI20191031BHJP
   C08L 63/00 20060101ALI20191031BHJP
   C08K 5/3462 20060101ALI20191031BHJP
   C08L 81/02 20060101ALI20191031BHJP
【FI】
   C08G59/68
   C08L63/00 Z
   C08K5/3462
   C08L81/02
【請求項の数】20
【全頁数】31
(21)【出願番号】特願2018-530161(P2018-530161)
(86)(22)【出願日】2016年12月9日
(65)【公表番号】特表2018-536752(P2018-536752A)
(43)【公表日】2018年12月13日
(86)【国際出願番号】US2016065913
(87)【国際公開番号】WO2017100634
(87)【国際公開日】20170615
【審査請求日】2018年8月7日
(31)【優先権主張番号】14/964,785
(32)【優先日】2015年12月10日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】502328466
【氏名又は名称】ピーアールシー−デソト インターナショナル,インコーポレイティド
(74)【代理人】
【識別番号】110000855
【氏名又は名称】特許業務法人浅村特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】チョウ、ホンイン
(72)【発明者】
【氏名】カイ、ユエシャオ
(72)【発明者】
【氏名】リン、レンヘ
【審査官】 藤井 明子
(56)【参考文献】
【文献】 特表2015−533910(JP,A)
【文献】 特表2016−512568(JP,A)
【文献】 特開平11−323097(JP,A)
【文献】 国際公開第2005/105919(WO,A1)
【文献】 特開昭51−026959(JP,A)
【文献】 The Journal of Organic Chemistry,2005年,Vol.70, No.13 ,p.5335-5338
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08G 59/00−59/72、75/00−75/32
C08L 1/00−101/14
C08K 3/00−13/18
C09J 163/00−163/10、181/00−181/10
C09K 3/10−3/12
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)チオール末端硫黄含有プレポリマーと、
(b)ポリエポキシド硬化剤と、
(c)1,8−ジアザビシクロ[5.4.0]ウンデカ−7−エン(DBU)の安定な重炭酸塩を含む触媒と
を含む組成物。
【請求項2】
前記DBUの安定な重炭酸塩が粉末の形態である、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
前記粉末が、25μm〜200μmの平均粒径を特徴とする、請求項2に記載の組成物。
【請求項4】
前記粉末が100μm未満の平均粒径を特徴とする、請求項2に記載の組成物。
【請求項5】
前記ポリエポキシド硬化剤が、エポキシノボラック樹脂、ビスフェノールA/エピクロロヒドリンエポキシ樹脂、またはそれらの組み合わせを含む、請求項1に記載の組成物。
【請求項6】
前記組成物が、
35重量%〜65重量%の前記チオール末端硫黄含有プレポリマーと、
4重量%〜11重量%の前記ポリエポキシド硬化剤と、
0.2重量%〜0.36重量%の前記1,8−ジアザビシクロ[5.4.0]ウンデカ−7−エンの安定な重炭酸塩と
を含む、請求項1に記載の組成物。
【請求項7】
前記チオール末端硫黄含有プレポリマーが、チオール末端ポリチオエーテルプレポリマーを含む、請求項1に記載の組成物。
【請求項8】
前記チオール末端ポリチオエーテルプレポリマーが、式(2)のチオール末端ポリチオエーテルプレポリマー、式(2a)のチオール末端ポリチオエーテルプレポリマー、またはそれらの組み合わせを含む、請求項7に記載の組成物:
HS−R−[−S−(CH−O−(R−O)−(CH−S−R−]−SH (2)
{HS−R−[−S−(CH−O−(R−O)−(CH−S−R−]−S−V’−}B (2a)
式中、
各Rは、C2−10アルカンジイル、C6−8シクロアルカンジイル、C6−14アルカンシクロアルカンジイル、C5−8ヘテロシクロアルカンジイル、および−[(−CHR−)−X−]−(−CHR−)−から独立して選択され、
pは2〜6の整数であり、
qは1〜5の整数であり、
rは2〜10の整数であり、
各Rは、水素およびメチルから独立して選択され、
各Xは、−O−、−S−、−NH−および−N(−CH)−から独立して選択され、
各Rは、C1−10アルカンジイル、C6−8シクロアルカンジイル、C6−14アルカンシクロアルカンジイル、および−[(−CHR−)−X−]−(−CHR−)−から独立して選択され、ここで、p、q、r、RおよびXは、Rについて定義した通りであり、
mは0〜50の整数であり、
nは1〜60の整数であり、
pは2〜6の整数であり、
Bは、z価のビニル末端多官能化剤B(−V)のコアを表し、式中、
zは3〜6の整数であり、
各Vは、末端ビニル基を含む基であり、
各−V’−は、−Vとチオールとの反応に由来する基である。
【請求項9】
前記チオール末端ポリチオエーテルプレポリマーは、
(a)式(3)のジチオールであって、
HS−R−SH (3)
式中、
はC2−6アルカンジイル、C6−8シクロアルカンジイル、C6−10アルカンシクロアルカンジイル、C5−8ヘテロシクロアルカンジイルおよび−[−(CHR−X−]−(CHR−から選択され、ここで、
各Rは、水素およびメチルから独立して選択され、
各Xは−O−、−S−、−NH−および−N(−CH)−から独立して選択され、
pは2〜6の整数であり、
qは1〜5の整数であり、
rは2〜10の整数である、ジチオールと、
(b)式(4)のジビニルエーテルであって、
CH=CH−O−[−R−O−]−CH=CH (4)
式中、
各Rは、C1−10アルカンジイル、C6−8シクロアルカンジイル、C6−14アルカンシクロアルカンジイル、および−[(−CHR−)−X−]−(−CHR−)から独立して選択され、ここで、p、q、r、RおよびXは、Rについて定義した通りであり、
mは0〜50の整数であり、
nは1〜60の整数であり、
pは2〜6の整数である、ジビニルエーテルと
を含む反応物質の反応生成物を含む、
請求項7に記載の組成物。
【請求項10】
前記反応物質が、(c)多官能性化合物B(−V)をさらに含み、ここで、
zは3〜6の整数であり、
各−Vは、チオール基と反応性である末端基を含む部分である、
請求項9に記載の組成物。
【請求項11】
ミン触媒をさらに含む、請求項1に記載の組成物。
【請求項12】
シーラントとして配合される、請求項1に記載の組成物。
【請求項13】
請求項12に記載の組成物から製造される硬化シーラント。
【請求項14】
部品の少なくとも一部に請求項13に記載の硬化シーラントを含む部品。
【請求項15】
部品を封止する方法であって、
請求項12に記載の組成物を部品の少なくとも一部に適用するステップと、
封止部品を提供するために、適用された前記組成物を硬化させるステップと
を含む方法。
【請求項16】
前記組成物を前記部品に適用する前に、前記組成物を前記部品に適用した後に、または、前記組成物を前記部品に適用する前および適用する後に、前記組成物を加熱するステップを含む、請求項15に記載の方法。
【請求項17】
前記チオール末端硫黄含有プレポリマーが、以下の式(1)の構造を含む骨格を含む、請求項1に記載の組成物:
−R−[−S−(CH−O−[−R−O−]−(CH−S−R− (1)
式中、
各Rは、C2−10アルカンジイル基、C6−8シクロアルカンジイル、C6−14アルカンシクロアルカンジイル、C5−8ヘテロシクロアルカンジイル、および−[(−CHR−)−X−]−(−CHR−)−(ここで、pは2〜6の範囲の整数であり、qは1〜5の範囲の整数であり、rは2〜10の範囲の整数であり、各Rは水素およびメチルから選択され、各Xは、O、S、−NH−および−N(−CH)−から独立して選択される)から独立して選択され、
各Rは、C1−10アルカンジイル、C6−8シクロアルカンジイル、C6−14アルカンシクロアルカンジイル、および−[(−CHR−)−X−]−(−CHR−)−から独立して選択され(ここでp、q、r、RおよびXは、Rについて定義されたとおりであり)、
mは0〜50の範囲であり、
nは1〜60の範囲の整数であり、
pは2〜6の範囲の整数である。
【請求項18】
前記部品が航空宇宙飛行体の表面を含む、請求項15に記載の方法。
【請求項19】
請求項1に記載の組成物を含む、航空宇宙飛行体。
【請求項20】
請求項13に記載の硬化シーラントを含む、航空宇宙飛行体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、チオール末端ポリチオエーテルプレポリマーなどの硫黄含有プレポリマー、ポリエポキシド、およびブロック化1,8−ジアザビシクロ[5.4.0]ウンデカ−7−エン重炭酸塩触媒を含む組成物に関する。この組成物は航空宇宙用シーラント用途において有用であり、長い作用時間(working time)を示し、制御された硬化速度を提供する。
【背景技術】
【0002】
航空宇宙用シーラントは、厳しい機械的、化学的、および環境的要件を満たさなければならない。シーラントは、金属表面、プライマーコーティング、中間コーティング、仕上げコーティング、およびエージングされたコーティングを含む様々な表面に適用することができる。航空宇宙用途のための許容可能な燃料耐性、耐熱性、および可撓性を示す硫黄含有プレポリマーを含むシーラントは、例えば、米国特許第6,172,179号明細書に記載されている。米国特許出願公開第2006/0270796号明細書、第2007/0287810号明細書、および第2009/0326167号明細書に記載されているようなシーラントにおいて、チオール末端ポリチオエーテルプレポリマーなどの硫黄含有ポリマーは、アミン触媒の存在下でポリエポキシド硬化剤と反応して硬化物をもたらすことができる。これらのシステムは、シーラントとして有用であり、航空宇宙産業の厳しい性能要件を満たすことができる。アミン触媒のような強塩基触媒がなければ、チオール基とエポキシ基との反応は遅く、温度に依存して、例えば数日から数週間の比較的長い作用時間をもたらす。しかしながら、これらのゆっくりと硬化したシーラントの物理的特性は一般的に許容できない。対照的に、強塩基触媒の存在下では、反応は速く、許容可能な硬化特性を示すが、作用時間は特定の系によってはわずか約2時間〜約12時間である。しかしながら、多くの用途では、12時間〜48時間などのより長い作用時間が望ましい。
【0003】
実際には、シーラントは二液型組成物として提供することができ、チオール末端硫黄含有プレポリマーとポリエポキシドとが別個の成分として提供され、チオール含有成分中にはアミン触媒が含まれ、2成分を使用直前に混合することができる。あるいは、塩基触媒を第3の成分として提供し、チオール末端硫黄含有プレポリマーを含有する成分と、ポリエポキシドを含有する成分と、塩基触媒を含有する成分とを使用直前に混合することができる。しかしながら、一旦成分が混合されると、チオール基とエポキシ基が反応し、アミン触媒のタイプおよび温度に少なくとも部分的に依存して、作用時間が2時間未満から12時間未満に制限される可能性がある。さらに、一旦反応物が組み合わせられ、組成物が硬化すると、シーラントが表面に適用された後に起こる複雑な化学作業を利用するために反応速度を制御する能力がほとんどない。
【0004】
米国特許第9,006,360号明細書に開示されているように、チオール末端硫黄含有プレポリマー、ポリエポキシドおよびカプセル化アミン触媒を含む組成物は、長い作用時間を提供する。しかしながら、硬化したポリマーネットワークに組み込まれる封入剤を形成する成分は、硬化ポリマーの燃料耐性などの特性を損なう可能性がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】米国特許第6,172,179号明細書
【特許文献2】米国特許出願公開第2006/0270796号明細書
【特許文献3】米国特許出願公開第2007/0287810号明細書
【特許文献4】米国特許出願公開第2009/0326167号明細書
【特許文献5】米国特許第9,006,360号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
作用時間を延長し、チオール末端硫黄含有プレポリマーとポリエポキシドとを含む組成物の硬化速度を制御する方法、および航空宇宙用途の性能要件を満たす硬化シーラントを提供する方法が望まれている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
したがって、周囲温度で長い作用時間を示し、表面に塗布した後に硬化して、航空宇宙用シーラント用途に許容可能な特性を有する硬化シーラントを形成するシーラントなどの航空宇宙用組成物を提供することが望ましい。本開示によって提供される組成物は、室温で20時間を超える作用時間を示し、作用時間後の24時間〜72時間以内に硬化する。
【0008】
本開示によって提供される組成物は、ブロック化1,8−ジアザビシクロ[5.4.0]ウンデカ−7−エン(DBU)重炭酸塩触媒などのブロック化アミン触媒を含む。ブロック化DBU重炭酸塩触媒は、DBUの安定な重炭酸塩塩を含む。ブロック化アミン触媒は、高温に曝されると活性化することができる。
【0009】
本発明によれば、組成物は、(a)チオール末端硫黄含有プレポリマーと、(b)ポリエポキシド硬化剤と、(c)ブロック化1,8−ジアザビシクロ[5.4.0]ウンデカ−7−エン重炭酸塩触媒とを含むことができる。
【0010】
本発明によれば、硬化シーラントは、本開示によって提供される組成物から調製することができる。
【0011】
本発明によれば、部品は、部品の少なくとも一部に本開示によって提供される硬化シーラントを含むことができる。
【0012】
本発明によれば、部品を密封する方法は、本開示によって提供される組成物を部品の少なくとも一部に適用するステップと、封止部品を提供するために、適用された組成物を硬化させるステップとを含む。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1図1は、本開示によって提供される非ブロック化アミン触媒またはブロック化DBU重炭酸塩触媒を含むシーラント組成物の硬化プロファイルを示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0014】
ここで本発明による特定の組成物および方法を参照する。開示される組成物および方法は、特許請求の範囲を限定するものではない。反対に、特許請求の範囲は、すべての代替物、改変物および等価物をカバーすることが意図されている。
【0015】
以下の説明の目的のために、本開示によって提供される実施形態は、明示的に反対に指定されている場合を除いて、様々な代替となる変形およびステップシーケンスを想定することができることを理解されたい。さらに、実施例および他の指示がある場合を除き、明細書および特許請求の範囲で使用される成分の量などを表すすべての数字は、すべての場合において「約」という用語によって修飾されるものとして理解されるべきである。したがって、反対のことが示されていない限り、以下の明細書および添付の特許請求の範囲に記載される数値パラメータは、得られる所望の特性に応じて変化し得る近似値である。最低限、特許請求の範囲に対する均等論の適用を制限する試みとしてではなく、各数値パラメータは、報告された有効数字の数を考慮し通常の丸め技術を適用することによって少なくとも解釈されるべきである。
【0016】
本発明の広い範囲を示す数値範囲およびパラメータが近似値であるにもかかわらず、特定の実施例に示される数値は可能な限り正確に報告されている。しかしながら、いずれの数値も、それぞれの試験測定値に見られる標準偏差から必然的に生じる特定の誤差を本質的に含む。
【0017】
また、本明細書に列挙されるあらゆる数値範囲は、その中に包含されるすべての下位範囲を含むことが意図されることを理解すべきである。例えば、「1から10」の範囲は、規定された最小値である約1と、規定された最大値である約10との間の(およびそれらを含む)すべての下位範囲を含むように意図されており、すなわち、最小値は約1以上であり、最大値は約10以下である。また、本出願において、「または」の使用は、特に断らない限り「および/または」を意味するが、特定の場合には「および/または」が明示的に使用される。
【0018】
2つの文字または記号の間にないダッシュ(「−」)は、置換基または2つの原子間の結合点を示すために使用される。例えば、−CONHは、炭素原子を介して別の化学部分に結合する。
【0019】
「アルカンジイル」は、例えば1〜18個の炭素原子(C1−18)、1〜14個の炭素原子(C1−14)、1〜6個の炭素原子(C1−6)、1〜4個の炭素原子(C1−4)または1〜3個の炭化水素原子(C1−3)を有する飽和、分枝または直鎖の非環式炭化水素基のジラジカルを指す。分枝鎖アルカンジイルは、最小で3個の炭素原子を有することが理解されるであろう。アルカンジイルは、例えば、C2−14アルカンジイル、C2−10アルカンジイル、C2−8アルカンジイル、C2−6アルカンジイル、C2−4アルカンジイルまたはC2−3アルカンジイルであり得る。アルカンジイル基の例には、メタン−ジイル(−CH−)、エタン−1,2−ジイル(−CHCH−)、プロパン−1,3−ジイルおよびイソ−プロパン−1,2−ジイル(例えば、−CHCHCH−および−CH(CH)CH−)、ブタン−1,4−ジイル(−CHCHCHCH−)、ペンタン−1,5−ジイル(−CHCHCHCHCH−)、ヘキサン−1,6−ジイル(−CHCHCHCHCHCH−)、ヘプタン−1,7−ジイル、オクタン−1,8−ジイル、ノナン−1,9−ジイル、デカン−1,10−ジイル、ドデカン−1,12−ジイルなどが挙げられる。
【0020】
「アルカンシクロアルカン」は、1つ以上のシクロアルキルおよび/またはシクロアルカンジイル基および1つ以上のアルキルおよび/またはアルカンジイル基を有する飽和炭化水素基を指し、シクロアルキル、シクロアルカンジイル、アルキルおよびアルカンジイルは本明細書に定義される。各シクロアルキルおよび/またはシクロアルカンジイル基は、C3−6、C5−6、シクロヘキシルまたはシクロヘキサンジイルであり得る。各アルキルおよび/またはアルカンジイル基は、C1−6、C1−4、C1−3、メチル、メタンジイル、エチルまたはエタン−1,2−ジイルであり得る。アルカンシクロアルカン基は、C4−18アルカンシクロアルカン、C4−16アルカンシクロアルカン、C4−12アルカンシクロアルカン、C4−8アルカンシクロアルカン、C6−12アルカンシクロアルカン、C6−10アルカンシクロアルカンまたはC6−9アルカンシクロアルカンであり得る。アルカンシクロアルカン基の例には、1,1,3,3−テトラメチルシクロヘキサンおよびシクロヘキシルメタンが含まれる。
【0021】
「アルカンシクロアルカンジイル」は、アルカンシクロアルカン基のジラジカルを指す。アルカンシクロアルカンジイル基は、例えば、C4−18アルカンシクロアルカンジイル、C4−16アルカンシクロアルカンジイル、C4−12アルカンシクロアルカンジイル、C4−8アルカンシクロアルカンジイル、C6−12アルカンシクロアルカンジイル、C6−10アルカンシクロアルカンジイル、またはC6−9アルカンシクロアルカンジイルであり得る。アルカンシクロアルカンジイル基の例には、1,1,3,3−テトラメチルシクロヘキサン−1,5−ジイルおよびシクロヘキシルメタン−4,4’−ジイルが含まれる。
【0022】
「アルカンアレーン」は、1つ以上のアリールおよび/またはアレーンジイル基および1つ以上のアルキルおよび/またはアルカンジイル基を有する炭化水素基を指し、アリール、アレーンジイル、アルキルおよびアルカンジイルは本明細書に定義される。各アリールおよび/またはアレーンジイル基は、例えば、C6−12、C6−10、フェニルまたはベンゼンジイルであり得る。各アルキルおよび/またはアルカンジイル基は、例えば、C1−6、C1−4、C1−3、メチル、メタンジイル、エチルまたはエタン−1,2−ジイルであり得る。アルカンアレーン基は、例えば、C4−18アルカンアレーン、C4−16アルカンアレーン、C4−12アルカンアレーン、C4−8アルカンアレーン、C6−12アルカンアレーン、C6−10アルカンアレーン、またはC6−9アルカンアレーンであり得る。アルカンアレーン基の例には、ジフェニルメタンが含まれる。
【0023】
「アルカンアレーンジイル」はアルカンアレーン基のジラジカルを指す。アルカンアレーンジイル基は、例えば、C4−18アルカンアレーンジイル、C4−16アルカンアレーンジイル、C4−12アルカンアレーンジイル、C4−8アルカンアレーンジイル、C6−12アルカンアレーンジイル、C6−10アルカンアレーンジイルまたはC6−9アルカンアレーンジイルであり得る。アルカンアレーンジイル基の例には、ジフェニルメタン−4,4’−ジイルが含まれる。
【0024】
「アルケニル」基は、基(R)C=C(R)を指す。アルケニル基は、アルケニル基が末端基であり、より大きな分子に結合している構造−C(−R)=C(R)を有する。各Rは、例えば、水素およびC1−3アルキルから選択されてもよい。各Rは水素であってもよく、アルケニル基は−CH=CH構造を有する。
【0025】
「アルコキシ」は、Rが本明細書で定義されるアルキルである−OR基を指す。アルコキシ基の例としては、メトキシ、エトキシ、n−プロポキシ、イソプロポキシおよびn−ブトキシが挙げられる。アルコキシ基は、例えば、C1−8アルコキシ、C1−6アルコキシ、C1−4アルコキシまたはC1−3アルコキシであり得る。
【0026】
「アルキル」は、例えば1〜20個の炭素原子、1〜10個の炭素原子、1〜6個の炭素原子、1〜4個の炭素原子または1〜3個の炭素原子を有する飽和、分枝または直鎖の非環式炭化水素基のモノラジカルを指す。分枝状アルキルは、最小で3個の炭素原子を有することが理解されるであろう。アルキル基は、例えば、C2−6アルキル、C2−4アルキルまたはC2−3アルキルであり得る。アルキル基の例には、メチル、エチル、n−プロピル、イソプロピル、n−ブチル、イソブチル、tert−ブチル、n−ヘキシル、n−デシル、テトラデシルなどが含まれる。アルキル基は、C2−6アルキル、C2−4アルキルまたはC2−3アルキルであり得る。分枝状アルキルは、少なくとも3個の炭素原子を有することが理解されるであろう。
【0027】
「アレーンジイル」は、ジラジカル単環式または多環式芳香族基を指す。アレーンジイル基の例としては、ベンゼン−ジイルおよびナフタレン−ジイルが挙げられる。アレーンジイル基は、例えば、C6−12アレーンジイル、C6−10アレーンジイル、C6−9アレーンジイル、またはベンゼンジイルであり得る。
【0028】
「硬化性組成物」は、反応して硬化組成物を形成することができる少なくとも2つの反応物質を含む組成物を指す。例えば、硬化性組成物は、反応して硬化ポリマーネットワークを形成することができるチオール末端ポリチオエーテルプレポリマーおよびポリエポキシドを含むことができる。硬化性組成物は、硬化反応のための触媒および他の成分、例えば充填剤、顔料および接着促進剤などを含むことができる。硬化性組成物は、室内温度および室内湿度などの周囲条件で硬化可能であってもよく、または硬化反応を開始および/または促進するために高温、高湿または他の条件に曝される必要があってもよい。硬化性組成物は、最初に、基剤(base:ベース、主剤)組成物と促進剤組成物とを含む二液型組成物として提供されてもよい。基剤組成物は、チオール末端ポリチオエーテルプレポリマーなどの硬化反応に関与する反応物質の1つを含有することができ、促進剤組成物はポリエポキシドなどの他の反応物質を含むことができる。2つの組成物を使用直前に混合して、硬化性組成物を提供することができる。硬化性組成物は、特定の適用方法に適した粘度を示すことができる。例えば、ブラシオン(brush−on)用途に適したグレードAシーラント組成物は、150ポアズ〜500ポアズの粘度によって特徴付けることができる。フィレットシール(fillet seal)用途に適したグレードBシーラント組成物は、8,000ポアズ〜16,000ポアズの粘度によって特徴付けることができる。接合シール(fay seal)用途に適したCシーラント組成物は、1000ポアズ〜4000ポアズの粘度によって特徴付けることができる。2つの組成物を組み合わせて混合した後、硬化反応は進行することができ、硬化性組成物の粘度は上昇することができ、ある時点でもはや機能しなくなる。2つの組成物が混合されて硬化性組成物が形成される時と、硬化性組成物がその意図された目的のためにもはや合理的に表面に塗布できなくなる時との間の時間を作用時間(working time)と呼ぶ。理解されるように、作用時間は、例えば、硬化化学、適用方法および温度を含む多くの要因に依存し得る。作用時間は、ポットライフと呼ぶこともできる。硬化性組成物が表面に適用されると(および適用中に)、硬化反応が起きて硬化組成物を提供する。硬化組成物は、非粘着性(tack−free)表面を作り出し、ある期間にわたって完全に硬化する。硬化性組成物は、表面が非粘着性である場合に硬化しているとみなすことができ、または表面のショアA硬度が35Aである場合に硬化したとみなすことができる。
【0029】
「シクロアルカンジイル」は、ジラジカル飽和単環式または多環式炭化水素基を指す。シクロアルカンジイル基は、C3−12シクロアルカンジイル、C3−8シクロアルカンジイル、C3−6シクロアルカンジイルまたはC5−6シクロアルカンジイルであり得る。シクロアルカンジイル基の例には、シクロヘキサン−1,4−ジイル、シクロヘキサン−1,3−ジイルおよびシクロヘキサン−1,2−ジイルが含まれる。
【0030】
「シクロアルキル」は、飽和単環式または多環式炭化水素モノラジカル基を指す。シクロアルキル基は、例えば、C3−12シクロアルキル、C3−8シクロアルキル、C3−6シクロアルキルまたはC5−6シクロアルキルであり得る。
【0031】
「ヘテロアルカンジイル」は、炭素原子の1個以上が、N、O、SまたはPなどのヘテロ原子で置き換えられているアルカンジイル基を指す。ヘテロアルカンジイルにおいて、ヘテロ原子はNおよびOから選択することができる。
【0032】
「ヘテロシクロアルカンジイル」は、1個以上の炭素原子が、N、O、SまたはPなどのヘテロ原子で置き換えられているシクロアルカンジイル基を指す。ヘテロシクロアルカンジイルにおいて、ヘテロ原子はNおよびOから選択することができる。
【0033】
「ヘテロアレーンジイル」は、炭素原子の1個以上がN、O、SまたはPなどのヘテロ原子で置き換えられているアレーンジイル基を指す。ヘテロアレーンジイルにおいて、ヘテロ原子はNおよびOから選択することができる。
【0034】
「ヘテロシクロアルカンジイル」は、1個以上の炭素原子が、N、O、SまたはPなどのヘテロ原子で置き換えられているシクロアルカンジイル基を指す。ヘテロシクロアルカンジイルにおいて、ヘテロ原子はNおよびOから選択することができる。
【0035】
本明細書で使用される場合、「ポリマー」は、オリゴマー、ホモポリマーおよびコポリマーを指す。別段の記載がない限り、分子量は、例えば、当技術分野で認識されている方法でポリスチレン標準を用いたゲル浸透クロマトグラフィーによって測定して、「Mn」として示されるポリマー材料の数平均分子量である。
【0036】
「置換された」とは、1つ以上の水素原子が各々独立して同じまたは異なる置換基(単数または複数)で置き換えられている基を指す。置換基は、ハロゲン、−S(O)OH、−S(O)、−SH、−SR、C1−6アルキル、−COOH、−NO、−NRから選択することができ、各Rは、水素およびC1−3アルキル、−CN、=O、C1−6アルキル、−CF、−OH、フェニル、C2−6ヘテロアルキル、C5−6ヘテロアリール、C1−6アルコキシおよび−CORから独立して選択され、RはC1−6アルキルである。置換基は、例えば、−OH、−NHおよびC1−3アルキルから選択することができる。
【0037】
本開示によって提供される組成物は、チオール末端硫黄含有プレポリマー、ポリエポキシド硬化剤、およびDBU重炭酸塩類などのブロック化DBU重炭酸塩触媒を含むことができる。
【0038】
チオール末端硫黄含有プレポリマーは、チオール末端ポリチオエーテルプレポリマー、チオール末端ポリスルフィドプレポリマー、またはそれらの組み合わせを含むことができる。例えば、チオール末端硫黄含有プレポリマーは、チオール末端ポリチオエーテルプレポリマーを含むことができる。チオール末端硫黄含有プレポリマーは、異なるポリチオエーテルおよび/またはポリスルフィドの混合物を含むことができ、ポリチオエーテルおよび/またはポリスルフィドは、同じまたは異なる官能性を有することができる。チオール末端硫黄含有プレポリマーは、2〜6,2〜4,2〜3、または2.05〜2.8の平均官能価を有することができる。例えば、チオール末端硫黄含有プレポリマーは、二官能性チオール末端硫黄含有ポリマー、三官能性チオール末端硫黄含有ポリマー、またはそれらの組み合わせを含むことができる。
【0039】
本開示によって提供される組成物での使用に適したチオール末端ポリチオエーテルプレポリマーの例は、例えば、米国特許第6,172,179号に開示されている。例えば、チオール末端ポリチオエーテルプレポリマーは、PRC−DeSoto International Inc.(カリフォルニア州、Sylmar)から入手可能なPermapol(登録商標)P3.1Eを含むことができる。
【0040】
チオール末端硫黄含有プレポリマーは、式(1)の構造を含む骨格を含むことができる:
−R−[−S−(CH−O−[−R−O−]−(CH−S−R− (1)
式中、
(i)各Rは、C2−10 n−アルカンジイル基、C3−6分枝アルカンジイル基、C6−8シクロアルカンジイル基、C6−10アルカンシクロアルカンジイル基、ヘテロ環基、−[(−CHR−)−X−]−(CHR−基から独立して選択され、式中、各Rは水素およびメチルから選択され、
(ii)各Rは、C2−10 n−アルカンジイル基、C3−6分枝アルカンジイル基、C6−8シクロアルカンジイル基、C6−14アルカンシクロアルカンジイル基、ヘテロ環基、および−[(−CH−)−X−]−(CH−基から独立して選択され、
(iii)各Xは、O、S、−NH−および−N(−CH)−から独立して選択され、
(iv)mは0〜50の範囲であり、
(v)nは1〜60の範囲の整数であり、
(vi)pは2〜6の範囲の整数であり、
(vii)qは1〜5の範囲の整数であり、
(viii)rは2〜10の範囲の整数である。
【0041】
チオール末端硫黄含有プレポリマーは、式(2)のチオール末端ポリチオエーテルプレポリマー、式(2a)のチオール末端ポリチオエーテルプレポリマー、またはそれらの組み合わせを含むことができる:
HS−R−[−S−(CH−O−(R−O)−(CH−S−R−]−SH (2)
{HS−R−[−S−(CH−O−(R−O)−(CH−S−R−]−S−V’−}B (2a)
式中、
各Rは、C2−10アルカンジイル、C6−8シクロアルカンジイル、C6−14アルカンシクロアルカンジイル、C5−8ヘテロシクロアルカンジイル、および−[(−CHR−X−]−(−CHR−)−から独立して選択され、
pは2〜6の整数であり、
qは1〜5の整数であり、
rは2〜10の整数であり、
各Rは、水素およびメチルから独立して選択され、
各Xは、−O−、−S−、−NH−および−N(−CH)−から独立して選択され、
各Rは、C1−10アルカンジイル、C6−8シクロアルカンジイル、C6−14アルカンシクロアルカンジイル、および−[(−CHR−)−X−]−(−CHR−)−から独立して選択され、ここで、p、q、r、RおよびXは、Rについて定義した通りであり、
mは0〜50の整数であり、
nは1〜60の整数であり、
pは2〜6の整数であり、
Bは、z価のビニル末端多官能化剤B(−V)のコアを表し、式中、
zは3〜6の整数であり、
各Vは、末端ビニル基を含む基であり、
各−V’−は、−Vとチオールとの反応に由来する基である。
【0042】
式(2)および式(2a)のプレポリマーにおいて、Rは−[(−CH−X−]−(CH−であり、式中、pは2であり、Xは−O−であり、qは2であり、rは2であり、Rはエタンジイルであり、mは2であり、nは9である。
【0043】
式(2)および式(4a)のプレポリマーにおいて、Rは、C2‐6アルカンジイルおよび−[−(CHR−X−]−(CHR−から選択することができる。
【0044】
式(2)および式(2a)のプレポリマーにおいて、Rは−[−(CHR−X−]−(CHR−であり得、Xは−O−であり得、またはXは−S−であり得る。
【0045】
式(2)および式(2a)のプレポリマーにおいて、Rは−[−(CHR−X−]−(CHR−であり、pは2であり、rは2であり、qは1であり、Xは−S−であるか、pは2であり、qは2であり、rは2であり、Xは−O−であるか、またはpは2であり、rは2であり、qは1であり、Xは−O−である。
【0046】
式(2)および式(2a)のプレポリマーにおいて、Rは−[−(CHR−X−]−(CHR−であり得、各Rは水素であり得るか、または少なくとも1つのRはメチルであり得る。
【0047】
式(2)および式(2a)のプレポリマーにおいて、各Rは同じであってもよく、または少なくとも1つのRは異なっていてもよい。
【0048】
様々な方法を用いて、チオール末端ポリチオエーテルプレポリマーを調製することができる。好適なチオール末端ポリチオエーテルプレポリマーの例およびその生成方法は、例えば、米国特許第6,172,179号に記載されている。チオール末端ポリチオエーテルプレポリマーは、2つのチオール末端基を有する直鎖状プレポリマーなどの二官能性、または3つ以上の末端チオール基を有する分枝プレポリマーなどの多官能性であってもよい。チオール末端ポリチオエーテルプレポリマーはまた、二官能性および多官能性チオール末端ポリチオエーテルプレポリマーの組み合わせを含み得る。好適なチオール末端ポリチオエーテルプレポリマーは、例えば、PRC−DeSoto International Inc.(Sylmar、カリフォルニア)からPermapol(登録商標)P3.1Eとして市販されている。
【0049】
好適なチオール末端ポリチオエーテルプレポリマーは、ジビニルエーテルまたはジビニルエーテルの混合物を過剰のジチオールまたはジチオールの混合物と反応させることによって生成することができる。例えば、チオール末端ポリチオエーテルプレポリマーを調製する際に使用するのに適したジチオールには、式(3)の構造を有するもの、本明細書に開示される他のジチオール、または本明細書に開示されるジチオールのいずれかの組み合わせが含まれる。
【0050】
本開示により提供されるチオール末端ポリチオエーテルの調製に有用なジチオールは、式(3)の構造を有することができる:
HS−R−SH (3)
式中、
はC2−6アルカンジイル、C6−8シクロアルカンジイル、C6−10アルカンシクロアルカンジイル、C5−8ヘテロシクロアルカンジイルおよび−[−(CHR−X−]−(CHR−から選択され、
ここで、
各Rは、水素およびメチルから独立して選択され、
各Xは−O−、−S−、−NH−および−N(−CH)−から独立して選択され、Rは水素およびメチルから選択され、
pは2〜6の整数であり、
qは1〜5の整数であり、
rは2〜10の整数である。
【0051】
式(3)のジチオールにおいて、Rは、−[−(CHR−X−]−(CHR−であり得る。
【0052】
式(3)のジチオールにおいて、Xは−O−または−S−であり、したがって式(3)における−[−(CHR−X−]−(CHR−は−[(−CHR−)−O−]−(CHR−または−[(−CHR−)−S−]−(CHR−であり得る。−[−(CHR−X−]−(CHR−の構造を有する部分では、pおよびrは同じであり得、例えばpおよびrの両方は2であり得る。
【0053】
式(3)のジチオールにおいて、Rは、C2−6アルカンジイルまたは−[−(CHR−X−]−(CHR−であり得る。
【0054】
式(3)のジチオールにおいて、Rは−[−(CHR−X−]−(CHR−であり得、Xは−O−であり得るか、またはXは−S−であり得る。
【0055】
式(3)のジチオールにおいて、Rは−[−(CHR−X−]−(CHR−であり得、pは2であり得、rは2であり得、qは1であり得、X iは−S−であり得るか、またはpは2であり得、qは2であり得、rは2であり得、Xは−O−であり得るか、またはpは2であり得、rは2であり得、qは1であり得、Xは−O−であり得る。
【0056】
式(3)のジチオールにおいて、Rは−[−(CHR−X−]−(CHR−であり得、各Rは水素であり得るか、または少なくとも1つのRはメチルである。
【0057】
好適なジチオールの例には、1,2−エタンジチオール、1,2−プロパンジチオール、1,3−プロパンジチオール、1,3−ブタンジチオール、1,4−ブタンジチオール、2,3−ブタンジチオール、1,3−ペンタンジチオール、1,5−ペンタンジチオール、1,6−ヘキサンジチオール、1,3−ジメルカプト−3−メチルブタン、ジペンテンジメルカプタン、エチルシクロヘキシルジチオール(ECHDT)、ジメルカプトジエチルスルフィド、メチル置換ジメルカプトジエチルスルフィド、ジメチル置換ジメルカプトジエチルスルフィド、ジメルカプトジオキサオクタン、1,5−ジメルカプト−3−オキサペンタン、および上記のいずれかの組み合わせを含む。ポリチオールは、低級(例えば、C1−6)アルキル基、低級アルコキシ基、およびヒドロキシル基から選択される1つ以上のペンダント基を有することができる。好適なアルキルペンダント基としては、例えば、C1−6直鎖アルキル、C3−6分枝アルキル、シクロペンチルおよびシクロヘキシルが挙げられる。
【0058】
好適なジチオールの他の例には、ジメルカプトジエチルスルフィド(DMDS)(式(3)において、Rは−[(−CH−)−X−]−(CH−であり、式中、pは2であり、rは2であり、qは1であり、Xは−S−である)、ジメルカプトジオキサオクタン(DMDO)(式(3)において、Rは−[(−CH−)−X−]−(CH−であり、式中、pは2であり、qは2であり、rは2であり、Xは−O−である)、および1,5−ジメルカプト−3−オキサペンタン(式(3)において、Rは−[(−CH−)−X−]−(CH−であり、pは2であり、rは2であり、qは1であり、Xは−O−である)が挙げられる。炭素骨格中のヘテロ原子およびペンダントアルキル基、例えばメチル基の両方を含むジチオールを使用することも可能である。このような化合物には、例えばHS−CHCH(CH)−S−CHCH−SH、HS−CH(CH)CH−S−CHCH−SHなどのメチル置換DMDS、およびHS−CHCH(CH)−S−CHCHCH−SH、HS−CH(CH)CH−S−CHCH(CH)−SHなどのジメチル置換DMDSが含まれる。
【0059】
ポリチオエーテルプレポリマーの調整に使用するのに適したジビニルエーテルとしては、例えば、式(4)のジビニルエーテルが挙げられる:
CH=CH−O−(−R−O−)−CH=CH (4)
ここで式(4)におけるRは、C2−6 n−アルカンジイル、C3−6分枝アルカンジイル、C6−8シクロアルカンジイル、C6−10アルカンシクロアルカンジイル、または−[(−CH−)−O−]−(−CH−)−であり、式中、pは2〜6の範囲の整数であり、qは1〜5の整数であり、rは2〜10の整数である。式(4)のジビニルエーテルにおいて、RはC2−6 n−アルカンジイル、C3−6分枝アルカンジイル、C6−8シクロアルカンジイル、C6−10アルカンシクロアルカンジイル、または−[(−CH−)−O−]−(−CH−)−であり得る。
【0060】
好適なジビニルエーテルは、例えば、1〜4個のオキシアルカンジイル基などの少なくとも1個のオキシアルカンジイル基を有するジビニルエーテル、すなわち、式(4)中のmが1〜4の範囲の整数である化合物を含む。式(4)のジビニルエーテルにおいて、mは2〜4の範囲の整数であることができる。1分子あたりのオキシアルカンジイル単位数の所定の非整数平均値によって特徴づけられる市販のジビニルエーテル混合物を使用することも可能である。したがって、式(4)中のmは、0〜10.0の範囲、例えば1.0〜10.0、1.0〜4.0、または2.0〜4.0の有理数値をとることもできる。
【0061】
好適なジビニルエーテルの例としては、ジビニルエーテル、エチレングリコールジビニルエーテル(EG−DVE)(式(4)中のRはエタンジイルであり、mは1である)、ブタンジオールジビニルエーテル(BD−DVE)(式(4)中のRはブタンジイルであり、mは1である)、ヘキサンジオールジビニルエーテル(HD−DVE)(式(4)中のRはヘキサンジイルであり、mは1である)、ジエチレングリコールジビニルエーテル(DEG−DVE)(式(4)中のRはエタンジイルであり、mは2である)、トリエチレングリコールジビニルエーテル(式(4)のRはエタンジイルであり、mは3である)、テトラエチレングリコールジビニルエーテル(式(4)中のRはエタンジイルであり、mは4である)、シクロヘキサンジメタノールジビニルエーテル、ポリテトラヒドロフリルジビニルエーテル、トリメチロールプロパントリビニルエーテルなどのトリビニルエーテルモノマー、ペンタエリスリトールテトラビニルエーテルなどの4官能性エーテルモノマー、およびこのようなポリビニルエーテルモノマーの2種以上の組み合わせが挙げられる。ポリビニルエーテルは、アルキル基、ヒドロキシル基、アルコキシ基およびアミン基から選択される1つ以上のペンダント基を有していてもよい。
【0062】
式(4)のジビニルエーテルにおいて、RはC3−6分枝アルカンジイルであってもよく、ポリヒドロキシ化合物をアセチレンと反応させることにより調製することができる。このタイプのジビニルエーテルの例には、式(4)中のRが−CH(CH)−などのアルキル置換メタンジイル基(例えばPluriol(登録商標)ブレンド、式(4)のRがエタンジイルであり、mが3.8であるPluriol(登録商標)E−200ジビニルエーテル(BASF Corp、ニュージャージー州Parsippany)など)であるか、またはアルキル置換エタンジイル(例えば−CHCH(CH)−、DPE−2およびDPE−3を含むDPEポリマーブレンド(International Specialty Products、ニュージャージー州ウェイン)など)である化合物が挙げられる。
【0063】
他の有用なジビニルエーテルには、式(4)中のRがポリテトラヒドロフリル(ポリ−THF)またはポリオキシアルカンジイルであるジビニルエーテルが含まれ、例えば平均3個のモノマー単位を有するものがある。
【0064】
式(4)のジビニルエーテルのモノマーは、2種以上を用いてもよい。したがって、式(3)の2種のジチオールおよび式(4)の1種のジビニルエーテルモノマー、式(3)の1種のジチオールおよび式(4)の2種のジビニルエーテルモノマー、式(3)の2種のジチオールおよび式(4)の2種のジビニルエーテルモノマー、ならびに式(3)の2種超のジチオールおよび式(4)の2種のジビニルエーテルを用いて、種々のチオール末端ポリチオエーテルプレポリマーを生成することができる。
【0065】
ポリビニルエーテルモノマーは、チオール末端ポリチオエーテルプレポリマーを調製するために使用される反応物質の20モル%〜50モル%未満、または30モル%〜50モル%未満を構成することができる。
【0066】
ジチオールとジビニルエーテルの相対量は、末端チオール基を有するポリチオエーテルプレポリマーを生じるように選択することができる。したがって、式(3)のジチオールまたは式(3)の少なくとも2種の異なるジチオールの混合物を、式(4)のジビニルエーテルまたは式(4)の少なくとも2種の異なるジビニルエーテルの混合物と、チオール基対ビニル基のモル比が1:1より大きく、例えば1.1〜2.0:1.0となるような相対量で、反応させることができる。
【0067】
ジチオールとジビニルエーテルとの反応は、フリーラジカル触媒によって触媒され得る。好適なフリーラジカル触媒としては、例えば、アゾ化合物、例えば、アゾ(ビス)イソブチロニトリル(AIBN)などのアゾビスニトリル、ベンゾイルパーオキサイドおよびt−ブチルパーオキサイドなどの有機過酸化物、過酸化水素などの無機過酸化物が挙げられる。触媒は、フリーラジカル触媒、イオン触媒または紫外線であってもよい。触媒は、酸性または塩基性化合物を含まなくてもよく、分解時に酸性または塩基性化合物を生成しない。好適なフリーラジカル触媒の例には、アゾタイプの触媒が含まれ、例えばVazo(登録商標)−57(Du Pont)、Vazo(登録商標)−64(Du Pont)、Vazo(登録商標)−67(Du Pont)、V−70(登録商標)(Wako Specialty Chemicals)、およびV−65B(登録商標)(Wako Specialty Chemicals)が挙げられる。他のフリーラジカル触媒の例には、tert−ブチルパーオキサイドなどのアルキルパーオキサイドが含まれる。この反応はまた、カチオン光開始部分の有無にかかわらず、紫外線の照射によって行うことができる。
【0068】
本開示によって提供されるチオール末端ポリチオエーテルプレポリマーは、式(3)の少なくとも1種のジチオールと式(4)の少なくとも1種のジビニルエーテルとを混合した後、適切な触媒を添加し、30℃〜120℃の温度(例えば70℃〜90℃)で、2時間〜24時間(例えば2時間〜6時間)反応させることにより調製することができる。
【0069】
チオール末端ポリチオエーテルは、多官能性ポリチオエーテルを含むことができ、すなわち、2.0を超える平均官能価を有することができる。好適な多官能性チオール末端ポリチオエーテルプレポリマーには、例えば、式(5)の構造を有するものが含まれる:
B(−A−SH) (5)
ここで、(i)Aは、例えば、式(1)の構造を備え、(ii)Bは、多官能化剤のz価残基を表し、(iii)zは、2.0より大きい平均値、2〜3の値、2〜4の値、3〜6の値、または3〜6の整数であり得る。
【0070】
このような多官能性チオール末端プレポリマーを調製する際に使用するのに適した多官能化剤は、zが3である三官能化剤を含む。好適な三官能化剤には、例えば、米国特許出願公開第2010/0010133号に開示されているような、トリアリルシアヌレート(TAC)、1,2,3−プロパントリチオール、イソシアヌレート含有トリチオール、およびそれらの組み合わせが含まれる。他の有用な多官能化剤としては、米国特許第4,366,307号、4,609,762号および5,225,472号に記載のポリチオール、およびトリメチロールプロパントリビニルエーテルが挙げられる。多官能化剤の混合物も使用することができる。
【0071】
結果として、本開示によって提供されるチオール末端ポリチオエーテルプレポリマーは、広い範囲の平均官能性によって特徴付けられ得る。例えば、二官能性プレポリマーと三官能化プレポリマーとの組み合わせは、2.05〜3.0、例えば2.1〜2.6の平均官能価を与えることができる。平均官能価のより広い範囲は、四官能性以上の多官能化剤を使用することによって達成され得る。官能価は、化学量論などの因子によっても影響され得る。
【0072】
2.0を超える官能価を有するチオール末端ポリチオエーテルプレポリマーは、米国特許出願公開第2010/0010133号に記載されている二官能性チオール末端ポリチオエーテルプレポリマーに類似の方法で調製することができる。例えば、チオール末端ポリチオエーテルプレポリマーは、(i)本明細書に記載の1種以上のジチオールを、(ii)本明細書に記載の1種以上のジビニルエーテル、および(iii)1種以上の多官能化剤と組み合わせることによって調製することができる。次いで、混合物を、任意選択で好適な触媒の存在下に反応させて、2.0を超える官能価を有するチオール末端ポリチオエーテルプレポリマーを得ることができる。
【0073】
したがって、本開示によって提供されるチオール末端ポリチオエーテルプレポリマーは、
(a)式(3)のジチオールであって、
HS−R−SH (3)
式中、
はC2−6アルカンジイル、C6−8シクロアルカンジイル、C6−10アルカンシクロアルカンジイル、C5−8ヘテロシクロアルカンジイルおよび−[−(CHR−X−]−(CHR−から選択され、ここで、
各Rは、水素およびメチルから独立して選択され、
各Xは−O−、−S−、−NH−および−NR−から独立して選択され、ここでRは水素およびメチルから選択され、
pは2〜6の整数であり、
qは1〜5の整数であり、
rは2〜10の整数である、ジチオールと、
(b)式(4)のジビニルエーテルであって、
CH=CH−O−[−R−O−]−CH=CH (4)
式中、
各Rは、C1−10アルカンジイル、C6−8シクロアルカンジイル、C6−14アルカンシクロアルカンジイル、および−[(−CHR−)−X−]−(−CHR−)−から独立して選択され、ここで、p、q、r、RおよびXは、前記と同義であり、
mは0〜50の整数であり、
nは1〜60の整数であり、
pは2〜6の整数である、ジビニルエーテルと
を含む反応物質の反応生成物を含む。
この反応物質は、(c)多官能性化合物、例えば多官能性化合物B(−V)(B、−Vおよびzは本明細書で定義される通りである)を含むことができる。
【0074】
本開示によって提供されるチオール末端ポリチオエーテルプレポリマーは、分子量分布を有するチオール末端ポリチオエーテルプレポリマーを表す。例えば、有用なチオール末端ポリチオエーテルプレポリマーは、500ダルトン〜20,000ダルトン、2,000ダルトン〜5,000ダルトン、または3,000ダルトン〜4,000ダルトンの範囲の数平均分子量によって特徴付けることができる。有用なチオール末端ポリチオエーテルプレポリマーは、例えば1〜20、または1〜5の範囲の多分散性(M/M、重量平均分子量/数平均分子量)を示すことができる。チオール末端ポリチオエーテルプレポリマーの分子量分布は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィーによって特徴付けることができる。
【0075】
本開示によって提供される組成物に有用な硬化剤としては、硫黄含有プレポリマーの非ブロック化チオール末端基と反応する硬化剤が挙げられる。
【0076】
硬化剤は、ポリエポキシド硬化剤、例えば、2つ以上の反応性エポキシ基を有するエポキシドを含むことができる。好適なポリエポキシドの例には、ヒダントインジエポキシド、ビスフェノール−Aのジグリシジルエーテル、ビスフェノール−Fのジグリシジルエーテルなどのポリエポキシド樹脂、DEN(登録商標)438(Dow Chemicalから入手可能)などのノボラック型エポキシド、エポキシ化不飽和樹脂、および上記のいずれかの組み合わせが挙げられる。
【0077】
ポリエポキシドは、ジエポキシドを含むことができ、ジエポキシドは、Epon(登録商標)828、DEN(登録商標)431、およびそれらの組み合わせから選択することができる。Momentiveから入手可能なEpon(登録商標)樹脂828は、二官能性ビスフェノールA/エピクロロヒドリン誘導液体エポキシ樹脂として説明されている。Dow Chemicalから入手可能なDEN(登録商標)431は、エピクロロヒドリンとフェノールホルムアルデヒドノボラックとの反応生成物を含むエポキシノボラック樹脂として説明されている。
【0078】
ポリエポキシド硬化剤は、エポキシ官能性プレポリマーを含むことができる。好適なエポキシ官能性プレポリマーの例は、米国特許第8,541,513号に開示されているエポキシ官能性ポリホルマールポリマー、および米国特許第7,671,145号に開示されているエポキシ官能性ポリチオエーテルプレポリマーを含む。一般に、硬化剤として使用される場合、エポキシ官能性プレポリマーは、2,000ダルトン未満、1,500ダルトン未満、1,000ダルトン未満、または500ダルトン未満の分子量を有することができる。
【0079】
ポリエポキシドは、米国特許第8,710,159号に開示されているような多官能性硫黄含有エポキシドを含むことができ、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。
【0080】
そのような組成物において、ポリエポキシドは、組成物の0.5重量%〜20重量%、1重量%〜10重量%、2重量%〜8重量%、2重量%〜6重量%、または3重量%〜5重量%で含まれてもよく、重量%は組成物の全固形分重量に基づく。
【0081】
本開示により提供される、ブロック化1,8−ジアザビシクロ[5.4.0]ウンデカ−7−エン重炭酸塩触媒は、DBUの安定な重炭酸塩塩類を含む。ブロック化DBU重炭酸塩触媒は、水の存在下でDBUをCOと反応させることによって調製することができる。例えば、DBU重炭酸塩塩類は、水および酢酸エチルを含有する溶液中でDBUをCOと反応させることによって調製することができる。COは、バブリングされたガスとして、および/またはドライアイスを溶液に添加することによって供給することができる。この溶液は、例えば、水1重量%〜3重量%、または水1.5重量%〜2.5重量%を含むことができる。DBU重炭酸塩は、例えば25μm〜200μmまたは25μm〜100μmの平均粒径を特徴とする微細粉末に粉砕することができる。DBU重炭酸塩は、200μm未満、100μm未満、または50μm未満の平均粒径を特徴とすることができる。DBUと二酸化炭素との反応は、例えば、Heldebrantら、J.Org.Chem.,2005,70(13),pp.5335−5338にも記載されている。
【0082】
本開示によって提供されるブロック化DBU重炭酸塩触媒は、温度への曝露によって活性化または非ブロック化され得る。ブロック化DBU重炭酸塩触媒は、非ブロック化されて、室温で非ブロック化反応性DBU重炭酸塩触媒を提供することができる。ブロック化DBU重炭酸塩触媒を、100°Fを超える温度、125°Fを超える温度、または150°Fを超える温度などの高温に15分間曝露すると、プロセスが加速される可能性がある。室温またはそれ以上の温度で、非ブロック化DBU触媒は、チオール基とエポキシ基との間の反応を加速させ、シーラントの作用時間および硬化時間の両方を減少させる可能性がある。しかしながら、100°Fを超える温度に曝露されても、本開示によって提供されるブロック化DBU重炭酸塩触媒を含むシーラントは、非ブロック化DBU重炭酸塩触媒を含む同様のシーラント組成物ほど急速には硬化しない。
【0083】
硬化性シーラント組成物を部品に適用する前、硬化性シーラント組成物を部品に適用した後、または硬化性シーラント組成物を部品に適用する前および後の両方に、シーラント組成物を加熱することにより、ブロック化DBU重炭酸塩触媒を活性化することができる。シーラントを高温に曝露する温度および時間は、ブロック化DBU重炭酸塩を非ブロック化して所望の作用時間および硬化時間を提供するように選択することができる。
【0084】
本開示によって提供される組成物には、硬化性組成物および硬化組成物が含まれる。硬化性組成物は、反応しなかったかまたは部分的に反応した反応物質の混合物を含み、硬化性組成物の粘度が、その意図する目的のために硬化性組成物を依然として部品に適用できるようなものである。組成物がもはや作用可能でない粘度は、組成物が、例えば、ブラッシング、スプレー、ローラーコーティング、プレス、または押出によって適用されるかどうかなどの適用方法に部分的に依存する。硬化組成物は、成分が非粘着性表面をもたらし、少なくとも30AのショアA硬度をもたらす程度に反応した組成物を指すことができる。
【0085】
本開示によって提供される硬化性組成物は、25重量%〜75重量%のチオール末端硫黄含有プレポリマーと、2重量%〜20重量%のポリエポキシド硬化剤と、0.1重量%〜1重量%のブロック化1,8−ジアザビシクロ[5.4.0]ウンデカ−7−エン重炭酸塩触媒を含むことができる。
【0086】
本開示によって提供される硬化性組成物は、35重量%〜65重量%のチオール末端硫黄含有プレポリマーと、4重量%〜11重量%のポリエポキシド硬化剤と、0.2重量%〜0.36重量%のブロック化1,8−ジアザビシクロ[5.4.0]ウンデカ−7−エン重炭酸塩触媒とを含むことができる。
【0087】
本開示によって提供される組成物はまた、ブロック化DBU重炭酸塩に加えて、アミン触媒などの非ブロック化塩基性触媒も含み得る。そのような組成物では、ブロック化DBU触媒は第一触媒であってもよく、アミン触媒は、組成物がアミン触媒の量よりも多い量のブロック化DBU触媒を含む第二触媒であってもよい。
【0088】
好適なアミン触媒の例には、トリエチレンジアミン(1,4−ジアザビシクロ[2.2.2]オクタン、DABCO)、ジメチルシクロヘキシルアミン(DMCHA)、ジメチルエタノールアミン(DMEA)、ビス−(2−ジメチルアミノエチル)エーテル、N−エチルモルホリン、トリエチルアミン、1,8−ジアザビシクロ[5.4.0]ウンデセン−7(DBU)、ペンタメチルジエチレントリアミン(PMDETA)、ベンジルジメチルアミン(BDMA)、N,N,N’−トリメチル−N’−ヒドロキシエチル−ビス(アミノエチル)エーテル、およびN’−(3−(ジメチルアミノ)プロピル)−N,N−ジメチル−1,3−プロパンジアミンが含まれる。
【0089】
本開示によって提供されるシーラントは、グレードA、グレードB、またはグレードCの航空宇宙用シーラントとして好適であり得る。グレードAのシーラントは、典型的にはブラッシングによって塗布され、150ポアズ〜500ポアズの粘度を有する。グレードBのシーラントは、空気式Semco(登録商標)ガンを使用した押出などによって適用することができ、8,000ポアズ〜16,000ポアズの高粘度によって特徴付けられる。グレードBのシーラントは、低いスランプ/サグ(slump/sag)が望ましい垂直面にフィレット(fillet)を形成して封止するために使用することができる。グレードCのシーラントは、ローラーコーティングまたは櫛歯スプレッダを使用して塗布することができ、1,000ポアズ〜4,000ポアズの中粘度を有する。グレードCのシーラントは、接合面を封止するために使用することができる。
【0090】
航空宇宙用シーラント用途では、シーラントは、20ミルの硬化厚さでMil−S−22473E(シーラントグレードC)の要件を満たし、200%超の伸び率、250psi超の引張強度を示し、優れた燃料耐性を有し、−67°F〜360°Fの広い温度範囲にわたってこれらの特性を維持することが望ましい可能性がある。一般に、シーラントの外観は重要な特性ではない。本開示によって提供されるシーラントは、完全硬化の前に、室温で少なくとも12時間、少なくとも16時間、または少なくとも20時間の作用時間を有することができる。シーラントが部分的に硬化し、もはや作業可能でなくなった後、本開示によって提供されるシーラントは、4時間未満、8時間未満、12時間未満、または24時間未満の非粘着性(tack−free)硬化時間を有し得る。作用時間は、組成物が加熱されてブロック化DBU触媒が活性化された後に、周囲温度での適用のためにシーラントが作用可能または展延可能なままである期間を指す。例えば、数値スケールを用いて作用時間を評価することができ、(1)は最初に活性化されたシーラントの作用性を表し、(2)は最初に活性化されたシーラントよりもわずかに高い粘度を有するシーラントを表し、(3)は最初に活性化されたシーラントの粘度よりも著しく高い粘度を有するシーラントを表し、(4)はゲル化し始めたが展延可能なままであるシーラントを表し、(5)はゲル化してもはや展延不可能なシーラントを表し、(6)はほとんど硬化したが非粘着性ではないシーラントを表し、(7)は非粘着性状態に硬化しているシーラントを表し、(8)はショアA硬度20Aを有する硬化シーラントを表し、(9)はショアA硬度35Aを有する硬化シーラントを表し、(10)はショアA硬度45Aを有する硬化シーラントを示す。
【0091】
組成物は、チオール末端硫黄含有ポリマー、ポリエポキシド硬化剤、およびブロック化DBU重炭酸塩触媒を含むことができ、組成物を少なくとも200°Fの温度に15分間曝露した後、少なくとも10時間の作用時間、周囲温度および湿度で10時間未満の硬化時間を示すことができる。
【0092】
本開示によって提供される組成物は、航空宇宙用シーラントにおける使用に適した1つ以上の追加の成分を含んでよく、これは使用条件下の硬化シーラントの所望の性能特性に少なくとも部分的に依存し得る。
【0093】
本開示によって提供される組成物は、1種以上の接着促進剤を含むことができる。1種以上の追加の接着促進剤は、組成物の全乾燥重量を基準として、組成物の0.1重量%〜15重量%、5重量%未満、2重量%未満、または1重量%未満の量で存在してもよい。接着促進剤の例には、フェノール類、例えばMethylon(登録商標)フェノール樹脂など、およびエポキシ、メルカプトまたはアミノ官能性シランなどのオルガノシラン、例えばSilquest(登録商標)A−187およびSilquest(登録商標)A−1100などが含まれる。接着促進剤はまた、PRC−DeSoto International、Inc.から入手可能なT−1601を含むことができる。
【0094】
好適な接着促進剤には、米国特許第8,513,339号(その全体が参照により組み込まれる)に開示されているような硫黄含有接着促進剤が含まれる。
【0095】
本開示によって提供される組成物は、1種以上の異なるタイプの充填剤を含み得る。好適な充填剤には、カーボンブラックおよび炭酸カルシウム(CaCO)、シリカ、ポリマー粉末、および軽量充填剤などの無機充填剤を含む、当技術分野で一般的に知られているものが含まれる。好適な軽量充填剤としては、例えば、米国特許第6,525,168号に記載されているものが挙げられる。組成物は、組成物の全乾燥重量を基準にして、5重量%〜60重量%、10重量%〜50重量%、または20重量%〜40重量%の充填剤または充填剤の組み合わせを含むことができる。本開示によって提供される組成物は、1種以上の着色剤、チキソトロピー剤、促進剤、難燃剤、接着促進剤、溶媒、マスキング剤、または上記のいずれかの組み合わせをさらに含み得る。理解され得るように、組成物に利用される充填剤および添加剤は、互いに適合し、さらにはポリマー組成物、硬化剤および/または触媒とも適合するように選択することができる。
【0096】
本開示によって提供される組成物は、低密度充填剤粒子を含み得る。本明細書で使用されるように、このような粒子に関して使用される場合、低密度は、粒子が0.7以下、または0.25以下、または0.1以下の比重を有することを意味する。好適な軽量充填剤粒子は、ミクロスフェアおよびアモルファス粒子の2つのカテゴリーに分類されることが多い。ミクロスフェアの比重は、0.1〜0.7の範囲であってもよく、例えばポリスチレンフォーム、ポリアクリレートおよびポリオレフィンのミクロスフェア、および5ミクロン〜100ミクロンの範囲の粒径および0.25の比重を有するシリカミクロスフェア(Eccospheres(登録商標))を含む。他の例には、5〜300ミクロンの範囲の粒径および0.7の比重を有するアルミナ/シリカミクロスフェア(Fillite(登録商標))、0.45〜0.7の比重を有するケイ酸アルミニウムミクロスフェア(Z−Light(登録商標))、0.13の比重を有する炭酸カルシウム被覆ポリビニリデンコポリマーミクロスフェア(Dualite(登録商標)6001AE)、40μmの平均粒径および0.135g/ccの密度を有する炭酸カルシウム被覆アクリロニトリルコポリマーミクロスフェア、例えばDualite(登録商標)E135(Henkel)が挙げられる。組成物の比重を減少させるのに適した充填剤としては、例えば、Expancel(登録商標)ミクロスフェア(AkzoNobelから入手可能)またはDualite(登録商標)低密度ポリマーミクロスフェア(Henkelから入手可能)などの中空ミクロスフェアが挙げられる。本開示によって提供される組成物は、米国特許出願公開第2010/0041839号明細書[0016]−[0052](引用部分は参照により組み込まれる)に記載されているような薄いコーティングで被覆された外面を備える軽量充填剤粒子を含むことができる。
【0097】
低密度充填剤は、組成物の5重量%未満、2重量%未満、1.5重量%未満、1.0重量%未満、0.8重量%未満、0.75重量%未満、0.7重量%未満、または0.5重量%未満の量で含まれていてよく、ここで重量%は組成物の全乾燥固形物重量を基準とする。
【0098】
本開示によって提供される組成物は、組成物の比重を低下させるのに有効な少なくとも1種の充填剤を含むことができる。組成物の比重は、0.8〜1,0.7〜0.9、0.75〜0.85または0.8であり得る。組成物の比重は、0.9未満、0.8未満、0.75未満、0.7未満、0.65未満、0.6未満、または0.55未満であり得る。
【0099】
本開示によって提供される組成物は、導電性充填剤を含む。ポリマー中に導電性材料を組み込むことによって、導電性およびEMI/RFI遮蔽効果を組成物に付与することができる。導電性要素には、例えば、金属または金属めっきされた粒子、布地、メッシュ、繊維、およびそれらの組み合わせが包含され得る。金属は、例えば、フィラメント、粒子、フレークまたは球体の形態であり得る。金属の例には、銅、ニッケル、銀、アルミニウム、スズ、およびスチールが含まれる。ポリマー組成物にEMI/RFI遮蔽効果を付与するために使用することができる他の導電性材料には、炭素またはグラファイトを含む導電性粒子または繊維が含まれる。ポリチオフェン、ポリピロール、ポリアニリン、ポリ(p−フェニレン)ビニレン、ポリフェニレンスルフィド、ポリフェニレンおよびポリアセチレンなどの導電性高分子を用いることもできる。
【0100】
非導電性充填剤の例には、限定されるものではないが、炭酸カルシウム、マイカ、ポリアミド、ヒュームドシリカ、モレキュラーシーブパウダー、マイクロスフェア、二酸化チタン、チョーク、アルカリブラック、セルロース、硫化亜鉛、重スパー(heavy spar)、アルカリ土類金属酸化物、アルカリ土類金属水酸化物などの材料が含まれる。充填材はまた、硫化亜鉛および無機バリウム化合物などの高バンドギャップ材料を含む。導電性基剤組成物は、基剤組成物の全重量を基準として2重量%〜10重量%の範囲であるか、または3重量%〜7重量%の範囲であり得る量の非導電性充填剤を含むことができる。硬化剤組成物は、硬化剤組成物の全重量を基準として、6重量%未満、または0.5重量%〜4重量%の範囲の量の非導電性充填剤を含むことができる。
【0101】
導電性およびEMI/RFI遮蔽効果をポリマー組成物に付与するために使用される充填剤は、当該技術分野において周知である。導電性充填剤の例には、導電性貴金属ベースの充填剤、例えば純銀、貴金属めっき貴金属(銀めっき金など)、貴金属めっき非貴金属(銀めっきした銅、ニッケル、アルミニウムなど、例えば銀めっきアルミニウムコア粒子または白金めっき銅粒子)、貴金属めっきしたガラス、プラスチックまたはセラミック(銀めっきガラスミクロスフェア、貴金属めっきアルミニウムまたは貴金属めっきプラスチックミクロスフェアなど)、貴金属めっきマイカ、および他のこのような貴金属導電性充填剤が含まれる。非貴金属ベースの材料も使用でき、例えば、非貴金属めっき非貴金属(銅被覆鉄粒子またはニッケルめっき銅など)、非貴金属(例えば銅、アルミニウム、ニッケル、コバルト)、非金属めっき非金属(例えばニッケルめっきグラファイト、およびカーボンブラックおよびグラファイトなどの非金属材料)を含む。所望の導電率、EMI/RFI遮蔽効果、硬度、および特定の用途に適した他の特性を満たすために、導電性充填剤の組み合わせを使用することもできる。
【0102】
本開示の組成物に使用される導電性充填剤の形状およびサイズは、硬化組成物にEMI/RFI遮蔽効果を付与するための任意の適切な形状およびサイズであり得る。例えば、充填剤は、球状、フレーク状、血小板状、粒子状、粉末状、不規則状、繊維状など、導電性充填剤の製造に一般的に使用される任意の形状とすることができる。本開示の特定のシーラント組成物において、基剤組成物は、粒子、粉末またはフレークとしてのNi被覆グラファイトを含むことができる。基剤組成物中のNi被覆グラファイトの量は、基剤組成物の全重量を基準として、40重量%〜80重量%、または50重量%〜70重量%の範囲であり得る。導電性充填材はNi繊維を含むことができる。Ni繊維は、10μm〜50μmの範囲の直径を有し、250μm〜750μmの範囲の長さを有することができる。基剤組成物は、例えば、基剤組成物の全重量を基準として、2重量%〜10重量%、または4重量%〜8重量%の範囲のNi繊維量を含むことができる。
【0103】
本開示の組成物に導電性を付与するために、炭素繊維、特に黒鉛化炭素繊維も使用することができる。気相熱分解法によって形成され、熱処理によって黒鉛化され、0.1ミクロンから数ミクロンの範囲の繊維直径を有する中空または中実炭素繊維は、高い導電性を有する。米国特許第6,184,280号に開示されているように、0.1μm〜数十ナノメートル未満の外径を有するカーボンマイクロファイバー、ナノチューブまたはカーボンフィブリルを導電性充填剤として使用することができる。本開示の導電性組成物に適した黒鉛化炭素繊維の例には、0.00055Ω−cmの電気抵抗率を有する直径0.921μmの円形繊維であるPanex(登録商標)3OMF(Zoltek Companies、Inc.、ミズーリ州セントルイス)が含まれる。
【0104】
導電性充填剤の平均粒径は、ポリマーベースの組成物に導電性を付与するのに有用な範囲内であればよい。例えば、1種以上の充填剤の粒径は、0.25μm〜250μmの範囲、0.25μm〜75μmの範囲、または0.25μm〜60μmの範囲であり得る。本開示の組成物は、Ketjenblack(登録商標)EC−600 JD(Akzo Nobel、Inc.、イリノイ州シカゴ)を含むことができ、これは、ヨウ素吸収1000〜11500mg/g(J0/84−5試験法)、および細孔容積480〜510cm/100g(DBP吸収、KTM 81−3504)を特徴とする導電性カーボンブラックである。導電性カーボンブラック充填剤は、Black Pearls 2000(Cabot Corporation、マサチューセッツ州ボストン)であってもよい。
【0105】
本開示の組成物の導電性を付与または改変するために、導電性ポリマーを使用することができる。ポリフェニレンスルフィドおよびポリチオフェンのような、芳香族基内にまたは二重結合に隣接して組み込まれた硫黄原子を有するポリマーは、導電性であることが知られている。他の導電性ポリマーには、例えば、ポリピロール、ポリアニリン、ポリ(p−フェニレン)ビニレン、およびポリアセチレンが含まれる。基剤組成物を形成する硫黄含有ポリマーは、ポリスルフィドおよび/またはポリチオエーテルを含むことができる。このように、硫黄含有ポリマーは、ビニルシクロヘキセン−ジメルカプトジオキサオクタン基などの共役二重結合に隣接する芳香族硫黄基および硫黄原子を含み、本開示の組成物の導電性を高めることができる。
【0106】
本開示の組成物は、2種以上の導電性充填剤を含むことができ、2種以上の導電性充填剤は、同じまたは異なる材料および/または形状であり得る。例えば、シーラント組成物は、導電性のNi繊維と、粉末、粒子またはフレークの形態の導電性Ni被覆グラファイトとを含むことができる。導電性充填剤の量および種類は、硬化したときに0.50Ω/cm未満のシート抵抗(4点抵抗)または0.15Ω/cm未満のシート抵抗を示すシーラント組成物を生成するように選択することができる。充填剤の量および種類は、本開示のシーラント組成物を用いて封止された開口部に対して1MHz〜18GHzの周波数範囲にわたって効果的なEMI/RFI遮蔽を提供するように選択することもできる。
【0107】
本開示の異種金属表面および導電性組成物のガルバニック腐食は、腐食防止剤を組成物に添加することによって、および/または適切な導電性充填剤を選択することによって、最小化または防止することができる。腐食防止剤は、ストロンチウムクロメート、カルシウムクロメート、マグネシウムクロメート、およびそれらの組み合わせを含み得る。米国特許第5,284,888号および米国特許第5,270,364号には、アルミニウムおよび鋼表面の腐食を抑制するための芳香族トリアゾールの使用が開示されている。腐食防止剤として、Znなどの犠牲酸素捕捉剤(sacrificial oxygen scavenger)を用いることができる。腐食防止剤は、導電性組成物の全重量の10重量%未満を構成することができる。腐食防止剤は、導電性組成物の全重量の2重量%〜8重量%の範囲の量を構成することができる。異種金属表面間の腐食はまた、組成物に含まれる導電性充填剤の種類、量および特性の選択によって最小化または防止することができる。
【0108】
硫黄含有ポリマーは、組成物の50重量%〜90重量%、60重量%〜90重量%、70重量%〜90重量%、または80重量%〜90重量%で含まれてもよく、重量%は組成物の全乾燥固形物重量を基準とする。
【0109】
組成物はまた、所望により任意の数の添加剤を含むことができる。好適な添加剤の例には、可塑剤、顔料、界面活性剤、接着促進剤、チキソトロピー剤、難燃剤、マスキング剤、および促進剤(例えば1,4−ジアザビシクロ[2.2.2]オクタン、DABCO(登録商標))、および上記のいずれかの組み合わせが含まれる。使用される場合、添加剤は、組成物中に例えば0重量%〜60重量%の範囲の量で存在してもよく、重量%は組成物の全固形物重量を基準とする。添加剤は、組成物の全固形物重量を基準として25重量%〜60重量%の範囲の量で組成物中に存在してもよい。
【0110】
本開示によって提供される組成物は、例えば、シーラント、コーティング、封入剤、およびポッティング(potting)組成物において使用され得る。シーラントは、膜を生成することができる組成物を含み、膜は、水分および温度などの操作条件に抵抗性を有し、水、燃料、ならびに他の液体および気体などの材料の透過を少なくとも部分的に遮断する能力を有する。シーラントは、燃料タンクシーラントとして使用することができる。コーティング組成物は、例えば、外観、接着性、濡れ性、耐腐食性、耐摩耗性、燃料耐性および/または耐摩擦性などの基材の特性を改善するために基材の表面に適用される被覆を含む。ポッティング組成物は、電子アセンブリに有用な材料を含み、衝撃および振動に対する耐性を提供し、水分および腐食剤を排除する。本開示によって提供されるシーラントは、例えば航空宇宙用シーラントとして、および燃料タンク用のライニングとして有用である。
【0111】
シーラントなどの組成物は、2液型組成物などのマルチパック組成物として提供されてもよく、1つのパッケージは、本開示によって提供される1種以上のポリチオエーテルプレポリマーおよびブロック化DBU重炭酸塩触媒を含み、第2のパッケージは、1種以上のポリエポキシド硬化剤を含む。添加剤および/または他の材料は、所望または必要に応じていずれかのパッケージに添加することができる。2つのパッケージは、使用する前に組み合わせて混合することができる。本開示によって提供されるシーラントの作用時間は、高温に曝露しない場合、少なくとも15時間、少なくとも20時間、または少なくとも30時間であり得、非粘着性硬化時間は、30時間未満、40時間未満、または50時間未満であり得る。
【0112】
組成物は、25℃(室温)以上の温度で作用時間後24時間〜72時間以内に非粘着性表面へと硬化することができる。本開示によって提供されるシーラント組成物を使用して有効なシールを形成する時間は、当業者によって理解され得る、また適用可能な標準および仕様の要件によって規定される、いくつかの因子に依存し得る。一般に、本開示によって提供される硬化性シーラント組成物は、表面への適用後1〜2日以内に非粘着性の硬化を生じる。一般に、シーラントは、硬化性シーラント組成物を混合して表面に塗布した後7日以内に45AのショアA硬度まで完全に硬化する。
【0113】
本開示によって提供されるシーラントを含む組成物は、様々な基材のいずれにも適用することができる。組成物が適用され得る基材の例には、チタン、ステンレス鋼、およびアルミニウムなどの金属(いずれも陽極酸化、下塗り、有機被覆またはクロメート被覆を施されていてよい)、エポキシ、ウレタン、グラファイト、ガラス繊維複合材、Kevlar(登録商標)、アクリル、およびポリカーボネートが挙げられる。本開示によって提供される組成物は、ポリウレタンコーティングなどの基材上のコーティングに適用されてもよい。
【0114】
本開示によって提供される組成物は、当業者に公知の任意の好適なコーティングプロセスによって、基材の表面上にまたは下地層を覆って直接適用され得る。
【0115】
さらに、本開示によって提供されるシーラント組成物を使用し、部品を利用してシーリング(封止)する方法が提供される。これらの方法は、例えば、本開示によって提供されるシーラント組成物を部品に適用し、適用された組成物を硬化させることを含む。塗布されたシーラント組成物を硬化させることは、周囲温度および周囲湿度でシーラントが硬化することを可能にすることを含むことができ、またはシーラントを短期間またはより長い期間のいずれかで高温に曝露することを含むことができる。また、理解されるように、本方法は、航空機および航空宇宙飛行体を含む航空宇宙飛行体の開口部を封止するために使用され得る。
【0116】
組成物は周囲条件下で硬化することができ、周囲条件は20℃〜25℃の温度および大気湿度を意味する。組成物は、0℃〜100℃の温度および相対湿度0%〜相対湿度100%の湿度を包含する条件下で硬化させることができる。組成物は、少なくとも30℃、少なくとも40℃、または少なくとも50℃などのより高い温度で硬化させることができる。組成物は室温、例えば25℃で硬化させることができる。
【0117】
硬化シーラントなどの本明細書に開示される硬化組成物は、航空宇宙用途における使用に許容できる特性を示す。一般に、航空および航空宇宙用途に使用されるシーラントは、Jet Reference Fluid(JRF)タイプIに7日間浸漬後、およびAMS3265B試験仕様に従って3%NaCl溶液に浸漬後、乾燥条件下で測定した航空宇宙材料規格(AMS)3265B基材において剥離強度が20ポンド/リニアインチ(pli)超、引張強度が300〜400ポンド/平方インチ(psi)、引裂強度が50ポンド/リニアインチ(pli)超、伸び率(elongation)が250〜300%、硬度が40デュロメーA超の特性を示すことが望ましい。航空および航空宇宙用途に適したこれらおよび他の硬化シーラント特性は、AMS3265Bに開示されており、その全体が参考として援用される。飛行および航空機用途に使用される本開示の組成物は、硬化した場合、60℃(140°F)およびJRFタイプIの周囲圧力で1週間浸漬後に25%以下の体積膨張率を示すことも望ましい。他の特性、範囲、および/または閾値は、他のシーラント用途に適切であり得る。
【0118】
本開示によって提供される組成物は、燃料耐性であり得る。本明細書で使用される「燃料耐性」(“fuel resistant”)という用語は、組成物が基材に適用され、硬化したときに、ASTM D792(米国材料試験協会)またはAMS3269(航空宇宙材料仕様)に記載されている方法と類似の方法によって、140°F(60℃)およびJRFタイプIの周囲圧力で1週間浸漬後、40%以下、場合によっては25%以下、場合によっては20%以下、さらに他の場合では10%以下の体積膨張率を示すシーラントなどの硬化生成物を提供することができることを意味する。JRFタイプIは、燃料耐性の測定に使用される場合、トルエン28±1体積%、シクロヘキサン(工業等級)34±1体積%、イソオクタン38±1体積%、および、第三級ジブチルジスルフィド1±0.005体積%の組成を有する(AMS2629、1989年7月1日発行、第3.1.1項などを参照、SAE(Society of Automotive Engineers)から入手可能)。
【0119】
本明細書で提供される組成物は、AMS3279、第3.3.17.1項、試験手順AS5127/1、7.7項に記載の手順に従って測定した場合に、少なくとも100%の引張伸びおよび少なくとも400psiの引張強度を示す、シーラントなどの硬化生成物をもたらす。
【0120】
組成物は、SAE AS5127/1パラグラフ7.8に記載されている手順に従って測定した場合に、重ね剪断強度(lap shear strength)200psi超、例えば少なくとも220psi、少なくとも250psi、および場合によっては少なくとも400psiを示す、シーラントなどの硬化生成物をもたらすことができる。
【0121】
本開示によって提供される組成物を含む硬化シーラントは、AMS3277に記載されているような航空宇宙用シーラントの要件を満たすか、または超えることができる。
【0122】
本開示によって提供されるシーラントで封止された航空宇宙飛行体の部品および表面を含む部品および表面も開示される。
【0123】
本開示により提供される導電性シーラント組成物は、500°Fで24時間の曝露後に室温で測定した場合、表面抵抗率1Ω/平方未満、引張強度200psi超、伸び100%超、MIL−C−27725に従って測定した凝集破壊100%の特性を示すことができる。
【0124】
本開示により提供される硬化シーラントは、室温で2日間、140°Fで1日、200°Fで1日硬化した場合、乾燥硬度49、引張強度428psi、および伸び266%を示し、JRFタイプIで7日後に硬度36、引張強度312psi、伸び247%を示す。
【0125】
本開示によって提供される組成物は、ショアA硬度10超、20超、30超、または40超、引張強度10psi超、100psi超、200psi超、または500psi超、伸び100%超、200%超、500%超、または1,000%超、JRFタイプ1(7日間)曝露後に膨張率20%未満を示すことができる。
【実施例】
【0126】
本開示によって提供されるブロック化DBU重炭酸塩触媒および組成物を、特定のブロック化DBU触媒、組成物、およびシーラントの合成、特性、および使用を記載する以下の実施例を参照してさらに説明する。当業者には、本開示の範囲から逸脱することなく、材料および方法の両方に対する多くの改変が実施され得ることは明らかであろう。
【0127】
例1
DBU重炭酸塩触媒の合成
攪拌機、凝縮器、窒素導入口および熱電対を備えた2000mLの4つ口ケトル内で、DBU(工業グレード、BASF製)50.6g、蒸留水6.66gおよび酢酸エチル300gを合わせた。ドライアイス50gを部分的に反応混合物に添加し、白色沈殿物を形成させた。ドライアイスを完全に添加した後、反応混合物を室温で1時間保持した。濾過により白色固形物を回収した。次に、固形物を酢酸エチル(3×50mL)で2回洗浄し、真空オーブンで乾燥させた。白色粉末が97重量%の収率で得られた。ヒュームドシリカ1重量%を白色固形物に添加し、混合した。MIKRO社製Air Classifier Mill(ACM)を用いて混合固形物を粉砕して微粉(75μm)とした。
【0128】
比較例1
比較シーラント配合物
比較シーラント配合物は、基剤と促進剤の2つの部分から構成されていた。基剤配合物を表1に示し、促進剤配合物を表2に示す。
【表1】
【0129】
表1の基剤配合物の成分を完全に混合し、基剤配合物を室温で24時間保った後、促進剤と混合した。
【表2】
【0130】
促進剤成分を完全に混合し、促進剤配合物を室温で24時間保った後、基剤と混合した。
【0131】
基剤100gと促進剤18.5gを混合することによってシーラントを調製し、室温に維持した。シーラントの硬化状態を数値スケールで表し、定期的に記録した。結果を図1に示す。数値スケールは、表3に示すように分類される。
【表3】
【0132】
例2
シーラント配合物
本発明のシーラント配合物は、基剤と促進剤の2つの部分から構成されていた。基剤配合物を表4に示し、促進剤配合物を表5に示す。
【表4】
【0133】
基剤組成物を完全に混合し、組成物を室温で24時間維持した後、促進剤と混合した。
【表5】
【0134】
促進剤成分を完全に混合し、組成物を室温で24時間維持した後、基剤と混合した。
【0135】
基剤100gを促進剤18.5gと混合し、次に未硬化のシーラントを以下の熱条件に曝露することによってシーラントを調製した。
条件1:シーラントを加熱せずに室温で維持した。
条件2:シーラントを140°Fで15分間加熱し、室温に放冷した。
条件3:シーラントを170°Fで15分間加熱し、室温に放冷した。
【0136】
様々な熱条件に曝露した後、各シーラントの硬化状態を定期的に監視した。結果を図1に示す。数値スケールは、表3に示すように分類される。
【0137】
最後に、本明細書に開示された実施形態を実施する代替の方法があることに留意すべきである。したがって、本実施形態は例示的なものであり、限定的なものではないと考えられるべきである。さらに、特許請求の範囲は、本明細書に記載された詳細に限定されるものではなく、その全範囲およびその等価物とみなされる。
なお、本発明に包含され得る諸態様は、以下のとおり要約される。
[態様1]
(a)チオール末端硫黄含有プレポリマーと、
(b)ポリエポキシド硬化剤と、
(c)ブロック化1,8−ジアザビシクロ[5.4.0]ウンデカ−7−エン重炭酸塩触媒と
を含む組成物。
[態様2]
前記触媒が粉末の形態である、上記態様1に記載の組成物。
[態様3]
前記粉末が、25μm〜200μmの平均粒径を特徴とする、上記態様2に記載の組成物。
[態様4]
前記粉末が100μm未満の平均粒径を特徴とする、上記態様2に記載の組成物。
[態様5]
前記ポリエポキシド硬化剤が、エポキシノボラック樹脂、ビスフェノールA/エピクロロヒドリンエポキシ樹脂、またはそれらの組み合わせを含む、上記態様1に記載の組成物。
[態様6]
前記組成物が、
35重量%〜65重量%の前記チオール末端硫黄含有プレポリマーと、
4重量%〜11重量%の前記ポリエポキシド硬化剤と、
0.2重量%〜0.36重量%の前記ブロック化1,8−ジアザビシクロ[5.4.0]ウンデカ−7−エン重炭酸塩触媒と
を含む、上記態様1に記載の組成物。
[態様7]
前記チオール末端硫黄含有プレポリマーが、チオール末端ポリチオエーテルプレポリマーを含む、上記態様1に記載の組成物。
[態様8]
前記チオール末端ポリチオエーテルプレポリマーが、式(2)のチオール末端ポリチオエーテルプレポリマー、式(2a)のチオール末端ポリチオエーテルプレポリマー、またはそれらの組み合わせを含む、上記態様7に記載の組成物:
HS−R−[−S−(CH−O−(R−O)−(CH−S−R−]−SH (2)
{HS−R−[−S−(CH−O−(R−O)−(CH−S−R−]−S−V’−}B (2a)
式中、
各Rは、C2−10アルカンジイル、C6−8シクロアルカンジイル、C6−14アルカンシクロアルカンジイル、C5−8ヘテロシクロアルカンジイル、および−[(−CHR−)−X−]−(−CHR−)−から独立して選択され、
pは2〜6の整数であり、
qは1〜5の整数であり、
rは2〜10の整数であり、
各Rは、水素およびメチルから独立して選択され、
各Xは、−O−、−S−、−NH−および−N(−CH)−から独立して選択され、
各Rは、C1−10アルカンジイル、C6−8シクロアルカンジイル、C6−14アルカンシクロアルカンジイル、および−[(−CHR−)−X−]−(−CHR−)−から独立して選択され、ここで、p、q、r、RおよびXは、Rについて定義した通りであり、
mは0〜50の整数であり、
nは1〜60の整数であり、
pは2〜6の整数であり、
Bは、z価のビニル末端多官能化剤B(−V)のコアを表し、式中、
zは3〜6の整数であり、
各Vは、末端ビニル基を含む基であり、
各−V’−は、−Vとチオールとの反応に由来する基である。
[態様9]
前記チオール末端ポリチオエーテルプレポリマーは、
(a)式(3)のジチオールであって、
HS−R−SH (3)
式中、
はC2−6アルカンジイル、C6−8シクロアルカンジイル、C6−10アルカンシクロアルカンジイル、C5−8ヘテロシクロアルカンジイルおよび−[−(CHR−X−]−(CHR−から選択され、ここで、
各Rは、水素およびメチルから独立して選択され、
各Xは−O−、−S−、−NH−および−N(−CH)−から独立して選択され、
pは2〜6の整数であり、
qは1〜5の整数であり、
rは2〜10の整数である、ジチオールと、
(b)式(4)のジビニルエーテルであって、
CH=CH−O−[−R−O−]−CH=CH (4)
式中、
各Rは、C1−10アルカンジイル、C6−8シクロアルカンジイル、C6−14アルカンシクロアルカンジイル、および−[(−CHR−)−X−]−(−CHR−)から独立して選択され、ここで、p、q、r、RおよびXは、Rについて定義した通りであり、
mは0〜50の整数であり、
nは1〜60の整数であり、
pは2〜6の整数である、ジビニルエーテルと
を含む反応物質の反応生成物を含む、
上記態様7に記載の組成物。
[態様10]
前記反応物質が、(c)多官能性化合物B(−V)をさらに含み、ここで、
zは3〜6の整数であり、
各−Vは、チオール基と反応性である末端基を含む部分である、
上記態様9に記載の組成物。
[態様11]
非ブロック化アミン触媒をさらに含む、上記態様1に記載の組成物。
[態様12]
シーラントとして配合される、上記態様1に記載の組成物。
[態様13]
上記態様12に記載の組成物から製造される硬化シーラント。
[態様14]
部品の少なくとも一部に上記態様13に記載の硬化シーラントを含む部品。
[態様15]
部品を封止する方法であって、
上記態様12に記載の組成物を部品の少なくとも一部に適用するステップと、
封止部品を提供するために、適用された前記組成物を硬化させるステップと
を含む方法。
[態様16]
前記組成物を前記部品に適用する前に、前記組成物を前記部品に適用した後に、または、前記組成物を前記部品に適用する前および適用する後に、前記組成物を加熱するステップを含む、上記態様15に記載の方法。
図1