(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記難燃性材料b)は、単一の容器において1つ以上のホスホン酸化合物を1つ以上の適切な金属化合物で処理して、R及び/又はMの複数の値を含む式(I)に対応する中間塩錯体を得ることによって中間塩錯体を初めに調製する工程と、次いで0.01時間〜20時間、200℃以上の温度で前記中間塩錯体を加熱する工程とを含むプロセスによって得られる、請求項4に記載の難燃性ポリマー組成物。
前記難燃性材料b)は、R及び/又はMの異なる値を有する式(I)の2つ以上の個々の金属ホスホン酸塩を組み合わせることによって緊密塩混合物を調製する工程と、次いで0.01時間〜20時間、200℃以上の温度で前記緊密塩混合物を加熱する工程とを含むプロセスによって得られる、請求項4に記載の難燃性ポリマー組成物。
式(I)の少なくとも1つの化合物において、Rは、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、sec−ブチル、イソブチル、tert−ブチル、ベンジル又はフェニルである、請求項4に記載の難燃性ポリマー組成物。
前記熱硬化性又は熱可塑性ポリマーは、1つ以上の、ポリオレフィンホモポリマー、ポリオレフィンコポリマー、ゴム、エポキシ樹脂、ポリエステル、ポリウレタン、ポリスルホン、ポリイミド、ポリフェニレンエーテル、スチレンポリマー、スチレンコポリマー、ポリカーボネート、アクリルポリマー、ポリアミド、ポリアセタール、エポキシ樹脂、生分解性ポリマー、又はそれらのブレンド物を含む、請求項4に記載の難燃性ポリマー組成物。
前記熱硬化性又は熱可塑性ポリマーは、1つ以上の、スチレンポリマー、ポリオレフィン、ポリエステル、エポキシ樹脂、ポリカーボネート、ポリアミド、又はポリウレタンを含む、請求項10に記載の難燃性ポリマー組成物。
前記熱硬化性又は熱可塑性ポリマーは、ポリアルキレンテレフタル酸、HIPS、エポキシ樹脂、又はポリアミドを含み、前記熱硬化性又は熱可塑性ポリマーは、任意選択により強化剤を更に含む、請求項11に記載の難燃性ポリマー組成物。
成分(c)は、1つ以上の、ハロゲン化難燃剤、アルキル若しくはアリールホスフィンオキシド難燃剤、アルキル若しくはアリールリン酸難燃剤、アルキル若しくはアリールホスホン酸、アルキル若しくはアリールアルキルホスフィン酸、又は、アルキル若しくはアリールホスフィン酸の塩、メラミン、メラミン誘導体、メラミン縮合生成物、メラミン塩、ホスフィンオキシド、ポリホスフィンオキシド、又は金属水酸化物、酸化物、酸化物水和物、ホウ酸、リン酸、亜リン酸、又はケイ酸を含む、請求項13に記載の難燃性ポリマー組成物。
成分(c)は、1つ以上の、アルミニウムトリス(ジエチルホスフィン酸)、亜リン酸水素アルミニウム、メチレン−ジフェニルホスフィンオキシド置換ポリアリールエーテル、キシリレンビス(ジフェニルホスフィンオキシド)、1,2−ビス−(9,10−ジヒドロ−9−オキシ−10−ホスファフェナントレン−10−酸化物)エタン、4,4’−ビス(ジフェニルホスフィニルメチル)−1,1’−ビフェニル、メラム、メレム、メロン、又は金属リン酸メラミンを含み、前記金属は、アルミニウム、亜鉛、又はマグネシウムを含む、請求項14に記載の難燃性ポリマー組成物。
【背景技術】
【0003】
ポリオレフィン、ポリエステル、ポリカーボネート、ポリアミド、ポリウレタン、エポキシ樹脂、及びその他の熱可塑性又は熱硬化性ポリマー樹脂などのポリマーは、リン含有化合物、ハロゲン含有化合物、又はそれらの混合物をその中に組み込むことによって、多くの場合、より難燃性になる。例えば、米国特許第3,689,602号明細書では、プラスチック用の難燃性添加剤としてのハロゲン化リン酸エステルを開示している。
【0004】
いくつかのポリマーは、高温、例えば、200℃、220℃、250℃以上で加工され、その結果、多くの周知の難燃剤が、あまりに揮発性であり、十分に熱的に安定ではなく、加工等に悪影響を与えるため、これらの条件の下では適切ではない。又、いくつかのリン酸エステルなどの特定の有機リン難燃性化合物は、それらが加えられるポリマーの機械的特性に悪影響を与える場合がある可塑性の効果を示すことがある。更に、いくつかのリン酸などの化合物は、加水分解に対して比較的不安定であり、これは、様々なリン酸化合物の望ましくない形成をもたらすことがある。
【0005】
特に熱可塑性ポリマーの場合、リンを含有する酸の塩は、周知の難燃性添加剤である。米国特許第3,894,986号明細書では、例えば、エタン−ホスホン酸のモノナトリウム塩又はアルカン−ホスホン酸のモノ−メチルエステルのナトリウム塩などの、ホスホン酸のアルカリ塩を含有する難燃性熱可塑性ポリエステルを開示している。米国特許第4,972,011号明細書では、アルキルホスホン酸又はアルカン−ホスホン酸のモノーアルキルエステルのアルミニウム塩、即ち、式(Ia)
【化1】
(式中、Rは、例えば、非置換の、又は、1つ以上のハロ若しくはヒドロキシ基によって置換された、メチル、エチル、プロピル、若しくはイソプロピル等であり、且つ、R’は、水素、メチル、エチル、プロピル、若しくはイソプロピルである)
の化合物の塩を開示している。
【0006】
独国特許第3833977号明細書では、高圧及び120〜200℃の温度での、水におけるジメチルメチルホスフィン酸と金属酸化物又は水酸化物との反応から調製された式(Ia)の化合物の金属塩を開示しており、オートクレーブ中で190℃までの温度で高圧下での水溶液における反応実験が例証されている。又、エチレンジアミン及びメラミンなどのアミンとのこれらの塩の付加物、及び、熱可塑性物質における難燃剤としてのこれらの付加物の使用が、開示されている。
【0007】
ホスフィン酸の塩、即ち、式(II)
【化2】
(式中、R
1及びR
2は、アルキル又は炭素系芳香族である)
の化合物は、熱可塑性ポリマーのための周知の難燃性添加剤としても知られている。
【0008】
MがMg、Ca、Al、Sb、Sn、Ge、Ti、Zn、Fe、Zr、Ce、Bi、Li、Na、K、又はプロトン化された窒素塩基から選択される塩は、周知である。例えば、米国特許第5,780,534号明細書及び米国特許第6,013,707号明細書では、例えば、ジメチルホスフィン酸、エチルメチルホスフィン酸、ジエチルホスフィン酸、n−プロピルメチルホスフィン酸、n−プロピルエチルホスフィン酸、ジ−n−プロピルホスフィン酸、ジイソプロピルホスフィン酸、又はジフェニルホスフィン酸のカルシウム及びアルミニウム塩などの、式(II)のホスフィン酸カルシウム及びホスフィン酸アルミニウムが、ポリエステルにおいて特に効果的であることを開示している。
【0009】
多くの難燃剤系に一般的であるように、リンを含有する酸の誘導体の性能は、その他の難燃剤、共力剤、及び補助剤の存在によって強化されることができる。米国特許第6,472,448号明細書では、オキサルキル化されたアルキルホスホン酸及びポリリン酸アンモニウムの組合せが、難燃剤として存在する、難燃性硬質ポリウレタン発泡体を開示している。
【0010】
米国特許第6,365,071号明細書では、A)例えば、ジメチルホスフィン酸アルミニウム、メチルエチルホスフィン酸アルミニウム、及びメチルプロピルホスフィン酸アルミニウムなどの、前述の式(II)のホスフィン酸の塩と、B)アラントイン、即ち、(2,5−ジオキソ−4−イミダゾリジニル)尿素、ベンゾグアナミン、グリコールウリル、即ち、テトラヒドロイミダゾ[4,5−d]イミダゾール−2,5−ジオン、シアヌル酸尿素、シアヌル酸メラミン、及びリン酸メラミンなどの窒素化合物とを含む、例えば、エンジニアリングプラスチックなどの熱可塑性ポリマーのための、特にポリエステルのための、相乗的な難燃剤の組合せを開示している。
【0011】
米国特許第6,255,371号明細書では、A)例えば、Mは、カルシウム、マグネシウム、アルミニウム、及び/又は亜鉛である、ジエチルホスフィン酸などの、前述の式(II)のホスフィン酸と、B)例えば、ポリリン酸メラミン、ポリリン酸メラム、及びポリリン酸メレムなどの、メラミンの縮合又は反応生成物とを含む、難燃剤の組合せを開示している。
【0012】
米国特許第6,547,992号明細書では、ホスフィン酸と、窒素を含有しない少量の無機及び/又は鉱物の化合物とを含む、熱可塑性ポリマーのための難燃剤の組合せを開示している。国際公開第2012/045414号パンフレットでは、A)Mは、Mg、Ca、Al、Sb、Sn、Ge、Ti、Zn、Fe、Zr、Ce、Bi、Li、Na、K、又はプロトン化された窒素塩基から選択される、前述の式(II)のホスフィン酸塩と、B)亜リン酸の金属塩と、その他の任意選択の成分とを含む難燃性組成物を開示している。
【0013】
例えば、米国特許第6,365,071号明細書及び米国特許第6,255,371号明細書などの、前述で引用されたホスフィン酸は、熱的に安定であり、且つ、加工の際、ポリマーを分解することがない、又は、プラスチック組成物を調製するプロセスに影響を与えることがないと言われている。ホスフィン酸は、熱可塑性ポリマーの調製及び加工の従来の条件下で揮発性ではない。しかしながら、これらの材料は、すべてのポリマー系への使用に必ずしも適切ではなく、且つ、加工に関する問題を生む場合があり、又は特定のポリマーに必要な難燃性の効果を欠いている場合がある。高い所望の物理的特性を備える難燃性ポリマー組成物の調製に使用するための、より低い添加剤濃度でより大きい効率を有し、且つ、向上した加工性を有する難燃剤の必要性が依然として存在する。
【0014】
又、ホスホン酸塩、即ち、式(Ia)による化合物の金属塩は、熱的に安定であると報告されているが、これは、当然ながら相対的な言葉である。米国特許出願公開第2007/0029532号明細書に開示されているように、ポリエステル及びポリアミドの加工の際に受ける温度で、こうしたホスホン酸塩が分解することは周知であり、プロセスにおいてポリマーに損害を与える。
【0015】
米国特許第5,053,148号明細書では、例えば、電気絶縁材料及び/又は断熱材料として有用である、金属ホスホン酸又は金属ホスホン酸前駆体を200℃超の温度まで加熱することによって得られる熱耐性発泡体を開示している。多孔性のその他の基材を膨張させる又は与えるこの反応の使用も開示されている。例えば、こうした基材としては、芳香族ポリエステル、ポリエーテル、ポリスルフィド、ポリアミド、ポリカーボネート、ポリイミド、ポリシロキサン、又はポリホスファゼンなどの、熱可塑性ポリマー又はプラスチックが挙げられ、これらは、金属ホスホン酸及び/又はそれらの前駆体との混合物として、発泡操作に組み込まれることができる。
【0016】
米国特許第5,053,148号明細書では、「発泡プロセス」に従って、金属ホスホン酸及びポリアミドの混合物を加熱することによって多孔性ポリアミドが生成することができることを示唆する一方、高温でのこうしたホスホン酸塩の分解は、エンジニアリング熱可塑性物質として、「使用できないもろい組成物」を与えるという米国特許出願公開第2007/0029532号明細書の開示に対処又は反論するものは、米国特許第5,053,148号明細書にはない。多孔性発泡体は、金属ホスホン酸及びポリアミドなどのポリマーを加熱することによって生成することができることを示唆していることを除けば、米国特許第5,053,148号明細書には、こうした比類のない材料の特性が何であり得るかについての記載はない。
【発明を実施するための形態】
【0022】
本発明の一実施形態は、
a)熱硬化性又は熱可塑性ポリマー、例えば、熱可塑性ポリマーと、
b)難燃組成物の総量に基づいて、1つ、又は2つ以上のホスホン酸塩、即ち、式(I)
【化4】
(式中、Rは、アルキル、アリール、アルキルアリール、又はアリールアルキル基であり、pは、1〜7、例えば、1〜4、例えば、1、2、3、又は4などの数であり、Mは金属であり、yは、例えば、1から4、例えば、1、2、3、又は4まで、多くの場合、2又は3までなどの、1〜7の数であり、そして、M
(+)yは、金属カチオンであり、この場合、(+)yは、例えば、220℃以上などの、200℃以上の温度で、一般的には、例えば、250℃〜400℃又は260℃〜360℃などの、250℃以上の温度で、形式的にカチオンに帰属された電荷を表す)
の化合物を加熱することによって得られる、1重量%から50重量%の難燃性材料と、
c)任意選択の更なる難燃剤又は難燃剤共力剤と、
を含む難燃性ポリマー組成物である。
【0023】
例えば、式(I)においては、yが1であるM
(+)yは、Li
+、Na
+、又はK
+などのモノ−カチオンを表し、yが2であるM
(+)yは、Mg
++、Ca
++、又はZn
++等などのジ−カチオンを表し、yが3であるM
(+)yは、Al
+++等などのトリ−カチオンを表す。有機金属種に一般的であるように、式は理想化され、且つ、出発材料は、単一の酸素アニオンが2つの金属カチオンの間で共有されるなどの、特定の原子価が共有される錯体塩又は塩を含むことができる。典型的には、出発となる塩は、均衡して荷電される、即ち、例えば、M
(+)yがNa
+である場合、pは1であり、MがAl
+++である場合、pは3であるなどの、p=yである式(I)の化合物である。
【0024】
理論に束縛されることを望まないが、分光学データ及びその他の分析は、本発明の温度処理範囲内の式(I)の化合物の熱処理は、実験式(IV)
【化5】
(式中、2(q)+r=n(y)という条件で、R及びMは、式(I)において定義される通りであり、qは、例えば、1、2、又は3などの、1〜7の数であり、rは、例えば、0、1、又は2、多くの場合、0又は1などの、0〜5の数であり、yは、例えば、1〜4などの、1〜7の数であり、且つ、nは1又は2である)
及びその錯体脱水生成物によって一般的に表されると考えられている化合物を含む材料を生成することを示唆する。典型的には、本発明による式(I)の化合物の熱処理は、複数の化合物を含む材料を生成し、そのうちの少なくとも1つは、実験式(IV)及びその錯体脱水生成物によって一般的に表されると考えられている。有機金属種に一般的であるように、式(IV)は理想化され、且つ、生成物は、ポリマー塩、錯体塩、特定の原子価等が共有される塩等を含むことができる。
【0025】
例えば、Mがアルミニウムである場合、即ち、MがAlである式(I)の化合物が本発明に従い加熱される場合、元素分析は、qは1であり、rは1であり、nは1であり、且つ、yは3である、実験式(IV)を有する生成物の形成を示唆する。
【0026】
本発明によって得られた難燃性材料は、より熱的に安定であり、且つ、より高い難燃性活性を示し、且つ、式(I)の出発となるホスホン酸塩より、様々なポリマー樹脂における加工性が向上している。
【0027】
多くの場合、式(I)の単一化合物は、加熱されて本発明の難燃性材料を生成する。その他の実施形態においては、式(I)の複数の化合物は加熱されて、本発明の難燃性材料を生成する、即ち、異なるR基、及び/又は、異なる金属カチオンM
(+)yを有する化合物を含む式(I)の化合物の混合物は加熱されて、本発明の難燃剤を形成する。
【0028】
1つのR基及び1つの金属が存在する式(I)の化合物から形成される場合、典型的には、式(IV)の少なくとも1つの化合物を含む化合物の混合物が形成し、この場合に、前述の混合物及び前述の化合物又は式(IV)の化合物は、1つのR基及び1つの金属を含む。本発明のいくつかの実施形態においては、難燃性材料は、複数のR基及び/又は複数の金属が存在し、且つ、複数のR基及び/又は複数の金属を含む式(IV)の化合物の混合物が存在する、化合物の混合物を含む。複数のR基及び/又は複数の金属を含む化合物を含む本発明の難燃剤は、様々な方法で形成されることができる。
【0029】
中間塩錯体方法と称されることができる第1の方法においては、1つ以上のホスホン酸化合物は、1つ以上の適切な金属化合物で処理されて、式(I)に対応する中間塩錯体を生成し、この錯体は、R及び/又はMの複数の値を含む。多くの場合、金属、又は、中間塩錯体の形成に使用される少なくとも1つの金属は、二座金属又は多座金属であり、且つ、複数の中間錯体が形成されることができる。次いで、この塩錯体は、前述の通り熱処理されて、
a)複数のR基及び/又は複数のM基を有する式(IV)に対応する少なくとも1つの化合物、及び/又は、
b)異なるR基及び/又は異なるM基を有する化合物を含む、式(IV)に対応する化合物の混合物を含む難燃性材料を得る。
【0030】
別の方法として、緊密塩混合物方法と称されることができる第2の方法においては、式(I)の2つ以上の金属ホスホン酸塩は、まとめられて、R及び/又はMの異なる値を有する塩を含む緊密塩混合物を形成する。次いで、この混合物は、前述の通り熱処理に供されて、
a)複数のR基及び/又は複数のM基を有する式(IV)に対応する少なくとも1つの化合物、及び/又は、
b)異なるR基及び/又は異なるM基を有する化合物を含む、式(IV)に対応する化合物の混合物を含む難燃性材料を得る。
【0031】
R及び/又はMの複数の値を有する式(IV)の化合物を含む本発明の難燃性材料を得る第3の方法は、R及び/又はMの異なる値を有することによって異なる、式(I)の2つ以上の個々の金属ホスホン酸塩を別々に加熱し、前述の通り、本発明の2つ以上の難燃性材料を別々に得て、次いでともに混合されてブレンドされた難燃性組成物を形成する工程を含む。
【0032】
前述の3つのプロセス、即ち、中間塩錯体方法、緊密塩混合物方法、及び、別々に得られた難燃性材料のブレンドによって得られる混合物の正確な組成は、一般的に、同一のホスホン酸化合物及び金属から出発する場合でさえも、異なるものとなる。このように、一般的には、異なる方法の生成物における物理的特徴、安定性、混和性、及び性能の違いに直面する。
【0033】
本発明の難燃性組成物のポリマーは、ポリオレフィンホモポリマー及びコポリマー、ゴム、ポリエステル、エポキシ樹脂、ポリウレタン、ポリアルキレンテレフタル酸、ポリスルホン、ポリイミド、ポリフェニレンエーテル、スチレンポリマー及びコポリマー、ポリカーボネート、アクリルポリマー、ポリアミド、ポリアセタール、エポキシ樹脂、及び生分解性ポリマーなどの、当技術分野において周知の任意のポリマーであることができる。又、ポリフェニレンエーテル/スチレン樹脂ブレンド物、ポリ塩化ビニル/ABS、又はメタクリロニトリル及びα−メチルスチレンを含有するABS、並びにポリエステル/ABS又はポリカーボネート/ABSなどのその他の衝撃改質ポリマー、並びにポリエステルといくつかのその他の衝撃改質剤などの、異なるポリマーの混合物が使用されることができる。こうしたポリマーは、当技術分野において周知の手段によって市販又は製造される。
【0034】
本発明の難燃剤は、例えば、HIPSを含むスチレンポリマー、ポリオレフィン、ポリエステル、ポリカーボネート、ポリアミド、ポリウレタン、ポリフェニレンエーテル等などの、高温で加工及び/又は使用される熱可塑性ポリマーに特に有用である。
【0035】
例えば、ポリマーは、ポリエステル系樹脂、スチレン樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、ポリフェニレンオキシド系樹脂、ビニル系樹脂、オレフィン樹脂、アクリル樹脂、エポキシ樹脂、又はポリウレタンであることができる。ポリマーは、熱可塑性又は熱硬化性樹脂であることができ、例えば、ガラス強化などで強化されることができる。複数のポリマー樹脂が存在することができる。特定の実施形態においては、ポリマーは、例えば、熱可塑性ポリマーなどの、又は、例えば、ガラス充填ポリアルキレンテレフタル酸などのガラス充填ポリエステル、若しくはガラス充填ポリアミドなどの、任意選択によりガラス充填されたポリエステル、エポキシ樹脂、若しくはポリアミドなどの、ガラス強化熱可塑性ポリマーなどの、強化熱可塑性ポリマーなどの、エンジニアリングポリマーである。
【0036】
ポリエステル系樹脂は、例えば、ポリブチレンテレフタレート又はポリエチレンテレフタレートなどの、芳香族飽和ポリエステル系樹脂などの、例えば、ジカルボン酸成分とジオール成分の重縮合、並びに、ヒドロキシカルボン酸又はラクトン成分の重縮合によって得られるホモポリエステル及びコポリエステルを含む。
【0037】
ポリアミド系樹脂は、ジアミン及びジカルボン酸から得られるポリアミド、必要に応じてジアミン及び/又はジカルボン酸と組み合わされてアミノカルボン酸から得られるポリアミド、並びに、必要に応じてジアミン及び/又はジカルボン酸と組み合わされてラクタムから得られるポリアミドを含む。又、ポリアミドは、少なくとも2つの異なる種類のポリアミド構成成分から得られるコポリアミドを含む。ポリアミド系樹脂の例としては、ナイロン46、ナイロン6、ナイロン66、ナイロン610、ナイロン612、ナイロン11、及びナイロン12などの脂肪族ポリアミド、例えば、テレフタル酸及び/又はイソフタル酸などの芳香族ジカルボン酸、並びに、例えば、ヘキサメチレンジアミン又はノナメチレンジアミンなどの脂肪族ジアミンから得られるポリアミド、並びに、例えば、テレフタル酸及びアジピン酸の両方などの芳香族及び脂肪族ジカルボン酸の両方、並びに、例えば、ヘキサメチレンジアミン等などの脂肪族ジアミンから得られるポリアミドが挙げられる。これらのポリアミドは、単独で又は組み合わされて使用されることができる。
【0038】
少なくとも280℃の融点を有するポリアミドは、例えば、電気及び電子産業における、高温での優れた寸法安定性、及び、非常に良好な難燃性特性を有する、成形品の製造を可能にする成形組成物の製造に広範囲に使用される。例えば、この種類の成形組成物は、いわゆる表面実装技術、SMTに従って、印刷回路基板に載置される構成要素を製造するために電子産業において求められている。この用途においては、これらの構成要素は、寸法変化のない短期間の間、270℃までの温度に耐えなければならない。
【0039】
こうした高温ポリアミドは、ポリアミド4,6とも称されるナイロン4,6として、アルキルアミン及び酸から生成する特定のポリアミドを含むが、多くの高温ポリアミドは、芳香族及び半芳香族ポリアミド、即ち、ホモポリマー、コポリマー、ターポリマー、又は芳香族基を含むモノマーから得られるより高次のポリマーである。単一の芳香族若しくは半芳香族ポリアミドが使用されることができ、又は、芳香族及び/若しくは半芳香族ポリアミドのブレンド物が使用される。前述のポリアミド及びポリアミドのブレンド物は、脂肪族ポリアミドを含む、その他のポリマーとともにブレンドされることも可能である。
【0040】
これらの高温芳香族又は半芳香族ポリアミドの例としては、ナイロン4T、ポリ(m−キシリレンアジパミド)(ポリアミドMXD,6)、ポリ(ドデカメチレンテレフタルアミド)(ポリアミド12,T)、ポリ(デカメチレンテレフタルアミド)(ポリアミド10,T)、ポリ(ノナメチレンテレフタルアミド)(ポリアミド9,T)、ヘキサメチレンアジパミド/ヘキサメチレンテレフタルアミドコポリアミド(ポリアミド6,T/6,6)、ヘキサメチレンテレフタルアミド/2−メチルペンタメチレンテレフタルアミドコポリアミド(ポリアミド6,T/D,T)、ヘキサメチレンアジパミド/ヘキサメチレンテレフタルアミド/ヘキサメチレンイソフタルアミドコポリアミド(ポリアミド6,6/6,T/6,I)、ポリ(カプロラクタム−ヘキサメチレンテレフタルアミド)(ポリアミド6/6,T)、ヘキサメチレンテレフタルアミド/ヘキサメチレンイソフタルアミド(6,T/6,I)コポリマー等が挙げられる。
【0041】
従って、本発明の特定の具体的な実施形態は、例えば、280℃以上、300℃以上などの、いくつかの実施形態においては、320℃以上、例えば、280〜340℃などの、高温で溶融する、ポリアミド4,6並びに前述の芳香族及び半芳香族ポリアミドなどの、ポリアミドを含む組成物、本発明の高温ポリアミド及び難燃性材料を含む物品、組成物を調製する方法、並びに物品を成形する方法に関する。
【0042】
難燃剤(b)は、単独の難燃剤として、又は、その他の難燃剤、共力剤、又は助剤と組み合わされて、ポリマー系において優れた活性を示す。ポリマー組成物における本発明の難燃剤の濃度は、最終的なポリマー組成物に見られる難燃剤、ポリマー、及びその他の成分の正確な化学組成に当然ながら依存する。例えば、ポリマー配合物の単独の難燃性成分として使用される場合、本発明の難燃剤は、最終組成物の総重量の1〜50重量%、例えば、1〜30重量%などの濃度で存在することができる。典型的には、単独の難燃剤として使用される場合、例えば、3%以上、5%以上、10%以上、15%以上、20%以上、又は25%以上などの、少なくとも2%の本発明の材料が存在することになる。多くの実施形態においては、本発明の難燃剤は、45%までの量で存在し、一方、その他の実施形態においては、本発明の難燃剤の量は、ポリマー組成物の、例えば35%以下などの40%以下である。明らかに、その他の難燃剤又は難燃剤共力剤と組み合わされて使用される場合、より少量の本発明の材料が必要となるであろう。
【0043】
任意の周知の配合技術が、本発明の難燃性ポリマー組成物を調製するために使用されることができ、例えば、難燃剤は、ブレンド、押し出し、繊維又はフィルム形成等によって溶融ポリマーに組み込まれることができる。場合によっては、難燃剤は、ポリマー形成又は硬化の時点で、ポリマーに組み込まれ、例えば、本発明の難燃剤は、架橋の前にポリウレタンプレポリマーに加えられることができる、又は、ポリアミド形成の前にポリアミン若しくはアルキル−ポリカルボキシル化合物に、又は、硬化の前にエポキシ混合物に加えられることができる。
【0044】
本発明のその他の実施形態は、難燃性材料、及び難燃性材料とその他の成分の相乗的ブレンド物に関する。本発明の難燃剤は、例えば、220℃以上などの200℃以上の温度で、一般的には、例えば、250℃〜400℃、又は、260℃〜360℃などの250℃以上の温度で、前述で定義された通り、複数の式(I)のホスホン酸塩を加熱することによって得られる。前述のように、列挙された温度で式(I)の化合物を加熱することによって生成される材料は、その1つ以上が実験式(IV)
【化6】
によって一般的に表されると考えられる、化合物又は化合物の混合物であると考えられる。
【0045】
式(I)のホスホン酸塩は周知であり、且つ、それらの調製のための様々な方法が、当技術分野において記載されている。例えば、米国特許出願公開第2006/0138391号明細書では、式(I)(式中、Rは、水素、C
1〜18アルキル、C
5〜6シクロアルキル、C
2〜6アルケニル、C
6〜10アリール、又はC
7〜11アラルキルであり、このアルキル、アルケニル、アリール、若しくはアラルキルは、非置換、又は、ハロゲン、ヒドロキシル、アミノ、C
1〜4アルキルアミノ、ジ−C
1〜4アルキルアミノ、C
1〜4アルコキシ、カルボキシ、若しくはC
2〜5アルコキシカルボニルによって置換可能であり、且つ、Mは、例えば、Li、K、Na、Mg、Ca、Ba、Zn、Ge、B、Al、Cu、Fe、Sn、又はSb等などの、例えば、周期表のIA、IB、IIA、IIB、IIIA、IVA、VA、又はVII族などから選択されることができる)の化合物を開示している。米国特許出願公開第2006/0138391号明細書では、前述の式(I)に対応する化合物のいずれも、200℃を超えて加熱されていなく、又は、高温でポリマー樹脂に配合されていないことに留意されたい。米国特許出願公開第2006/0138391号明細書で実際に例示された唯一の塩は、メチルメチルホスホン酸のアルミニウム塩、即ち、RとR’がメチルである、前述の式(Ia)の化合物の塩、即ち、
【化7】
である。
【0046】
本発明の難燃剤のための出発原料、即ち、式(I)の化合物は、米国特許出願公開第2006/0138391号明細書及び当技術分野において開示された塩から都合よく選択可能である。又、本発明に有用である式(I)の化合物は、アルキルによって置換されたアリールなどの、米国特許出願公開第2006/0138391号明細書に見受けられないその他のR基を含むことができ、且つ、そこに特に記載されていない金属カチオンを含む式(I)の化合物が、出発材料として有用であることが可能である。
【0047】
本発明のいくつかの実施形態においては、式(I)の塩は、Rは、C
1〜12アルキル、C
6〜10アリール、C
7〜18アルキルアリール、又はC
7〜18アリールアルキル基であり、前述の基は、米国特許出願公開第2006/0138391号明細書に記載の通り更に置換されているが、多くの場合、Rは、非置換C
1〜12アルキル、C
6〜10アリール、C
7〜18アルキルアリール、又はC
7〜18アリールアルキルである化合物を含む。例えば、Rは、置換又は非置換であり、典型的には非置換の、例えば、C
1〜4アルキル、C
6アリール、C
7〜19アルキルアリール、又はC
7〜10アリールアルキルなどの、C
1〜6アルキル、C
6アリール、C
7〜10アルキルアリール、又はC
7〜12アリールアルキルである。
【0048】
本発明の最も一般的な実施形態においては、M
(+)yは、ほとんど任意の金属カチオンであることができる一方、Mは、一般的には、例えば、Li、K、Na、Mg、Ca、Ba、Zn、Zr、B、Al、Si、Ti、Sn、又はSbなどの、例えば、Li、K、Na、Mg、Ca、Ba、Zn、Zr、Ge、B、Al、Si、Ti、Cu、Fe、Sn、又はSbから選択され、多くの実施形態においては、Mは、Li、K、Na、Mg、Ca、Ba、Zn、Zr、B、Al、Sn、又はSbであり、且つ、特定の実施形態においては、Mは、Al、Zn、又はCaである。例えば、MがAl又はCaである場合、優れた結果が実現される。
【0049】
アルキルとしてのRは、特定の数の炭素を有する直鎖型又は分岐型のアルキル基であり、例えば、メチル、エチル、プロピル、ブチル、ペンチル、ヘキシルヘプチル、オクチル、ノニル、デシル、ウンデシル、ドデシルなどの非分岐型のアルキル、且つ、イソプロピル、イソ−ブチル、sec−ブチル、t−ブチル、エチルヘキシル、t−オクチル等などの非分岐型のアルキルを含む。例えば、アルキルとしてのRは、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、イソブチル、sec−ブチル、t−ブチルであり、多くの場合、Rは、メチル、エチル、プロピル、又はイソプロピル、例えば、メチルである。
【0050】
典型的には、Rがアリールである場合、Rはフェニル又はナフチル、例えば、フェニルである。アルキルアリールとしてのRの例は、例えば、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、イソブチル、sec−ブチル、t−ブチル等から選択される基などの、1つ以上のアルキル基によって置換されるフェニルを含む。アリールアルキルとしてのRの例は、例えば、ベンジル、フェネチル、スチリル、クミル、フェノールプロピル等を含む。
【0051】
一実施形態においては、Rは、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、フェニル又はベンジル、例えば、メチル又はフェニルである。
【0052】
特定の実施形態においては、例えば、出発原料は、Rはメチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ベンジル、又はフェニルであり、Mは、Al、Zn、又はCaであり、且つ、pは2又は3である、式(I)の化合物である。特定の一実施形態においては、Rは、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、又はフェニルであり、p=3、且つ、MはAlであり、別の特定の実施形態においては、Rは、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、又はフェニルであり、p=2、且つ、Mは、Zn又はCa、例えば、Caである。
【0053】
特定の実施形態においては、少なくとも1つのRは、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、イソブチル、sec−ブチル、t−ブチル、及びフェニルから選択され、且つ、少なくとも1つのMは、Al、Zn、及びCaから選択される。特定の実施形態においては、Rはそれぞれ、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、イソブチル、sec−ブチル、t−ブチル、及びフェニルから選択され、且つ、Mはそれぞれ、Al、Zn、及びCaから選択される。
【0054】
式(I)のホスホン酸塩を本発明の難燃剤に変換するために必要な時間は、例えば、出発となるホスホン酸塩の化学構造、反応の温度、その他の反応条件等を含む、様々な要因によって変動することとなる。例えば、より高い温度は、より速い反応時間に結びつくことができる。水は、反応の間に生成し、又、吸水又は真空によって反応時間を削減することができると考えられる。又、反応容器の設計、加熱の間のその他の材料の存在等は、反応の時間に影響を与える場合がある。
【0055】
例えば、少なくとも200℃、220℃、250℃以上の温度で、20時間以下、典型的には12時間未満の間、良好な変換は、式(I)のホスホン酸塩を加熱することによって多くの場合、得られる。特定の状況においては、時間は、極めて短い時間であることができ、出発原料に対する伝熱を非常に効率的にする反応容器又は環境において、例えば、250℃〜400℃又は400℃を超える温度などの、より高い温度を使用することで、例えば、0.2時間未満、0.1時間、又は0.01時間以下などに、反応時間を大きく減少させることができ、且つ、数秒以下で測定される完全な反応時間が可能である。
【0056】
前述のように、完全な変換のための時間は、温度に依存することになるが、一般的には、本発明の難燃剤への完全な変換は、200℃〜400℃の温度で、0.01〜20時間又は0.2〜20時間、多くの場合、0.1〜12時間又は0.2〜12時間、又は、1〜8時間、出発となるホスホン酸塩を加熱することによって得られる。例えば、250℃〜400℃で式(I)のホスホン酸塩を加熱することは、例えば、1〜8時間などの12時間未満の加熱を必要とすることになる。出発となるホスホン酸塩が、1〜6時間、例えば2〜6時間、260℃〜340℃で加熱される場合、優れた結果を得ている。
【0057】
例えば、トリス−[メチルホスホン酸]アルミニウム塩、即ち、Rがメチルである式(III)
【化8】
の水溶性固体化合物は、2〜6時間、250〜320℃の温度で加熱されて、出発材料とは対照的に、水溶性でない400℃を超える温度で安定である固体材料を形成する。より高い反応温度が使用可能であるが、この例で見られるように、4時間、280℃で加熱すると優れた結果を得る。
【0058】
同様に、トリス−[エチルホスホン酸]アルミニウム塩、即ち、Rがエチルである式(III)の化合物、又は、トリス−[フェニルホスホン酸]アルミニウム塩、即ち、Rがフェニルである式(III)の化合物を同様の条件下で加熱することは、同様のエチル及びフェニルを含む難燃性材料につながる。
【0059】
前述のように、1つのR基及び1つの金属が存在する式(I)の単一化合物から出発する場合でさえも、典型的には、式(IV)の少なくとも1つの化合物を含む化合物の混合物を形成し、この場合に、前述の混合物及び前述の化合物又は式(IV)の化合物は、1つのR基及び1つの金属を含む。本発明の特定の実施形態においては、難燃性材料は、複数のR基及び/又は複数の金属が存在し、且つ、複数のR基及び/又は複数の金属を含む式(IV)の化合物の混合物が存在する化合物の混合物を含む。複数のR基及び/又は複数の金属を含む化合物を含む本発明の難燃剤は、様々な方法で形成されることができる。
【0060】
中間塩錯体方法によれば、1つ以上のホスホン酸化合物は、例えば、単一の容器において、1つ以上の適切な金属化合物で処理されて、式(I)に対応する中間塩錯体を生成し、この錯体は、R及び/又はMの複数の値を含む。多くの場合、金属、又は、中間塩錯体の形成に使用される金属の少なくとも1つは、二座金属又は多座金属であり、且つ、複数の中間錯体が形成されることができる。次いで、この塩錯体は、前述の通り熱処理されて、
a)複数のR基及び/又は複数のM基を有する式(IV)に対応する少なくとも1つの化合物、及び/又は、
b)異なるR基及び/又は異なるM基を有する化合物を含む、式(IV)に対応する化合物の混合物を含む、難燃性材料を得る。
【0061】
例えば、中間塩錯体方法によれば、例えば、有機溶媒、水、又は、有機溶媒と水の混合物などの溶媒における、例えば、メチルホスホン酸とエチルホスホン酸の混合物、又はメチル及びフェニルホスホン酸などの、式(Ib)
【化9】
(式中、Rは、前述の式(I)において定義される通りである)の2つ以上の異なるホスホン酸の単一の溶液又は懸濁液は、炭酸カルシウム、アルミニウムトリエトキシド等などの適切な金属化合物で処理されて、本発明の難燃剤を得るために単離及び乾燥の際に加熱される塩及び塩錯体の中間混合物を形成する。
【0062】
当然ながら又、式(Ib)の単一のホスホン酸を2つ以上の金属化合物で処理することによって、又は、2つ以上のホスホン酸と2つ以上の金属化合物を混合することによって、適切な中間体は形成されることができる。
【0063】
緊密塩混合物方法においては、式(1b)の2つ以上の異なるホスホン酸は、金属化合物で個々に処理されて、式(Ia)の塩の個々の部分を初めに形成し、次いで、すでに別々に形成された塩は、組み合わされて、例えば、溶液中の塩の混合物などの混合物を形成し、次いで、この混合物は、溶媒の蒸留などの標準的な方法によって単離され、次いで、加熱されて本発明の難燃剤を形成する。溶液を濃縮すること及び懸濁した塩を濾過すること、塩の粉砕又は単離した塩を物理的に混合することなどの、その他の単離方法が使用可能であるが、蒸留を介して溶液から溶媒を除去することによって、より大きな稠度が予想される。
【0064】
前述のように、又、適切な緊密塩混合物は、式(Ib)の単一のホスホン酸を2つ以上の金属化合物で別々に処理することによって、又は、式(Ib)の2つ以上のホスホン酸の分離した混合物を2つ以上の金属化合物等で別々に処理することによって、形成されることができるが、こうしたシステムは、非常に高い程度の複雑さを生じさせる場合がある。
【0065】
特に1つ以上の二座金属又は多座金属が使用される場合、本発明に従ってその後に加熱される、中間塩錯体方法からの塩及び塩錯体の中間混合物は、緊密塩混合物方法に従う場合に生成しその後に加熱される塩の混合物と多くの場合に異なることとなることを、当業者は容易に理解できよう。更に、難燃剤が1つ以上のR基又は金属を含む出発原料から生成されるこれらの2つの方法のいずれかは、本発明の高温への曝露の前に、R及び/又はMの異なる値を有することで異なる、式(I)の個々の金属ホスホン酸塩を別々に加熱し、次いで、得られた組成物をブレンドすることによって、容易に得られない生成物を生成する傾向が高くなる。
【0066】
このように、本発明の難燃性材料を調製する様々な方法は、異なる物理的特徴、安定性、混和性、及び/又は難燃性能を有する多種多様な混合物を合成する際に1つの大きな柔軟性を与える。
【0067】
一般的には、出発材料として使用される、選択されたホスホン酸金属塩又は塩の混合物は、その他の材料の不在下で加熱される。しかしながら、水は、反応の際、出発材料から除去されると考えられることから、典型的には、添加される水の存在は回避されるが、例えば、不活性担体、別の難燃剤、又はその他の可能性のある添加剤等の存在下でこれらの塩を加熱することができるであろう。例えば、出発材料は、200℃を超える加熱の前に、その他の難燃性材料、ポリマー安定剤、又はその他の周知のポリマー添加剤と混合されることができる。又、塩の熱変換は、不活性担体としての少量のポリマーの存在下で行われることができるが、出発となる塩の変換がその他の材料の存在下で妨げられる状況を回避するよう注意しなければならない。例えば、ポリマー又はその他の材料は、反応温度下で溶融し、塩を被覆し、又は更に、塩と反応し望ましくない結果をもたらす場合がある。
【0068】
多くの実施形態においては、従って、化合物、又は、式(I)の化合物は、その他の成分の不在下で熱処理を受ける。ポリマー又はその他の不活性担体が、反応の際、存在する場合、例えば、50重量%未満、又は、25重量%未満のホスホン酸金属塩とポリマーの組合せ、典型的には10重量%未満、例えば、5重量%未満、又は、0〜2重量%などのホスホン酸金属塩の量未満である量で存在する。式(I)の塩が反応において水を遊離すると考えられることから、加水分解を受けることができるポリマーを含む、高温で水の存在下において不安定である材料の存在下で、200℃を超えて塩を加熱することを回避することが望ましい。
【0069】
本発明によれば、保護することになるポリマーのバルクに組み込まれる前に、ホスホン酸金属塩又は式(I)の塩は、異なるより熱的に安定な難燃性材料に熱的に変換される。難燃剤としても周知である、式(I)の塩とは対照的に、本発明の難燃剤は、200℃を超える加工温度で安定であり、且つ、例えば、反応及び開裂を受け易い結合を含むポリエステル及びポリアミドなどのポリマーに、負の影響を与える場合がある反応を受けない。例えば、ポリアルキレンフタレート、ポリアミド、及び多くのその他の縮合ポリマーは、高温で加工される。高温で、式(I)の塩は、見かけ上、水を遊離する反応を受け、これは、エステル又はアミド結合での加水分解をもたらし、鎖の開裂、並びに分子量及び所望の物理的特性の損失をもたらす。
【0070】
本発明の難燃剤は、当技術分野において周知である、様々なその他の難燃剤、共力剤、又は難燃剤助剤とともに使用されることができる。例えば、本発明の難燃剤は、カーボンブラック、黒鉛、カーボンナノチューブ、シリコーン、ポリフェニレンエーテル(PPE)、例えば、ベンジルホスフィンオキシド、ポリベンジリックホスフィンオキシド等などの、ホスフィンオキシド及びポリホスフィンオキシド、メラミン、これらに限定されるものではないが、シアヌル酸メラミン、ホウ酸メラミン、リン酸メラミン、金属リン酸メラミン等などの、メラミン誘導体及び縮合生成物、メラミン塩、粘土、水酸化物、酸化物、酸化物水和物、ホウ酸、炭酸、硫酸、リン酸、亜リン酸、次亜リン酸、ケイ酸などの金属塩、例えば、タルクなどの混合金属塩等、並びにその他のケイ酸マグネシウム、ケイ酸カルシウム、アルミノケイ酸、中空管(DRAGONITE)としてのアルミノケイ酸、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、硫酸バリウム、硫酸カルシウム、HALLOYSITE又はリン酸ホウ素、モリブデン酸カルシウム、剥離バーミキュライト、スズ酸亜鉛、ヒドロキシ錫酸亜鉛、硫化亜鉛、並びにホウ酸亜鉛、モリブデン酸亜鉛(KEMGARD 911A/B)、リン酸亜鉛(KEMGARD 981)、酸化マグネシウム又は水酸化物、酸化アルミニウム、酸化アルミニウム水酸化物(ベーマイト)、アルミニウム三水和物、シリカ、酸化スズ、酸化アンチモン(III及びV)、並びに酸化物水和物、酸化チタン、並びに酸化亜鉛又は酸化物水和物、酸化ジルコニウム及び/又はジルコニウム水酸化物等を含む無機化合物
から選択される1つ以上の材料と配合されることができる。
【0071】
特に指定されない限り、本出願の文脈においては、金属リン酸、リン酸メラミン、金属リン酸メラミン等におけるなどの、「リン酸塩」における成分として使用される場合、「リン酸」という用語は、リン酸、リン酸水素、リン酸二水素、ピロリン酸、ポリリン酸、又は、リン酸縮合生成物アニオン若しくはポリアニオンを意味する。
【0072】
同様に、特に指定されない限り、本出願の文脈においては、金属亜リン酸塩等におけるなどの、「亜リン酸塩」における成分として使用される場合、「亜リン酸」という用語は、亜リン酸又は亜リン酸水素を意味する。
【0073】
又、本発明の難燃剤は、ハロゲン化難燃剤、アルキル又はアリールホスフィンオキシド難燃剤、アルキル又はアリールリン酸塩難燃剤、アルキル又はアリールリン酸、アルキル又はアリールホスフィン酸、及びアルキル又はアリールホスフィン酸の塩などの、その他の難燃剤と配合されることができる。特定の一実施形態は、本発明の難燃剤と、例えば、アルミニウムトリス(ジアルキルホスフィナート)などの式(II)のホスフィン酸塩の相乗的混合物を提供する。
【0074】
このように、多くの実施形態においては、本発明による難燃性ポリマー組成物は、ポリマー(a)と、難燃剤(b)とを含み、且つ、(c)1つ以上の更なる難燃剤及び/又は1つ以上の共力剤又は難燃剤助剤を更に含む。
【0075】
例えば、いくつかの実施形態においては、難燃性ポリマー組成物は、例えば、ハロゲン化難燃剤、ホスフィンオキシド難燃剤、アルキル若しくはアリールホスホン酸、又は、例えば、アルミニウムトリス(ジエチルホスフィナート)などの、アルミニウムトリス(ジアルキルホスフィナート)などのアルキル若しくはアリールホスフィン酸の塩などの1つ以上の更なる難燃剤を含む。
【0076】
いくつかの実施形態においては、難燃性ポリマー組成物は、1つ以上の、例えば、メラミン、メラミン誘導体及び縮合生成物、メラミン塩、ホスフィンオキシド及びポリホスフィンオキシド、例えば、亜リン酸水素アルミニウムなどの、水酸化物、酸化物、酸化物水和物、ホウ酸、リン酸、亜リン酸、ケイ酸等などの金属塩、例えば、金属リン酸メラミンなどの金属リン酸メレム又は金属リン酸メラミンなどの共力剤又は難燃剤助剤を含み、この場合に、金属は、アルミニウム、マグネシウム、又は亜鉛を含む。特定の実施形態においては、1つ以上の、更なる難燃剤、共力剤、又は難燃剤助剤は、アルミニウムトリス(ジアルキルホスフィナート)、亜リン酸水素アルミニウム、メチレン−ジフェニルホスフィンオキシド置換ポリアリールエーテル、キシリレンビス(ジフェニルホスフィンオキシド)、4,4’−ビス(ジフェニルホスフィニルメチル)−1,1’−ビフェニル、エチレンビス−1,2−ビス−(9,10−ジヒドロ−9−オキシ−10−ホスファフェナントレン−10−オキシド)エタン、メレム、メラム、又は亜鉛ピロリン酸ジメラミンを含む。
【0077】
特定の一実施形態は、本発明の難燃剤及びトリス(ジエチルホスフィン酸)アルミニウムを含む相乗的混合物に関する。
【0078】
例えば、本発明の難燃剤は、更なる難燃剤、共力剤、及び助剤の総重量に対して本発明の難燃剤の100:1〜1:100の重量の範囲において、更なる難燃剤、共力剤、又は助剤と組み合わされることができる。更なる難燃剤、共力剤、又は助剤に応じて、更なる難燃剤、共力剤、及び/又は助剤に対して難燃剤の10:1〜1:10の重量の範囲を用いて、優れたものを得ることができ、例えば、7:1〜1:7、6:1〜1:6、4:1〜1:4、3:1〜1:3、及び2:1〜1:2の範囲の重量比が良好に使用される。典型的には、本発明の難燃剤は、例えば、更なる難燃剤、共力剤、及び/又は助剤に対して本発明の難燃性材料の10:1〜1.2:1の重量比、又は、7:1〜2:1の重量比などのこうした組合せにおける主要な成分であるが、又、本発明の材料は、例えば、更なる難燃剤、共力剤、及び/又は助剤に対して難燃剤の1:10〜1:1.2の比、又は、1:7〜1:2の比などの、混合物の少量の成分であることができる。
【0079】
典型的には、本発明の難燃性ポリマー組成物は、フェノール系酸化防止剤、ヒンダードアミン光安定化剤(HALS)、紫外線吸収剤、亜リン酸、亜ホスホン酸、脂肪酸のアルカリ金属塩、ハイドロタルサイト、金属酸化物、ホウ酸、エポキシ化大豆油、ヒドロキシルアミン、第三アミンオキシド、ラクトン、第三アミンオキシドの熱反応生成物、硫黄共力剤、例えば、メラミン、メレム等などの基本的な補助安定化剤、ポリビニルピロリドン、ジシアンジアミド、シアヌル酸トリアリル、尿素誘導体、ヒドラジン誘導体、アミン、ポリアミド、ポリウレタン、ハイドロタルサイト、例えば、ステアリン酸カルシウム、ステアロイル乳酸カルシウム、乳酸カルシウム、ステアリン酸亜鉛、オクチル酸亜鉛、ステアリン酸マグネシウム、リシノール酸ナトリウム、及びパルミチン酸カリウムなどの、高級脂肪酸のアルカリ金属塩及びアルカリ土類金属塩、ピロカテコール酸アンチモン又はピロカテコール酸亜鉛、核形成剤、清澄剤等などの、1つ以上の通常の安定化剤、又は、当技術分野において見受けられる場合が多いその他の添加剤を含むこととなる。
【0080】
又、例えば、可塑剤、潤滑油、乳化剤、顔料、染料、蛍光増白剤、その他の防炎加工剤、帯電防止剤、膨張剤、例えばPTFEなどの防滴剤等などの、その他の添加剤が存在することができる。
【0081】
場合により、ポリマーは、例えば、炭酸カルシウム、ケイ酸、ガラス繊維、タルク、カオリン、雲母、硫酸バリウム、金属酸化物及び水酸化物、カーボンブラック及び黒鉛などの、充填剤及び強化剤を含むことができる。こうした充填剤及び強化剤は、充填剤又は強化剤が、最終組成物の重量に基づいて50重量%を超える濃度で存在する配合物を含む、比較的高濃度で多くの場合存在することができる。より典型的には、充填剤及び強化剤は、全ポリマー組成物の重量に基づいて、例えば、10〜40重量%又は15〜30重量%などの5〜50重量%で存在する。
【実施例】
【0082】
比較例1
96.0gのメチルホスホン酸(1.00モル)を210mLの脱イオン水に溶解した溶液に、54.1gのアルミニウムエトキシド(0.334モル)を、窒素下にてゆっくりと加える。次いで、反応混合物を、室温で16時間、撹拌する。その後、溶液を真空にて100℃で濃縮し乾燥して無色透明の固体を得る。熱分析は、約250℃で始まる1モルの水の損失を示した。元素分析:29.8%のリン、9.0%のアルミニウム、計算値29.8%のリン、8.7%のアルミニウム
【0083】
3ピースブラベンダー測定ヘッド(three piece Brabender measuring head)を備えたハーケレオコード90(Haake Rheocord 90)を使用して、20部の塩と30部のガラスを50部のポリアミド66に配合した。配合の際、トルクの減少が観察され、これは、ポリマーの劣化をおそらく意味しており、冷却の際に砕けやすく、且つ、粉砕後に粉末状であった、湿った新聞に類似した材料をもたらした。ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)及び示差走査熱量測定(DSC)による成形できなかった配合された材料の分析では、劣化の更なる証拠をもたらした。
【0084】
実施例1−メチルホスホン酸アルミニウム塩、FR−INV1からの難燃剤
48.0gのメチルホスホン酸(500ミリモル)を210mlの脱イオン水に溶解した冷却した溶液に、27.0gのアルミニウムエトキシド(167ミリモル)を、窒素下にてゆっくりと加える。次いで、反応を室温まで温め、16時間、撹拌する。その後、溶液を真空にて100℃で濃縮し乾燥して無色透明の固体を得る。熱分析は、約250℃で始まる1モルの水の損失を示した。無色の固体を280℃で4時間、加熱し、400℃を超えて安定であるオフホワイトの固体を得た。元素分析:31.5%のリン、9.0%のアルミニウム
【0085】
比較例2
37.9gのエチルホスホン酸(344ミリモル)を150mLの脱イオン水に溶解した撹拌溶液に、27.7gの塩化アルミニウム6水和物(115ミリモル)を150mlの脱イオン水に溶解した溶液を加える。次いで、溶液を真空にて濃縮して水及び塩酸を除去する。真空オーブンにて130℃で乾燥させることで、白色粉体を得る。熱分析は、約200℃で始まる1モルの水の損失を示した。元素分析:25.0%のリン、6.9%のアルミニウム
【0086】
ハーケレオコード90を使用して、20部の塩と30部のガラスを50部のポリアミド66に配合した。配合全体を通して低いトルクが観察され、これは、ポリマーの劣化をおそらく意味しており、試験の終わりに向けて配合物がボウルから膨張し、排出された気体に起因する発泡した、冷却の際に砕けやすく、且つ、粉砕後に粉末状であった材料をもたらした。
【0087】
実施例2−エチルホスホン酸アルミニウム塩、FR−INV2からの難燃剤
149.5gのエチルホスホン酸(1.36モル)を500mlの脱イオン水に溶解した撹拌溶液に、109.3gの塩化アルミニウム6水和物(.453モル)を250mlの脱イオン水に溶解した溶液を加える。次いで、溶液を真空にて130℃で濃縮し乾燥して水及び塩酸を除去する。熱分析は、180℃で始まる1モルの水の損失を示した。225℃で3時間、乾燥させた塩を加熱することによって、約400℃まで安定である白色粉体を得る。元素分析:27.3%のリン、7.6%のアルミニウム
【0088】
実施例3−エチルホスホン酸カルシウム塩、FR−INV3からの難燃剤
52.1gのエチルホスホン酸(473ミリモル)を250mlの脱イオン水に溶解した撹拌溶液に、17.5gの水酸化カルシウム(236ミリモル)をゆっくりと加える。次いで、溶液を真空にて100℃で濃縮し乾燥する。熱分析は、220℃で始まる1モルの水の損失を示した。290℃で3時間、乾燥させた塩を加熱することによって、400℃を超えて安定である白色粉体を得る。元素分析:25.3%のリン、16.3%のカルシウム
【0089】
実施例4−メチルホスホン酸、エチルホスホン酸、及びアルミニウムエトキシドから生成した中間塩錯体からの難燃剤
メチルホスホン酸(250ミリモル)とエチルホスホン酸(250ミリモル)を脱イオン水に溶解した撹拌溶液に、27.0gのアルミニウムエトキシド(167ミリモル)を窒素下にて加え、その後、真空にて100℃で濃縮し乾燥させることによって中間塩錯体を得、280℃で4時間、加熱した後、本発明の難燃性材料を得る。
【0090】
実施例5−メチルホスホン酸、エチルホスホン酸、及び水酸化カルシウムから生成した中間塩錯体からの難燃剤
メチルホスホン酸(約225ミリモル)とエチルホスホン酸(約250ミリモル)を脱イオン水に溶解した撹拌溶液に、17.5gの水酸化カルシウム(約235ミリモル)を窒素下にて加え、その後、真空にて100℃で濃縮し乾燥させることによって中間塩錯体を得、290℃で3.5時間、加熱した後、本発明の難燃性材料を得る。
【0091】
実施例6−エチルホスホン酸、及びアルミニウムエトキシドと水酸化カルシウムの混合物から生成した中間塩錯体からの難燃剤
エチルホスホン酸(約500ミリモル)を脱イオン水に溶解した撹拌溶液に、アルミニウムエトキシド(約85ミリモル)と水酸化カルシウム(約120ミリモル)を窒素下にて同時に加え、その後、真空にて100℃で濃縮し乾燥させることによって中間塩錯体を得、290℃で4時間、加熱した後、本発明の難燃性材料を得る。
【0092】
実施例7〜11 ホスホン酸混合物及びアルミニウムエトキシドからの中間塩錯体からの難燃剤
実施例4のプロセスを、167ミリモルのアルミニウムエトキシド及び以下のホスホン酸の混合物を使用して繰り返す。
実施例7 400ミリモルのメチルホスホン酸と100ミリモルのエチルホスホン酸
実施例8 300ミリモルのメチルホスホン酸と200ミリモルのエチルホスホン酸
実施例9 200ミリモルのメチルホスホン酸と300ミリモルのエチルホスホン酸
実施例10 100ミリモルのメチルホスホン酸と400ミリモルのエチルホスホン酸
実施例11 450ミリモルのメチルホスホン酸と50ミリモルのフェニルホスホン酸
【0093】
実施例12−メチルホスホン酸、エチルホスホン酸、及びアルミニウムエトキシドから生成した中間塩錯体からの難燃剤
メチルホスホン酸(500ミリモル)を脱イオン水に溶解した撹拌溶液に、アルミニウムエトキシド(167ミリモル)を加えることによって調製した溶液を、エチルホスホン酸(500ミリモル)を脱イオン水に溶解した撹拌溶液に、アルミニウムエトキシド(167ミリモル)を加えることによって調製した溶液と混合し、その後、真空にて100℃で濃縮し乾燥させることによって中間塩混合物を得、280℃で4時間、加熱した後、本発明の難燃性材料を得る。
【0094】
実施例13−メチルホスホン酸、エチルホスホン酸、及び水酸化カルシウムから生成した緊密塩混合物からの難燃剤
メチルホスホン酸(473ミリモル)を脱イオン水に溶解した撹拌溶液に、水酸化カルシウム(236ミリモル)を加えることによって調製した溶液を、エチルホスホン酸(473ミリモル)を脱イオン水に溶解した撹拌溶液に、水酸化カルシウム(236ミリモル)を加えることによって調製した溶液と混合し、その後、真空にて100℃で濃縮し乾燥させることによって中間塩混合物を得、280℃で4時間、加熱した後、本発明の難燃性材料を得る。
【0095】
実施例14−エチルホスホン酸、及びアルミニウムエトキシドと水酸化カルシウムの混合物から生成した緊密塩混合物からの難燃剤
エチルホスホン酸(500ミリモル)を脱イオン水に溶解した撹拌溶液に、アルミニウムエトキシド(167ミリモル)を加えることによって調製した溶液を、エチルホスホン酸(473ミリモル)を脱イオン水に溶解した撹拌溶液に、水酸化カルシウム(236ミリモル)を加えることによって調製した溶液と混合し、その後、真空にて100℃で濃縮し乾燥させることによって中間塩混合物を得、280℃で4時間、加熱した後、本発明の難燃性材料を得る。
【0096】
実施例15〜19 ホスホン酸混合物及びアルミニウムエトキシドからの緊密塩混合物からの難燃剤
実施例12のプロセスを、167ミリモルのアルミニウムエトキシド及び以下のホスホン酸の混合物を使用して繰り返す。
実施例15 400ミリモルのメチルホスホン酸と100ミリモルのエチルホスホン酸
実施例16 300ミリモルのメチルホスホン酸と200ミリモルのエチルホスホン酸
実施例17 200ミリモルのメチルホスホン酸と300ミリモルのエチルホスホン酸
実施例18 100ミリモルのメチルホスホン酸と400ミリモルのエチルホスホン酸
実施例19 450ミリモルのメチルホスホン酸と50ミリモルのフェニルホスホン酸
【0097】
ハーケレオコード90を使用しガラスとともに、実施例1、2、及び3からの難燃剤、並びに様々な共力剤を含む配合物をポリアミド66に配合し、BabyPlast Mini−Molderを用いて1/16’’のバーを成形し、これを、標準UL94垂直燃焼試験に供した。配合物及び結果を下記の表1に列挙する。
【0098】
【表1】
【0099】
FR配合物に使用した共力剤:
共力剤1:アルミニウムトリス(ジエチルホスフィン酸)、Exolit(登録商標)OP 1230
【化10】
共力剤2:メチレン−ジフェニルホスフィンオキシド置換ポリアリールエーテル
【化11】
共力剤3:p−キシリレンビス(ジフェニルホスフィンオキシド)
【化12】
共力剤4:4,4’−ビス(ジフェニルホスフィニルメチル)−1,1’−ビフェニル
【化13】
共力剤5:1,2−ビス−(9,10−ジヒドロ−9−オキシ−10−ホスファフェナントレン−10−オキシド)エタン
【化14】
共力剤6:メレム、Delacal(登録商標)NFR HP
【化15】
共力剤7:亜リン酸水素アルミニウム
Al
2(HPO
3)
3
共力剤8:亜鉛ピロリン酸ジメラミン、Safire(登録商標)400
【化16】