(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【背景技術】
【0002】
従来、様々な場面で、圧力チャンバが用いられている。例えば内部空間を負圧にする真空チャンバは、半導体製造設備や、電子部品の製造設備、化学材料の製造設備等で利用される。例えば内部空間を正圧にする高圧チャンバは、ボイラや原子力発電設備等で利用される。
【0003】
図14に示す従来の圧力チャンバCは、第一筒部材T1と、第一筒部材T1の一方の端面に配置される第一蓋部材F1と、第一筒部材T1の他方の端面に配置される第二蓋部材F2と、第二蓋部材F2を介在させて第一筒部材T1の反対側に配置される第二筒部材T2と、第二筒部材T2の端面に配置される第三蓋部材F3を有する。結果、第一筒部材T1、第一蓋部材F1及び第二蓋部材F2によって第一圧力空間A1が形成され、第二筒部材T2、第二蓋部材F2及び第三蓋部材F3によって第二圧力空間A2が形成されるので、所謂多段構造となる。このような多段構造の圧力チャンバCも、半導体製造設備では多用される。
【0004】
圧力チャンバCにおいて部材を締結する構造について説明する。例えば、第一筒部材T1の端面には、タップによって複数の雌ねじ穴Hが直接形成される。一方、第一蓋部材F1には、この雌ねじ穴Hと一致するように複数の貫通孔Kが形成される。従って複数の雄ねじ体Oを、貫通孔Kを介して雌ねじ穴Hと螺合させることで、第一蓋部材F1と第一筒部材T1が結合される。
【0005】
第一筒部材T1と第一蓋部材F1の当接面の間には、第一筒部材T1の環状の端面に沿うようにして、複数の大径のシール材S1、S2、S3が配設される。具体的には、雄ねじ体Oと干渉しないように、その内側に二個のシール材S1、S2が配置され、外側には一個のシール材S3が配置される。このように、シール材S1、S2、S3を三重構造にすることで、第一筒部材T1と第一蓋部材F1の隙間から圧力が開放されないようにし、密閉性を高める構造となっている。なお、第一筒部材T1と第二蓋部材F2の間、第二蓋部材F2と第二筒部材T2の間、第二筒部材T2と第三蓋部材F3の間も同様の締結構造となっている。
【発明を実施するための形態】
【0030】
以下、本発明の実施の形態を、添付図面を参照して説明する。
【0031】
図1に、第一実施形態に係る圧力チャンバCの締結構造1を示す。なお、圧力チャンバC自体の構造は、使用目的等によって様々であるが、ここでは、二つの圧力空間A1、A2が隣接する二段構造の圧力チャンバCを紹介する。
【0033】
圧力チャンバCは、第一筒部材T1と、第一筒部材T1の一方の端面に配置される第一蓋部材F1と、第一筒部材T1の他方の端面に配置される第二蓋部材F2と、第二蓋部材F2を介在させて第一筒部材T1の反対側に配置される第二筒部材T2と、第二筒部材T2の他端面に配置される第三蓋部材F3を有する。これらの全ての材料は、金属材料で構成され、例えば、アルマイト処理されたアルミ合金が採用される。
【0034】
第一筒部材T1と、その両端の開口を覆う第一蓋部材F1及び第二蓋部材F2によって、第一圧力空間A1が形成される。また、第二筒部材T2と、その両端の開口を覆う第二蓋部材F2及び第三蓋部材F3によって、第二圧力空間A2が形成される。
【0035】
なお、ここでは特に図示しないが、第一圧力空間A1、第二圧力空間A2に対しては、真空又は加圧ポンプにより、所望の配管を通じて減圧乃至真空或いは負圧又は正圧が供給される。また、例えば第一乃至第三蓋部材F1、F2、F3には、開閉自在な扉等が設置され、第一及び第二圧力空間A1、A2に対して、処理対象部材(半導体材料や電子部品材料)等が搬入・搬出されたり、第一及び第二圧力空間A1、A2間を処理対象部材が搬送可能に構成してもよい。
【0037】
次に、圧力チャンバCの部材の締結構造1について説明する。なお、以下では、第一筒部材T1と第一蓋部材F1と第二蓋部材F2の締結構造1を説明するが、本締結構造1は、第二蓋部材F2と第二筒部材T2と第三蓋部材F3との締結にも適用され得る。
【0038】
第一筒部材T1には、一方の端面T1aから他方の端面T1bに亘って、軸方向に延びる第一筒側貫通孔H1が形成される。この第一筒側貫通孔H1は、第一筒部材T1の周方向に沿って複数形成される。
【0039】
第一筒部材T1の端面T1aを覆う第一蓋部材F1には、この第一筒側貫通孔H1の場所と一致するようにして、複数の第一蓋側貫通孔K1が形成される。
【0040】
端面T1aと、第一蓋部材F1の内側面F1inの間には、端面T1aに沿うようにして、複数の大径のシール材S1、S2、S3が挿入される。
【0041】
第一筒部材T1の端面T1bを覆う第二蓋部材F2には、第一筒側貫通孔H1の場所と一致するようにして、複数の第二蓋側貫通孔K2が形成される。
【0042】
端面T1bと、第二蓋部材F2の第一面F2aの間には、端面T1bに沿うようにして、複数の大径のシール材S1、S2、S3が挿入される。
【0043】
これらのシールS1、S2、S3は、後述する締結構造1と干渉しないように、その内側に二個のシール材S1、S2が配置され、外側には一個のシール材S3が配置される。これらの材料は、例えば、ポリテトラフルオロエチレン樹脂などが好ましいが、フッ化エチレン等の他の材料を採用しても良い。このように、シール材S1、S2、S3を三重構造にすることで、第一筒部材T1と第一蓋部材F1の隙間から圧力が開放されないようにし、密閉性を高める。また、シール材S1、S2、S3は、異種材としても同種材としてもよい。勿論、シール材は、必須ではなく、また三重構造にする必要はなく、シール材S1のみ、或いはシール材S1,S2,S3の何れか二つ、若しくは四つ以上のシール材を併用した四重以上のシール構造としてもよい。
【0044】
図2に拡大して示すように、第一蓋部材F1と第一筒部材T1と第二蓋部材F2を締結するねじ締結構造Nは、雄ねじ体Oと雌ねじ体Mを有する。雄ねじ体Oは、頭部20と軸部10を有しており、軸部10の先端側に雄ねじ溝(部)が形成される。軸部10は、第二蓋側貫通孔K2、第一筒側貫通孔H1、第一蓋側貫通孔K1に対してこの順に挿入される。結果、雄ねじ体Oの頭部20は、第二蓋部材F2の第二圧力空間A2側に配置され、軸部10の先端は、第一蓋部材F1の外側面F1out側に突出する。雌ねじ体Mは、第一蓋部材F1の外側面F1out側、即ち第一圧力空間A1の外部に配置されて、雄ねじ体Oの軸部10と螺合する。結果、ねじ締結構造Nは、雄ねじ体Oの頭部20と雌ねじ体Mによって、第一蓋部材F1と第一筒部材T1と第二蓋部材F2を挟持するように締結する。なお、ねじ締結構造Nは、表面又は材料自体が絶縁体であることが望まれることがあり、この場合、例えば、表面に絶縁被膜を形成したり、締結体自体を絶縁素材で構成して対応することが好ましい。
【0045】
ねじ締結構造Nは、雄ねじ体Oの頭部20に形成される雄ねじ用ねじ側座部20Aと、雌ねじ体Mの雌ねじ用ねじ側座部MAを有する。これらのねじ側座部20A,MAは、錐状又は部分球状であって、かつ、凸状のねじ側テーパ面となる。なお、本実施形態では、円錐状のテーパ面となっている。
【0046】
一方、第一蓋部材F1の第一蓋側貫通孔K1の外側近傍、即ち、外側面F1outにおける第一蓋側貫通孔K1の周囲には、第一蓋側座部K1Aが形成される。この第一蓋側座部K1Aは、錐状又は部分球状であって、かつ、凹状の蓋側テーパ面となる。同様に、第二蓋部材F2の第二蓋側貫通孔K2の第二圧力空間A2側の近傍、即ち、第二蓋部材F2の第二面F2bにおける第二蓋側貫通孔K2の周囲には、第二蓋側座部K2Aが形成される。この第二蓋側座部K2Aは、錐状又は部分球状であって、かつ、凹状の蓋側テーパ面となる。従って、第一蓋側座部K1Aと雌ねじ用ねじ側座部MAが互いに当接し、第二蓋側座部K2Aと雄ねじ用ねじ側座部20Aが互いに当接する。
【0047】
なお、蓋側テーパ面と、ねじ側テーパ面の傾斜角又は曲率半径を互いに一致させると、両者を面接触させることができる。一方で、例えば、凸状となるねじ側テーパ面の傾斜角を大きく又は曲率半径を小さくし、凹状となる蓋側テーパ面の傾斜角を小さく又は曲率半径を大きくすることで、互いに周方向に線接触又は幅の狭い面接触とできる。結果、締結力を局部に集中させることができるので、高い摩擦力及び密閉力を生じさせることも好ましい。
【0048】
第一及び第二蓋側座部K1A、K2Aと、雄ねじ用ねじ側座部20A及び雌ねじ用ねじ側座部MAの間には、それぞれ、シール部30が形成される。このシール部30は、例えば、ポリテトラフルオロエチレン樹脂の環状のシート材であり、第一筒側貫通孔H1及び雄ねじ体Oの軸部10を囲むように配置される。このシール部30によって、第一及び第二圧力空間A1、A2の圧力(正圧又は負圧)が、座面を介してリークすることを抑制する。なお、シール部30は、独立したシール部材の場合に限らず、第一筒側座部H1A、及び/又は、ねじ側座部20A、MAに一体的に形成されていても良い。
【0049】
雌ねじ体Mは、所謂キャップナットであり、内周面に雌ねじ溝が形成される雌ねじ穴が、有底構造となっている。従って、この雌ねじ穴から外部に圧力が漏れない。また、キャップナットとしての雌ねじ体Mの座部には、環状を成す、該雌ねじ体Mの座部に沿って、環状を成すシール材が配設されても好い。更に、環状を成す、該雌ねじ体Mの座部に沿って、環状に凹設される環状溝に、シール材を配設してもよい。
【0050】
以上、本実施形態の圧力チャンバCの締結構造1によれば、雄ねじ体Oと雌ねじ体Mによるねじ締結構造を採用していることから、雄ねじ体Oと雌ねじ体Mの強度を高めておくことにより、十分な軸力によって筒部材T1、T2と蓋部材F1、F2、F3を締結することができる。また、従来のように筒部材に直接雌ねじ穴に雄ねじ体を螺合させる構造ではないので、筒部材をアルミ等の比較的柔らかい材料を選定しても、十分な締結力を確保でき、またタップ加工時やボルト螺合時に発生する金属粉等のコンタミネーションを抑制できる。更に本実施形態によれば、仮にねじ締結構造Nが損傷しても、雄ねじ体Oと雌ねじ体Mを交換するだけで済むことから、圧力チャンバCのランニングコストを低減させることができる。
【0051】
また、本締結構造1では、蓋部材F1、F2、F3の蓋側座部K1A、K2A、K3Aが、錐状かつ凹状の蓋側テーパ面となっており、また、雄ねじ用ねじ側座部20Aと雌ねじ用ねじ側座部MAが、錐状かつ凸状のねじ側テーパ面となっており、両者を当接させて締結している。従って、熱膨張や内圧変化により蓋部材F1、F2、F3が変形して、その平面方向が、ねじ締結構造Nの軸直角方向に対して傾斜する場合であっても、ある程度の角度範囲であれば、ねじ側テーパ面の蓋側傾斜面の当接状態を維持できるので、そこから圧力が漏れたり、ねじ締結構造Nが緩んだりする事態を抑制できる。
【0052】
とりわけ本実施形態では、テーパ面となる蓋側座部K1A、K2A、K3Aと、ねじ側座部20A、MAの間に、それぞれシール部30が形成されるので、ねじ締結構造N及び第一乃至第三蓋部材F1、F2、F3の熱膨張や変形が生じても、圧力の漏れを飛躍的に抑制することができる。
【0053】
また、本締結構造1では、ねじ溝を介して圧力が漏れやすい雌ねじ体Mが、圧力空間A1、A2の外側に配置され、ねじ溝の影響を受けない雄ねじ体Oの頭部20を、圧力空間A1、A2の内側に配置している。結果、雄ねじ体Oの頭部20のシール部30によって密閉すれば、本来的に、ねじ溝まで内圧が伝達し難い構造であり、ねじ締結構造Nからの圧力漏れを低減できる。更に本締結構造1では、雌ねじ体M自体をキャップナットにしているので、仮に、頭部20のシール部30から漏れた圧力がねじ溝に到達しても、ねじ溝から直接圧力が漏れずに、雌ねじ体Mのシール部30によって、圧力の漏れを二重に規制できる。
【0054】
なお、上記実施形態の圧力チャンバCの締結構造1では、雌ねじ体Mがキャップナットの場合を例示したが、本発明はこれに限定されず、
図3(A)に示すように、雌ねじ穴が貫通しているナット構造であっても良い。また、上記締結構造1では、ねじ側テーパ面及び蓋側テーパ面が、円錐形状となる場合を例示したが、本発明はこれに限定されず、
図3(B)に示すように、部分球状や平坦面としても良い。部分球状の場合、蓋部材F1、F2、F3が、ねじ締結構造Nの軸直角方向に対して傾斜しても、ねじ側テーパ面及び蓋側テーパ面の当接状態を安定維持できるので、圧力の漏れをより高次に抑制できる。
【0055】
更に、上記実施形態の圧力チャンバCの締結構造1では、蓋部材F1、F2、F3の蓋側座部K1A、K2A、K3Aが、一体的に形成される場合を例示したが、本発明はこれに限定されず、例えば
図4に示すように、蓋部材F1、F2、F3と蓋側座部K1A、K2A、K3Aが別体に設けられていても良い。このようにすると、蓋部材F1、F2、F3の蓋側テーパ面が、ねじ締結構造Nとの接触で摩耗したり損傷したりした場合に、蓋側座部K1A、K2A、K3Aのみ独立して交換することができるので、メンテナンス性を向上させることができる。この場合、蓋部材F1、F2、F3と蓋側座部K1A、K2A、K3Aの間にもシール部32を形成することが好ましい。勿論、シール性を有する素材によって座部を構成することも可能である。
【0056】
更に、蓋側座部KA1、K2A、K3Aを別体とする場合は、例えば
図5に示すように(
図5ではねじ側座部20Aの図示を省略する)、蓋側座部K1A、K2A、K3Aとねじ側座部20A、MAの間において、逆回転防止機構50を構成することが好ましい。この逆回転防止機構50は、少なくともねじ側座部20A、MAが、緩める方向に回転しようとすると、互いの座面が互いに係合して、当該回転方向に対する相対回転を防止する。
【0057】
具体的には、ねじ側座部20A、MAには、ねじ側凹凸52が形成され、蓋側座部K1A、K2A、K3Aには、これと係合する蓋側凹凸54が形成される。ねじ側凹凸52及び蓋側凹凸54は、周方向に複数連続して設けられる鋸刃形状となっている。従って、ねじ側座部20A、MAと蓋側座部K1A、K2A、K3Aが当接すると、ねじ側凹凸52及び蓋側凹凸54が互いに係合するが、両者の凹凸形状が鋸歯形状となっており、ねじ締結構造Nが、締結方向に回転しようとする際は、互いの傾斜面を乗り越えるようにして相対スライドを許容する。一方、ねじ締結構造Nが、緩み方向に回転しようとすると、互いの垂直面(傾斜が強い側の面)が当接して、両者の相対移動を防止する。なお、ここでは鋸刃形状の場合を例示したが、山型や波型でも良く、ローレット状であっても良い。
【0058】
蓋側座部KA1、K2A、K3Aの周囲には、蓋側座部KA1、K2A、K3Aと蓋部材F1、F2、F3との相対回転を防止する係合機構40が構成される。本実施形態では、この係合機構40として、蓋部材F1、F2、F3の内壁と、蓋側座部KA1、K2A、K3の外壁が、ねじの軸心に対して偏心した円形状となっている。従って、蓋側座部KA1、K2A、K3Aが、蓋部材F1、F2、F3の収容凹部に収容されると、両者が嵌り合う結果となり、ねじの軸心を合わせた状態のままでは、両者の周方向の相対回転が規制される。以上の結果、締結した後はねじ締結構造Nが緩まない構造にすることができる。なお、この係合機構40は、例えば、蓋側座部KA1、K2A、K3Aに突起や凹部を係合して、蓋部材F1、F2、F3の凹部や突起と係合させることで、互いの相対回転を規制するなど、他にも各種構造を採用できる。
【0059】
また更に、上記実施形態の圧力チャンバCの締結構造1では、シール部30として面状のシール材を設置する場合を例示したが、本発明はこれに限定されない。例えば
図6に示すように、ねじ側座部20A、MA及び/又は蓋側座部K1A、K2A、K3Aに、環状のリングシールを挿入するための環状溝Lを形成し、この環状溝Lの内部にリングシール材を挿入して、シール部30としても良い。勿論、面状のシール材と、リングシールの双方を組み合わせたシール部30としても良い。
【0060】
また更に、上記実施形態の圧力チャンバCの締結構造1では、座面がテーパ状に設けられる場合を例示したが、勿論、座面は必ずしもテーパ状に設けられる必要はない。例えば
図7に示すように、ねじ側座部20A、MA及び/又は蓋側座部K1A、K2A、K3Aを平坦面としてもよく、以下で説明する他の座部(座面)も同様に平坦としてもよい。
【0061】
更に
図8に示すように、ねじ側座部20A、MA及び/又は蓋側座部K1A、K2A、K3Aに間に、皿ばね型ワッシャBを介在させることも可能であり、ねじ締結構造Nの予張力の幅を増大させることにより、蓋部材F1、F2、F3や筒部材T1、T2の膨張、収縮に対する対応性を向上させることができる。この際、皿ばね型ワッシャBとねじ側座部20A、MAの間、及び/又は、皿ばね型ワッシャBと蓋側座部K1A、K2A、K3Aに間に、環状のシール部30を配設することが好ましい。
【0062】
また更に、
図9に示すように、ねじ側座部20A、MA及び/又は蓋側座部K1A、K2A、K3Aを摺動可能とするべく、両者の間に摺動性を有するワッシャ、例えば、ポリテトラフルオロエチレンやステンレス鋼等の素材から成るワッシャWを単層、又は、多層(多段)にして介在させてもよく、こうすることで、蓋部材の半径方向への膨張や収縮に対して、座部の摺動で対応することが可能となり、圧力チャンバの内外に亘るリークを防止出来、圧力空間内A1、A2の圧力をより高度に保持することが可能となる。なお、多段のワッシャWの間や、ワッシャWとねじ側座部20A、MAの間、ワッシャWと蓋側座部K1A、K2A、K3Aの間には、別途シール部(図示省略)を配設するようにしても良い。
【0063】
更にまた、ねじ締結構造Nの応用例として、
図10に示すように、雄ねじ体Oと雌ねじ体Mの間の螺合部に、一方向(締結方向)の相対回転を許容し且つ他方向(緩み方向)の相対回転を規制する逆回転防止機構60を形成することが好ましい。このようにすると、締結後は、ねじ締結構造Nが緩まないので、振動や熱膨張・熱収縮等が生じても、長期間に亘って確実に固定することが可能となる(勿論、これは必須ではなく、例えば、座面の摩擦力が大きく作用する仕組みの逆回転防止機構を用いても好い。)。
【0064】
具体的に雌ねじ体Mには、
図10(A)及び(B)に示すように、逆回転防止機構60として、雄ねじ体Oのねじ軸に向かって半径方向内向きに延設される突出部64を有する。この突出部64の突端縁は、雌ねじ体Mの内周雌ねじ部のリード方向と相異なるリード方向に設定される。
【0065】
一方、
図10(C)に示すように、雄ねじ体Oの軸部10は、雌ねじ体Mの内周雌ねじ部と螺合する第一雄ねじ螺旋構造62Aと、この第一雄ねじ螺旋構造62Aとリード角及び/又はリード方向が相異なるリード角及び/又はリード方向に設定される第二雄ねじ螺旋構造62Bを重畳的に備えている。第二雄ねじ螺旋構造62Bと突出部64は断続的又は連続的に螺合する。この第二雄ねじ螺旋構造62Bと突出部64の螺合により、第一雄ねじ螺旋構造62Aに沿って雌ねじ体Mが緩もうとしても、相異なるリード角及び/又はリード方向が互いに干渉し合う結果、緩み方向の相対回転が係止される。なお、締結方向の相対回転は、突出部64が半径方向外側へ弾性変形して、雄ねじ体Oのねじ山を乗り越えて進むことができる。なお、逆回転防止機構60は、他にもラチェット構造等を利用して逆回転を防止することができる。
【0066】
次に、
図11を参照して、本発明の第二実施形態に係る圧力チャンバCの締結構造を説明する。なお、
図11では、第一筒部材T1の厚さ方向の中心において、周方向に沿った断面を平面状に展開した状態を示すものとし、説明の便宜上、第二筒部材T2及び第三蓋部材F3の締結構造の図示及び説明を省略する。また、ここでは第一実施形態と異なる点を中心に説明する。
【0067】
本実施形態では、第一蓋部材F1と第一筒部材T1を締結する第一締結構造1Xと、第二蓋部材F2と第一筒部材T1を締結する第二締結構造1Yを、それぞれ周方向に独立して複数備える。また、第一締結構造1Xと第二締結構造1Yの周方向の位相が互いにずれており、両者が干渉しないようになっている。
【0068】
第一締結構造1Xは、第一蓋側貫通孔K1と、第一蓋部材用の筒側貫通孔H1Xと、これらの貫通孔に軸部が挿入される雄ねじ体Oと、この雄ねじ体Oと螺合する雌ねじ体Mを備えて構成される。第一蓋部材用の筒側貫通孔H1Xは、第一筒部材T1の内部において、軸方向の両端まで延びており、第二蓋部材F2側の端面において筒側座部H1Aが凹設される。この筒側座部H1Aの形状は、雄ねじ体Oの頭部20の形状、即ちここでは正六角形となっており、両者が嵌り合うことで、雄ねじ体Oが回転不能に収容される。この筒側座部H1Aは、組み立て完了後において第二蓋部材F2によって覆われてしまうので、第二蓋部材F2を第一筒部材T1に設置する前に、予め、筒側座部H1Aと筒側貫通孔H1Xに対して、雄ねじ体Oを配設しておく。この状態で、雄ねじ体Oに雌ねじ体Mを螺合させることで、第一筒部材T1と第一蓋部材F1を締結する。
【0069】
第二締結構造1Yは、第二蓋側貫通孔K2と、第二蓋部材用の筒側貫通孔H1Yと、これらの貫通孔に軸部が挿入される雄ねじ体Oと、この雄ねじ体Oと螺合する雌ねじ体Mを備えて構成される。第二蓋部材用の筒側貫通孔H1Yは、第一筒部材T1の内部において、軸方向の両端まで延びており、第一蓋部材F1側の端面において筒側座部H1Aが凹設される。この筒側座部H1Aの形状は、雄ねじ体Oの頭部20の形状、即ちここでは正六角形となっており、両者が嵌り合うことで、雄ねじ体Oが回転不能に収容される。なお、この筒側座部H1Aは、組み立て完了後において第一蓋部材F1によって覆われてしまうので、第一蓋部材F1を第一筒部材T1に設置する前に、予め、筒側座部H1Aと筒側貫通孔H1Yに雄ねじ体Oを配設しておく。この状態で、雄ねじ体Oに雌ねじ体Mを螺合させることで、第一筒部材T1と第二蓋部材F2を締結する。なお、ここでは、雄ねじ体Oの頭部を、筒側座部H1Aに予め収容する場合を例示しているが、雄ねじ体Oと雌ねじ体Mを反転させて、雌ねじ体Mを筒側座部H1Aに予め収容するようにしても良い。また、雄ねじ体Oの頭部又は雌ねじ体Mと、筒側座部H1Aとの周方向の係合構造は、外形を一致させる場合に限定されず、お互いに突起や凹部等を設けたりすることで、何らかの係合状態を得られれば良い。
【0070】
本第二実施形態の締結構造1X、1Yによれば、各ねじ締結構造Nによって二つの部材を締結すれば良いので、組み立て作業を簡素化できる。更に、ねじ締結構造Nにおいて、雄ねじ体Oの頭部又は雌ねじ体Mの少なくとも一方を、筒側座部H1Aに収容することで、第一蓋部材F1及び第二蓋部材F2によって密閉できる。結果、各ねじ締結構造Nを介して圧力が漏れ出すことを、より一層、抑制することが可能となる。
【0071】
次に、
図12を参照して、本発明の第三実施形態に係る圧力チャンバCの締結構造1を説明する。なお、ここでは第一実施形態と異なる点を中心に説明する。
【0072】
この圧力チャンバCは、第一及び第二筒部材T1、T2の両端に、それぞれ半径方向外側に拡張する拡径フランジ部T1F、T2Fが形成される。従って、第一及び第二筒部材T1、T2と第一乃至第三蓋部材F1、F2、F3は、この拡径フランジ部T1F、T2Fを利用して締結される。
【0073】
第一蓋部材F1は、第一筒部材T1の拡径フランジ部T1Fと締結構造1によって締結される。従って、第一筒部材T1の拡径フランジ部T1Fに形成される第一筒側貫通孔H1の端部近傍には、第一筒側座部H1Aが形成される。この第一筒側座部H1Aは、錐状又は部分球状であって、かつ、凹状の筒側テーパ面となる。従って、第一筒側座部H1Aと、雄ねじ用ねじ側座部20Aが、互いに当接する。
【0074】
この第一筒側座部H1Aと、雄ねじ用ねじ側座部20Aの間には、シール部(図示省略)が形成される。このシール部30は、例えば、ポリテトラフルオロエチレン樹脂の環状のシート材であり、第一筒側貫通孔H1及び雄ねじ体Oの軸部10を囲むように配置される。このシール部30によって、第一及び第二圧力空間A1、A2の圧力(正圧又は負圧)が、仮に、複数の大径のシール材S1、S2、S3から漏れ出した場合であっても、座面からのリークを抑制できる。なお、この場合は、シール部30を省略しても良い。また、第一筒側座部H1Aと雄ねじ用ねじ側座部20Aの間の締結に関して、既に第一及び第二実施形態で例示した各種構造を適用できることは言うまでもない。
【0075】
なお、本第三実施形態では、第一及び第二筒部材T1、T2が拡径フランジ部T1F、T2Fを有する場合を例示したが、本発明はこれに限定されない。例えば
図13の第一筒部材T1に示すように、両端において半径方向内側に縮径する縮径フランジ部T1Xを形成することもできる。このようにすると、圧力空間A1を広く確保できる。この場合は、雄ねじ体Oの頭部20が、圧力空間A1の内側において、縮径フランジ部T1Xに形成される第一筒側座部H1Aと当接することになるので、シール部(図示省略)を介在させることで、圧力がリークしないようにすることが好ましい。
【0076】
以上説明したように、本発明は多様な構成を採り得、上記実施の形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において種々変更を加え得ることは勿論である。