【文献】
8. TEXTURE ANALYSIS,Two-Dimensional X-Ray Diffraction,米国,John Wiley & Sons,2009年11月22日,pp. 218-248,doi: 10.1002/9780470502648.ch8
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
試料面内の回転角φを一定としたときに前記検出面で一度に検出できるαの範囲を表す弧の一端が、前記αが90°である位置に接するように、最初のφスキャンの前記ωおよびχを決定することを特徴とする請求項1記載の処理方法。
前記φを一定としたときに前記検出面で一度に検出できるαの範囲を表す弧の一端が直前の測定段階の弧の一端に接するように、第2のφスキャン以降の前記ωおよびχを決定することを特徴とする請求項1または請求項2記載の処理方法。
前記決定されたωおよびχに基づいて、各φスキャンにおいて前記検出面で一度に検出できるαの範囲を事前に表示することを特徴とする請求項1から請求項3のいずれかに記載の処理方法。
【背景技術】
【0002】
従来、0次元検出器を使用した極点測定では、あおり角χ、試料面内の回転角φについて、χステップ、φスキャンで強度を測定し、極図形を作成している。このとき、χ、φで測定される強度は、極図形中で、αが90
o−χ、βがφである位置の強度として表される。つまり、機構上の制御位置をχ、φ、ωで表し、極図形上の位置をα、βで表している。
【0003】
図11(a)は、0次元検出器によるβを一定としたときの検出範囲を示す図である。図に示すように、0次元検出器による測定では、一度の露光で得られる測定範囲が点で表される。
【0004】
これに対し、2次元検出器を使用した極点測定では、一度の露光でα方向に連続した点で測定できる(非特許文献1参照)。
図11(b)は、2次元検出器によるφを一定としたときの検出範囲を示す図である。図に示すように、2次元検出器による測定では、一度の露光で得られる測定範囲が曲線(円弧)で表される。
【0005】
2次元検出器を使用してχ=0°としφスキャン(0〜360°)する極点測定を行なうと、
図12(a)に示すように、極図形の中心から一定半径の円内の範囲を測定できる。このときχをステップで変えながら、φスキャンによる測定をすることで、全範囲の極点図を作成できる。
【0006】
図12(b)の例では、αを4ステップに分けて測定することで、全範囲を測定している。このような測定でステップをどの程度とるかを含め測定条件はユーザが入力しなければならない。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
上記のような2次元検出器を用いた極点測定では、1度目のχのステップで、さらに広い範囲の測定を行なうことができれば、χのステップ数は3で済み、測定時間の短縮につながる。そのため、ωを回折角度(2θ)の1/2の対称配置で、例えばχ=30
oとすると広いαの範囲をカバーできる。
【0009】
しかし、このとき単純にχを変えてαの測定範囲をずらすだけでは、極図形のα=90°付近が測定できない。特に試料面の法線方向に強く配向した試料を測定する場合、α=90°付近の強度データを測定できないことは致命的となる。
【0010】
また、例えば、非特許文献1記載のシステムでは、2次元検出器を使用した極点測定で、試料を傾けて測定することにより、一度に広範囲の極図形を測定し、測定時間を短縮している。しかし、Fig.8.7の例では極図形の中心を測定できていない。
図13は、試料をχ=30°に傾けてβスキャンしたときの検出範囲を示す図である。
図13に示すように、極図形の中心に円形の測定の空白ができる。このような極図形の中心に生じる測定の空白を解消するためには、従来の方法では試行錯誤が必要でありユーザへの負担が大きくなる。
【0011】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたものであり、少ない回数のβスキャンであおり角αの重複なしに連続的に極点測定を行なうことができ、効率的な測定を可能とする処理方法、処理装置および処理プログラムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
(1)上記の目的を達成するため、本発明の処理方法は、X線回折による極点測定の条件を決定する処理方法であって、回折角2θの入力を受け付けるステップと、前記入力された2θでの極点測定において2次元の検出面で一度に検出できる散乱ベクトルと試料面とのなす角αの範囲をα=90°からα=0°へ向けて重複なしに連続させるように、試料面内の回転角φについて各φスキャンにおける入射X線とx軸とのなす角ωおよび試料のあおり角χを決定するステップと、を含み、前記ωおよびχの決定を繰り返すことを特徴としている。
【0013】
これにより、少ない回数のφスキャンで極図形のαの重複なしに連続的に極点測定を行なうことができ、効率的な測定が可能となる。また、測定条件を決定する必要がなくなりユーザへの負担が軽減される。
【0014】
(2)また、本発明の処理方法は、試料面内の回転角φを一定としたときに前記検出面で一度に検出できるαの範囲を表す弧の一端が、前記αが90°である位置に接するように、最初のφスキャンの前記ωおよびχを決定することを特徴としている。これにより、極図形のαが90°のときの検出を確実に行ない、極点図の中央を測定できる。
【0015】
(3)また、本発明の処理方法は、前記φを一定としたときに前記検出面で一度に検出できるαの範囲を表す弧の一端が直前の測定段階の弧の一端に接するように、第2のφスキャン以降の前記ωおよびχを決定することを特徴としている。これにより、少ないφスキャンにより短時間で極点測定を行なうことができ、効率の高い測定が可能になる。
【0016】
(4)また、本発明の処理方法は、前記決定されたωおよびχに基づいて、各φスキャンにおいて前記検出面で一度に検出できるαの範囲を事前に表示することを特徴としている。これにより、測定前に設定した測定条件で測定した場合、各φスキャンにおけるαの範囲が視覚的に分かる。その結果、測定内容を確実に把握でき、測定にかかる時間が予想できる。
【0017】
(5)また、本発明の処理装置は、X線回折による極点測定の条件を決定する処理装置であって、回折角2θの入力を受け付ける入力部と、前記入力された2θでの極点測定において2次元の検出面で一度に検出できる散乱ベクトルと試料面とのなす角αの範囲をα=90°からα=0°へ向けて重複なしに連続させるように、試料面内の回転角φについて各φスキャンにおける入射X線とx軸とのなす角ωおよび試料のあおり角χを決定する条件決定部と、前記ωおよびχの決定を繰り返させる処理制御部と、を備えることを特徴としている。これにより、効率的な測定が可能となり、ユーザへの負担が軽減される。
【0018】
(6)また、本発明の処理プログラムは、X線回折による極点測定の条件を決定する処理プログラムであって、回折角2θの入力を受け付ける処理と、前記入力された2θでの極点測定において2次元の検出面で一度に検出できる散乱ベクトルと試料面とのなす角αの範囲をα=90°からα=0°へ向けて重複なしに連続させるように、試料面内の回転角φについて各φスキャンにおける入射X線とx軸とのなす角ωおよび試料のあおり角χを決定する処理と、をコンピュータに実行させ、前記ωおよびαの決定を繰り返すことを特徴としている。これにより、効率的な測定が可能となり、ユーザへの負担が軽減される。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、少ない回数のφスキャンで極図形のαの重複なしに連続的に極点測定を行なうことができ、効率的な測定が可能となる。また、測定条件を決定する必要がなくなりユーザへの負担が軽減される。
【発明を実施するための形態】
【0021】
次に、本発明の実施の形態について、図面を参照しながら説明する。説明の理解を容易にするため、各図面において同一の構成要素に対しては同一の参照番号を付し、重複する説明は省略する。
【0022】
[システムの構成]
図1は、極点測定システム50の構成を示す概略図である。極点測定システム50は、処理装置100および測定装置200を備えている。処理装置100は、例えばPCで構成され、測定条件の決定、測定装置200の制御、測定結果の解析を行なう。測定装置200は、X線照射部210、試料支持部220および2次元検出器230で構成され、X線照射部210により照射された入射X線が試料Sにより回折された回折像を2次元検出器230で検出する。
【0023】
2次元検出器230は、検出面230aに入射する回折X線を検出できる。
図1に示すように、試料支持面の法線方向をz軸とし、入射X線の進行方向をxz面内に含むx軸、y軸、z軸からなる直交座標を設定すると、試料支持部220の回転を表しやすい。
【0024】
入射X線とx軸とのなす角をωと表し、入射X線と回折X線とのなす角を2θと表すことができる。ω=0°のとき、入射X線はx軸向きに進行する。ωおよび2θは、互いに独立に設定可能である。
【0025】
χ回転は、x軸を中心とする試料sの回転を意味し、その回転角度はχで表せる。φ回転は、試料面法線を中心とする試料sの回転を意味し、その回転角度はφで表せる。試料支持部220の操作により、x軸回りの回転角χ、y軸回りの回転角ω、試料面法線の回りの回転角φ、の調整が可能である。
【0026】
極点測定システム50により2次元検出器230を用いた効率的な極点測定が可能となる。すなわち、処理装置100が算出した測定条件で測定することにより、極図形の中心を測定でき、かつ、一度に広範囲の極点測定が可能となるため、効率よく短時間で極点測定ができる。また、処理装置100により測定条件が自動的に計算され、設定されるため、簡単な操作で極点測定ができる。
【0027】
[処理装置の構成]
図2は、処理装置100の構成を示すブロック図である。
図2に示すように、処理装置100は、入力部110、条件決定部120、処理制御部130、測定制御部140、インタフェース制御部150、出力部160、データ蓄積部170および解析部180を備えている。
【0028】
入力部110は、ユーザからの入力を受け付ける。例えば、事前に回折角2θの入力を受け付けることができる。その他、試料Sから2次元検出器230までの距離や、検出面230aのサイズの入力も受け付けることができる。
【0029】
条件決定部120は、入力された2θでの極点測定において2次元の検出面230aで一度に検出できる散乱ベクトルと試料面とのなす角αの範囲をα=90°からα=0°へ向けて重複なしに連続させるように、試料面内の回転角φについて各φスキャンにおける入射X線とx軸とのなす角ωおよび試料のあおり角χを決定する。重複なしに連続させるとは、後述するようにαの範囲を表す弧の一端が、極図形の中央に接すること、またはφ回転させたときにαの範囲を表す弧の一端同士が接することを意味している。なお、散乱ベクトルは、回折X線の波数ベクトルk
1、入射X線の波数ベクトルk
0に対して、k
1−k
0で表される。
【0030】
入射X線と回折X線が対称の配置となっている試料Sをχ方向に傾けた状態で測定することにより、一度の走査で、広範囲の極図形を測定することができる。その場合、入射角が変化し、そのままでは極図形の中心を測定できないため、試料Sを入射側に傾けることにより、すなわち、ωをずらして(2θの半分より大きな値として)、非対称な配置とすることで、極図形の中心を測定できるようにしている。これにより、少ない回数のφスキャンで測定できる極図形のαの範囲の重複なしに連続的に極点測定を行なうことができ、効率的な測定が可能となる。また、測定条件を決定する必要がなくなりユーザへの負担が軽減される。
【0031】
図3(a)、(b)は、いずれも試料と2次元検出器との配置および一度に検出可能な範囲を示す図である。
図3(a)に示すように、2次元検出器を用いると、検出面で捉えられるαの範囲を一度に測定できることになる。
【0032】
図4は、最初のφスキャンにより検出可能な範囲を極図形上に表した図である。χを変えながらφを測定することで、全範囲の極図形を作成できるが、
図3(b)に示すように試料Sの影になる部分があるため測定できる範囲は、χによって変化する。影になる分を考慮して、2スキャン目以降のχの位置を計算することで、重なりを無くした効率の高い測定が可能になる。
【0033】
具体的には、まず試料面内の回転角φを一定としたときに検出面で一度に検出できるαの範囲を表す弧の一端が、αが90°である位置に接するように、最初のφスキャンのωおよびχを決定する。これにより、極図形のαが90°のときの検出を確実に行ない、極点図の中央を測定できる。なお、αの範囲を表す弧の一端が、αが90°である位置に接するとは、例えば20ピクセルまたはαで1°以内で重なる場合も含まれる。αの範囲を表す弧の一端では対象となるはずのピクセルが検出フレームのために見切れる場合があるので、上記のようなある程度の含みが必要になる。
【0034】
そして、第2のφスキャン以降のωおよびχについては、φを一定としたときに検出面で一度に検出できるαの範囲を表す弧の一端が、直前の測定段階の弧をφ回転させたときの一端(
図4の例でいえば色の濃い円の領域の端部)に接するように決定する。これにより、少ないφスキャンにより短時間で極点測定を行なうことができ、効率の高い測定が可能になる。ωとχを算出するための方法の詳細は後述する。この場合の接する状態も、上記と同様に20ピクセルまたはαで1°以内で重なることを含む。
【0035】
処理制御部130は、条件決定部120によるωおよびχの決定を繰り返させる。これにより、χのステップ毎のαの範囲を決めることができる。所定の条件を満たしたときには繰り返しを終える。その結果、従来は4回のχのステップを決める必要があるところ、例えば3回のχのステップで測定できるようにχおよびωを決めることができる。
【0036】
測定制御部140は、決定された測定条件に基づいて、極点測定を実施する。例えば、異なるあおり角αで3回のφスキャンが必要となった場合には、それぞれのφスキャンに対して決められたωおよびχへ試料Sのy軸、x軸回転移動を行なう。そして、X線を試料Sへ照射しつつ試料面法線軸回りに一回転させてφスキャンを行なう。
【0037】
インタフェース制御部150は、ユーザへ提供する入力インタフェースや決定結果の確認のためのインタフェースを制御する。例えば、決定されたωおよびχに基づいて、各φスキャンにおいて検出面で一度に検出できるαの範囲を事前に表示する。これにより、測定前に設定した測定条件で測定した場合、各φスキャンにおけるαの範囲が視覚的に分かる。その結果、測定内容を確実に把握でき、測定にかかる時間が予想できる。その場合、算出された条件で測定される極図形を図示するのが好ましい。得られた測定条件により測定される極図形を図示することにより、求めている測定が、設定された条件で可能かどうかを判断できる。
【0038】
出力部160は、入力や測定条件の決定結果の確認のためのインタフェース等を出力する。例えば、ディスプレイに入力インタフェースの画面表示を行なう。インタフェース画面の表示例については後述する。また、出力部160は、回折X線の測定結果を解析して表示することもできる。
【0039】
データ蓄積部170は、測定装置200による測定結果を蓄積する。すなわち、各φスキャンにより2次元検出器230により検出されたX線の強度を蓄積する。解析部180は、蓄積されたX線強度を解析し、極図形を作成する。また、得られた極図形により試料Sの配向を算出できるようにしてもよい。
【0040】
[処理装置の動作]
次に、上記のように構成された極点測定システム50の動作を説明する。
図5は、極点測定システム50の基本動作を示すフローチャートである。まず、GUIにより初期のパラメータの入力を受け付ける(ステップS1)。具体的には、測定する回折角2θの入力を受け付け、初期値として設定する。材料と測定指数から回折角2θを計算し、初期値として設定してもよい。試料Sから検出面230aまでの距離については、あらかじめ測定装置200で設定された値を保持している場合にはそれを用いてもよいし、あらためてユーザからの入力を受けてもよい。ユーザからの入力がない場合は、現在の装置の状態から、検出器位置を取得して用いるのが好ましい。また、極図形の測定範囲は、デフォルトで与えられており、ユーザが決めなければならない最低限のパラメータは、回折角度のみとなる。
【0041】
次に、保持している試料Sから検出面230aまでの距離、検出面230aのサイズ、2θに基づいて、最適なω、χを算出する(ステップS2)。2次元検出器230の種類は処理装置100が認識できるため、その検出面230aのサイズも取得できる。なお、具体的な計算方法については後述する。
【0042】
算出されたω、χ等の測定条件と、各χで測定できる極図形の範囲を表示し(ステップS3)、ユーザの入力を受けて、問題ないと判断されたか否かを判定する(ステップS4)。測定できる極図形が図示されることで、ユーザによる確認、判定が容易となる。
【0043】
ユーザにより問題ありと判断された場合には、ステップS1に戻る。問題なしと判断された場合には、決定された測定条件に沿って測定装置200を制御し、試料Sを設定された2θおよび算出されたω、χの位置に移動させる(ステップS5)。各χのステップに対してφスキャンを行ない、回折測定を実行する(ステップS6)。なお、GUIの詳細については後述する。
【0044】
[ω、χの計算]
次に、上記の動作のうち、処理装置100によるω、χの算出について動作を説明する。まず、各記号の定義を説明する。
【0045】
(記号の定義)
図7は、測定系の座標を示す図である。入射X線の単位ベクトルiは、式(1)で定義できる。
【数1】
【0046】
iをy軸でωだけ回転させた単位ベクトルi
ωは、式(2)で表せる。
【数2】
【0047】
原点oを通る検出面の法線と検出面との交点をrと表し、原点oから検出面までの距離は、L(Lは原点oと点rの間の距離に等しい)で表す。ω=2θ=0のとき、点rはx軸上に位置する。
【0048】
検出面は、ωおよび回折角2θで回転されるものとする。このときの回転行列R
ω,2θは、式(3)で表せる。
【数3】
【0049】
検出面が長方形の場合であって
図7に示すような配置をとるときには、式(4)のようにy軸方向のサイズを、w
+およびw
−、z軸方向のサイズをh
+およびh
−で表せる。なお、
図7に示す例のように検出面が長方形であることが計算上好ましいが、円形や楕円形であってもよく、どのような形状であってもよい。形状に応じて一度に検出できるαの範囲が異なるため、計算上形状が考慮されていればよい。
【数4】
【0050】
図8(a)〜(d)は、いずれも試料を中心とした測定系の座標を示す図である。入射X線iが、原点において回折角2θで回折されるとき、回折X線の単位ベクトルをdで表す。すなわち、
図8(a)に示すように、xy面内で、z>0の方向に、回折角2θで回折されたX線が、入射X線iを軸としてγだけ回転した回折X線の単位ベクトルdは式(5)で表せる。
【数5】
【0051】
また、入射X線i
ωが、原点で、回折角2θで回折されるとき、回折X線の単位ベクトルd
ωは式(6)で表せる。
【数6】
【0052】
図8(b)に示すように、入射X線i、回折X線dで表される、回折ベクトルの単位ベクトルkは式(7)で表せる。
【数7】
【0053】
また、
図8(c)に示すように、入射X線i
ω、回折X線d
ωで表される、回折ベクトルの単位ベクトルk
ωは式(8)で表せる。
【数8】
【0054】
平坦な試料Sの試料面の単位法線ベクトルsは、式(9)で表せる。
【数9】
【0055】
図8(d)に示すように、x軸を中心にχだけsを回転させた試料面の単位法線ベクトルs
χは、式(10)で表せる。
【数10】
【0056】
試料面法線と回折ベクトルのなす角Ψ
kは、式(11)で表せる。
【数11】
【0057】
試料面法線を軸とする回転をβとする。
【0058】
(処理内容)
上記のような定義をもとに計算を行なう。
図6は、処理装置100の動作を示すフローチャートである。最初に、2θ、α
min、Ψ
max、Ψ
kmaxを決定する(ステップT1)。すなわち、まず試料と測定する面指数に依存する2θ、測定するαの範囲の最小値α
minを決定する。α
minは、0≦α
min≦π/2で、任意の値を決定する。
【0059】
そして、回折ベクトルと試料面の単位法線ベクトルs
χとのなす角度の最大値Ψ
kmaxは、式(12)で計算できる。
【数12】
【0060】
入射X線および回折X線と試料面の単位法線ベクトルs
χとのなす角度の最大値Ψ
maxは、式(13)で計算できる。
【数13】
【0061】
次に、回折X線の単位ベクトルd
a、d
bを計算する(ステップT2)。まず、d
aについて計算する。点oで入射X線iが回折角2θで回折したときの回折X線の単位ベクトルdは、式(14)で表せる。
【数14】
【0062】
式(15)は、検出面の方程式である。
【数15】
【0063】
pd(pは任意の数)が検出面内の点を指すとき、式(16)が成り立つ。
【数16】
【0064】
0≦γ≦πの範囲で、pdのy成分y(pd)は、式(17)に示すように常に0以下の値となる。
【数17】
【0065】
そして、y(pd)の最小値y(pd)
minは、式(18)で表される。
【数18】
【0066】
検出面の大きさには限りがある。その範囲内で、y(pd)が最小になるときのpdが指す検出面内の点をaとする。また、pdが点aを指すときのγをγ
aとする。y(pd)
min=−W
+になるときのγ
aは、式(19)より計算できる。
【数19】
【0067】
一方、x(pd)は、式(20)で表される。
【数20】
【0068】
検出器のサイズH
−、H
+により、x(pd)の範囲は、式(21)のように算出できる。
【数21】
【0069】
なお、式(22)が満たされるときには、式(23)のように算出できる。
【数22】
【数23】
【0070】
一方、式(24)が満たされるときには、式(25)のように算出できる。
【数24】
【数25】
【0071】
実際には、W
+,W
−,H
+,H
−で制限される範囲の両方を満足させる必要があるので、式(19)および式(23)または(25)の小さい方のγ
aを使用して、式(26)の通りdaを計算する。
【数26】
【0072】
次に、回折X線の単位ベクトルd
bを計算する。qdが(qは任意の数)が検出面内の点を指すとき、式(27)が成り立つ。
【数27】
【0073】
−π≦γ≦0の範囲で、qdのy成分y(pd)は、式(28)で表され、常に0以上の値をとる。
【数28】
【0074】
y(pd)の最大値y(qd)
maxは、式(29)の通りである。
【数29】
【0075】
検出面の大きさには限りがある。その範囲内で、y(qd)が最大になるときのqdが指す検出面内の点をbとする。また、qdが点bを指すときのγをγ
bとする。y(qd)
max=W
−になるときのγ
bは、式(30)により計算できる。
【数30】
【0076】
一方、x(qd)は、式(31)のように表される。
【数31】
【0077】
検出器のサイズH
−、H
+により、x(qd)の範囲は、式(32)のように表される。
【数32】
【0078】
式(33)を満たすときは、式(34)が成り立つ。
【数33】
【数34】
【0079】
一方、式(35)を満たすときは、式(36)が成り立つ。
【数35】
【数36】
【0080】
実際には、W
+,W
−,H
+,H
−で制限される範囲の両方を満足させる必要があるので、大きい方のγ
bを使用して、d
bを計算する。そして、得られたγ
bより、式(37)の通りd
bを計算する。
【数37】
【0081】
次に、ωおよびχ
0を計算する(ステップT3)。検出器面内の点aで検出された回折X線の回折ベクトルの単位ベクトルk
aは、式(38)で表せる。
【数38】
【0082】
k
aをyz平面内に移動させるために全体をωだけで回転する。この時のωは、式(39)で計算できる。
【数39】
【0083】
また、ωで傾けた回折ベクトルk
a,ωは、式(40)で計算できる。
【数40】
【0084】
k
a,ωの向きが、z軸の単位ベクトルをx軸でχ
0だけ回転させた時のベクトルの向きと一致するときのχ
0は、式(41)で計算できる。
【数41】
【0085】
求まったω、χ
0で測定したときに、試料面法線を回折ベクトルとする回折X線が、検出面内の点aで検出される。
【0086】
次に、式(42)、(43)により、d
b,ωおよびk
b,ωを計算する(ステップT4)。
【数42】
【数43】
【0087】
そして、χおよびnの初期値を式(44)で設定する(ステップT5)。
【数44】
【0088】
次に、測定条件を決定する。
図9(a)〜(d)は、いずれも試料と2次元検出器との配置および一度に検出可能な範囲を示す図である。まず、Ψ
kおよびαを計算する(ステップT6)。Ψ
kの計算にあたり、入射X線i
ω、試料面法線s
χのとき、回折X線の単位ベクトルd
b,ωが適切な測定条件を満たすためには、式(45)が成り立たなければならない。
【数45】
【0089】
この条件を満たさないときは、回折X線d
b,ωが試料面すれすれか、試料を透過することになる。適切な測定条件を満たさないとき、式(46)を満たすd
c,ωを決定する。
【数46】
【0090】
点oにおいて回折角2θで回折し、検出面内の点cで検出された、回折X線の単位ベクトルd
cは、式(47)で計算できる。
【数47】
【0091】
d
cをωだけ傾けた回折ベクトルd
c,ωは、式(48)で計算できる。
【数48】
【0092】
試料面法線s
χとd
c,ωとのなす角が、Ψ
maxとなるとき、γ
cは式(49)で計算できる。
【数49】
【0093】
このようにして計算されたγ
cより、d
c,ωを決定できる。検出器面内の点cで検出された回折X線の回折ベクトルの単位ベクトルk
c,ωは、式(50)で計算できる。
【数50】
【0094】
適切な測定条件で測定できた回折ベクトルと、試料面法線とのなす角度Ψ
kは、式(51)で求められる。
【数51】
【0095】
次に、式(52)によりαを計算し、式(53)の通り、χ
nおよびα
n(n=1,2,3,・・・)を保存する(ステップT7)。
【数52】
【数53】
【0096】
次に、終了判定としてΨ
k=Ψ
kmaxか否かを判定する(ステップT8)。判定の結果、Ψ
k=Ψ
kmaxのとき、測定条件の決定を終了する。Ψ
k≠Ψ
kmaxのときには、式(54)によりχ値の更新を行なう(ステップT9)。
【数54】
【0097】
そして、入射X線の入射角度を確認する(ステップT10)。すなわち、−i
ωとs
χとがなす角度Ψ
iが、Ψ
maxを超えるか否かを判定する。Ψ
iは式(55)で与えられる。
【数55】
【0098】
判定の結果、Ψ
iが、Ψ
maxを超えるときには、式(56)の通り、Ψ
i=Ψ
maxとなるようにχを変える(ステップT11)。
【数56】
【0099】
そして、ステップ番号nをn=n+1として更新し(ステップT12)、ステップT6に戻る。なお、ステップT10の判定の結果、Ψ
iが、Ψ
maxを超えない場合には、そのままステップT12に進む。以上の計算により、ω、χを算出できる。なお、上記のような処理装置100の処理は、プログラムによって実行可能である。
【0100】
[インタフェースの例]
図10は、入力および条件表示のインタフェース画面の例を示す図である。
図10に示す画面例では、材料とその面指数、または回折角度を設定できる入力領域が設けられている。また、試料と検出器の距離を任意で設定できる領域も設けられている。また、このインタフェース画面では、算出された測定条件でαステップ毎に極図形のどの範囲が測定できるかを、極図形として最下部に表示できる。その結果、事前にどのように極点測定がなされるかを確認できるようになっている。なお、決定された測定条件において必要な測定時間を算出して表示してもよい。