特許第6606710号(P6606710)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6606710
(24)【登録日】2019年11月1日
(45)【発行日】2019年11月20日
(54)【発明の名称】熱分析装置
(51)【国際特許分類】
   G01N 25/20 20060101AFI20191111BHJP
【FI】
   G01N25/20 G
【請求項の数】12
【全頁数】17
(21)【出願番号】特願2017-536641(P2017-536641)
(86)(22)【出願日】2016年6月8日
(86)【国際出願番号】JP2016067019
(87)【国際公開番号】WO2017033526
(87)【国際公開日】20170302
【審査請求日】2018年7月23日
(31)【優先権主張番号】特願2015-166356(P2015-166356)
(32)【優先日】2015年8月26日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000250339
【氏名又は名称】株式会社リガク
(74)【代理人】
【識別番号】100101867
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 寿武
(72)【発明者】
【氏名】田中 宣弘
(72)【発明者】
【氏名】則武 弘一郎
【審査官】 芝沼 隆太
(56)【参考文献】
【文献】 特開2015−108540(JP,A)
【文献】 特開2006−349545(JP,A)
【文献】 実開昭59−142696(JP,U)
【文献】 特開2011−53077(JP,A)
【文献】 特開2006−29650(JP,A)
【文献】 特開平8−327573(JP,A)
【文献】 実開平5−36414(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 5/00− 9/36
25/00−25/72
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
あらかじめ設定してある測定位置に配置される試料容器と、
前記測定位置に配置された前記試料容器を包囲する石英ガラス製の透明な保護管と、
前記保護管の外周に配置され前記試料容器内の試料を加熱するとともに、前記測定位置に配置された前記試料容器内を観察するための開口部を有する加熱炉と、
前記測定位置と前記保護管の内面との間に着脱自在に配置される石英ガラス製の失透対策フィルターと、
を備えた熱分析装置。
【請求項2】
前記失透対策フィルターは、ばね性を有する支持片が基部から延出した保持具を用いて、前記支持片により前記保護管の内面に押し付けられた状態で保持される構成である請求項1の熱分析装置。
【請求項3】
前記支持片は、前記失透対策フィルターを前記保護管の軸方向へずらして保持できる長さとばね力を有している請求項2の熱分析装置。
【請求項4】
試料を入れた前記試料容器を前記測定位置に配置するとともに、測定済みの試料が入った前記試料容器を前記測定位置から取り出すための試料容器搬送機構を備え、前記加熱炉および保護管が移動して、前記測定位置に配置された前記試料容器を露出させる開閉自在な構造の熱分析装置において、
前記加熱炉は、前記開口部に対向して撮像機器を配置するための撮像機器装着手段を備え、前記撮像機器が前記加熱炉と一緒に前記測定位置の周囲から移動する構成とした請求項1乃至3のいずれか一項に記載した熱分析装置。
【請求項5】
前記加熱炉は、周囲に外枠を有し、
前記撮像機器装着手段は、前記外枠に前記撮像機器を固定するマウント金具である請求項4の熱分析装置。
【請求項6】
前記加熱炉は、周囲に外枠を有し、
前記撮像機器装着手段は、前記撮像機器を取り付ける機器取付部と、この機器取付部を移動させて前記撮像機器の像取込み部を前記加熱炉の開口部と対向する位置へ配置させるための機器移動調整機構と、を含む請求項4の熱分析装置。
【請求項7】
前記撮像機器は、撮影した撮像データを無線伝送するための通信手段を内蔵する請求項4乃至6のいずれか一項に記載の熱分析装置。
【請求項8】
前記撮像機器が撮影した撮像データを無線伝送するための通信手段を備える請求項4乃至6のいずれか一項に記載の熱分析装置。
【請求項9】
前記加熱炉の外枠の内側には、前記撮像機器と前記開口部との間に、複数枚の石英ガラスを間隙を設けて配置した請求項4乃至8のいずれか一項に記載の熱分析装置。
【請求項10】
さらに、前記石英ガラスの間隙に風を送るための送風ファンを備えた請求項9の熱分析装置。
【請求項11】
前記測定位置は、測定対象となる試料を入れた前記試料容器を配置するための第1の測定位置と、標準試料を入れた前記試料容器を配置するための第2の測定位置とを含み、
且つ、前記各測定位置は、前記加熱炉の中心軸に対して左右対称位置に設定された構成の請求項1乃至10のいずれか一項に記載の熱分析装置において、
前記加熱炉に設けた開口部は、外部から入射する光が前記第1の測定位置に配置した前記試料容器の全体に照射される領域に設けてある熱分析装置。
【請求項12】
前記加熱炉に設けた開口部は、当該加熱炉の中心軸を含む仮想の鉛直面から当該中心軸周りに前記第2の測定位置側へ向かう開口角よりも、前記仮想の鉛直面から当該中心軸周りに前記第1の測定位置側へ向かう開口角を大きく設定した請求項11の熱分析装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、加熱炉および保護管が、移動して測定位置に配置された試料容器を露出させる開閉自在な構造を備えた熱分析装置に関する。
【背景技術】
【0002】
熱分析装置には、TG(Thermogravimetry:熱重量測定)装置、DTA(Differential Thermal Analysis:示差熱分析)装置、DSC(Differential Scanning Calorimetry:示差走査熱量測定)装置、他種々の形式のものがある。TG装置は、温度変化あるいは時間の経過に対して試料の重量変化を測定する装置である。DTA装置は、熱的に安定な標準試料と測定対象となる試料とを同時に加熱して、試料が熱に反応した際に両者の間に現れた温度差を測定し、その温度差から試料に発生した熱変化を知る装置である。そして、これらTG装置とDTA装置の機能を併せもつ熱分析装置が、TG−DTA装置である。また、DSC装置は、加熱、冷却又は一定温度下にある試料が、吸熱反応または発熱反応する時の熱量を測定する装置である。さらに、加熱による発生ガスを分析する装置として、TG−MS(Thermogravimetry & Mass spectrometry:熱重量測定&ガス質量分析)装置、TPD(Temperature Programmed Desorption:昇温脱離ガス分析)装置等がある。
【0003】
これらの熱分析装置は、試料を加熱するための加熱炉を備えている。また、測定位置へ配置する試料容器を自動的に交換する試料搬送機構を併設した熱分析装置がある(例えば、特許文献1参照)。この種の試料搬送機構を併設した熱分析装置にあっては、試料容器の交換に際し、加熱炉を移動して試料容器を露出させる構造を備えている(例えば、特許文献1の段落「0017」「0018」を参照)。
また、加熱炉内の試料の変化を観察するために、加熱炉に開口部を設けるとともに、撮像機器を併設した構成の熱分析装置がある(例えば、特許文献2の段落「0028」を参照)。加熱炉内の試料は、開口部をとおして撮像機器によって観察される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2006−349545号公報
【特許文献2】特開2015−108540号公報
【特許文献3】特開2015−187597号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上述した加熱炉内の試料の変化を観察できる構成の熱分析装置にあっては、試料容器を配置する測定位置の上方に撮像機器が設置されているため、加熱炉を移動して試料容器を露出させても、撮像機器が障害となって試料搬送機構による試料容器の自動交換ができない。このため、撮像機器と試料搬送機構の両方を備えた熱分析装置は、従来存在しなかった。
本発明は、このような事情に鑑みてなされたもので、撮像機器による試料の観察と、試料容器の自動交換の機能を併せもつ熱分析装置の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係る熱分析装置は、試料を入れた試料容器をあらかじめ設定された測定位置に配置するとともに、測定済みの試料が入った試料容器を測定位置から取り出すための試料容器搬送機構と、測定位置に配置された試料容器を包囲する透明な保護管と、保護管の外周に配置され試料容器内の試料を加熱する加熱炉と、を備え、加熱炉および保護管が、移動して測定位置に配置された試料容器を露出させる開閉自在な構造の熱分析装置において、加熱炉は、測定位置に配置された試料容器内を観察するための開口部を有するとともに、開口部に対向して撮像機器を配置するための撮像機器装着手段を備え、撮像機器が加熱炉と一緒に測定位置の周囲から移動する構成とした。
【0007】
この熱分析装置によれば、撮像機器が加熱炉と一緒に測定位置の周囲から移動するので、測定位置の周囲が開放されて、試料容器搬送機構による測定位置への試料容器の配置や、測定位置からの試料容器の取り出しを障害なく行うことが可能となる。
【0008】
また、本発明に係る熱分析装置において、加熱炉は、周囲に外枠を有し、撮像機器装着手段は、外枠に撮像機器を固定するマウント金具で構成することができる。また、撮像機器装着手段は、撮像機器を取り付ける機器取付部と、この機器取付部を移動させて撮像機器の像取込み部を加熱炉の開口部と対向する位置へ配置させるための機器移動調整機構と、を含む構成とすることもできる。
【0009】
さらに、本発明に係る熱分析装置において、撮像機器は、撮影した撮像データを無線伝送するための通信手段を内蔵する構成とすることができる。また、撮像機器が通信手段を内蔵しない場合は、撮像機器が撮影した撮像データを無線伝送するための通信手段を熱分析装置が備えた構成とすることもできる。
この構成により、加熱炉を移動する際に障害となるおそれのある画像データ伝送用のケーブルが不要となる。
【0010】
また、本発明に係る熱分析装置において、加熱炉の外枠の内側には、撮像機器と開口部との間に、複数枚の石英ガラスを間隙を設けて配置した構成とすることができる。
この構成により、加熱炉に設けた開口部から漏れ出てくる熱気を、石英ガラスとその間隙に形成した空気層とで遮断することができる。
さらに、これら石英ガラスの間隙に風を送るための送風ファンを備えることで、間隙に滞留する熱気を帯びた空気を排気して、いっそう効率的に放熱することが可能となり、撮像機器を加熱炉からの熱気から保護することができる。
【0011】
さて、保護管を石英ガラスで製作すると、その内面に失透を生じることがある。
失透とは、石英ガラスで形成された保護管に、結晶粒の集合体が現れて、それら結晶粒の境界で光の散乱が生じ、保護管の表面が不透明になってしまう現象をいう。この失透は、加熱によりガス化した試料に含まれるアルカリ金属(ナトリウムなど)や水分などの不純物が、石英ガラスのガラス網目を切断し、結合の再配列を促進し、クリストバライトの結晶に変わることに起因して発生すると考えられている。石英ガラスでは、一般に高温に加熱されるほど失透が促進される。
【0012】
保護管の表面に失透が生じると、その内部に配置された試料の温度変化に伴う状態変化を、外部から観察できなくなる。すなわち、撮像機器による試料の観察ができなくなってしまう。また、いったん失透が生じて不透明になった石英ガラスは、もとの透明な状態に戻すことができない。しかし、石英ガラス製の保護管は高価格であり、頻繁に交換するのではユーザにとって経済的な負担が大きい。
【0013】
そこで、本発明に係る熱分析装置は、石英ガラスで製作した失透対策フィルターを、試料が配置される測定位置と保護管の内面との間に着脱自在に配置する構成を備えることもできる。
かかる構成を備えることで、加熱によりガス化した試料に含まれる不純物の保護管への付着を、失透対策フィルターにより防止することができる。
【0014】
ここで、失透対策フィルターは、ばね性を有する支持片が基部から延出した保持具を用いて、支持片により保護管の内面に押し付けられた状態で保持される構成とすることができる。
また、支持片は、失透対策フィルターを保護管の軸方向へずらして保持できる長さとばね力を有した構成とすることができる。
【0015】
失透対策フィルターにより保護管への失透の発生を防止することで、ユーザの経済的な負担が軽減される。
【0016】
なお、特開2015−187597号公報(特許文献3)には、ファーナスチューブ(保護管)を回転して加熱炉に装着し直すことで、失透が生じた部分を試料の対向位置から離し、複数回使用できるようにした構成が開示されている。
【0017】
また、本発明に係る熱分析装置において、測定位置は、測定対象となる試料を入れた試料容器を配置するための第1の測定位置と、標準試料を入れた試料容器を配置するための第2の測定位置とを含み、且つ、各測定位置は、加熱炉の中心軸に対して左右対称位置に設定された構成とする場合、加熱炉に設けた開口部は、外部から入射する光が第1の測定位置に配置した試料容器の全体に照射される領域に設けた構成とすることが好ましい。
例えば、加熱炉に設けた開口部は、当該加熱炉の中心軸を含む仮想の鉛直面から当該中心軸周りに第2の測定位置側へ向かう開口角よりも、仮想の鉛直面から当該中心軸周りに第1の測定位置側へ向かう開口角を大きく設定することで、第1の測定位置に配置した試料容器の全体に外部から入射する光を照射することが可能となる。
この構成により、開口部の縁部によって外部からの光が遮られて、第1の測定位置に配置した試料容器内の試料に影ができる現象を防止することができる。
【0018】
具体的には、加熱炉の中心軸に対して第1の測定位置の中心が4mmだけ横方向へシフトするとともに、第1の測定位置を中心とする撮像機器による試料の像取込角を左右20.5゜とした構成の熱分析装置において、加熱炉に設けた開口部は、当該加熱炉の中心軸を含む仮想の鉛直面から当該中心軸周りに第2の測定位置側へ向かって16.9゜以上の開口角を有するとともに、仮想の鉛直面から当該中心軸周りに第1の測定位置側へ向かって43.7゜以上の開口角を有する構成とすることが好ましい。
本発明者らの実験結果から、このように開口部の開口角を設定することで、第1の測定位置に配置した試料容器内の試料に影ができる現象を防止することができた。
【0019】
以上説明したとおり、本発明に係る熱分析装置は、撮像機器により試料を観察できる機能と、試料容器の自動交換の機能の両方を備えている。そして、撮像機器が加熱炉と一緒に測定位置の周囲から移動するので、測定位置の周囲が開放されて、試料容器搬送機構による測定位置への試料容器の配置や、測定位置からの試料容器の取り出しを障害なく行うことが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1図1は、本発明の実施形態に係る熱分析装置の全体構造を、加熱炉が閉じた状態で示す斜視図である。
図2図2は、本発明の実施形態に係る熱分析装置の全体構造を、加熱炉が開いた状態で示す斜視図である。
図3図3も、本発明の実施形態に係る熱分析装置の全体構造を、加熱炉が開いた状態で示す斜視図である。
図4図4Aは、天秤ユニットの先端部に形成された試料容器保持部の構成を示す斜視図である。図4Bは、各試料容器が配置される第1および第2の測定位置を示す横断面図である。
図5図5は、加熱炉の内部構造を示す切欠き斜視図である。なお、同図では、断面部分に付すべきハッチングを省略してある。
図6図6は、加熱炉に形成した開口部を上方から眺めた平面図である。
図7図7は、加熱炉の外枠とその周辺に設けた断熱および放熱構造を模式的に示す横断面図である。
図8図8は、加熱炉に形成した開口部の従来構造を示す横断面図である。
図9図9は、本発明の実施形態に係る熱分析装置において、加熱炉に形成した開口部の構造を示す横断面図である。
図10図10は、本発明の実施形態に係る熱分析装置の制御・処理系統を示すブロック図である。
図11図11は、熱分析測定に関する測定結果の表示部への表示例を示す図である。
図12図12は、本発明の他の実施形態に係る熱分析装置を説明するための切欠き斜視図である。なお、同図では、断面部分に付すべきハッチングを省略してある。
図13図13は、失透対策フィルターとその周辺構造を示す分解斜視図である。
図14図14は、失透対策フィルターの変形例を示す分解斜視図である。
図15図15は、本発明のさらに他の実施形態に係る熱分析装置の全体構造を示す斜視図である。
図16図16は、本発明のまたさらに他の実施形態に係る熱分析装置の全体構造を示す斜視図である。
図17図17は、加熱炉に形成した開口部の変形例を示す横断面図である。
【符号の説明】
【0021】
10:装置本体、11a,11b天秤ユニット、12a,12b:試料容器保持部、13a,13b:試料容器、14:第1の測定位置、15:第2の測定位置、16:案内レール、17:送風ファン、
20:加熱炉、O:中心軸、V:仮想の鉛直面、21:ヒータ、21a:ボビン、21b:ヒータ線、22:保護管、23:断熱筒、24:開口部、
30:外枠、31:スライダ、30a:切欠口、30b:スリット、32:石英ガラス、D:間隙、
40:サンプルチェンジャ、41:把持部材、
50:撮像機器、51:マウント金具、52:送信機、
60:中央処理部、61:加熱炉開閉駆動回路、62:サンプルチェンジャ駆動回路、63:加熱炉温度制御回路、64:TGデータ処理部、65:DTAデータ処理部、66:通信部、67:撮像データ処理部、68:表示部、
70:失透対策フィルター、71:組込み部品、72:締結具、73:保持具、74:締結具、75:被締結部、
101:TGデータ、102:DTAデータ、103:画像データ、
200:スマートフォン、201:把持部、202:XYZステージ、203:基盤、
300:スマートフォン、301:把持部、302:多関節アーム
【発明を実施するための最良の形態】
【0022】
以下、この発明の実施の形態について図面を参照して詳細に説明する。本実施形態では、TG−DTA装置に本発明を適用した場合を例示して説明する。
図1図3に示すように、本実施形態に係る熱分析装置(TG−DTA装置)は、装置本体10と、加熱炉20と、サンプルチェンジャ40(試料容器搬送機構)とを備えている。
【0023】
装置本体10には、TGおよびDTAの熱分析測定を実施するための構成として、図4Aに示すような棒状をした一対の天秤ユニット11a,11bが設けられている。これら各天秤ユニット11a,11bは、基端部分が装置本体10に内蔵され、中間部から先端部にかけては装置本体10の外部に露出して配置されている。各天秤ユニット11a,11bの先端部には、試料容器保持部12a,12bが形成してある。
一方の天秤ユニット11aの先端部に形成された試料容器保持部12aには、測定対象となる試料を入れた試料容器13aが配置される。この試料容器保持部12aは、熱分析測定の実施に際して試料を配置すべき第1の測定位置14に位置決めされている。また、他方の天秤ユニット11bの先端部に形成された試料容器保持部12bには、標準試料を入れた試料容器13bが配置される。この試料容器保持部12bは、熱分析測定の実施に際して標準試料を配置すべき第2の測定位置15に位置決めされている。ここで、第1の測定位置14と第2の測定位置15は、図4Bに示すように、加熱炉20の中心軸Oと同じ高さ位置で、当該中心軸Oに対して左右対称の位置に設定してある。これにより、加熱炉20からの輻射熱により、第1の測定位置14に配置された試料と、第2の測定位置15に配置された標準試料とが均等に加熱される。
【0024】
加熱炉20は、図5に示すように、円筒形状のボビン21aにヒータ線21bを巻回した構成のヒータ21を内蔵している。このヒータ21は、ヒータ線21bに電流を流した際に発熱し、その輻射熱をもってボビン21aの中空部内に配置された試料と標準試料とを加熱する。ボビン21aの中空部内には、さらに石英ガラス等の耐熱性のある透明材料によって形成された保護管22が設けてあり、試料と標準試料はこの保護管22の内側(中空部内)に配置される。
ヒータ21の外周には断熱筒23が同軸状に配設され、この断熱筒23によってヒータ21からの熱が外部へ漏れることを防止している。さらに断熱筒23の外周には外枠30が設けてあり、ヒータ21、保護管22および断熱筒23はこの外枠30に支持されている。
【0025】
上述した構成の加熱炉20は、装置本体10に搭載されている。ここで、装置本体10には前後方向に案内レール16が設けてあり、また加熱炉20の外枠30の底部にはスライダ31が設けてある。そして、スライダ31が案内レール16の上を前後方向に移動自在となっている。スライダ31は、図示しない駆動モータからの駆動力を受けて前後方向に移動する。このような移動機構をもって、加熱炉20は装置本体10に対して前後方向に移動し、第1および第2の測定位置14,15の周囲に加熱炉20を配置したり、また加熱炉20からこれら各測定位置14,15を露出させたりする。なお、本明細書においては、第1および第2の測定位置14,15の周囲に加熱炉20を配置された状態を、加熱炉20が閉じた状態といい、加熱炉20から各測定位置14,15が露出した状態を、加熱炉20が開いた状態という。
【0026】
サンプルチェンジャ40は、図2および図3に示すように、加熱炉20が開いた状態で作動する。サンプルチェンジャ40には、あらかじめ設定された経路を移動する把持部材41が組み込まれており、この把持部材41が各測定位置14,15の上方位置に移動するとともに、当該位置から昇降して、試料の入った試料容器13aを第1の測定位置14へ自動的に配置する。同様に、標準試料の入った試料容器13bを第2の測定位置15へ自動的に配置する。また、測定後には、各測定位置14,15から各試料容器13a,13bを取り出す。
サンプルチェンジャ40としては、公知の各種構造のものを適用することができる。例えば、既述した特許文献1に開示されたような構造のものを適用することも可能である。
【0027】
本実施形態に係る熱分析装置は、上述した基本的な構造に加え、第1の測定位置14に配置された試料容器13a内の試料を対象として、温度変化に伴う形態の変化を視覚的に観察するための構成が付加されている。
すなわち、加熱炉20には、図5および図6に示すように、ヒータ21および断熱筒23を貫いて開口部24が設けてあり、この開口部24をとおして第1の測定位置14に配置された試料容器13a内の試料を観察できるようになっている。
【0028】
さらに、加熱炉20の外枠30には、開口部24と対向する位置に撮像機器50を配置するための切欠口30aが形成してある(図6参照)。この切欠口30aには、図1および図7に示すように、マウント金具51(撮像機器装着手段)を介して撮像機器50が取り付け固定される。撮像機器50としては、マイクロスコープと称する拡大画像を撮像できるカメラや、市販のデジタルカメラ、ビデオカメラに加え、カメラ機能を備えたスマートフォンと称する多機能携帯電話機器も適用することができる。なお、スマートフォンを加熱炉20の外枠30に装着するための好適な手段については、他の実施形態として後に詳述する。
【0029】
このように本実施形態に係る熱分析装置は、撮像機器50を加熱炉20に装着することで、加熱炉20と一緒に撮像機器50が移動する。したがって、試料交換に際して加熱炉20を前方へ移動させたとき、撮像機器50も一緒に各測定位置14,15の周囲(特に、本実施形態では上方位置)から移動するので、図2および図3に示すように、加熱炉20が開いた状態において、各測定位置14,15の周囲が開放されて、サンプルチェンジャ40による測定位置への試料容器13a,13bの配置や、測定位置からの試料容器13a,13bの取り出しを障害なく行うことが可能となる。
【0030】
また、外枠30の内側には、図7に示すように、外枠30に取り付けた撮像機器50と断熱筒23に開けた開口部24との間に、複数枚(図では2枚)の石英ガラス32を間隙Dを設けて配置することで、断熱構造を形成してある。すなわち、断熱筒23に設けた開口部24から漏れ出てくる熱気を、石英ガラス32とその間隙Dに形成した空気層とで遮断することができる。
また、外枠30の側壁には複数のスリット30bが形成してある。さらに、加熱炉20が閉じた状態においてこのスリット30bの側方(石英ガラス32の側方でもある)となる装置本体10の部位には、送風ファン17が設けてある。この送風ファン17の駆動によって、石英ガラス32の間隙Dに風が送られ、間隙Dに滞留する熱気を帯びた空気を排気することができる。この構造により、いっそう効率的に放熱することが可能となり、撮像機器50を加熱炉20からの熱気から保護することができる。
【0031】
図8および図9は、加熱炉20に設けた開口部24の詳細構造を説明するための図である。
既述したとおり、第1の測定位置14と第2の測定位置15は、加熱炉20の中心軸Oと同じ高さ位置で、当該中心軸Oに対して左右対称の位置に設定してある。このため、図8に示すように、加熱炉20の中心軸Oを含む仮想の鉛直面Vを基準として、左右対称に開口部24を設けた場合、この開口部24と対向する位置には撮像機器50が配置されるため、当該撮像機器50の周囲から開口部24をとおして斜めに侵入してくる光線の照射領域が、第1の測定位置14に配置した試料容器13aから一部外れてしまうことがある。つまり、外部から入射する光線が、開口部24の縁部によって遮られ、第1の測定位置14に配置した試料容器13a内の試料に影ができることがある。この第1の測定位置14に配置した試料容器13a内の試料は、撮像機器50による観察対象であるため、当該試料に影ができた場合、明瞭な試料の画像や映像を得ることができない。
【0032】
そこで、図9に示すように、中心軸Oに対して第1の測定位置14の中心が横方向へシフトしている距離に応じて、加熱炉20に設けた開口部24は、当該加熱炉20の中心軸Oを含む仮想の鉛直面Vから当該中心軸O周りに第2の測定位置15側へ向かう開口角よりも、仮想の鉛直面Vから当該中心軸O周りに第1の測定位置14側へ向かう開口角を大きく設定して形成した。これにより、外部から入射する光線が、開口部24の縁部によって遮られることなく、第1の測定位置14に配置した試料容器13aの全体に照射されるようになる。
【0033】
具体的には、中心軸Oに対して第1の測定位置14の中心がシフト量e=4mmだけ横方向へシフトしている場合において、加熱炉20に設けた開口部24を、当該加熱炉20の中心軸Oを含む仮想の鉛直面Vから当該中心軸O周りに第2の測定位置15側へ向かって16.9゜以上の開口角(第1の開口角θ1)を有するとともに、仮想の鉛直面Vから当該中心軸O周りに第1の測定位置14側へ向かって43.7゜以上の開口角(第2の開口角θ2)を有する構成とすることで、外部から入射する光線が、開口部24の縁部によって遮られることなく、第1の測定位置14に配置した試料容器13aの全体に照射される状態が実現できた。
【0034】
なお、撮像機器50の第1の測定位置14を中心とする試料の像取込角は、左右20.5゜であった。具体的には、撮像機器50は、カメラレンズ(像取込み部)の中心軸を第1の測定位置14の中心に合わせ、当該中心O1を含む仮想の鉛直面V1から当該中心O1の周りに第2の測定位置15側へ向かう像取込角が20.5゜(第1の像取込角θ3)、仮想の鉛直面V1から当該中心O1の周りに第1の測定位置14側へ向かう像取込角も20.5゜(第2の像取込角θ4)という仕様であった。
【0035】
ここで、各開口角を大きくとれば外部からの光線を多く加熱炉20内に取り込むことができる反面、外部から低温の空気が流れ込んで加熱炉20内の均熱性が損なわれてしまうおそれが増す。よって、第1の開口角θ1は16.9゜に近く、第2の開口角θ2は43.7゜に近い角度に設定することが、加熱炉20の均熱性を保持する観点からは好ましい。
【0036】
一方、試料観察の多様性をいっそう高めるために、第2の開口角θ2をさらに拡げ、第1の測定位置14に配置した試料を開口部24をとおして目視観察できるように形成することもできる。
【0037】
なお、第1の測定位置14と第2の測定位置15の加熱状態に差が生じる場合は、DTAの測定結果に傾きとして現れるため、当該傾きをソフト的に補正することで、均熱性が保持された測定結果と同等のデータを得ることができる。またこの他にも、試料と標準試料との間の温度差を測定する回路の補正用抵抗値を調整することで加熱状態の差を修正したり、各測定位置14,15に対しヒータ21を左右いずれかの方向へ僅かに移動させて均熱性を確保する機械的調整機構を設けるなど、均熱性を担保するための種々の手法が既に知られているので、必要に応じてそれらの手法を適用することが好ましい。
【0038】
図10は、上述した本実施形態に係る熱分析装置の制御・処理系統を示すブロック図である。
熱分析装置の制御・処理系統は、中央処理部(CPU)60、加熱炉開閉駆動回路61、サンプルチェンジャ駆動回路62、加熱炉温度制御回路63、TGデータ処理部64、DTAデータ処理部65、通信部66、撮像データ処理部67および表示部68などの各部要素を含んでいる。具体的には、これらの各部要素は、パーソナルコンピュータとその周辺機器で構成され、パーソナルコンピュータにあらかじめ保存された制御・処理プログラムに従って、中央処理部60が指令信号を出力して、各部要素が作業を実行する。
【0039】
熱分析測定に際しては、まず加熱炉開閉駆動回路61からの駆動信号によって、熱分析装置の装置本体10に設けた駆動モータ(図示せず)が作動して、加熱炉20を前方へ移動させて加熱炉20が開いた状態を形成する。
続いて、サンプルチェンジャ駆動回路62からの駆動信号によって、サンプルチェンジャ40が作動して、第1の測定位置14に位置決めされた試料容器保持部12aに、測定対象となる試料が入った試料容器13aを自動的に配置する。同様に、サンプルチェンジャ40が作動して、第2の測定位置15に位置決めされた試料容器保持部12bに、標準試料が入った試料容器13bを自動的に配置する。
【0040】
このとき、加熱炉20が開いた状態では、撮像機器50も各測定位置14,15の周囲(特に、本実施形態では上方位置)から移動しているので、各測定位置14,15の周囲が開放されて、サンプルチェンジャ40による測定位置への各試料容器13a,13bの配置を障害なく行うことができる(図2および図3参照)。
【0041】
各試料容器13a,13bを各測定位置14,15へ配置した後、加熱炉開閉駆動回路61からの駆動信号によって、熱分析装置の装置本体10に設けた駆動モータ(図示せず)が作動して、加熱炉20を後方へ移動させて加熱炉20が閉じた状態を形成する。
【0042】
次に、加熱炉温度制御回路63からの制御信号によって、加熱炉20のヒータ線21bに電流が流され、あらかじめ設定された昇温プログラムにしたがって、試料と標準試料とを加熱していく。
同時に、熱分析装置から出力されるTG(熱重量測定)に関するデータ(TGデータ)は、TGデータ処理部64に送られて、同処理部64でデータ処理され、TGに関する測定結果が表示部68に出力されて画面に表示される。
また、熱分析装置から出力されるDTA(示差熱分析)に関するデータ(DTAデータ)は、DTAデータ処理部65に送られて、同処理部65でデータ処理され、DTAに関する測定結果が表示部68に出力されて画面に表示される。
【0043】
さらに、本実施形態の熱分析装置には撮像機器50が設置されており、撮像機器50が撮影した試料の撮像データが、撮像データ処理部67に送られてくる。ここで、熱分析装置には撮像機器50が撮影した撮像データを無線伝送するための送信機52(通信手段)が併設してある。送信機52としては、例えば、無線LAN、ブルートゥース(登録商標)、赤外線通信などの通信規格に適合して通信機器を適用することができる。
このように撮像機器50が撮影した撮像データを無線伝送することで、加熱炉20を移動する際に障害となるおそれのある画像データ伝送用のケーブルが不要となる。
【0044】
撮像機器50から無線伝送されてきた撮像データは、通信部66で受信して、撮像データ処理部67に送られて同処理部でデータ処理され、試料の画像データが表示部68に出力されて画面に表示される。
【0045】
図11は、熱分析測定に関する測定結果の表示部68への表示例を示す図である。
同図に示すように、本実施形態に係る熱分析装置は、TGデータ101とDTAデータ102に加え、温度変化に伴う適宜のタイミングで取得した試料の画像データ103が貼り付けられた内容の測定結果が、表示部68に表示される。このためユーザは、画像データ103を参照して試料の状態変化を視覚的に観察することができる。
【0046】
〔他の実施形態−1〕
図12図14は、本発明の他の実施形態を示している。
本実施形態に係る熱分析装置は、試料が配置される第1の測定位置14と保護管22の内面との間に、失透対策フィルター70を配置することで、加熱によりガス化した試料に含まれる不純物の保護管22への付着を防止し、保護管22に失透が生じないようにしてある。
【0047】
失透対策フィルター70は、耐熱性を有する透明な石英ガラスの板材で構成してある。図12および図13に示す失透対策フィルター70は、保護管22の内面形状に合わせた曲率の湾曲形状に形成してあり、保護管の内面に接触して配置可能となっている。この失透対策フィルター70は、保護管22よりも寸法が小さく、保護管に比べて高い加工精度も要求されないので、安価に製作することができる。
【0048】
図13に示すように、保護管22の基端部は環状の組込み部品71に嵌め込んである。そして、この組込み部品71を加熱炉20にねじ等の締結具72を用いて装着することで、保護管22が加熱炉20の内部に組み込まれる。
【0049】
組込み部品71には、締結具74(例えば、ねじ)を用いて保持具73を装着するための被締結部75(例えば、ねじ穴)が形成してある。
保持具73は、失透対策フィルター70を保護管22の内部で保持するための部品である。保持具73は、基部73aから延出する支持片73bがばね性を有しており、基部73aが組込み部品71に装着されて、支持片73bが保護管22の内部へ挿入される。この保持具73は、保護管22の内部で、支持片73bにより失透対策フィルター70を押圧する。この押圧作用をもって、失透対策フィルター70は保護管22の内面に押し付けられた状態で保持される。
【0050】
組込み部品71における被締結部75は、そこに装着した保持具73が、第1の測定位置14と保護管22との間へ失透対策フィルター70を保持できるように、第1の測定位置14との位置関係を考慮して形成してある。
【0051】
また、保持具73の支持片73bは、失透対策フィルター70を保護管22の軸方向へ適宜ずらして保持できるように、支持片73bの長さとばね力を調整してある。すなわち、失透対策フィルター70の失透により不透明になった部位を、第1の測定位置14と対向する位置からずらして配置することで、失透対策フィルター70の複数箇所を失透対策に利用でき、ユーザの経済的な負担をいっそう軽減することが可能となる。さらに、失透対策フィルター70は、前端と後端を逆転させて保護管22の内部へ配置してもよく、これによりさらに多くの部位を失透対策に利用することができる。
【0052】
熱分析測定に際しては、あらかじめ予備測定を実施することが好ましい。予備測定では、失透対策フィルター70に生じた失透の状態から、失透が促進される温度を見極める。そして、当該温度を超えない範囲で熱分析測定を実施することで、失透対策フィルター70の交換頻度や、第1の測定位置14と対向する部位を移動調整する頻度を減らすことが可能となる。これにより、複数の試料に対して自動交換による効率的な熱分析を行うことができる。しかも、失透対策フィルター70により保護管22への失透の発生を防止することで、ユーザの経済的な負担が軽減される。
【0053】
図14に示す失透対策フィルター70は、平板状の石英ガラスによって製作してある。このように平板状とすることで、失透対策フィルター70の製作コストをさらに低減することができ、ユーザの経済的な負担をなおいっそう軽減することが可能となる。
平板状の失透対策フィルター70は、保持具73により、両側縁70a、70bを保護管22の内面に押し当てて保持することができる。
【0054】
なお、上述した説明では、試料が配置される第1の測定位置14と保護管22の内面との間に、失透対策フィルター70を配置可能な構成としたが、標準試料が配置される第2の測定位置15と保護管22の内面との間にまで、失透対策フィルター70の配置領域を拡げればさらに好ましい。
【0055】
〔他の実施形態−2〕
図15および図16は、本発明のぞれぞれ別の実施形態を示している。なお、これら各図では、サンプルチェンジャを省略してあるが、実際は先の実施形態と同様にサンプルチェンジャ40が設置される。
【0056】
図15に示す熱分析装置は、カメラ機能を備えたスマートフォン200を撮像機器として利用し、把持部201(機器取付部)でスマートフォン200を把持するとともに、この把持部201を前後方向(X方向)、左右方向(Y方向)、上下方向(Z方向)に移動調整できるXYZステージ202(機器移動調整機構)で支持する構造の撮像機器装着手段を備えている。XYZステージ202を搭載する基盤203は、加熱炉20の外枠30に固定されている。
XYZステージ202に沿って把持部201を移動調整することで、スマートフォン200のカメラレンズ(像取込み部)を加熱炉20の開口部24と対向する位置へ容易に配置させることができる。
【0057】
また、図16に示す熱分析装置は、カメラ機能を備えたスマートフォン300を撮像機器として利用し、把持部301(機器取付部)でスマートフォン300を把持するとともに、この把持部301を任意の方向へ屈曲自在な多関節アーム302(機器移動調整機構)で支持する構造の撮像機器装着手段を備えている。多関節アーム302の基部は、加熱炉20の外枠30に固定されている。
多関節アーム302を自由に屈曲させることで把持部301を移動調整して、スマートフォン300のカメラレンズ(像取込み部)を加熱炉20の開口部24と対向する位置へ容易に配置させることができる。
【0058】
スマートフォン200,300には、例えば、無線LAN、ブルートゥース(登録商標)、赤外線通信などの通信規格に従って、カメラで撮影した撮像データを無線伝送するための通信回路(通信手段)があらかじめ内蔵されているため、先の実施形態のように送信機52を別途併設する必要がない。
なお、スマートフォンの他にも、無線LAN通信機能付きのデジタルカメラやビデオカメラを撮像機器50として利用した場合にも、先の実施形態のように送信機52を別途併設する必要がなくなる。これらデジタルカメラやビデオカメラも、図15図16に示した撮像機器装着手段によって加熱炉20の外枠30に装着することができる。
【0059】
〔変形例・応用例〕
なお、本発明は上述した各実施形態に限定されるものではなく、種々の変形実施や応用実施が可能であることは勿論である。
例えば、加熱炉20に設けた開口部24は、図17に示すように、加熱炉20の中心軸Oを含む仮想の鉛直面Vと平行に切り欠いて形成することもできる。同図に示した開口部24も、加熱炉20の中心軸Oを含む仮想の鉛直面Vから当該中心軸O周りに第2の測定位置15側へ向かう第1の開口角θ1よりも、仮想の鉛直面Vから当該中心軸O周りに第1の測定位置14側へ向かう第2の開口角θ2を大きく設定してある。
また、本発明は、TG−DTA装置以外の熱分析装置にも適用することができる。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17