特許第6606783号(P6606783)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6606783蓄電池用空冷放熱部品及び蓄電池用空冷放熱部品の製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6606783
(24)【登録日】2019年11月1日
(45)【発行日】2019年11月20日
(54)【発明の名称】蓄電池用空冷放熱部品及び蓄電池用空冷放熱部品の製造方法
(51)【国際特許分類】
   H01L 23/40 20060101AFI20191111BHJP
   H05K 7/20 20060101ALI20191111BHJP
【FI】
   H01L23/40 Z
   H05K7/20 E
【請求項の数】9
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2015-168529(P2015-168529)
(22)【出願日】2015年8月28日
(65)【公開番号】特開2017-45909(P2017-45909A)
(43)【公開日】2017年3月2日
【審査請求日】2018年8月24日
(73)【特許権者】
【識別番号】391006083
【氏名又は名称】三光合成株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100095740
【弁理士】
【氏名又は名称】開口 宗昭
(72)【発明者】
【氏名】豊福 顕之
(72)【発明者】
【氏名】松本 直哉
【審査官】 河合 俊英
(56)【参考文献】
【文献】 特開2013−030579(JP,A)
【文献】 特開平08−125093(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 23/40
H05K 7/20
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
金属部品と、その金属部品を装着する樹脂ホルダと、その金属部品から伝熱可能に設置される放熱フィンとよりなる蓄電池用空冷放熱部品において、
前記金属部品には、前記樹脂との密着性を向上するための表面処理がなされており、
前記放熱フィンには、複数のフィンを形成した本体部の反対側の側面に第一の凹部が設けられ、前記樹脂ホルダに前記第一の凹部に嵌合する放熱フィン係止部が設けられ、
前記金属部品と前記放熱フィンとが当接されていることを特徴とする蓄電池用空冷放熱部品。
【請求項2】
前記第一の凹部には、その第一の凹部の開口部の幅と比べ、その第一の凹部を形成する対向面間の最短間隔が大なる部位が設けられる請求項1に記載の蓄電池用空冷放熱部品。
【請求項3】
前記金属部品を介して対称に一対の放熱フィンが配設される請求項1又は請求項2に記載の蓄電池用空冷放熱部品。
【請求項4】
前記樹脂ホルダには前記放熱フィンの側部に係止する側部係止部が一体に形成され、前記放熱フィンは前記放熱フィン係止部と前記側部係止部間に挟持される請求項1〜請求項3のいずれか一に記載の蓄電池用空冷放熱部品。
【請求項5】
前記放熱フィンには空気通路とされる第二の凹部が形成される請求項1〜請求項4のいずれか一に記載の蓄電池用空冷放熱部品。
【請求項6】
前記放熱フィンが押出成型されてなる請求項1〜請求項3いずれか一に記載の蓄電池用空冷放熱部品。
【請求項7】
押出成型されてなる前記放熱フィンには相互に平行な複数のフィン列を一の組として2組以上のフィン列が設けられる請求項6に記載の蓄電池用空冷放熱部品。
【請求項8】
金型内に金属部品を配置する工程と、金属部品を配置した金型内に樹脂を充填する工程と、金型内に放熱フィンを前記金属部品と接触させて配置する工程とを有し、前記金属部品には樹脂との密着性を向上するための表面処理を行うこと、及び
前記放熱フィンには樹脂湯道が形成され、金型内に樹脂が充填されることによって前記放熱フィンの前記樹脂湯道に樹脂を充填することを特徴とする蓄電池用空冷放熱部品の製造方法。
【請求項9】
前記放熱フィンの樹脂流路は、放熱フィンに形成された第一の凹部であり、その第一の凹部の開口部の幅と比べ、その第一の凹部を形成する対向面間の最短間隔が大なる部位が設けられる請求項3又は請求項4に記載の蓄電池用空冷放熱部品の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、放熱を必要とする蓄電池用空冷放熱部品及び蓄電池用空冷放熱部品の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
蓄電池部品、電子部品、原動機部品等の放熱を必要とする放熱部品が存在する。
例えばラップトップ形などの小形電子機器で使用されているICパッケージ等の各種電子部品は、その集積化に伴い年々発熱密度が増加してきている。そのためICパッケージ等の各種電子部品の放熱を促進して信頼性を確保するため、ヒートシンクが活用されている。
このヒートシンクは発熱素子を取り付けるベース板と、ベース板からの熱を放熱させるフィンから構成される。またその冷却方法は、発生する熱により生じる空気の対流を利用した自然冷却と、ファンにより空気を強制的に対流させたり、水などの冷却媒体を用いる強制冷却とに大別される。
従来この放熱部品の取り付けはICパッケージ等の各種電子部品に対して、ヒートシンク等の放熱部品を例えば熱伝導性接着剤によって接着する方法や、熱伝導性両面テープや、ボルト、クリップ等を用いて固定している。
【0003】
この従来の接着方法では、例えば熱伝導性接着剤を用いる場合には熱伝導性接着剤が経年変化により剥れ、剥れた放熱部品が装置内部の導電部に付着して機器の故障の要因となるという問題があった。また熱伝導性接着剤によって接着後乾燥するまでに待機時間が必要となりこれが生産性向上の障害となっていた。
【0004】
これに対する対策として特許文献1には高熱伝導性金属製の放熱部品が、その接触部と前記電子部品との間に熱伝導性が良く且つ弾力性のあるゴム製シートを介在させて前記取付部を機器内部の構造部品にボルトなど機械的手段により固定した小形電子機器における電子部品への放熱部品取付構造が開示された。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平6-77367号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
以上の特許文献1に示される放熱部品取付構造では放熱部品固定に費用と時間が掛かっており大量生産には不向きである。又ボルト等で固定するので工程数が増加し、効率が悪く生産性が低い。
【0007】
本発明は以上の従来技術における問題に鑑み、放熱部品の取付を簡便化しながらしかも大きな冷却効果が得られる放熱部品及び放熱部品の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
すなわち本発明に係る放熱部品は金属部品と、その金属部品を装着する樹脂ホルダと、その金属部品から伝熱可能に設置される放熱フィンとよりなる放熱部品において、前記樹脂ホルダに放熱フィン係止部が設けられ、前記放熱フィンには、前記放熱フィン係止部を嵌合する嵌合部が設けられることを特徴とする。
【0009】
前記放熱フィンとして押出成型されてなるものを用いることができ、これにより生産性の向上を図ることができる。
【0010】
また本発明に係る放熱部品の製造方法は金型内に金属部品を配置する工程と、金属部品を配置した金型内に樹脂を充填する工程と、金型内に放熱フィンを前記金属部品と接触させて配置する工程とを有し、前記放熱フィンには樹脂湯道が形成され、金型内に樹脂が充填されることによって前記放熱フィンの前記樹脂湯道に樹脂を充填することを特徴とする。
【0011】
前記金属部品には樹脂との密着性を向上するための表面処理を行うのがよい。
係る方法としては、各種化成処理や陽極酸化処理(アルマイト処理)、KO処理やソフトエッチングすることで金属部品表面に超微細な独特の凹凸形状をつくり、樹脂との密着強度を向上させる方法等がある。
【0012】
前記放熱フィンの樹脂流路は、放熱フィンに形成された第一の凹部であり、その第一の凹部の開口部の幅と比べ、その第一の凹部を形成する対向面間の最短間隔が大なる部位が設けられることによって樹脂凝固後に放熱フィンの第一の凹部からの樹脂の抜け落ちを防止することができる。
【発明の効果】
【0013】
本発明の蓄電池部品、電子部品、原動機部品等の放熱を必要とする部品すなわち放熱部品及び放熱部品の製造方法によれば、放熱部品の取付を簡便化しながらしかも大きな冷却効果が得られる放熱部品及び放熱部品の製造方法を得ることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】本発明の一実施の形態に係る放熱部品の平面図である。
図2図1に示す本発明の一実施の形態に係る放熱部品の部分斜視図である。
図3図1に示す本発明の一実施の形態に係る放熱部品の他の部分斜視図である。
図4図1図3に示す本発明の一実施の形態に係る放熱部品に用いられる部品の(a)斜視図、(b)背面図、(c)正面図である。
図5図4に示す本発明の一実施の形態に係る放熱部品の部品の(a)図1Va−Va部分断面模式図、(b)図5(a)Vb−Vb部分断面模式図である。
図6】本発明の放熱部品の製造方法に用いる金型の模式断面図であり、図6(a)は図図1VIa−VIaに相当する部位を示し、図6(b)は図1VIb−VIbに相当する部位を示す。
図7】本発明の他の実施の形態に係る放熱部品の部品の図5(a)に対応する部分断面模式図である。
図8】本発明の他の実施の形態に係る放熱部品の部品の(a)、(b)、(c)各断面模式図である。
図9】本発明の他の実施の形態に係る放熱部品の部品の(a)、(b)、(c)各断面模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下に本発明の一実施の形態の放熱部品及び放熱部品の製造方法につき図面を参照して説明する。
図1図3に示されるように本発明の一実施の形態の放熱部品1は樹脂ホルダ2によって金属部品3と放熱フィン4とを担持した態様で構成される。その様に構成された状態で金属部品3の一体延長部の一側面3aに放熱フィン4のフィン5を形成した本体部6の反対側の側面が直接当接することによって金属部品3と放熱フィン4の相互間で伝熱可能にされる。
【0016】
図4(a)に示す様に放熱フィン4は本体部6と一体に4列のフィン5を形成してなる。その複数のフィン5を形成した本体部6の反対側の側面には第一の凹部7が設けられる。図5(a)(b)に示す様に放熱フィン4の第一の凹部7は樹脂ホルダ2と一体に形成された放熱フィン係止部2aと嵌合する嵌合部となる。
【0017】
放熱フィン係止部2aと嵌合する嵌合部となる第一の凹部7は図4(b)に示す様にフィン5と同様放熱フィン4の長手方向一方端から他方端に渡って直行して形成され、一方端及び他方端に開放端部7a,bが形成されてなる。
以上のように放熱フィン4は第一の凹部7がフィン5と同様放熱フィン4の長手方向一方端から他方端に渡って直行して形成される形態とされる結果、放熱フィン4は押し出し成形によって生産性よく製造することができる。
また図4(c)に示す様に第一の凹部7は開口部7cから内方に向かって徐々に拡開される形態とされる結果、第一の凹部7の開口部7cの幅W1と比べ、その第一の凹部7を形成する対向面8a,8b間の最短間隔W2が大なるようにされる。
【0018】
図6に金属部品3と放熱フィン4とを樹脂ホルダ2によって担持するための金型9の模式断面図を示す。
図に示されるように、金型9内には金属部品3を配置する領域が形成されており、係る部分に金属部品3が配置される。また金型9内には放熱フィン4を配置する領域が形成されており、放熱フィン4のフィン5を形成した本体部6の反対側の側面が金属部品3の一体延長部の一側面3aに直接当接するように、放熱フィン4を配置する領域に放熱フィン4を配置する。その状態で金型9内に金属部品3を担持する樹脂を充填すると、放熱フィン4の第一の凹部7が樹脂湯道となり、その長手方向一方端から他方端に渡って第一の凹部7内に樹脂が充填される。その後、充填された全体の樹脂が凝固して収縮することによって第一の凹部7内外の樹脂によって挟持される態様で放熱フィン4と樹脂ホルダ2とは強固に密着した状態となる。
【0019】
特に樹脂湯道となる第一の凹部7は開口部7cから内方に向かって徐々に拡開されるアンカー状の形態とされている結果、樹脂充填後、凝固した樹脂ホルダ2と第一の凹部7とは強固に嵌合した状態となる。
また金属部品3も樹脂ホルダ2によって強固に担持されると同時に、樹脂の収縮の効果によって放熱フィン4のフィン5を形成した本体部6の反対側の側面が金属部品3の一体延長部の一側面3aに直接当接し、相互に圧接されて高い熱伝導性が保証された放熱部品1を得ることができる。
【0020】
金属部品3としてはアルミを用いることができる。また樹脂ホルダ2を形成する樹脂は、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)、ポリブチレレン−エチレンテレフタレート(PBT−PET共重合樹脂)、ポリエーテル・エーテルケトン(PEEK樹脂)、ポリフェニレンサルファイド(PPS)、ポリエーテルイミド(PEI)、6ナイロン(PA6)、6−6ナイロン(PA66)、6Tナイロン(PA6T)、ポリフタルアミド(PPA)、ポリスチレン(PS)、ABS樹脂(ABS)、塩化ビニル樹脂(PVC)、ポリアセタール(POM)、液晶ポリマー(LCP)、ポリサルホン(PSU)、ポリプロピレン(PP)、ポリカーボネート(PC)、等の熱可塑性樹脂である。これらを単独又は混合して用いることができる。また、フェノール樹脂(PF)、エポキシ樹脂(EP)、ジアリルフタレート樹脂(PDAP)、シリコーン樹脂(SI)、ポリイミド樹脂(PI)、メラミン樹脂(MF)、ユリア樹脂(UF)等の熱硬化性樹脂である。これらの熱可塑性樹脂ならびに熱硬化性樹脂に、耐熱性や寸法安定性を向上させる目的で、炭素繊維、ガラス繊維、ガラスビーズ、タルク等の無機充填材を適宜配合してもよい。またセルロースナノファイバー等の有機充填剤を適宜配合しても良い。
【0021】
図7は本発明の他の実施の形態に係る放熱部品の部品の図5(a)に対応する部分断面模式図を示す。
本実施の形態の放熱部品では金属部品3の一体延長部の一側面3aを介して対称に一対の放熱フィン4a及び放熱フィン4bが配設される。そのため樹脂ホルダ2には放熱フィン4aの第一の凹部7aと嵌合する嵌合部となる放熱フィン係止部2aに加えて、放熱フィン4bの第一の凹部7bと嵌合する嵌合部となる放熱フィン係止部2bが放熱フィン係止部2aと一体に形成される。その様に放熱フィン係止部2aと放熱フィン係止部2bとが一体に形成される結果、樹脂充填後の凝固収縮が原動力となって放熱フィン4a,bのフィン5a,bを形成した本体部6a,bの側面が金属部品3の一体延長部の両側面3aに強固に押圧され、密着性が向上して高い熱伝導が得られる。
【0022】
図8(a)は本発明の他の実施の形態に係る放熱部品の部品の図5(a)に対応する部分断面模式図を示す。
本実施の形態の放熱部品では樹脂ホルダ2には放熱フィン4の第一の凹部7と嵌合する嵌合部となる放熱フィン係止部2aに加えて、放熱フィン4の側部に係止する側部係止部2cが一体に形成される。図示されるように放熱フィン係止部2aと側部係止部2cとは一体に形成される結果、樹脂充填後の凝固収縮が原動力となって放熱フィン4のフィン5を形成した本体部6は放熱フィン係止部2aと側部係止部2cとの間に強固に挟持される。
【0023】
図8(b)(c)は本発明のさらに他の実施の形態に係る放熱部品の部品の各態様を示す。図8(b)に示す態様では、放熱フィン4には相互に並列する複数の第二の凹部7−1、7−2、7−3が形成される。
図8(c)に示す態様では、放熱フィン4には相互に並列する一対の第二の凹部7−4、7−5が形成される。
以上の図8(b)に示す放熱フィン4の複数の第二の凹部7−1、7−2、7−3及び図8(c)に示す放熱フィン4の第二の凹部7−4、7−5には特には樹脂は充填されず強制空冷時の空気通路とされる。
【0024】
図9(a)(b)(c)は本発明のさらに他の実施の形態に係る放熱部品の部品の各態様を示す。図9(a)に示す態様では、放熱フィン4にはフィン5に加えてその側部にフィン5aが一体に設けられる。図9(b)に示す態様では、放熱フィン4には本体部6に台形状の第二の凹部7−6が形成される。図9(c)に示す態様では、放熱フィン4には本体部6に台形状の第二の凹部7−6が形成されると共にフィン5に加えてその側部にフィン5aが一体に設けられる。この図9(b)(c)に示す第二の凹部7−6には特には樹脂は充填されず強制空冷時の空気通路とされる。
【符号の説明】
【0025】
4・・・放熱フィン、1・・・放熱部品、5・・・フィン、7・・・第一の凹部、3・・・金属部品、8a,8b・・・対向面、2・・・樹脂ホルダ。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9