(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記バイパスポートの開口面積の合計をSv、前記ディスチャージポートの開口面積の合計をSm、前記吐出口の開口面積をSt、前記吐出配管の開口面積をSfとしたとき、下記(1)式を満たす請求項1ないし6のうち、いずれか1項記載のスクロール圧縮機。
Sv≦Sm≦St≦Sf ・・・(1)
【背景技術】
【0002】
従来、スクロール圧縮機は、例えば、業務用マルチエアコンの室外機として利用される場合がある。この場合、1台のスクロール圧縮機に対して複数台の室内機が接続される。
上記構成とされた業務用マルチエアコンでは、スクロール圧縮機が全ての室内機を運転可能な能力が必要になるとともに、1台の室内機のみを運転可能な能力も必要となる。
【0003】
このような能力を満たすために、スクロール圧縮機は、バイパスポート(バイパス孔)と、バイパスポートを開閉する第1逆止弁と、を有する(例えば、特許文献1参照)。
バイパスポートは、固定スクロールの端板に設けられた吐出口よりも外側に位置する固定スクロールの端板を貫通している。第1逆止弁は、固定スクロールの端板の一面に固定されている。第1逆止弁は、バイパスポートを開閉させる。
バイパスポートから吐出された流体は、バイパスラインを介することで、圧縮中の流体(冷媒)をハウジング内の吸入空間に戻す。
【0004】
また、従来のスクロール圧縮機には、ディスチャージポート及び第2逆止弁と、を備えた圧縮機がある。
ディスチャージポートは、吐出口よりも外側に位置する固定スクロールの端板を貫通するように設けられている。第2逆止弁は、固定スクロールの端板の一面に固定されており、ディスチャージポートを開閉させる。
このような構成とすることで、第1逆止弁及び第2逆止弁が配置された中間室の外側に配置された吐出室と中間室との間の圧力差が小さい場合において、過度に流体を圧縮する前に流体を吐出空間に導出することが可能となる。これにより、過大圧縮損失を抑制することが可能となる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、ケーシングの外側において、吐出室と室内機とを接続する流体供給ラインとバイパスラインから分岐した分岐ラインとを接続させて、バイパスポートをディスチャージポートとしても利用することが考えられる。
しかしながら、この場合、バイパスライン内を流れる圧縮された流体が流体供給ライン内に直接流れ込むことになる。このため、流体の脈動が発生する可能性があった。
【0007】
そこで、本発明は、流体の脈動の発生を抑制することの可能なスクロール圧縮機を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するため、本発明の一態様に係るスクロール圧縮機は、流体が導入される吸入室と、吐出配管と連通された吐出室と、前記吸入室と前記吐出室との間に設けられた固定スクロール及び旋回スクロールを備え、前記固定スクロールに設けられた吐出口から圧縮された前記流体を前記吐出室に吐出するスクロール圧縮機本体と、前記吐出口よりも外側に位置する前記スクロール圧縮機本体から圧縮途中の流体を取り出すバイパスポートと、前記スクロール圧縮機本体と前記吐出室との間で、かつ前記吐出口よりも外側に設けられた中間室と、前記バイパスポートを経由して、前記中間室に前記圧縮途中の流体を吐出する第1逆止弁と、前記バイパスポートから前記圧縮途中の流体が吐出される中間室と、前記流体の容量制御運転がオンのときに開状態とされることで、前記中間室に吐出された前記圧縮途中の流体を前記吸入室に戻す開閉弁と、前記容量制御運転がオフのときに、前記中間室内の圧力が前記吐出室内の圧力
よりも高くなった際に開状態とされ、前記中間室に吐出された前記圧縮途中の流体を、ディスチャージポートを経由して前記吐出室に吐出させる第2逆止弁と、
前記端板の一面と対向するように設けられ、前記固定スクロールの端板との間に前記中間室を区画するカバーと、を備え
、前記ディスチャージポート及び前記第2逆止弁は、前記カバーに設けられており、前記カバーは、前記吐出口と前記吐出室とを連通する開口部を有する。
【0009】
本発明によれば、吐出配管と連通された吐出室を設けることで、ディスチャージポートから吐出された流体が吐出室を経由した後に吐出配管に導かれるため、吐出室において流体の脈動を低減することが可能となる。これにより、流体の脈動の発生を抑制することができる。
また、バイパスポートが設けられた固定スクロールの端板とは異なる部材であるカバーにディスチャージポートを設けることで、バイパスポートの形成位置とディスチャージポートの形成位置とが干渉することがなくなるので、バイパスポートの形成位置、及びディスチャージポートの形成位置の自由度を高めることができる。
【0010】
また、上記本発明の一態様に係るスクロール圧縮機において、前記第1逆止弁は、前記吐出室側に位置する前記固定スクロールの端板の一面に設けてもよい。
【0011】
このように、吐出室側に位置する固定スクロールの端板の一面に第1逆止弁を設けることで、バイパスポートを経由して、中間室に圧縮途中の流体を吐出することができる。
【0012】
また、上記本発明の一態様に係るスクロール圧縮機において、前記バイパスポートから取り出した前記圧縮途中の流体を前記吸入室に導くバイパス配管を備え、前記開閉弁は、前記バイパス配管に設けてもよい。
【0013】
このような構成とされたバイパス配管を設けるとともに、開閉弁をバイパス配管に設けることで、中間室に吐出された圧縮途中の流体を吸入室に戻すことができる。
【0016】
また、上記本発明の一態様に係るスクロール圧縮機において、前記カバーは、前記端板の一面のうち、前記吐出口よりも外側の部分を囲む円環形状とされた部材であってもよい。
【0017】
このように、端板の一面のうち、吐出口よりも外側の部分を囲むように、カバーを設けることで、吐出口の出口が形成された領域と、バイパスポートの出口が形成された領域と、を分離させることが可能となる。これにより、吐出口から吐出される高圧の流体と、バイパスポートから吐出される圧縮途中の流体(吐出口から吐出された流体よりも圧力の低い流体)と、が混ざることを抑制できる。
【0018】
また、カバーの形状を円環形状にすることで、固定スクロールの周方向の所望の位置にバイパスポートを設けることが可能となる。これにより、バイパスポートの形成位置の自由度を向上させることができる。
【0019】
また、上記本発明の一態様に係るスクロール圧縮機において、前記スクロール圧縮機本体及び前記カバーを収容するとともに、前記カバーとの間に前記吐出室を区画するケーシングを備え、前記吐出配管は、前記吐出室に連通するように前記ケーシングに設けられており、前記開閉弁は、前記ケーシングの外側に配置させてもよい。
【0020】
このような構成とすることで、ケーシング及びカバーにより吐出室を区画することができる。また、開閉弁をケーシングの外側に設けることで、開閉弁のメンテナンス性を向上させることができる。
【0021】
また、上記本発明の一態様に係るスクロール圧縮機において、前記バイパスポートは、前記固定スクロールの周方向に複数設けられており、前記第1逆止弁は、複数の前記バイパスポートに対してそれぞれ設けてもよい。
【0022】
このように、複数のバイパスポート、及び複数の第1逆止弁を固定スクロールの周方向に複数設けることで、複数のバイパスポートを通じて中間室に流体を吐出させることが可能となる。
これにより、1つのディスチャージポートを通じて、複数のバイパスポートから吐出された流体を吐出配管に案内することが可能となるので、スクロール圧縮機の構成を簡略化することができる。
【0023】
また、上記本発明の一態様に係るスクロール圧縮機において、前記バイパスポートの開口面積の合計をSv、前記ディスチャージポートの開口面積の合計をSm、前記吐出口の開口面積をSt、前記吐出配管の開口面積をSfとしたとき、下記(1)式を満たしてもよい。
Sv≦Sm≦St≦Sf ・・・(1)
【0024】
このように、上記(1)式を満たすように、Sv、Sm、St、及びSfを設定することで、圧力損失を低減することができる。
【0025】
また、上記本発明の一態様に係るスクロール圧縮機において、前記固定スクロールの端板の一面に設けられ、前記吐出口内の圧力が前記吐出室の圧力よりも高い場合に前記吐出口を開く第3逆止弁を備え、前記第3逆止弁は、前記第1逆止弁及び前記第2逆止弁よりも弁リフトしにくく、前記第2逆止弁は、前記第1逆止弁よりも弁リフトしにくくてもよい。
【0026】
このような構成とすることで、圧力損失を低減することができる。
【0027】
また、上記本発明の一態様に係るスクロール圧縮機において、前記ディスチャージポートは、前記ケーシングの延在方向で前記吐出配管と対向配置させてもよい。
【0028】
このような位置にディスチャージポートを設けることで、圧力損失を低減することができる。
【発明の効果】
【0029】
本発明によれば、バイパスポートの形成位置、及びディスチャージポートの形成位置の自由度を向上させた上で、流体の脈動の発生を抑制することができる。
【発明を実施するための形態】
【0031】
以下、図面を参照して本発明を適用した実施形態について詳細に説明する。
【0032】
(第1の実施形態)
図1を参照して、本発明の第1の実施形態のスクロール圧縮機10について説明する。なお、
図1において、O
1は回転軸本体45の軸線(以下、「軸線O
1」という)、O
2は偏心軸46の偏心軸線(以下、「偏心軸線O
2」という)をそれぞれ示している。
【0033】
スクロール圧縮機10は、ケーシング11と、吸入配管12と、吐出配管14と、メイン軸受21と、サブ軸受22と、回転軸23と、給油ポンプ24と、駆動部25と、スクロール圧縮機本体26と、ブッシュアセンブリ28と、オルダムリング31と、第1逆止弁32と、第3逆止弁33と、カバー35と、バイパス配管37と、バイパス配管37と、開閉弁38と、支持部材39と、第2逆止弁42と、を有する。
【0034】
ケーシング11は、密閉構造とされており、その内部に中空部を有する。ケーシング11は、軸線O
1方向に延在している。ケーシング11は、吐出配管14が設けられる一方の端部11Aと、他方の端部11Bと、を有する。一方の端部11A及び他方の端部11Bは、軸線O
1方向に配置されている。
【0035】
ケーシング11は、スクロール圧縮機本体26及びカバー35を収容している。ケーシング11の内部は、スクロール圧縮機本体26により、吐出室16と、吸入室17と、に区画されている。吐出室16は、ケーシング11の一方の端部11Aとカバー35との間に区画されている。吸入室17は、ケーシング11の他方の端部11B及び中部により一部が区画されている。
【0036】
吸入配管12は、ケーシング11の中部側壁に設けられている。吸入配管12は、吸入室17と連通されている。吸入配管12は、ケーシング11の外部から吸入室17に流体(例えば、作動流体である冷媒ガス)を導入させる。
【0037】
吐出配管14は、ケーシング11の一方の端部11Aに設けられている。吐出配管14は、吐出室16と連通されている。スクロール圧縮機10を業務用マルチエアコンの室外機として用いる場合、吐出配管14は、例えば、使用先である複数の室内機(図示せず)と接続される。
吐出配管14には、スクロール圧縮機本体26を構成する吐出口55から吐出され、その後、吐出室16を経由した圧縮された流体(以下、「高圧流体」という)が排出される。そして、排出された高圧流体は、使用先に供給される。
【0038】
メイン軸受21は、ケーシング11内に収容されており、ケーシング11の内壁に固定されている。メイン軸受21は、吸入配管12とケーシング11との接続位置とスクロール圧縮機本体26との間に配置されている。
メイン軸受21は、軸線O
1方向に延在する回転軸本体45の一方の端部45Aを回転可能な状態で支持している。
【0039】
サブ軸受22は、ケーシング11内に収容されている。サブ軸受22は、メイン軸受21よりも他方の端部11B側に位置するケーシング11の内壁に固定されている。サブ軸受22は、軸線O
1方向に延在する回転軸本体45の他方の端部45Bを回転可能な状態で支持している。
【0040】
回転軸23は、回転軸本体45と、偏心軸46と、を有する。回転軸本体45は、円柱形状とされている。回転軸本体45は、スクロール圧縮機本体26側に配置された一方の端部45Aと、ケーシング11の他方の端部11B側に配置された他方の端部45Bと、を有する。
回転軸本体45は、メイン軸受21及びサブ軸受22により軸線O
1周りに回転可能な状態で支持されている。
【0041】
偏心軸46は、回転軸本体45の他方の端(一方の端部45Aの端)に設けられている。偏心軸46は、軸線O
1に対してオフセット(偏心)された偏心軸線O
2を中心軸としている。偏心軸46は、回転軸本体45の外径よりも小さい円柱状の軸である。
このような構成とされた偏心軸46は、軸線O
1回りに回転軸本体45が回転すると、軸線O
1回りに公転する。
【0042】
給油ポンプ24は、サブ軸受22の下方に設けられている。給油ポンプ24は、メイン軸受21及びサブ軸受22を構成する軸受本体に潤滑油を供給する。
【0043】
駆動部25は、ケーシング11内に収容されている。駆動部25は、回転軸本体45の中央部の外周面を囲むように配置されている。駆動部25は、回転軸本体45を回転させる。駆動部25としては、例えば、発電機を用いることができる。
【0044】
スクロール圧縮機本体26は、ケーシング11内に収容されており、メイン軸受21と吐出室16との間(吸入室17と吐出室16との間)に設けられている。スクロール圧縮機本体26は、固定スクロール48と、旋回スクロール49と、を有する。
【0045】
固定スクロール48は、旋回スクロール49と吐出室16との間に配置されている。固定スクロール48は、端板51と、固定ラップ53と、を有する。
【0046】
端板51は、円盤状の板材であり、ケーシング11の内壁に固定されている。端板51は、一面51aと、他面51bと、吐出口55と、バイパスポート57と、を有する。
一面51aは、吐出室16を挟んで、ケーシング11の一方の端部11Aと対向している。他面51bは、一面51aの反対側に配置されている。他面51bは、旋回スクロール49と対向している。
【0047】
吐出口55は、端板51の中央を貫通するように設けられた穴である。吐出口55は、軸線O
1方向に延在している。吐出口55は、スクロール圧縮機本体26による圧縮が完了した高圧流体を吐出室16に吐出させる。
【0048】
バイパスポート57は、吐出口55の形成位置よりも外側に位置する端板51を貫通するように設けられた穴である。バイパスポート57は、吐出口55から吐出される高圧流体よりも圧力が低い圧縮途中の流体(以下、「低圧または中圧の流体」という場合がある)をスクロール圧縮機本体26内から取り出す。
【0049】
固定ラップ53は、端板51の他面51bに設けられている。固定ラップ53は、軸線O
1方向に立設されている。固定ラップ53は、軸線O
1方向から見て渦巻き状に形成された壁体である。固定ラップ53は、例えば、端板51の中心回りに巻回された板状の部材で構成されている。
【0050】
旋回スクロール49は、固定スクロール48とメイン軸受21との間に配置されている。旋回スクロール49は、端板61と、旋回ラップ62と、ボス部64と、軸受66と、を有する。
【0051】
端板61は、円盤状の板材であり、一面61aと、他面61bと、を有する。
一面61aは、端板51の他面51bと対向するように配置されている。他面61bは、一面61aの反対側に設けられた面である。
【0052】
旋回ラップ62は、端板61の一面61aに設けられている。旋回ラップ62は、軸線O
1方向に立設されている。旋回ラップ62は、軸線O
1方向から見て渦巻き状に形成された壁体である。旋回ラップ62は、例えば、端板61の中心回りに巻回された板状の部材で構成されている。
【0053】
上記構成とされた旋回ラップ62は、先に説明した固定ラップ53と噛み合うように配置されている。これにより、旋回ラップ62と固定ラップ53との間には、流体を圧縮する空間である圧縮室26Aが区画される。旋回ラップ62が固定スクロール48に対して旋回することで、圧縮室26Aの容積が変化する。これにより、圧縮室26A内の流体が圧縮される。
【0054】
ボス部64は、端板61の他面61bの中央部に設けられている。ボス部64は、円筒形状の部材であり、端板61の他面61bからサブ軸受22に向かう方向に突出している。ボス部64は、偏心軸46の外周を囲むように配置されている。
軸受66は、ボス部64の内周面に設けられている。軸受66には、給油ポンプ24から潤滑油が供給される。
【0055】
ブッシュアセンブリ28は、旋回スクロール49と回転軸23との間に設けられている。ブッシュアセンブリ28は、旋回スクロール49と回転軸23とを連結している。ブッシュアセンブリ28は、偏心軸46とボス部64との間に設けられたブッシュ28Aを有する。
【0056】
オルダムリング31は、旋回スクロール49とメイン軸受21との間に設けられている。オルダムリング31は、旋回スクロール49の端板61に形成された溝に嵌号される突起を有する。オルダムリング31は、旋回スクロール49の自転(偏心軸線O
2回りの回転)を抑制するための部材である。
【0057】
次に、
図1及び
図2を参照して、第1逆止弁32と、第3逆止弁33と、について順次説明する。
図2では、第1逆止弁32及び第3逆止弁33が閉じた状態を模式的に図示している。
【0058】
第1逆止弁32は、端板51の一面51a側からの流体の逆流を抑制するための弁である。第1逆止弁32は、弁本体71と、開度調整部材72と、ボルト73と、を有する。
弁本体71は、板状の部材である。弁本体71は、バイパスポート57の出口側を塞ぐように端板51の一面51aに配置されている。弁本体71の一端は、ボルト73により端板51に固定されている。
【0059】
開度調整部材72は、弁本体71の最大開度を設定するための板状の部材である。開度調整部材72は、弁本体71よりも高い剛性を有する。開度調整部材72は、弁本体71の上方に配置されている。開度調整部材72の一端は、弁本体71を介して、ボルト73で端板51に固定されている。
【0060】
上記構成とされた第1逆止弁32は、バイパスポート57内の圧力が中間室81(端板51の一面51a側)の圧力よりも高い場合に、弁本体71が開いて、バイパスポート57を経由して、低圧または中圧の流体(吐出口55から吐出される高圧流体よりも圧力の低い流体)を中間室81に吐出する。
【0061】
第3逆止弁33は、先に説明した弁本体71、開度調整部材72、及びボルト73と同様な構成とされた弁本体75、開度調整部材76、及びボルト77を有する。
第3逆止弁33は、弁本体75は、吐出口55の出口側を塞ぐように端板51の一面51aに配置されている点が、第1逆止弁32と異なる。
上記構成とされた第1逆止弁32は、吐出口55内の圧力が端板51の一面51a側の圧力よりも高い場合に、弁本体75が開いて、高圧流体が端板51の一面51a側に吐出される。
【0062】
図1〜
図3を参照して、カバー35について説明する。
図3では、第2逆止弁42が閉じた状態を模式的に図示している。
カバー35は、端板51の一面51aと対向するように、吐出室16に設けられている。カバー35の外周部は、ケーシング11に固定されている。
カバー35は、端板51の一面51aのうち、吐出口55よりも外側の部分(具体的には、バイパスポート57及び第1逆止弁32が形成された部分)を囲む円環形状とされた部材である。カバー35は、端板51の一面51aとの間に環状の中間室81を区画している。中間室81は、スクロール圧縮機本体26と吐出室16との間で、かつ吐出口55よりも外側に設けられている。中間室81には、バイパスポート57から圧縮途中の流体が吐出される。
【0063】
このように、端板51の一面51aのうち、吐出口55よりも外側の部分を囲むように、カバー35を設けることで、吐出口55の出口が形成された領域と、バイパスポート57の出口が形成された領域と、を分離させることが可能となる。
これにより、吐出口55から吐出される高圧流体と、バイパスポート57から吐出された低圧または中圧の流体と、が混ざることを抑制できる。
【0064】
また、カバー35が端板51の一面51aとの間に環状の中間室81を区画することで、固定スクロール48の周方向の所望の位置にバイパスポート57を設けることが可能となる。これにより、バイパスポート57の形成位置の自由度を向上させることができる。
【0065】
カバー35は、開口部83と、ディスチャージポート85と、を有する。開口部83と、カバー35の中央部に設けられており、第3逆止弁33を露出している。開口部83は、吐出室16に連通している。
スクロール圧縮機本体26内の高圧流体は、第3逆止弁33が開いた際に開口部83を経由して、吐出室16に吐出される。
【0066】
ディスチャージポート85は、カバー35を貫通するように設けられている。ディスチャージポート85は、吐出室16と中間室81とを連通させるための穴である。ディスチャージポート85は、過大圧縮損失を抑制する機能を有する。
ディスチャージポート85は、第2逆止弁42によって開閉が制御される。ディスチャージポート85は、第1逆止弁32及び第2逆止弁42が開いたときに、バイパスポート57から導出される低圧または中圧の流体を吐出室16に吐出させる。
【0067】
上述したように、固定スクロール48の端板51にバイパスポート57を設け、固定スクロール48とは異なる部材であるカバー35にディスチャージポート85を設けることで、バイパスポート57の形成位置とディスチャージポート85の形成位置とが干渉することがなくなるので、バイパスポート57の形成位置、及びディスチャージポート85の形成位置の自由度を高めることができる。
【0068】
ディスチャージポート85は、ケーシング11の延在方向(軸線O
1方向)で吐出配管14と対向配置する位置に設けてもよい。
このような位置にディスチャージポート85を設けることで、圧力損失を低減することができる。
【0069】
バイパス配管37は、先端側に位置する部分がケーシング11の一方の端部11A及びカバー35を貫通している。バイパス配管37の一方の端部37Aは、中間室81に配置されている。
これにより、バイパス配管37は、バイパスポート57から中間室81に吐出された流体を中間室81の外部に導出することが可能な構成とされている。
バイパス配管37の残部は、ケーシング11の外側に配置されている。バイパス配管37の残部は、他方の端部37Bを含む。他方の端部37Bは、ケーシング11の中部と接続されている。他方の端部37Bは、ケーシング11内の吸入室17に連通している。
【0070】
開閉弁38は、ケーシング11の外側に配置されたバイパス配管37に設けられている。開閉弁38は、流体の容量制御運転がオンのときに開状態とされることで、中間室81に吐出された圧縮途中の流体を吸入室17に戻す。開閉弁38としては、例えば、電磁弁を用いることが可能である。
第1逆止弁32及び開閉弁38が開かれると、バイパスポート57から吐出された低圧または中圧の流体は、吸入室17に戻される。これにより、吐出口55から吐出される高圧流体の容量が少なくなるので、スクロール圧縮機10から供給する高圧流体の容量を制御することが可能となる。
【0071】
支持部材39は、ケーシング11の外側に固定されている。支持部材39は、バイパス配管37及び開閉弁38を支持している。
【0072】
第2逆止弁42は、先に説明した弁本体71、開度調整部材72、及びボルト73と同様な構成とされた弁本体91、開度調整部材92、及びボルト93を有する。
第2逆止弁42は、弁本体91は、ディスチャージポート85の出口側を塞ぐようにカバー35の一面35aに配置されている点が、第1逆止弁32と異なる。
第2逆止弁42は、容量制御運転がオフのときに、中間室81内の圧力が吐出室16内の圧力が高くなった際に開状態とされ、中間室81に吐出された圧縮途中の流体を、ディスチャージポート85を経由して吐出室16に吐出させる。その後、吐出室16に吐出された低圧または中圧の流体は、吐出配管14から排出される。
【0073】
このように、ディスチャージポート85から吐出された低圧または中圧の流体を吐出室16を経由させた後に、吐出配管14へ導くことにより、吐出室16において流体の脈動を低減することが可能となる。これにより、流体の脈動の発生を抑制することができる。
【0074】
ここで、
図4を参照して、
図1に示すスクロール圧縮機での流体の容量制御運転(流体の容量制御運転がオンの場合の運転)、及びフルロード運転(流体の容量制御運転がオフの場合の運転)について説明する。
図4において、
図1〜
図3に示す構造体と同一構成部分には同一符号を付す。
【0075】
まず、開閉弁38を開いて、容量制御運転を行う場合について説明する。この場合、中間室81の圧力は、吸入室17の圧力と等しくなる。これにより、中間室81の圧力は、吐出室16の圧力よりも低くなる。よって、第2逆止弁42は、閉状態を維持する。つまり、第1逆止弁32が開かれた状態でも中間室81から吐出室16に低圧または中圧の流体が吐出されない。
【0076】
一方、開閉弁38を閉じて、フルロード運転を行う場合について説明する。この場合、中間室81は、吸入室17と連通していない状態であるため、中間室81の圧力は吸入室17の圧力よりも高くなる。そして、中間室81の圧力が吐出室16の圧力よりも高くなると、第2逆止弁42が開状態となる。よって、第1逆止弁32が開かれて、中間室81に吐出された低圧または中圧の流体は、中間室81を経由して、吐出室16に吐出されることで、過大圧縮損失を抑制できる。
【0077】
上記スクロール圧縮機10において、例えば、バイパスポート57の開口面積の合計をSv、ディスチャージポート85の開口面積の合計をSm、吐出口55の開口面積をSt、吐出配管14の開口面積をSfとしたとき、下記(2)式を満たしてもよい。
Sv≦Sm≦St≦Sf ・・・(2)
【0078】
このように、上記(2)式を満たすように、Sv、Sm、St、及びSfを設定することで、圧力損失を低減することができる。
【0079】
また、上記スクロール圧縮機10において、例えば、第3逆止弁33は、第1逆止弁32及び第2逆止弁42よりも弁リフトしにくく、第2逆止弁42は、第1逆止弁32よりも弁リフトしにくい構成としてもよい。このような構成とするとで、圧力損失を低減することができる。
【0080】
第1の実施形態のスクロール圧縮機10によれば、吐出配管14と連通された吐出室16を設けることで、ディスチャージポート85から吐出された流体が吐出室16を経由した後に吐出配管14へと導かれるため、吐出室16において流体の脈動を低減することが可能となる。これにより、流体の脈動の発生を抑制することができる。
【0081】
また、固定スクロール48の端板51にバイパスポート57を設け、固定スクロール48とは異なる部材であるカバー35にディスチャージポート85を設けることで、バイパスポート57の形成位置とディスチャージポート85の形成位置とが干渉することがなくなるので、バイパスポート57の形成位置、及びディスチャージポート85の形成位置の自由度を高めることができる。
【0082】
(第2の実施形態)
図5を参照して、本発明の第2の実施形態のスクロール圧縮機100について説明する。
図5では、
図1〜
図4に示す構造体と同一構成部分には、同一符号を付す。
なお、
図5では、一例として、2つのバイパスポート57と、2つの第1逆止弁32と、を設けた場合を例に挙げて説明するが、バイパスポート57及び第1逆止弁32の数は、複数であればよく、2つに限定されない。
【0083】
図5を参照するに、スクロール圧縮機100は、スクロール圧縮機本体26が2つの圧縮室26Aを有する構造とされており、各圧縮室26Aに対して、バイパスポート57及び第1逆止弁32を設けたこと以外は、第1の実施形態のスクロール圧縮機10と同様な構成とされている。
【0084】
つまり、スクロール圧縮機100は、2つのバイパスポート57と、2つの第1逆止弁32と、を有する。2つのバイパスポート57、及び2つの第1逆止弁32は、中間室81に配置されている。
2つのバイパスポートは、固定スクロール48の端板51の周方向に配置されている。2つのバイパスポート57は、例えば、軸線O
1を挟んで、対向するように配置することが可能である。
【0085】
第2の実施形態のスクロール圧縮機100によれば、複数のバイパスポート57、及び複数の第1逆止弁32を中間室81に配置することで、複数のバイパスポート57から中間室81に流体を吐出させることが可能となる。
これにより、1つのディスチャージポート85を通じて、複数のバイパスポート57から吐出された流体を吐出配管14に案内することが可能となるので、スクロール圧縮機100の構成を簡略化することができる。
【0086】
以上、本発明の好ましい実施形態について詳述したが、本発明はかかる特定の実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲内に記載された本発明の要旨の範囲内において、種々の変形・変更が可能である。
【0087】
なお、第1及び第2の実施形態では、スクロール圧縮機10,100の一例として、カバー35を設けるとともに、カバー35に第2逆止弁42を設けた場合を例に挙げて説明したが、カバー35を設けることなく、第2逆止弁42を端板51に埋め込む構成としてもよい。この場合も第1の実施形態のスクロール圧縮機10と同様な効果を得ることができる。