(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6606822
(24)【登録日】2019年11月1日
(45)【発行日】2019年11月20日
(54)【発明の名称】車両用空気調和機
(51)【国際特許分類】
B60H 1/00 20060101AFI20191111BHJP
B60H 1/32 20060101ALI20191111BHJP
F04D 27/00 20060101ALI20191111BHJP
【FI】
B60H1/00 101W
B60H1/00 101Y
B60H1/00 103D
B60H1/32 626G
B60H1/32 626F
F04D27/00 K
F04D27/00 101C
【請求項の数】5
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2014-242928(P2014-242928)
(22)【出願日】2014年12月1日
(65)【公開番号】特開2016-104587(P2016-104587A)
(43)【公開日】2016年6月9日
【審査請求日】2017年11月24日
(73)【特許権者】
【識別番号】000006286
【氏名又は名称】三菱自動車工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100130513
【弁理士】
【氏名又は名称】鎌田 直也
(74)【代理人】
【識別番号】100074206
【弁理士】
【氏名又は名称】鎌田 文二
(74)【代理人】
【識別番号】100130177
【弁理士】
【氏名又は名称】中谷 弥一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100167380
【弁理士】
【氏名又は名称】清水 隆
(74)【代理人】
【識別番号】100187827
【弁理士】
【氏名又は名称】赤塚 雅則
(72)【発明者】
【氏名】仲儀 豊
(72)【発明者】
【氏名】光岡 英貴
(72)【発明者】
【氏名】村▲瀬▼ 将大
【審査官】
安島 智也
(56)【参考文献】
【文献】
特開昭61−055542(JP,A)
【文献】
特開昭57−018510(JP,A)
【文献】
特開2004−217027(JP,A)
【文献】
特開2010−111359(JP,A)
【文献】
特開2014−074506(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60H 1/00
B60H 1/32
F04D 27/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車室内に空気を送り出すファンを備えた送風装置と、
前記ファンによって送り出す空気の温度を目標温度に冷却又は加熱する空調装置と、
前記送風装置により送り出される空気の風量の強さを設定する風量調整操作部と、
前記目標温度を設定する温度調整操作部と、
前記温度調整操作部に設けられ前記温度調整操作部の操作速度又はその操作の加速度を検知する操作感知部と、
前記操作感知部が検知する前記温度調整操作部の前記目標温度の設定時における操作速度又はその操作の加速度が所定値以上の場合に、前記送風装置により送り出される空気の風量の強さを増大させる急速設定制御部と、
を備える車両用空気調和機。
【請求項2】
前記急速設定制御部によって増大された風量の強さは、所定時間経過後、前記風量調整操作部の設定状態に復帰する
請求項1に記載の車両用空気調和機。
【請求項3】
前記空調装置は、前記送風装置により送り出される空気の温度を、車室内の温度と目標温度の設定値に基づいて自動的に設定するオートエアコン機能を有し、
前記急速設定制御部によって増大された風量の強さは、車室内の温度が目標温度の設定値に至った後、前記オートエアコン機能の設定状態に復帰する
請求項1に記載の車両用空気調和機。
【請求項4】
前記温度調整操作部は、車室内の操作パネルに回転可能に取り付けられた操作ダイヤルを備え、
前記操作感知部は、前記操作ダイヤルの回転情報を検知する回転センサを備える
請求項1から3のいずれか1項に記載の車両用空気調和機。
【請求項5】
前記空調装置は、前記送風装置によって送り出す空気の温度を加熱するための熱交換媒体を備えたヒータを備え、
前記急速設定制御部によって増大される風量の強さは前記熱交換媒体の温度上昇に基づいて徐々に増大するように制御される
請求項1から4のいずれか1項に記載の車両用空気調和機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動車等の各種車両に搭載される車両用空気調和機に関する。
【背景技術】
【0002】
自動車等の各種車両において、車室内の温度や湿度を調整すること等を目的として、空気調和機が備えられる。空気調和機は、通常、冷房や暖房、除湿、その他、窓ガラスの曇りを抑制するデミスト等の機能を有する。
【0003】
空気調和機は、例えば、冷房や除湿を目的として、冷凍サイクル装置を用いる。また、暖房には、走行用の駆動源としてエンジンを備えた車両の場合には、そのエンジンの廃熱やエンジンの冷却水を用いたヒータを用いるのが一般的である。また、走行用の駆動源としてのエンジンを備えず電気モータを備えた電気自動車の場合は、水などの熱交換媒体を備えた電気式のヒータを用いるのが一般的である。
【0004】
例えば、特許文献1では、電気自動車において、冷房や除湿運転時には、コンプレッサを駆動用モータで駆動させて冷凍サイクル装置を起動させて空気を冷却し、暖房運転時には、電気温水ヒータにより水を加熱させて温水とし、その温水で空気を温めている。この冷却された空気及び温められた空気を、ブロアファンを通じて車室内の空間に送り出している。
【0005】
ブロアファンによる車室内での空気の吹き出し強さは、車室内に設けた風量調整ダイヤルによって調整され、吹き出す空気の温度は温度調整ダイヤルによって調整される。また、オート機能を有する空気調和機の場合は、車室内の温度等を感知して、自動的に空気の吹き出し強さ、空気の温度が設定されるものもある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2010−111359号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ところで、始動前の車両、すなわち、空気調和機を動作させていない状態の車両への搭乗時、あるいは、始動後の車両において、車両周囲の環境が急に変化した時には、車室内の温度や湿度等を急速に調和したい場合がある。
【0008】
このような場合、例えば、空気調和機が備える温度調整ダイヤルを調整し、空気調和機の調温機能(空気の冷却機能や加熱機能)を最大能力にして運転させる場合が多い。しかし、温度調整ダイヤルを調整しても、車室内の温度はすぐには所望の温度にはならない。このため、さらに風量調整ダイヤルを調整し、空気吹き出し量を最大とする場合が多い。
【0009】
車室内の環境を急速に調和したい場合に、温度調整ダイヤルと風量調整ダイヤルの両方を別々に操作することは面倒であるし、また、その操作や設定に時間がかかるという問題がある。さらに、車両が走行中の場合、安全の観点から、運転者が行う操作はできる限り簡素であることが望ましい。
【0010】
そこで、この発明の課題は、簡単な操作で早期に車室内の環境を調和できる車両用空気調和機とすることである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記の課題を解決するために、この発明は、車室内に空気を送り出すファンを備えた送風装置と、前記ファンによって送り出す空気の温度を目標温度に冷却又は加熱する空調装置と、前記送風装置により送り出される空気の風量の強さを設定する風量調整操作部と、前記目標温度を設定する温度調整操作部と、前記温度調整操作部に設けられ前記温度調整操作部の操作速度又はその操作の加速度を検知する操作感知部と、前記操作感知部が検知する前記温度調整操作部の操作速度又はその操作の加速度が所定値以上の場合に、前記送風装置により送り出される空気の風量の強さを増大させる急速設定制御部と、を備える車両用空気調和機を採用した。
【0012】
また、他の手段として、車室内に空気を送り出すファンを備えた送風装置と、前記ファンによって送り出す空気の温度を目標温度に冷却又は加熱する空調装置と、前記送風装置により送り出される空気の風量の強さを設定する風量調整操作部と、前記目標温度を設定する温度調整操作部と、前記温度調整操作部に設けられ前記温度調整操作部の操作量を検知する操作感知部と、前記操作感知部が検知する前記温度調整操作部の操作量が所定値以上の場合に、前記送風装置により送り出される空気の風量の強さを増大させる急速設定制御部と、を備える車両用空気調和機を採用した。
【0013】
これらの各構成において、前記急速設定制御部によって増大された風量の強さは、所定時間経過後、前記風量調整操作部の設定状態に復帰する構成を採用することができる。
【0014】
あるいは、前記空調装置は、前記送風装置により送り出される空気の温度を、車室内の温度と目標温度の設定値に基づいて自動的に設定するオートエアコン機能を有する場合に、前記急速設定制御部によって増大された風量の強さは、車室内の温度が目標温度の設定値に至った後、前記オートエアコン機能の設定状態に復帰する構成を採用することができる。
【0015】
これらの各構成において、前記温度調整操作部は、車室内の操作パネルに回転可能に取り付けられた操作ダイヤルを備え、前記操作感知部は、前記操作ダイヤルの回転情報を検知する回転センサを備える構成を採用することができる。
【0016】
さらに、前記空調装置は、前記送風装置によって送り出す空気の温度を加熱するための熱交換媒体を備えたヒータを備える場合に、前記急速設定制御部によって増大される風量の強さは、前記熱交換媒体の温度上昇に基づいて徐々に増大するように制御される構成を採用することができる。
【発明の効果】
【0017】
この発明は、車室内に送り出す空気の温度を設定する温度調整操作部の操作速度やその操作の加速度、あるいは操作量を検知し、それらの各数値が所定値以上となった場合に、車室内に送り出す空気の風量の強さを自動的に増大させるようにしたので、簡単な操作で早期に車室内の環境を調和できる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図1】この発明の一実施形態を示す車両用空気調和機を備えた車両の全体図である。
【
図2】車室内の操作パネルの例を示し、(a)は正面図、(b)は斜視図である。
【
図3】この発明の制御を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0019】
この発明の一実施形態を、図面に基づいて説明する。この実施形態は、自動車等の居室空間を有する車両1に備えられ、冷房及び暖房の機能を有する車両用空気調和機A(以下、単に空気調和機Aと称する。)である。
【0020】
図1に示すように、車両1は、駆動用の原動機6と、車室内の空気調和を目的とする空気調和機Aを備える。また、車両1の車室内には、搭乗者が着席する座席4,5を備え、運転席には操舵用のステアリング3や、空気調和機Aの操作パネル20、その他、車両1の走行時に使用する必要な機器が搭載されている。なお、原動機6から車輪15への動力伝達機構や、原動機6や空気調和機Aの電源となるバッテリ、バッテリを充電する発電機、その他原動機6周囲の補機類、ステアリング機構等は図示省略している。
【0021】
この実施形態では、原動機6として、シリンダ内での燃料の燃焼によりトルクを発揮するエンジンを想定しているが、これを、通電によってトルクを発生する電気モータとしてもよい。また、原動機6として、エンジンと電気モータの両方を備える車両1であってもよい。
【0022】
空気調和機Aは、車室内に空気を送り出すブロアファン(ファン)を備えた送風装置9と、ブロアファンによって送り出す空気の温度を目標温度に冷却又は加熱する空調装置7,8とを備える。
【0023】
送風装置9は、空調装置7,8前後の空気通路に設けられる。ブロアファンの回転数に応じて、その空気通路内を流れる空気の風速及び風量が調整される。空気は、運転席や助手席前方の主吹出口2aや、運転席や助手席足下の下部吹出口2b、後部座席側方の後部吹出口2c、その他、ダッシュボード上でフロントガラスに向く吹出口(デフロスタ)2d等、種々の吹出口2から選択的に車室内へ送り出される。
【0024】
空調装置7は、冷凍サイクル装置からなる冷房及び除湿用の空調装置である。例えば、冷房又は除湿運転時には、圧縮機(コンプレッサ)、凝縮器(コンデンサ)、膨張弁(エクスパンジョンバルブ)、蒸発器(エバポレータ)の4つの要素を備えた冷凍サイクル内に冷媒を循環させて、蒸発器に隣接する空気通路内を通過する空気を冷却している。圧縮機の駆動は、原動機6としてエンジンを用いる場合はそのエンジンの駆動力を、原動機6として電気モータを用いる場合は、その電気モータやあるいは走行用の電気モータとは別に設けられる他の電気モータの駆動力を用いることができる。
【0025】
空調装置8は、熱交換媒体としての水を加熱させて温水とするヒータを備えた暖房用の空調装置である。例えば、暖房運転時には、ヒータに隣接する空気通路内を通過する空気を直接又は間接的に温水にさらすことにより、その空気を加熱している。
【0026】
なお、暖房用の空調装置8は、原動機6としてエンジンを用いる場合は、そのエンジンの廃熱やエンジンの冷却水を用いたヒータを用いることができる。また、エンジンを備えず原動機6として電気モータを用いる場合は、水などの熱交換媒体を加熱する機構を備えた電気式のヒータを用いることができる。
【0027】
冷房又は除湿運転時、暖房運転時のそれぞれにおいて、冷却された空気、又は加熱された空気が、ブロアファンを通じて各吹出口2から車室内の空間に送り出される。
【0028】
空気調和機Aの操作パネル20を
図2に示す。操作パネル20には、空気の吹出口2を切り替える吹出口切替操作部21、送風装置9により送り出される空気の風量の強さを設定する風量調整操作部22、空気の冷却又は加熱に関する目標温度を設定する温度調整操作部23、空気を外気から取り入れる状態と空気を車室内で循環させる状態とをレバー操作で切り替えできる外気切替操作部24とが設けられている。
【0029】
吹出口切替操作部21は、ダイヤル21aを回転させることにより、主吹出口2aのみ、主吹出口2aと下部吹出口2bのみ、下部吹出口2bのみ、フロントガラスに向く吹出口2dのみ、下部吹出口2bとフロントガラスに向く吹出口2dのみ、といったように、空気を送り出す吹出口2を選択できる。後部吹出口2cを備える場合は、別途、後部吹出口2c用の切替装置を備えてもよい。これらのダイヤル21aによる設定情報は、電気配線により電子制御ユニット10が備える空調制御部11に送られる。空調制御部11は、空気調和機Aの制御全般を統括する。
【0030】
風量調整操作部22は、ダイヤル22aを回転させることにより、各吹出口2からの空気の風量を、切(OFF)、1、2、3と切替えることができる。風量は、切(OFF)で無風であり、1、2、3の順に強くなる。これらのダイヤル22aによる設定情報は、電気配線により電子制御ユニット10が備える風量制御部13に送られる。風量制御部13は、各吹出口2から送り出される空気の風量を制御する。
【0031】
温度調整操作部23は、ダイヤル23aを回転させることにより、各吹出口2からの空気の温度を調整することができる。温度は、最も温度が低い状態(温度調整操作部23の符号C付近)から最も温度が高い状態(温度調整操作部23の符号H付近)まで、無段階で調整できる。これらのダイヤル23aによる設定情報は、電気配線により電子制御ユニット10が備える温度制御部14に送られる。温度制御部14は、各吹出口2から送り出される空気の温度を制御する。
【0032】
また、温度調整操作部23には、ダイヤル23aの示す位置、すなわち、ダイヤル23aの回転角(方位)を検知する操作感知部30が設けられている。操作感知部30は、ダイヤル23aの回転角の情報を取得することにより、そのダイヤル23aの設定回転角(方位)や、回転角速度、回転角加速度 等の情報を得ることもできる。これらの操作感知部30による設定情報は、電気配線により電子制御ユニット10が備える急速設定制御部12に送られる。
【0033】
この実施形態では、操作感知部30は、回転する物体と回転しない物体との間の回転角を光学的に検出するロータリエンコーダ形式の回転角センサを採用している。回転角センサは、ダイヤル23aに設けられるロータ31と、固定の操作パネル20のフレーム側に設けられるセンサ32とを備える。
【0034】
ロータ31は、周方向に沿って一定の角度のピッチでスリットを設けた環状部材であり、そのスリットにダイヤル23aの回転中心付近に設けた光源からの光を通して、その光を光電素子からなるセンサ32に導いている。ロータ31が回転すると、スリット1ピッチの回転毎に、光の1つの高低の波形がセンサ32で検出され、回転角の変位を測定することができる。したがって、この波形の数のカウントにより、ダイヤル23aの回転角の変化量(角度)や、ダイヤル23aの設定位置(方位)、回転角速度を把握することができる。また、回転角速度がわかれば、その回転角速度の変化に基づき、回転角加速度を把握することができる。このような演算は、急速設定制御部12が行うことができる。
【0035】
なお、操作感知部30の構成はこの実施形態には限定されず、その他にも、回転する物体と回転しない物体との間の回転角を磁気の変化で検出する回転角センサ、回転する物体と回転しない物体との間の回転角を接触式のセンサで検出する回転角センサ、あるいは、回転する物体と回転しない物体との間の回転角の変化に伴う電気抵抗値の変化を用いた電気式の回転角センサ等を採用してもよい。
【0036】
以下、
図3のフローチャートを基に、この発明の制御を説明する。
【0037】
まず、ステップS1において、運転者は車両1に搭乗、あるいは、既に車両1に搭乗しており、車室内の温度や湿度等を急速に調和したい場合が生じたとする。ここでは、車室内の空気を急速に冷やしたい場合を想定する。
【0038】
ステップS2では、空気調和機Aの電源をONとする(空調ON)。次に、ステップS3では、温度調整操作部23のダイヤル23aを、最も温度の低い状態である符号C位置に一気に速い速度で回転させる(温調操作)。
【0039】
ステップS4では、操作感知部30が検知する温度調整操作部23の操作速度が、閾値として設定された所定値以上の場合に、ステップS6へ移行する。ステップS6では、送風装置9により送り出される空気の風量の強さが自動的に最大量に設定される。この設定は、風量調整操作部22の設定内容にかかわらず、急速設定制御部12が自動的に行う。温度調整操作部23の操作速度が速いということは、急速に車室内の環境を調和したい状態であると考えられるからである。
【0040】
この実施形態では、急速設定制御部12が自動的に行う風量設定を、風量調整操作部22が設定できる風量の最大量としているが、これを、例えば、風量調整操作部22が設定できる風量の最大量よりも大きい風量とすることも可能である。これにより、より急速な温度調和が可能である。なお、逆に、急速設定制御部12が自動的に行う風量設定を、風量調整操作部22が設定できる風量の最大量よりも小さい風量とすることも可能である。
【0041】
また、ステップS4で、操作感知部30が検知する温度調整操作部23の操作速度が、閾値として設定された所定値未満の場合は、ステップS5へ移行する。ステップS5では、送風装置9により送り出される空気の風量の強さが、風量調整操作部22で設定された状態に維持される。
【0042】
ステップS6において、急速設定制御部12によって増大された風量の強さは、所定時間経過後、急速設定制御部12による制御が解除され、自動的に風量調整操作部22の設定状態に復帰する。
【0043】
ここで、仮に、空調装置7,8が、送風装置9により送り出される空気の温度を、車室内の温度と温度調整操作部23による目標温度の設定値に基づいて、自動的に設定できるオートエアコン機能を有する場合を想定する。
この場合、急速設定制御部12によって増大された風量の強さは、車室内の温度が目標温度の設定値に至った後、急速設定制御部12による制御が解除され、自動的にオートエアコン機能の設定状態に復帰するように設定できる。
【0044】
また、上記の実施形態では、操作感知部30が検知する温度調整操作部23の操作速度が、閾値として設定された所定値以上の場合に、急速設定制御部12による制御へ移行するものとしたが、操作速度の情報に代えて、操作の加速度(操作角速度の変化度合い)の情報を用いてもよい。すなわち、温度調整操作部23の操作の加速度が、閾値として設定された所定値以上の場合に、急速設定制御部12による制御へ移行するものとしてもよい。
【0045】
あるいは、操作感知部30が検知する温度調整操作部23の操作量(ここでは、操作した回転角)が、閾値として設定された所定値以上の場合に、急速設定制御部12による制御へ移行するものとしてもよい。操作量が大きい場合、同じく急速に車室内の環境を調和したい状態であると考えられるからである。
【0046】
上記制御は、車室内の空気を急速に冷やしたい場合を想定したが、車室内の空気を急速に温めたい場合にも同様の制御を採用できる。
【0047】
前述のフローチャートにおいて、ステップS2では、空気調和機Aの電源をONとする(空調ON)。次に、ステップS3では、温度調整操作部23のダイヤル23aを、最も温度の高い状態である符号H位置に一気に速い速度で回転させる(温調操作)。ステップS4において、温度調整操作部23の操作速度が所定値以上の場合、ステップS6の急速設定制御部12による風量増大の制御へ移行する。
【0048】
このとき、空調装置8は、送風装置9によって送り出す空気の温度を加熱するための熱交換媒体を備えたヒータであるので、熱交換媒体の温度は、例えば、車両1の始動後すぐの状態等ではまだ低い状態である。そこで、急速設定制御部12によって増大される風量の強さを、すぐに最大量に設定せず、熱交換媒体の温度上昇に基づいて、段階的に又は無段階で徐々に増大するように制御することが有効である。例えば、温度調整操作部23の操作時における熱交換媒体の温度を基準として、その後の温度上昇量に比例させて、風量の増大量を決定する手法を採用できる。
【0049】
このような段階的又は無段階に徐々に風量を増大させる制御は、熱交換媒体の温度に基づいて、急速設定制御部12が行う。空調装置8には、この制御に必要な熱交換媒体の温度を検出する温度センサが備えられている。ただし、熱交換媒体の温度が所定の温度以上(例えば、60℃以上)の場合は急速な暖房が可能であるので、一気に風量を増大させる制御を行うことが望ましい。
【0050】
上記の各実施形態では、温度調整操作部23として、車室内の操作パネル20に回転可能な操作ダイヤル23aとしたが、例えば、この温度調整操作部23をダイヤル式の操作装置以外で構成してもよい。
【0051】
例えば、温度調整操作部23を、例えば、外気切替操作部24のような直線的な方向へのレバー操作によるものとし、そのレバーの位置(直線的な操作方向の位置)で、温度の高低を設定するものとしてもよい。このとき、操作感知部30は、温度調整操作部23のレバーの前記操作方向への操作速度、又は、その操作の加速度、前記操作方向への操作量を検知する構成とできる。
【0052】
あるいは、温度調整操作部23を温度下げボタン、温度上げボタンの二つの押しボタン操作によるものとし、各ボタンを1回押す毎に一定の温度刻みでの温度の増減設定(例えば、0.5℃刻み)が可能であるものとしてもよい。このとき、操作感知部30は、各ボタン操作に伴う単位時間あたりの設定温度変化量によって、温度調整操作部23の操作速度とすることができる。また、その単位時間あたりの設定温度変化量に基づいて、操作の加速度も把握できる。さらに、各ボタン操作の回数によって、温度調整操作部23の操作量(温度変化量)を把握することができる。
【符号の説明】
【0053】
1 車両
2,2a,2b,2c 吹出口
3 ステアリング
4,5 座席
6 原動機(エンジン)
7,8 空調装置
9 送風装置
10 電子制御ユニット
11 空調制御部
12 急速設定制御部
13 風量制御部
14 温度制御部
15 車輪
20 操作パネル
21 吹出口切替操作部
22 風量調整操作部
23 温度調整操作部
24 外気切替操作部
30 操作感知部
31 ロータ
32 センサ