特許第6606870号(P6606870)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6606870ヒートポンプ式貯湯装置の運転時間設定方法およびヒートポンプ式貯湯装置の運転計画システム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6606870
(24)【登録日】2019年11月1日
(45)【発行日】2019年11月20日
(54)【発明の名称】ヒートポンプ式貯湯装置の運転時間設定方法およびヒートポンプ式貯湯装置の運転計画システム
(51)【国際特許分類】
   F24H 4/02 20060101AFI20191111BHJP
   F24H 1/18 20060101ALI20191111BHJP
【FI】
   F24H4/02 R
   F24H1/18 302T
【請求項の数】4
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2015-111211(P2015-111211)
(22)【出願日】2015年6月1日
(65)【公開番号】特開2016-223703(P2016-223703A)
(43)【公開日】2016年12月28日
【審査請求日】2018年5月7日
(73)【特許権者】
【識別番号】000003687
【氏名又は名称】東京電力ホールディングス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100120400
【弁理士】
【氏名又は名称】飛田 高介
(74)【代理人】
【識別番号】100124110
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 大介
(74)【代理人】
【識別番号】110000349
【氏名又は名称】特許業務法人 アクア特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】小林 和幸
(72)【発明者】
【氏名】濱中 香也子
(72)【発明者】
【氏名】和田 潤
(72)【発明者】
【氏名】中山 功
【審査官】 大谷 光司
(56)【参考文献】
【文献】 特開2010−270997(JP,A)
【文献】 特開2015−028411(JP,A)
【文献】 特開2014−238247(JP,A)
【文献】 特開2014−066496(JP,A)
【文献】 特開2008−267708(JP,A)
【文献】 特開平09−009502(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F24H1/00,1/18−1/20,4/00−4/06
H02J3/00−5/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
一括受電を行っている建物に設置された複数のヒートポンプ式貯湯装置の運転時間設定方法であって、
前記複数のヒートポンプ式貯湯装置の過去の運転履歴データを取得し、
前記建物における過去の消費電力履歴データを取得し、
前記複数のヒートポンプ式貯湯装置の過去の使用湯量を取得し、
過去および翌日の気象情報データを取得し、
前記運転履歴データと、前記過去の消費電力履歴データと、前記過去および翌日の気象情報とから、翌日の消費電力のピーク時間帯を判断し、
前記ピーク時間帯に動作する予定のヒートポンプ式貯湯装置を判断し、
前記ピーク時間帯に動作する予定のヒートポンプ式貯湯装置のうち、朝・昼の使用湯量が所定量以上の予定のヒートポンプ式貯湯装置を、夜間の動作時間帯を早めに変更できるヒートポンプ式貯湯装置であると判断し、
前記動作時間帯を変更できるヒートポンプ式貯湯装置に、動作時間帯を変更した設定時間を送信することを特徴とするヒートポンプ式貯湯装置の運転時間設定方法。
【請求項2】
一括受電を行っている建物に設置された複数のヒートポンプ式貯湯装置の運転時間設定方法であって、
前記複数のヒートポンプ式貯湯装置の過去の運転履歴データを取得し、
前記建物における過去の消費電力履歴データを取得し、
前記複数のヒートポンプ式貯湯装置の過去の使用湯量を取得し、
過去および翌日の気象情報データを取得し、
前記運転履歴データと、前記過去の消費電力履歴データと、前記過去および翌日の気象情報とから、翌日の消費電力のピーク時間帯を判断し、
前記ピーク時間帯に動作する予定のヒートポンプ式貯湯装置を判断し、
前記ピーク時間帯に動作する予定のヒートポンプ式貯湯装置のうち、朝・昼の使用湯量が所定量未満の予定のヒートポンプ式貯湯装置を、深夜の動作時間帯を短縮できるヒートポンプ式貯湯装置であると判断し、
前記動作時間帯を短縮できるヒートポンプ式貯湯装置に、動作時間帯を短縮した設定時間を送信することを特徴とするヒートポンプ式貯湯装置の運転時間設定方法。
【請求項3】
一括受電を行っている建物に設置された複数のヒートポンプ式貯湯装置の運転計画システムであって、
前記複数のヒートポンプ式貯湯装置の過去の運転履歴データと、該複数のヒートポンプ式貯湯装置の過去の使用湯量と、前記建物における消費電力履歴データと、過去の気象情報データを記憶するデータ記憶手段と、
翌日の気象情報を取得する気象情報取得手段と、
前記ヒートポンプ式貯湯装置の運転計画を作成する運転計画作成手段と、
を含み、
前記運転計画作成手段は、
前記運転履歴データと、前記過去の消費電力履歴データと、前記過去および翌日の気象情報とから、翌日の消費電力のピーク時間帯を判断し、
前記ピーク時間帯に動作する予定のヒートポンプ式貯湯装置を判断し、
前記ピーク時間帯に動作する予定のヒートポンプ式貯湯装置のうち、朝・昼の使用湯量が所定量以上の予定のヒートポンプ式貯湯装置を、夜間の動作時間帯を早めに変更できるヒートポンプ式貯湯装置であると判断し、
前記動作時間帯を変更できるヒートポンプ式貯湯装置に、動作時間帯を変更した設定時間を送信することを特徴とするヒートポンプ式貯湯装置の運転計画システム。
【請求項4】
一括受電を行っている建物に設置された複数のヒートポンプ式貯湯装置の運転計画システムであって、
前記複数のヒートポンプ式貯湯装置の過去の運転履歴データと、該複数のヒートポンプ式貯湯装置の過去の使用湯量と、前記建物における消費電力履歴データと、過去の気象情報データを記憶するデータ記憶手段と、
翌日の気象情報を取得する気象情報取得手段と、
前記ヒートポンプ式貯湯装置の運転計画を作成する運転計画作成手段と、
を含み、
前記運転計画作成手段は、
前記運転履歴データと、前記過去の消費電力履歴データと、前記過去および翌日の気象情報とから、翌日の消費電力のピーク時間帯を判断し、
前記ピーク時間帯に動作する予定のヒートポンプ式貯湯装置を判断し、
前記ピーク時間帯に動作する予定のヒートポンプ式貯湯装置のうち、朝・昼の使用湯量が所定量未満の予定のヒートポンプ式貯湯装置を、深夜の動作時間帯を短縮できるヒートポンプ式貯湯装置であると判断し、
前記動作時間帯を短縮できるヒートポンプ式貯湯装置に、動作時間帯を短縮した設定時間を送信することを特徴とするヒートポンプ式貯湯装置の運転計画システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、一括受電を行っている建物に設置された複数のヒートポンプ式貯湯装置の運転時間設定方法、かかるヒートポンプ式貯湯装置の運転計画システムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
住宅等における熱源の1つとしてヒートポンプ式貯湯装置がある。ヒートポンプ式貯湯装置では、深夜時間帯(例えば23時〜7時)の電力を利用して湯水を生成し、生成した湯水を貯湯タンク(貯湯槽)に貯湯しておく。そして、貯湯された湯水を、日中、必要に応じて貯湯槽から給湯設備等に供給して使用する。
【0003】
また近年、マンション等の集合住宅において一括受電方式の採用が進んでいる。一括受電方式では、デベロッパーや管理会社が、集合住宅全体で電力会社との高圧電力契約を行い、各戸の居住者は、デベロッパーや管理会社と低圧電力契約を行う。このような一括受電方式を採用することにより、電気料金を削減できるという利点がある。
【0004】
一括受電方式では、電力会社との(高圧電力契約の)受電契約容量によって電気料金が変動する。このため、消費電力のピークを抑制する、換言すれば消費電力を平滑化することが、電気料金の更なる削減に重要な課題となる。消費電力のピークを抑制する手段としては、例えば特許文献1に開示されている貯湯式給湯装置がある。
【0005】
特許文献1の貯湯式給湯装置では、深夜時間帯における沸き上げ運転の開始時間や停止時間が異なる第1運転モードおよび第2運転モードが設定されている。そして、決定手段によって、第1運転モードまたは第2運転モードのいずれにおいて沸き上げ運転を行うかが決定される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2014−137200号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
特許文献1の構成によれば、貯湯式給湯装置の運転時間が2パターンに分かれることにより、深夜時間帯における消費電力のピークは緩和されると考えられる。しかしながら、特許文献1の構成であると、やはり他の時間帯に比して深夜時間帯の消費電力が大きくなることには変わりがない。またマンション等の集合住宅では、深夜時間帯に沸き上げておいた湯水を日中に消費するため、湯水が不足すると夜間に追加で湯水を沸き上げることがある。このため、消費電力のピークは深夜時間帯に加えて夜間時間帯にも生じる。故に、より効果的に消費電力のピークを抑制する手段の開発が要請されていた。
【0008】
本発明は、このような課題に鑑み、一括受電を行っている建物に設置された複数のヒートポンプ式貯湯装置において、深夜時間帯(例えば23時〜7時)や夜間時間帯(例えば17時〜23時)の消費電力のピークを抑制することができ、受電契約容量の低下、ひいては需要家の電気料金の削減を図ることが可能なヒートポンプ式貯湯装置の運転時間設定方法およびヒートポンプ式貯湯装置の運転計画システムを提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するために、本発明にかかるヒートポンプ式貯湯装置の運転時間設定方法の代表的な構成は、一括受電を行っている建物に設置された複数のヒートポンプ式貯湯装置の運転時間設定方法であって、複数のヒートポンプ式貯湯装置の過去の運転履歴データを取得し、建物における過去の消費電力履歴データを取得し、過去および翌日の気象情報データを取得し、運転履歴データと、過去の消費電力履歴データと、過去および翌日の気象情報とから、翌日の消費電力のピーク時間帯を判断し、ピーク時間帯に動作する予定のヒートポンプ式貯湯装置を判断し、ピーク時間帯に動作する予定のヒートポンプ式貯湯装置のうち、動作時間帯を変更できるヒートポンプ式貯湯装置を判断し、動作時間帯を変更できるヒートポンプ式貯湯装置に、動作時間帯を変更した設定時間を送信することを特徴とする。
【0010】
上記構成によれば、ピーク時間帯に動作する予定のヒートポンプ式貯湯装置のうち、動作時間を変更することが可能なヒートポンプ式貯湯装置を判断することができる。そして、そのヒートポンプ式貯湯装置の動作時間を、深夜時間帯や夜間時間帯以外の時間帯に変更することにより、深夜時間帯や夜間時間帯の消費電力のピークを抑制される。したがって、一括受電方式の受電契約容量を低下し、需要家の電気料金の削減を図ることが可能となる。
【0011】
上記複数のヒートポンプ式貯湯装置の過去の使用湯量を取得し、ピーク時間帯に動作する予定のヒートポンプ式貯湯装置のうち、朝・昼の使用湯量が所定量以上の予定のヒートポンプ式貯湯装置を、夜間の動作時間帯を早めに変更できるヒートポンプ式貯湯装置であると判断するとよい。かかる構成によれば、特に夜間時間帯のピークを好適に抑制することが可能である。なお、朝・昼の時間帯としては、例えば7時〜17時を例示することができる。
【0012】
上記複数のヒートポンプ式貯湯装置の過去の使用湯量を取得し、ピーク時間帯に動作する予定のヒートポンプ式貯湯装置のうち、朝・昼の使用湯量が所定量未満の予定のヒートポンプ式貯湯装置を、深夜の動作時間帯を短縮できるヒートポンプ式貯湯装置であると判断するとよい。かかる構成によれば、特に深夜時間帯のピークを好適に抑制することが可能である。
【0013】
上記課題を解決するために、本発明にかかるヒートポンプ式貯湯装置の運転計画システムの代表的な構成は、一括受電を行っている建物に設置された複数のヒートポンプ式貯湯装置の運転計画システムであって、複数のヒートポンプ式貯湯装置の過去の運転履歴データと、建物における消費電力履歴データと、過去の気象情報データを記憶するデータ記憶手段と、翌日の気象情報を取得する気象情報取得手段と、ヒートポンプ式貯湯装置の運転計画を作成する運転計画作成手段と、を含み、運転計画作成手段は、運転履歴データと、過去の消費電力履歴データと、過去および翌日の気象情報とから、翌日の消費電力のピーク時間帯を判断し、ピーク時間帯に動作する予定のヒートポンプ式貯湯装置を判断し、ピーク時間帯に動作する予定のヒートポンプ式貯湯装置のうち、動作時間帯を変更できるヒートポンプ式貯湯装置を判断し、動作時間帯を変更できるヒートポンプ式貯湯装置に、動作時間帯を変更した設定時間を送信することを特徴とする。
【0014】
上述したヒートポンプ式貯湯装置の運転時間設定方法における技術的思想に対応する構成要素やその説明は、当該ヒートポンプ式貯湯装置の運転計画システムにも適用可能である。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、一括受電を行っている建物に設置された複数のヒートポンプ式貯湯装置において、深夜時間帯や夜間時間帯の消費電力のピークを抑制することができ、受電契約容量の低下、ひいては需要家の電気料金の削減を図ることが可能なヒートポンプ式貯湯装置の運転時間設定方法およびヒートポンプ式貯湯装置の運転計画システムを提供することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】本実施形態にかかるヒートポンプ式貯湯装置の運転計画システムの構成を説明する図である。
図2】本実施形態にかかるヒートポンプ式貯湯装置の運転時間設定方法について説明するフローチャートである。
図3】建物における消費電力のシミュレーション結果を例示した図である。
図4】ステップS210における貯湯装置の判断の詳細を例示するフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下に添付図面を参照しながら、本発明の好適な実施形態について詳細に説明する。かかる実施形態に示す寸法、材料、その他具体的な数値などは、発明の理解を容易とするための例示に過ぎず、特に断る場合を除き、本発明を限定するものではない。なお、本明細書及び図面において、実質的に同一の機能、構成を有する要素については、同一の符号を付することにより重複説明を省略し、また本発明に直接関係のない要素は図示を省略する。
【0018】
図1は、本実施形態にかかるヒートポンプ式貯湯装置の運転計画システムの構成を説明する図である。以下、図1に示すヒートポンプ式貯湯装置の運転計画システムについて詳述しながら、本実施形態にかかるヒートポンプ式貯湯装置の運転時間設定方法についても併せて説明する。また以下の説明では、ヒートポンプ式貯湯装置を貯湯装置120、その運転計画システムを運転計画システム100、その運転時間設定方法を単に運転時間設定方法と称する。
【0019】
図1(a)は運転計画システム100の全体構成を示す図であり、図1(b)は運転制御装置130の構成を示すブロック図である。図1(a)に示す集合住宅(以下、建物102と称する)では、電力会社から一括受電を行っている(高圧電力契約)。建物102には、9戸の住宅102aが入っていて、各住宅102aでは、建物102のデベロッパーや管理会社と低圧電力契約を行っている。
【0020】
図1(a)に示すように、本実施形態の運転計画システム100は、各住宅102aに設置されている運転制御装置130を含んで構成されるHEMS(Home Energy Management System)であり、一括受電を行っている建物102に設置された複数の貯湯装置120の運転計画を作成する。運転制御装置130とサーバ106とは、インターネット104(WAN:Wide Area Network)によって接続されている。
【0021】
また各住宅102aには、負荷110および貯湯装置120(ヒートポンプ(HP)式貯湯装置)が設置されている。負荷110としては、住宅102aの室内に配置されている空調機やテレビ、冷蔵庫等の電気機器を例示することができる。貯湯装置120は、ヒートポンプによって生成した湯水を貯湯タンクに貯湯し、かかる湯水を給湯設備に供給する(不図示)。これらの負荷110および貯湯装置120は、LAN(Local Area Network)によって運転制御装置130に接続されている。
【0022】
図1(b)に示す運転制御装置130は、本実施形態では主に貯湯装置120の動作(運転)を制御する。運転制御装置130は、貯湯装置120の動作を制御する運転制御手段140、および各種データを記憶するデータ記憶手段150を含んで構成される。なお、本実施形態では、運転制御手段140およびデータ記憶手段150は運転制御装置130に含まれる構成を例示するが、これに限定するものではなく、運転制御手段140およびデータ記憶手段150を別々の装置としてもよい。
【0023】
運転制御手段140は、運転計画作成手段142、気象情報取得手段144、運転状態取得手段146および消費電力推定手段148としても機能する。運転計画作成手段142は、後に詳述するように貯湯装置120の運転計画を作成する。気象情報取得手段144は、インターネット104を介してサーバ106から翌日の気象情報を取得する。運転状態取得手段146は、貯湯装置120の運転状態(運転状態の履歴データ)を取得する。消費電力推定手段148は翌日の消費電力を推定する。なお、特に本実施形態では、後述するように、消費電力推定手段148は、貯湯装置120の動作時間を変更した場合には、変更した動作時間に基づいて翌日の消費電力を推定(試算)する。これらの各手段は、具体的には運転制御装置130で実行されるプログラムである。
【0024】
データ記憶手段150は、運転履歴データ152、消費電力履歴データ154および気象情報データ156を記憶する。運転履歴データ152は、各住宅102aにおける貯湯装置120、すなわち一括受電を行っている建物102に設置された複数の貯湯装置120の過去の運転履歴のデータであり、運転状態取得手段146が取得した複数の貯湯装置120の運転状態の履歴データを蓄積したものである。消費電力履歴データ154は、建物102の各住宅102aにおける負荷110の過去の消費電力の履歴データである。気象情報データ156は、気象情報取得手段144が取得した気象情報を蓄積した過去の気象情報のデータである。
【0025】
図2は、本実施形態にかかるヒートポンプ式貯湯装置の運転時間設定方法について説明するフローチャートである。以下、運転計画システム100における運転制御手段140の動作について詳述しながら、本実施形態にかかる運転時間設定方法についても併せて説明する。
【0026】
本実施形態の運転時間設定方法では、運転制御手段140は運転計画作成手段142として機能し、一括受電を行っている建物102に設置された複数の貯湯装置120の運転時間を設定する。図2に示すように、運転計画作成手段142は、まずデータ記憶手段150を参照し、各住宅102aに設置された複数の貯湯装置120の過去の運転履歴データ152を取得する(ステップS202)。
【0027】
次に運転計画作成手段142は、データ記憶手段150を参照し、建物102における過去の消費電力履歴データ154、すなわち建物102の各住宅102aに設置されている負荷110の過去の消費電力履歴データを取得する(ステップS204)。続いて運転制御手段140は、運転計画作成手段142として機能し、データ記憶手段150に記憶されている過去の気象情報データ156を取得し、気象情報取得手段144として機能し、翌日の気象情報(気象情報データ)を取得する(ステップS206)。
【0028】
図3は、建物102における消費電力のシミュレーション結果を例示した図である。運転履歴データ152、過去の消費電力履歴データ154、ならびに過去および翌日の気象情報データ156を取得したら、運転計画作成手段142は、それらのデータを参照し、翌日の消費電力のピーク時間帯を判断する(ステップS208)。
【0029】
図3(a)に示す例では、早朝の4時から6時までの時間帯、および夜間の21時から22時までの時間帯が消費電力のピーク時間帯となっている。また12時から17時までの時間帯が消費電力のボトムの時間帯となっている。以下、早朝の4時から6時までのピーク時間帯を深夜ピーク時間帯、夜間の21時から22時までのピーク時間帯を夜間ピーク時間帯、昼の11時から17時までの時間帯をボトム時間帯と称する。
【0030】
なお、深夜ピーク時間帯が発生する要因としては、各住宅102aに設置されている貯湯装置120が、住人が日中に使用する湯水を貯湯しておくために沸き上げ運転を行うことを想定している。また夜間ピーク時間帯が発生する要因としては、深夜に沸き上げた湯水を住人が日中に使用することにより湯水が不足したために追加で沸き上げ運転を行うことを想定している。
【0031】
翌日の消費電力のピーク時間帯を判断したら、運転計画作成手段142は、データ記憶手段150に記憶されている貯湯装置120の過去の運転履歴データを参照し、ピーク時間帯に動作する予定の貯湯装置120を判断する(ステップS210)。そして、運転計画作成手段142は、ステップS210において判断したピーク時間帯に動作する予定の貯湯装置120のうち、動作時間帯を変更できる貯湯装置120を判断する(ステップS212)。
【0032】
図4は、ステップS210における貯湯装置120の判断の詳細を例示するフローチャートである。本実施形態では、動作時間を変更できる貯湯装置120を判断する際に、貯湯装置120の過去の使用湯量を用いている。
【0033】
図4に示すように、動作時間を変更できる貯湯装置120を判断する際には、まず運転計画作成手段142は、データ記憶手段150に記憶されている複数の貯湯装置120の過去の運転履歴データ152を参照し、複数の貯湯装置120の過去の使用湯量を取得する(ステップS222)。そして運転計画作成手段142は、ピーク時間帯に動作する予定の貯湯装置120の朝・昼の使用湯量が所定量以上であるか否かを判断する(ステップS224)。なお、朝・昼の時間帯(図3では「朝・昼時間帯」と表記)としては、上述したように例えば7時〜17時を例示することができる。
【0034】
ピーク時間帯に動作する予定の貯湯装置120の朝・昼の使用湯量が所定量以上であったら(ステップS224のYES)、運転計画作成手段142は、その貯湯装置120を、夜間の動作時間帯を早めに変更できる貯湯装置120であると判断する(ステップS226)。朝・昼の使用湯量が所定量以上であるということは、深夜時間帯で沸き上げた湯水を比較的早い時間帯に使用しているということである。したがって、使用した量を日中の時間帯に追加で沸き上げておくことができるため夜間時間帯の追加沸き上げを減らすことができる。
【0035】
具体的には、図3(b)に示すように、夜間の動作時間帯を早めに変更できる貯湯装置120(朝・昼の使用湯量が所定量以上の貯湯装置120)の動作時間を、夜間ピーク時間帯から早めに変更する。すなわち貯湯装置120の夜間の動作時間をボトム時間帯に移動する。これにより、特に夜間ピーク時間帯の消費電力を好適に抑制することが可能となる。
【0036】
一方、ピーク時間帯に動作する予定の貯湯装置120の朝・昼の使用湯量が所定量未満であったら(ステップS224のNO)、運転計画作成手段142は、その貯湯装置120を、深夜の動作時間帯を短縮できる貯湯装置120であると判断する(ステップS228)。朝・昼の使用湯量が所定量未満であるということは、深夜時間帯で沸き上げた湯水は早い時間帯にはあまり使用されないということである。したがって、深夜時間帯で沸き上げる量は少なくて済むため、深夜時間帯の沸き上げ量ひいては深夜の動作時間帯を短縮することができる。
【0037】
具体的には、図3(c)に示すように、深夜の動作時間帯を短縮できる貯湯装置120(朝・昼の使用湯量が所定量未満の貯湯装置120)の動作時間を深夜時間帯からボトム時間帯に変更する。これにより、貯湯装置120の深夜の動作時間帯が短縮され、深夜ピーク時間帯の消費電力を好適に抑制することが可能となる。
【0038】
図2に戻り、上述したように運転計画作成手段142が動作時間を変更できる貯湯装置120を判断したら(ステップS212)、運転制御手段140は消費電力推定手段148として機能し、かかる貯湯装置120の動作時間を変更した場合(変更後)の翌日の消費電力を推定する(ステップS214)。そして、運転計画作成手段142は、消費電力の推定値を参照し、新たなピーク電力が発生するかどうかを判断する(ステップS216)。
【0039】
新たなピーク電力が発生する場合(ステップS216のYES)、運転計画作成手段142は、動作時間を変更する貯湯装置の台数(貯湯装置120の変更台数)を削減する(ステップS218)。そして、運転計画作成手段142は、ボトム時間帯における新たなピーク電力が発生しなくなるまでステップS210〜ステップS216を繰り返す。これにより、貯湯装置120の動作時間をボトム時間帯に変更した場合におけるボトム時間帯での新たな消費電力のピークの発生を防ぎつつ、その範囲内において貯湯装置120の動作時間を変更することができる。
【0040】
一方、新たなピーク電力が発生しない場合(ステップS216のNO)、運転計画作成手段142は、ステップS212で動作時間を変更できると判断した貯湯装置120を、動作時間を変更する貯湯装置120に決定する。そして、運転計画作成手段142は、動作時間を変更した設定時間を貯湯装置120の運転計画とし(運転計画を作成し)、各貯湯装置120に、動作時間帯を変更した設定時間(運転計画)を送信する(ステップS220)。これにより、例えば図3(a)の深夜ピーク時間帯および夜間ピーク時間帯における貯湯装置120の消費電力は、図3(b)や図3(c)に示すように日中に割り振られ、消費電力のピークが緩和される。
【0041】
上記説明したように、本実施形態のヒートポンプ式貯湯装置の運転時間設定方法およびヒートポンプ式貯湯装置の運転計画システムでは、ピーク時間帯に動作する予定の貯湯装置120のうち、動作時間を変更することが可能な貯湯装置120を判断する。そして、その貯湯装置120の動作時間を、深夜時間帯や夜間時間帯以外の時間帯に変更することにより、深夜時間帯や夜間時間帯の消費電力のピークを抑制することができる。これにより、図3(a)の深夜時間帯や夜間時間帯の消費電力のピークが、図3(b)に示すように抑制されるため、一括受電方式の受電契約容量を低下することができ、需要家の電気料金の削減を図ることが可能となる。
【0042】
以上、添付図面を参照しながら本発明の好適な実施形態について説明したが、本発明は係る例に限定されないことは言うまでもない。当業者であれば、特許請求の範囲に記載された範疇内において、各種の変更例または修正例に想到し得ることは明らかであり、それらについても当然に本発明の技術的範囲に属するものと了解される。
【産業上の利用可能性】
【0043】
本発明は、一括受電を行っている建物に設置された複数のヒートポンプ式貯湯装置の運転時間設定方法、かかるヒートポンプ式貯湯装置の運転計画システムに利用することができる。
【符号の説明】
【0044】
100…運転計画システム、102…建物、102a…住宅、104…インターネット、106…サーバ、110…負荷、120…貯湯装置、130…運転制御装置、140…運転制御手段、142…運転計画作成手段、144…気象情報取得手段、146…運転状態取得手段、148…消費電力推定手段、150…データ記憶手段、152…運転履歴データ、154…消費電力履歴データ、156…気象情報データ
図1
図2
図3
図4