(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
空隙及び切り欠きを有する環状の第1の導体と、前記環の内側に一端が接続され、他端は前記環の内側に対して第1の間隙をもって配置される第2の導体とを備える平板状の第1のアンテナ素子と、前記切り欠き内に配置された接触導体と、
前記接触導体で橋絡される第2の間隙を有し空隙及び切り欠きを有する環状の第3の導体と、前記環の内部に一端が接続され、他端は前記環の内側に対して第3の間隙をもって配置される第4の導体とを備える平板状の第2のアンテナ素子とを備え、
前記第1及び第2のアンテナ素子は、前記環状の第1の導体の切り欠きの位置に含まれる線分で略直交することを特徴とするアンテナ。
前記第1のアンテナ素子と前記第2のアンテナ素子は、一端が前記第1の間隙の近傍を含む前記第1の導体の外側に接続され、他端が前記反射板と接続される導体板を、それぞれ更に備えることを特徴とする請求項7に記載の反射板付きアンテナ。
請求項1乃至請求項7の何れかに記載のアンテナ、請求項8に記載の反射板付きアンテナ、または請求項9に記載のアレイアンテナを含むことを特徴とする無線通信装置。
【発明を実施するための形態】
【0011】
[第1の実施形態]
次に、本発明の実施の形態について図面を参照して詳細に説明する。
[構成の説明]
まず、本発明の第1の実施形態の構成について、図面を参照して説明する。
【0012】
図1はアンテナ10の斜視図、
図2はアンテナ10の正面図、
図3はアンテナ10の平面図である。アンテナ10は、第1のアンテナ素子としてのアンテナ素子100aと、第2のアンテナ素子としてのアンテナ素子100bとを有する。
図1乃至
図3には説明のため図中に直交座標系としてx、y、z軸が定義され、第1のアンテナ素子100aはx軸とz軸に平行な面、第2のアンテナ素子100bはy軸とz軸に平行な面に配置されている。尚、後述する他の図面におけるx、y、z軸とアンテナ素子の配置面も同様に決められている。
【0013】
なお、以下の説明において、第1のアンテナ素子100a、第2のアンテナ素子100bの何れかを特定しない場合には、単にアンテナ素子100と記す場合がある。また、アンテナ素子100の構成要素について、アンテナ素子100a又は100bの何れかの構成要素であることを明示する場合には、符号a又はbの何れかを付すことにより区別する。
【0014】
図1乃至
図3を参照すると、第1のアンテナ素子100aと第2のアンテナ素子100bとは互いに一部が重なるように、直交して配置されている。そして、第1のアンテナ素子100a及び第2のアンテナ素子100bのz軸方向の中心軸は一致している。
【0015】
尚、第1のアンテナ素子100aおよび第2のアンテナ素子100bは、完全に直交しないでほぼ直交する配置でも良い。また、第1のアンテナ素子100aおよび第2のアンテナ素子100bの中心軸は完全に一致しないでほぼ一致する配置、或いは後述の変形例に示す様に中心軸がずれた配置でも良い。
【0016】
次に、
図4を参照して第1のアンテナ素子100aと第2のアンテナ素子100bにおける共通の構成について説明する。
図4に示されるように、アンテナ素子100は、板状の誘電体層108(点線で覆われた部分) の片面にC字形状導体104が形成され、誘電体層108を挟んでC字形状導体104と反対の面に導体給電線105が形成される。尚、
図4の正面図は、誘電体層108を透視するように反対面のC字形状導体104を描いている。
【0017】
また、誘電体層108を挟んだ両面の導体形状、および後述の導体ビア106は、両面銅張誘電体基板をエッチング加工することによって実現可能である。更に、導体形状の導体は、銅の他に銀、アルミ、ニッケルなどの導電体材料などとすることも出来る。
【0018】
尚、
図1、
図2では誘電体層108は図示を省略されている。また、後述の図においても、適宜、誘電体層108は図示を省略されている。
【0019】
或いは、誘電体層108は構成上除外されて、アンテナ10の導体部分だけが何らかの方法で支持されることで構成されてもよい。更に、誘電体層108は、部分的な誘電体の支持部材のみから構成され、少なくとも一部が中空となっていてもよい。
【0020】
次に、C字形状導体104は、スプリットリング共振器として機能する導体であり、環状の導体の一部が不連続となるようにスプリット部109が形成された、ほぼC字形状の導体である。
図1、
図2に示される例では、C字形状導体104は、ほぼ長方形の形状であり、その長辺上にスプリット部109が形成されている。
【0021】
このスプリット部109は、C字形状導体104の一端と他端とが向き合うように形成された間隙である。ここで、C字形状導体104の長手方向(アンテナ素子100aについてはx軸方向に相当し、アンテナ素子100bについてはy軸方向に相当する)の長さは、例えば、λ/4程度である。なお、λは、アンテナ素子の共振周波数において、電磁波が進行する物質中における波長を示す。
【0022】
更に、C字形状導体104と導体給電線105とは誘電体層108の中を貫く導体ビア106で導通している。この導体ビア106は、スプリット部109を介して向き合うC字形状導体104の導体部分110と導体部分111のうち一方の導体部分と、導体給電線105の一端とを電気的に接続するビアである。
図1および
図2に示した例では、ビア106は、C字形状導体104の長辺のうちxy面から遠い側の長辺上の導体部分110と、導体給電線105の一端とを電気的に接続する。
【0023】
また、導体給電線105は、給電部107からC字形状導体104へ給電するための伝送線路である。この導体給電線105は、
図1、
図2、および
図4に示されるように、例えば、C字形状導体104のz軸方向の長さとほぼ等しい長さの導体である。
【0024】
そして、給電部107は図示しない給電源からの高周波電力が供給される動作上の給電部である。より具体的には、給電部107は、導体給電線105の他端(導体ビア106と接続していない側)と、この他端近傍のC字形状導体104の部分との間を電気的に励振可能な給電部である。
【0025】
図1及び
図2に示される給電部107は、導体給電線105がビア106で接続されない側でC字形状導体104と重なる位置を一端とし、その一端の近傍のC字形状導体104をもう一端として、両端に対して高周波的に給電する。
【0026】
更に、給電部107は、例えば図示せぬ無線通信回路あるいは無線通信回路からの無線信号を伝送する伝送線と接続されていて、無線通信回路とアンテナ10との間で無線信号を伝送する。
【0027】
以上が、第1のアンテナ素子100aと第2のアンテナ素子100bにおける共通の構成である。
【0028】
次に、第1のアンテナ素子100aと第2のアンテナ素子100bの構成上の違いについて説明する。
【0029】
図4に示されるように、第1のアンテナ素子100aと第2のアンテナ素子100bはC字形状導体104同士が重なる導体交差部51における構成が異なる。尚、誘電体層108は点線で覆われた部分 である。第1のアンテナ素子100aは導体交差部51aにおいてC字形状導体の内側に切り欠きが形成されている。一方、第2のアンテナ素子100bは導体交差部51bにおいてC字形状導体の外側に切り欠きが形成されている。
図1に示されるように、これらの切り欠きにより第1のアンテナ素子100aと第2のアンテナ素子100bは導体交差部51aおよび51bにおいて、C字形状導体が互いに接触することなく配置される。
【0030】
そして、アンテナ100aとアンテナ100bは互いに交差して嵌合するため、誘電体層108に切れ込み52a、52bが設けられている。切れ込みの箇所は第1のアンテナ素子100aと第2のアンテナ素子100bともに、スプリット部109の間隙の垂線上(z軸上)であり、切れ込みの幅は誘電体層108の厚みと略等しく、かつスプリット部109の間隙より短く形成される。
【0031】
また、切れ込み52aと52bは、互いに交差して嵌合した際に、アンテナ素子100aおよび100bの底面からの距離(z軸の座標)が互いに略等しくなる深さで形成される。すなわち、切れ込みの深さ(s1)と切れ込みの深さ(s2)の合計が、誘電体層108の短辺の長さとほぼ一致する長さに形成される。
【0032】
更に、導体交差部51における各アンテナ素子のC字状導体104の切り欠きは、誘電体層108の切れ込み52の端部から所定長だけオフセットされており、嵌合時にアンテナ素子間の導体部が互いに接触しない。ただし、アンテナ素子100aとアンテナ素子100bの導体部が互いに接触しなければ、導体部のオフセットに手段を限るものではない。
【0033】
以上が、第1のアンテナ素子100aと第2のアンテナ素子100bの構成上の違いである。
[動作の説明]
次に、本実施形態の動作について図面を参照して説明する。
【0034】
図4を参照すると、アンテナ素子100のC字形状導体104は、リングに沿って流れる電流によるインダクタンスと、スプリット部109で対向する導体間に生じるキャパシタンスが直列に接続された、LC直列共振器として機能する。すなわち、C字形状導体104は、スプリットリング共振器として機能する。このスプリットリング共振器の共振周波数付近では、C字形状導体104に大きな高周波電流が流れ、一部の高周波電流成分が放射に寄与することによりアンテナとして動作する。
【0035】
このとき、C字形状導体104に流れる電流のうち、主に放射に寄与するのはアンテナ素子100の長手方向(アンテナ素子100aについてはx軸方向に相当し、アンテナ素子100bについてはy軸方向に相当する)の電流成分である。このため、C字形状導体104の長手方向の長さを長くすることで、良好なアンテナ効率を実現することが可能となる。ここで、C字形状導体104の長手方向の長さは、一般的に約λ/4で、素子長が約λ/2であるダイポールアンテナ素子により直交2偏波アンテナを構成する場合とほぼ同等のアンテナ効率が実現される。
【0036】
そして、アンテナ素子100aの給電部107aに高周波電力を印加することで、x軸方向の偏波である電磁波が空間に放出される。また、アンテナ素子100bの給電部107bに高周波電力を印加することで、y軸方向の偏波である電磁波が空間に放出される。このようにして、アンテナ10は、アンテナ素子100aとアンテナ素子100bから直交する2つの偏波の電磁波を放出する。
【0037】
尚、ここまでは、アンテナ10を送信アンテナとして説明したが、アンテナの可逆定理により、受信アンテナとしても同一特性で動作する。
【0038】
また、
図1乃至
図4に示されるアンテナ素子100のC字形状導体104は略長方形である。しかし、アンテナ素子100a、100bの配置が上記の
図1乃至
図4に示される配置であれば、アンテナ素子100a、100bは他の形状であっても本発明の本質的な効果には影響を与えない。たとえばアンテナ素子100a、100bの形状は正方形や円形、三角形、ボウタイ形状などであってもよい。
【0039】
更に、
図1乃至
図4に示されるアンテナ素子100は、長方形の短辺がz軸と平行に配置されているが、アンテナ素子100の短辺以外の導体面状の線がz軸と平行に配置されてもよい。
【0040】
また、一般的にスプリットリング共振器において、スプリットリング(C字形状導体104)のリングの径を大きくして電流経路を長くしてインダクタンスを大きくすると共振周波数が低くなる。或いは、スプリット部109で対向する導体間の間隔を狭くしてキャパシタンスを大きくすることでも共振周波数が低くなる。とくにスプリット部109で対向する導体間の間隔を狭くする方法は、アンテナ素子100の全体形状を大きくせずに共振周波数を低周波数化できるため、小型化に適している。
【0041】
尚、アンテナ素子100a、100bは、電磁気的に共振したとき、長手方向(アンテナ素子100aについてはx軸方向に相当し、アンテナ素子100bについてはy軸方向に相当する)の両端部近傍は電気的に開放面となる。従ってアンテナ素子の長手方向の両端部付近は、電界強度が大きく磁界強度が小さい。そしてアンテナ素子100a、100bの長手方向における中央部近傍は電気的に短絡面となり、磁界強度が大きく電界強度が小さい。
【0042】
そこで、
図3に示す様に、アンテナ素子100aとアンテナ素子100b、それぞれの中央部付近が直交になる様に配置すると、電界強度が強い部分同士が近接せず、かつ、磁界は直交する。従って、このような配置にすると、アンテナ素子間の結合は小さいので、片方のアンテナ素子が他方のアンテナ素子から影響を受けにくく、アンテナ効率の劣化を抑えられる。
【0043】
上述のように、アンテナ素子100の中央部近傍の磁界強度は小さいため、C字形状導体104の切り欠きの有無によるアンテナ特性への影響は小さい。しかし、特に導体部に切り欠きがない場合と同一の特性とする際には、C字形状導体104の周囲長に対して誘電体層108の厚さ(切り欠きの幅)が十分に小さいことが望ましい。
【0044】
尚、導体ビア106と、C字形状導体104との接続位置を変更することで、給電部107から見たスプリットリング共振器の入力インピーダンスを変化させることができる。そして、給電部107より先の図示せぬ無線通信回路もしくは伝送線のインピーダンスに、スプリットリング共振器の入力インピーダンスを整合させることで、無線通信信号を反射を少なくアンテナに給電することが可能となる。ただし、インピーダンスが整合していない場合でも、本発明の本質的な効果には影響を与えない。
【0045】
本実施形態に示す導体交差部51a,51bの構造を用いることにより、2つのアンテナ素子が等しい高さに配置されても導体部が接触しないので、偏波アンテナ素子間の電磁結合を低減することができる。
以上説明したように、本実施形態に示すアンテナは、アンテナ素子としてダイポールアンテナを用いた直交2偏波アンテナと比べて、より小型の直交2偏波アンテナを実現することが出来る。
[第2の実施形態]
次に、本発明の第2の実施形態について図面を参照して詳細に説明する。
【0046】
本実施形態に示すアンテナ20は、第1の実施形態に示すアンテナ10と比べて構成が異なり、動作は同じである。
[構成の説明]
本発明の第2の実施形態であるアンテナ20の構成について、図面を参照して説明する。
【0047】
図26はアンテナ20の斜視図、
図27はアンテナ20の正面図、
図28はアンテナ20の平面図である。尚、以下の説明において、第1の実施形態に示すアンテナ10の構成要素と同様の構成要素については、同じ符号を付して説明を適宜省略する。また、誘電体層108については、アンテナ素子100aの誘電体層108a及びアンテナ素子100bの誘電体層108bの図示を省略し、後述の図においても誘電体層108の図示は、適宜省略されている。
【0048】
図26に示されるように本実施形態のアンテナ20は、第1の実施形態に示すアンテナ10と同様に、第1のアンテナ素子100と第2のアンテナ素子100bとは互いに一部が重なるように、直交して配置されている。そして、第1のアンテナ素子100a及び第2のアンテナ素子100bのz軸方向の中心軸は一致している。
【0049】
そして、
図29に示す様にアンテナ素子100bのC字形状導体104bは、誘電体層端部に設けた切れ込み部52bにおいて途切れている。更に、アンテナ素子100aとアンテナ素子100bが直交して配置されると、アンテナ素子100bの途切れた導体を接続するための導体ランド53と導体ビア54を、アンテナ素子100aのC字形状導体104aの環の内側に備えている。
【0050】
第1のアンテナ素子100aと第2のアンテナ素子100bにおける共通の構成については第1の実施形態の説明と同じであるため、説明を省略する。
【0051】
次に、本実施形態における第1のアンテナ素子100aと第2のアンテナ素子100bの構成上の違いについて説明する。
【0052】
図26に示されるように、第1のアンテナ素子100aと第2のアンテナ素子100bが直交して配置された時に、C字形状導体104が重なる導体交差部51におけるC字形状導体104の構成が異なる。第1のアンテナ素子100aには導体交差部51aにおいてC字形状導体104の内側に切り欠きが形成されており、切り欠きの近傍のC字形状導体104aの環内に、C字形状導体104aと導通しない導体ビア54及び導体ランド53が形成されている。一方、第2のアンテナ素子100bでは、導体交差部51bにおいてC字形状導体104bが途切れている。
【0053】
そして、C字形状導体104bの途切れた導体部とアンテナ素子100aの導体ランド53が、はんだ付け等により接続されることで導体ビア54を介して、C字形状導体104bの切り欠きによって途切れた導体部が導通する。
【0054】
このようにして、アンテナ素子100aとアンテナ素子100bは導体交差部51においてそれぞれのC字形状導体104が互いに接触することなく配置される。
【0055】
続いて、
図29を参照してアンテナ100a、およびアンテナ100bの詳細構造を説明する。アンテナ100aとアンテナ100bを交差して嵌合するため、それぞれの誘電体層108に切れ込み52が設けられている。切れ込み箇所は第1のアンテナ素子100aと第2のアンテナ素子100bともに、スプリット部109の間隙の垂線上(z軸上)であり、切れ込みの幅は誘電体層108の厚みと略等しく、かつスプリット部109の間隙より狭く形成される。
【0056】
そして、切れ込み52aと52bは、互いに直交させて嵌合した際に、アンテナ素子100aおよび100bの底面からの距離(z軸の座標)が互いにほぼ等しくなる深さで形成される。すなわち、切れ込み52aの深さ(s3)と切れ込み52bの深さ(s4)の合計が、誘電体層108の短辺の長さとほぼ一致する長さに形成される。
【0057】
また、アンテナ素子100aのC字状導体104aの内側、導体ランド53付近の切れ込みは、C字状導体104aの短辺よりも短い長さで形成される。
【0058】
そして、アンテナ素子100bの切れ込み52bの部分のC字状導体104bは、上部においてアンテナ素子100aの導体ランド53と接する一方、下部においてはアンテナ素子100aのC字形状導体104aと接しないようにする。
【0059】
本実施形態のアンテナ20のアンテナ素子は、第1の実施形態のアンテナ素子と比べると、一方のアンテナ素子のC字状導体104の内部における切れ込みの深さは浅い。そのため、支持母材である誘電体層108が切れ込み部で破損しにくく、嵌合時の接合性が良いという利点を有する。
[第3の実施形態]
次に、本発明の第3の実施形態について図面を参照して詳細に説明する。
[構成の説明]
図32に本実施形態の構成例を示す。
【0060】
本実施形態のアンテナ30は、アンテナ10と導体板31とスペーサ32からなり、アンテナ10は第1の実施形態で示したアンテナ10と同じ構成である。そして、アンテナ10は導体板31の上に、スペーサ32(図の斜線部)によって一定の間隔を保って配置される。このスペーサ32は、低損失の誘電体などで実現されるが、導体板31とアンテナ10を一定間隔で離すことが出来れば空間でも良く、また部分的な支持体であっても良い。
【0061】
また、アンテナ30における、アンテナ10は第1の実施形態と同じ構成としたが、これに限らない。アンテナ10は第2の実施形態で示したアンテナ20の構成に置き換えられても同様に構成可能である。以下では、アンテナ10を用いた構成を例に説明する。
[動作の説明]
本実施形態の構成によれば、導体板31は電波の反射板として作用する。従って、導体板31のアンテナが配置されている面の方向に電波は放射されるが、導体板31の反対面には電波は殆ど放射されない。
【0062】
そして、アンテナ10と導体板31の間隔(
図32の距離Z)は、アンテナ10の共振周波数に対応する波長の1/4程度であることが好ましい。
図32の距離Zが波長の1/4程度であると、アンテナ10からz軸の正方向に放射された電磁波と、z軸の負方向に放射されて導体板31で反射された電磁波とが互いに強め合うため、z軸正方向のアンテナ利得が向上する。しかし、距離Zが波長の1/4以外の値であっても本発明の本質的な効果には影響を与えない。
【0063】
一方、第1の実施形態に示したアンテナ10は
図1において、z軸の正方向と負方向にほぼ対称に電波は放射される。
【0064】
例えば移動通信網の基地局に用いるアンテナでは、第1の実施形態に示したアンテナ10の対称形の放射特性であるより、本実施形態に示すアンテナ30のように一方向に指向性を有する放射特性であることが一般的に求められる。
【0065】
本実施形態に示すアンテナ30は、一方向に指向性を有する放射特性が求められる場合に有効である。
[第4の実施形態]
次に、本発明の第4の実施形態について図面を参照して詳細に説明する。
[構成の説明]
図33は本実施形態の構成例を示す図である。
【0066】
本実施形態のアンテナ40が、第3の実施形態のアンテナ30と異なる点は、アンテナ素子100a、100bそれぞれに対して、導体板123a、123bが設けられていることである。この導体板123a、および導体板123bは
図33において斜線 で示されている。そして、導体板123はC字形状導体104の外縁部分に一端が接続され、他端は導体板31と接続されていて、導体給電線105と共に、給電部107からC字形状導体104へ給電するためのマイクロストリップラインを構成する。
【0067】
導体板123 がC字形状導体104の外縁部分と接続する位置は、C字形状導体104のスプリット部109と対向する位置近傍である。つまり、導体板123は、C字形状導体104の外縁部分のうち、C字形状導体104の中央部の近傍に位置する部分と接続する。ここで、C字形状導体104の中央部とは、C字形状導体104aについてはx軸方向におけるC字形状導体104aの中央部分、C字形状導体104bについてはy軸方向におけるC字形状導体104bの中央部分を指す。
【0068】
そして、給電部107は、導体給電線105の延伸された側の一端部分と、給電部107の配置位置近傍の導体板123との間を電気的に励振可能である。また、導体板31の裏側、即ちアンテナ40の逆側には、例えば、図示しない発振器、増幅器などを含む無線回路等が配置されてもよい。
【0069】
また、アンテナ40のアンテナ素子100aおよびアンテナ素子100bは、第3の実施形態に示されるアンテナ30のアンテナ素子100a、100bと同様に導体板31に対する高さが一致するように導体板31に対して垂直に配置されている。このため、
図36に示すように、アンテナ素子100aには切れ込み52aが、アンテナ素子100bには切れ込み52bが設けられているので、アンテナ素子100aとアンテナ素子100bを交差して組合わせることが出来る。
【0070】
また、第3の実施形態と同様に、アンテナ素子100aおよびアンテナ素子100bに対し、導体板31は短絡面となる。従って、アンテナ素子の共振特性への影響を抑えるため、
図33乃至
図35のアンテナ素子100a、100bと導体板31との間の距離Zは以下の条件であることがより望ましい。即ち、距離Zはアンテナ素子の共振周波数における波長の略4分の1であることがより望ましい。ただし、波長の略4分の1でない場合でも、本発明の本質的な効果には影響を与えない。
【0071】
また、第1の実施形態の構成と異なる点として、切れ込み52aの深さ(s1)はC字形状導体104の環内の長さにとどめる必要はなく、導体板123の領域まで延伸することも可能である。
【0072】
ただし、アンテナ素子100aの切れ込み52aの深さが、C字形状導体部104から導体板導体給電部123まで延伸するほど、アンテナ素子100aにおける電流経路が導体給電部にまで迂回して流れることになる。そのため、アンテナ素子100aとアンテナ素子100b間の特性上の差異が大きくなるので、切れ込み52aの深さについては適宜調整が必要である。
【0073】
以上説明した点において、アンテナ40は第3の実施形態にかかるアンテナ30と異なるが、他の構成はアンテナ30と同様である。
【0074】
また、
図33乃至
図35に示す導体板123は導体板31に接続しているが、必ずしも接続している必要はない。なお、導体給電線105、導体ビア106、給電部107の位置は、スプリット部109の左右どちらに位置しても、本発明の本質的な効果には影響を与えない。
[動作の説明]
次に、本実施形態の動作について説明する。
【0075】
一般的に、高周波信号の伝送線路をアンテナ素子に接続すると、アンテナ素子近傍の伝送線の配置や形状などによって、アンテナ素子の共振特性が変化してしまうことが多い。
【0076】
図33乃至
図36に示すように、導体板123がアンテナ素子100に接続する部分は、アンテナ素子100の下側の長手方向のほぼ中央部に位置している。この位置は、第1の実施形態の説明で述べたように、共振器であるC字形状導体104において、高周波的な短絡面であり電界強度が小さい部分である。したがって、導体板123を上記のように接続した場合、導体板123は、共振特性に影響を与えるようなリアクタンスを殆ど生じない。その結果、アンテナ素子100a、100bの共振特性は殆ど変化しないことを発明者らは見出した。
【0077】
本実施形態では、導体給電線105と導体板123とで、給電部107とアンテナ素子100を結ぶ伝送線路を形成している。そして、この伝送線路の接続位置は、上記に説明したように高周波的な短絡面近傍であるためアンテナ素子100の共振特性への影響は少ない。
【0078】
一方、給電部107がアンテナ素子100に近いと、アンテナ素子100の共振特性はアンテナから遠ざかる側の給電部から先の給電線路や回路の影響を受け易い。しかし、上記の導体給電線105と導体板123からなる伝送線路を用いることにより、給電部107をアンテナ素子100とは遠い位置に設けることが可能となる。その結果、アンテナ素子100は、給電部から先、アンテナとは逆側の給電線路や回路の影響を受けにくく、安定した共振特性が得られる。
【0079】
次に、設計上の留意点について述べる。
【0080】
導体板123は上述の通り、共振時における電気的短絡面に相当するアンテナ素子100の外縁部の長手方向ほぼ中央に接続されることが好ましい。
【0081】
そして、アンテナ素子100の外縁部の長手方向ほぼ中央から、長手方向の長さの1/4の範囲内程度であれば、おおよそ電気的短絡面と見做せるため、アンテナ素子100と導体板123は、この範囲内で接続することが望ましい。
【0082】
しかし、導体板123が上記以外の範囲に位置していても本発明の本質的な効果には影響を与えない。
【0083】
また、給電部107から観測するアンテナ40のインピーダンスは、第1の実施形態に関する説明で述べたように、導体ビア106とC字形状導体104との接続位置に依存する。ただし、本実施の形態に係るアンテナ40においては、延伸された導体給電線105と導体板123とで構成された伝送線路の特性インピーダンスにも依存する。
【0084】
そして上述の伝送線路の特性インピーダンスは、スプリットリング共振器の入力インピーダンスと整合していることが望ましい。ただし、インピーダンスが整合していない場合でも、本発明の本質的な効果には影響を与えない。
【0085】
以上のように本実施形態によれば、第3の実施形態に係る効果に加え、アンテナ素子の共振特性に対する伝送線の影響が抑えられた直交2偏波アンテナが実現される。
[第5の実施形態]
次に第5の実施形態について、
図48を参照して説明する。
【0086】
本実施形態のアンテナ200は、平板状の第1のアンテナ素子211と平板状の第2のアンテナ素子212と接触導体213とを備える。そして、第1のアンテナ素子211は、空隙及び切り欠きを有する環状の第1の導体201と、前記環の内側に一端が接続され、他端は前記環の内側に対して第1の間隙をもって配置される第2の導体202とを備える。更に、アンテナ200は、接触導体213は前記切り欠き内に配置される。また、第2のアンテナ素子212は、前記接触導体213で橋絡される第2の間隙を有し空隙が形成された環状の第3の導体221と、前記環の内部に一端が接続され、他端は前記環の内側に対して第3の間隙をもって配置される第4の導体222とを備える。そして、前記第1のアンテナ素子211及び第2のアンテナ素子212は、各々の外郭線内の領域に含まれる線分で略直交する。
【0087】
本実施形態のアンテナ200は、空隙を有する環状の第1の導体201と、前記環の内部に一端が接続され、他端は前記環の内側に対して第1の間隙をもって配置される第2の導体202とを有する平板状の第1のアンテナ素子211を備える。更に、アンテナ200は、前記第1のアンテナ素子211と略合同形状の第2のアンテナ素子212とを備え、前記第2のアンテナ素子212は前記第1のアンテナ素子211を通る1つの軸に対して90度回転した位置に配置される。そして、アンテナ200は、前記第1のアンテナ素子211の前記第1の導体201に切り欠きを有し、更に前記切り欠き内に接触導体213を有する。また、前記第2のアンテナ素子212の第1の導体221は第2の間隙を有し、前記第2の間隙を挟む前記第2のアンテナ素子212の前記第1の導体221は前記接触導体213と接触する。
【0088】
以上説明したように、本実施形態に示すアンテナは、小型の直交2偏波アンテナを実現することが出来る。
【0089】
以上、本発明の好適な実施形態を説明したが、上記実施形態に限定されるものではなく、次のように拡張または変形できる。
(変形例1)
第1の実施形態に示すアンテナ10は、例えば無線LAN(Local Area Network)などの無線通信装置や、移動通信基地局におけるアンテナ部として、適宜組み込まれてもよい。
図5に、アンテナ10を備えた無線通信装置の一例である無線通信装置11を示す。
図5に示された無線通信装置11は、アンテナ10、アンテナ10を機械的に保護する誘電体レドーム112、無線通信回路部114、アンテナ10のアンテナ素子100と無線通信回路部114との間で無線信号を伝送する伝送線113を備える。尚、
図5において、誘電体レドーム112は図示を省略している。
(変形例2)
また、第1の実施形態に示すアンテナ10を複数個用いて、アレイアンテナを構成することが出来る。
図6に、アンテナ10を複数個用いて構成されたアレイアンテナ12の上面図を示す。このアレイアンテナ12は、例えば、アンテナ10をアンテナ素子100の共振周波数の電磁波の波長の約2分の1ずつ離して複数並べた構成となっている。
(変形例3)
更に、変形例2のアレイアンテナ12を用いて無線通信装置を構成することが出来る。
図7は、アレイアンテナ12を用いて構成された無線通信装置13を示す図である。無線通信装置13は、アレイアンテナ12、誘電体レドーム112、伝送線113、無線通信回路ユニット115を備える。更に、無線通信装置13は、この他に、例えばベースバンド処理部などを備えてもよい。なお、
図7において誘電体レドーム112は、図示を省略している。
(変形例4)
第1の実施形態で述べたように、アンテナ素子同士の結合を抑えるためには、
図3に示すようにアンテナ素子100aと100bは中央部で交差するように配置することが好ましい。しかし、アンテナ素子100bは必ずしも中央部で交差するように配置する必要はない。
図8及び
図9はアンテナ素子100bが中央部以外の箇所でアンテナ素子100aと交差する配置を示す図である。
【0090】
図8はアンテナ10の正面図であり、
図9はアンテナ10の平面図である。
図8及び
図9で示した例では、アンテナ素子100bの嵌合時の交差箇所が、アンテナ素子100bの長手方向における中央部からずれた位置で重なるように配置されている。このように、アンテナ素子100bの中央部以外の位置で重なるように配置されてもよい。
(変形例5)
次に、第1の実施形態に示すアンテナ10の、別の変形例を示す。
【0091】
アンテナ素子100は、必ずしも
図1、
図2に示す構造でなくともよく、さらに構造上の工夫がなされていてもよい。
図10乃至
図24は、アンテナ素子100の構成の種々の変形例を示す図である。尚、アンテナ素子100aとアンテナ素子100bは、導体切り欠き部以外の構造は同一であるため、
図10乃至
図24では切欠き部を省略している。
【0092】
例えば、
図10に示すアンテナ素子100では、誘電体層108が、C字形状導体104に対して大きな寸法で作られている。第1の実施形態に示すアンテナ10は、C字形状導体104の外側の辺が外形と一致するため、アンテナ素子の製作時に外形を切断する際に、C字形状導体の外側の辺も切断して寸法がずれるおそれがある。誘電体層108の寸法と比べてC字形状導体104の寸法は、アンテナの特性を大きく変化させる。
【0093】
そこで、誘電体層108がC字形状導体104より大きい寸法であれば、誘電体層108を切断する際にC字形状導体104を切断するおそれは極めて少なくなり、C字形状導体104の寸法のずれを防ぐことができる。
(変形例6)
更に、アンテナ素子100の別の変形例を示す。
【0094】
第1の実施形態で示した
図4の構成では、C字形状導体104の支持母材である誘電体基板に対してアンテナ素子100aの切り欠きが深く形成されるため、誘電体基板108が切り欠き部で破断する懸念がある。そこで、
図25に示すように、誘電体基板108のz軸方向の寸法を大きくすると、アンテナ10の支持母材が強化されるため、嵌合時におけるアンテナ10の破断を防ぐ効果がある。
(変形例7)
また、第1の実施形態で示した
図4のアンテナ素子100は、導体ビア106を用いずに、
図11に示す様に導体給電線105の一端が直接C字形状導体104の上部に電気的に接続しても良い。更に、
図11に示す様に導体給電線105が銅線などの線状導体であってもよい。
(変形例8)
或いは、第1の実施形態で示した
図1の導体給電線105に代わり、
図12に示される様に複数の導体給電線を用いて構成されてもよい。
図12に示すアンテナ素子100は、C字形状導体104と同じ層に導体給電線151、C字形状導体104と異なる層に導体給電線152、及び導体ビア153を備える。そして、導体給電線151の一端は、C字形状導体104の導体部分111と電気的に接続する。また、導体給電線152の一端は、給電部107と電気的に接続している。さらに、導体給電線151の他端と導体給電線152の他端とは、導体ビア153を介して電気的に接続している。
(変形例9)
更に、第1の実施形態に示すアンテナ素子100の変形例を
図13に示す。
【0095】
図13のアンテナ素子100は、C字形状導体104の給電部側の長辺上の一部分が切り欠かれている。そして、切り欠かれた部分に導体給電線105が通されている。さらに、導体給電線105と、切り欠きを形成するC字形状導体104端部との間を電気的に励振するように給電部107が設けられている。
【0096】
このような構成の場合、C字形状導体104及び導体給電線105は同一の層に形成できるため、製作が容易である。ただし、C字形状導体104が切り欠かれたことによるスプリットリング共振器の共振特性の劣化を補うためにさらなる工夫がなされてもよい。例えば、
図14に示すように、アンテナ素子100は、スプリットリング共振器の切り欠かれた部分を導体給電線105に接触せずに導通させる架橋導体116を備えてもよい。
(変形例10)
また、アンテナ素子100は、電気特性向上のための工夫がさらになされていてもよい。第1の実施形態で説明した様に、C字形状導体104に流れる電流のうち、主に放射に寄与するのはアンテナ素子100の長手方向(アンテナ素子100aについてはx軸方向に相当し、アンテナ素子100bについてはy軸方向に相当する)の電流成分である。そこで、
図15に示すアンテナ素子100では、C字形状導体104の長手方向の両端部の短辺に導体放射部117が接続されている。なお、導体放射部117はC字形状導体104と同じ素材であってもよい。このような構成によって、放射に寄与するC字形状導体104の長手方向の電流成分が導体放射部117に誘導されるため、アンテナ効率が向上する。なお、導体放射部117は、C字形状導体104の片方の端にのみ設けられていてもよい。
(変形例11)
変形例10で示した導体放射部117の形状は、上述の形状に限らず種々変形可能である。
【0097】
変形例10で示した
図15のアンテナ素子100では、導体放射部117とC字形状導体104とが接続する部分のそれぞれの辺の大きさが一致する形状を示したが、導体放射部117の形状はこれに限定されるものではない。そして、導体放射部117とC字形状導体104とが連結する部分について、それぞれの辺の長さが同じでなくてもよい。例えば、
図16および
図17に示すアンテナ素子100のように、導体放射部117とC字形状導体104とが接続する部分において、導体放射部117の辺がC字形状導体104の辺よりも長くても良い。
図16および
図17に示すアンテナ素子100は、C字形状導体104に加えて導体放射部117が加わることでアンテナ素子100の長手方向の導体部分が大きくなり、放射に寄与する部分が拡大するので、より良好なアンテナ効率を実現する。
【0098】
また、
図18に示すアンテナ素子100のように、C字形状導体104の形状はz軸方向が長辺となる長方形であってもよい。また、導体放射部117は、長方形に限らず正方形や円形、三角形などの形状であってもよい。
(変形例12)
また、第1の実施形態で説明した様に、スプリットリング共振器は、スプリットリングの大きさを大きくすると電流経路が長くなり、その結果、インダクタンスが大きくなるので、共振周波数は低くなる。或いは、スプリットリング共振器は、スプリット部109で対向する導体間の間隔を狭くしてキャパシタンスを大きくすることでも、共振周波数を低くすることが出来る。
【0099】
このとき、キャパシタンスを大きくする別の方法として、スプリット部109で対向するC字形状導体104の面積を増加させる方法がある。
図19に示すアンテナ素子100は、スプリット部109を介して対向するC字形状導体104の両端部が、対向する向きとほぼ直角に屈曲することで、スプリット部109で対向するC字形状導体104の導体厚み方向の断面積を増加させている。
【0100】
アンテナの共振周波数を低くする技術は、所望の共振周波数においてアンテナを小型化する技術と同義であり、本変形例はアンテナの小型化の技術である。
(変形例13)
更にアンテナの小型化技術として、
図20又は
図21に示されるように、アンテナ素子100はC字形状導体104の存在する層とは異なる層に補助導体パターンを設けることにより、スプリット部109において対向する導体面積を増加させてもよい。
図20及び
図21に示されるアンテナ素子100は、C字形状導体104の存在する層とは異なる層に2つの補助導体パターン118を設けている。そして、2つの補助導体パターン118は、それぞれ、C字形状導体104の屈曲した端部と対向するよう、同様に屈曲した形状となっている。更に、スプリット部109を介して対向するC字形状導体104の各端部の近傍と、各補助導体パターン118とは、導体ビア119により電気的に接続されている。
【0101】
このような構成をとることにより、スプリットリング共振器中のスプリット部109において対向する導体面積は増加する。なお、
図20に示される例では、2つの補助導体パターン118は、導体給電線105と同じ層に配設されている。また、
図21に示されるアンテナ素子100の2つの補助導体パターン118は、C字形状導体104とも導体給電線105とも異なる層に形成されている。
【0102】
また、
図22に示すアンテナ素子100は、スプリット部109を介して向き合うC字形状導体104の両部分のうち一方の部分と電気的に接続し、他方の部分と対向する補助導体パターン118を少なくとも一つ備える。なお、
図22に示すアンテナ素子100の補助導体パターン118は、導体ビア119によりC字形状導体104と電気的に接続している。更に、補助導体パターン118がスプリットを挟む一方の導体部分に対して設けられ、この補助導体パターン118とスプリットを挟む他方の導体部分の一部が、C字形状導体104の層と補助導体パターン118の層との間で対向している。このように、補助導体パターン118を形成することで、スプリット部109において対向する導体の導体厚み方向の断面積は増加する。
【0103】
なお、
図22に示すアンテナ素子100では、補助導体パターン118と、導体給電線105とが同じ層に配置されているが、異なる層に配置されてもよい。また、
図20乃至
図22に示される例では、C字形状導体104の両端部及び補助導体パターン118は、屈曲した形状であるが、屈曲していない形状であってもよいし、別の形状であってもよい。
(変形例14)
更に、アンテナの小型化技術として、アンテナ素子100は
図23に示されるようにC字形状導体104に加え、C字形状導体104と同様の構成のC字形状導体120を設けて構成してもよい。ここで、
図23に示したアンテナ素子100は、C字形状導体104及び導体給電線105とは異なる層に、第2のC字形状導体であるC字形状導体120を有している。また、C字形状導体104の層とC字形状導体120の層は、導体給電線105の層を挟むように構成されていて、C字形状導体104及びC字形状導体120は、複数の導体ビア121によって互いに電気的に接続されている。
【0104】
そして、C字形状導体104及びC字形状導体120は、ひとつのスプリットリング共振器として動作する。ここでスプリット部で対向する導体は、C字形状導体104の導体と、C字形状導体120の両方の導体で対向している。スプリット部のキャパシタンスは、C字形状導体104だけのキャパシタンスより大きくなるため、アンテナ素子100の形状を更に小型化する事が可能となる。
【0105】
尚、本構成によれば、導体給電線105は互いに導通した導体であるC字形状導体104及び120と複数の導体ビア121とで、周囲の多くの部分が囲まれる。そのため、導体給電線105からの不要な電磁波の放射が低減される効果もある。
(変形例15)
また、
図24に示すアンテナ素子100は、C字形状導体104の層とC字形状導体120の層とに挟まれた層に補助導体パターン118が形成されている。そして、補助導体パターン118は、導体ビア119によりC字形状導体104におけるスプリット部109付近の導体部分、及びC字形状導体120におけるスプリット部122付近の導体部分と電気的に接続している。このように補助導体パターン118を追加することによってC字形状導体104のスプリット部109及びC字形状導体120のスプリット部122で対向する導体面積が増加し、スプリット部122のキャパシタンスを増加させることが可能となる。従って、
図24に示すアンテナ素子100は、変形例14で示した
図23のアンテナ素子100より、更に小型化する事が可能となる。
【0106】
なお、
図23、
図24におけるアンテナ素子100は、C字形状導体104だけでなく、誘電体を介して対抗するC字形状導体120にも、C字形状導体部に同サイズの明示していない切り欠きを有する。この切り欠きは、第1の実施形態で示した
図4の切り欠き51a、51bと同様に、2つのアンテナ素子を直交配置する際に、アンテナ素子間でC字形状導体104及びC字形状導体120の導体交差部が接触しないために設けられる。
(変形例16)
次に、第2の実施形態の種々の変形例について以下説明する。なお、以下に説明する種々の変形例を適宜組み合わせてもよい。
【0107】
図26に示すアンテナ20のようにアンテナ素子100aとアンテナ素子100bは、それぞれの中央部同士が重なるように配置することが好ましいが、アンテナ素子100は必ずしも中央部が重ならなくても良い。
図31はアンテナ20の他の配置例を示す平面図である。そして、
図30はアンテナ20のアンテナ素子100aとアンテナ素子100bの正面図である。
【0108】
図30及び
図31で示したアンテナ20におけるアンテナ素子100は、アンテナ素子100の嵌合時の交差箇所が、アンテナ素子100の長手方向における略中央部からずれた位置で重なるように配置されている。このように、アンテナ素子100の略中央部以外の位置で重なるように配置されてもよい。
【0109】
そして、
図30に示すアンテナ20において、アンテナ素子100aのC字形状導体の上部と、アンテナ素子100bのC字形状導体の下部は切り欠きによって途切れている。また、アンテナ素子100aの環内部に導体ビア53a及び導体ランド54aと、アンテナ素子100bの環内部に導体ビア53b及び導体ランド54bを備えている。アンテナ素子100aとアンテナ素子100bはそれぞれの途切れた導体部を、他方のアンテナ素子に設けられた導体ビア及び導体ランドによって接続している。
(変形例17)
次に、第4の実施形態の変形例を示す。
【0110】
第4の実施形態の説明で用いた
図33乃至
図36に示す例では、アンテナ素子100aの切り欠き部52aを導体板123まで延伸した構成とした。この様な構成であっても、第2の実施形態に示したアンテナ素子100と同様、
図37に示されるようにアンテナ素子100は、補助導体パターンと導体ビアを用いた構成とすることが出来る。
(変形例18)
続いて、第4の実施形態の別の変形例を
図38に示す。
図38に示すアンテナ40のように、アンテナ素子100aに接続する導体板123aと、アンテナ素子100bに接続する導体板123bは接触しないように間隔をあけて配置されてもよい。ただし、導体板123aと導体板123bとは、導体板31を介して互いに電気的に導通している。
(変形例19)
更に第4の実施形態の変形例として
図39に示す様に、延伸された導体給電線105と導体板123により構成されるコプレーナ線路を伝送線路としてもよい。
図39に示す例では、C字形状導体104、導体給電線105、および導体板123が、同一の層に形成されている。
【0111】
そして、C字形状導体104は導体板31に近い長辺上の一部分が切り欠かれている。導体板123には、C字形状導体104の切り欠きに続くスリットがあり、導体給電線105はC字形状導体104の切り欠きと導体板123のスリットの間を通って導体板31側へと延伸している。
【0112】
このようにして、導体給電線105と導体板123とでコプレーナ線路が構成される。
(変形例20)
また、第4の実施形態の変形例として
図40に示すアンテナ素子100は、前記変形例14の
図23に示すアンテナ素子100と同様、C字形状導体104に加え、C字形状導体104と同一形状のC字形状導体120によって構成される。このC字形状導体120は、C字形状導体104および導体給電線105とは異なる層に配置されている。また、C字形状導体104に導体板123が接続されるのと同様に、C字形状導体120にはC字形状導体120と同じ層の導体板124が接続されている。そして、導体給電線105の層は、C字形状導体104および導体板123の層と、C字形状導体120および導体板124の層に挟まれる。
【0113】
そして、C字形状導体104およびC字形状導体120は、複数の導体ビア121によって互いに電気的に接続されている。また、導体板123および導体板124も複数の導体ビア125によって互いに電気的に接続されている。
【0114】
このような構成にすると、導体給電線105は導体板123および導体板124、および複数の導体ビア125によって多くの部分が導体で囲まれるため、導体給電線105からの不要な電磁波の放射を低減することが可能となる。
(変形例21)
或いは第4の実施形態の変形例として、
図41に示すように変形例19および変形例20に示した伝送線路に代えて同軸線路を用いてもよい。
図41に示されるアンテナ40の、アンテナ素子100は、第1の実施形態と同様の導体給電線105を有する。また、アンテナ素子100には、同軸ケーブル130が連結されている。同軸ケーブル130は、芯線131と外部導体132とから構成されている。ここで、芯線131は、導体給電線105と接続し、外部導体132は、C字形状導体104の下端に接続されている。また、給電部107は芯線131と外部導体132との間を電気的に励振するように設けられている。
【0115】
また、
図42に示すように、同軸ケーブルが導体板31の裏側(z軸負方向側)に設けられてもよい。
図42および
図43は、同軸ケーブルを導体板31の裏側に設けた場合のアンテナ40の一例を示す図である。
図42、
図43に示した例では、導体板31に貫通口であるクリアランス126が設けられている。また、このクリアランス126の位置に対応する導体板31の裏側(z軸の負の方向側)の位置には、コネクタ127が設けられている。コネクタ127は、図示しない同軸ケーブルを接続するコネクタである。
【0116】
そして、コネクタ127の外部導体129は導体板31と接続されている。そしてコネクタ127の芯線128は、クリアランス126の内部を通って導体板31の表側(z軸の正の方向側)に貫通して、アンテナ素子100の導体給電線105と接続されている。さらに、給電部107は、コネクタ127の芯線128と外部導体129との間を電気的に励振可能である。
【0117】
このような構成にすると、無線通信回路などはアンテナ40に対して導体板31に隠れる位置に配置されるため、無線通信回路などはアンテナ40の放射特性に影響を与えない。なお、
図42および
図43に示した例では、導体板31の裏側の伝送線路を図示しない同軸ケーブルとしているが他の伝送線路でも良い。
(変形例22)
また、第4の実施形態のアンテナ40を複数並べてアレイアンテナを構成する際、複数のアンテナ40の間で誘電体層108を共有するように構成してもよい。
図44、
図45に示されるアレイアンテナ14では、同一平面に配置される複数のアンテナ素子100aと複数の導体板123aが1枚の誘電体層108aに形成されている。また、同様に同一平面に配置される複数のアンテナ素子100bと複数の導体板123bが共通の誘電体層108bに形成されている。
【0118】
このようにアレイアンテナを構成することで、複数のアンテナ素子100、および複数の導体板123の組み立て作業が軽減できる。
【0119】
尚、
図44、および
図45のアレイアンテナ14の例では、隣接するアンテナ素子40の配列と誘電体基板108の平面の方向が一致するように構成しているが、異なる配列構成でも本発明の本質的な効果に影響を与えない。例えば、
図46、
図47はアレイアンテナ14の別の配列構成を示す図である。各アンテナ40が45度傾いて配置されており、同様に同一平面状に並ぶアンテナ素子を、共通の誘電体層108に形成している。
【0120】
図46および
図47に示す構成は、アレイアンテナ14の外形が決められていて、偏波を任意の方向に設定する場合に有効な構成である。
【0121】
上記の実施形態の一部又は全部は、以下の付記のようにも記載されうるが、以下には限られない。
【0122】
(付記1)
空隙及び切り欠きを有する環状の第1の導体と、前記環の内側に一端が接続され、他端は前記環の内側に対して第1の間隙をもって配置される第2の導体を備える平板状の第1のアンテナ素子と、
前記切り欠き内に配置された接触導体と、
前記接触導体で橋絡される第2の間隙を有し空隙が形成された環状の第3の導体と、前記環の内部に一端が接続され、他端は前記環の内側に対して第3の間隙をもって配置される第4の導体とを備える平板状の第2のアンテナ素子とを備え、
前記第1及び第2のアンテナ素子は、各々の外郭線内の領域に含まれる線分で略直交することを特徴とするアンテナ。
【0123】
(付記2)
前記接触導体は、前記第1のアンテナ素子と一体の導体で形成されていることを特徴とする付記1に記載のアンテナ。
【0124】
(付記3)
前記第1の導体は誘電体基板の片方の面に貼られた導体箔で形成され、前記第2の導体は前記誘電体基板のもう片方の面に貼られた導体箔で形成され、
前記第2の導体の一端は前記第1の導体とスルーホールで導通し、
前記接触導体は、前記誘電体基板の両面の導体ランドがスルーホールで接続されたものであり、
前記第1のアンテナ素子と前記第2のアンテナ素子の誘電体基板には切れ込みを設けて前記第1のアンテナ素子と前記第2のアンテナ素子それぞれの切れ込みが組み合わさって誘電体基板同士が嵌合し、
前記切り欠きは前記誘電体基板の切れ込みの一部であることを特徴とする付記1に記載のアンテナ。
【0125】
(付記4)
前記第1のアンテナ素子は、誘電体基板に貼られた導体箔によって形成され、
前記第1のアンテナ素子と前記第2のアンテナ素子の誘電体基板には切れ込みを設けて前記第1のアンテナ素子と前記第2のアンテナ素子のそれぞれの切れ込みが組み合わさって誘電体基板同士が嵌合し、
前記切り欠きは前記誘電体基板の切れ込みの一部であることを特徴とする、付記2に記載のアンテナ。
【0126】
(付記5)
前記第1の導体は長手と短手をもつ形状であり、前記線分は前記短手に略平行であることを特徴とする付記1乃至付記4の何れかに記載のアンテナ。
【0127】
(付記6)
前記線分は前記長手の略中央に位置することを特徴とする付記5に記載のアンテナ。
【0128】
(付記7)
前記空隙を介して向き合う前記第1のアンテナ素子の前記第1の導体の両部分が、対向する方向と略直交する方向に屈曲した形状であることを特徴とする、付記1乃至付記6の何れかに記載のアンテナ。
【0129】
(付記8)
前記空隙を介して対向する前記第1のアンテナ素子の前記第1の導体の対向部分に接続され、前記対向部分と共に対向する導体を更に備えることを特徴とする、付記1乃至付記7の何れかに記載のアンテナ。
【0130】
(付記9)
前記第1のアンテナ素子は、前記第1の導体と略合同形状で、平板状の面が略平行に配置される第5の導体 を更に備え、前記第1の導体と前記第5の導体とは複数の接続導体で接続されることを特徴とする付記1乃至付記8の何れかに記載のアンテナ。
【0131】
(付記10)
導体からなる反射板と、
前記線分は前記反射板に対してほぼ垂直であり、前記反射板から間隔をあけて配置される付記1乃至付記9の何れかに記載のアンテナとを含むことを特徴とする反射板付きアンテナ。
【0132】
(付記11)
前記第1のアンテナ素子と前記第2のアンテナ素子は、一端が前記第1の間隙の近傍を含む前記第1の導体の外側に接続され、他端が前記反射板と接続される導体板を、それぞれ更に備えることを特徴とする付記10に記載の反射板付きアンテナ。
【0133】
(付記12)
導体からなる反射板と、
前記線分は前記反射板に対してほぼ垂直であり、前記反射板から間隔をあけて配置される付記10に記載のアンテナとを含む反射板付きアンテナにおいて、
前記第1のアンテナ素子と前記第2のアンテナ素子は、一端が前記第1の間隙の近傍を含む前記第1の導体の外側に接続され、他端が前記反射板と接続される導体板と、
一端が前記第1の間隙の近傍を含む前記第3の導体の外側に接続され、他端が前記反射板と接続される導体板とをそれぞれ更に備えることを特徴とする反射板付きアンテナ。
【0134】
(付記13)
前記第1のアンテナ素子と前記第2のアンテナ素子は、外導体の一端が前記第1の間隙の近傍を含む前記第1の導体の外側に接続され、前記外導体の他端が前記反射板に貫通する穴の周囲と接続され、芯線の一端が前記第2の導体の第1の導体に接続されていない側の端部に接続され、前記芯線の他端は前記穴の内部を貫通することを特徴とする付記10に記載の反射板付きアンテナ。
【0135】
(付記14)
付記1乃至付記9の何れかに記載のアンテナ、または付記10乃至付記13の何れかに記載の反射板付きアンテナを複数備えることを特徴とするアレイアンテナ。
【0136】
(付記15)
付記10乃至付記13の何れかに記載の反射板付きアンテナを複数備え、
前記反射板は前記複数のアンテナで共通の1枚の反射板であることを特徴とするアレイアンテナ。
【0137】
(付記17)
付記1乃至付記9の何れかに記載のアンテナ、付記10乃至付記13の何れかに記載の反射板付きアンテナ、または付記14乃至付記15の何れかに記載のアレイアンテナを含むことを特徴とする無線通信装置。