(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、複写や撮影を制限することが望まれる処理対象のなかには、運転免許証やクレジットカードのような物品が含まれ、これらの物品においては、個人情報などのように拡散が好ましくない情報がひな型に組み込まれている。このような処理対象に対し、例えば、撮影端末が所定の条件を満たすときに撮影を禁止するとしても、こうした制限は撮影端末のみに依存した制限であるから、ひな型に組み込まれた情報に対しそれの撮影を制限するには限界がある。また、処理対象にデジタルコードを記載することは、ひな型自体の変更を要するため、こうした技術の適用は困難である。結局のところ、特定の形式を有する処理対象に対しそれの複写や撮影を制限することに際しては、まず、特定の形式を有する処理対象をそれの画像から識別することのできる技術が求められている。
本発明は、特定の形式を有する処理対象をそれの画像から識別することのできる画像処理装置、および、画像処理プログラムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記課題を解決するための画像処理装置は、個体ごとの個別情報がひな型に組み込まれた構成を有する対象が保護対象であり、前記保護対象に該当する基準対象の基準データを記憶する記憶部と、処理対象である個体の画像データを取得し、前記処理対象が前記保護対象に該当する可能性を前記基準データと前記画像データとを用いて判定する判定部と、を備える。前記基準対象の像が占める領域が仮想的に区分された各領域が判定領域であって、前記判定領域は、前記保護対象に該当する複数の個体にて共通する像を含む共通領域と、前記保護対象に該当する複数の個体にて共通しない像を含む非共通領域とを含み、前記基準データは、前記判定領域に含まれる像の特徴を示すデータであって、少なくとも前記共通領域に含まれる像の特徴を示すデータを含み、前記判定部は、処理対象である個体の画像データを取得して、前記画像データが示す像に各判定領域を当てはめるように前記画像データを取り扱い、前記基準対象の像と前記処理対象の像との前記判定領域ごとの一致度を少なくとも前記共通領域が含まれる範囲に対し算出することに基づいて、前記判定を行う。
【0006】
上記課題を解決するための画像処理プログラムは、画像処理装置を構成する制御部であって前記画像処理装置の処理を制御する前記制御部を判定部として機能させる画像処理プログラムであって、個体ごとの個別情報がひな型に組み込まれた構成を有する対象が保護対象であり、前記画像処理装置を構成する記憶部が、前記保護対象に該当する基準対象の基準データを記憶し、前記基準対象の像が占める領域が仮想的に区分された各領域が判定領域であって、前記判定領域は、前記保護対象に該当する複数の個体にて共通する像を含む共通領域と、前記保護対象に該当する複数の個体にて共通しない像を含む非共通領域とを含み、前記基準データが、前記判定領域に含まれる像の特徴を示すデータであって、少なくとも前記共通領域に含まれる像の特徴を示すデータを含み、前記判定部は、前記画像データが示す像に各判定領域を当てはめるように前記画像データを取り扱い、前記基準対象の像と前記処理対象の像との前記判定領域ごとの一致度を少なくとも前記共通領域が含まれる範囲に対し算出することに基づいて、前記処理対象が前記保護対象に該当する可能性を判定する。
【0007】
上記構成によれば、特定の形式を有する対象である保護対象の像が、複数の個体にて共通する判定領域と、複数の個体にて共通しない判定領域とに分けて捉えられる。そして、処理対象と基準対象との間において、少なくとも共通領域を含む範囲での像の一致度が算出され、この算出に基づいて、保護対象に該当する可能性が処理対象に対して判定される。したがって、特定の形式を有する対象の識別が可能である。
上記画像処理装置において、前記共通領域には、前記ひな型部分の像が含まれ、前記非共通領域には、前記個別情報部分の像が含まれてもよい。
上記構成によれば、複数の個体にて共通する共通領域と、複数の個体にて共通しない非共通領域とが的確に実現される。
【0008】
上記画像処理装置において、前記基準データは、前記非共通領域に含まれる像の特徴を示すデータを含み、前記判定部は、前記基準対象の像のなかで前記非共通領域に含まれる像と、前記処理対象の像のなかで前記非共通領域に含まれる像との一致度を加味して、前記判定を行ってもよい。
上記構成によれば、処理対象が保護対象と同じ形式を有しているか否かがより正確に判定され易くなるため、判定の精度が高められる。
【0009】
上記画像処理装置は、前記処理対象が前記保護対象に該当すると判定されたとき、前記処理対象の画像の利用を制限する処理を行う判定結果処理部をさらに備える。
【0010】
上記構成によれば、保護対象に該当すると判定された処理対象の画像の利用が制限されるため、保護対象に該当する対象が含む情報の拡散を抑えることができる。
【0011】
上記画像処理装置において、前記判定部は、前記基準対象の像のなかで前記共通領域に含まれる像と、前記処理対象の像のなかで前記共通領域に含まれる像との一致度が所定の閾値以上であるとき、前記処理対象が前記保護対象に該当すると判定し、かつ、前記基準対象の像のなかで前記共通領域に含まれる像と、前記処理対象の像のなかで前記共通領域に含まれる像との一致度が前記所定の閾値よりも低い所定の範囲内であるとき、前記処理対象が前記保護対象に類似すると判定する。そして、前記判定結果処理部は、前記処理対象が前記保護対象に類似すると判定されたとき、前記処理対象の画像の利用について利用者に注意を喚起する処理を行ってもよい。
【0012】
上記構成によれば、処理対象が保護対象に該当する可能性が排除できない場合に、利用者に対する注意の喚起が行われるため、処理対象が保護対象に該当するにもかかわらず、例えば処理対象の汚れや掠れなどに起因して、共通領域における像の一致度が低下している場合であっても、処理対象の画像データが無制限に利用されることが抑えられる。
【0013】
上記画像処理装置において、前記判定結果処理部は、前記処理対象の画像の利用を制限する処理として、前記処理対象の複写物の形成を制限する処理を行ってもよい。
【0014】
上記画像処理装置において、前記判定結果処理部は、前記処理対象の画像の利用を制限する処理として、前記処理対象の像を読み取ることによって生成された画像の利用を制限する処理を行ってもよい。
【0015】
上記画像処理装置において、前記判定結果処理部は、前記処理対象の画像の利用を制限する処理として、前記処理対象の撮影から得られる画像の利用を制限する処理を行ってもよい。
上記各構成によれば、特定の形式を有する対象が含む情報の拡散を的確に抑えることができる。
上記画像処理装置において、複数の前記判定領域には、互いに異なる形状の判定領域が含まれてもよい。
【0016】
上記構成によれば、判定領域の配置や各判定領域に含まれる像の割り振りの設定についての自由度が高められる。したがって、例えば、ひな型部分と個別情報部分との境界に共通領域と非共通領域との境界を設定することも容易である。
上記画像処理装置において、前記保護対象は、1つの物品における1つの面であってもよい。
【0017】
上記構成によれば、利用者が1つの物品の保護対象とは異なる面の画像を利用しようとする場合に、不注意によって保護対象である面の画像が利用されることが抑えられる。したがって、保護対象の画像の意図しない利用が生じやすい状況において、こうした利用が抑えられるため、対象が含む情報の拡散を的確に抑えることができる。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、特定の形式を有する処理対象をそれの画像から識別することができる。
【発明を実施するための形態】
【0020】
(第1実施形態)
図1〜
図3を参照して、画像処理装置、および、画像処理プログラムの第1実施形態について説明する。
【0021】
[画像処理装置の構成]
図1を参照して、画像処理装置の構成について説明する。
画像処理装置10は、処理対象の画像データを生成して、処理対象の像を利用した処理を行う装置である。具体的には、画像処理装置10は、処理対象の像が複写された複写物を形成する機能、処理対象の像に対する読み取りによって生成された画像データを外部装置に送信するスキャン機能、および、処理対象を撮影する機能の少なくとも1つを有する装置である。画像処理装置10は、例えば、複写機、複合機、スキャナー、デジタルカメラ、スマートフォンなどに具体化される。
【0022】
画像処理装置10は、主として、撮像部11と、記憶部12と、制御部13とを備えている。さらに、画像処理装置10が処理対象の複写物を形成する機能を有する場合、画像処理装置10は、インクやトナーを用いて紙などの媒体に印刷を行う印刷部を備える。また、画像処理装置10がスキャン機能を有する場合、画像処理装置10は、ネットワークを通じた画像処理装置10と外部装置との接続処理、および、これらの装置間でのデータの送受信を行う通信部を備える。なお、画像処理装置10が処理対象を撮影する機能を有する場合にも、画像処理装置10は、通信部を備え、撮影によって生成された画像データを外部装置に送信する機能を有していてもよい。画像処理装置10は、上述の構成の他に、情報を表示する表示部や利用者の操作を受け付ける操作部を備えている。
【0023】
撮像部11は、処理対象を撮像することによって、処理対象の画像データを生成する。処理対象の撮像には、画像処理装置10が有する載置面に載置された処理対象に対し、その処理対象の像に対する読み取りを行うことが含まれる。こうした撮像を行う撮像部11は、例えばイメージスキャナに具体化される。また、処理対象の撮像には、画像処理装置10から離れた処理対象の像に対する読み取りである撮影が含まれ、こうした撮像を行う撮像部11は、例えばカメラに具体化される。制御部13は、撮像部11が生成した画像データを取得する。
【0024】
記憶部12は、不揮発性メモリから構成され、制御部13が実行する処理に必要なプログラムやデータを記憶している。記憶部12は、データの一例として基準データ12aを記憶している。記憶部12は、プログラムの一例として画像処理プログラムを記憶している。
【0025】
基準データ12aは、制御部13が保護対象の識別に用いるデータであって、基準対象のデザインを示すデータである。
保護対象は、複写や撮影などを制限することが望まれる対象、すなわち、自身が含む情報の拡散を抑えることが望まれる対象である。保護対象は、所定のひな型に従って構成される有体物であって、保護対象に該当する個体ごとの情報である個別情報がひな型に組み込まれた被写対象である。個別情報は、個人情報などのように拡散が好ましくない情報を含む。保護対象は、例えば、運転免許証、クレジットカード、キャッシュカード、個人番号カード、健康保険証、種々の会員証などであって、個別情報が組み込まれた被写対象に具体化される。これらの物品が有する複数の面の各々に情報が記載されている場合、物品が有する1つの面が保護対象であってもよい。
【0026】
基準対象は、保護対象を識別するための基準となる対象であって、保護対象に該当し、かつ、保護対象に該当する個体間において共通する構成と、保護対象に該当する個体間において共通しない構成とを含む。基準対象のデザインは、基準対象の像である。基準対象の像が占める領域は、複数の判定領域に区分される。基準データ12aは、基準対象の像をパターン認識に利用するためのデータである。詳細には、基準データ12aは、基準対象の画像データが画像処理によって数値化されたデータであって、各判定領域に対応する画像データが数値化されたデータである。
【0027】
複数の判定領域は、共通領域と非共通領域とを含む。共通領域は、保護対象に該当する個体間において共通するべき像を含む領域である。非共通領域は、保護対象に対当する個体間において共通しない像を含む領域である。
【0028】
制御部13は、CPUや、RAMなどの揮発性メモリを含む。制御部13は、記憶部12に記憶されたプログラムやデータに基づいて、撮像部11における撮像の制御、記憶部12における情報の読み出しや書き込み、各種の演算処理など、画像処理装置10が備える各機能部の制御を行う。
【0029】
制御部13は、判定部13aと判定結果処理部13bとを備えている。
判定部13aは、撮像部11から取得した処理対象の画像データと、記憶部12に記憶されている基準データ12aとを用い、処理対象が保護対象に該当する可能性を判定する。具体的には、判定部13aは、処理対象の画像データが示す像に各判定領域を当てはめるように当該画像データを取り扱い、基準対象の像と処理対象の像との判定領域ごとの一致度を算出し、その算出結果に基づいて上記判定を行う。一致度の算出には、公知のパターン認識技術が用いられればよく、基準データ12aはこうしたパターン認識に利用することが可能に構成されていればよい。
【0030】
本実施形態では、判定部13aは、処理対象と保護対象との間における共通領域の像の一致度に基づいて、処理対象が保護対象に該当する可能性を三段階に分けて判定する。詳細には、判定部13aは、共通領域において、基準対象の像と処理対象の像との一致度が第1閾値以上であるとき、処理対象が保護対象に該当すると判定する。また、判定部13aは、共通領域において、基準対象の像と処理対象の像との一致度が第1閾値よりも低い第2閾値以下であるとき、処理対象が保護対象に該当しないと判定する。また、判定部13aは、共通領域において、基準対象の像と処理対象の像との一致度が第2閾値を超え第1閾値未満であるとき、処理対象が保護対象に該当する可能性が排除できない、すなわち、処理対象が保護対象に類似すると判定する。
【0031】
判定結果処理部13bは、判定部13aによる判定結果に応じた処理を行う。詳細には、判定結果処理部13bは、処理対象が保護対象に該当すると判定されたとき、撮像部11が生成した処理対象の画像データの利用を制限する処理を行う。
【0032】
具体的には、判定結果処理部13bは、撮像部11によって処理対象が撮像された目的が処理対象の複写であるとき、すなわち、処理対象に対する複写処理の実行を指示する信号が制御部13に入力されているとき、処理対象の画像データを用いた複写処理を停止する。これによって、判定結果処理部13bは、処理対象に対しその複写物の形成を制限する。なお、制御部13が実行する複写処理には、撮像部11に対する指示であって処理対象の撮像を実行させる指示の出力から、上記印刷部に対する指示であって複写物の形成を実行させる指示の出力までが含まれる。
【0033】
判定結果処理部13bは、撮像部11によって処理対象が撮像された目的が処理対象のスキャンであるとき、すなわち、処理対象に対するスキャン処理の実行を指示する信号が制御部13に入力されているとき、処理対象の画像データを外部装置へ送信することを禁止する。これによって、判定結果処理部13bは、処理対象のスキャン、すなわち、処理対象の像に対する読み取りによって生成された画像の利用を制限する。なお、制御部13が実行するスキャン処理には、撮像部11に対する指示であって処理対象の撮像を実行させる指示から、上記通信部に対する指示であって画像データの外部装置への送信を実行させる指示までが含まれる。
【0034】
また、判定結果処理部13bは、撮像部11によって処理対象が撮像された目的が処理対象の撮影であるとき、すなわち、処理対象に対する撮影処理の実行を指示する信号が制御部13に入力されているとき、処理対象を撮影した静止画を示す撮影データとして処理対象の画像データを利用することを禁止する。例えば、判定結果処理部13bは、処理対象の画像データを記憶部12に保存することや、処理対象の画像データを外部装置に送信することを禁止する。これによって、判定結果処理部13bは、処理対象の撮影から得られた画像の利用を制限する。なお、制御部13が実行する撮影処理には、撮像部11に対する指示であって処理対象の撮像を実行させる指示から、記憶部12や通信部に対する指示であって画像データの保存や送信を実行させる指示など、処理対象の画像データを用いた処理を完結させる指示までが含まれる。
【0035】
また、判定結果処理部13bは、処理対象が保護対象に該当しないと判定されたとき、処理対象の画像データの利用を制限する上述の処理を行わない。すなわち、処理対象の複写物の形成や、スキャン機能による画像データの外部装置への送信や、画像データの撮影データとしての利用など、処理対象の画像データを用いた各種の処理が許容される。
【0036】
また、判定結果処理部13bは、処理対象が保護対象に類似すると判定されたとき、処理対象の画像データの利用について利用者に注意を喚起する処理を行う。例えば、判定結果処理部13bは、画像処理装置10が備える表示部に、処理対象が保護対象に該当する物品である可能性を指摘する警告や、処理対象が保護対象に該当する物品であるか否かの確認を利用者に促す警告を表示する。こうした警告に際して、画像処理装置10は、利用者に所定の操作を要求し、その要求された操作が実行されることによって、処理対象の画像データの利用について利用者の承諾を得てもよい。
【0037】
なお、利用者に注意を喚起する処理は、上述の例に限らず、利用者への注意の喚起が可能であれば、例えば音声で警告を発する処理であってもよい。そして、判定結果処理部13bは、こうした注意喚起処理の後に、利用者によって複写やスキャンや撮影の停止を指示する操作が画像処理装置10に対して行われた場合を除き、処理対象の画像データの利用を許容する。
【0038】
判定部13aおよび判定結果処理部13bは、複数のCPUや、RAMなどからなるメモリなどの各種のハードウェアと、これらを機能させるソフトウェアとによって各別に具体化されてもよく、あるいは、共通する1つのハードウェアに複数の機能を与えるソフトウェアによって具体化されてもよい。こうしたソフトウェアは、画像処理プログラムとして記憶部12に記憶される。画像処理プログラムを含むソフトウェアは、予め画像処理装置10にインストールされていてもよいし、ユーザーの指示に基づいて、ネットワークを通じたダウンロードを経て画像処理装置10にインストールされてもよい。
【0039】
[基準データの構成]
基準データ12aは、基準対象に対して設定される判定領域ごとに、基準対象の像の特徴を示すデータである。換言すれば、基準データ12aは、各判定領域に含まれる線などの像の要素について、それの形状や色などの特徴を数値化したデータである。なお、基準対象に組み込まれる個別情報は、架空の情報、あるいは、個別情報が含まれていないことが制御部13に認識される空白などであればよい。すなわち、基準対象における個別情報部分の像は、架空の情報を示す像か、空白の像である。
【0040】
上記判定領域について
図2を参照して説明する。
図2に示される対象20は基準対象の一例であり、
図2においては、非共通領域Dbに該当する領域をドットを付して示している。
【0041】
図2が示すように、基準対象の像や処理対象の像は、互いに同じ大きさを有する画像データとして判定部13aでは取り扱われる。各判定領域Dは、基準対象の像に対し仮想的に定められる領域であり、また、処理対象の像に対し仮想的に定められる領域でもある。各判定領域Dに含まれる像は、基準対象の像の一部、あるいは、処理対象の像の一部である。
【0042】
画像処理装置10による画像処理に際しては、処理対象の画像データが所定の処理領域に記憶される。各判定領域Dは、画像データが占める処理領域の一部として判定部13aでは取り扱われる。記憶部12は、画像データが占める処理領域を各判定領域Dに分けるためのデータを予め記憶している。判定部13aは、記憶部12に記憶されたこのデータを用い、画像データが占める処理領域を判定領域Dごとに取り扱う。
【0043】
各判定領域Dは、例えば、基準対象の像に対し仮想的に定められる矩形状の領域である。各判定領域Dは、互いに同一の形状を有し、隙間なく、かつ、重ならないようにマトリクス状に定められている。各判定領域Dの大きさは、判定領域Dに含まれる像がパターン認識用に数値化された際に、1つの判定領域Dずつ、処理対象と保護対象との間で的確なパターン認識が可能な程度の大きさであればよい。
【0044】
判定部13aによる判定の精度が高められる観点から、各判定領域Dの大きさは、ひな型に含まれる文字の1文字よりも大きいことが好ましく、2文字以上を含む大きさであることがさらに好ましい。また、判定部13aによる判定の精度が高められる観点から、ひな型部分と個別情報部分との境界が、互いに隣り合う判定領域Dの境界であるように、各判定領域Dの位置が定められることが好ましい。ひな型部分とは、基準対象の像なかでひな型自体が示す文字や図柄の像であり、個別情報部分とは、基準対象の像のなかでひな型に組み込まれた個人情報を示す部分である。すなわち、ひな型部分と個別情報部分とは、互いに異なる判定領域Dに含まれることが好ましい。
【0045】
複数の判定領域Dは、共通領域Daである判定領域Dと、非共通領域Dbである判定領域Dとから構成される。共通領域Daは、判定領域Dに含まれる像が、基準対象におけるひな型部分に属する要素である判定領域Dである。非共通領域Dbは、判定領域Dに含まれる像が、基準対象における個別情報部分に属する要素である判定領域Dである。なお、判定領域Dが、基準対象におけるひな型部分の像と個別情報部分の像との双方を含む場合には、その判定領域Dは非共通領域Dbである。すなわち、共通領域Daは、ひな型部分の像のみを含む。
【0046】
上記構成において、共通領域Daに含まれる像は、保護対象に該当する複数の個体にて共通であり、非共通領域Dbに含まれる像は、保護対象に該当する複数の個体にて共通しない。換言すれば、処理対象の画像データが示す像と基準データ12aが示す基準対象の像との間において、各判定領域Dに含まれる像の一致度が検証され、処理対象である個体が保護対象であるとき、共通領域Daとは、そこに含まれる像を一致させるための領域であり、非共通領域Dbとは、そこに含まれる像を一致させないための領域である。
【0047】
基準データ12aは、各判定領域Dに含まれる像の特徴を示すデータである。基準データ12aは、1つの基準対象に対して設定されたすべての判定領域Dについて、特徴を示すデータを含む。基準データ12aは、基準対象に対する判定領域Dの位置と、特徴を示すデータとを対応付けている。また、基準データ12aは、共通領域Daと非共通領域Dbとのいずれかと、特徴を示すデータとを対応付けている。
【0048】
基準データ12aは、例えば、画像処理装置10が処理対象の像を取得する処理よりも前に、画像処理装置10の記憶部12に記憶されている。記憶部12は、互いに異なる複数の保護対象について、保護対象に対応する基準データ12aを1つの保護対象ずつ記憶していてもよい。
【0049】
[画像処理装置の処理手順]
図3を参照して、画像処理装置10の処理手順について説明する。
図3に示すフローは、処理対象の撮像を実行するための指示が、制御部13から撮像部11へ入力される度に行われる処理の流れを示す。こうした指示は、例えば、画像処理装置10の利用者が画像処理装置10に対して所定の操作を行うことによって、処理対象の複写処理、スキャン処理、もしくは、撮影処理の実行を指示する信号が制御部13に入力されることに基づいて行われる。
図3が示すように、ステップS10の処理として、撮像部11は、処理対象を撮像し、処理対象の画像データを生成する。
【0050】
画像データが生成されると、続いて、ステップS11の処理として、判定部13aは、撮像部11が生成した処理対象の画像データと、記憶部12が記憶している基準対象の基準データ12aとを用い、処理対象と基準対象との間において、共通領域Daにおける像の一致度を算出する。詳細には、判定部13aは、処理対象の画像データを判定領域Dごとに取り扱い、処理対象の像のなかで共通領域Daに含まれる像の特徴を数値化し、その数値化されたデータと基準データ12aとを比較する。そして、判定部13aは、1つの共通領域Daずつ、処理対象の像と基準対象の像との一致度を算出する。一致度は、例えば、百分率として算出される。さらに、判定部13aは、各共通領域Daについて算出した一致度を平均して、処理対象においてすべての共通領域Daに含まれる像と、基準対象においてすべての共通領域Daに含まれる像との一致度を算出する。
【0051】
続いて、ステップS12およびステップS13の処理として、判定部13aは、すべての共通領域Daに対する一致度が、第1閾値以上、第2閾値を超え第1閾値未満、および、第2閾値以下のいずれの範囲に含まれるかを判断することによって、処理対象が保護対象に該当する可能性を判定する。第1閾値と第2閾値とは、保護対象における情報の保護の必要性やパターン認識の精度に応じて適宜設定されればよいが、例えば、第1閾値は90%とされ、第2閾値は50%とされる。
【0052】
まず、ステップS12の処理として、判定部13aは、すべての共通領域Daに対する一致度が、第1閾値以上であるか否かを判断する。すべての共通領域に対する一致度が第1閾値以上であるとき、処理対象は保護対象に該当すると判定される。処理対象が保護対象に該当すると判定されたとき(ステップS12にて肯定判定)、ステップS14の処理に進む。
【0053】
ステップS14の処理として、判定結果処理部13bは、画像データを用いた処理対象の複写処理を停止、あるいは、スキャン機能による画像データの外部装置への送信を禁止、あるいは、画像データの撮影データとしての利用を禁止することによって、処理対象の画像データの利用を制限する。
【0054】
ステップS12の処理にて、すべての共通領域Daに対する一致度が、第1閾値以上でないと判断されたとき(ステップS12にて否定判定)、ステップS13の処理に進み、判定部13aは、すべての共通領域Daに対する一致度が、第2閾値を超え第1閾値未満であるか否かを判断する。すべての共通領域Daに対する一致度が第2閾値を超え第1閾値未満であるとき、処理対象は保護対象に類似すると判定される。処理対象が保護対象に類似すると判定されたとき(ステップS13にて肯定判定)、ステップS15の処理に進む。
【0055】
ステップS15の処理として、判定結果処理部13bは、処理対象の画像データの利用について利用者に注意を喚起する処理を行った後、処理対象の画像データの利用を許容する。なお、利用者によって複写やスキャンや撮影の停止を指示する操作が画像処理装置10に対して行われた場合には、複写やスキャンや撮影が停止される。
【0056】
ステップS13の処理にて、すべての共通領域Daに対する一致度が、第2閾値を超え第1閾値未満でないと判断されたとき(ステップS13にて否定判定)、すなわち、共通領域全体の一致度が第2閾値以下であると判断されたとき、処理対象は保護対象に該当しないと判定され、ステップS16の処理に進む。
【0057】
ステップS16の処理として、判定結果処理部13bは、処理対象の画像データの利用を許容する。すなわち、判定結果処理部13bは、処理対象の複写処理の停止や、スキャン機能による画像データの外部装置への送信の禁止や、画像データの撮影データとしての利用の禁止を行わず、制御部13は、処理対象の複写処理もしくはスキャン処理もしくは撮影処理を続行する。
【0058】
なお、上記フローにおいては、すべての共通領域Daに対する一致度が、第1閾値以上であるか否かが判断された後に、第2閾値を超え第1閾値未満であるか否かが判断されたが、こうした判断の順番は特に限定されない。要は、すべての共通領域Daに対する一致度が、第1閾値以上、第2閾値を超え第1閾値未満、および、第2閾値以下のいずれの範囲に含まれるかが判断され、判断の結果に応じた処理が判定結果処理部13bによって行われればよい。
【0059】
[作用]
第1実施形態の画像処理装置10の作用について説明する。第1実施形態の画像処理装置10では、基準対象の基準データ12aと、処理対象の画像データとを用いて、基準対象の像と処理対象の像との比較が行われ、処理対象が保護対象に該当すると判定された場合に、処理対象の画像データに対しその利用が制限される。特に、基準対象が共通領域Daと非共通領域Dbとに分けられて、基準対象の像と処理対象の像との一致度が共通領域Daに対して算出され、この一致度に基づいて、処理対象が保護対象に該当する可能性が判定される。
【0060】
所定のひな型に個別情報が組み込まれた構成を有する物品においては、各個体が互いに異なる像を有する。そのため、これらの個体の像を予めすべて画像処理装置に登録して、登録された像と一致する処理対象の処理を禁止することは、現実的には困難である。
【0061】
これに対し、本実施形態では、処理対象の像が、物品の各個体間にて共通する像を含む共通領域Daと、物品の各個体間にて共通しない像を含む非共通領域Dbとに分けて捉えられ、共通領域Daに対して、基準対象の像と処理対象の像とが比較される。したがって、特定の形式を有する処理対象をすべての処理対象のなかから保護対象として的確に判別して、この処理対象の画像データの利用を制限することができる。その結果、特定の形式を有する処理対象が含む情報の拡散を抑えることができる。
【0062】
例えば、身分の確認などを目的として、保護対象に該当する処理対象がそれの所有者から事業者などの第三者に受け渡されるとする。この際、複写物の形成に画像処理装置10が用いられれば、保護対象に該当する処理対象の複写物が第三者によって不正に形成されることや、保護対象に該当する処理対象の複写物が誤って形成されることが抑えられる。また例えば、各種の申し込みなどに際して、撮影によって生成された画像データが撮影装置から外部装置に送信される場合、撮影装置として画像処理装置10が用いられるとする。この際においても、保護対象に該当する処理対象が誤って撮影されること、あるいは、保護対象に該当する処理対象の画像データが誤って送信されることが抑えられる。
【0063】
特に、保護対象が1つの物品の有する1つの面である場合に、例えば、当該物品の他の面を複写などすることを目的として、利用者が誤って保護対象である面を複写などすることがある。こうした誤りにおいても、画像処理装置10によれば、保護対象に該当する処理対象の画像データが誤って利用されることが抑えられる。したがって、人為的なミスによる情報の拡散が的確に抑えられる。
【0064】
また、基準対象の像と処理対象の像との一致度を判定領域Dごとに算出するため、基準対象の全体像と処理対象の全体像を比較する場合と比べて、判定の精度が高められる。例えば、処理対象の一部が汚れていたり、処理対象における一部の記載が薄くなっていたりする場合のように、処理対象の一部が本来の状態とは異なる場合であっても、実際には保護対象に該当する処理対象を、保護対象に該当しないと誤判定することが抑えられる。
【0065】
以上説明したように、第1実施形態の画像処理装置および画像処理プログラムによれば、以下に列挙する効果を得ることができる。
(1)特定の形式を有する保護対象の像が、複数の個体にて共通する共通領域Daと、複数の個体にて共通しない非共通領域Dbとに分けて捉えられる。そして、処理対象と基準対象との間において、共通領域Daでの像の一致度が算出され、この算出に基づいて、保護対象に該当する可能性が処理対象に対して判定される。したがって、特定の形式を有する処理対象の識別が可能である。
【0066】
さらに、処理対象が保護対象に該当すると判定されたとき、処理対象の画像データの利用が制限される。したがって、特定の形式を有する処理対象が含む情報の拡散を抑えることができる。
【0067】
(2)共通領域Daには、基準対象におけるひな型部分の像が含まれ、非共通領域Dbには、基準対象における個別情報部分の像が含まれる。したがって、保護対象に該当する複数の個体にて共通する像を含む共通領域Daと、保護対象に該当する複数の個体にて共通しない像を含む非共通領域Dbとが、画像処理装置10において的確に区別される。
【0068】
(3)判定部13aは、共通領域Daにおける像の一致度が第1閾値以上であるとき、処理対象が保護対象に該当すると判定し、かつ、共通領域Daにおける像の一致度が第1閾値よりも低い所定の範囲内であるとき、処理対象が保護対象に類似すると判定する。そして、判定結果処理部13bは、処理対象が保護対象に類似すると判定されたとき、処理対象の画像の利用について利用者に注意を喚起する処理を行う。
【0069】
このように、判定部13aは、処理対象が保護対象に該当するか否かの二段階よりも多い段階に分けて判定を行い、処理対象が保護対象に該当する可能性が排除できない場合には、利用者に対する注意の喚起が行われる。こうした構成によれば、処理対象が保護対象に該当するにもかかわらず、例えば処理対象の汚れや掠れなどに起因して、共通領域における像の一致度が低下している場合であっても、処理対象の画像データが無制限に利用されることが抑えられる。
【0070】
(4)判定結果処理部13bは、処理対象が保護対象に該当すると判定されたとき、処理対象の複写物の形成を制限する処理、処理対象の像の読み取りによって生成された画像の利用を制限する処理、および、処理対象の撮影から得られる画像の利用を制限する処理のいずれかを行う。こうした構成によれば、保護対象が含む情報の拡散を的確に抑えることができる。
【0071】
(5)保護対象が物品における1つの面であるとき、保護対象とは異なる面の複写などを行う利用者が、不注意によって保護対象である面の複写などを行うことが抑えられる。したがって、保護対象の画像データの意図しない利用が生じやすい状況において、こうした利用が抑えられるため、保護対象が含む情報の拡散を的確に抑えることができる。
【0072】
(第2実施形態)
図4を参照して、画像処理装置、および、画像処理プログラムの第2実施形態について説明する。第2実施形態は、第1実施形態と比較して、判定部13aによる判定の態様が異なる。以下では、第1実施形態との相違点を中心に説明し、第1実施形態と同様の構成については同じ符号を付してその説明を省略する。
【0073】
[画像処理装置の構成]
第2実施形態では、判定部13aは、基準対象の像と処理対象の像との一致度を共通領域Daと非共通領域Dbとに対し算出し、非共通領域Dbにおける像の一致度を加味した判定を行う。すなわち、判定部13aは、基準対象の像と処理対象の像との一致度の算出をすべての判定領域Dに適用する。
【0074】
判定部13aは、共通領域Daにおいて、基準対象の像と処理対象の像との一致度が第1閾値以上であり、かつ、非共通領域Dbにおいて、基準対象の像と処理対象の像との一致度が所定の範囲である制限範囲内であるとき、処理対象が保護対象に該当すると判定する。
【0075】
また、判定部13aは、共通領域Daにおいて、基準対象の像と処理対象の像との一致度が第2閾値以下であるとき、処理対象が保護対象に該当しないと判定する。
【0076】
また、判定部13aは、共通領域Daおよび非共通領域Dbにおける像の一致度が、上記の処理対象が保護対象に該当すると判定される条件、および、処理対象が保護対象に該当しないと判定される条件のいずれも満たさないとき、処理対象が保護対象に類似すると判定する。
【0077】
制限範囲は、例えば、10%以下のように、所定の閾値以下を示す。これは、非共通領域Dbにおける像の一致度が制限範囲内であるとき、非共通領域Dbにおいて基準対象の像と処理対象の像との一致度が低いことを示す。
【0078】
また例えば、制限範囲は、10%以上50%以下のように、0よりも大きい範囲内で下限と上限とを有する範囲であってもよい。これは、非共通領域Dbにおける像の一致度が制限範囲内であるとき、非共通領域Dbにおいて、基準対象の像と処理対象の像とが、制限範囲の示す範囲に応じた類似性を有していることを示す。
【0079】
例えば、保護対象に該当する個体にて非共通領域Dbにおける像が人の顔の像である場合、処理対象における非共通領域Dbの像が人の顔であるときに、一致度が制限範囲内となるように、基準対象における非共通領域Dbの像と制限範囲とが設定される。また、処理対象における非共通領域Dbにおける像が文字などであって人の顔でないときに、一致度が制限範囲外となるように、基準対象における非共通領域Dbの像と制限範囲とが設定される。すなわち、上記構成においては、処理対象における非共通領域Dbの像が、保護対象に該当する個体における非共通領域Dbの像と同種の像であるときに、非共通領域Dbにおける像の一致度が制限範囲内に入る。こうした構成によれば、処理対象が保護対象と同じ形式を有しているか否かが的確に判定されるため、判定部13aによる判定の精度が高められる。なお、この場合、基準対象における非共通領域Dbの像、すなわち個別情報部分の像は、架空の個別情報や空白の像に限らず、処理対象が保護対象と同じ形式を有しているか否かに応じて一致度に差が出やすいように設定されていればよい。
【0080】
[画像処理装置の処理手順]
図4を参照して、画像処理装置10の処理手順について説明する。
図4に示すフローは、処理対象の撮像を実行するための指示が制御部13から撮像部11へ入力される度に行われる処理の流れを示す。
図4が示すように、ステップS20の処理として、撮像部11は、処理対象を撮像し、処理対象の画像データを生成する。
【0081】
画像データが生成されると、続いて、ステップS21の処理として、判定部13aは、撮像部11が生成した処理対象の画像データと、記憶部12が記憶している基準対象の基準データ12aとを用い、処理対象と基準対象との間において、共通領域Daおよび非共通領域Dbにおける像の一致度を算出する。詳細には、判定部13aは、処理対象の画像データを判定領域Dごとに取り扱い、各判定領域Dに含まれる像の特徴を数値化し、その数値化されたデータと基準データ12aとを比較する。そして、判定部13aは、判定領域Dごとに、処理対象の像と基準対象の像との一致度を算出する。さらに、判定部13aは、各共通領域Daについて算出した一致度を平均して、処理対象においてすべての共通領域Daに含まれる像と、基準対象においてすべての共通領域Daに含まれる像との一致度を算出する。また、判定部13aは、各非共通領域Dbについて算出した一致度を平均して、処理対象においてすべての非共通領域Dbに含まれる像と、基準対象においてすべての非共通領域Dbに含まれる像との一致度を算出する。
【0082】
続いて、ステップS22およびステップS23の処理として、判定部13aは、すべての共通領域Daに対する一致度と、すべての非共通領域Dbに対する一致度とに基づいて、処理対象が保護対象に該当する可能性を判定する。
【0083】
まず、ステップS22の処理として、判定部13aは、すべての共通領域Daに対する一致度が第1閾値以上であり、かつ、すべての非共通領域Dbに対する一致度が制限範囲内であるか否かを判断する。すべての共通領域Daに対する一致度と、すべての非共通領域Dbに対する一致度とがこの条件を満たすとき、処理対象は保護対象に該当すると判定される。処理対象が保護対象に該当すると判定されたとき(ステップS22にて肯定判定)、ステップS24の処理に進む。
【0084】
ステップS24の処理として、判定結果処理部13bは、画像データを用いた処理対象の複写処理を停止、あるいは、スキャン機能による画像データの外部装置への送信を禁止、あるいは、撮影データとしての画像データの利用を禁止することによって、処理対象の画像データの利用を制限する。
【0085】
ステップS22の処理にて、すべての共通領域Daに対する一致度と、すべての非共通領域Dbに対する一致度とが上記条件を満たさないと判断されたとき(ステップS22にて否定判定)、ステップS23の処理に進む。そして、判定部13aは、すべての共通領域Daに対する一致度が、第2閾値以下であるか否かを判断する。すべての共通領域Daに対する一致度が第2閾値以下であるとき、処理対象は保護対象に該当しないと判定される。処理対象が保護対象に該当しないと判定されたとき(ステップS23にて肯定判定)、ステップS25の処理に進む。
【0086】
ステップS25の処理として、判定結果処理部13bは、処理対象の画像データの利用を許容する。すなわち、判定結果処理部13bは、処理対象の複写処理の停止や、スキャン機能による画像データの外部装置への送信の禁止や、画像データの撮影データとしての利用の禁止を行わず、制御部13は、処理対象の複写処理もしくはスキャン処理もしくは撮影処理を続行する。
【0087】
ステップS23の処理にて、すべての共通領域Daの一致度が、第2閾値以下でないと判断されたとき(ステップS23にて否定判定)、処理対象は保護対象に類似すると判定され、ステップS26の処理に進む。
【0088】
ステップS26の処理として、判定結果処理部13bは、処理対象の画像データの利用について利用者に注意を喚起する処理を行った後、処理対象の画像データの利用を許容する。なお、利用者によって複写やスキャンや撮影の停止を指示する操作が画像処理装置10に対して行われた場合には、複写やスキャンや撮影が停止される。
【0089】
以上のように、第2実施形態の画像処理装置10においては、非共通領域Dbにおける像の一致度を加味して、処理対象が保護対象に該当する可能性が判定される。したがって、処理対象が保護対象と同じ形式を有しているか否かがより正確に判定されるため、判定の精度が高められる。
【0090】
以上説明したように、第2実施形態の画像処理装置および画像処理プログラムによれば、第1の実施形態の(1)〜(5)の効果に加えて、以下に列挙する効果を得ることができる。
(6)非共通領域Dbにおける像の一致度を加味して、処理対象が保護対象に該当する可能性が判定されるため、判定部13aによる判定の精度が高められる。
【0091】
(変形例)
上記各実施形態は、以下のように変更して実施することが可能である。
・上記各実施形態においては、複数の判定領域Dの形状は同一であったが、複数の判定領域Dには、互いに異なる形状の判定領域Dが含まれてもよい。例えば、
図5が示すように、共通領域Daは、基準対象におけるひな型部分に合わせた形状とされ、非共通領域Dbは、基準対象における個別情報部分に合わせた形状とされてもよい。こうした構成によれば、判定領域Dの配置や各判定領域Dに含まれる像の割り振りの自由度が高められるため、ひな型部分と個別情報部分との境界に共通領域Daと非共通領域Dbとの境界を設定することが容易である。したがって、共通領域Daにひな型部分の像のみが含まれ、非共通領域Dbに個別情報部分の像のみが含まれる構成が容易に実現できる。こうした構成においては、共通領域Daに含まれる像の比較によって、保護対象に該当する複数の個体にて共通する部分のすべての像が比較されるため、判定の精度が高められる。なお、互いに隣接する判定領域Dの間には、隙間が空いていてもよい。
【0092】
・保護対象が、個別情報に加えて、性別の記載などのように複数の種類から選択される情報である選択情報がひな型に組み込まれた構成を有する場合、すなわち、保護対象に該当する複数の個体の一部の個体にて共通する像を含む場合、以下の処理が行われればよい。
例えば、一部の個体にて共通する像を含む判定領域Dが、非共通領域Dbとされ、この領域は基準対象と処理対象との間で像が一致すべき領域として取り扱われなくてもよい。
【0093】
また例えば、記憶部12は、選択情報の種類ごとに、各別の基準データ12aを記憶する。そして、一部の個体にて共通する像を含む判定領域Dは、共通領域Daとされ、判定部13aは、処理対象の画像データに基づき各判定領域Dに含まれる像の特徴を数値化したデータを、各基準データ12aと比較することによって、基準データ12aごとに判定を行ってもよい。
【0094】
また例えば、1つの基準データ12aにおいて、一部の個体にて共通する像を含む判定領域Dについては、選択情報における各種の情報を示す像の特徴を示すデータの各々と判定領域Dとが対応付けられる。そして、一部の個体にて共通する像を含む判定領域Dは、共通領域Daとされ、判定部13aは、処理対象の画像データに基づき上記判定領域Dに含まれる像の特徴を数値化したデータを、基準データ12aにて上記判定領域Dに対応付けられているデータの各々と比較することによって判定を行ってもよい。
【0095】
・上記各実施形態では、判定部13aは、処理対象が保護対象に該当する可能性を三段階に分けて判定したが、判定の態様はこれに限らない。例えば、判定部13aは、処理対象が保護対象に該当するか否かの二段階に分けて判定を行ってもよいし、処理対象の保護対象に対する類似の程度を二段階以上に分けて、全体として四段階以上に分けて判定を行ってもよい。
【0096】
・上記各実施形態では、判定部13aの判定に際して、各共通領域Daあるいは各非共通領域Dbについて算出された一致度が平均されて、すべての共通領域Daあるいはすべての非共通領域Dbに対する一致度が求められ、この全体の一致度が、処理対象が保護対象に該当する可能性の判定の基準である閾値との比較に用いられた。これを変更し、例えば、共通領域Daごとや非共通領域Dbごとに、一致度が閾値と比較され、条件を満たす判定領域Dの数の全数に対する割合に応じて、処理対象が保護対象に該当する可能性が判定されてもよい。例えば、一致度が第1閾値以上である共通領域Daの数が、共通領域Daの全数の9割以上であるときに、処理対象が保護対象に該当すると判定されてもよい。またあるいは、複数の共通領域Daの各々の像の一致度がすべて第1閾値以上であるときに、処理対象が保護対象に該当すると判定されてもよい。こうした場合には、判定領域Dごとに異なる閾値が設定されてもよい。
【0097】
・処理対象が保護対象に該当すると判定されたときに判定結果処理部13bによって行われる処理は、処理対象の画像データの利用を制限する処理であれば、上記各実施形態の処理に限られない。例えば、判定結果処理部13bは、画像データの示す画像に所定の文言や模様を付加したり、画像の一部や全部を被覆したりしてもよい。すなわち、複写物や、保存あるいは外部装置に送信される画像データが、処理対象の像とは異なる像を示すように画像データを加工してもよい。
【0098】
・処理対象が保護対象に類似すると判定されたときに判定結果処理部13bが行う処理は、処理対象の画像データの利用について利用者に注意を喚起する処理でなくてもよい。例えば、判定結果処理部13bは、所定の用紙を用いた複写のみを許可するなど、処理対象が保護対象に該当すると判定されたときと比較して、処理対象の画像データに対する利用の制限を弱くしてもよい。
【0099】
・第2実施形態においては、処理対象が保護対象に該当すると判定される条件にのみ、非共通領域Dbにおける像の一致度が加味されたが、処理対象が保護対象に類似すると判定される条件や、処理対象が保護対象に該当しないと判定される条件にも、非共通領域Dbにおける像の一致度が加味されてもよい。また、処理対象が保護対象に該当する可能性の判定に像の一致度が加味される非共通領域Dbは、複数の非共通領域Dbの一部であってもよい。
【0100】
・基準データ12aは、基準対象に対して設定された判定領域Dのなかで、一部の判定領域Dの像の特徴を示すデータであってもよい。例えば、第1実施形態にて、基準データ12aは、共通領域Daの像の特徴を示すデータのみを含んでいてもよい。要は、基準データ12aは、少なくとも判定部13aの判定に用いられる判定領域Dのデータを含んでいればよい。
【0101】
・処理対象が保護対象に該当する可能性の判定に用いられた画像データと、処理対象が保護対象に該当しないと判定されたときに、複写処理やスキャン処理や撮影処理にて用いられる画像データとは、同一の処理対象から得られた画像データであれば、互いに異なるデータであってもよい。例えば、制御部13が撮影処理を行う場合、撮影タイミングを決定する操作が利用者によって行われる前に、撮像部11に捉えられている像の画像データが、判定に用いられてもよい。そして、撮影タイミングの決定に基づいて生成された画像データが撮影データとして利用されてもよい。この場合、処理対象が保護対象に該当すると判定されたときには、判定結果処理部13bは、撮影タイミングの決定を無効としてもよい。要は、処理対象が保護対象に該当すると判定されたときに判定結果処理部13bが行う処理は、処理対象の画像の利用を制限する処理であれば、判定に用いられた画像データとは関連しない処理であってもよい。
【0102】
・画像処理装置10は、少なくとも、基準データ12aを記憶する記憶部12と、処理対象の画像データを取得し、処理対象が保護対象に該当する可能性を基準データ12aと画像データとを用いて判定する判定部13aとを備える装置であればよい。こうした装置であれば、特定の形式を有する処理対象の識別は可能である。