【文献】
CLAYTON, A et al.,Analysis of antigen presenting cell derived exosomes, based on immuno-magnetic isolation and flow cytometry,J Immunol Methods,2001年 1月 1日,247(1-2),163-174
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0013】
[エクソソームと第1の微粒子との結合体の形成]
まず、
図1〜
図6を用いて、エクソソームと第1の微粒子との結合体の形成方法について説明する。
【0014】
図1は、エクソソーム10と磁気微粒子20との結合体の形成方法を説明するためのフローチャートである。
図2(a)は、エクソソーム10を含む試料液1の模式的な断面図である。
図2(b)は、エクソソーム10の模式的な断面図である。なお、エクソソーム10の粒子径は種々存在するが、
図2(a)等においてはエクソソーム10の粒子径を全て同一で図示している。
【0015】
図1において、オペレータは、ステップS1にて、
図2(a)に示すように、検出対象のエクソソーム10を含む試料液1(第1の試料液)を準備する。
【0016】
図2(b)に示すように、エクソソーム10は、脂質二重膜11で覆われている。脂質二重膜11には、複数の種類の膜貫通型たんぱく質等のたんぱく質が存在する。たんぱく質の個数や脂質二重膜11における位置は、エクソソームの種類によって異なり、個体によっても異なる。これらの表面分子を抗原として抗原抗体反応を用いて認識を行う。抗原である表面分子として、CD63,CD9,Rab−5b等の他様々なたんぱく質等の分子の存在が多くの論文で報告されている。なお、
図2(b)では、エクソソームを識別するための抗原である3種類のたんぱく質(検出対象物質)に対して符号12,13,14を付している。
【0017】
エクソソーム10の平均粒子径Raは、例えば100nmである。
【0018】
エクソソーム10の平均粒子径Raとは、エクソソーム10の粒子径を任意の測定方法で測定した値の平均値を意味する。測定方法としては、例えば、ナノ粒子トラッキング法を用いた、エクソソーム10が溶液中にある状態で観測する湿式の測定方法や、透過型電子顕微鏡でエクソソーム10の形態を保ったまま観測する乾式の測定方法等がある。
【0019】
後者の測定方法では、エクソソーム10の形態を保ったまま乾式で観測可能とするために、エクソソーム10を含む試料に対して細胞を観測する手法に準じた処理を施す。
【0020】
具体的には、試料を基体上に固定し、低濃度のエタノールから純度100%のエタノールまで、ステップごとにエタノールの濃度を高くして数ステップをかけてエタノールの含浸を繰り返す。これによって、試料中の水分がエタノールへと置換されて脱水される。
【0021】
次に、試料を、エタノールに可溶な合成樹脂を含む溶液で含浸することによって、エタノールを合成樹脂に置換する。そして、合成樹脂に置換された試料を薄片化して観測する。
【0022】
また、エクソソーム10を含む試料を急速冷凍することにより、エクソソーム10の形態を保ったまま脱水して観測可能とすることもできる。
【0023】
図3(a)は、磁気微粒子20を含む緩衝液2の模式図である。
図3(b)は、磁気微粒子20の模式図である。
【0024】
オペレータは、ステップS2にて、
図3(a)に示すように、磁気微粒子20(第1の微粒子)を含む緩衝液2(第1の緩衝液)を調製する。
【0025】
図3(b)に示すように、磁気微粒子20は、略球形に形成されたポリスチレン等の合成樹脂で形成されている。磁気微粒子20は酸化鉄等の磁性体21を内包している。磁気微粒子20の表面には、エクソソーム10の抗原12(第1の検出対象物質)と特異的に結合する抗体22(第1の結合物質)が固定されている。なお、磁気微粒子20の粒子径Rbについては後述する。
【0026】
図4は、エクソソーム10を含む試料液1と磁気微粒子20を含む緩衝液2との混合液4の模式的な断面図である。
【0027】
オペレータは、ステップS3にて、
図4に示すように、試料液1と緩衝液2とをマイクロチューブやカラム等の容器3に注入し、混合させる。適切な時間、抗原抗体反応を進行させるインキュベート処理を行う。
【0028】
インキュベート処理により、混合液4中に、抗原12と抗体22とが特異的に結合された、エクソソーム10と磁気微粒子20との結合体5(第1の結合体)が形成される。なお、試料液によっては抗原12を有さないエクソソームが含まれている場合がある。抗原12を有さないエクソソームは、磁気微粒子20と結合しない状態で混合液4中に分散している。
【0029】
図5は、結合体5が磁気捕集されている状態を模式的に示す断面図である。
【0030】
オペレータは、ステップS4にて、
図5に示すように、磁石6等を用いて、結合体5を磁気捕集する。例えば、磁石6を容器3の側面3aに接近させることで、結合体5を磁石6近傍の側面3aに磁気捕集することができる。従って、ステップS4により、混合液4から結合体5を分離させることができる。
【0031】
なお、結合体5の分離方法は磁気捕集に限定されるものではない。例えば、磁気微粒子20に替えて電荷を有する粒子を使用することも可能である。電荷を有する粒子が固定されているエクソソームと、固定されていないエクソソームとでは、電荷の量が異なるため電界の中での動きが異なることを利用して、両者を分離する。例えば、フローサイトメトリーを原理としたセルソーターを用いることで、混合液4中から結合体5を分離させることが可能となる。
【0032】
磁気微粒子20が非常に小さい場合、外部磁界によって誘起される磁化が小さい。そのため、一般的な永久磁石では結合体5を効率よく磁気捕集することが難しい場合がある。その場合は、高勾配磁気分離法による磁気捕集が好適である。
【0033】
オペレータは、ステップS5にて、容器3内の混合液4を緩衝液で置換する。容器3内を複数回、緩衝液で置換することが好ましい。なお、混合液4中に分散している抗原12を有さないエクソソームは、緩衝液で置換されることにより除去される。
【0034】
オペレータは、ステップS6にて、磁石6を容器3から離隔させ、磁気捕集により分離された結合体5を緩衝液中に再分散させる。その際、容器3に超音波を印加する等の分散処理を行うとより良好な分散状態を実現できる。
【0035】
図6は、結合体5が分散した試料液7の模式的な断面図である。
【0036】
ステップS6の分散処理により、
図6に示すように、緩衝液中に結合体5が分散した再懸濁液を試料液7(第2の試料液)とする。
【0037】
次に、
図7〜
図13を用いて、エクソソームの捕捉方法について説明する。
【0038】
[エクソソーム捕捉ユニット]
まず、
図7及び
図8を用いて、エクソソームを捕捉するためのエクソソーム捕捉ユニットの構成を説明する。
【0039】
図7(a)はエクソソーム捕捉ユニット30の模式的な上面図である。
図7(b)は
図7(a)のA−Aにおける模式的な断面図である。
図7(c)はカートリッジ32が基板31に対して着脱可能であることを説明するための模式的な断面図である。
図8は、
図7(a)のB−Bで切断した部分拡大斜視図である。
【0040】
図7(a)に示すように、エクソソーム捕捉ユニット30は、基板31とカートリッジ32とを有して構成されている。
【0041】
基板31は、例えば、ブルーレイディスク(BD)、DVD、コンパクトディスク(CD)等の光ディスクと同等の円板形状を有する。基板31は、例えば、一般的に光ディスクに用いられるポリカーボネート樹脂やシクロオレフィンポリマー等の樹脂材料で形成されている。
【0042】
図8に示すように、基板31の表面には、凸部33と凹部34とが半径方向に交互に配置されたトラック領域35が形成されている。凸部33及び凹部34は、内周部から外周部に向かってスパイラル状に形成されている。凸部33は光ディスクのランドに相当する。凹部34は光ディスクのグルーブに相当する。
【0043】
図7(a)に示すように、カートリッジ32はリング形状を有する。カートリッジ32には、周方向に複数の円筒状の貫通孔36が形成されている。
【0044】
図7(b)及び
図8に示すように、エクソソーム捕捉ユニット30は、カートリッジ32の貫通孔36と基板31のトラック領域35とによって形成される複数のウェル37を有している。即ち、貫通孔36の内周面はウェル37の内周面を構成し、基板31のトラック領域35はウェル37の底面を構成する。ウェル37は試料液7等を溜めるための容器である。また、貫通孔36と基板31の間に、シリコンゴム等の弾性変形する素材で作成したパッキンを入れると、溶液の漏れる可能性を低減することができ好都合である。
【0045】
図7(c)に示すように、カートリッジ32は基板31に対して着脱可能である。エクソソーム捕捉後のエクソソームの検出は、カートリッジ32を基板31から取り外し、基板31単体で行われる。
【0046】
[エクソソームの捕捉]
次に、
図9〜
図15を用いて、エクソソーム捕捉ユニット30を用いてエクソソーム10を捕捉する捕捉方法を説明する。
【0047】
図9はエクソソーム10の捕捉方法を説明するためのフローチャートである。
【0048】
図10(a)はウェル37に注入された抗体43を含む緩衝液40の模式的な断面図である。
図10(b)はウェル37に注入された結合体5を含む試料液7の模式的な断面図である。なお、
図10(a)及び
図10(b)では、基板31とカートリッジ32とを簡略化させて一体化させた構造として示している。
【0049】
図11(a)はウェル37に注入された微粒子50を含む緩衝液8の模式図である。
図11(b)は微粒子50の模式図である。
【0050】
図12(a)は抗体43がトラック領域35に固定されている状態を模式的に示す断面図である。
図12(b)はブロック層41がトラック領域35に形成されている状態を模式的に示す断面図である。
【0051】
なお、
図12(a)及び
図12(b)では抗体43が基板31に対してほぼ垂直の方位で固定されるように示されている。しかしながら、実際には、抗体43が固定される方位は固定方法により異なる。例えば疎水結合を用いて抗体43が固定された場合は、抗体43は様々な方位を有して基板に固定される。
【0052】
図13(a)は結合体5がトラック領域35の凹部34に捕捉されている状態を模式的に示す断面図である。
図13(b)はエクソソーム10に磁気微粒子20及び微粒子50がそれぞれ結合された結合体9がトラック領域35の凹部34に捕捉されている状態を模式的に示す断面図である。
【0053】
なお、説明をわかりやすくするために、
図13(a)及び
図13(b)に示すエクソソーム10は、
図2(b)に示すエクソソーム10を簡略化して模式的に示している。
【0054】
図9において、オペレータは、ステップS11にて、
図10(a)に示すように、エクソソーム10の抗原13(第2の検出対象物質)と特異的に結合する抗体43(第2の結合物質)を含む緩衝液40を、エクソソーム捕捉ユニット30のウェル37に注入する。
【0055】
オペレータは、エクソソーム捕捉ユニット30を、適切な時間、適切な温度でインキュベートさせる。例えば、一般的な免疫学的測定で用いられる、4℃で一晩ほど静置してインキュベートさせる。これにより、抗体43は基板31上のトラック領域35に固定される。
【0056】
オペレータは、ステップS12にて、ウェル37から緩衝液40を排出し、ウェル37を緩衝液で洗浄する。なお、トラック領域35に固定されなかった抗体43はこの洗浄によって除去される。
【0057】
なお、ステップS11及びステップS12は、オペレータが抗体43を固定させる場合に必要な工程である。工場等で事前に抗体43が固定されているエクソソーム捕捉ユニット30または基板31を使用する場合は、ステップS11及びステップS12を省略することができる。
【0058】
図12(a)に示すように、抗体43はトラック領域35を構成する凸部33及び凹部34に疎水結合によって固定される。抗体43の固定方法は疎水結合に限定されない。トラック領域35に適切な化学的処理を行い、共有結合等を用いて抗体43をトラック領域35に固定させてもよい。トラック領域35に抗体43を固定させる方法は、免疫学測定法で一般的に使われている方法を用いることができる。
【0059】
オペレータは、ステップS13にて、抗体43の抗原識別部以外に抗原が非特異的に吸着することを防ぐため、ウェル37の内部をブロッキング処理する。具体的には、オペレータは、緩衝液で希釈されたスキムミルクをウェル37に注入し、ステップS11と同様に、エクソソーム捕捉ユニット30を適切な時間、振盪させる。
【0060】
スキムミルクはエクソソーム10に付着しないたんぱく質を含むので、ブロッキング処理に好適である。なお、ブロッキング処理に用いる物質は、同様の効果を奏するものであればスキムミルクに限定されない。
【0061】
オペレータは、ステップS14にて、ウェル37からスキムミルクを含む緩衝液を排出し、ウェル37を緩衝液で洗浄する。洗浄に用いる緩衝液としては、スキムミルクを含んでいてもよいし、含んでいなくてもよい。また、洗浄を省略することも可能である。
【0062】
図12(b)に示すように、ブロック層41がトラック領域35に形成される。
【0063】
オペレータは、ステップS15にて、
図10(b)に示すように、結合体5を含む試料液7をウェル37に注入し、ステップS11と同様に、エクソソーム捕捉ユニット30を、適切な時間、適切な温度でインキュベートさせる。インキュベート時に振盪させてもよい。ステップS15では、例えば2時間程度、37℃でエクソソーム捕捉ユニット30を振盪させる。
【0064】
これにより、エクソソーム10の抗原13とトラック領域35に固定されている抗体43とは、抗原抗体反応によって特異的に結合する。
図13(a)に示すように、結合体5は、トラック領域35の凹部34に捕捉される。なお、試料液によっては抗原13を有さないエクソソームが含まれている場合がある。抗原13を有さないエクソソームは、トラック領域35の抗体43と結合しない状態で試料液7中に結合体5として分散している。
【0065】
オペレータは、ステップS16にて、ウェル37から試料液7を排出し、ウェル37を緩衝液で洗浄する。なお、試料液7中に分散している結合体5、及び、抗原抗体反応ではない非特異吸着によってトラック領域35に付着している結合体5は、この洗浄によって除去される。即ち、試料液7中に分散している抗原13を有さないエクソソームは、緩衝液で洗浄されることにより除去される。また、試料液7中に磁気微粒子20が含まれている場合においても、磁気微粒子20は、この洗浄によって除去される。
【0066】
オペレータは、ステップS17にて、
図11(a)に示すように、微粒子(第2の微粒子)50を含む緩衝液8(第2の緩衝液)をウェル37に注入し、ステップS11と同様に、エクソソーム捕捉ユニット30を、適切な時間、振盪させる。
【0067】
図11(b)に示すように、微粒子50は、略球形に形成されたポリスチレン、グリシジルメタクリレート等の合成樹脂で形成されている。微粒子50の表面には、エクソソーム10の抗原14(第3の検出対象物質)と特異的に結合する抗体54(第3の結合物質)が固定されている。なお、微粒子50の粒子径Rcについては後述する。
【0068】
これにより、エクソソーム10の抗原14と微粒子50の抗体54とは、抗原抗体反応によって特異的に結合する。
図13(b)に示すように、エクソソーム10に磁気微粒子20及び微粒子50がそれぞれ結合された結合体9は、トラック領域35の凹部34に捕捉される。なお、抗原14を有さないエクソソームは、微粒子50の抗体54と結合しない状態でトラック領域35の凹部34に捕捉されている。
【0069】
従って、トラック領域35の凹部34には、エクソソーム10を識別するための3種類の検出対象物質(たんぱく質)12,13,14の全てを有するエクソソーム10が結合された結合体9、及び、2種類の検出対象物質(たんぱく質)12,13を有するエクソソームが結合された結合体5が捕捉されている。
【0070】
微粒子50は、磁気微粒子20と同様に磁性体21を内包していてもよい。ステップS17においてエクソソーム捕捉ユニット30の裏面側に磁石を配置することで、磁性体21を内包する微粒子50をトラック領域35に迅速に移動させることができる。これにより、ステップS17を時間短縮することができる。
【0071】
オペレータは、ステップS18にて、ウェル37から緩衝液8を排出し、ウェル37を緩衝液で洗浄する。なお、緩衝液8中に分散している微粒子50は、この洗浄によって除去される。
【0072】
例えば、外部に配置された光ピックアップから、結合体9及び結合体5が捕捉されているトラック領域35、詳しくは凹部34に向けてレーザ光を照射する。トラック領域35からの反射光を解析することで、微粒子50が結合されている結合体9のみを検出することができる。従って、エクソソーム10を識別するための3種類の検出対象物質12,13,14の全てを有するエクソソーム10のみを検出することができる。
【0073】
具体的には、光ピックアップは、トラック領域35にレーザ光を集光させるための対物レンズを備えている。基板31を一般的な光ディスクと同様に回転させ、光ピックアップを基板31の半径方向に移動させることにより、対物レンズによって集光されたレーザ光をトラック(具体的には凹部34)に沿って走査する。
【0074】
トラック領域35からの反射光により得られた検出信号から、凹部34に捕獲されている結合体9における微粒子50を検出することができる。従って、トラック領域35からの反射光により得られた検出信号から、微粒子50が結合されている結合体9からの信号のみを選別することにより、結合体9を構成するエクソソーム10のみを検出することができる。
【0075】
即ち、微粒子50を検出することで結合体9のみを検出することができ、間接的に結合体9におけるエクソソーム10を検出することができる。また、微粒子50の数を計測することで間接的にエクソソーム10の数を計測することができる。
【0076】
ここで、磁気微粒子20の粒子径を、磁気分離を行うには十分な磁化を有し、かつ、検出信号へ与える変化が十分に小さい範囲に設定する。なお、磁気微粒子20の粒子径については後述する。その結果、検出信号の変化は、結合体9のみに現れ、結合体5では生じない。すなわち、複雑な信号処理を行わなくても、結合体9のみの検出が可能となる。
【0077】
試料液によっては、3種類の検出対象物質12,13,14のうち、検出対象物質12を有さないエクソソームや、検出対象物質13を有さないエクソソームや、検出対象物質14を有さないエクソソームが含まれている場合がある。
【0078】
本実施形態のエクソソームの捕捉方法によれば、3種類の検出対象物質12,13,14のうち、検出対象物質12を有さないエクソソームはステップS5で除去される。例えば、試料液中に検出対象物質12を有さないエクソソームのみが含まれている場合、エクソソームはステップS5で全て除去されるため、試料液中には検出対象物質12を有さないエクソソームのみが含まれていることが特定できる。
【0079】
本実施形態のエクソソームの捕捉方法によれば、検出対象物質13を有さないエクソソームはステップS16で除去される。検出対象物質14を有さないエクソソームは、微粒子50が結合されていないため検出されない。即ち、3種類の検出対象物質12,13,14を有するエクソソーム10のみを検出することができる。
【0080】
よって、本実施形態のエクソソームの捕捉方法によれば、1つのエクソソームに存在している3種類のたんぱく質を一度に識別することが可能になる。また、試料液中に3種類全ての検出対象物質を有するエクソソームが含まれていない場合、エクソソームは検出されないため、試料液中に3種類全ての検出対象物質を有するエクソソームが含まれていないことが特定できる。これにより、従来よりも疾患特異性を高め、診断の精度や確度を向上させることが可能になる。
【0081】
図14及び
図15を用いて、エクソソーム10、磁気微粒子20、微粒子50、及び、トラック領域35の相互の関係を説明する。
【0082】
図14はトラック領域35の凸部33及び凹部34の寸法的形状を示す拡大断面図である。凹部34の深さ(凸部33の高さ)をHとし、凹部34の幅をWaとし、凸部33の幅をWbとする。なお、幅Wa,幅Wbは、一点鎖線で示すH/2の位置での幅である。
【0083】
図15(a)は結合体9がトラック領域35の凹部34に固定されている状態を模式的に示す上面図である。
図15(b)は
図15(a)のC−Cにおける模式的な断面図である。
図15(c)は
図15(a)のD−Dにおける模式的な断面図である。
【0084】
図15(a)〜
図15(c)に示すように、エクソソーム10をトラック方向に沿って配列させ、1つのエクソソーム10に1つの微粒子50を高い確率で結合させることで、エクソソーム10の測定精度や測定確度を向上させることができる。
【0085】
例えば、式(1)に示すように、磁気微粒子20の粒子径Rbは凹部34に集光されるレーザ光のスポット径(k×λ)/NAよりも小さく、微粒子50の粒子径Rcはスポット径(k×λ)/NA以上であることが好ましい。
【0086】
Rb<(k×λ)/NA≦Rc …(1)
【0087】
なお、λは光ピックアップから射出され、対物レンズによって凹部34に集光されるレーザ光の中心波長である。NAは対物レンズの開口数である。kは係数である。kは例えば1/5である。
【0088】
式(1)を満たすことで、光ピックアップは、磁気微粒子20の影響を受けずに、微粒子50を精度よく検出することができる。従って、微粒子50の測定精度や測定確度を向上させることができる。λ=405nm、NA=0.85、k=1/5の場合、(k×λ)/NA=95nmであり、磁気微粒子20の粒子径Rbは95nm以下、好ましくは約50nmである。微粒子50の粒子径Rcは例えば200nmである。
【0089】
式(2)に示すように、凸部33の幅Wbはエクソソーム10の平均粒子径Raよりも小さいことが好ましい。
【0091】
式(2)を満たすことで、結合体5は凸部33上に位置しにくくなる。
【0092】
式(3)に示すように、凹部34の幅Waは、エクソソーム10の平均粒子径Raと磁気微粒子20の粒子径Rbの加算値よりも大きく、平均粒子径Raの4倍値よりも小さいことが好ましい。
【0093】
(Ra+Rb)<Wa<4×Ra …(3)
【0094】
式(3)の(Ra+Rb)<Waを満たせば、結合体5を凹部34に捕捉することができる。
【0095】
図13(a)に示すように、凹部34に捕捉されたエクソソーム10は、一般的に、球形から接触面積を拡げる方向に変形する。なお、磁気微粒子20と同様に、磁性体21を内包した微粒子50を用いると、ステップS17にてエクソソーム捕捉ユニット30の裏面側に磁石を配置することで磁力によってエクソソーム10の変形が促進される。
【0096】
球形のエクソソーム10が体積を保って楕円体に変形したと仮定すると、球の直径が50%変化する場合、回転楕円体の長軸である凹部34との接触部位の直径は約40%大きくなる。さらに実際には、回転楕円体形状よりも接触部位の面積が大きくなる方向に変形するので、接触部位の直径は、元の球形のときの直径の50%以上、場合によっては100%以上増大することもある。
【0097】
以上のことから、式(3)のWa<4×Raを満たすことが好ましい。
【0098】
Waに関しては、さらに式(4)に示すように、凸部33の幅Wbは微粒子50の粒子径Rcよりも小さいことが好ましい。凹部34の幅Waは粒子径Rcよりも大きく、粒子径Rcの2倍値よりも小さいことが好ましい。
【0099】
Wb<Rc<Wa<2×Rc …(4)
【0100】
式(4)のWb<Rcを満たすことで、微粒子50は凸部33上に位置しにくくなる。式(3)のRc<Waを満たすことで、微粒子50は凹部34に入ることができる。式(4)のWa<2×Rcを満たすことで、微粒子50が凹部34の幅方向に同時に2つ入りにくくなり、エクソソーム10と微粒子50との数量関係を1対1に近づけることができる。
【0101】
式(5)に示すように、微粒子50の粒子径Rcはエクソソーム10の平均粒子径Raよりも大きいことが好ましい。
【0103】
式(5)を満たすことで、凹部34に固定されたエクソソーム10に複数の微粒子50が結合しにくくなり、エクソソーム10と微粒子50との数量関係を1対1に近づけることができる。式(5)を満たすことで、エクソソーム10と微粒子50とが反応的に出会う確率が高くなり、結果として反応の収率を向上させることができる。
【0104】
式(6)に示すように、凹部34の深さHは、エクソソーム10の平均粒子径Raと微粒子50の粒子径Rcの加算値の1/8倍値よりも大きいことが好ましい。
【0106】
式(6)を満たすことで、エクソソーム10は凹部34に捕捉されやすく、微粒子50の凸部33への非特異的な吸着が起こりにくくなり、微粒子50は凹部34に捕捉されているエクソソーム10と結合しやすくなる。
【0107】
凹部34の深さHは、式(7)を満たすことがさらに好ましい。
【0109】
なお、上記の式(1)〜式(6)(または式(7))の全てを満たすことが好ましいが、部分的に満たすだけでもよい。
【0110】
本発明は、以上説明した実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲において種々変更可能である。