(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6606918
(24)【登録日】2019年11月1日
(45)【発行日】2019年11月20日
(54)【発明の名称】包装体入り米
(51)【国際特許分類】
A23L 7/10 20160101AFI20191111BHJP
【FI】
A23L7/10 A
【請求項の数】8
【全頁数】7
(21)【出願番号】特願2015-164814(P2015-164814)
(22)【出願日】2015年8月24日
(65)【公開番号】特開2017-42053(P2017-42053A)
(43)【公開日】2017年3月2日
【審査請求日】2018年6月22日
(73)【特許権者】
【識別番号】000003067
【氏名又は名称】TDK株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100088155
【弁理士】
【氏名又は名称】長谷川 芳樹
(74)【代理人】
【識別番号】100113435
【弁理士】
【氏名又は名称】黒木 義樹
(74)【代理人】
【識別番号】100124062
【弁理士】
【氏名又は名称】三上 敬史
(72)【発明者】
【氏名】菊池 俊秋
(72)【発明者】
【氏名】三浦 美穂
(72)【発明者】
【氏名】松岡 大
【審査官】
吉森 晃
(56)【参考文献】
【文献】
特開2004−065036(JP,A)
【文献】
特開平06−055143(JP,A)
【文献】
特開平04−284855(JP,A)
【文献】
山本道明,、土屋義信、末成和夫,、手島義春,酒造原料米の自動重量分布測定装置の開発,日本醸造協会誌,日本,1992年,87巻 8号,P593-P597
【文献】
日本製鋼所技報,1992年,47,144-145
【文献】
長野県技術情報,1991年,147,11-13
【文献】
月刊フードケミカル,1993年,9(3),87-92
【文献】
農林水産省農林水産技術会議事務局研究成果,1997年,314,41-43
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A23L 7/00−7/104
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
最大の重量を有する米粒と最小の重量を有する米粒の重量の差が3mg以内である、包装体入り米。
【請求項2】
前記差が1mg以内である、請求項1に記載された包装体入り米。
【請求項3】
玄米、白米又はこれらの混合物である、請求項1又は2に記載の包装体入り米。
【請求項4】
前記包装体が、桶、俵、ペットボトル、紙袋及びビニール袋からなる群より選択されるものである、請求項1〜3のいずれか一項に記載の包装体入り米。
【請求項5】
最大の重量を有する米粒と最小の重量を有する米粒の重量の差が3mg以内である、包装体入り米の製造方法であって、
重量によって米を選別する工程を備える、包装体入り米の製造方法。
【請求項6】
前記差が1mg以内である、請求項5に記載の包装体入り米の製造方法。
【請求項7】
前記米が玄米、白米又はこれらの混合物である、請求項5又は6に記載の包装体入り米の製造方法。
【請求項8】
前記包装体が、桶、俵、ペットボトル、紙袋及びビニール袋からなる群より選択されるものである、請求項5〜7のいずれか一項に記載の包装体入り米の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、包装体入り米に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、稲刈りによって収穫されたもみを精米する方法としては、収穫されたもみを乾燥させる乾燥工程と、乾燥させたもみのもみ殻を取り除いて玄米を製造するもみすり工程と、得られた玄米に対し、屑米の選別、色による選別(色選)、篩による選別(例えば、スリット幅1.95mm以上の篩にかけ、標準以上の大きさの玄米を選別する)等を行う第一の選別工程と、玄米の胚芽と糠層とを取り除いて白米を製造する精米工程と、得られた白米に対し、上記第一の選別工程と同様の操作を行う第二の選別工程と、を備える方法が一般的である(例えば、非特許文献1)。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0003】
【非特許文献1】お米の生産・流通・価格等に関する情報<第4回>収穫から精米になるまで,平成25年7月,JA全農 米穀事業部
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、上述した従来の工程を経ることによって得られる一般的な米と比較して、優れた風味及び食感を有する米及びその製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者らは、上記目的を達成するために鋭意検討した結果、重量によって米を選別することで、風味及び食感を向上させることができることを見出した。
【0006】
すなわち、本発明は、最大の重量を有する米粒と最小の重量を有する米粒の重量の差が3mg以内である、包装体入り米を提供する。本発明に係る包装体入り米は、優れた風味(甘さ)及び食感(硬さ、粘り)を有する。また、本発明に係る包装体入り米は、品質のぶれが小さく、優れた風味及び食感という効果を安定的に奏する。
【0007】
最大の重量を有する米粒と最小の重量を有する米粒の重量の差は、1mg以内であってもよい。差を1mg以内とすることにより、風味及び食感がより優れたものとなる。
【0008】
米は、玄米、白米又はこれらの混合物であってもよい。上記の条件を満たす玄米、白米又はこれらの混合物であれば、風味及び食感がより一層優れたものとなる。
【0009】
包装体は、桶、俵、ペットボトル、紙袋及びビニール袋からなる群より選択されるものであってもよい。
【0010】
また、本発明は、上述した包装体入り米の製造方法であって、重量によって米を選別する工程を備える、製造方法を提供する。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、優れた風味及び食感を有する包装体入り米及びその製造方法を提供することができる。従来は、上記非特許文献1に示されるように、重量による米の選別は行われていなかった。これに対し、本発明は、重量を指標として米を選別することで、優れた風味及び食感を有する包装体入り米及びその製造方法を提供することが可能となった。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】本発明に係る包装体入り米の重量分布を示す図である。
【
図2】本発明に係る包装体入り米の重量分布を示す図である。
【
図3】本発明に係る包装体入り米の重量分布を示す図である。
【
図4】従来の白米における重量分布を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明を実施するための形態についてより詳細に説明する。しかし、本発明は以下の実施形態に限定されるものではない。
【0014】
本実施形態に係る包装体入り米(米の集合体)は、最大の重量を有する米粒と最小の重量を有する米粒の重量の差が3mg以内である。
【0015】
ここで、最大の重量を有する米粒と最小の重量を有する米粒の重量の差とは、包装体の内部に存在する米粒の集合体のうち、最大の重量を有する米粒と、最小の重量を有する米粒との差を示す。最大の重量を有する米粒と、最小の重量を有する米粒との差は、重量分布の幅ということもできる。重量分布の幅は、3mg以内であれば特に制限はなく、例えば、2mg以内又は1mg以内であってもよい。重量分布の幅が3mg以内であれば、優れた風味及び食感を有する。
【0016】
本実施形態に係る包装体入り米は、上述したように、重量分布の幅が上述したような範囲内であれば、包装体の内部に存在する米粒の重量については、特に制限されず、例えば、17.0mg以上、18.5mg以上又は20.0mg以上であってもよく、26.0mg以下、23.0mg以下又は22.0mg以下の範囲内であってもよい。
【0017】
本実施形態における米としては、例えば、天然米を用いることができる。天然米としては、白米、玄米、胚芽米等の選別米のほか、選別時に発生する屑米、被害米等を用いることもできる。風味及び食感をより一層向上させる観点から、米は、白米、玄米又はこれらの混合物であることができる。米粒の大きさ、品種等は特に制限されない。これらの米は、一種を単独で又は二種以上を併用して用いることができる。
【0018】
本実施形態において包装体は、通常の米の保管、運搬等に用いられる包装体を特に制限なく用いることができる。このような包装体としては、例えば、桶、俵、ペットボトル、紙袋及びビニール袋からなる群より選択されるものであってもよい。本実施形態に係る包装体入り米は、その重量分布が天然米と比較して均一となるため、同様の重量における嵩密度についても均一となりやすく、包装体に米を充填しやすいという利点がある。また、破損した米粒(ワレ、カケ等)及び異物の混入を防ぎやすくなるという利点もある。
【0019】
本実施形態に係る包装体入り米の製造方法は、重量によって米を選別する工程を備える。
【0020】
重量によって米を選別する工程では、上述したように、重量分布の幅が3mg以内となるように選別する。
【0021】
米の重量分布を測定する方法は、特に制限がなく、当業者に公知の方法を適宜採用することができる。例えば、米を0.5mgごとに選別を行い、例えば自動固体粒子カウンターを用いて選別された重量区画ごとに米粒の数量を数える方法が挙げられる。
【0022】
米粒の重量による選別方法についても特に制限はなく、上述した方法により測定した重量分布を基に、例えば、重量の大きい順に6区画、5区画、4区画、3区画、2区画又は1区画を抜き取り混合する方法を用いて行うことができる。
【0023】
本実施形態に係る包装体入り米の製造方法は、本発明の効果を損なわない範囲において、上述した重量によって米を選別する工程のほか、適宜他の工程を備えていてもよい。他の工程としては、例えば、従来、稲刈りによって収穫されたもみを精米する方法として一般的に用いられている工程が挙げられる。具体的には、収穫されたもみを乾燥させる乾燥工程、乾燥させたもみのもみ殻を取り除いて玄米を製造するもみすり工程、得られた玄米に対し、屑米の選別、色による選別(色選)、篩による選別(例えば、スリット幅1.95mm以上の篩にかけ、標準以上の大きさの玄米を選別する)等を行う第一の選別工程、玄米の胚芽と糠層とを取り除いて白米を製造する精米工程、得られた白米に対し、上記第一の選別工程と同様の操作を行う第二の選別工程、選別された米(例えば、玄米、白米等)を包装体に充填する充填工程などが挙げられる。
【0024】
これらの各工程を備えるか備えないかは、製造する包装体入り米の種類に応じて適宜設定すればよく、例えば、包装体入り玄米を製造する際には、上記乾燥工程、もみすり工程、第一の選別工程及び充填工程を備えてもよいし、包装体入り白米を製造する際には、上記乾燥工程、もみすり工程、第一の選別工程、精米工程、第二の選別工程及び充填工程を備えていてもよい。この場合、本実施形態に係る重量によって米を選別する工程を、第一の選別工程及び/又は第二の選別工程の前工程又は後工程に備えてもよく、第一の選別工程及び/又は第二の選別工程に代えて備えてもよい。
【実施例】
【0025】
以下、実施例及び比較例によって本発明をより具体的に説明するが、本発明は以下の実施例により何ら限定されるものではない。
【0026】
[実施例1]
コシヒカリ精白米の重量を、電子天秤CP225D(Sartorius製、製品名)にて測定し、0.5mgごとの区画に仕切られた容器に入れて選別した。各区画の米粒の数は、自動固体粒子カウンターを用いて測定した。0.5mgごとに選別された各区画のうち、区画1(20.5の区画:20.0mgより大きく20.5mg以下の米粒が選別されている区画)、区画2(21.0の区画:20.5mgより大きく21.0mg以下の米粒が選別されている区画)及び区画3(21.5の区画:21.0mgより大きく21.5mg以下の米粒が選別されている区画)を抜き取り混合して、包装体に入れ、実施例1の包装体入り米を得た。実施例1の米の重量分布を
図1に示す。
【0027】
[実施例2]
0.5mgごとに選別された各区画のうち、区画1(24.0の区画:23.5mgより大きく24.0mg以下の米粒が選別されている区画)、区画2(24.5の区画:24.0mgより大きく24.5mg以下の米粒が選別されている区画)及び区画3(25.0の区画:24.5mgより大きく25.0mg以下の米粒が選別されている区画)を抜き取った以外は、実施例1と同様の方法によって、実施例2の包装体入り米を得た。実施例2の米の重量分布を
図2に示す。
【0028】
[実施例3]
0.5mgごとに選別された各区画のうち、区画1(17.5の区画:17.0mgより大きく17.5mg以下の米粒が選別されている区画)、区画2(18.0の区画:17.5mgより大きく18.0mg以下の米粒が選別されている区画)及び区画3(18.5の区画:18.0mgより大きく18.5mg以下の米粒が選別されている区画)を抜き取った以外は、実施例1と同様の方法によって、実施例3の包装体入り米を得た。実施例3の米の重量分布を
図3に示す。
【0029】
[比較例1]
コシヒカリ精白米の重量を、電子天秤CP225D(Sartorius製、製品名)にて測定し、0.5mgごとの区画に仕切られた容器に入れて選別した。各区画の米粒の数は、自動固体粒子カウンターを用いて測定した。区画を抜き取らずに全ての区画の米粒を混合して、包装体に入れ、比較例1の包装体入り米を得た。比較例1の米の重量分布を
図4に示す。
【0030】
<官能試験>
実施例1〜3及び比較例1で得られた米を、10℃の水に1時間浸漬し、炊飯ジャーNJ−VX102(三菱電機株式会社製、製品名)を用いて、白米モードで炊飯し、炊飯後の各米に対し、無作為に選出した熟練した14名のパネルにより、官能試験を実施した。官能試験は風味(甘さ)、食感(硬さ、粘り)の観点から評価を行った。
【0031】
実施例1の米及び比較例1の米について比較したときの官能試験結果を表1に示す。表中の各数値は、パネルの数を示す。
【0032】
【表1】
【0033】
実施例2の米及び比較例1の米について比較したときの官能試験結果を表2に示す。表中の各数値は、パネルの数を示す。
【0034】
【表2】
【0035】
実施例3の米及び比較例1の米について比較したときの官能試験結果を表3に示す。表中の各数値は、パネルの数を示す。
【0036】
【表3】