特許第6606934号(P6606934)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6606934
(24)【登録日】2019年11月1日
(45)【発行日】2019年11月20日
(54)【発明の名称】液体噴射装置
(51)【国際特許分類】
   B41J 2/165 20060101AFI20191111BHJP
   B41J 2/17 20060101ALI20191111BHJP
【FI】
   B41J2/165 101
   B41J2/17 103
【請求項の数】6
【全頁数】15
(21)【出願番号】特願2015-178235(P2015-178235)
(22)【出願日】2015年9月10日
(65)【公開番号】特開2017-52192(P2017-52192A)
(43)【公開日】2017年3月16日
【審査請求日】2018年7月18日
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】000002369
【氏名又は名称】セイコーエプソン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100116665
【弁理士】
【氏名又は名称】渡辺 和昭
(74)【代理人】
【識別番号】100194102
【弁理士】
【氏名又は名称】磯部 光宏
(74)【代理人】
【識別番号】100179475
【弁理士】
【氏名又は名称】仲井 智至
(74)【代理人】
【識別番号】100216253
【弁理士】
【氏名又は名称】松岡 宏紀
(72)【発明者】
【氏名】翁 拓也
(72)【発明者】
【氏名】大野 裕和
【審査官】 加藤 昌伸
(56)【参考文献】
【文献】 特開2012−101476(JP,A)
【文献】 特開2011−168032(JP,A)
【文献】 特開平09−216354(JP,A)
【文献】 特開2007−276394(JP,A)
【文献】 特開平03−153359(JP,A)
【文献】 国際公開第2014/069497(WO,A1)
【文献】 中国特許出願公開第1359801(CN,A)
【文献】 韓国登録特許第10−1305768(KR,B1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B41J 2/01 − 2/215
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
液滴を噴射する噴射口が開口する開口面と、前記噴射口に液体を供給する液体流路と、を有する液体噴射部と、
前記媒体と前記開口面との間に配置されたときに前記開口面との間に隙間を有して前記開口面と対向する保護面と、前記液滴を通過させる通過開口と、を有し、前記液体噴射部が媒体に対して液滴を噴射するときに前記媒体と前記開口面との間に配置され、前記液体噴射部が液滴を噴射しないときには前記保護面が前記噴射口と対向する対向位置に配置される保護部材と、
前記保護部材が前記対向位置に配置されたときに、前記液体流路内の液体を加圧して前記噴射口から液面を膨出させる加圧機構と、
前記保護部材を清掃する清掃部材と、を備え
記保護部材の前記媒体側の部分は、前記保護面よりも撥液性が高く、
前記清掃部材は、前記保護面を清掃する
ことを特徴とする液体噴射装置。
【請求項2】
前記保護部材は、液滴の噴射方向に前記噴射口と前記通過開口が並ぶように前記開口面と対向する保護位置と、前記保護位置よりも前記液体噴射部から離れた退避位置との間で、前記液体噴射部に対して相対移動可能であり、
前記退避位置において、前記保護部材の前記媒体側を払拭可能な払拭部材を備える
ことを特徴とする請求項1に記載の液体噴射装置。
【請求項3】
前記清掃部材は、前記払拭部材と向き合った状態で配置される
ことを特徴とする請求項2に記載の液体噴射装置。
【請求項4】
記清掃部材は、記保護面を清掃する
ことを特徴とする請求項1〜請求項3のうちいずれか一項に記載の液体噴射装置。
【請求項5】
前記保護部材は、前記液体噴射部が液滴を噴射しないときに、前記噴射口を覆う閉位置に配置される
ことを特徴とする請求項1〜請求項4のうちいずれか一項に記載の液体噴射装置。
【請求項6】
記保護面は、撥液膜を有する
ことを特徴とする請求項1〜請求項5のうちいずれか一項に記載の液体噴射装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、プリンターなどの液体噴射装置に関する。
【背景技術】
【0002】
液体噴射装置の一例として、液滴吐出ヘッドのノズルが形成されたノズルプレートに、ノズルを露出させる開口部が形成されたシャッターをスライド可能に取り付け、ノズルからインク滴を噴射しないときには、シャッターでノズルを覆って、ノズルの乾燥を抑制するようにしたインクジェット式のプリンターがある(例えば、特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2007−276394号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、液滴吐出ヘッドが液滴を噴射する時には、目的の液滴の噴射に伴って微小な液滴がミスト状に生じ、こうしたミストが開口面に付着して溜まっていくと、溜まった液体が印刷用紙に垂れ落ちたり、噴射された液滴が溜まった液体に接触して飛翔方向が変化してしまったりする、という問題がある。また、ミストの他にも、印刷用紙に付着していた紙粉などのゴミが開口面に付着してしまうことがあり、こうした付着物が印刷用紙を汚したり、噴射された液滴に接触して飛翔方向を変化させたりしまうこともある。
【0005】
その点、上記シャッターを設ければ、そのシャッターで覆っている開口面の部分には、ミストやゴミなどの異物が付着することがないので、開口面の汚れを抑制することができる。しかし、このシャッターは、ノズルを塞ぐことを目的として設けられているため、ノズルを露出させる開口部が大きい場合などには、異物の付着を十分に抑制することができない、という課題がある。
【0006】
なお、このような課題は、ノズルプレートに沿ってスライドするシャッターを備えるプリンターに限らず、液滴を噴射する液体噴射装置においては、概ね共通したものとなっている。
【0007】
本発明は、こうした実情に鑑みてなされたものであり、その目的は、液滴の噴射口が開口する開口面に対する異物の付着を抑制することができる液体噴射装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
以下、上記課題を解決するための手段及びその作用効果について記載する。
上記課題を解決する液体噴射装置は、液滴を噴射する噴射口が開口する開口面を有する液体噴射部と、前記液滴を通過させる通過開口を有して、前記液体噴射部が媒体に対して液滴を噴射するときに、前記媒体と前記開口面との間に配置される保護部材と、を備える。
【0009】
この構成によれば、液体噴射部が媒体に対して液滴を噴射するときに媒体と開口面との間に保護部材が配置されるので、液滴の噴射に伴って生じたミスト等の異物は、開口面に付着する前に、保護部材に付着する。そのため、液滴の噴射口が開口する開口面に対する異物の付着を抑制することができる。
【0010】
上記液体噴射装置において、前記保護部材は、液滴の噴射方向に前記噴射口と前記通過開口が並ぶように前記開口面と対向する保護位置と、前記保護位置よりも前記液体噴射部から離れた退避位置との間で、前記液体噴射部に対して相対移動可能であり、前記退避位置において前記保護部材を払拭可能な払拭部材を備える。
【0011】
この構成によれば、液滴の噴射に伴って生じたミスト等は、液体噴射部と媒体との間に配置された保護部材に付着するが、払拭部材が退避位置において保護部材を払拭することにより、保護部材に付着した異物を除去することができる。そして、開口面の代わりに保護部材でミスト等を受容して、その保護部材を払拭することにより、開口面を払拭する頻度を低下させることができるので、払拭によって開口面にかかる負荷を低減することができる。
【0012】
上記液体噴射装置において、前記保護部材は、前記開口面との間に隙間を有して配置され、前記保護部材の前記媒体側の部分は、前記液体噴射部側の部分よりも、撥液性が高い。
【0013】
この構成によれば、保護部材において、媒体側の部分の方が開口面側の部分のよりも撥液性が高くなるようにすると、液滴の噴射に伴って生じたミストが保護部材の媒体側の部分に付着したとしても、その液体を、通過開口等を通じて保護部材の開口面側に移動させることができる。そのため、保護部材の媒体側の部分に付着した液体によって媒体が汚れないようにすることができる。
【0014】
上記液体噴射装置において、前記保護部材は、前記媒体と前記開口面の間に配置されたときに前記開口面との間に隙間を有して前記開口面と対向する保護面を有し、前記保護部材の前記保護面を清掃する清掃部材を備える。
【0015】
この構成によれば、清掃部材が保護部材の保護面を清掃することにより、保護面に付着した異物が開口面に付着しないようにすることができる。
上記液体噴射装置において、前記保護部材は、前記液体噴射部が液滴を噴射しないときに、前記噴射口を覆う閉位置に配置される。
【0016】
この構成によれば、液体噴射部が液滴を噴射しないときに、保護部材が噴射口を覆う閉位置に配置されることにより、噴射口の乾燥を抑制することができる。
上記液体噴射装置において、前記液体噴射部は、前記噴射口に液体を供給する液体流路を有し、前記保護部材は、前記媒体と前記開口面の間に配置されたときに前記開口面との間に隙間を有して前記開口面と対向する保護面を有して、前記液体噴射部が液滴を噴射しないときには、前記保護面が前記噴射口と対向する対向位置に配置され、前記保護部材が前記対向位置に配置されたときに、前記液体流路内の液体を加圧して前記噴射口から液面を膨出させる加圧機構を備える。
【0017】
この構成によれば、保護部材が対向位置に配置されたときに噴射口から液体を膨出させると、膨出した液体が保護面に付着するので、噴射口と保護面との間の隙間を液体でシールして、噴射口の乾燥を抑制することができる。
【0018】
上記液体噴射装置において、前記保護部材の前記保護面は、撥液膜を有する。
この構成によれば、保護部材の保護面は撥液膜を有するので、保護面に液体が付着しても、その液体が保護面に固着することを抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1】液体噴射装置の一実施形態を示す模式図。
図2】液滴噴射時における液体噴射部及び保護部材の断面図。
図3】保護部材が閉位置にあるときの液体噴射部及び保護部材の断面図。
図4】保護部材が対向位置にあるときの液体噴射部及び保護部材の断面図。
図5】保護部材を払拭するときの液体噴射部及びワイピング装置の断面図。
図6】保護部材を払拭するときの液体噴射部及びワイピング装置の上面図。
図7】液体噴射部を払拭するときの保護部材及びワイピング装置の上面図。
図8】液体噴射装置の変更例を示す模式図。
図9】保護部材及び移動機構の変更例を示す模式図。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、液体噴射装置の実施形態について、図を参照して説明する。
図1に示すように、液体噴射装置11は、液滴を噴射可能な複数のノズル12が開口する液体噴射部13と、液体供給源14の液体を液体噴射部13に向けて供給するための供給流路15と、液体噴射部13内の液体の圧力を調整する圧力調整機構16と、ワイピング装置41と、を備える。また、液体噴射装置11は、液体噴射部13が媒体Sに対して噴射方向Zに液滴を噴射するときに、媒体Sと液体噴射部13との間に配置される保護部材51と、液体噴射部13等の制御を行う制御部100と、を備える。
【0021】
本実施形態の液体噴射装置11は、噴射方向Zと交差(本実施形態では直交)する搬送方向Yに搬送される用紙などの媒体Sに対して液体噴射部13から液体の一例であるインクを噴射することで記録(印刷)を行うインクジェット式のプリンターである。なお、噴射方向Zと交差する方向において、液体噴射部13が媒体Sに対して液滴を噴射する位置を記録位置という。
【0022】
液体噴射装置11は、搬送方向Y及び噴射方向Zと交差(本実施形態では直交)する幅方向Xにおける印刷範囲が媒体Sの幅全体に亘るように並列配置された複数の液体噴射部13を構成要素として含むラインヘッド17を有する。ラインヘッド17は、液体噴射部13に液体を供給するための液体流路18を有する。圧力調整機構16は、液体流路18の途中に設けられている。
【0023】
液体供給源14は、少なくとも1つ設けられるが、液体の種類毎(例えば、インクの色毎)に複数(本実施形態では4つ)設けることもできる。液体噴射部13が複数ある場合、供給流路15は下流側が複数に分岐して、その分岐した下流端が各液体噴射部13に対応するように、ラインヘッド17に設けられた液体流路18に接続される。液体流路18及び圧力調整機構16は、各液体噴射部13において、液体の種類毎に設けられる。
【0024】
圧力調整機構16は、液体流路18の途中に設けられる圧力室21と、圧力室21の上流側に設けられる一方向弁22と、圧力室21と可撓膜23で区画される空気室24と、空気室24に連通する通気流路25と、通気流路25の途中に設けられたポンプ26と、通気流路25の端部に設けられた開閉弁27と、を備える。一方向弁22は、上流側となる液体供給源14から下流側となる液体噴射部13へ向かう液体の流れを許容する一方で、下流側から上流側への液体の逆流を抑制する。また、ポンプ26が駆動していないときに開閉弁27が開弁すると、通気流路25及び空気室24は大気と連通する。
【0025】
圧力調整機構16では、可撓膜23が図1に実線で示すように空気室24を狭くする方向に撓み変位しているときに、ポンプ26が駆動して空気室24に気体を導入することにより、可撓膜23を図1に二点鎖線で示すように圧力室21側に撓み変位させる。すると、圧力室21内の液体が下流側となる液体噴射部13に向けて流動し、ノズル12内の液体が加圧される。すなわち、圧力調整機構16は、液体流路18内の液体を加圧する加圧機構として機能する。
【0026】
圧力調整機構16においては、ポンプ26で気体を導入して可撓膜23を変位させる構成に代えて、空気室24内に配置したピストンまたはばね等の付勢部材で可撓膜23を押圧することにより、可撓膜23を圧力室21側に撓み変位させる構成を採用することもできる。すなわち、可撓膜23を撓み変位させるための構成は、任意に変更することができる。
【0027】
なお、一方向弁22は、圧力室21よりも下流側の液体流路18内の圧力が大気圧よりも低い既定値未満になった場合に開弁する一方、圧力室21よりも下流側の液体流路18内の圧力が前記既定値以上である場合には閉状態を保持する差圧弁(自己封止弁)としてもよい。この構成によれば、圧力調整機構16の圧力調整機能により、圧力室21よりも下流側の液体流路18内の圧力を規定値程度の負圧に保持することができる。そうすると、その負圧によって、ノズル12内に均一なメニスカス(凹状に湾曲した液面)を形成して液滴の噴射精度を上げることができるとともに、振動等によってノズル12から液体が漏れるのを抑制することができる。この場合には、可撓膜23を空気室24側に付勢する付勢部材(例えば、ばね)を圧力室21に収容することによって圧力室21内を負圧にするとともに、開閉弁27を開弁して空気室24を大気開放しておき、空気室24の圧力(大気圧)と圧力室21内の液体の圧力の差に基づいて差圧弁が開弁するようにしてもよい。
【0028】
液体噴射部13は、液体の種類毎に設けられた液体流路18を通じて供給される液体が一時貯留される共通液室31と、複数のノズル12に個別に対応するように設けられる複数のキャビティ32と、各キャビティ32に個別に対応するように設けられる複数のアクチュエーター33と、を備える。アクチュエーター33は、例えば通電によって収縮変形する圧電素子であって、アクチュエーター33の駆動(通電)によってキャビティ32の容積を拡大させた後、通電を停止すると、キャビティ32は復元変形する反動で容積が減少するように変形する。すると、容積が減少したキャビティ32から勢いよくノズル12に流出した液体が、ノズル12から液滴となって噴射される。
【0029】
ここで、液体噴射部13が複数種類の液体を噴射する場合、液体噴射部13は、一の液体を噴射する複数のノズル12からなるノズル群Nを、液体の種類毎に複数有する。ノズル群Nとは、一の共通液室31から液体が供給されるノズル12のグループをいう。ノズル群Nは、例えば幅方向Xに沿って並ぶ多数のノズル12からなる1または2以上のノズル列によって構成することができる。
【0030】
ワイピング装置41は、液体噴射部13及び保護部材51を払拭する払拭部材42と、払拭部材42を保持する保持部材43と、幅方向Xに沿って保持部材43を案内する案内軸44と、案内軸44を支持する支持機構45と、支持機構45を搬送方向Yに沿って移動させる移動装置46と、を備える。支持機構45は、案内軸44を噴射方向Zに沿って移動させることにより、噴射方向Zにおける払拭部材42の位置を変更可能な構成であることが好ましい。払拭部材42は、例えば弾性変形可能な樹脂からなる板状部材または液体を吸収可能な布等の吸収部材で構成される。
【0031】
ここで、液体噴射部13が所定のサイズの液滴を噴射した瞬間には、その目的のサイズの液滴とノズル12との間に、糸を引くように微細な液滴が生じる。そして、その微細な液滴はミストとなって周囲に漂い、開口面19a等に付着する。開口面19aに付着した液体の量が多くなると、その液体が媒体Sに垂れ落ちたり、浮き上がった媒体Sが液体に接触したりして、媒体Sが汚れてしまうことがある。
【0032】
また、開口面19aに付着した液体がノズル12付近に溜まると、ノズル12から噴射された液滴が溜まった液体に接触して、液滴の飛翔方向が変化してしまうことがある。さらに、紙からなる媒体Sの搬送に伴って飛散した紙粉や塵埃が開口面19aに付着して、液体とまざった状態で固着してしまうことがある。
【0033】
そのため、液体噴射装置11では、液体噴射部13が所定量の液滴を噴射した後や、所定枚数の印刷を行った後などに、開口面19aに付着した液体等の異物を除去するメンテナンスとして、ワイピング装置41が液体噴射部13を払拭するワイピングを行う。なお、ワイピングを行う際には、移動装置46が支持機構45を搬送方向Yにおいて液体噴射部13と対応する記録位置に移動させた上で、払拭部材42を支持機構45とともに案内軸44に沿って幅方向Xに移動させる。
【0034】
ワイピングを行う前には、支持機構45が案内軸44の噴射方向Zにおける位置を調整することにより、払拭部材42の液体噴射部13に対する接触圧を調整するとよい。また、払拭は、払拭部材42が幅方向Xに沿って1回または複数回往復移動して行うこともできるし、払拭部材42の往路移動または復路移動のみによって行うこともできる。
【0035】
このようなワイピングを行う場合には、本実施形態のように移動装置46によって払拭部材42を記録位置に移動させてもよいし、ラインヘッド17を記録位置から払拭部材42の移動領域(例えば、記録位置より搬送方向Y上流の領域)に移動させてワイピングを行ってもよい。
【0036】
図2に示すように、液体噴射部13は、ノズル12が貫通形成されたノズルプレート19と、ノズルプレート19を押さえるための固定枠20と、を有する。本実施形態において、液滴を噴射するノズル12の開口を噴射口12aとし、液体噴射部13において、噴射口12aが開口するノズルプレート19の外面(下面)を開口面19aとする。開口面19aには、噴射口12aに適切にメニスカス(表面張力によって凹状に湾曲した液面M)を形成したり、汚れの付着を抑制したりするために、撥液膜が設けられている。
【0037】
液体噴射部13の開口面19aには、媒体Sの幅方向(液体噴射部13の並ぶ方向である行方向)に同種の液体を噴射するノズル列の噴射口12aが並ぶ。また、液体噴射部13の開口面19aには、搬送方向Yに沿って、異なる液体を噴射する複数(例えば、4つ)の噴射口12a(ノズル列)が並ぶ。固定枠20には、ノズル列ごとまたはノズル群ごとに開口面19aを露出させるように、複数(本実施形態では4つ)の開口部20aが設けられる。
【0038】
ここで、液体噴射部13のワイピングを行う場合には、固定枠20及び開口面19aを払拭することになるが、開口面19aを繰り返し払拭すると、撥液膜に傷がつくなどして、液滴の噴射精度が低下したり、異物がつきやすくなったりすることがある。そこで、本実施形態では、液体噴射部13が液滴を噴射するときに、媒体Sと開口面19aの間に保護部材51を配置して、開口面19aにミスト等の異物が付着するのを抑制する。
【0039】
保護部材51は、液体噴射部13が噴射口12aから噴射する液滴Drを通過させる通過開口52を有して、少なくとも液体噴射部13が媒体Sに対して液滴Drを噴射するときに、媒体Sと開口面19aとの間に配置される。保護部材51の通過開口52は、1または複数の噴射口12aに対応するように設けられる。
【0040】
本実施形態の保護部材51において、通過開口52は、各ノズル列または各ノズル群に対応するように、幅方向Xが長手方向となるように形成される(図6及び図7を併せて参照)。なお、通過開口52は、板状の保護部材51に設けられる貫通孔でなくてもよく、保護部材51の端部から延びる切り欠きであってもよい。ただし、通過開口52は、液滴Drを通過させる開口面積を確保しつつも、開口面19aの露出面積ができるだけ小さくなるように、その開口面積を小さく設定することが好ましい。例えば、通過開口52の開口面積は、固定枠20における開口部20aの開口面積よりも小さくすることが好ましい。
【0041】
液体噴射部13が媒体Sに対して液滴Drを噴射するときには、噴射方向Zにおいて噴射口12aと通過開口52が並ぶように、保護部材51が配置される。なお、このときの保護部材51の位置(図2に示す位置)を保護位置という。
【0042】
液体噴射部13が媒体Sに対して液滴Drを噴射するときには、媒体Sを支持するための支持部材55が記録位置に配置される。そのため、保護部材51は、液体噴射部13が媒体Sに対して液滴Drを噴射するときに、支持部材55と開口面19aとの間に配置されるともいえる。なお、ワイピングを記録位置で行う場合、支持部材55はワイピング時には記録位置から別の位置に退避可能な構成とするとよい。
【0043】
媒体Sに対する液滴Drの噴射時に、保護部材51は、噴射方向Zにおいて媒体S及び開口面19aの両方から離れた位置であって、媒体Sよりも開口面19aに近い位置に配置されることが好ましい。
【0044】
本実施形態では、保護部材51は、媒体Sと開口面19aの間に配置されたときに開口面19aとの間に隙間を有して開口面19aと対向する保護面53と、保護面53の反対側の面である受容面54と、を有する。保護面53及び受容面54は、必ずしも平坦面でなくてもよく、例えば、液体を保持するための溝や凹凸を有していてもよい。
【0045】
保護部材51は、液体噴射部13の開口面19aとの間に隙間を有して配置された場合に、保護部材51の媒体S側の部分である受容面54が、液体噴射部13側の部分である保護面53よりも、撥液性が高くなるように、表面処理がされることが好ましい。保護部材51と開口面19a及び媒体Sとの間に隙間があると、液滴Drの噴射時に生じるミストが保護部材51の保護面53及び受容面54に付着するが、受容面54の撥液性が高いと、受容面54に付着した液体が通過開口52等を通じて保護面53側に移動しやすくなる。その結果、受容面54に液体が溜まりにくくなり、受容面54に付着した液体により媒体Sが汚れてしまう、という事態が発生しにくくなるためである。
【0046】
液体噴射装置11は、保護部材51を移動させる移動機構50を備えることが好ましい。また、移動機構50により、保護部材51を噴射方向Zに沿って移動可能な構成として、開口面19aに対する距離を変更するようにしてもよい。また、保護部材51は、移動機構50により、搬送方向Yまたは幅方向Xに移動可能な構成としてもよい。このようにすれば、媒体Sの厚さに応じて保護部材51を噴射方向Zに沿って移動させたり、保護部材51を記録位置から退避させたりすることが可能になる。
【0047】
なお、保護部材51と液体噴射部13の相対位置については、液体噴射部13を移動させることによって変更する構成にすることもできる。液体噴射部13が移動する構成を採用した場合には、ワイピングの際にも、噴射方向Zにおいて払拭部材42を移動させることなく、液体噴射部13を移動させることによって、接触圧を調整することが可能になる。
【0048】
ここで、保護部材51と液体噴射部13が相対移動する際には、保護部材51と液体噴射部13が摺接することがあってもよいが、保護部材51と液体噴射部13が離れた状態で移動する方が好ましい。保護部材51が液体噴射部13に接触した状態で移動すると、保護部材51の摺接により液体噴射部13に傷がついたり、保護部材51と液体噴射部13の間に異物が挟まったりして、好ましくないためである。なお、ノズルプレート19には固定枠20が重ねられているが、固定枠20が異物より薄い場合、保護部材51が摺接すると、保護部材51または液体噴射部13に付着した異物が開口面19aに接触した状態で引きずられ、開口面19aに傷がつくこともある。
【0049】
図3に示すように、液体噴射部13が液滴を噴射しないときに、保護部材51の通過開口52が形成されていない保護面53が噴射口12aと対向した状態で液体噴射部13の固定枠20に接触する位置である閉位置(図3に示す位置)に保護部材51を移動させてもよい。このように、液体噴射部13の噴射口12aを覆う閉位置に保護部材51を配置すると、液体噴射部13が液滴を噴射しないときに、ノズル12の乾燥を抑制することが可能になる。これにより、ノズル12の乾燥によってノズル12が目詰まりしたり、ノズル12内で液体が増粘したりすることに起因する噴射不良が発生しにくくなる。
【0050】
または、図4に示すように、液体噴射部13が液滴を噴射しないときに、保護部材51の通過開口52が形成されていない保護面53が噴射口12aと対向した状態で液体噴射部13の固定枠20に近接するが接触しない位置である対向位置(図4に示す位置)に保護部材51を配置してもよい。
【0051】
そして、保護部材51が対向位置に配置されたときに、圧力調整機構16(図1参照)の加圧機能により、噴射口12aに液体を供給する液体流路18内の液体を加圧して、噴射口12aから液面Mを凸状に膨出させる。すると、膨出した液体が保護面53に付着するので、噴射口12aと保護面53との間の隙間を液体でシールして、ノズル12の乾燥を抑制することができる。
【0052】
なお、液体噴射装置11が圧力調整機構16(加圧機構)を備えない場合には、対向位置にある保護部材51の保護面53に液体噴射部13が液滴を噴射して、その液滴によって、噴射口12aと保護面53との間の隙間をシールするようにしてもよい。ただし、噴射口12aから液面を膨出させて保護面53に付着させるようにすると、保護面53と液体で噴射口12aをシールするときに、ノズル12内に気泡が混入することを抑制することができるので、好ましい。
【0053】
このように、保護面53に液体を付着させる場合などには、保護部材51は保護面53に撥液膜を有する構成としてもよい。これにより、保護部材51の保護面53に液体が固着することが抑制されるためである。また、液体噴射部13が複数種類の液体を噴射する場合には、保護面53が付着した液体をはじくことにより、保護面53上で異なる液体が混ざって、噴射する液体とは異なる種類の液体がノズル12に混入することを抑制することができる。
【0054】
なお、保護部材51を用いたノズル12の乾燥抑制は、特に液体噴射装置11の電源オフ時など、液滴の吐出を長時間行わない時に行うと、特に効果的である。そして、保護部材51を用いてノズル12の乾燥抑制をすることができれば、乾燥抑制のために、ノズル12を覆うキャップなどを設ける必要がない。
【0055】
図5に示すように、保護部材51は、移動機構50により、液滴の噴射方向Zに噴射口12aと通過開口52が並ぶように開口面19aと対向する保護位置(図5に二点鎖線で示す位置)と、保護位置よりも液体噴射部13から離れた退避位置(図5に実線で示す位置)との間で、液体噴射部13に対して相対移動可能な構成とすることが好ましい。
【0056】
保護位置は記録位置でもあるので、例えば保護部材51が保護位置から搬送方向Yに沿って移動した位置を退避位置とする。そして、移動装置46によって払拭部材42を記録位置から搬送方向Yに沿って移動させるようにすると、退避位置において払拭部材42による保護部材51のワイピングを実行することができる。
【0057】
すなわち、移動装置46が支持機構45を退避位置にある保護部材51と対応する位置に移動させた上で、払拭部材42を支持機構45とともに案内軸44に沿って幅方向Xに移動させて、受容面54に付着した液体等の異物を払拭する。保護部材51の払拭は、払拭部材42の1回または複数回の往復移動に伴って行うこともできるし、払拭部材42の往路移動または復路移動に伴って行うこともできる。
【0058】
なお、ワイピング装置41は、退避位置において保護部材51の受容面54を払拭可能な払拭部材42に加えて、保護部材51の保護面53を清掃する清掃部材47を備えるようにしてもよい。清掃部材47は、払拭部材42と同様に、弾性変形可能な樹脂からなる板状部材であってもよいし、液体を吸収可能な布または多孔質材等の吸収部材であってもよい。また、清掃部材47は、払拭部材42と同様に、退避位置において幅方向Xに移動しながら保護部材51の保護面53を払拭するようにしてもよい。
【0059】
あるいは、図5に示すように、保護部材51の保護位置から退避位置への移動経路(図5に一点鎖線で示す)上に清掃部材47を配置して、保護部材51が保護位置と退避位置との間で移動する過程で、清掃部材47が保護面53に摺接して清掃(ワイピング)を行うようにしてもよい。
【0060】
また、図6に示すように、液体噴射部13が記録位置において媒体Sに記録処理の実行をしている途中に、保護部材51を保護位置(記録位置)から退避位置に移動させて、清掃部材47による保護面53の清掃及び払拭部材42による受容面54の払拭を行ってもよい。このようにすれば、液体噴射部13が連続して記録処理を行って大量のミストが発生しても、そのミストを保護部材51に付着させて清掃部材47及び払拭部材42により除去する、というメンテナンス作業を記録処理の実行中に行うことができる。そのため、液体噴射部13のワイピングを行うために、記録処理を中断する必要がない。
【0061】
なお、液体噴射部13にミストが付かないように保護部材51で保護していても、保護部材51と液体噴射部13の間に隙間があると、液体噴射部13にミスト等が付着することはある。そのため、記録処理が終了した時や、記録処理において液滴の大きさが異なる噴射モード毎に設定された印刷枚数または液滴の吐出数が閾値を超えた時、あるいは、定期的なメンテナンスの実行時などには、液体噴射部13を払拭部材42で払拭するとよい。なお、制御部100が印刷枚数または液滴の吐出数をカウントするカウンターを有して、そのカウント値を閾値と比較する制御を行う場合には、払拭部材42による払拭の実行の都度、カウンターのカウント値をリセットするようにするとよい。
【0062】
液体噴射部13のワイピングを行う場合には、図7に示すように、保護部材51を退避位置に移動させるとともに、払拭部材42を記録位置と対応する位置に移動させて、液体噴射部13を払拭するとよい。なお、保護部材51を払拭するときと液体噴射部13を払拭するときとで、払拭部材42の噴射方向Zにおける位置を支持機構45によって調整することにより、払拭部材42の接触圧を適切に設定することができる。
【0063】
次に、以上のように構成された液体噴射装置11の作用について説明する。
本実施形態の液体噴射装置11は保護部材51を備えるので、液体噴射部13にミスト等の異物が付着することを抑制することができる。また、これにより、液体噴射部13に対するワイピングの頻度を低下させることができる。そのため、ワイピングによって開口面19aの撥液膜にかかる負荷が低減される。
【0064】
そして、液体噴射部13の代わりにミスト等を受容した保護部材51をワイピング装置41によって払拭(清掃)することで、保護部材51に付着した異物によって媒体Sが汚れないようにすることができる。また、液体噴射部13が液滴を噴射しないときには、液体噴射部13の噴射口12aを覆うように保護部材51の保護面53を液体噴射部13に接触させたり、保護部材51と液体で噴射口12aをシールしたりすることにより、ノズル12の乾燥を抑制することができる。
【0065】
このように、保護部材51は、液滴を噴射する時としない時、あるいは、液体噴射部13または保護部材51の払拭を行うときなどで、それぞれ異なる位置に移動しうるが、液体噴射部13から離れた状態で相対移動することにより、開口面19aの撥液膜にかかる負荷を低減することが可能になる。
【0066】
上記実施形態によれば、以下のような効果を得ることができる。
(1)液体噴射部13が媒体Sに対して液滴Drを噴射するときに媒体Sと開口面19aとの間に保護部材51が配置されるので、液滴Drの噴射に伴って生じたミスト等の異物は、開口面19aに付着する前に、保護部材51に付着する。そのため、液滴Drの噴射口12aが開口する開口面19aに対する異物の付着を抑制することができる。
【0067】
(2)液滴Drの噴射に伴って生じたミスト等は、液体噴射部13と媒体Sとの間に配置された保護部材51に付着するが、払拭部材42が退避位置において保護部材51を払拭することにより、保護部材51に付着した異物を除去することができる。そして、開口面19aの代わりに保護部材51でミスト等を受容して、その保護部材51を払拭することにより、開口面19aを払拭する頻度を低下させることができるので、払拭によって開口面19aにかかる負荷を低減することができる。
【0068】
(3)保護部材51において、媒体S側の部分の方が開口面19a側の部分のよりも撥液性が高くなるようにすると、液滴Drの噴射に伴って生じたミストが保護部材51の媒体S側の部分に付着したとしても、その液体を、通過開口52等を通じて保護部材51の開口面19a側に移動させることができる。そのため、保護部材51の媒体S側の部分(受容面54)に付着した液体によって媒体Sが汚れないようにすることができる。
【0069】
(4)清掃部材47が保護部材51の保護面53を清掃することにより、保護面53に付着した異物が開口面19aに付着しないようにすることができる。
(5)液体噴射部13が液滴Drを噴射しないときに、保護部材51が噴射口12aを覆う閉位置に配置されることにより、噴射口12aの乾燥を抑制することができる。
【0070】
(6)保護部材51が対向位置に配置されたときに噴射口12aから液体を膨出させると、膨出した液体が保護面53に付着するので、噴射口12aと保護面53との間の隙間を液体でシールして、噴射口12aの乾燥を抑制することができる。
【0071】
(7)保護部材51の保護面53が撥液膜を有する場合には、保護面53に液体が付着しても、その液体が保護面53に固着することを抑制することができる。また、液体噴射部13が複数種類の液体を噴射する場合には、保護面53が付着した液体をはじくことにより、保護面53上で異なる液体が混ざって、噴射する液体とは異なる種類の液体がノズル12に混入することを抑制することができる。
【0072】
なお、上記実施形態は以下に示す変更例のように変更してもよい。また、上記実施形態と各変更例とは、適宜に組み合わせて実現することができる。
・液体噴射部13のワイピングを行うワイピング装置とは別に、保護部材51の払拭または清掃を行うワイピング装置を設けてもよい。
【0073】
・液体噴射装置11は印刷範囲が媒体Sの幅全体に亘るラインヘッドを有するものに限らない。
例えば、図8に示すように、液体噴射部13を保持するキャリッジ56がガイド軸57に沿って幅方向Xに移動しながら行う液体の噴射と、媒体Sの搬送方向Yへの搬送とを交互に行うシリアルタイプのものであってもよい。この場合には、図8に二点鎖線で示すように、液体の噴射時にキャリッジ56の移動に合わせて保護部材51を幅方向Xに移動させる移動機構50を設けてもよいし、印刷範囲の幅全体に亘る保護部材51を配置しておいてもよい。
【0074】
図8に示すように、清掃部材47を払拭部材42と同様の保持部材48で保持する構成として、払拭方向(幅方向X)と交差する方向(搬送方向Y)に延びる清掃部材47及び払拭部材42が互いに向き合った状態で噴射方向Zに並ぶように配置してもよい。この場合には、保護部材51を幅方向Xに移動させて図8に実線で示すように清掃部材47と払拭部材42の間を通過させることにより、保護面53と受容面54のワイピングを同時に行うことができる。
【0075】
図9に示すように、保護部材51をシート状にしてもよい。この場合には、液体噴射部13に対して保護部材51を相対移動させる移動機構50は、所定の間隔で通過開口52が並ぶシート状の保護部材51を巻き出すローラー50Fと、保護部材51を巻き取るローラー50Sとによって構成することができる。この構成によれば、保護部材51がミスト等で汚れた場合には、ローラー50F,50Sの回転により汚れた部分をローラー50Sに巻き取ればよいので、保護部材51の払拭または清掃を行うワイピング装置を設けなくてもよい。
【0076】
なお、この構成において、液体噴射部13の払拭を行う場合には、保護部材51を液体噴射部13から離れた位置に退避させてもよい。あるいは、シート状の保護部材51の所定の位置に開口面19a全体を露出させる大きな払拭用の開口を設けておき、ローラー50F,50Sの回転によりその払拭用の開口が噴射方向Zにおいて開口面19aと並ぶように配置した状態で、払拭用の開口を通じて、液体噴射部13の払拭を行うようにしてもよい。
【0077】
・液体噴射装置11は、供給流路15と液体流路18の間で液体を循環させる循環流路と、循環流路において液体を循環させるための循環ポンプとを備えるようにしてもよい。この構成は、例えば液体であるインクが顔料を含む顔料インクであるなど、沈降性の成分を含む液体を用いる場合に、循環により成分の沈降を抑制することができるために、好ましい。また、液体が沈降性の成分を含まない場合にも、液体を循環させる流路の途中に気泡のトラップを設けておけば、液体の循環に伴って気泡を回収できるので、好ましい。このような循環ポンプを備える場合には、循環ポンプを噴射口12aから液面Mを膨出させる加圧機構として機能させてもよい。すなわち、循環ポンプを駆動して液体を循環させることによって、液体流路18の液体を加圧してもよい。
【0078】
・液体噴射装置11が加圧機構を備える場合には、加圧により噴射口12aから液面Mを膨出させた状態でワイピングを行ってもよい。この場合には、ワイピング時に、払拭部材42によってノズル12内に気泡などの異物が押し込まれることがないので、好ましい。また、液体噴射装置11が加圧機構を備える場合には、加圧によりノズル12から液体を排出させる加圧クリーニングを所定のタイミングで行うようにしてもよい。この場合には、加圧クリーニングによって、液体噴射部13に混入した気泡等の異物を排出することができる。このように、加圧機構を複数の用途に用いることにより、装置の複雑化を抑制しつつ、多様なメンテナンス動作を実行することができる。
【0079】
・ノズル12に混入した気泡等の異物を排出するためのメンテナンス動作として、印刷動作とは別にノズル12から液滴を吐き捨てるフラッシングを行ってもよい。この場合には、フラッシングによって排出された液滴を受容するフラッシングボックスを別途設けてもよいし、保護部材51の保護面53によってフラッシングの液滴を受容するようにしてもよい。なお、保護部材51でフラッシングの液滴を受容する際には、保護面53で受容された液体が開口面19aに付着しないように、噴射方向Zにおける保護面53と開口面19aの距離を、印刷時よりも長くすることが好ましい。
【0080】
・液体噴射部が噴射する液体はインクに限らず、例えば機能材料の粒子が液体に分散又は混合されてなる液状体などであってもよい。例えば、液晶ディスプレイ、EL(エレクトロルミネッセンス)ディスプレイ及び面発光ディスプレイの製造などに用いられる電極材や色材(画素材料)などの材料を分散または溶解のかたちで含む液状体を噴射して記録を行う構成にしてもよい。
【0081】
・媒体は用紙に限らず、プラスチックフィルムや薄い板材などでもよいし、捺染装置などに用いられる布帛であってもよい。また、媒体はシート状または板状のものに限らず、例えばTシャツなどの衣服や、食器または文具などの立体物であってもよい。
【符号の説明】
【0082】
11…液体噴射装置、12…ノズル、12a…噴射口、13…液体噴射部、14…液体供給源、15…供給流路、16…圧力調整機構、17…ラインヘッド、18…液体流路、19…ノズルプレート、19a…開口面、20…固定枠、20a…開口部、21…圧力室、22…向弁、23…可撓膜、24…空気室、25…通気流路、26…ポンプ、27…開閉弁、31…共通液室、32…キャビティ、33…アクチュエーター、41…ワイピング装置、42…払拭部材、43…保持部材、44…案内軸、45…支持機構、46…移動装置、47…清掃部材、48…保持部材、50…移動機構、50F…ローラー、50S…ローラー、51…保護部材、52…通過開口、53…保護面、54…受容面、55…支持部材、56…キャリッジ、57…ガイド軸、100…制御部、M…液面、N…ノズル群、S…媒体、X…幅方向、Y…搬送方向、Z…噴射方向、Dr…液滴。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9