【実施例】
【0034】
以下、実施例等により本発明の実施形態をより具体的に記載する。
【0035】
(エステル交換油イの調製)
ヤシ油(ヨウ素価9)50重量%、パームステアリン(ヨウ素価40)40重量%、および高エルシン酸ナタネ極度硬化油(ベヘン酸含有量45重量%)10重量%からなる配合油を、ナトリウムメチラートによりランダムエステル交換を行いエステル交換油イを得た。本発明のエステル交換油A−1として利用した。
【0036】
(エステル交換油ロの調製)
パームスーパーオレイン(ヨウ素価67)をナトリウムメチラートによりランダムエステル交換を行い、エステル交換油ロを得た。本発明のエステル交換油A−2として利用した。
【0037】
(エステル交換油ハの調製)
パームオレイン(ヨウ素価56)を、ナトリウムメチラートによりランダムエステル交換を行いエステル交換油ハを得た。
【0038】
(エステル交換油ニの調製)
パーム油(ヨウ素価52)50重量%およびパーム核オレイン(ヨウ素価25)50重量%からなる配合油を、ナトリウムメチラートによりランダムエステル交換を行いエステル交換油ニを得た。
【0039】
(エステル交換油ホの調製)
パームオレイン(ヨウ素価56)70重量%およびパーム油(ヨウ素価52)30重量%からなる配合油を、ナトリウムメチラートによりランダムエステル交換を行い、得られたエステル交換油92重量%と高エルシン酸菜種極度硬化油8重量%を混合し、エステル交換油ホを得た。
(油脂組成物、ショートニングの調製)
実施例1〜2、比較例1〜4
以下の「ショートニング調製方法」に記載の方法により、各ショートニングを調製した。「ショートニング調製方法」
1.配合に記載の油脂を60〜70℃で融解し、乳化剤を混合、溶解して「調合油」とした。
2.調合油を油中水型乳化油脂組成物製造装置(コンビネーター)へ供し、油中水型乳化油脂組成物を得た。
3.ダンボールケースへ充填し、3〜7℃にて冷蔵した。
【0040】
実施例1
上記エステル交換油ニ30重量部、エステル交換油ホ30重量部、パーム軟質油(ヨウ素価67)40重量部、レシチン0.1重量部を融解し、乳化剤としてソルビタントリステアレート(商品名:ポエムS−65V、理研ビタミン株式会社製、以下STSと略す。)0.5重量部を混合、溶解して、上記調製方法によりショートニングタイプの本発明の油脂組成物を得た。
該油脂組成物の油脂のSFC値は、20℃で18.6%、30℃で6.7%、35℃で2.2%であった。
【0041】
上記で得られたショートニングを使用し、下記の配合、製法によりクッキーを調製した。 また、下記配合、製法によりテンパリングタイプのチョコレートを調製した。
こうして、調製したショートニング及びチョコレートを用いて、複合菓子を下記のように調製し、複合菓子の白色化評価方法に供し、複合菓子の焼菓子表面の白色化状態を下記評価基準に従って評価し、その結果を表1に示した。
【0042】
(クッキー配合)
薄力粉95重量部、ショートニング60重量部、上白糖35重量部、全卵12重量部、ココアパウダー5重量部
【0043】
(クッキー調整法)
1.ショートニング対粉60重量部、上白糖対粉35重量部を混合し、ケンミキサーを使用して攪拌し、比重を0.85まで下げた。
2.攪拌しながら、卵12重量部を加え、比重を0.8にした。
3.薄力粉95重量部及びココアパウダー5重量部を加え、軽く混ぜた後に、生地を冷蔵庫(3−7℃)で1時間以上休ませた。4.冷蔵庫で休ませた生地を5mm厚に展延し、型でぬいて180℃で15分焼成し、クッキー(一枚約7.5g)を得た。
【0044】
(チョコレート配合、製法)
砂糖42.8重量部、カカオマス24.3重量部、全脂粉乳11.1重量部、ココアバター10.8重量部、メラノNEWSS7(不二製油株式会社製のココアバター代用脂)10重量部、レシチン0.4重量部から成る配合で、常法通り、溶解し、ロール掛け、コンチング処理を行いチョコレートを得た。
【0045】
(複合菓子の調製法及び複合菓子の白色化評価方法)
チョコレートを湯煎にて溶解し、32℃でチョコシードA(不二製油株式会社製)を0.2重量部を加えた後均質化した。
2.焼成したクッキーを20℃で20分間冷却後に、溶解したチョコレートにクッキー表面が見える程度に埋没させ、チョコレート複合菓子を得た。
。(7.5gのクッキーに対し、22.5gのチョコレート)。
3. 得られた複合菓子を下記の3条件下で保存試験を行い、クッキーの白変化状態を確認した。評価は、焼き菓子表面の状態を熟練した評価者3名で確認し、3名の合意により点数付けした。
条件1:18℃/27℃サイクル(12時間/12時間)の温度サイクル
条件2:30℃、2時間放置後、5℃一定保存
条件3:30℃、2時間放置後、17℃一定保存
(評価基準)
1点:調製直後と変化がない状態
2点:ほぼ変化はないが焼き菓子表面に油脂結晶の小さな斑点がみられる状態
3点:全体に僅かな白色化が見られる状態
4点:全体に明確に白色化が確認できる状態
5点:全体が完全に白色化し、焼き菓子が白くカサついた状態
3点以下を合格とし、3点に留まる日数の長さで白色化抑制効果を対比した。
また、焼成後の焼菓子食感は、焼成後に20℃、1日保存後、上記評価者3名で評価した。
(評価基準)
◎:ソフトな食感で口溶け非常に良好。
○:ややソフトな食感で口溶け良好。
△:やや硬い食感で、やや口溶けが悪い。
×:硬い食感で口溶けが悪い。
【0046】
実施例2
上記エステル交換油イ25重量部、エステル交換油ロ60重量部、精製米糠油15重量部、レシチン0.1重量部を融解し、乳化剤としてSTS0.5重量部を混合、溶解して、上記調製方法によりショートニングタイプの本発明の油脂組成物を得た。
該油脂組成物の油脂のSFC値は、20℃で19.0%、30℃で6.4%、35℃で1.4%であった。
上記で得られたショートニングを使用し、実施例1同様に焼菓子及び複合菓子を調製し、複合菓子の白色化評価方法に供し、複合菓子の焼菓子表面の白色化状態を評価した。その結果を表1に示した。
【0047】
実施例3
上記エステル交換油イ35重量部、エステル交換油ロ60重量部、精製米糠油5重量部、レシチン0.1重量部を融解し、乳化剤としてSTS0.5重量部を混合、溶解して、上記調製方法によりショートニングタイプの本発明の油脂組成物を得た。
該油脂組成物の油脂のSFC値は、20℃で24.6%、30℃で8.0%、35℃で2.4%であった。
上記で得られたショートニングを使用し、実施例1同様に焼菓子及び複合菓子を調製し、複合菓子の白色化評価方法に供し、複合菓子の焼菓子表面の白色化状態を評価した。その結果を表1に示した。
【0048】
比較例1
実施例2において、乳化剤としてSTSを無添加に変更して、実施例1同様に焼菓子及び複合菓子を調製し、複合菓子の白色化評価方法に供し、複合菓子の焼菓子表面の白色化状態を評価した。その結果を表1に示した。
【0049】
比較例2
実施例3において、乳化剤としてSTSを無添加に変更して、実施例1同様に焼菓子及び複合菓子を調製し、複合菓子の白色化評価方法に供し、複合菓子の焼菓子表面の白色化状態を評価した。その結果を表1に示した。
【0050】
比較例3
上記エステル交換油ハ80重量部、エステル交換油ニ20重量部及びレシチン0.1重量部を融解し、乳化剤としてSTS0.5重量部を混合、溶解して、上記調製方法によりショートニングタイプの本発明の油脂組成物を得た。
該油脂組成物の油脂のSFC値は、20℃で27.8%、30℃で11.4%、35℃で6.1%であった。
上記で得られたショートニングを使用し、実施例1同様に焼菓子及び複合菓子を調製し、複合菓子の白色化評価方法に供し、複合菓子の焼菓子表面の白色化状態を評価した。その結果を表1に示した。
【0051】
比較例4
上記エステル交換油ホ100重量部及びレシチン0.1重量部を融解し、乳化剤としてSTS0.5重量部を混合、溶解して、上記調製方法によりショートニングタイプの本発明の油脂組成物を得た。
該油脂組成物の油脂のSFC値は、20℃で38.0%、30℃で12.1%、35℃で7.1%であった。
上記で得られたショートニングを使用し、実施例1同様に焼菓子及び複合菓子を調製し、複合菓子の白色化評価方法に供し、複合菓子の焼菓子表面の白色化状態を評価した。その結果を表1に示した。
【0052】
実施例1〜2及び比較例1〜4のテスト結果を、表1に示す。
表1
【0053】
エステル交換油二及びエステル交換油ホを含有し、STSを添加した実施例1、エステル交換油イ(本発明の油脂A−1)及びエステル交換油ロ(本発明の油脂A−2)を含有し、STSを添加した実施例2及び実施例3は、複合菓子の焼菓子表面の白色化を顕著に抑制していた。一方、比較例1及び比較例2のSTS無添加品は複合菓子の焼菓子表面全体に僅かな白色化が見られるものであった。また、本発明のエステル交換油でないエステル交換油ハ及びエステル交換油ニを配合し、STSを添加した比較例3及び比較例4では、いずれも複合菓子の焼菓子表面の白色化の抑制が不十分であった。また、比較例3及び比較例4は、焼菓子食感もやや硬い傾向であった。
【0054】
実施例4
実施例2において、乳化剤としてSTSの混合量を0.5重量部から1.5重量部に変更して、実施例1同様に油脂組成物、焼菓子及び複合菓子を調製し、複合菓子の白色化評価方法に供し、複合菓子の焼菓子表面の白色化状態を評価した。その結果を表2に示した。
【0055】
実施例5
実施例2において、乳化剤としてSTSの混合量を0.5重量部から2.5重量部に変更して、実施例1同様に油脂組成物、焼菓子及び複合菓子を調製し、複合菓子の白色化評価方法に供し、複合菓子の焼菓子表面の白色化状態を評価した。その結果を表2に示した。
【0056】
実施例6
実施例2において、乳化剤としてSTS0.5重量部に代えてSYグリスターTHL−15(阪本薬品工業株式会社製、以下THL−15と略す。)0.5重量部を混合し、実施例1同様に油脂組成物、焼菓子及び複合菓子を調製し、複合菓子の白色化評価方法に供し、複合菓子の焼菓子表面の白色化状態を評価した。その結果を表2に示した。
【0057】
実施例7
実施例2において、乳化剤としてSTS0.5重量部に代えてSYグリスターTHL−17(阪本薬品工業株式会社製、以下THL−17と略す。)を混合し、実施例1同様に油脂組成物、焼菓子及び複合菓子を調製し、複合菓子の白色化評価方法に供し、複合菓子の焼菓子表面の白色化状態を評価した。その結果を表2に示した。
【0058】
比較例5
実施例2において、乳化剤としてSTS0.5重量部に代えて、構成脂肪酸としてベヘン酸が主体として結合したSYグリスターHB750(阪本薬品工業株式会社製、以下HB750と略す。)を混合し、実施例1同様に油脂組成物、焼菓子及び複合菓子を調製し、複合菓子の白色化評価方法に供し、複合菓子の焼菓子表面の白色化状態を評価した。その結果を表2に示した。
【0059】
比較例6
実施例2において、乳化剤としてSTS0.5重量部に代えて、構成脂肪酸としてベヘン酸が主体として結合したSYグリスターDDB750(阪本薬品工業株式会社製、以下DDB750と略す。)を混合し、実施例1同様に油脂組成物、焼菓子及び複合菓子を調製し、複合菓子の白色化評価方法に供し、複合菓子の焼菓子表面の白色化状態を評価した。その結果を表2に示した。
【0060】
実施例4〜7及び比較例5〜6のテスト結果を実施例2と対比して、表2に示す。
表2
【0061】
表2に示すように、実施例2と同一配合の油脂Aに対し、STSを0.5〜2.5%混合した混合した実施例2、実施例4〜5はいずれも優れた焼菓子表面の白色化抑制効果を示した。THL−15またはTHL−17混合の実施例6〜7は、STS混合品よりその抑制効果が低いものであったが、やはり良好な抑制効果を示した。結晶析出促進剤として使用されるHB750またはDDB750混合品である比較例5〜6は、白色化抑制効果は顕著なものでなかった。