特許第6606999号(P6606999)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6606999海洋構造物における居住区構造体、海洋構造物、海洋構造物における居住区構造体の建造方法、及び、海洋構造物の建造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6606999
(24)【登録日】2019年11月1日
(45)【発行日】2019年11月20日
(54)【発明の名称】海洋構造物における居住区構造体、海洋構造物、海洋構造物における居住区構造体の建造方法、及び、海洋構造物の建造方法
(51)【国際特許分類】
   B63B 29/02 20060101AFI20191111BHJP
   B63B 29/00 20060101ALI20191111BHJP
   B63B 9/06 20060101ALI20191111BHJP
   B63B 15/00 20060101ALI20191111BHJP
   B63B 35/44 20060101ALI20191111BHJP
   B63B 9/00 20060101ALI20191111BHJP
【FI】
   B63B29/02 Z
   B63B29/00 A
   B63B9/06 C
   B63B15/00 Z
   B63B35/44 C
   B63B9/00 Z
【請求項の数】15
【全頁数】27
(21)【出願番号】特願2015-230856(P2015-230856)
(22)【出願日】2015年11月26日
(65)【公開番号】特開2017-95000(P2017-95000A)
(43)【公開日】2017年6月1日
【審査請求日】2018年3月23日
(73)【特許権者】
【識別番号】518144045
【氏名又は名称】三井E&S造船株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001368
【氏名又は名称】清流国際特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】上田 友生
(72)【発明者】
【氏名】井上 直
【審査官】 福田 信成
(56)【参考文献】
【文献】 国際公開第03/085224(WO,A1)
【文献】 特開2014−084080(JP,A)
【文献】 特開昭60−004482(JP,A)
【文献】 特開昭50−131293(JP,A)
【文献】 特公昭46−018661(JP,B1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B63B 29/02
B63B 9/00
B63B 9/06
B63B 15/00
B63B 29/00
B63B 35/44
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の部屋と、通路と、配管および配線およびダクトから構成される部屋設備とを備えた居住区モジュールが上下方向および/または水平方向に複数連結した状態で構成される海洋構造物における居住区構造体であって、
前記居住区モジュール同士が隣接している状態では、前記居住区モジュールの一方における前記通路および前記部屋設備のそれぞれの端部取り合い位置が、前記居住区モジュールの他方の前記通路および前記部屋設備のそれぞれの端部取り合い位置に対向し合う位置になるように規格化されて配置されており、
さらに、前記居住区モジュール同士が連結している状態では、前記通路および前記部屋設備がそれぞれ連結し、
前記居住区モジュールのうちの少なくとも2個以上の居住区モジュールが上下方向に連通する階段構成部を備えており、該階段構成部を備えている前記居住区モジュール同士が積層されている状態では、前記居住区モジュール同士の上方の前記階段構成部の端部取り合い位置が、前記居住区モジュールの下方の前記階段構成部の端部取り合い位置に対向し合う位置になるように規格化されて配置されており、
さらに、前記居住区モジュール同士が積層されて連結している状態では、前記階段構成部によって前記居住区モジュールを上下方向に連通する階段が形成されていることを特徴とする海洋構造物における居住区構造体。
【請求項2】
複数の部屋と、通路と、配管および配線およびダクトから構成される部屋設備とを備えた居住区モジュールが上下方向および/または水平方向に複数連結した状態で構成される海洋構造物における居住区構造体であって、
前記居住区モジュール同士が隣接している状態では、前記居住区モジュールの一方における前記通路および前記部屋設備のそれぞれの端部取り合い位置が、前記居住区モジュールの他方の前記通路および前記部屋設備のそれぞれの端部取り合い位置に対向し合う位置になるように規格化されて配置されており、
さらに、前記居住区モジュール同士が連結している状態では、前記通路および前記部屋設備がそれぞれ連結し、
前記居住区モジュールのうちの少なくとも2個以上の居住区モジュールが上下方向に連通するエレベーター構成部を備えており、該エレベーター構成部を備えている前記居住区モジュール同士が積層されている状態では、前記居住区モジュール同士の上方の前記エレベーター構成部の端部取り合い位置が、前記居住区モジュールの下方の前記エレベーター構成部の端部取り合い位置に対向し合う位置になるように規格化されて配置されており、
さらに、前記居住区モジュール同士が積層されて連結している状態では、前記エレベーター構成部によって前記居住区モジュールを上下方向に連通するエレベーターが形成されていることを特徴とする海洋構造物における居住区構造体。
【請求項3】
複数の部屋と、通路と、配管および配線およびダクトから構成される部屋設備とを備えた居住区モジュールが上下方向および/または水平方向に複数連結した状態で構成される海洋構造物における居住区構造体であって、
前記居住区モジュール同士が隣接している状態では、前記居住区モジュールの一方における前記通路および前記部屋設備のそれぞれの端部取り合い位置が、前記居住区モジュールの他方の前記通路および前記部屋設備のそれぞれの端部取り合い位置に対向し合う位置になるように規格化されて配置されており、
さらに、前記居住区モジュール同士が連結している状態では、前記通路および前記部屋設備がそれぞれ連結し、
階段構成部および/またはエレベーター構成部を備えた前記居住区モジュールであるメインモジュールと、該メインモジュールよりも居住人員数が少ない前記居住区モジュールであるサブモジュールとから構成され、
前記メインモジュール同士の外形寸法は同じに形成されていると共に、前記サブモジュール同士の外形寸法も同じに形成されており、
前記メインモジュール同士は積層状態で連結していると共に、前記サブモジュールは前記メインモジュールに水平方向で連結していることを特徴とする海洋構造物における居住区構造体。
【請求項4】
前記メインモジュールの居住人員数が、前記サブモジュールの居住人員数の整数倍で構成されている請求項3に記載の海洋構造物における居住区構造体。
【請求項5】
前記居住区モジュールの全面、または、他の居住区モジュールの鋼壁にて代用できる場合には他の居住区モジュールとの接合面を除く面全てが鋼壁によって構成された直方体である請求項1〜4のいずれか1項に記載の海洋構造物における居住区構造体。
【請求項6】
前記通路および前記部屋設備のそれぞれの端部取り合いがそれぞれ連結及び取り外しができる機構で構成されていると共に、前記居住区モジュール同士も連結および取り外しができる構成である請求項1〜5のいずれか1項に記載の海洋構造物における居住区構造体。
【請求項7】
前記居住区モジュールの外壁のうちのひとつ以上の外壁が海洋構造物を構成する構造鋼壁に構造的に連続している請求項1〜6のいずれか1項に記載の海洋構造物における居住区構造体。
【請求項8】
前記居住区モジュールの外形寸法の少なくとも1辺の長さ寸法が、前記海洋構造物を構成するロンジテューディナルスティフナ同士の間隔寸法あるいはフレーム同士の間隔寸法の整数倍で形成された状態である請求項1〜7のいずれか1項に記載の海洋構造物における居住区構造体。
【請求項9】
前記居住区モジュール内にサイズおよび/または形状を共通にしてユニット化された前記部屋を2つ以上有する請求項1〜8のいずれか1項に記載の海洋構造物における居住区構造体。
【請求項10】
請求項1〜9のいずれか1項に記載の海洋構造物における居住区構造体を備えたことを特徴とする海洋構造物。
【請求項11】
居住区モジュールを、複数の部屋と、通路と、配管および配線およびダクトから構成される部屋設備とから構成し、かつ、前記居住区モジュール同士が隣接している状態では、前記居住区モジュールの一方における前記通路および前記部屋設備のそれぞれの端部取り合い位置が、前記居住区モジュールの他方の前記通路および前記部屋設備のそれぞれの端部取り合い位置に対向し合う位置になるように規格化して建造し、
この居住区モジュールを上下方向および/または水平方向に複数連結させると共に、連結した前記居住区モジュール同士の前記通路および前記部屋設備をそれぞれ連結することにより居住区構造体を建造し、
前記居住区モジュールのうちの少なくとも2個以上の居住区モジュールに上下方向に連通する階段構成部を設け、該階段構成部が設けられている前記居住区モジュール同士が積層した状態で、前記居住区モジュール同士の上方の前記階段構成部の端部取り合い位置が、前記居住区モジュールの下方の前記階段構成部の端部取り合い位置に対向し合う位置になるように規格化して建造し、
さらに、前記居住区モジュール同士を積層させて連結させて、前記階段構成部によって前記居住区モジュールを上下方向に連通する階段を形成することを特徴とする海洋構造物における居住区構造体の建造方法。
【請求項12】
居住区モジュールを、複数の部屋と、通路と、配管および配線およびダクトから構成される部屋設備とから構成し、かつ、前記居住区モジュール同士が隣接している状態では、前記居住区モジュールの一方における前記通路および前記部屋設備のそれぞれの端部取り合い位置が、前記居住区モジュールの他方の前記通路および前記部屋設備のそれぞれの端部取り合い位置に対向し合う位置になるように規格化して建造し、
この居住区モジュールを上下方向および/または水平方向に複数連結させると共に、連結した前記居住区モジュール同士の前記通路および前記部屋設備をそれぞれ連結することにより居住区構造体を建造し、
前記居住区モジュールのうちの少なくとも2個以上の居住区モジュールに上下方向に連通するエレベーター構成部を設け、該エレベーター構成部が設けられている前記居住区モジュール同士を積層した状態で、前記居住区モジュール同士の上方の前記エレベーター構成部の端部取り合い位置が、前記居住区モジュールの下方の前記エレベーター構成部の端部取り合い位置に対向し合う位置になるように規格化して建造し、
さらに、前記居住区モジュール同士を積層させて連結させて、前記エレベーター構成部によって前記居住区モジュールを上下方向に連通するエレベーターを形成することを特徴とする海洋構造物における居住区構造体の建造方法。
【請求項13】
居住区モジュールを、複数の部屋と、通路と、配管および配線およびダクトから構成される部屋設備とから構成し、かつ、前記居住区モジュール同士が隣接している状態では、前記居住区モジュールの一方における前記通路および前記部屋設備のそれぞれの端部取り合い位置が、前記居住区モジュールの他方の前記通路および前記部屋設備のそれぞれの端部取り合い位置に対向し合う位置になるように規格化して建造し、
この居住区モジュールを上下方向および/または水平方向に複数連結させると共に、連結した前記居住区モジュール同士の前記通路および前記部屋設備をそれぞれ連結することにより居住区構造体を建造し、
階段構成部および/またはエレベーター構成部を設けた前記居住区モジュールであるメインモジュールと、該メインモジュールよりも居住人員数が少ない前記居住区モジュールであるサブモジュールとから構成し、
前記メインモジュール同士の外形寸法を同じに形成すると共に、前記サブモジュール同士の外形寸法も同じに形成し、
前記メインモジュール同士を積層させて連結すると共に、前記サブモジュールを前記メインモジュールに水平方向で連結することを特徴とする海洋構造物における居住区構造体の建造方法。
【請求項14】
前記メインモジュールの居住人員数を、前記サブモジュールの居住人員数の整数倍にする請求項13に記載の海洋構造物における居住区構造体の建造方法。
【請求項15】
請求項11〜14のいずれか1項に記載の海洋構造物における居住区構造体の建造方法を用いて海洋構造物を建造することを特徴とする海洋構造物の建造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、浮体式生産貯蔵積出設備(FPSO)等の海洋構造物において、プロジェクトの違いによる最大居住人員数の増減に対して、居住区画における居住人員数を容易に変更することができる海洋構造物における居住区構造体、海洋構造物、海洋構造物における居住区構造体の建造方法、及び、海洋構造物の建造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
浮体式生産貯蔵積出設備等の海洋構造物では、長期間に亘って特定の洋上設置場所に位置保持されて使用され、投入される海域や採掘する油の性状等によって搭載される生産設備の規模や種類が決まり、この生産設備におけるオペレーションに必要な人員等から海洋構造物の最大居住人員(最大搭乗人員)が決まる。商船などの場合には船のサイズや種類に関わらず、居住区構造体に要求される最大居住人員は常に20〜30名程度と一定しているが、海洋構造物における居住区構造体に要求される最大居住人員は、プロジェクト毎に、例えば、50〜200名程度と大きく異なる。
【0003】
従って、海洋構造物においては、同サイズの船体をもつ海洋構造物であっても、プロジェクト毎に要求される生産設備が異なり、それに伴って最大居住人員数も変化するのでプロジェクト毎に最大居住人員数の異なる居住区構造体が必要となる。その結果、居住区画の標準化は困難であり、プロジェクト毎に必要な居室や公室が収まるように居住区画を設計して建造している。特に居室に関しては、最大居住人員数の増減により、必要な部屋数自体が増減するため、公室のように予め各部屋の床面積を大きめに取るなどの対応を採ることができず、居住区画の標準化を阻害する要因となっている。
【0004】
また、海洋構造物においては、建造場所から据付海域までの自航または曳航による移動時と、稼働海域での生産プラントのコミッショニング(検証作業)時と、通常稼働時とでは必要とされる居住人員数が大きく異なる。例えば、稼働海域での生産プラントのコミッショニング時に必要とされる居住人員数が最大となり、移動時や通常稼働時に必要とされる居住人員数はコミッショニング時に必要とされる居住人員数に比べて少ない。
【0005】
これに対応するために、海洋構造物の建造時においては、各段階における必要な居住人員数を考慮せずに、そのプロジェクトで必要な最大居住人員数の居住区構造体を設計して建造している。そのため、通常、居住人員数が最大となるコミッショニング時の最大居住人員に合わせて居住区構造体が建造されるので、その結果、人員が少ない移動時、通常稼働時では居住区構造体に使用されていない部屋が生じ、無駄なスペースが生じるという問題があった。
【0006】
また、従来技術においては、この海洋構造物の居住区構造体の建造では、上甲板の上の所定位置に内部が複数層に形成された上部構造体と呼ばれる構造体を構築し、この上部構造体の各階層内を間仕切りによって複数に区分して居室や公室等の諸室と通路を形成する。そして、その後に各部屋の艤装工事を行っている。それ故、居住区構造体を建造するには、長期間にわたって海洋構造物上で工事が必要となる。
【0007】
そのため、従来技術の建造方法では、最大居住人員数の異なる居住区構造体を建造する場合には、上部構造体の寸法や間仕切り配置、配線計画、配管計画等を設計し直すため、居住区構造体の建造には多くの労力と長期の施工期間が必要となるという問題があった。
【0008】
この従来技術の建造方法の例として、例えば、船舶用居室の組立工法として、規格化された所定の壁厚、所定の幅を有するモジュールパネルを基準として船種、船型等によって異なる船殻寸法に対して居室寸法を船舶内に割り付け、モジュールパネルを所望数組み合わせて使用し、船舶内に規定寸法の居室を組み付け施工する方法が提案されている(特許文献1)。そして、このモジュールパネルで居室を形成することにより、居室をユニット化し、この居室ユニットを配列することで居住区構造体を建造する方法が提案されている。
【0009】
しかしながら、これらの施工方法では、個々の居室を形成するまでの施工期間を短縮することはできるが、居室を配置した後にそれぞれの居室において、配管や配線、ダクト等の接続工事を行う必要があるため、長期間にわたって海洋構造物上での艤装工事が必要となる。また、一度居住区構造体を建造した後に、最大居住人員数を変更するために、居室数を増減させることは困難である。
【0010】
また、最大居住人員数の増減対策としての建造方法の一つに、コンテナ内に居住区画を形成し、このコンテナを段積みおよび横並びにすることで居住人員の増減を可能とするモジュール化された居住区が提案されている。この建造方法では、コンテナの搭載数を変えることで居住区構造体の最大居住人員数を変更することは可能であるが、次のような問題がある。
【0011】
つまり、この建造方法では、コンテナを設置した後にそれぞれのコンテナにおいて個別に配線や配管やダクトの接続作業を行なう必要がある。特に、階段やエレベーター設備を設ける場合にはコンテナとは別に建造する必要がある。また、コンテナ毎に空調設備を備える必要があるため、居住区構造物全体としてのエネルギー効率が悪くなるという問題がある。そして、各居室がコンテナで形成されているので、居住区構造物全体としての重量が重くなる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0012】
【特許文献1】特開平10−273093号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
本発明は上述の状況を鑑みてなされたものであり、その目的は、浮体式生産貯蔵積出設備(FPSO)等の海洋構造物において、居住区画の標準化を困難にしているプロジェクトの違いによる最大居住人員数の増減に対して、柔軟かつ居住区内の部屋配置や部屋サイズの変更をできる限り少なくすることができて、居住区画における居住人員数を容易に変更することができる海洋構造物における居住区構造体、海洋構造物、海洋構造物における居住区構造体の建造方法、及び、海洋構造物の建造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0014】
上記の目的を達成するため本発明の海洋構造物における居住区構造体は、複数の部屋と、通路と、配管および配線およびダクトから構成される部屋設備とを備えた居住区モジュールが上下方向および/または水平方向に複数連結した状態で構成される海洋構造物における居住区構造体であって、前記居住区モジュール同士が隣接している状態では、前記居住区モジュールの一方における前記通路および前記部屋設備のそれぞれの端部取り合い位置が、前記居住区モジュールの他方の前記通路および前記部屋設備のそれぞれの端部取り合い位置に対向し合う位置になるように規格化されて配置されており、さらに、前記居住区モジュール同士が連結している状態では、前記通路および前記部屋設備がそれぞれ連結し、前記居住区モジュールのうちの少なくとも2個以上の居住区モジュールが上下方向に連通する階段構成部を備えており、該階段構成部を備えている前記居住区モジュール同士が積層されている状態では、前記居住区モジュール同士の上方の前記階段構成部の端部取り合い位置が、前記居住区モジュールの下方の前記階段構成部の端部取り合い位置に対向し合う位置になるように規格化されて配置されており、さらに、前記居住区モジュール同士が積層されて連結している状態では、前記階段構成部によって前記居住区モジュールを上下方向に連通する階段が形成されていることを特徴とする。
上記の目的を達成するため本発明の海洋構造物における居住区構造体は、複数の部屋と、通路と、配管および配線およびダクトから構成される部屋設備とを備えた居住区モジュールが上下方向および/または水平方向に複数連結した状態で構成される海洋構造物における居住区構造体であって、前記居住区モジュール同士が隣接している状態では、前記居住区モジュールの一方における前記通路および前記部屋設備のそれぞれの端部取り合い位置が、前記居住区モジュールの他方の前記通路および前記部屋設備のそれぞれの端部取り合い位置に対向し合う位置になるように規格化されて配置されており、さらに、前記居住区モジュール同士が連結している状態では、前記通路および前記部屋設備がそれぞれ連結し、前記居住区モジュールのうちの少なくとも2個以上の居住区モジュールが上下方向に連通するエレベーター構成部を備えており、該エレベーター構成部を備えている前記居住区モジュール同士が積層されている状態では、前記居住区モジュール同士の上方の前記エレベーター構成部の端部取り合い位置が、前記居住区モジュールの下方の前記エレベーター構成部の端部取り合い位置に対向し合う位置になるように規格化されて配置されており、さらに、前記居住区モジュール同士が積層されて連結している状態では、前記エレベーター構成部によって前記居住区モジュールを上下方向に連通するエレベーターが形成されていることを特徴とする。
上記の目的を達成するため本発明の海洋構造物における居住区構造体は、複数の部屋と、通路と、配管および配線およびダクトから構成される部屋設備とを備えた居住区モジュールが上下方向および/または水平方向に複数連結した状態で構成される海洋構造物における居住区構造体であって、前記居住区モジュール同士が隣接している状態では、前記居住区モジュールの一方における前記通路および前記部屋設備のそれぞれの端部取り合い位置が、前記居住区モジュールの他方の前記通路および前記部屋設備のそれぞれの端部取り合い位置に対向し合う位置になるように規格化されて配置されており、さらに、前記居住区モジュール同士が連結している状態では、前記通路および前記部屋設備がそれぞれ連結し、階段構成部および/またはエレベーター構成部を備えた前記居住区モジュールであるメインモジュールと、該メインモジュールよりも居住人員数が少ない前記居住区モジュールであるサブモジュールとから構成され、前記メインモジュール同士の外形寸法は同じに形成されていると共に、前記サブモジュール同士の外形寸法も同じに形成されており、前記メインモジュール同士は積層状態で連結していると共に、前記サブモジュールは前記メインモジュールに水平方向で連結していることを特徴とする。
【0015】
なお、ここでいう「部屋」とは、居室に限らず、オフィス、ロッカー、シャワールーム、共通トイレ、洗濯機室等の公室、衛生区画も含んだ居住空間を構成する部屋を示している。
【0016】
つまり、複数の部屋と、通路と、配管および配線およびダクトから構成される部屋設備とを備えた居住区モジュールを1つのユニットとし、ユニット化された居住区モジュールを上下方向および/または水平方向に複数連結することによって居住区構造体が形成されている。この居住区内の居室や公室等の部屋の諸区画は、その居住区モジュール内に収められており、他の居住区モジュールには跨らない構成となっている。そして、この居住区モジュールでは、居住区モジュール同士を連結した際に隣接する居住区モジュール同士の通路および部屋設備がそれぞれ容易に連結できるように通路および部屋設備のそれぞれの端部取り合い位置が居住区モジュールにおいて共通化されている。
【0017】
また、通路における「端部取り合い位置に対向し合う位置になるように規格化されて配置されている」、言い換えれば「端部取り合い位置の共通化」とは、居住区モジュールを連結した際に隣接する居住区モジュールの通路同士が連通または対向するように、それぞれの居住区モジュールにおける通路の端部の幅や配置が統一されていることを示す。
【0018】
また、部屋設備における「端部取り合い位置に対向し合う位置になるように規格化されて配置されている」、言い換えれば「端部取り合い位置の共通化」とは、居住区モジュールを連結した際に隣接する居住区モジュールの部屋設備(配管および配線およびダクトのそれぞれ)の端部同士が対向する位置に配置されるように、それぞれの居住区モジュールにおける部屋設備の端部の配置が統一されていることを示す。
【0019】
なお、部屋設備(配管および配線およびダクトのそれぞれ)の端部におけるサイズや径等の仕様は隣接する部屋設備同士で統一されていることが望ましいが、必ずしも同一のサイズや径である場合に限られず、隣接する部屋設備同士を連結できる組み合わせであれば構わない。即ち、隣接する部屋設備同士を直接連結する場合に限らず、例えば、隣接する部屋設備同士の間に連結部材を介在させて両者を間接的に連結する場合も含む。
【0020】
上記の構成によれば、居住区構造体を構成する居住区モジュールの数を変更することによって居住区構造体の最大居住人員数の調整を容易に行うことができる。そのため、多種多様なプロジェクトに対応することができる。また、海洋構造物は商船とは異なり、船橋視界や主機による振動の影響を考慮する必要がなく、居住区構造体の高さを容易に変更することができる。そのため、居住区モジュールの積み上げもしくは削減による最大居住人員数の増減が容易である。
【0021】
さらに、居住区モジュールを連結するときには、既に、それぞれの居住区モジュールのうちでそれぞれの部屋は居住区モジュール内に収まっているので、居住区モジュールの数を変更する場合においても、他の居住区モジュールに影響されずに居住区モジュールを追加/削減したり、居住人員数の異なる居住区モジュールや他の機能を持った居住区モジュールと自由に入れ替えることができる。そのため、居住区構造体の最大居住人員数を変更する場合においても居住区構造体全体としての大きな設計変更を行う必要がない。
【0022】
また、複数の居住区モジュールを同時に建造することができ、居住区モジュール同士を連結させる際にも、通路および部屋設備のそれぞれの取り合い位置が共通化されていることで連結作業を迅速かつ容易に行うことができるので、従来の壁パネルや部屋を1つのユニットとして建造する従来の場合に比して短い施工期間で居住区構造体を建造することができる。
【0023】
従来のコンテナに居住区域を形成し搭載する場合においては、コンテナが個別に空調設備を備える必要があったため、居住区構造体全体としての空調設備の効率が悪く、消費電力が大きくなるという問題があった。一方、本発明では居住区モジュール同士が連結し、通路および部屋設備が居住区構造体全体として連結するので、居室や公室などの部屋が個々に空調設備を備える必要がなく、例えば、居住区構造体として1台の空調設備を備えれば、すべての部屋を一元的に空調する構成にすることができる。そのため、従来の場合に比して、空調設備の効率を向上させることができ、居住区構造体全体としての省エネルギー化を図ることができる。
【0031】
上記の海洋構造物における居住区構造体において、前記居住区モジュールのうちの少なくとも2個以上の居住区モジュールが上下方向に連通する階段構成部を備えており、該階段構成部を備えている前記居住区モジュール同士が積層されている状態では、前記居住区モジュール同士の上方の前記階段構成部の端部取り合い位置が、前記居住区モジュールの下方の前記階段構成部の端部取り合い位置に対向し合う位置になるように規格化されて配置されており、さらに、前記居住区モジュール同士が積層されて連結している状態では、前記階段構成部によって前記居住区モジュールを上下方向に連通する階段が形成されている構成にすると、次の効果を得ることができる。
【0032】
つまり、居住区モジュールの積層前に、居住区モジュール毎に階段構成部を建造することができ、居住区モジュールを積層させることで居住区モジュールを上下方向に連通する階段が形成される。そのため、居住区モジュールとは別に階段を建造する必要がなく、短い施工期間で居住区構造体を建造することができる。
【0033】
上記の海洋構造物における居住区構造体において、前記居住区モジュールのうちの少なくとも2個以上の居住区モジュールが上下方向に連通するエレベーター構成部を備えており、該エレベーター構成部を備えている前記居住区モジュール同士が積層されている状態では、前記居住区モジュール同士の上方の前記エレベーター構成部の端部取り合い位置が、前記居住区モジュールの下方の前記エレベーター構成部の端部取り合い位置に対向し合う位置になるよう規格化されて配置されており、さらに、前記居住区モジュール同士が積層されて連結している状態では、前記エレベーター構成部によって前記居住区モジュールを上下方向に連通するエレベーターが形成されている構成にすると、次の効果を得ることができる。
【0034】
つまり、居住区モジュール毎にエレベーター構成部を建造することができ、居住区モジュールを積層させることで居住区モジュールを上下方向に連通した状態のエレベーターが形成される。そのため、居住区モジュールとは別にエレベーターを建造する必要がなく、短い施工期間で居住区構造体を建造することができる。
【0035】
これらの階段やエレベーターのような艤装品は、従来技術ではまとめて各デッキを縦断することが一般的であるが、これらの構成では居室デッキの上下に配置される公室デッキや業務用デッキに対しては、これらの取り合いを合わせたモジュールを用意して組み立てることで対応することができる。
【0036】
上記の海洋構造物における居住区構造体において、前記階段構成部および/または前記エレベーター構成部を備えた前記居住区モジュールであるメインモジュールと、該メインモジュールよりも居住人員数が少ない前記居住区モジュールであるサブモジュールとから構成され、前記メインモジュール同士の外形寸法は同じに形成されていると共に、前記サブモジュール同士の外形寸法も同じに形成されており、前記メインモジュール同士は積層状態で連結していると共に、前記サブモジュールは前記メインモジュールに水平方向で連結している構成にすると、次の効果を得ることができる。
【0037】
つまり、メインモジュールに居住区構造体の主要設備となる階段やエレベーター、空調設備等を備えて、メインモジュールによって居住区構造体における大まかな居住人員数を設定した上で、連結するサブモジュールの数を変更することで居住区構造体における最大居住人員数を微調整する構成にすることができる。具体的には、例えば、設計が進んだ状況で船主が最大居住人員数の変更を要求した場合においても、主要設備を備えたメインモジュール部分の構成は変えることなく、連結するサブモジュールの数を変更するだけで対応することができる。
【0038】
このメインモジュールおよび/またはサブモジュールの内部に配置される部屋数や居住人員数は1部屋当たりの収容人数の調整(1人部屋/2人部屋/4人部屋等)により複数パターンを持つことが望ましいが、どのパターンにおいてもメインモジュールとサブモジュールの外形および通路、部屋設備、階段構成部、エレベーター構成部などの端部取り合い位置を共通化して構成する。
【0039】
また、これらの居住区モジュールの追加または削減による居住人員数の調整以外に、1モジュール当たりの収容人数に複数のバリエーションを持たせることにより、より柔軟に最大居住人員数を調整することができる。また、居住区モジュールの外形を統一することでメインモジュールの積み重ねと、サブモジュールの積み重ねを容易とすることができる。
【0040】
つまり、サブモジュールをメインモジュールの左舷/右舷/表側/艫側に追加または削減することで柔軟に1つのデッキ当たりの最大居住人員数を変更することができる。この際、例えば、左舷用のサブモジュール同士については外形寸法を同一とするが、その他のサブモジュール(右舷/表側/艫側)と外径寸法を同じにする必要はない。これは右舷/表側/艫側のサブモジュールについても同様である。
【0041】
前記メインモジュールの居住人員数が、前記サブモジュールの居住人員数の整数倍で構成されていると、居住区構造体の居住人員数をメインモジュールおよび/またはサブモジュールの増減によってサブモジュールの居住人員数の人数刻みで増減することができる。具体的には、例えば、サブモジュールの居住人員数を10人とした場合に、10人の整数倍である30人、40人、50人の3タイプのメインモジュールで構成すると、サブモジュールとメインモジュールをそれぞれ複数組み合わせることで、サブモジュールの居住人員数である10人を最小単位として居住区構造体の居住人員数を増減させることができる。そのため、要望の異なる複数の船主(オーナー)やプロジェクトに対してもそれぞれの船主やプロジェクトの要望に合った居住区構造体を大きな設計変更をすることなく提案することができる。
【0042】
上記の海洋構造物における居住区構造体において、前記居住区モジュールの全面、または、他の居住区モジュールの鋼壁にて代用できる場合には他の居住区モジュールとの接合面を除く面全てが鋼壁によって構成された直方体である構成にすると、小分けになった直方体構造とすることで、一つの居住区モジュールに対して、上下左右前後方向に他の居住区モジュールを連結することが可能となる。また、通路および部屋設備のそれぞれの端部取り合い位置の共通化も簡易な構成となる。さらに、直方体であると建造するのが容易である。さらに、水平方向において船長方向に少しずらして配置することにより、浮体式生産貯蔵積出設備(FPSO)等の海洋構造物の船首尾の上甲板の船体形状の曲線に合わせて配置することが可能となる。
【0043】
なお、ここでいう居住区モジュールが鋼壁によって構成された直方体であるということには、居住区モジュール毎に全ての面が鋼壁で覆われている構成に限られず、連結する他の居住区モジュールの鋼壁を利用して直方体構造を形成する構成も含まれている。換言すると、居住区モジュール同士を連結した状態で、連結部分がそれぞれの居住区モジュールの鋼壁2枚で構成されている場合も、いずれか一方の居住区モジュールの外壁を構成する鋼壁を2つの居住区モジュールで共有することで、連結部分が1枚の鋼壁となって構成されている場合も含んでいる。
【0044】
上記の海洋構造物における居住区構造体において、前記通路および前記部屋設備のそれぞれの端部取り合いがそれぞれ連結および取り外しができる機構で構成されていると共に、前記居住区モジュール同士の連結および取り外しができる構成にすると、通路および部屋設備のそれぞれの端部取り合い位置が対向し合う位置になっており、各々の通路および部屋設備の配置を変更することなく、居住区モジュールの連結と取り外しが可能になるので、居住区構造体における居住区モジュールの数をより容易に変更することができ、居住区構造体における最大居住人員数をより容易に変更することができる。
【0045】
それ故、例えば、船主が最大居住人員数の変更を望んだ場合にも速やかに対応することができる。また、例えば、一度プロジェクトで使用した海洋構造物を再度他のプロジェクトで使用するため、最大居住人員数の変更が必要であるといった場合においても、大きな設計変更をすることなく、迅速かつ容易に居住区構造体の最大居住人員数を変更することができる。
また、例えば、プロジェクトの進行段階に応じて居住区構造体の最大居住人員数を随時変更することもできる。具体的には、例えば、海洋構造物の自航または曳航による移動時には、移動に必要な居住人員分に合わせた居住区構造体を建造し、生産プラント搭載と同時にコミッショニングに必要な居住人員数に合わせて居住区モジュールを追加搭載して居住区構造体を増築することで、居住区構造体の居住人員数を増やすこともできる。つまり、海洋構造物が出航する段階では、移動時に必要な分の居住区構造体のみを建造すればよいので、海洋構造物の建造工期(建造スケジュール)を短縮することができる。
また、例えば、稼働海域での生産プラントのコミッショニング時に必要とされる居住人員数が最大であり、通常稼働時に必要とされる居住人員数はコミッショニング時に比べて少ない場合には、コミッショニングが終了した後に減る人員分の居住区モジュールを取り外すことにより居住区構造体が占めるスペースを削減し、この削減したスペースを有効利用することもできるし、居住区構造体全体としての重さを軽減することもできる。
また、一部の居住区モジュールに不備が生じた場合においても、不備が生じた居住区モジュールを取り外して、他の居住区モジュールと交換することができるので、居住区構造体の修繕を迅速に行うことができる。
【0046】
上記の海洋構造物における居住区構造体において、前記居住区モジュールの全面、または、他の居住区モジュールの鋼壁にて代用できる場合には他の居住区モジュールとの接合面を除く面全てが鋼壁によって構成された直方体である構成にすると、小分けになった直方体構造とすることで、一つの居住区モジュールに対して、上下左右前後方向に他の居住区モジュールを連結することが可能となる。また、通路および部屋設備のそれぞれの端部取り合い位置の共通化も簡易な構成となる。さらに、直方体であると建造するのが容易である。さらに、水平方向において船長方向に少しずらして配置することにより、浮体式生産貯蔵積出設備(FPSO)等の海洋構造物の船首尾の上甲板の船体形状の曲線に合わせて配置することが可能となる。
【0047】
前記居住区モジュールの外形寸法の少なくとも1辺の長さ寸法が、前記海洋構造物を構成するロンジテューディナルスティフナ同士の間隔寸法(ロンジスペース)あるいはフレーム同士の間隔寸法(フレームスペース)の整数倍で形成された状態である構成にすると、海洋構造物の骨組みを構成するロンジテューディナルスティフナやフレームの位置に合わせて居住区モジュールを配置することができる。そのため、海洋構造物の骨組みを利用して居住区モジュールの補強を容易に行うことが可能となる。また、海洋構造物の骨組みを利用して居住区モジュールの補強を行うことで居住区モジュールの強度を高めることができる。
【0048】
前記居住区モジュール内にサイズおよび/または形状を共通にしてユニット化された前記部屋を2つ以上有する構成にすると、部屋がユニット化されることで居住区モジュールに部屋を形成する施工期間が短くなるため、より短い施工期間で居住区構造体を建造することができる。
【0049】
上記の目的を達成するため本発明の海洋構造物は、上記の海洋構造物における居住区構造体を備えて構成され、上記の海洋構造物における居住区構造体と同様の効果を発揮できる。
【0050】
上記の目的を達成するための本発明の海洋構造物における居住区構造体の建造方法は、居住区モジュールを、複数の部屋と、通路と、配管および配線およびダクトから構成される部屋設備とから構成し、かつ、前記居住区モジュール同士が隣接している状態では、前記居住区モジュールの一方における前記通路および前記部屋設備のそれぞれの端部取り合い位置が、前記居住区モジュールの他方の前記通路および前記部屋設備のそれぞれの端部取り合い位置に対向し合う位置になるように規格化して建造し、この居住区モジュールを上下方向および/または水平方向に複数連結させると共に、連結した前記居住区モジュール同士の前記通路および前記部屋設備をそれぞれ連結することにより居住区構造体を建造し、前記居住区モジュールのうちの少なくとも2個以上の居住区モジュールに上下方向に連通する階段構成部を設け、該階段構成部が設けられている前記居住区モジュール同士が積層した状態で、前記居住区モジュール同士の上方の前記階段構成部の端部取り合い位置が、前記居住区モジュールの下方の前記階段構成部の端部取り合い位置に対向し合う位置になるように規格化して建造し、さらに、前記居住区モジュール同士を積層させて連結させて、前記階段構成部によって前記居住区モジュールを上下方向に連通する階段を形成することを特徴とする。
上記の目的を達成するための本発明の海洋構造物における居住区構造体の建造方法は、居住区モジュールを、複数の部屋と、通路と、配管および配線およびダクトから構成される部屋設備とから構成し、かつ、前記居住区モジュール同士が隣接している状態では、前記居住区モジュールの一方における前記通路および前記部屋設備のそれぞれの端部取り合い位置が、前記居住区モジュールの他方の前記通路および前記部屋設備のそれぞれの端部取り合い位置に対向し合う位置になるように規格化して建造し、この居住区モジュールを上下方向および/または水平方向に複数連結させると共に、連結した前記居住区モジュール同士の前記通路および前記部屋設備をそれぞれ連結することにより居住区構造体を建造し、前記居住区モジュールのうちの少なくとも2個以上の居住区モジュールに上下方向に連通するエレベーター構成部を設け、該エレベーター構成部が設けられている前記居住区モジュール同士を積層した状態で、前記居住区モジュール同士の上方の前記エレベーター構成部の端部取り合い位置が、前記居住区モジュールの下方の前記エレベーター構成部の端部取り合い位置に対向し合う位置になるように規格化して建造し、さらに、前記居住区モジュール同士を積層させて連結させて、前記エレベーター構成部によって前記居住区モジュールを上下方向に連通するエレベーターを形成することを特徴とする。
上記の目的を達成するための本発明の海洋構造物における居住区構造体の建造方法は、居住区モジュールを、複数の部屋と、通路と、配管および配線およびダクトから構成される部屋設備とから構成し、かつ、前記居住区モジュール同士が隣接している状態では、前記居住区モジュールの一方における前記通路および前記部屋設備のそれぞれの端部取り合い位置が、前記居住区モジュールの他方の前記通路および前記部屋設備のそれぞれの端部取り合い位置に対向し合う位置になるように規格化して建造し、この居住区モジュールを上下方向および/または水平方向に複数連結させると共に、連結した前記居住区モジュール同士の前記通路および前記部屋設備をそれぞれ連結することにより居住区構造体を建造し、階段構成部および/またはエレベーター構成部を設けた前記居住区モジュールであるメインモジュールと、該メインモジュールよりも居住人員数が少ない前記居住区モジュールであるサブモジュールとから構成し、前記メインモジュール同士の外形寸法を同じに形成すると共に、前記サブモジュール同士の外形寸法も同じに形成し、前記メインモジュール同士を積層させて連結すると共に、前記サブモジュールを前記メインモジュールに水平方向で連結することを特徴とする。
【0051】
この方法によれば、複数の居住区モジュールを同時に建造することができ、居住区モジュール同士を連結させる際にも、通路および部屋設備のそれぞれの端部取り合い位置が共通化されているので連結作業を迅速かつ容易に行うことができる。そのため、従来の壁パネルや部屋を1つのユニットとして建造する場合に比して短い施工期間で居住区構造体を建造することができる。
【0052】
また、居住区モジュールの数を変更することによって居住区構造体の最大居住人員数を容易に変更することができる。そのため、多種多様なプロジェクトに対応することができる。さらに、それぞれの居住区モジュール内で収まっているので、居住区モジュールの数を変更する場合においても、他の居住区モジュールに影響されずに居住区モジュールを追加/削減したり、居住人員数の異なる居住区モジュールや他の機能を持った居住区モジュールと自由に入れ替えることができる。そのため、居住区モジュールの数を変更する場合においても居住区構造体全体としての大きな設計変更を行う必要がない。
【0053】
従来のコンテナに居住区域を形成し搭載する場合においては、コンテナが個別に空調設備を備える必要があったため、居住区構造体全体としての空調設備の効率が悪く、消費電力が大きくなるという問題があった。一方、本発明では居住区モジュール同士が連結し、通路および配管および配線およびダクトが居住区構造体全体として連結して一体化するので、部屋が個々に空調設備を備える必要がなく、例えば、居住区構造体として1台の空調設備を備えれば、すべての部屋を一元的に空調する構成にすることができる。そのため、従来の場合に比して、空調設備の効率を向上させることができ、居住区構造体全体としての省エネルギー化を図ることができる。
【0054】
上記の海洋構造物における居住区構造体の建造方法において、前記居住区モジュールのうちの少なくとも2個以上の居住区モジュールに上下方向に連通する階段構成部を設け、該階段構成部が設けられている前記居住区モジュール同士が積層した状態で、前記居住区モジュール同士の上方の前記階段構成部の端部取り合い位置が、前記居住区モジュールの下方の前記階段構成部の端部取り合い位置に対向し合う位置になるように規格化して建造し、さらに、前記居住区モジュール同士を積層させて連結させて、前記階段構成部によって前記居住区モジュールを上下方向に連通する階段を形成すると、次の効果を得ることができる。
つまり、居住区モジュールの積層前に、居住区モジュール毎に階段構成部を建造することができ、居住区モジュールを積層させることで居住区モジュールを上下方向に連通する階段が形成される。そのため、居住区モジュールとは別に階段を建造する必要がなく、短い施工期間で居住区構造体を建造することができる。
【0055】
上記の海洋構造物における居住区構造体の建造方法において、前記居住区モジュールのうちの少なくとも2個以上の居住区モジュールに上下方向に連通するエレベーター構成部を設け、該エレベーター構成部が設けられている前記居住区モジュール同士を積層した状態で、前記居住区モジュール同士の上方の前記エレベーター構成部の端部取り合い位置が、前記居住区モジュールの下方の前記エレベーター構成部の端部取り合い位置に対向し合う位置になるように規格化して建造し、さらに、前記居住区モジュール同士を積層させて連結させて、前記エレベーター構成部によって前記居住区モジュールを上下方向に連通するエレベーターを形成すると、次の効果を得ることができる。
つまり、居住区モジュール毎にエレベーター構成部を建造することができ、居住区モジュールを積層させることで居住区モジュールを上下方向に連通した状態のエレベーターを形成する。そのため、居住区モジュールとは別にエレベーターを建造する必要がなく、短い施工期間で居住区構造体を建造することができる。
これらの階段やエレベーターのような艤装品は、従来技術ではまとめて各デッキを縦断することが一般的であるが、これらの構成では居室デッキの上下に配置される公室デッキや業務用デッキに対しては、これらの取り合いを合わせたモジュールを用意して組み立てることで対応することができる。
【0056】
上記の海洋構造物における居住区構造体の建造方法において、階段構成部および/またはエレベーター構成部を設けた前記居住区モジュールであるメインモジュールと、該メインモジュールよりも居住人員数が少ない前記居住区モジュールであるサブモジュールとから構成し、前記メインモジュール同士の外形寸法を同じに形成すると共に、前記サブモジュール同士の外形寸法も同じに形成し、前記メインモジュール同士を積層させて連結すると共に、前記サブモジュールを前記メインモジュールに水平方向で連結する構成にすると、次の効果を得ることができる。
つまり、メインモジュールに居住区構造体の主要設備となる階段やエレベーター、空調設備等を設けて、メインモジュールによって居住区構造体における大まかな居住人員数を設定した上で、連結するサブモジュールの数を変更することで居住区構造体における最大居住人員数を微調整することができる。具体的には、例えば、設計が進んだ状況で船主が最大居住人員数の変更を要求した場合においても、主要設備を備えたメインモジュール部分の構成は変えることなく、連結するサブモジュールの数を変更するだけで対応することができる。
このメインモジュールおよび/またはサブモジュールの内部に配置される部屋数や居住人員数は1部屋当たりの収容人数の調整(1人部屋/2人部屋/4人部屋等)により複数パターンを持つことが望ましいが、どのパターンにおいてもメインモジュールとサブモジュールの外形および通路、部屋設備、階段構成部、エレベーター構成部などの端部取り合い位置を共通化して構成する。
また、これらの居住区モジュールの追加または削減による居住人員数の調整以外に、1モジュール当たりの収容人数に複数のバリエーションを持たせることにより、より柔軟に最大居住人員数を調整することができる。また、居住区モジュールの外形を統一することでメインモジュールの積み重ねと、サブモジュールの積み重ねを容易とすることができる。
つまり、サブモジュールをメインモジュールの左舷/右舷/表側/艫側に追加または削減することで柔軟に1つのデッキ当たりの最大居住人員数を変更することができる。この際、例えば、左舷用のサブモジュール同士については外形寸法を同一とするが、その他のサブモジュール(右舷/表側/艫側)と外径寸法を同じにする必要はない。これは右舷/表側/艫側のサブモジュールについても同様である。
【0057】
前記メインモジュールの居住人員数を、前記サブモジュールの居住人員数の整数倍にすると、居住区構造体の居住人員数をメインモジュールおよび/またはサブモジュールの増減によってサブモジュールの居住人員数の人数刻みで増減することができる。具体的には、例えば、サブモジュールの居住人員数を10人とした場合に、10人の整数倍である30人、40人、50人の3タイプのメインモジュールにすると、サブモジュールとメインモジュールをそれぞれ複数組み合わせることで、サブモジュールの居住人員数である10人を最小単位として居住区構造体の居住人員数を増減させることができる。そのため、要望の異なる複数の船主(オーナー)やプロジェクトに対してもそれぞれの船主やプロジェクトの要望に合った居住区構造体を大きな設計変更をすることなく提案することができる。
【0058】
上記の目的を達成するため本発明の海洋構造物の建造方法は、上記の海洋構造物における居住区構造体の建造方法を用いて海洋構造物を建造する方法であり、上記の海洋構造物における居住区構造体の建造方法と同様の効果を発揮できる。
【発明の効果】
【0059】
本発明の海洋構造物における居住区構造体、及び海洋構造物によれば、複数の部屋と、通路と、配管および配線およびダクトから構成される部屋設備とを備えた居住区モジュールが上下方向および/または水平方向に複数連結した状態で居住区構造体が構成されるので、居住区モジュールの数を変更することによって居住区構造体の最大居住人員数を容易に変更することができる。そのため、多種多様なプロジェクトに対応することができる。さらに、居住区モジュールの数を変更する場合においても大きな設計変更を行う必要がない。また、居住区モジュールにおける通路および部屋設備のそれぞれの取り合い位置は共通化されているので、居住区モジュール同士の連結作業を迅速に行うことができる。
【0060】
また、本発明の海洋構造物における居住区構造体の建造方法、及び海洋構造物の建造方法によれば、複数の部屋と、通路と、配管および配線およびダクトから構成される部屋設備とを有する居住区モジュールを上下方向および/または水平方向に複数連結することにより、居住区構造体を構成するので、居住区モジュールの数を変更することによって居住区構造体の最大居住人員数を容易に変更することができる。そのため、多種多様なプロジェクトに対応することができる。さらに、居住区モジュールの数を変更する場合においても大きな設計変更を行う必要がない。また、居住区モジュールにおける通路および部屋設備のそれぞれの取り合い位置は共通化しているので、居住区モジュール同士の連結作業を迅速に行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0062】
図1】本発明に係る実施の形態の居住区構造体を有する海洋構造物を模式的に示す側面図である。
図2図1の海洋構造物の平断面図である。
図3図1の海洋構造物の正面図である。
図4】本発明に係る実施の形態の居住区構造体を模式的に示す平断面図で、(a)は居住区モジュールの連結前の状態を示し、(b)は居住区モジュールの連結後の状態を示す。
図5】本発明に係る実施の形態の居住区構造体の部屋設備を模式的に示す平断面図で、(a)は居住区モジュールの連結前の状態を示し、(b)は居住区モジュールの連結後の状態を示す。
図6】本発明に係る実施の形態の居住区構造体を模式的に示す断面図で、(a)は居住区モジュールの連結前の状態を示し、(b)は居住区モジュールの連結後の状態を示す。
図7】本発明に係る別の実施の形態の居住区構造体を模式的に示す平断面図である。
図8】本発明に係る居住区構造体の建造方法を説明するための居住区モジュールの例を示す図である。
図9図8の居住区モジュールの組み合わせの例を模式的に示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0063】
以下、本発明に係る実施の形態の海洋構造物における居住区構造体(以下、居住区構造体)、海洋構造物、海洋構造物における居住区構造体の建造方法(以下、居住区構造体の建造方法)海洋構造物の建造方法、海洋構造物における居住区構造体の設計方法(以下、居住区構造体の設計方法)、及び、海洋構造物の設計方法を、図面を参照しながら説明する。尚、この実施の形態では、海洋構造物として、FPSO(浮体式生産貯蔵積出設備)に適用した場合の居住区構造体を例示して説明する。
【0064】
しかし、本発明は、FPSOに限らず海洋構造物であれば、FPSOの場合と同様に適用することができる。例えば、石油・ガスの生産設備を持たないFSO(浮体式貯蔵積出設備)やFSU(浮体式貯蔵設備)、LNGを扱うFLNG(液化貯蔵積出設備:LNG-FPSO)、LPGを扱うFLPG(LPG-FPSO)、FSRU(浮体式貯蔵再ガス化設備)、セミサブ、ホテルバージ等にも本発明を適用することができる。
【0065】
なお、一般的に、FPSO等の海洋構造物は、VLCC(大型タンカー)等の船舶とほぼ同様の形状をしていることが多いので、ここでは、各部の名称もVLCC等の船舶に準じて「船体」「船尾」「上甲板」などの呼称を用いて説明する。
【0066】
図1図6に示す実施の形態の海洋構造物20は、船体21の上甲板22の船尾側には居住区構造体1が設けられ、この上部には船橋(ブリッジ)23と、この船橋23の両側に延びたブリッジウィング24が設けられ、さらに、居住区構造体1の後部にはエンジンケーシング25と煙突(ファンネル)26が設けられている。また、自航できるように構成される場合には、船尾に、推進器(プロペラ)27と舵28が備えられる。
【0067】
なお、この実施の形態では、船尾部の上甲板22の上に本発明の居住区構造体1を配置する場合を例示するが、居住区構造体1を配置する位置は特に限定されず、例えば、船首部の上甲板22の上に本発明の居住区構造体1を配置することもできる。
【0068】
このように、本発明に係る実施の形態の海洋構造物20は、以下に説明する本発明に係る実施の形態の居住区構造体1を備えて構成され、この居住区構造体1と同様の作用効果を奏する。
【0069】
図1図3で示すように、本発明の居住区構造体1は、居住区モジュール2(2A、2B)が上下方向および/または水平方向に複数連結した状態で構成される。なお、図2では居住区構造体1の構成が分かり易いように、船橋23とブリッジウィング24を省略して示してある。
【0070】
そして、図4図6で示すように、それぞれの居住区モジュール2は、複数の部屋3と、通路4と、配管5aおよび配線5bおよびダクト5cから構成される部屋設備5とを備えている。なお、ここでいう「部屋3」とは、居室に限らず、オフィス、ロッカー、シャワールーム、共通トイレ、洗濯機室等の公室、衛生区画も含んだ居住空間を構成する部屋を示している。
【0071】
この居住区モジュール2内に備えられた居室や公室等の部屋3の諸区画は、その居住区モジュール2内に収められており、他の居住区モジュール2には跨らない構成となっている。
【0072】
なお、部屋設備5は、配管5aおよび配線5bおよびダクト5cが1か所にまとめて配置される場合を限定するものではなく、配管5a、配線5b、ダクト5cのそれぞれの設備がそれぞれ分散して配置される場合も含む。
【0073】
図4(a)及び図5(a)及び図6(a)に示すように、居住区モジュール2の連結前で、居住区モジュール2同士が隣接している状態の居住区構造体1では、通路4および部屋設備5のそれぞれの端部取り合い位置が、居住区モジュール2の他方の通路4および部屋設備5のそれぞれの端部取り合い位置に対向し合う位置になるように規格化されて配置されている。そして、図4(b)及び図5(b)及び図6(b)に示すように、それぞれの居住区モジュール2同士が連結している状態では、通路4および部屋設備5が隣接する居住区モジュール同士でそれぞれ連結した状態になる。
【0074】
つまり、複数の部屋3と、通路4と、部屋設備5とを備えた居住区モジュール2を1つのユニットとし、このユニット化された居住区モジュール2を上下方向および/または水平方向に複数連結することによって居住区構造体1が形成される。そして、居住区モジュール2同士を連結した際に隣接する居住区モジュール2同士の通路4および部屋設備5がそれぞれ容易に連結できるように通路4および部屋設備5のそれぞれの端部取り合い位置が居住区モジュール2において共通化されている。
【0075】
ここでいう通路4における「端部取り合い位置に対向し合う位置になるように規格化されて配置されている」、言い換えれば「端部取り合い位置の共通化」とは、居住区モジュール2を連結した際に隣接する居住区モジュール2の通路4同士が連通するように、それぞれの居住区モジュール2における通路4の端部の幅や配置が略同一に形成されていることを示す。また、部屋設備5における「端部取り合い位置に対向し合う位置になるように規格化されて配置されている」、言い換えれば「端部取り合い位置の共通化」とは、居住区モジュール2を連結した際に隣接する居住区モジュール2の部屋設備5(配管5aおよび配線5bおよびダクト5cのそれぞれ)の端部同士が対向する位置に配置されるように、それぞれの居住区モジュール2における部屋設備5の端部の配置が統一されていることを示す。
【0076】
なお、部屋設備5(配管5aおよび配線5bおよびダクト5cのそれぞれ)の端部のサイズや径等の仕様は隣接する部屋設備5同士で略同一に形成されていることが望ましいが、必ずしも同一のサイズや径等である場合に限られず、隣接する部屋設備5同士を連結できる組み合わせであれば構わない。即ち、隣接する部屋設備5同士を直接連結する場合に限らず、例えば、隣接する部屋設備5同士の間に連結部材を介在させて両者を間接的に連結する場合も含む。
【0077】
なお、図5は、配管5aおよび配線5bおよびダクト5cの取り合い位置が共通化していることを模式的に示した図面であり、配管5aおよび配線5bおよびダクト5cの取り合い位置を居住区モジュール2の中央部にそれぞれ一ヶ所にしている場合を描写しているが、配管5aおよび配線5bおよびダクト5cの端部取り合い位置はそれぞれ一ヶ所である場合に限られず、複数箇所に設けることもできるし、それぞれの端部取り合い位置は種々の位置に適宜配置できる。
【0078】
そして、図1図6に示す実施の形態の居住区構造体1は、メインモジュール2Aとサブモジュール2Bの2つのタイプの居住区モジュール2で構成されている。メインモジュール2Aとサブモジュール2Bは全面または他の居住区モジュールとの接合面を除く面全てが鋼壁によって構成された直方体である。このメインモジュール2A同士の外形寸法は同じに形成されており、また、サブモジュール2B同士の外形寸法も同じに形成されている。サブモジュール2Bはメインモジュール2Aに比して小さい外形寸法で形成されており、サブモジュール2Bが備えている部屋3の数はメインモジュール2Aが備えている部屋3の数に比して少ない構成になっている。即ち、メインモジュール2Aは居住人員数が多い大きなユニットであり、サブモジュール2Bは居住人員数が少ない小さなユニットとなっている。
【0079】
メインモジュール2Aはさらに、メインモジュール2Aを上下方向に連通するように形成された階段構成部7aと、メインモジュール2Aを上下方向に連通するように形成されたエレベーター構成部8aとを備えている。
【0080】
階段構成部7aは、この階段構成部7aを備えている居住区モジュール2同士(この実施の形態ではメインモジュール2A同士)が積層して連結する際に、居住区モジュール2同士の上方の階段構成部7aの端部取り合い位置が、居住区モジュール2の下方の階段構成部7aの端部取り合い位置に対向し合う位置になるように規格化されて配置されている。換言すると、階段構成部7aを備えている居住区モジュール2において、階段構成部7aの端部取り合い位置が共通化されている。
【0081】
また、エレベーター構成部8aも同様に、エレベーター構成部8aを備えている居住区モジュール2同士(この実施の形態ではメインモジュール2A同士)が積層して連結する際に、居住区モジュール2同士の上方のエレベーター構成部8aの端部取り合い位置が、居住区モジュール2の下方のエレベーター構成部8aの端部取り合い位置に対向し合う位置になるように規格化されて配置されている。換言すると、エレベーター構成部8aを備えている居住区モジュール2において、エレベーター構成部8aの端部取り合い位置が共通化されている。
【0082】
ここでいう階段構成部7aにおける「端部取り合い位置に対向し合う位置になるように規格化されて配置されている」、言い換えれば「端部取り合い位置の共通化」とは、居住区モジュール2を積層した際に隣接する居住区モジュール2の階段構成部7a同士が上下方向に連通するように、それぞれの居住区モジュール2における階段構成部7aの端部の寸法や配置が略同一に形成されていることを示す。
【0083】
エレベーター構成部8aにおける「端部取り合い位置に対向し合う位置になるように規格化されて配置されている」、言い換えれば「端部取り合い位置の共通化」とは、居住区モジュール2を積層した際に隣接する居住区モジュール2のエレベーター構成部8a同士が上下方向に連通するように、それぞれの居住区モジュール2におけるエレベーター構成部8aの端部の寸法や配置が略同一に形成されていることを示す。
【0084】
この実施の形態では、図4に示すように、階段構成部7aとエレベーター構成部8aはメインモジュール2Aの中央部に配置されている。メインモジュール2Aの中央部にはさらに、部屋設備5を構成する主要装置、例えば、空調装置や発電設備等からのダクトや配管、配線が収容される設備トランク6が設けられている。
【0085】
この実施の形態の居住区構造体1は、図6に示すように、メインモジュール2A同士は積層状態で連結しており、サブモジュール2Bはメインモジュール2Aの水平方向で連結している。そして、隣接しているメインモジュール2A同士の部屋設備5と階段構成部7aとエレベーター構成部8bはそれぞれ上下方向で連結しており、メインモジュール2Aと隣接するサブモジュール2Bの通路4と部屋設備5はそれぞれ水平方向に連結している。
【0086】
階段構成部7aとエレベーター構成部8aを備えるメインモジュール2Aでは、階段構成部7aが積層することにより、メインモジュール2Aを上下方向に連通する階段7が形成され、エレベーター構成部8aが積層することにより、メインモジュール2Aを上下方向に連通するエレベーター8が形成されている。
【0087】
即ち、メインモジュール2Aとこのメインモジュール2Aの水平方向に連結されているサブモジュール2Bとで居住区構造体1の1つの階が構成されており、この1つの階を構成するメインモジュール2Aとサブモジュール2Bが積層した状態で複数階を有する居住区構造体1が構成されている。
【0088】
隣接し連結された居住区モジュール2の外壁は互いに溶接によって接合され、居住区モジュール2の外壁は、海洋構造物20を構成する構造鋼壁と構造的に連続するように建造されている。言い換えれば、居住区モジュール2の鋼壁(外壁)の位置を船体21側の機関室等の大骨や構造鋼壁と連続するように配置して、これらが互いに接合されていることで、居住区モジュール2の構造がより強固になる。即ち、居住区モジュール2は船体21に対して固定された状態になっている。これにより、居住区構造体1に生じる振動を軽減することができる。
【0089】
なお、この実施の形態では、1つの階を一つの居住区モジュール2で構成しているが、例えば、2つ以上の階を一つの居住区モジュール2で構成することもできる。例えば、6階建の居住区構造体1を2階建の居住区モジュール2を3つ積層することで形成する構成にすることもできる。
【0090】
また、この実施の形態では、図2で示すように、メインモジュール2Aの海洋構造物20の幅方向にサブモジュール2Bを連結している構成にしているが、居住区モジュール2の連結する方向は特に限定されず、例えば、メインモジュール2Aの海洋構造物20の船長方向にサブモジュール2Bを連結する構成にすることもできる。メインモジュール2A同士やサブモジュール2B同士を水平方向に連結する構成にすることもできる。
【0091】
また、この実施の形態では、居住区構造体1を複数の居住区モジュール2で構成し、船橋23はこの居住区構造体1の上部に形成されているが、例えば、居住区構造体1と同様に船橋23を居住区モジュール2で構成することもできる。
【0092】
次に、本発明の参考となる居住区構造体1の設計方法を説明する。まず、複数の部屋3と、通路4と、配管5aおよび配線5bおよびダクト5cから構成される部屋設備5とを有する居住区モジュール2を設計する。居住区モジュール2を設計する際には、居住区モジュール同士が隣接している状態では、居住区モジュール2の一方における通路4および部屋設備5のそれぞれの端部取り合い位置が、居住区モジュール2の他方の通路4および部屋設備5のそれぞれの端部取り合い位置に対向し合う位置になるように規格化して設計する。
【0093】
そして、居住区モジュール2を上下方向および/または水平方向に複数組み合わせて連結させることにより居住区構造体1を設計する。
【0094】
次に、本発明の参考となる居住区構造体1の建造方法を説明する。まず、複数の部屋3と、通路4と、配管5aおよび配線5bおよびダクト5cから構成される部屋設備5とを有する居住区モジュール2をそれぞれ建造する。居住区モジュール2を建造する際には、居住区モジュール2同士が隣接している状態では、居住区モジュール2の一方における通路4および部屋設備5のそれぞれの端部取り合い位置が、居住区モジュール2の他方の通路4および部屋設備5のそれぞれの端部取り合い位置に対向し合う位置になるように規格化して建造する。
【0095】
そして、居住区モジュール2を上下方向および/または水平方向に複数連結させると共に、連結した居住区モジュール2同士の通路4および部屋設備5をそれぞれ連結することにより居住区構造体1を建造する。
【0096】
本発明の居住区構造体1及び居住区構造体1の建造方法及び本発明の参考となる居住区構造体1の設計方法によれば、居住区構造体1を構成する居住区モジュール2の数を変更することによって居住区構造体1の最大居住人員数の調整を容易に行うことができる。そのため、多種多様なプロジェクトに対応することができる。また、海洋構造物20は商船とは異なり、船橋視界や主機による振動の影響を考慮する必要がなく、居住区構造体1の高さを容易に変更することができる。そのため、居住区モジュール2の積み上げもしくは削減による最大居住人員数の増減が容易である。
【0097】
さらに、居住区モジュール2を連結するときには、既に、それぞれの居住区モジュール2のうちでそれぞれの部屋3はモジュール内に収まっているので、居住区モジュール2の数を変更する場合においても、他の居住区モジュール2に影響されずに居住区モジュール2を追加/削減したり、居住人員数の異なる居住区モジュール2や他の機能を持った居住区モジュール2と自由に入れ替えることができる。そのため、居住区構造体1の最大居住人員数を変更する場合においても居住区構造体1全体としての大きな設計変更を行う必要がない。
【0098】
また、本発明の居住区構造体1の建造方法及び本発明の参考となる居住区構造体1の設計方法を継続して実施する場合には、2回目以降では、既に蓄積されている居住区モジュール2の設計データを利用して新たな居住区構造体1の設計、建造を行うことができる。具体的には、既に設計されている居住区モジュール2を組み合わせることで、新たに要求される居住人員数に合った新たな居住区構造体1を設計、建造することができる。なお、既に設計されている居住区モジュール2だけでは船主の要望に応えられない場合には、この要望を満たすために必要な設備や部屋3を備えた新たな居住区モジュール2を設計して、この新たに設計した居住区モジュール2と既に設計されている居住区モジュール2とを組み合わせて居住区構造体1を設計することもできる。即ち、プロジェクト毎に居住区構造体1全体を設計し直すのではなく、プロジェクト毎に変更するべき部分の居住区モジュール2のみを設計し直して組み替えるようにして居住区構造体1の設計、建造を行うことができる。
【0099】
このように、本発明の居住区構造体1の建造方法及び本発明の参考となる居住区構造体1の設計方法では、プロジェクト毎に居住区構造体1全体を設計するのではなく、複数に分割した居住区モジュール2の一部のみを新たな要求に従って設計し直すことで新たなプロジェクトに適合した居住区構造体1を設計することができるので、設計にかかる労力が大幅に低減される。そして、居住区モジュール2の設計データを蓄積すればするほど、新たな居住区モジュール2を設計する必要性は低くなるので、設計にかかる労力は低減していく。さらに、居住区構造体1を建造する段階においても、過去に建造した居住区モジュール2で蓄積されてきたノウハウを利用することができるので、居住区モジュール2を建造する労力は低減していく。
【0100】
さらに、この実施の形態では、メインモジュール2Aと、メインモジュール2Aよりも居住人員数が少ないサブモジュール2Bの2タイプの居住区モジュール2によって居住区構造体1を構成している。
【0101】
そして、メインモジュール2Aに居住区構造体1の主要設備となる階段構成部7a(階段7)やエレベーター構成部8a(エレベーター8)、設備トランク6(空調設備等)を備える構成にしているので、メインモジュール2Aによって居住区構造体1における基準となる居住人員数を設定した上で、連結するサブモジュールの数を変更することで居住区構造体1における最大居住人員を調整することができる。そのため、例えば、船主が設計が進んだ状況で最大居住人員数の変更を要求した場合においても、主要設備を備えたメインモジュール2A部分の構成は変えることなく、連結するサブモジュール2Bの数を変更するだけで最大居住人員数の変更を行うことができる。
【0102】
本発明の居住区構造体1及び居住区構造体1の建造方法及び本発明の参考となる居住区構造体1の設計方法によれば、居住人員数(居室数)や部屋タイプの異なる複数種類の居住区モジュール2を組み合わせることで様々な居住区構造体1を建造することができる。さらに、メインモジュール2Aの居住人員数が、サブモジュール2Bの居住人員数の整数倍で構成されていると、居住区構造体1の居住人員数をメインモジュール2Aおよび/またはサブモジュール2Bの増減によってサブモジュール2Bの居住人員数の人数刻みで増減することができる。例えば、図8で例示するように、居住人員数がそれぞれ30人(部屋3が広いタイプ)、40人(部屋3が標準タイプ)、50人(部屋3が狭いタイプ)と部屋数や部屋の大きさや一部屋当たりの収容人数等が異なる3種類のメインモジュール2Aと、居住人員数が10人のサブモジュール2Bの計4種類の居住区モジュール2を組み合わせれば、サブモジュール2Bとメインモジュール2Aをそれぞれ複数組み合わせることで、サブモジュール2Bの居住人員数である10人を最小単位として居住区構造体1の居住人員数を増減させることができる。また、図9の(a)〜(f)で示すように、メインモジュール2Aの組み合わせを変えることで居住人員数だけではなく、要望の異なる複数の船主やプロジェクトに対してもそれぞれの船主やプロジェクトの要望に合った様々なタイプの居住区構造体1を大きな設計変更をすることなく提案、建造することができる。
【0103】
例えば、居住区構造体1に要求される居住人員数が150人の場合には図9(a)で示すように居住人員数が40人のメインモジュール2Aを3つ積層させて、サブモジュール2Bを3つ連結させる構成にすることもできるし、図9(b)で示すように30人、40人、50人のメインモジュール2Aをそれぞれ1つずつ積層させて、サブモジュール2Bを3つ連結させる構成にして、広さが異なる部屋3を備えたタイプの居住区構造体1を形成することもできる。このように、複数種類の居住区モジュール2を組み合わせることで様々な居住人員数の居住区構造体1を構成することができるので、複数種類の居住区モジュール2を事前に設計してストックしておけば、ストックしている居住区モジュール2を組み合わせることで、迅速かつ容易に様々なタイプの居住区構造体1を設計、建造することができる。
【0104】
また、本発明の居住区構造体1及び居住区構造体1の建造方法及び本発明の参考となる居住区構造体1の設計方法によれば、居住区構造体1の建造途中で船主の要求する居住人員数が変更された場合においても、居住区モジュール2のいくつかを増減あるいは変更するだけで他の居住区モジュール2に影響することなく、居住人員数を変更することができる。そのため、設計や施工工程を大きく変更する必要がない。例えば、数十人程度の変更であれば、連結させるサブモジュール2Bの数を増減させることで迅速に対応することができる。
【0105】
また、4種類の居住区モジュール2の組み合わせにより構成された居住区は、第1デッキを1人部屋と2人部屋で構成された最大居住人員数が30人のメインモジュール2Aとし、第2デッキを2人部屋で構成された最大居住人員数が40人のメインモジュール2Aとし、第3デッキを2人部屋と4人部屋で構成された最大居住人員数が50人のメインモジュール2Aとし、これらの第1デッキ、第2デッキ、第3デッキの右舷、左舷、表側、艫側に取り外し可能な最大居住人員数が10人のサブモジュール2Bを組み合わせて構成される。この構成により、10人刻みで居住人員数を増減できる。
【0106】
この実施の形態では、居住区モジュール2の全面、または、他の居住区モジュール2の鋼壁にて代用できる場合には他の居住区モジュール2との接合面を除く面全てが鋼壁によって構成された直方体で構成しているので、通路4および部屋設備5のそれぞれの端部取り合い位置の共通化も簡易な構成となり、直方体であるので居住区モジュール2を建造するのが容易である。
【0107】
また、居住区モジュール2を直方体で構成することで、一つの居住区モジュール2に対して、上下左右前後方向に他の居住区モジュール2を連結することができるので、居住区構造体1を建造する場所の形状に合わせて様々な形状の居住区構造体1を建造することができる。例えば、居住区モジュール2を水平方向において船長方向に少しずらして配置することにより、浮体式生産貯蔵積出設備(FPSO)等の海洋構造物の船首尾の上甲板の船体形状の曲線に合わせて配置することが可能となる。
【0108】
なお、ここでいう居住区モジュール2が鋼壁によって構成された直方体であるということには、居住区モジュール2毎に全ての面が鋼壁で覆われている構成に限られず、連結する他の居住区モジュール2の鋼壁を利用して直方体構造を形成する構成も含まれている。換言すると、居住区モジュール2同士を連結した状態で、連結部分がそれぞれの居住区モジュール2の鋼壁2枚で構成されている場合も、いずれか一方の居住区モジュール2の外壁を構成する鋼壁を2つの居住区モジュール2で共有することで、連結部分が1枚の鋼壁となって構成されている場合も含んでいる。
【0109】
この実施の形態では、メインモジュール2Aの両側にサブモジュール2Bを連結させることで直方体形状の居住区構造体1を建造しているが、例えば、図7で示すように、居住区モジュール2をずらして配置する構成にすることで、船尾部あるいは船首部の曲線の形状に合わせた居住区構造体1を建造することもできる。図7で示す実施の形態では、メインモジュール2Aに対してサブモジュール2Bを船首部方向へずらして配置することで、船尾部の曲線の形状に合うように居住区構造体1を建造している。
【0110】
このように、居住区モジュール2をずらして配置する場合においても、ずらして配置した際に、隣接している居住区モジュール2同士の通路4および部屋設備5のそれぞれの取り合い位置が居住区モジュール2の他方の通路4および部屋設備5のそれぞれの端部取り合い位置に対向し合う位置になるように規格化しておくことで、連結作業を迅速かつ容易に行うことができる。
【0111】
なお、居住区モジュール2の形状に関しては、居住区モジュール2を単一の直方体で構成すると、工作性や組み合わせ性がよいが、この単一の直方体に限らず、いくつかの直方体の組み合わせで構成することができる。例えば、居住区モジュール2をL字型形状(かぎ型形状)で構成することもできる。また、工作性が悪くなるが、曲線を有する形状で構成することもできる。
【0112】
本発明の居住区構造体1及び居住区構造体1の建造方法及び本発明の参考となる居住区構造体1の設計方法によれば、複数の居住区モジュール2を同時に建造することができ、居住区モジュール2同士を連結させる際にも、隣接している居住区モジュール2同士の通路4および部屋設備5のそれぞれの取り合い位置が居住区モジュール2の他方の通路4および部屋設備5のそれぞれの端部取り合い位置に対向し合う位置になるように規格化されて配置されているので連結作業を迅速かつ容易に行うことができる。そのため、従来の壁パネルや部屋を1つのユニットとして建造する従来の場合に比して短い施工期間で居住区構造体1を建造することができる。
【0113】
さらに、この実施の形態のメインモジュール2Aは上下方向に連通する階段構成部7aを備えており、メインモジュール2Aが積層されることで、階段構成部7aによってメインモジュール2Aを上下方向に連通する階段7が形成される構成になっている。つまり、メインモジュール2Aを積層する前に、メインモジュール2A毎に階段構成部7aを建造することができる。そのため、居住区モジュール2とは別に階段を建造する場合に比して、短い施工期間で居住区構造体1を建造することができる。
【0114】
同様に、この実施の形態のメインモジュール2Aは上下方向に連通するエレベーター構成部8aを備えており、メインモジュール2Aが積層されることで、エレベーター構成部8aによってメインモジュール2Aを上下方向に連通するエレベーター8が形成される構成になっている。つまり、メインモジュール2Aを積層する前に、メインモジュール2A毎にエレベーター構成部8aを建造することができる。そのため、居住区モジュール2とは別にエレベーターを建造する場合に比して、短い施工期間で居住区構造体1を建造することができる。
【0115】
本発明の居住区構造体1及び居住区構造体1の建造方法及び本発明の参考となる居住区構造体1の設計方法によれば、居住区モジュール2同士が連結し、通路4および部屋設備5が居住区構造体1全体として連結するので、部屋3が個々に空調設備を備える必要がなく、例えば、この実施の形態のように居住区構造体1としてメインモジュール2Aに空調設備(設備トランク6)を備えれば、メインモジュール2Aだけでなくサブモジュール2Bを含むすべての部屋3を一元的に空調する構成にすることができる。そのため、部屋3ごとに空調設備を設ける場合に比して、空調設備の効率を向上させることができ、居住区構造体1全体としての省エネルギー化を図ることができる。
【0116】
この実施の形態では、居住区モジュール2の外壁のひとつ以上と海洋構造物20を構成する構造鋼壁とを構造的に連続させる構成にしているので、海洋構造物20と居住区モジュール2で構成された居住区構造体1が構造的に安定する。そのため、居住区構造体1に生じる振動は軽減され、耐久性の優れた居住区構造体1となる。
【0117】
また、この実施形態では、居住区モジュール2の外形寸法の少なくとも1辺の長さ寸法を、海洋構造物20を構成するロンジテューディナルスティフナ同士の間隔寸法(ロンジスペース)あるいはフレーム同士の間隔寸法(フレームスペース)の整数倍で形成する構成にし、海洋構造物20の骨組みを構成するロンジテューディナルスティフナやフレームの位置に合わせて居住区モジュール2を配置している。このように配置すると、海洋構造物20の骨組みを利用して居住区モジュール2の補強を容易に行うことができる。また、海洋構造物20の骨組みを利用して居住区モジュール2の補強を行うことで居住区モジュール2の強度を高めることができる。
【0118】
この実施の形態では、隣接し連結された居住区モジュール2の外壁は溶接によって接合される構成になっているが、通路4および部屋設備5のそれぞれの端部取り合いをそれぞれ連結および取り外しができる機構で構成し、居住区モジュール2同士の連結および取り外しができる構成にすると、通路4および部屋設備5のそれぞれの端部取り合い位置が対向し合う位置になっており、各々の通路4および部屋設備5の配置を変更することなく、居住区構造体1における居住区モジュール2の数をより容易に変更することができる。そのため、居住区構造体1における最大居住人員数をより容易に変更することができる。
【0119】
具体的には、例えば、居住区モジュール2の外壁同士や通路4は着脱可能な接合金具等によって連結し、部屋設備5のそれぞれの端部取り合い同士は着脱可能な接続プラグで連結する構成にすることで、居住区モジュール2同士の連結および取り外しができる構成にする。
【0120】
居住区モジュール2同士の連結および取り外しができる構成にすると、例えば、船主が最大居住人員数の変更を望んだ場合にも速やかに対応することができる。また、例えば、一度プロジェクトで使用した海洋構造物20を再度他のプロジェクトで使用するため、最大居住人員の変更が必要であるといった場合においても、大きな設計変更をすることなく、迅速かつ容易に居住区構造体1の最大居住人員を変更することができる。また、例えば、プロジェクトの進行段階に応じて居住区構造体1の最大居住人員数を随時変更することもできる。
【0121】
具体的には、例えば、海洋構造物20の自航または曳航による移動時には、移動に必要な居住人員分に合わせた居住区構造体1を建造し、生産プラント搭載と同時にコミッショニングに必要な居住人員数に合わせて居住区モジュール2を追加搭載して居住区構造体1を増築することで、居住区構造体1の居住人員数を増やすこともできる。つまり、海洋構造物20が出航する段階では、移動時に必要な分の居住区構造体1のみを建造すればよいので、海洋構造物20の建造工期(建造スケジュール)を短縮することができる。
【0122】
また、例えば稼働海域での生産プラントのコミッショニング時に必要とされる居住人員が最大であり、通常稼働時に必要とされる居住人員数はコミッショニング時に比べて少ない場合には、コミッショニングが終了した後に減る人員分の居住区モジュール2を取り外すことにより居住区構造体1が占めるスペースを削減し、この削減したスペースを有効利用することもできるし、居住区構造体1全体としての重さを軽減することもできる。
【0123】
一部の居住区モジュール2に不備が生じた場合においても、不備が生じた居住区モジュール2を取り外して、他の居住区モジュール2と交換することができるので、居住区構造体1の修繕を迅速に行うことができる。また、ある海洋構造物20に設置していた居住区モジュール2を他の海洋構造物20に移設して利用することもできる。
【0124】
また、居住区モジュール2内にサイズおよび/または形状において共通のデザインを有するユニット化された部屋3を2つ以上有する構成にすると、部屋3がユニット化されることで居住区モジュール2に部屋3を形成する施工期間が短くなるため、より短い施工期間で居住区構造体1を建造することができる。
【産業上の利用可能性】
【0125】
本発明の海洋構造物における居住区構造体、海洋構造物、海洋構造物における居住区構造体の建造方法、及び、海洋構造物の建造方法によれば、居住区モジュールの数を変更することによって居住区構造体の最大居住人員数を容易に変更することができ、居住区モジュールの数を変更する場合においても大きな設計変更を行う必要がない。また、居住区モジュールにおける通路および部屋設備のそれぞれの取り合い位置は共通化されているので、居住区モジュール同士の連結作業を迅速に行うことができるので、海洋構造物における居住区を形成する居住区構造体として利用できる。
【符号の説明】
【0126】
1 (海洋構造物における)居住区構造体
2 居住区モジュール
2A メインモジュール
2B サブモジュール
3 部屋
4 通路
5 部屋設備(配管および配線およびダクト)
5a 配管
5b 配線
5c ダクト
6 設備トランク
7 階段
7a 階段構成部
8 エレベーター
8a エレベーター構成部
20 海洋構造物
21 船体
22 上甲板
23 船橋(ブリッジ)
24 ブリッジウィング
25 エンジンケーシング
26 煙突(ファンネル)
27 推進器(プロペラ)
28 舵
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9