特許第6607004号(P6607004)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6607004車両重心推定システムおよび車両重心推定方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6607004
(24)【登録日】2019年11月1日
(45)【発行日】2019年11月20日
(54)【発明の名称】車両重心推定システムおよび車両重心推定方法
(51)【国際特許分類】
   G01M 1/12 20060101AFI20191111BHJP
   B60G 17/018 20060101ALI20191111BHJP
【FI】
   G01M1/12
   B60G17/018
【請求項の数】6
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2015-234511(P2015-234511)
(22)【出願日】2015年12月1日
(65)【公開番号】特開2017-101987(P2017-101987A)
(43)【公開日】2017年6月8日
【審査請求日】2018年11月29日
(73)【特許権者】
【識別番号】000000170
【氏名又は名称】いすゞ自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100166006
【弁理士】
【氏名又は名称】泉 通博
(74)【代理人】
【識別番号】100124084
【弁理士】
【氏名又は名称】黒岩 久人
(74)【代理人】
【識別番号】100154070
【弁理士】
【氏名又は名称】久恒 京範
(72)【発明者】
【氏名】岩間 俊彦
(72)【発明者】
【氏名】藤巻 由太
【審査官】 福田 裕司
(56)【参考文献】
【文献】 特開2015−096370(JP,A)
【文献】 特開2007−022287(JP,A)
【文献】 特開2006−321296(JP,A)
【文献】 特開平11−304663(JP,A)
【文献】 中国特許出願公開第101349606(CN,A)
【文献】 米国特許出願公開第2009/0235724(US,A1)
【文献】 米国特許出願公開第2008/0272899(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01M 1/12
B60G 17/018
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
バネ下と、当該バネ下上に設けられた左右のサスペンションと、当該サスペンションに支持されるバネ上と、を備える車両について、前記バネ上の重心の高さを推定する車両重心推定システムであって、
前記左右のサスペンションの支持力に基づいて、前記バネ上のロールモーメントを算出するロールモーメント算出部と、
前記車両の幅方向の加速度である横加速度を測定する横加速度測定部と、
前記横加速度に対する前記バネ上のロールモーメントの比例係数を算出し、当該比例係数を前記バネ上の質量で除した値を、前記車両のロール中心から前記バネ上の重心までの高さとして算出する重心高さ算出部と、を備えることを特徴とする車両重心推定システム。
【請求項2】
前記重心高さ算出部は、複数の時刻について、前記横加速度と前記バネ上のロールモーメントとを求めて、当該横加速度およびバネ上のロールモーメントに最小二乗法を適用して求めた近似値を、前記比例係数として用いることを特徴とする請求項1に記載の車両重心推定システム。
【請求項3】
前記重心高さ算出部で算出した前記車両のロール中心から前記バネ上の重心までの高さに、前記車両のロール中心の高さを加えることで、地上から前記バネ上の重心までの高さを算出する地上重心高さ算出部をさらに備えることを特徴とする請求項1または2に記載の車両重心推定システム。
【請求項4】
バネ下と、当該バネ下上に設けられた左右のサスペンションと、当該サスペンションに支持されるバネ上と、を備える車両について、前記バネ上の重心の高さを推定する車両重心推定方法であって、
前記左右のサスペンションの支持力を測定し、当該支持力に基づいて、前記バネ上のロールモーメントを算出する第1ステップと、
前記車両の幅方向の加速度である横加速度を測定する第2ステップと、
前記横加速度に対する前記バネ上のロールモーメントの比例係数を算出し、当該比例係数を前記バネ上の質量で除した値を、前記車両のロール中心から前記バネ上の重心までの高さとして算出する第3ステップと、を備えることを特徴とする車両重心推定方法。
【請求項5】
前記第3ステップでは、複数の時刻について、前記横加速度と前記バネ上のロールモーメントとを求めて、当該横加速度およびバネ上のロールモーメントに最小二乗法を適用して求めた近似値を、前記比例係数として用いることを特徴とする請求項4に記載の車両重心推定方法。
【請求項6】
前記第3ステップで算出した前記車両のロール中心から前記バネ上の重心までの高さに、前記車両のロール中心の高さを加えることで、地上から前記バネ上の重心までの高さを算出する第4ステップをさらに備えることを特徴とする請求項4または5に記載の車両重心推定方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、商用車などの車両の重心の位置を推定するシステムおよび方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、車両の横転を防ぐため、車両の重心高さを推定することが重要となっている。特に商用車では、積荷の状態によって車両全体の重心の位置が大きく変化するため、積荷を積載した状態の重心高さを推定することが重要となる。
【0003】
車両の重心高さを推定する技術に関して、例えば、以下のような提案がされている(特許文献1参照)。
すなわち、特許文献1では、ロールセンタ高さを調整可能なサスペンション装置を設けておき、積載条件が変化した場合には、前後輪のロールセンタ高さを調整することで、ロール挙動を一定とする。
具体的には、前後輪の目標とするロールセンタ高さを求めて、この目標とするロールセンタ高さとなるように、サスペンション装置のアクチュエータを制御する。
【0004】
ここで、前後輪の目標とするロールセンタ高さは、以下の手順で求められる(特許文献1の段落番号[0016]〜[0017]を参照)。
すなわち、乗員が乗車した状態における乗員の重心高さが一定であると考えて、この乗員が乗車した状態におけるバネ上車体の質量変化と、空車状態におけるバネ上車体の重心高さおよび質量とに基づいて、乗員が乗車した状態におけるバネ上車体の重心高さを求める。その後、旋回横加速度に応じたロールモーメントを基準状態に維持するのに必要な、目標ロールセンタの高さを求めて、この目標ロールセンタ高さを前後輪に配分する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2007−22287号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1では、乗員が乗車した状態における乗員の重心高さを一定としているが、実際の商用車では、特許文献1の乗員に相当する積荷の配置や質量は、物流拠点などに立ち寄るたびに大きく変化するので、積荷の重心高さを一定とすることはできない。
【0007】
本発明は、積荷の配置や質量が様々に変化し、積荷の重心高さが変化する場合であっても、バネ上の重心の高さを高精度で推定できる車両重心推定システムおよび車両重心推定方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の車両重心推定システム(例えば、後述の車両重心推定システム10)は、バネ下(例えば、後述のバネ下2)と、当該バネ下上に設けられた左右のサスペンション(例えば、後述のエアスプリング4L、4R)と、当該サスペンションに支持されるバネ上(例えば、後述のバネ上5)と、を備える車両(例えば、後述の車両1)について、前記バネ上の重心の高さを推定する車両重心推定システムであって、前記左右のサスペンションの支持力に基づいて、前記バネ上のロールモーメントを算出するロールモーメント算出部(例えば、後述のロールモーメント算出部12)と、前記車両の幅方向の加速度である横加速度を測定する横加速度測定部(例えば、後述の横加速度測定部13)と、前記横加速度に対する前記バネ上のロールモーメントの比例係数を算出し、当該比例係数を前記バネ上の質量で除した値を、前記車両のロール中心から前記バネ上の重心までの高さとして算出する重心高さ算出部(例えば、後述の重心高さ算出部15)と、を備えることを特徴とする。
【0009】
本発明の車両重心推定方法は、バネ下と、当該バネ下上に設けられた左右のサスペンションと、当該サスペンションに支持されるバネ上と、を備える車両について、前記バネ上の重心の高さを推定する車両重心推定方法であって、前記左右のサスペンションの支持力を測定し、当該支持力に基づいて、前記バネ上のロールモーメントを算出する第1ステップ(例えば、後述のステップS1、S2、S4)と、前記車両の幅方向の加速度である横加速度を測定する第2ステップ(例えば、後述のステップS3、S4)と、前記横加速度に対する前記バネ上のロールモーメントの比例係数を算出し、当該比例係数を前記バネ上の質量で除した値を、前記車両のロール中心から前記バネ上の重心までの高さとして算出する第3ステップ(例えば、後述のステップS5〜S7)と、を備えることを特徴とする。
【0010】
この発明によれば、横加速度に対するバネ上のロールモーメントの比例係数を算出し、この比例係数をバネ上の質量で除した値を、車両のロール中心からバネ上重心までの高さとして算出する。
よって、物流拠点などに立ち寄ることで積荷の配置や質量が様々に変化し、積荷の重心高さが変化する場合であっても、サスペンションの支持力および横加速度を測定するだけで、車両のロール中心からバネ上の重心までの高さを推定できる。また、外部の特別な設備を必要とせず、通常の走行中に、車両のロール中心からバネ上の重心までの高さを容易に推定できる。
【0011】
本発明の車両重心推定システムでは、前記重心高さ算出部は、複数の時刻について、前記横加速度と前記バネ上のロールモーメントとを求めて、当該横加速度およびバネ上のロールモーメントに最小二乗法を適用して求めた近似値を、前記比例係数として用いることを特徴とする。
【0012】
本発明の車両重心推定方法は、前記第3ステップでは、複数の時刻について、前記横加速度と前記バネ上のロールモーメントとを求めて、当該横加速度およびバネ上のロールモーメントに最小二乗法を適用して求めた近似値を、前記比例係数として用いることを特徴とする。
【0013】
この発明によれば、最小二乗法により横加速度に対するロールモーメントの比例係数を求めたので、横加速度およびロールモーメントの測定値にばらつきがあっても、車両のロール中心からバネ上の重心の高さを高精度で推定できる。
【0014】
本発明の車両重心推定システムは、前記重心高さ算出部で算出した前記車両のロール中心から前記バネ上の重心までの高さに、前記車両のロール中心の高さを加えることで、地上から前記バネ上の重心までの高さを算出する地上重心高さ算出部(例えば、後述の地上重心高さ算出部16)をさらに備えることを特徴とする。
【0015】
本発明の車両重心推定方法は、前記第3ステップで算出した前記車両のロール中心から前記バネ上の重心までの高さに、前記車両のロール中心の高さを加えることで、地上から前記バネ上の重心までの高さを算出する第4ステップ(例えば、後述のステップS8)をさらに備えることを特徴とする。
【0016】
この発明によれば、地上からバネ上の重心までの高さを推定できる。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、積荷の配置や質量が様々に変化し、積荷の重心高さが変化する場合であっても、走行中にロールモーメントおよび横加速度を測定するだけで、車両のロール中心からバネ上の重心までの高さ、さらに、地上からバネ上の重心までの高さを推定できる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】本発明の一実施形態に係る車両重心推定システムが設けられた車両を進行方向側から視た模式図である。
図2】前記実施形態に係る車両に作用する力を示す模式図である。
図3】前記実施形態に係る車両重心推定システムの構成を示すブロック図である。
図4】前記実施形態に係る車両重心推定システムの動作を示すフローチャートである。
図5】前記実施形態に係る車両の横加速度とロールモーメントとの関係を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明の一実施形態を図面に基づいて説明する。
図1は、本発明の一実施形態に係る車両重心推定システム10が設けられた車両1を車両後方から視た模式図である。
車両1は、バネ下2と、バネ下2に取り付けられた左後輪3Lおよび右後輪3Rと、バネ下2の上に設けられた左右のサスペンションとしてのエアスプリング4L、4Rと、左右のエアスプリング4L、4Rに支持されたバネ上5と、を備える。バネ上5には、積荷6が積載されている。
【0020】
車両1については、図2に示すように、ロール中心RCまわりのモーメントについて、以下の式(1)が成立する。式(1)中、Mは、バネ上5のロールモーメントであり、hsmは、ロール中心RCからバネ上5の重心Qまでの高さであり、Fは、バネ上5に作用する遠心力である。また、msmはバネ上5の質量であり、Gは、車両1の幅方向の加速度である横加速度であり、Mconstは積荷6が側方にずれて積載されることなどによる、バネ上5のロールモーメントのオフセット量である。
【0021】
【数1】
【0022】
バネ上5に作用する遠心力Fyについて、以下の式(2)が成立する。式(2)中、msmはバネ上5の質量であり、Gyは、車両1の幅方向の加速度である横加速度である。
【0023】
【数2】
【0024】
上記の式(1)に式(2)を代入することで式(3)が得られる。
【0025】
【数3】
【0026】
上記の式(3)の時刻aにおいて成立する式を、時間により変化する記号に添え字aを付けて表すと、式(4)となる。また、時刻aとは異なる時刻bにおいて成立する式を、時間により変化する記号に添え字bを付けて表すと、式(5)となる。ここで、物流拠点間の走行中であれば、積荷6の配置および質量は変化しないと考えられるので、車両1のロール中心RCからバネ上5の重心Qまでの高さhsm、バネ上5の質量msm、バネ上5のロールモーメントのオフセット量Mconstは一定であると考えられる。
【0027】
【数4】
【0028】
【数5】
【0029】
以上の式(4)および式(5)の辺々差分をとり、hsmについて変形すると、以下の式(6)となり、ロール中心RCからバネ上5の重心Qまでの高さhsmを求めることができる。式(6)中のDは、横加速度Gの変化量に対する車両1のロールモーメントMの変化量で表される比例係数である。
【0030】
【数6】
【0031】
後軸のサスペンションにエアスプリングを用いる場合、ロールモーメントMは、後軸エアスプリングの変位および圧力から、以下の式(7)を用いても求めることができる。
すなわち、ロールモーメントMについて、以下の式(7)が成立する。
【0032】
式(7)中、Kφ13は、エアスプリング以外の前後のサスペンションロール剛性の和である統合ロール剛性であり、車両に固有の一定の値である。式(7)中のMは、後輪3L、3Rのエアスプリング4L、4Rが支持するロールモーメントである。また、φ2は、サスロール角であり、左右のエアスプリング4L、4R間の距離と左右のエアスプリング4L、4Rの上下方向の相対変位hdから求めることができる。
【0033】
【数7】
【0034】
ここで、式(7)中のMは、左右のエアスプリング4L、4R間の距離Trdとそれぞれのエアスプリングの支持力P、Pから式(8)を用いて求めることができる。
【0035】
【数8】
【0036】
また、前後のサスペンションにエアスプリングを用いず、リーフスプリングあるいはコイルスプリングなどの機械式ばねを用いた場合、式(7)中のMを0として、式(9)を用いてバネ上のロールモーメントMを求めることができる。
【0037】
【数9】
【0038】
また、前後のサスペンションにエアスプリングを用いず、リーフスプリングあるいはコイルスプリングなどの機械式ばねを用いており、かつ、前後左右のサスペンションの変位が分かる場合、式(10)を用いてバネ上のロールモーメントMを求めることもできる。
【0039】
式(10)は、車両が四輪の場合である。式(10)中、FZ1Lは前軸左側サスペンションのばね上の支持力であり、FZ1Rは前軸右側サスペンションのバネ上の支持力であり、FZ2Lは後軸左側サスペンションのバネ上の支持力であり、FZ2Rは後軸右側サスペンションのバネ上の支持力である。これらサスペンションの支持力Fzは、各サスペンションの変位から、予め生成したマップなどに従って求められる。
【0040】
【数10】
【0041】
なお、式(10)は、車両が四輪の場合としたが、車両が六輪あるいは八輪の場合についても、式(10)と同様の式を用いて求めることができる。
【0042】
車両1には、バネ上5の重心の高さを推定する車両重心推定システム10が設けられる。
図3は、車両重心推定システム10の構成を示すブロック図である。
車両重心推定システム10は、支持力測定部11と、ロールモーメント算出部12と、横加速度測定部13と、質量測定部14と、重心高さ算出部15と、地上重心高算出部16と、を備える。
【0043】
支持力測定部11は、左右のエアスプリング4L、4Rの支持力P、Pを測定する。
ロールモーメント算出部12は、エアスプリング4L、4R間の距離Trdおよび左右のエアスプリング4L、4Rの支持力P、Pに基づいて、バネ上5のロールモーメントMを算出する。
横加速度測定部13は、車両の横加速度Gを測定する。
質量測定部14は、バネ上5の質量msmを測定する。
【0044】
重心高さ算出部15は、横加速度Gに対するバネ上5のロールモーメントMの比例係数Dを算出し、この比例係数Dをバネ上5の質量msmで除した値を、車両1のロール中心RCからバネ上5の重心Qまでの高さhsmとして算出する。
【0045】
地上重心高さ算出部16は、重心高さ算出部15で算出した車両1のロール中心RCからバネ上5の重心Qまでの高さhsmに、地上からロール中心RCまでの高さHRCを加算し、地上からバネ上5の重心Qまでの高さHCGを算出する。
【0046】
次に、この車両重心推定システム10の動作を、図4のフローチャートを参照しながら説明する。
まず、ステップS1では、支持力測定部11が、左右のエアスプリング4L、4Rの支持力P、Pを測定するとともに、左右のエアスプリング4L、4Rの上下方向の相対変位hdを測定する。
【0047】
ステップS2では、ロールモーメント算出部12が、エアスプリング4L、4Rの支持力P、Pを用いてエアスプリング4L、4Rが支持するロールモーメントMを算出するとともに、エアスプリング4L、4Rの相対変位hdを用いてサスロール角φを算出し、上述の式(7)に従い、バネ上5のロールモーメントMを算出する。
ステップS3では、横加速度測定部13が、車両1の横加速度Gを測定する。
【0048】
ステップS4では、重心高さ算出部14が、ステップS1〜S3を繰り返す。つまり、停車中あるいは走行中の時刻t、t、t・・・tにおいて、ステップS1〜S3を実行し、各時刻t〜tにおける、ロールモーメントMx1、Mx2、Mx3・・・Mx、および横加速度Gy1、Gy2、Gy3・・・Gynを求める。
【0049】
ステップS5では、重心高さ算出部14が、図5に示すように、横加速度Gを横軸とし、ロールモーメントMを縦軸とするグラフを生成し、このグラフ上に、ステップS4で求めた値をプロットして、最小二乗法によりM/Gの近似直線を求める。この近似直線の傾きを比例係数Dとする。
【0050】
ステップS6では、質量測定部14が、車両1の質量を測定する。
ステップS7では、重心高さ算出部14が、式(3)に従い、車両のロール中心RCからバネ上重心Qまでの高さhsmを算出する。
【0051】
ステップS8では、地上重心高さ算出部16が、車両1のロール中心RCからバネ上5の重心Qまでの高さhsmを用いて、地上からバネ上5の重心Qまでの高さHCGを算出する。
【0052】
[本実施形態における効果]
以上説明したように、本実施形態における車両重心推定システム10によれば、横加速度Gに対するバネ上5のロールモーメントMの比例係数Dを算出し、この比例係数Dをバネ上5の質量msmで除した値を、車両1のロール中心からバネ上5の重心Qまでの高さhsmとして算出する。
よって、物流拠点などに立ち寄って積荷の配置や質量が様々に変化し、積荷の重心高さが変化した場合であっても、左右のエアスプリング4L、4Rの支持力P、P、相対変位hd、および横加速度Gを測定するだけで、車両のロール中心RCからバネ上5の重心Qまでの高さを推定できる。また、外部の特別な設備を必要とせず、通常の走行中に、車両のロール中心RCからバネ上5の重心Qまでの高さを容易に推定できる。
【0053】
また、最小二乗法により横加速度Gに対するロールモーメントMの比例係数Dを求めたので、横加速度GおよびロールモーメントMの測定値にばらつきがあっても、バネ上5の重心高さを高精度で推定できる。
【0054】
以上、本発明を実施の形態を用いて説明したが、本発明の技術的範囲は上記実施の形態に記載の範囲には限定されない。上記実施の形態に、多様な変更又は改良を加えることが可能であることが当業者に明らかである。そのような変更又は改良を加えた形態も本発明の技術的範囲に含まれ得ることが、特許請求の範囲の記載から明らかである。
【符号の説明】
【0055】
t 時刻
バネ上のロールモーメント
横加速度
D Gに対するMの比例係数
左側のエアスプリングの支持力
右側のエアスプリングの支持力
バネ上に作用する遠心力
sm ロール中心からバネ上の重心までの高さ
sm バネ上の質量
φ2 サスロール角
1 車両
2 バネ下
3L 左後輪
3R 右後輪
4L、4R エアスプリング
5 バネ上
6 積荷
10 車両重心推定システム
11 支持力測定部
12 ロールモーメント算出部
13 横加速度測定部
14 質量測定部
15 重心高さ算出部
16 地上重心高さ算出部
図1
図2
図3
図4
図5