(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0020】
図1には本発明の一実施形態に係る画像処理装置1の概略の構成が、
図2には画像処理装置1およびその制御部100のハードウェア構成が、それぞれ示されている。
【0021】
画像処理装置1は、コピー機、プリンタ、およびファクシミリ機などの機能を集約したMFPである。画像処理装置1は、コピー、画像のデータ化(スキャン)、およびファクシミリ送信などのように、シート状の原稿8から画像を読み取ってその画像データを処理するジョブを実行する際には、原稿8の傾き量を検出する傾き量検出装置として動作する。
【0022】
画像処理装置1は、自動原稿送り装置(ADF:Auto Document Feeder)10、スキャナ20、プリンタ部30、給紙部35、給紙キャビネット40、自動両面ユニット50、操作パネル60、ファクシミリユニット70、通信インターフェース75、制御部100、および補助記憶装置120を備える。
【0023】
自動原稿送り装置10は、給紙トレイ11および排紙トレイ16を有し、給紙トレイ11にセットされた1枚または複数枚の原稿8を排紙トレイ16へ搬送する。搬送中に、スキャナ20によって原稿8の画像が読み取られる。給紙トレイ11は、原稿8の有無を検出するセンサを有する。
【0024】
自動原稿送り装置10は、スキャナ20のプラテンガラス21を覆うカバーとして、背面側の軸を中心に回転して開閉可能に構成されている。画像処理装置1のユーザは、自動原稿送り装置10の前端部を持ち上げてプラテンガラス21を露出させ、プラテンガラス21の上に原稿を載置することができる。
【0025】
スキャナ20は、自動原稿送り装置10によって搬送されている原稿8またはユーザによってプラテンガラス21の上に置かれた原稿8から、それに記録されている画像を光学的に読み取る。スキャナ20は、読み取った画像の各画素の階調値を表わす画像データを制御部100へ送る。
【0026】
なお、自動原稿送り装置10およびスキャナ20の構成については、後にさらに詳しく述べる。
【0027】
プリンタ部30は、電子写真法によって用紙に画像を印刷する。イエロー、マゼンダ、シアンおよびブラックの各色のトナー像を形成するための感光体ドラム31a 、31b 、31c 、31d および露光走査ユニット32a 、32b 、32c 、32dを備える。色の異なる4つのトナー像を転写ベルト33に重ねて転写し、重なったトナー像を給紙部35から搬送されてきた用紙に転写する。
【0028】
給紙部35は、用紙を収納しておくための給紙カセット36,38と、給紙カセット36,38から用紙を繰り出すためのピックアップローラ37,39とを備え、プリンタ部30に用紙を供給する。
【0029】
給紙キャビネット40は、給紙部35と同様に給紙カセット41,43と、給紙カセット41,43から用紙を繰り出すためのピックアップローラ42,44とを備える。ピックアップローラ42,44によって繰り出された用紙は、給紙部35の用紙搬送路を経由してプリンタ部30に供給される。
【0030】
自動両面ユニット50は、両面印刷を可能にするためのユニットであり、片面に画像が印刷された用紙をプリンタ部30から取り込み、表裏を反転させてプリンタ部30へ用紙を戻す。
【0031】
操作パネル60は、ユーザによる入力操作のための画面を表示するタッチパネルディスプレイ61と、ハードキーが配置されたキー入力部62とを有し、入力操作に応じた信号を制御部100に送る。
【0032】
ファクシミリユニット70は、外部のファクシミリ端末との間でG3などのプロトコルを用いて画像データをやりとりする。
【0033】
通信インターフェース75は、パーソナルコンピュータ、スマートフォン、および画像処理装置1に着脱可能なUSBメモリなどの機器と通信回線を介して通信するためのインターフェースである。通信回線として、ローカルエリアネットワーク回線(LAN回線)、インターネット、近距離無線通信回線などが用いられる。
【0034】
制御部100は、画像処理装置1の全体的な制御を受け持つメインコントローラである。
図2に示すように制御部100は、CPU(Central Processing Unit )101、RAM(Random Access Memory)102、ROM(Read Only Memory)103、および画像処理部104を備える。
【0035】
ROM103には、画像処理装置1をコピー機、ファクシミリ機、およびイメージリーダなどとして動作させるために、自動原稿送り装置10、スキャナ20およびプリンタ部30などを制御するプログラムが記憶されている。さらに、画像処理部104を制御して原稿8の傾き量SVの検出および読取り画像の傾き補正を行うための傾き補正用プログラムが記憶されている。これらプログラムは、必要に応じてRAM102にロードされ、CPU101によって実行される。
【0036】
画像処理部104は、スキャナ20から受け取った画像データにシェーディング補正や色収差補正といった読取り光学系の特性に関わる処理を施す。さらに、画像処理部104は、原稿8の傾き量SVを検出するための処理の一部または全部、および検出した傾き量SVに基づいて画像データを補正する傾き補正処理の一部または全部を受け持つ。画像処理部104は、傾き量SVの検出をソフトウェアのみで行う場合よりも高速に行うためのハードウェアを含んで構成される。
【0037】
補助記憶装置120は、制御部100から送られてくる画像データを記憶する。補助記憶装置120として、ハードディスクドライブまたはSSD(Solid State Drive )などが用いられる。
【0038】
図3には自動原稿送り装置10およびスキャナ20の構成が示されている。
【0039】
自動原稿送り装置10は、給紙トレイ11、ピックアップローラ12a、捌きローラ対12b、複数の送りローラ対12c,12d,12e,12f,12g,12h、搬送路13、背景板14,15、および排紙トレイ16などを有する。
【0040】
ピックアップローラ12aは、給紙トレイ11から最上の原稿8を取り出す。捌きローラ対12bは、複数枚の原稿8が重なって取り出されたときに1枚のみを通過させるように回転によって捌く。
【0041】
送りローラ対12c,12d,12e,12f,12g,12hは、搬送路13に沿って間隔をあけて配置されており、給紙トレイ11から取り出された原稿8を搬送し、読取り位置を通過させた後に排紙トレイ16に排出する。
【0042】
原稿8が搬送路13における送りローラ対12eとその次の送りローラ対12fとの間を通過するとき、読取り位置において、原稿8の下面の画像が、静止状態の光源ユニット22を介しイメージセンサ27によって読み取られる。つまり、背景板14の表面上の読取り位置を原稿8が先端側から後端側へと移動することにより、原稿8に対する主走査方向のスキャンが行われる。
【0043】
背景板14,15は、スキャナ20による読み取りの撮像面に原稿8の背景として映り込む部材である。背景板14は、搬送路13を形成する壁面の一部となるように配置されており、自動原稿送り装置10によって原稿8を搬送しながら画像を読み取る場合に原稿8の背景となる。背景板15は、それを支持する自動原稿送り装置10を閉じたときにプラテンガラス21と対向して配置され、プラテンガラス21の上面に置かれた静止状態の原稿8から画像を読み取る場合に原稿8の背景となる。
【0044】
背景板14,15は、樹脂、金属またはこれらを組み合わせた複合材料などからなり、その表面は白色であるかまたは光沢を有する。背景板14,15の両者の材質が同じでもよいし、異なっていてもよい。
【0045】
スキャナ20は、フラットヘッド型であり、光源ユニット22、ミラーユニット23、結像レンズ26、およびイメージセンサ27を有する。光源ユニット22は、原稿8を照射する光源24と、原稿8からの反射光をミラーユニット23へ導くミラー25aとを有する。光源24は例えばLEDアレイであり、原稿8をその搬送方向と直交する方向の全長にわたって照射可能である。ミラーユニット23は、光源ユニット22から入射する光を折り返してイメージセンサ27へ入射させるミラー25b,25cを有する。光源ユニット22およびミラーユニット23は、プラテンガラス21と平行に移動可能に構成されている。
【0046】
自動原稿送り装置10によって原稿8を搬送しながら画像を読み取る場合には、光源ユニット22およびミラーユニット23は移動しない。光源ユニット22は背景板14の下方の位置で静止したままである。光源24は、背景板14の表面を通過する原稿8の下面に向けて、原稿8の進行方向における後方側からプラテンガラス21越しに例えば白色の光を照射する。この光が原稿8および背景板14で反射してミラー25a,25b,25cおよび結像レンズ26を経てイメージセンサ27に入射する。これにより、原稿8および背景板14の照射された部分の像がイメージセンサ27の撮像面に結像する。イメージセンサ27は、結像した像を一列に並ぶ画素の列として読み取る。イメージセンサ27の駆動によって主走査が行われ、原稿8の搬送によって副走査が行われる。主走査と副走査とにより原稿8の画像が背景板14とともに線順次に読み取られる。
【0047】
一方、プラテンガラス21の上に置かれた静止状態の原稿8から画像を読み取る場合には、光源ユニット22は一定の速度で移動し、ミラーユニット23は光路長が一定になるように光源ユニット22の半分の速度で移動する。この場合、光源ユニット22およびミラーユニット23の移動によって副走査が行われる。主走査はイメージセンサ27の駆動によって行われる。
【0048】
以下、自動原稿送り装置10を用いて原稿8を搬送しながら画像を読み取る場合を例として、原稿8の傾き量を検出する機能について説明する。ただし、背景板15の表面に配置された静止状態の原稿8から画像を読み取る場合にも、原稿8の傾き量を検出することができる。
【0049】
図4には原稿8および背景板14を底面視した様子の一例とそれに対応した入力画像G10とが示されている。つまり、
図4は、
図3における背景板14およびその表面を通過する原稿8を、光源ユニット22の側から見て示す図である。
【0050】
図4において、原稿8が副走査方向M2に搬送されて背景板14の表面を通過する期間に、所定の密度で周期的に主走査が行われる。
図4(A)に示す通り、主走査方向M1は副走査方向M2と直角に交差する方向である。主走査と副走査とにより読み取られる領域200は、原稿8の全体を包含する大きさの矩形領域である。
【0051】
原稿8の前端8aの付近が光源24によって照射されている間、原稿8の前側に帯状の影9が生じる。影9は、原稿8の主走査方向M1の全長にわたって延び、原稿8の厚さに応じた幅をもつ。この影9が原稿8および背景板14とともにイメージセンサ27によって撮像される。
【0052】
つまり、
図4(B)のように原稿部80と背景部140と影部90とを有した入力画像G10が読取り画像として得られる。原稿部80は原稿8に対応し、背景部140は背景板14に対応し、影部90は影9に対応する。入力画像G10は、原稿8の前後左右の各端辺を含んだ矩形領域を読み取った画像であり、通常は原稿部80の全体を含んだ画像、またはその一部の画像である。
【0053】
画像処理装置1は、背景部140と影部90とを有した入力画像G10に基づいて、画像処理によって原稿8の傾き量を検出する。
【0054】
図5には入力画像G10の副走査方向における階調値MDの変化の例が各曲線KSによって示されている。
図5に示される各曲線KSは、主走査方向に異なる各画素の位置に対応したものである。階調値MDは、明度または輝度であって、明るい画素では大きく、暗い画素では小さい。
【0055】
入力画像G10における副走査方向M2の階調値MDの変化をみると、原稿8の下地色が明色である一般的な場合には、背景部140で大きく(明るく)、影部90に移るにつれて次第に小さくなり(暗くなり)、影部90から原稿部80へ移るにつれて大きくなる。
【0056】
背景板14の表面は上述した通り白色または光沢を有するので、背景部140の階調値MD0は、通常、最大となり、他の部分よりも確実に大きい。背景部140の階調値MD0を、光源24の出力調整またはイメージセンサ27の感度調整によって、階調範囲の上限値またはその近辺に設定することができる。
【0057】
また、影部90は背景板14のうちの遮光された部位の像であるので、影部90の階調値MDは背景部140の階調値MD0よりも確実に小さい。ただし、影9は、原稿8の前端8aから遠いほど、照射光の回り込みの影響などで淡くなりやすい。このため、背景部140の近くでは影部90の階調値MDは大きく、背景部140から遠くなるにつれて小さくなる。
【0058】
これに対して、原稿部80の階調値MDは、原稿8の下地色および表面の光反射率などの光学特性に依存する。また、原稿8の縁部にまで画像が存在する場合にはその画像の濃度にも依存する。したがって、原稿部80の階調値が影部90の階調値より必ずしも大きいとは限らず、影部90と同程度となる場合もある。
【0059】
そこで、画像処理装置1は、原稿8の光学特性などの如何にかかわらず原稿8の傾き量SVを検出するため、影部90と原稿部80との境界点(原稿部80に近い側の境界点)ではなく、背景部140と影部90との境界点KT(背景部140に近い側の境界点KT)を、原稿8と背景板14との境界点として検出する。すなわち、境界点が複数検出された場合に、背景板14に対し副走査方向に最も近い位置に存在する境界点KTを選択する。
【0060】
詳しくは、副走査方向M2の先頭側から順に各画素の階調値MDを調べていき、階調値MDがしきい値th3以下である最初に出現した画素の副走査方向M2の位置Yを境界点KTとする。同様の手順で主走査方向M1の各画素の位置Xについて境界点KTを検出する。しきい値th3を「境界点のしきい値th3」と言うことがある。
【0061】
しきい値th3は、第1のしきい値th1以下であるという条件JK1、および背景板14の階調値MD0に対する差が第2のしきい値th2以上であるという条件JK2の、両方を満足する値である。条件JK1は固定的な条件である。条件JK2は背景板14の光学特性および光源24の出力に応じて変わる可変の条件である。
【0062】
図5に示す各曲線KSにおいて、副走査方向の位置が進むにつれて階調値MDが背景部140の階調値MD0から低下していき、その途上において複数の画素についての階調値MDがサンプリングされる。そして、階調値MDが最初にしきい値th3以下となったときの画素が、境界点KTとして検出される。階調値MDがしきい値th3となる画素が複数検出された場合も、最初にしきい値th3以下となった画素が境界点KTとして選択される。
【0063】
なお、条件JK2を満足する最小の階調値MDが第1のしきい値th1よりも大きい場合は、境界点のしきい値th3を第1のしきい値th1と一致させてもよい。また、条件JK2を満足する最小の階調値MDが第1のしきい値th1よりも小さい場合は、条件JK2を満足する最小の階調値MDを境界点のしきい値th3としてもよい。
【0064】
画像処理装置1は、検出した境界点KTに基づいて、原稿8の前端8aに対応した影9の傾き量を原稿8の傾き量SVとして検出する。
【0065】
ところで、影9の幅は、原稿8の撓み(湾曲)および浮き上がりの影響を受けることによって不均一となる。つまり、主走査方向M1の各位置Xの境界点KTが主走査方向M1に一直線状に並ばずに、不規則に曲がる曲線を描くように並ぶ場合が起こり得る。画像処理装置1によると、このような場合にも原稿8の傾き量SVを検出することができる。
【0066】
図6には画像処理装置1の機能的構成の例が、
図7には傾き量群GSVpを取得するための2点のシフトの例が、それぞれ示されている。また、
図8および
図9には原稿8の傾き量SVの決定の例が示されている。さらに、
図10には2点間距離Dxおよび2点のシフト量Dsの設定の例が示されている。
【0067】
図6において、画像処理装置1には、境界点検出部301、境界点メモリ302、傾き量検出部303、傾き量群取得部304、原稿傾き量決定部305、傾き補正部306、および2点間距離設定部307などが設けられる。これらの機能は、上に述べた制御部100のハードウェア構成により、および上に述べた傾き補正用プログラムがCPU101によって実行されることにより実現される。
【0068】
境界点検出部301は、画像読取り手段であるスキャナ20から入力画像G10を取得し、入力画像G10における副走査方向M2の階調値MDの変化から原稿8と背景板14(または背景板15)との境界点KTを検出する。階調値MDは、上に述べた通り、明るいほど大きい階調情報(明度情報)である。ただし、濃度のように暗いほど大きい階調情報でもよい。
【0069】
境界点検出部301は、入力画像G10の各画素のうち、背景板14,15に対し副走査方向M2の近辺に存在し、明度情報の階調値MDが上に述べたように第1のしきい値th1以下であってかつ背景板14,15の明度情報の階調値MD0に対する差が第2のしきい値th2以上である画素の位置Yを、境界点KTとして検出する。主走査方向M1の画素単位の位置Xごと境界点KTを検出する手順は上に述べた通りである。
【0070】
境界点検出部301は、主走査方向M1の各位置Xについて検出した境界点KTを境界点メモリ302に記憶させる。入力画像G10の主走査方向M1のサイズ(画素数)の最大値が例えば8192である場合、最大で8192個の境界点KTが境界点メモリ302に格納される可能性がある。実際には、境界点KTの個数は原稿8のサイズに応じた数となる。境界点メモリ302は、例えばRAM102に設けられる。
【0071】
境界点KTとして格納するデータは、副走査方向M2の位置Yを表わすものであり、入力画像G10の副走査方向M2の画素番号(主走査ライン番号)であってよい。また、主走査方向M1の画素の配列順にアドレスを割り当て、各境界点KTの主走査方向M1の位置Xを境界点メモリ302のアドレスで特定するようにしてもよい。位置Xと位置Yとの組を境界点KTのデータとして格納してもよい。
【0072】
なお、入力画像G10における主走査方向M1の両端部では階調値MDが異常になりやすい。また、両端部以外でもノイズの影響を受けて階調値MDが異常(イレギュラー)になることがある。したがって、イレギュラーな境界点KTが検出された場合に、それを無効にして以後の処理の対象から除外することとしてもよい。例えば、境界点KTとして検出された位置Yが、それに隣接する正常な境界点KTの位置Yに対し、設定されたしきい値以上の差を有する場合に、それをイレギュラーな境界点KTであるとし、例えばそれを境界点メモリ302に格納しない。
【0073】
傾き量検出部303は、主走査方向M1に沿って検出された複数の境界点KTに対し、
図7に示すように境界点KT上にあって設定された2点間距離Dxだけ離れた2点KT1,KT2の傾き量SVpを検出する。
【0074】
すなわち、傾き量検出部303は、主走査方向M1の先端側の1つの境界点KTを一方の点KT1として境界点メモリ302から読み出し、点KT1の位置X1から2点間距離Dxだけ離れた位置X2の境界点KTを他方の点KT2として読み出す。そして、傾き量SVpとして、例えば点KT2と点KT1との差(位置Yの差)を算出する。この傾き量SVpと2点間距離Dxとに基づいて、2点KT1,KT2を結ぶ線分の傾き角度を計算することができるので、傾き量SVpは実質的に傾き角度に相当する。
【0075】
2点間距離Dxは、入力画像G10の主走査方向M1の全長より短い距離、例えば4分の1程度とされる。主走査方向M1の画素数が8192である場合の2点間距離Dxは、例えば2048画素分の距離とされる。また原稿8がA4サイズであって画素数が5000であれば、2点間距離Dxは例えば1250画素分の距離とされる。ただし、これに限らず、主走査方向M1の全長の10分の1、5分の1、3分の1、2分の1程度などとしてもよく、また、256画素分、512画素分、1024画素分など、適当な画素数としてもよい。
【0076】
傾き量群取得部304は、傾き量検出部303に対してシフト量Dsである距離を通知することによって、2点KT1,KT2を主走査方向M1に沿って設定された距離(シフト量Ds)ずつ同時にシフトさせる。そして、シフトするごとに検出される傾き量SVpを傾き量検出部303から取得することによって、原稿8の1つの端辺(例えば前端8aの辺)に対応する複数の傾き量SVpからなる傾き量群GSVpを取得する。
【0077】
例えば、検出された境界点KTの総数が7000で、2点間距離Dxが2048(画素)で、シフト量Dsが1(画素)である場合には、約5000個の傾き量SVpからなる傾き量群GSVpを取得する。
【0078】
原稿傾き量決定部305は、傾き量群GSVpに基づいて、1つの端辺の傾き量を原稿8の傾き量SVとして決定する。
【0079】
例えば、
図8に示すように、傾き量群GSVpに含まれる傾き量SVpを値別に計数して値ごとの度数を求め、傾き量群GSVpに含まれる傾き量SVpのうち最も度数が大きい傾き量SVp(すなわち傾き量SVpのヒストグラムにおけるピーク値)を、原稿8の傾き量SVとして決定する。
【0080】
または、傾き量群GSVpに含まれる傾き量SVpの分布においてその中央値となる傾き量SVpを、原稿8の傾き量SVとして決定する。この場合、すべての傾き量SVpの値を基に中央値を公知の演算式を適用して算出する。
【0081】
他の方法として、
図9に示すように傾き量SVpが0に近い範囲の分布が対称性をもつブロードな分布であるとして、対称な範囲の中央値を傾き量SVとすることができる。この場合には、傾き量SVpが例えば負の所定量である傾き量SVpを第1の傾き量SVp1とし、この第1の傾き量SVp1と同じ度数の傾き量SVpを第2の傾き量SVp2とする。そして、第1の傾き量SVp1と第2の傾き量SVp2との和の半分を原稿8の傾き量SVとすればよい。
【0082】
2点間距離設定部307は、原稿8の主走査方向M1のサイズに応じて2点間距離Dxを設定して、傾き量検出部303に通知する。
【0083】
図10(A)に示すように、原稿8のサイズが小さい場合には、原稿8のサイズが大きい場合よりも2点間距離Dx(Dx’)を長くする。例えば、原稿8がA3サイズである場合は2点間距離Dx’を2896とし、原稿8がA4サイズである場合は2点間距離Dxを2048とする。このように原稿8の主走査方向M1のサイズが短くなるにしたがって2点間距離Dxを短くすることにより、傾き量群GSVpを構成する傾き量SVpをより多くして、原稿8の傾き量SVの検出の精度を確保する。
【0084】
また、傾き量群取得部304は、2点KT1,KT2のシフト量Dsを、原稿8の主走査方向M1のサイズに応じて設定する。
【0085】
図10(B)に示すように、原稿8のサイズが小さい場合には、原稿8のサイズが大きい場合よりもシフト量Ds(Ds’)を短くする。例えば、原稿8がA3サイズである場合はシフト量Ds’を2とし、原稿8がA4サイズである場合はシフト量Dsを1とする。このように原稿8の主走査方向M1のサイズが短くなるにしたがってシフト量Dsを短くすることにより、傾き量群GSVpを構成する傾き量SVpをより多くして、原稿8の傾き量SVの検出の精度を確保する。
【0086】
なお、
図10(C)には、2点間距離Dxおよびシフト量Dsの両方について、原稿8の主走査方向M1のサイズに応じて設定する例が示されている。
【0087】
図6に戻って、傾き補正部306は、傾き量決定部305により決定された原稿8の傾き量SVに応じた傾き補正処理を、入力画像G10に対して施す。傾き補正処理は、入力画像G10を傾き量SVに応じた角度だけ回転させることにより、傾きの無い補正画像G12を生成する処理である。補正画像G12は、ジョブに応じてこれを処理する手段に引き渡される。
【0088】
図11のフローチャートには画像処理装置1における全体的な処理の流れの例が示されている。
【0089】
図11において、自動原稿送り装置10の給紙トレイ11またはスキャナ20のプラテンガラス21の上にセットされた原稿8の画像を読み取って入力画像G10を得る(#101)。入力画像G10の画素の階調値に基づいて、背景板14,15と原稿8との境界点KTを検出して保持する(#102)。
【0090】
主走査方向M1の2点間距離Dxを設定し(#103)、2点KT1,KT2を主走査方向M1にシフトさせながら、2点間の傾き量SVpを算出して保持する(#104)。そして、複数の傾き量SVpからなる傾き量群GSVpに基づいて原稿8の傾き量SVを決定する(#105)。その後、入力画像G10に対して傾き量SVに応じた傾き補正処理を施す(#106)。
【0091】
上に述べた実施形態によると、ハフ変換または最小二乗法による近似線の算出といった複雑な演算処理によらずに、原稿8の傾き量SVを検出することができる。画素の階調値としきい値th3との比較による境界点KTの検出、2つの境界点KTの差を求める傾き量SVpの検出、および傾き量群GSVpから所定の傾き量SVpを抽出する原稿8の傾き量SVの決定は、いずれもハードウェアによる実現が容易な処理である。つまり、これらの処理をハードウェア化することによって、ソウトウェアのみによって行う場合よりも傾き量SVを高速で検出することができる。検出の高速化、すなわち検出の契機に対する応答性の向上は、特に自動原稿送り装置10を用いて複数の原稿8の画像を次々に読み取る場合に重要となる。迅速に傾き量SVを検出することにより、各原稿8から読み取った入力画像G10に対する傾き補正をより早く実施することができる。
【0092】
上に述べた実施形態において、原稿8の前端8aに対応した影9を含む画像を用いて傾き量SVを検出するので、原稿8の読み取りの初期において傾き量SVを検出することができ、傾き量SVを用いた種々の処理を早いタイミングで行うことができる。
【0093】
また、自動原稿送り装置10によらず、プラテンガラス21の上にセットされた静止状態の原稿8の傾き量SVを検出する場合には、光源ユニット22が移動して原稿8の後端に近づいたときに原稿8の後端側に生じる影9を用いればよい。
【0094】
この場合に、例えば、境界点検出部301は、入力画像G10における後端側から画素の各階調値MDを調べていき、階調値MDがしきい値th3以下である最初に出現した画素の副走査方向M2の位置Yを境界点KTとすればよい。
【0095】
なお、光源24の配置位置に応じて影9のできる位置が変わるので、それに応じて境界点KTを検出し傾き量SVを検出すればよい。例えば、光源ユニット22の移動方向の前方側から原稿8を照明する場合には、上に述べた原稿8を搬送する場合の傾き量SVの検出と同様に、原稿8の前端側に生じる影9を利用して傾き量SVを検出すればよい。
【0096】
画像処理装置1は、MFPに限らず、原稿8の画像を読み取る機器であればよく、コピー機、ファクシミリ機、イメージリーダなどであってもよい。自動原稿送り装置10に、原稿8から画像を読み取るイメージセンサを配置してもよい。
【0097】
その他、画像処理装置1の全体または各部の構成、処理の内容、順序、またはタイミング、境界点KTの検出の方法、原稿8の傾き量SVの決定の方法などは、本発明の趣旨に沿って適宜変更することができる。