特許第6607025号(P6607025)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6607025
(24)【登録日】2019年11月1日
(45)【発行日】2019年11月20日
(54)【発明の名称】定着装置、画像形成装置
(51)【国際特許分類】
   G03G 15/20 20060101AFI20191111BHJP
【FI】
   G03G15/20 535
【請求項の数】5
【全頁数】20
(21)【出願番号】特願2015-249901(P2015-249901)
(22)【出願日】2015年12月22日
(65)【公開番号】特開2017-116651(P2017-116651A)
(43)【公開日】2017年6月29日
【審査請求日】2018年10月22日
(73)【特許権者】
【識別番号】000005496
【氏名又は名称】富士ゼロックス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001519
【氏名又は名称】特許業務法人太陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】越智 隆
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 和善
(72)【発明者】
【氏名】大橋 孝
(72)【発明者】
【氏名】永井 浩美
(72)【発明者】
【氏名】高橋 正和
(72)【発明者】
【氏名】藤田 雅彦
【審査官】 中澤 俊彦
(56)【参考文献】
【文献】 特開2013−167664(JP,A)
【文献】 特開2014−164074(JP,A)
【文献】 特開2013−134484(JP,A)
【文献】 特開2015−055660(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2011/0182636(US,A1)
【文献】 特開2009−229792(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G03G 15/20
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
周回して記録媒体を搬送しながら、当該記録媒体に形成された画像を当該記録媒体に定着する環状の定着ベルトと、
前記定着ベルトの外周面に接触して当該外周面の凹凸差を低減する低減部材と、
前記定着ベルトの内周側に配置され、前記低減部材とで前記定着ベルトを挟んで挟み部を形成する形成部材と、
前記定着ベルトの前記挟み部への進入角度及び前記定着ベルトの前記挟み部からの退出角度の少なくとも一方を調整可能な調整機構と、
を備え、
前記調整機構は、
前記形成部材の外周面に沿うよう前記低減部材を変位させて、前記進入角度及び前記退出角度の少なくとも一方を調整する
定着装置。
【請求項2】
周回して記録媒体を搬送しながら、当該記録媒体に形成された画像を当該記録媒体に定着する環状の定着ベルトと、
前記定着ベルトの外周面に接触して当該外周面の凹凸差を低減する低減部材と、
前記定着ベルトの内周側に配置され、前記低減部材とで前記定着ベルトを挟んで挟み部を形成する形成部材と、
前記定着ベルトの前記挟み部への進入角度及び前記定着ベルトの前記挟み部からの退出角度の少なくとも一方を調整可能な調整機構と、
を備え、
前記調整機構は、
前記低減部材の外周面に沿うよう前記形成部材を変位させて、前記進入角度及び前記退出角度の少なくとも一方を調整する
定着装置。
【請求項3】
周回して記録媒体を搬送しながら、当該記録媒体に形成された画像を当該記録媒体に定着する環状の定着ベルトと、
前記定着ベルトの外周面に接触して当該外周面の凹凸差を低減する低減部材と、
前記定着ベルトの内周側に配置され、前記低減部材とで前記定着ベルトを挟んで挟み部を形成する形成部材と、
前記定着ベルトの前記挟み部への進入角度及び前記定着ベルトの前記挟み部からの退出角度の少なくとも一方を調整可能な調整機構と、
を備え、
前記調整機構は、
前記定着ベルトの周回方向における前記低減部材の直前又は直後で前記定着ベルトに接触する接触部材と、
前記接触部材を変位させて前記進入角度及び前記退出角度の少なくとも一方を調整する変位機構と、
を有する
定着装置。
【請求項4】
前記定着ベルトの内周面に接触し、自らの傾きを変更して前記定着ベルトの斜行を調整する調整部材を備える
請求項3に記載の定着装置。
【請求項5】
画像を記録媒体に形成する画像形成部と、
前記記録媒体に形成された前記画像を当該記録媒体に定着する請求項1〜4のいずれか1項に記載の定着装置と、
を備える画像形成装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、定着装置、画像形成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、環状の定着ベルトと、定着ベルトの外周面に接触し、定着ベルトの表面を予め定められた表面粗さに調整する表面調整ロールと、を備えた定着装置が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2011−123333号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
周回する定着ベルトの外周面に接触して定着ベルトの外周面の凹凸差を低減する表面調整ロール等の低減部材を備える定着装置において、定着ベルトの内周側に配置され低減部材とで定着ベルトを挟んで挟み部を形成する形成部材を有する構成がある。
【0005】
この構成では、挟み部において、周回する定着ベルトと低減部材との速度差が大きいと、定着ベルトの外周面の凹凸(表面粗さ)が予め定められた凹凸(狙いの凹凸)よりも大きくなる。また、挟み部において、周回する定着ベルトと低減部材との速度差が小さい場合では、定着ベルトの外周面の凹凸が予め定められた凹凸(狙いの凹凸)よりも小さくなる。
【0006】
本発明は、定着ベルトの挟み部への進入角度及び定着ベルトの挟み部からの退出角度が調整できない構成に比べ、定着ベルトの外周面の凹凸を予め定められた凹凸に制御できるようにすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
請求項1の発明は、周回して記録媒体を搬送しながら、当該記録媒体に形成された画像を当該記録媒体に定着する環状の定着ベルトと、前記定着ベルトの外周面に接触して当該外周面の凹凸差を低減する低減部材と、前記定着ベルトの内周側に配置され、前記低減部材とで前記定着ベルトを挟んで挟み部を形成する形成部材と、前記定着ベルトの前記挟み部への進入角度及び前記定着ベルトの前記挟み部からの退出角度の少なくとも一方を調整可能な調整機構と、を備える。
【0008】
請求項1の発明では、前記調整機構は、前記形成部材の外周面に沿うよう前記低減部材を変位させて、前記進入角度及び前記退出角度の少なくとも一方を調整する。
【0009】
請求項2の発明では、前記調整機構は、前記低減部材の外周面に沿うよう前記形成部材を変位させて、前記進入角度及び前記退出角度の少なくとも一方を調整する。
【0010】
請求項3の発明では、前記調整機構は、前記定着ベルトの周回方向における前記低減部材の直前又は直後で前記定着ベルトに接触する接触部材と、前記接触部材を変位させて前記進入角度及び前記退出角度の少なくとも一方を調整する変位機構と、を有する。
【0011】
請求項4の発明は、前記定着ベルトの内周面に接触し、自らの傾きを変更して前記定着ベルトの斜行を調整する調整部材を備える。
【0012】
請求項5の発明は、画像を記録媒体に形成する画像形成部と、前記記録媒体に形成された前記画像を当該記録媒体に定着する請求項1〜4のいずれか1項に記載の定着装置と、を備える。
【発明の効果】
【0013】
本発明の請求項1の構成によれば、定着ベルトの挟み部への進入角度及び定着ベルトの挟み部からの退出角度が調整できない構成に比べ、定着ベルトの外周面の凹凸を予め定められた凹凸に制御できる。
【0014】
本発明の請求項1の構成によれば、低減部材が変位しない構成に比べ、定着ベルトに接触する部品の部品点数を増加させなくても、定着ベルトの外周面の凹凸を予め定められた凹凸に制御できる。
【0015】
本発明の請求項2の構成によれば、形成部材が変位しない構成に比べ、定着ベルトに接触する部品の部品点数を増加させなくても、定着ベルトの外周面の凹凸を予め定められた凹凸に制御できる。
【0016】
本発明の請求項3の構成によれば、形成部材を変位させることのみで前記進入角度及び前記退出角度を調整する構成に比べ、低減部材と形成部材との位置関係の変化を抑制できる。
【0017】
本発明の請求項4の構成によれば、定着ベルトの外周面の凹凸の制御と、定着ベルトの斜行の調整と、を独立して実行することができる。
【0018】
本発明の請求項5の構成によれば、本構成における定着装置を備えない場合に比べ、定着ベルトの外周面の凹凸を予め定められた凹凸に制御することで、画像の光沢を制御できる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1】第一実施形態に係る画像形成装置を示す概略図である。
図2】第一実施形態に係るトナー形成部を示す概略図である。
図3】第一実施形態に係る定着装置を示す概略図である。
図4】第一実施形態に係る定着装置を示す斜視図である。
図5】第一実施形態に係る調整機構を示す概略図である。
図6】定着ベルトの進入角度および退出角度を説明するための説明図である。
図7】歪みの変化割合を示すグラフである。
図8】歪みの変化割合と定着ベルトの光沢度との関係を示すグラフである。
図9】第二実施形態に係る定着装置を示す概略図である。
図10】第二実施形態に係る定着装置を示す概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下に、本発明に係る実施形態の一例を図面に基づき説明する。なお、各図に適宜示される矢印Hは鉛直方向を示し、矢印Wは水平方向であって装置幅方向を示す。
【0021】
『第一実施形態』
《画像形成装置10》
図1は、画像形成装置10を正面側から見た構成を示す概略図である。この図に示されるように、画像形成装置10は、用紙等の記録媒体Pに画像を形成する画像形成部12と、記録媒体Pに形成された画像を記録媒体Pに定着する定着装置80と、記録媒体Pを搬送する搬送装置50と、画像形成装置10の各部の動作を制御する制御部70と、を有している。
【0022】
[搬送装置50]
図1に示されるように、搬送装置50は、記録媒体Pが収容される収容器51と、収容器51から二次転写位置NTへ記録媒体Pを搬送する複数の搬送ロール52と、を有している。さらに、搬送装置50は、二次転写位置NTから定着装置80へ記録媒体Pを搬送する複数の搬送ベルト58と、定着装置80から記録媒体Pの排出部(図示省略)へ向けて記録媒体Pを搬送する搬送ベルト54を有している。
【0023】
[画像形成部12]
画像形成部12は、トナー画像を形成するトナー画像形成部20と、トナー画像形成部20で形成されたトナー画像を記録媒体Pに転写する転写装置30と、を有している。
【0024】
トナー画像形成部20は、色ごとにトナー画像を形成するように複数備えられている。この実施形態では、イエロー(Y)、マゼンタ(M)、シアン(C)、ブラック(K)、特別色(V)の計5色のトナー画像形成部20が設けられている。この各色のトナー画像形成部20は、特別色(V)、イエロー(Y)、マゼンタ(M)、シアン(C)、ブラック(K)の順で、後述の転写ベルト31の搬送方向の上流側から下流側に向けて配置されている。
【0025】
図1に示す(V)、(Y)、(M)、(C)、(K)は、上記各色に対応する構成部分を示している。また、特別色(V)には、例えば、銀色や金色等の色が用いられる。
【0026】
〈トナー画像形成部20〉
各色のトナー画像形成部20は、用いるトナーを除き基本的に同様に構成されている。具体的には、各色のトナー画像形成部20は、図2に示されるように、図2における時計周り方向に回転する感光体ドラム21と、感光体ドラム21を帯電させる帯電器22と、を有している。さらに、各色のトナー画像形成部20は、帯電器22によって帯電された感光体ドラム21を露光して感光体ドラム21に静電潜像を形成する露光装置23と、露光装置23によって感光体ドラム21に形成された静電潜像を現像してトナー画像を形成する現像装置24と、を有している。
【0027】
具体的には、露光装置23は、制御部70が取得した画像データに応じて変調された露光光を感光体ドラム21に照射して、感光体ドラム21に静電潜像を形成するようになっている。この静電潜像が、現像装置24によって現像されることで、画像データに基づくトナー画像が形成される。制御部70が取得する画像データとしては、例えば、外部装置(図示省略)で生成され該外部装置から取得した画像データなどがある。
【0028】
〈転写装置30〉
転写装置30は、各色の感光体ドラム21のトナー画像を、転写ベルト31(中間転写体)に重畳して一次転写し、該重畳されたトナー画像を二次転写位置NTで記録媒体Pに二次転写するようになっている。具体的には、転写装置30は、図1に示されるように、トナー画像が転写され該トナー画像を記録媒体Pに転写する転写ベルト31と、一次転写ロール33と、二次転写ロール34と、を備えている。
【0029】
〔転写ベルト31〕
転写ベルト31は、図1に示されるように、無端状を成し、複数のロール32に巻き掛けられて姿勢が決められている。この実施形態では、転写ベルト31は、正面視で装置幅方向に長い逆鈍角三角形状の姿勢とされている。複数のロール32のうち、図1に示すロール32Dは、図示しないモータの動力により転写ベルト31を矢印D方向に周回させる駆動ロールとして機能する。転写ベルト31は、矢印D方向に周回することで、一次転写された各色のトナー画像を、各色の一次転写位置Tから二次転写位置NTへ搬送するようになっている。
【0030】
また、複数のロール32のうち、図1に示すロール32Tは、転写ベルト31に張力を付与する張力付与ロールとして機能する。複数のロール32のうち、図1に示すロール32Bは、二次転写ロール34の対向ロール32Bとして機能する。対向ロール32Bには、前述の通り逆さ鈍角三角形状の姿勢とされた転写ベルト31の鈍角を成す下端側の頂部が巻き掛けられている。この転写ベルト31は、前述した姿勢で装置幅方向に延びる上辺部において、各色の感光体ドラム21に下方から接触している。
【0031】
〔一次転写ロール33〕
転写部材としての一次転写ロール33は、各感光体ドラム21のトナー画像を転写ベルト31に転写するロールであり、転写ベルト31の内側に配置されている。各一次転写ロール33は、転写ベルト31を挟んで、対応する色の感光体ドラム21に対して対向配置されている。また、一次転写ロール33には、給電部37(図2参照)によって、トナー極性とは逆極性の一次転写電圧(一次転写電流)が印加されるようになっている。これにより、トナー画像形成部20の感光体ドラム21と一次転写ロール33との間に転写電界が形成されて、感光体ドラム21に形成されたトナー画像に対して静電力が作用し、当該トナー画像が一次転写位置Tで転写ベルト31に転写される。
【0032】
〔二次転写ロール34〕
転写部材としての二次転写ロール34は、転写ベルト31に重畳されたトナー画像を記録媒体Pに転写するロールである。二次転写ロール34は、図1に示されるように、対向ロール32Bとの間に転写ベルト31を挟むように配置されており、二次転写ロール34と転写ベルト31とは予め定められた荷重にて接触している。このように接触している二次転写ロール34と転写ベルト31の間が二次転写位置NTとされる。この二次転写位置NTには、収容器51から適時に記録媒体Pが供給されるようになっている。二次転写ロール34は、図1における時計周り方向へ回転駆動される。
【0033】
また、二次転写ロール34には、印加部(図示省略)によって、対向ロール32Bに負極性の電圧が印加され、対向ロール32Bと二次転写ロール34との間に電位差が生じる。すなわち、対向ロール32Bに負極性の電圧が印加されることで、対向ロール32Bの対向電極をなす二次転写ロール34にトナー極性と逆極性の二次転写電圧(正極性の電圧)が間接的に印加される。これにより、対向ロール32Bと二次転写ロール34との間に転写電界が形成されて、転写ベルト31のトナー画像に対して静電力が作用し、二次転写位置NTを通過する記録媒体Pに、転写ベルト31からトナー画像が転写される。
【0034】
[定着装置80]
定着装置80は、図3及び図4に示されるように、環状の定着ベルト84を有する定着ベルトモジュール86と、加圧ロール88と、を備えている。
【0035】
〈加圧ロール88〉
加圧ロール88は、定着ベルトモジュール86の定着ベルト84に押し付けられるように配置されている。これにより、定着ベルト84と加圧ロール88との間には、定着ベルト84と加圧ロール88とで記録媒体Pを挟むニップ部N(挟み部)が形成されている。また、加圧ロール88は、周回する定着ベルト84に従動して矢印E方向に回転するようになっている。
【0036】
〈定着ベルトモジュール86〉
定着ベルトモジュール86は、前述の定着ベルト84と、定着ロール89と、内部加熱ロール90と、外部加熱ロール92と、対向ロール91と、リフレッシュロール93(低減部材の一例)と、対向ロール94(形成部材の一例)と、剥離パッド96と、支持ロール98と、調整機構40(図5参照)と、を有している。
【0037】
〔定着ベルト84〕
環状の定着ベルト84は、複数のロール(定着ロール89、内部加熱ロール90、外部加熱ロール92、対向ロール94及び支持ロール98)に後述のように巻き掛けられることで、予め定められた張力が付与された状態で、当該複数のロールで支持されている。
【0038】
また、定着ベルト84は、例えば、定着ロール89が後述のように回転駆動することで、矢印C方向へ周回する。これにより、ニップ部Nに導入された記録媒体Pを加圧ロール88とで挟んで搬送する。
【0039】
さらに、定着ベルト84は、定着ロール89、内部加熱ロール90及び外部加熱ロール92によって、後述のように加熱される。そして、定着ベルト84は、周回して記録媒体Pを加圧ロール88とで搬送しながら、記録媒体Pに形成されたトナー画像を加熱して当該トナー画像を記録媒体Pに定着する。
【0040】
〔定着ロール89〕
定着ロール89は、定着ベルト84の内周側であって、且つ、定着ベルトモジュール86における加圧ロール88側(下側)に配置されている。この配置位置で、定着ロール89は、定着ベルト84が巻き掛けられている。
【0041】
また、定着ロール89は、モータ(図示省略)により回転駆動して、定着ベルト84を周回させる駆動ロールとして機能する。
【0042】
さらに、定着ロール89の内部には、ハロゲンランプ89Aなどの加熱源が設けられている。これにより、定着ロール89が定着ベルト84の内周面84C側から定着ベルト84を加熱する。
【0043】
なお、定着ロール89は、定着ベルト84の幅方向に沿って長さを有しており、定着ベルト84の幅方向の一端から他端にわたって接触している。後述する内部加熱ロール90、外部加熱ロール92、対向ロール91、リフレッシュロール93、対向ロール94、剥離パッド96、支持ロール98においても、同様である。
【0044】
〔内部加熱ロール90〕
内部加熱ロール90は、定着ベルト84の内周側であって、且つ、定着ベルトモジュール86における加圧ロール88側とは反対側(上側)に配置されている。この配置位置で、定着ロール89は、定着ベルト84が巻き掛けられている。
【0045】
内部加熱ロール90の内部には、ハロゲンランプ90Aなどの加熱源が設けられている。これにより、内部加熱ロール90が定着ベルト84の内周面84C側から定着ベルト84を加熱する。
【0046】
また、内部加熱ロール90は、定着ベルト84の斜行を調整する調整部材としてのステアリングロールを兼ねている。具体的には、内部加熱ロール90は、自らの傾きを変更して定着ベルト84の斜行を調整している。すなわち、内部加熱ロール90は、軸方向一端部を軸方向他端部に対して径方向(例えば、図4における奥側の端部を上下方向)に移動させて、軸方向に沿った角度を変更することで、周回する定着ベルト84をその周回方向と交差する幅方向に移動させている。
【0047】
〔外部加熱ロール92及び対向ロール91〕
外部加熱ロール92は、定着ベルト84の外周側に配置されている。この外部加熱ロール92は、定着ベルト84の周回方向における定着ロール89の下流側であって、内部加熱ロール90の上流側で、定着ベルト84に、予め定められた荷重で押し付けられている。これにより、外部加熱ロール92は、定着ベルト84の周回経路を規定している。
【0048】
外部加熱ロール92の内部には、ハロゲンランプ92Aなどの加熱源が設けられている。これにより、外部加熱ロール92が定着ベルト84の外周面84B側から定着ベルト84を加熱する。
【0049】
対向ロール91は、定着ベルト84の内周側であって、外部加熱ロール92に対向する位置に配置されている。この配置位置で、対向ロール91は、定着ベルト84の内周面84Cに接触している。これにより、対向ロール91は、外部加熱ロール92の荷重を支持している。
【0050】
〔剥離パッド96及び支持ロール98〕
剥離パッド96及び支持ロール98は、定着ベルト84の内周側であって、定着ベルト84の周回方向における定着ロール89の下流側の近傍に配置されている。さらに、具体的には、剥離パッド96及び支持ロール98は、記録媒体Pの搬送方向におけるニップ部Nの下流側に配置されている。
【0051】
なお、支持ロール98は、定着ベルト84の周回方向及び記録媒体Pの搬送方向において、剥離パッド96の下流側に配置されている。支持ロール98は、この配置位置で、定着ベルト84が巻き掛けられている。
【0052】
剥離パッド96は、定着ロール89の軸方向に沿って長さを有している。図3に示されるように、剥離パッド96を定着ロール89の軸方向に沿って見た断面形状は、略円弧状をなしている。この剥離パッド96は、具体的には、定着ロール89の外周面に沿って湾曲した内側面96Aと、定着ベルト84を介して加圧ロール88に対向する対向面96Bと、対向面96Bに対して決められた角度を有し定着ベルト84を屈曲させる外側面96Cと、を有している。
【0053】
剥離パッド96では、対向面96Bと外側面96Cから構成される角部Uで、加圧ロール88から離れる方向(上方側)に定着ベルト84を屈曲させ、ニップ部Nから排出された記録媒体Pの先端を定着ベルト84から剥離させる。
【0054】
〔リフレッシュロール93及び対向ロール94〕
リフレッシュロール93は、定着ベルト84の外周側に配置されている。このリフレッシュロール93は、定着ベルト84の周回方向における内部加熱ロール90の下流側であって、定着ロール89の上流側で、定着ベルト84に押し付けられている。これにより、リフレッシュロール93の外周面が、予め定められた荷重で、リフレッシュロール93の軸方向(定着ベルト84の幅方向)に沿って定着ベルト84の外周面に接触している。
【0055】
このように、リフレッシュロール93の外周面と定着ベルト84の外周面とが接触することで、定着ベルト84の周回方向(移動方向)において予め定められた長さの接触部93Nが、リフレッシュロール93の外周面における外周一部に形成される。
【0056】
対向ロール94は、定着ベルト84の内周側であって、リフレッシュロール93に対向する第一位置(図3に示す位置、図5における二点鎖線の位置)に配置されている。この配置位置で、対向ロール94は、定着ベルト84が巻き掛けられている。これにより、対向ロール94は、リフレッシュロール93の荷重を支持しており、対向ロール94とリフレッシュロール93との間には、対向ロール94とリフレッシュロール93とで定着ベルト84を挟むニップ部N1(挟み部の一例)が形成されている。
【0057】
リフレッシュロール93は、モータ99によって回転駆動するようになっている。具体的には、リフレッシュロール93は、モータ99によって、定着ベルト84に対して周速度差をもって定着ベルト84の周回方向にならって順回転するようになっている。これにより、リフレッシュロール93の外周面が、定着ベルト84の外周面を摩擦する(擦る)。
【0058】
そして、リフレッシュロール93は、定着ベルト84の外周面(表面)を摩擦することで、記録媒体Pの通過によって荒れた表面と、荒れていない表面(記録媒体Pが通過しない領域の表面)との両方に対して細かい擦り跡(擦り傷)を多数形成し、定着ベルト84の表面の凹凸差を低減して、当該表面の凹凸(表面粗さ)を調整する。すなわち、リフレッシュロール93は、記録媒体Pが通過する領域と記録媒体Pが通過しない領域との間での、定着ベルト84の表面の凹凸差を低減する機能を有する。
【0059】
このように、リフレッシュロール93は、定着ベルト84の表面を実質的に削り取らずに擦り跡を付けるものであり、リフレッシュロール93を用いて定着ベルト84の表面を所望のレベルに荒らして、定着ベルト84の表面状態(表面グロス)を均一化する。
【0060】
これにより、定着ベルト84及び加圧ロール88で定着された画像上のグロス差(光沢差)が解消されるようになっている。
【0061】
このように、リフレッシュロール93は、定着ベルトの外周面に接触して当該外周面の凹凸差を低減する低減部材の一例として機能する。
【0062】
なお、リフレッシュロール93は、具体的には、例えば、ステンレススチール等で形成された芯金(基材)に、砥粒を密に接着して形成した表層を有して構成されている。当該砥粒の材料としては、酸化アルミニウム、水酸化酸化アルミニウム、酸化ケイ素、酸化セリウム、酸化チタン、ジルコニア、リチウムシリケート、窒化ケイ素、炭化ケイ素、酸化鉄、酸化クロム、酸化アンチモン、ダイヤモンド、及びこれらの混合物等が挙げられる。
【0063】
〔調整機構40〕
調整機構40は、図5に示されるように、リフレッシュロール93の外周面に沿うように対向ロール94を変位させて、定着ベルト84のニップ部N1への進入角度θ1(図6参照)及び定着ベルト84のニップ部N1からの退出角度θ2(図6参照)を調整可能な機構である。
【0064】
本実施形態では、図6に示されるように、リフレッシュロール93及び対向ロール94による定着ベルト84の挟み込みが開始されるニップ開始点S1でのリフレッシュロール93の表面(接線TL1)に対する定着ベルト84の角度を、進入角度θ1とする。なお、図6に示す直線L1は、リフレッシュロール93の中心点Mとニップ開始点S1とを結んだ直線であり、接線TL1に対して垂直な線である。
【0065】
また、本実施形態では、リフレッシュロール93及び対向ロール94による定着ベルト84の挟み込みが終了するニップ終了点F1でのリフレッシュロール93の表面(接線TL2)に対する定着ベルト84の角度を、退出角度θ2とする。なお、図6に示す直線L2は、リフレッシュロール93の中心点Mとニップ終了点F1とを結んだ直線であり、接線TL2に対して垂直な線である。
【0066】
具体的には、調整機構40は、例えば、対向ロール94の軸方向両端部をリフレッシュロール93の周方向(矢印−A、A方向)に沿って移動可能に支持する支持体46と、対向ロール94の軸方向両端部に矢印−A、A方向へ駆動力を付与する駆動部48と、を有している。
【0067】
支持体46は、例えば、リフレッシュロール93の周方向に沿って形成された長孔46Aを有し、対向ロール94の軸方向両端部に配置された支持板で構成されている。この構成では、対向ロール94の軸方向両端部の軸部94Aが、それぞれ、長孔46Aに沿って移動可能に且つ回転可能に長孔46Aに差し込まれる。これにより、対向ロール94がリフレッシュロール93の周方向(矢印−A、A方向)に沿って移動可能に支持体46に支持される。なお、対向ロール94の軸部94Aを回転可能に支持する軸受が、長孔46Aに沿って移動可能に長孔46Aに差し込まれる構成であってもよい。
【0068】
駆動部48としては、例えば、ソレノイド等のアクチュエータが用いられる。駆動部48は、例えば、長孔46Aの長手方向一端部に軸部94Aが当たる第一位置(図5における二点鎖線の位置、図3に示す位置)と、長孔46Aの長手方向他端部に軸部94Aが当たる第二位置(図5における実線の位置)と、に対向ロール94を移動させる。すなわち、駆動部48は、対向ロール94をリフレッシュロール93の周方向に沿って2つの位置に移動させる。
【0069】
対向ロール94が第一位置(図5における二点鎖線の位置)に位置する状態(以下、「対向ロール94の第一状態」という)では、定着ベルト84のニップ部N1での経路が、リフレッシュロール93側に凸状(対向ロール94側に凹状)となるC字状の経路となる(図3参照)。
【0070】
すなわち、対向ロール94の第一状態では、進入角度θ1が、定着ベルト84がリフレッシュロール93側に凸状(対向ロール94側に凹状)となる角度となる。また、対向ロール94の第一状態では、退出角度θ2が、定着ベルト84がリフレッシュロール93側に凸状(対向ロール94側に凹状)となる角度となる。
【0071】
対向ロール94が第一位置(図5における二点鎖線の位置)から第二位置(図5における実線の位置)へ移動すると、定着ベルト84のニップ部N1での経路がC字状から、S字状に変化する。
【0072】
すなわち、対向ロール94が第二位置(図5における実線の位置)に位置する状態(以下、「対向ロール94の第二状態」という)では、進入角度θ1が、リフレッシュロール93側に凹状(対向ロール94側に凸状)となる角度となる。また、対向ロール94の第二状態では、退出角度θ2が、定着ベルト84がリフレッシュロール93側に凸状(対向ロール94側に凹状)となる角度となる。
【0073】
このように、対向ロール94が、リフレッシュロール93の外周面に沿うように、第一位置(図5における二点鎖線の位置)から第二位置(図5における実線の位置)に変位することで、定着ベルト84のニップ部N1への進入角度θ1及び定着ベルト84のニップ部N1からの退出角度θ2が変化する。
【0074】
《第一実施形態の作用》
本実施形態では、対向ロール94は、初期位置として、例えば、第一位置(図5における二点鎖線の位置)に位置している。
【0075】
リフレッシュロール93が、定着ベルト84に対して周速度差をもって定着ベルト84の周回方向にならって順回転し、定着ベルト84の外周面を摩擦することで荒らして、当該表面の凹凸差を低減する。
【0076】
そして、対向ロール94の第一状態では、ニップ部N1における定着ベルト84の経路が、リフレッシュロール93側に凸状(対向ロール94側に凹状)となるC字状の経路となる。
【0077】
すなわち、対向ロール94の第一状態では、進入角度θ1は、定着ベルト84がリフレッシュロール93側に凸状(対向ロール94側に凹状)となる角度となる。この場合では、定着ベルト84の外周面84Bが伸びた状態でニップ部N1に進入し、ニップ部N1におけるニップ開始側(上流側)において、定着ベルト84に正の歪みが発生する。
【0078】
また、対向ロール94の第一状態では、退出角度θ2は、定着ベルト84がリフレッシュロール93側に凸状(対向ロール94側に凹状)となる角度となる。この場合では、定着ベルト84の外周面84Bが伸びた状態でニップ部N1から退出するため、ニップ部N1におけるニップ終了側(下流側)において、定着ベルト84に正の歪みが発生する。
【0079】
ここで、本実施形態では、定着ベルト84の外周面の凹凸(表面粗さ)を大きくしたい場合には、駆動部48によって、対向ロール94を第一位置(図5における二点鎖線の位置)から第二位置(図5における実線の位置)へ移動させる。
【0080】
対向ロール94が第一位置(図5における二点鎖線の位置)から第二位置(図5における実線の位置)へ移動すると、定着ベルト84のニップ部N1での経路がC字状から、S字状に変化する。
【0081】
すなわち、対向ロール94の第二状態では、進入角度θ1は、定着ベルト84がリフレッシュロール93側に凹状(対向ロール94側に凸状)となる角度となる。この場合では、定着ベルト84の外周面84Bが縮んだ状態でニップ部N1に進入し、ニップ部N1におけるニップ開始側(上流側)において、定着ベルト84に負の歪みが発生する。
【0082】
また、対向ロール94の第二状態は、退出角度θ2は、定着ベルト84がリフレッシュロール93側に凸状(対向ロール94側に凹状)となる角度となる。この場合では、定着ベルト84の外周面84Bが伸びた状態でニップ部N1から退出するため、ニップ部N1におけるニップ終了側(下流側)において、定着ベルト84に正の歪みが発生する。
【0083】
このように、対向ロール94の第二状態では、ニップ部N1におけるニップ開始側(上流側)において、定着ベルト84の歪みが負から正に変化するため、対向ロール94の第一状態の場合に比べ、定着ベルト84の歪みの変化割合が大きくなる。
【0084】
ここで、図7のグラフには、対向ロール94の第一状態の場合と、対向ロール94の第二状態の場合とにおいて、歪みの正負の方向及び、歪みの変化割合を測定した結果が示されている。
【0085】
図7のグラフでは、対向ロール94の第一状態の定着ベルト84の歪みが実線で示され、対向ロール94の第二状態の定着ベルト84の歪みが破線で示されている。また、対向ロール94の第一状態の定着ベルト84の歪みの変化割合がP1にて示され、対向ロール94の第二状態の定着ベルト84の歪みの変化割合がP2にて示されている。
【0086】
図7のグラフの縦軸は、定着ベルト84の歪みを示しており、+(プラス)が正の歪みを、−(マイナス)が負の歪みを示す。また、図7のグラフの横軸は、定着ベルト84の周回方向の位置を示しており、対向ロール94の第一状態において対向ロール94の中心とリフレッシュロール93の中心との結んだ線と定着ベルト84が交わる位置を0とし、その位置から上流側を−(マイナス)として、下流側を+(プラス)として示している。
【0087】
このグラフにも示されるように、対向ロール94の第二状態では、変化割合が2.5%程度であるのに対して、対向ロール94の第一状態では、変化割合が0.5%程度とされる。すなわち、対向ロール94の第二状態では、対向ロール94の第一状態に比べ、定着ベルト84の歪みの変化割合が大きくなる。
【0088】
そして、ニップ部N1において定着ベルト84の歪みが変化すると、定着ベルト84の移動速度に速度変動が生じる。定着ベルト84の移動速度に速度変動が生じることで、リフレッシュロール93が定着ベルト84を荒らす量が大きくなり、定着ベルト84の外周面の凹凸(表面粗さ)を大きくなる。
【0089】
図8には、ニップ部N1における定着ベルト84の歪みの変化割合と、定着ベルト84の外周面の光沢度(表面グロス)との関係が示されている。定着ベルト84の外周面の光沢度(表面グロス)と、定着ベルト84の凹凸(表面粗さ)とは、相関関係と有しており、定着ベルト84の凹凸(表面粗さ)が大きくなると、定着ベルト84の表面の光沢度(表面グロス)が小さくなる。
【0090】
図8に示されるように、定着ベルト84の歪みの変化割合が大きくなると、定着ベルト84の外周面の光沢度(表面グロス)が小さくなること、すなわち、定着ベルト84の凹凸(表面粗さ)が大きくなることが分かる。例えば、対向ロール94の第一状態の変化割合(0.5%程度)である場合には、定着ベルト84の外周面の光沢度が38程度とされるのに対して、対向ロール94の第二状態の変化割合(2.5%程度)である場合には、定着ベルト84の外周面の光沢度が28程度とされる。
【0091】
なお、図8は、定着ベルト84の光沢度を、グロスメータとして、光沢計(製造メーカ名:BYK-Gardner、型式:4430)を用いて測定した結果を示すものである。
【0092】
以上のように、本実施形態では、対向ロール94を第一位置(図5における二点鎖線の位置)から第二位置(図5における実線の位置)移動させることで、ニップ部N1において定着ベルト84の歪みの変化割合を大きくする。これにより、ニップ部N1での定着ベルト84の移動速度の速度変動を大きくし、リフレッシュロール93が定着ベルト84を荒らす量が大きくなることで、定着ベルト84の外周面の凹凸(表面粗さ)を大きくする。このようにして、定着ベルト84の外周面の凹凸(表面粗さ)を予め定められた凹凸(狙いの凹凸)に制御する。当該凹凸の制御は、例えば、定着ベルト84の表面の光沢度や、形成された画像の光沢度をセンサにて、定着ベルト84の外周面の凹凸が予め定められた凹凸(狙いの凹凸)よりも小さいことが検出された場合に、実行される。
【0093】
また、本実施形態では、対向ロール94を変位させるので、対向ロール94が変位しない構成に比べ、定着ベルト84に接触する部品の部品点数を増加させなくても、定着ベルト84の外周面の凹凸が予め定められた凹凸に制御される。
【0094】
また、本実施形態では、定着ベルト84の内周面84Cに接触する対向ロール94を変位させるため、対向ロール94が定着ベルト84に対して相対移動することで生じる定着ベルト84との擦れは、定着ベルト84の内周面との間で起こり、定着ベルト84の外周面との間では起こらない。したがって、定着ベルト84の外周面84Bの表面粗さに影響しにくい。
【0095】
《第一実施形態の変形例》
前述の作用では、対向ロール94を、初期位置として、第一位置(図5における二点鎖線の位置)に位置させていたが、これに限られない。例えば、対向ロール94を、初期位置として、例えば、第二位置(図5における実線の位置)に位置させておいてもよい。この構成では、定着ベルト84の外周面の凹凸(表面粗さ)を小さくしたい場合に、対向ロール94を第二位置(図5における実線の位置)から第一位置(図5における二点鎖線の位置)へ移動させる。
【0096】
また、対向ロール94を、初期位置として、例えば、第一位置(図5における二点鎖線の位置)と第二位置(図5における実線の位置)との中間の位置に位置させておいてもよい。この構成では、定着ベルト84の外周面の凹凸(表面粗さ)を大きくしたい場合には、対向ロール94を当該中間の位置から第二位置(図5における実線の位置)へ移動させる。また、定着ベルト84の外周面の凹凸(表面粗さ)を小さくしたい場合に、対向ロール94を中間の位置から第一位置(図5における二点鎖線の位置)へ移動させる。
【0097】
また、第一実施形態では、対向ロール94を第一位置(図5における二点鎖線の位置)から矢印A方向に移動させていたが、これに限られない。例えば、対向ロール94を第一位置(図5における二点鎖線の位置)から矢印−A方向(上方)側へ移動させて、定着ベルト84のニップ部N1での経路がC字状から、S字状(図5におけるS字とは逆に湾曲するS字)に変化させてもよい。この構成では、進入角度θ1が、リフレッシュロール93側に凸状(対向ロール94側に凹状)となる角度となり、ニップ部N1におけるニップ開始側(上流側)において、定着ベルト84に負の歪みが発生する。また、退出角度θ2が、定着ベルト84がリフレッシュロール93側に凹状(対向ロール94側に凸状)となる角度となり、ニップ部N1におけるニップ終了側(下流側)において、定着ベルト84に正の歪みが発生する。したがって、定着ベルト84の歪みの変化割合が大きくなり、定着ベルト84の凹凸(表面粗さ)が大きくなる。
【0098】
本実施形態では、調整機構40が、対向ロール94をリフレッシュロール93の外周面に沿うように変位させて、進入角度θ1及び退出角度θ2を調整していたが、これに限られない。例えば、調整機構40が、リフレッシュロール93を対向ロール94の外周面に沿うように変位させて、進入角度θ1及び退出角度θ2を調整する構成であってもよい。
【0099】
この構成では、調整機構40は、例えば、リフレッシュロール93の軸方向両端部を対向ロール94の周方向に沿って移動可能に支持する支持体と、リフレッシュロール93の軸方向両端部に対向ロール94の周方向へ駆動力を付与する駆動部と、を有している。そして、リフレッシュロール93と対向ロール94との位置関係が、図5において実線及び二点鎖線で示される位置関係になるように、駆動部がリフレッシュロール93を変位させる。
【0100】
『第二実施形態』
第二実施形態では、前述の調整機構40に替えて、図9に示す調整機構140が用いられる。調整機構140は、接触ロール160と、変位機構170と、を有している。
【0101】
接触ロール160は、定着ベルト84の周回方向におけるリフレッシュロール93の上流で定着ベルト84に接触するロールである。具体的には、接触ロール160は、定着ベルト84の内周側において、定着ベルト84の周回方向におけるリフレッシュロール93の直前に配置されている。この配置位置で、接触ロール160は、定着ベルト84が巻き掛けられている。この接触ロール160は、定着ベルト84の周回(移動)に伴って従動回転するようになっている。
【0102】
なお、「定着ベルト84の周回方向におけるリフレッシュロール93の直前に配置された構成」とは、定着ベルトの周回方向において、リフレッシュロール93の前(上流)に接触ロール160が配置され、且つ、リフレッシュロール93と接触ロール160との間に、定着ベルト84に接触する他の部材が配置されていない構成をいう。他の部材が配置されていなければ、リフレッシュロール93と接触ロール160との距離は不問である。
【0103】
接触ロール160は、定着ベルト84の幅方向に沿って長さを有する円柱状(ロール状)に形成されている。接触ロール160の外周面における外周一部(円弧面)が定着ベルト84の内周面に接触している。接触ロール160の外周面は、定着ベルト84の幅方向の一端から他端にわたって接触している。
【0104】
変位機構170は、接触ロール160を変位させて定着ベルト84の進入角度θ1を調整する機構である。変位機構170は、例えば、接触ロール160の軸方向両端部を矢印−B、B方向に移動可能に支持する支持体(図示省略)と、接触ロール160の軸方向両端部に矢印−B、B方向へ駆動力を付与する駆動部(図示省略)と、を備えて構成される。駆動部としては、例えば、ソレノイド等のリニアアクチュエータが用いられる。
【0105】
そして、変位機構170は、例えば、第一位置(図9に示す位置)と第二位置(図10に示す位置)とに、接触ロール160を移動させる。
【0106】
接触ロール160が第一位置(図9に示す位置)に位置する状態(以下、「接触ロール160の第一状態」という)では、定着ベルト84のニップ部N1での経路が、リフレッシュロール93側に凸状(対向ロール94側に凹状)となるC字状の経路となる。
【0107】
すなわち、接触ロール160の第一状態では、定着ベルト84がリフレッシュロール93側に凸状(対向ロール94側に凹状)となる進入角度θ1を有する。
【0108】
また、接触ロール160の第一状態では、定着ベルト84がリフレッシュロール93側に凸状(対向ロール94側に凹状)となる退出角度θ2を有する。
【0109】
接触ロール160が第一位置(図9に示す位置)から第二位置(図10に示す位置)へ移動すると、定着ベルト84のニップ部N1での経路がC字状から、S字状に変化する。
【0110】
すなわち、接触ロール160が第二位置(図10に示す位置)に位置する状態(以下、「接触ロール160の第二状態」という)では、定着ベルト84がリフレッシュロール93側に凸状(対向ロール94側に凹状)となる進入角度θ1を有する。
【0111】
なお、退出角度θ2は、接触ロール160の第一状態と、接触ロール160の第二状態と、で変化しない。
【0112】
このように、接触ロール160が第一位置(図9に示す位置)から第二位置(図10に示す位置)に変位することで、定着ベルト84のニップ部N1への進入角度θ1が変化する。
【0113】
《第二実施形態の作用》
本実施形態では、接触ロール160は、初期位置として、例えば、第一位置(図9に示す位置)に位置している。
【0114】
リフレッシュロール93が、定着ベルト84に対して周速度差をもって定着ベルト84の周回方向にならって順回転し、定着ベルト84の外周面を摩擦することで荒らして、当該表面の凹凸差を低減する。
【0115】
そして、接触ロール160の第一状態では、ニップ部N1における定着ベルト84の経路が、リフレッシュロール93側に凸状(対向ロール94側に凹状)となるC字状の経路となる。
【0116】
すなわち、接触ロール160の第一状態では、進入角度θ1は、定着ベルト84がリフレッシュロール93側に凸状(対向ロール94側に凹状)となる角度となる。この場合では、定着ベルト84の外周面84Bが伸びた状態でニップ部N1に進入し、ニップ部N1におけるニップ開始側(上流側)において、定着ベルト84に正の歪みが発生する。
【0117】
また、接触ロール160の第一状態では、退出角度θ2は、定着ベルト84がリフレッシュロール93側に凸状(対向ロール94側に凹状)となる角度となる。この場合では、定着ベルト84の外周面84Bが伸びた状態でニップ部N1から退出するため、ニップ部N1におけるニップ終了側(下流側)において、定着ベルト84に正の歪みが発生する。
【0118】
ここで、本実施形態では、定着ベルト84の外周面の凹凸(表面粗さ)を大きくしたい場合には、接触ロール160を第一位置(図9に示す位置)から第二位置(図10に示す位置)へ移動させる。
【0119】
接触ロール160が第一位置(図9に示す位置)から第二位置(図10に示す位置)へ移動すると、定着ベルト84のニップ部N1での経路がC字状から、S字状に変化する。
【0120】
すなわち、接触ロール160の第二状態では、進入角度θ1は、定着ベルト84がリフレッシュロール93側に凹状(対向ロール94側に凸状)となる角度となる。この場合では、定着ベルト84の外周面84Bが縮んだ状態でニップ部N1に進入し、ニップ部N1におけるニップ開始側(上流側)において、定着ベルト84に負の歪みが発生する。
【0121】
接触ロール160の第二状態では、退出角度θ2は変化しないので、定着ベルト84の外周面が伸びた状態でニップ部N1から退出するため、ニップ部N1におけるニップ終了側(下流側)において、定着ベルト84に正の歪みが発生する。
【0122】
このように、接触ロール160の第二状態では、ニップ部N1におけるニップ開始側(上流側)において、定着ベルト84の歪みが負から正に変化するため、接触ロール160の第一状態の場合に比べ、定着ベルト84の歪みの変化割合が大きくなる。
【0123】
そして、ニップ部N1において定着ベルト84の歪みが変化すると、定着ベルト84の移動速度に速度変動が生じる。定着ベルト84の移動速度に速度変動が生じることで、リフレッシュロール93が定着ベルト84を荒らす量が大きくなり、定着ベルト84の外周面の凹凸(表面粗さ)を大きくなる。このようにして、定着ベルト84の外周面の凹凸(表面粗さ)を予め定められた凹凸(狙いの凹凸)に制御する。当該凹凸の制御は、例えば、定着ベルト84の表面の光沢度や、形成された画像の光沢度をセンサにて、定着ベルト84の外周面の凹凸が予め定められた凹凸(狙いの凹凸)よりも小さいことが検出された場合に、実行される。
【0124】
また、本実施形態では、接触ロール160を変位させるので、対向ロール94を変位させることのみで前記進入角度θ1及び前記退出角度θ2を調整する構成に比べ、リフレッシュロール93と対向ロール94との位置関係が変化することが抑制される。このため、リフレッシュロール93と対向ロール94とが定着ベルト84を挟むニップ状態が変化することが抑制される。
【0125】
《第二実施形態の変形例》
接触ロール160に替えて、又は加えて、定着ベルト84の周回方向におけるリフレッシュロール93の下流で定着ベルト84に接触する接触部材を用いてもよい。この構成では、例えば、接触部材は、定着ベルト84の内周側において、定着ベルト84の周回方向におけるリフレッシュロール93の直後に配置される。この構成では、接触ロール160の場合と同様に、当該接触部材を変位機構で変位させることで、定着ベルト84の退出角度θ2が調整される。
【0126】
なお、「定着ベルト84の周回方向におけるリフレッシュロール93の直後に配置された構成」とは、定着ベルトの周回方向において、リフレッシュロール93の後(下流)に接触ロール160が配置され、且つ、リフレッシュロール93と接触ロール160との間に、定着ベルト84に接触する他の部材が配置されていない構成をいう。他の部材が配置されていなければ、リフレッシュロール93と接触ロール160との距離は不問である。
【0127】
(接触ロール160の変形例)
本実施形態では、接触部材の一例としての接触ロール160は、周回する定着ベルト84に従動して回転する構成とされていたが、これに限られない。例えば、接触ロール160が回転せず、定着ベルト84が接触ロール160に対して滑りながら周回する構成であってもよい。
【0128】
また、本実施形態では、接触ロール160が円柱状に形成されていたが、これに限られない。例えば、接触部材が回転しない構成の場合では、定着ベルト84に接触する部分が、湾曲した面(例えば、円弧面)とされ、定着ベルト84に対する非接触部分において、円弧状以外の面(例えば、平面など)とされていてもよい。さらに、例えば、接触部材が回転しない構成の場合では、定着ベルト84に接触する部分が、平面で構成されていてもよい。
【0129】
また、本実施形態では、接触ロール160は、定着ベルト84の内周面84Cに接触する構成とされていたが、これに限られない。接触部材としては、定着ベルト84の外周面84Bに接触する構成であってもよい。なお、定着ベルト84の外周面84Bに接触する場合では、接触部材と定着ベルト84との間で摩擦が生じにくいように、例えば、定着ベルト84に従動回転する構成とされる。
【0130】
《第一実施形態及び第二実施形態の変形例》
第一実施形態における調整機構40に加えて、第二実施形態における調整機構140を用いてもよい。
【0131】
[リフレッシュロール93等の変形例]
本実施形態では、低減部材の一例としてのリフレッシュロール93は、定着ベルト84に対して周速度差をもって定着ベルト84の周回方向にならって順回転する構成とされていたが、これに限られない。例えば、リフレッシュロール93が回転しない構成、リフレッシュロール93が前述の順回転とは逆方向に回転する構成であってもよい。さらに、リフレッシュロール93は、周回する定着ベルト84に従動して回転する構成であってもよい。
【0132】
また、本実施形態では、低減部材の一例としてのリフレッシュロール93及び対向ロール94がロール状(円柱状)に形成されていたが、これに限られない。例えば、リフレッシュロール93及び対向ロール94の一方において、定着ベルト84に接触する部分が、平面で構成されていてもよい。
【0133】
本発明は、上記の実施形態に限るものではなく、種々の変形、変更、改良が可能である。例えば、上記に示した変形例は、適宜、複数を組み合わせて構成しても良い。
【符号の説明】
【0134】
10 画像形成装置
12 画像形成部
40、140 調整機構
80 定着装置
84 定着ベルト
93 リフレッシュロール(低減部材の一例)
160 接触ロール(接触部材の一例)
170 変位機構
P 記録媒体
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10