(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記のような永久磁石モータでは、ロータが高回転駆動になるほど、ロータの永久磁石による鎖交磁束の増加によりステータの巻線に発生する誘起電圧が大きくなり、この誘起電圧がモータ出力を低下させ、モータの高回転化の妨げとなっている。そこで、ロータの永久磁石のサイズを小さくするなどしてロータ磁極の磁力を小さくすることで、ロータの高回転時における前記誘起電圧を抑えることが可能であるが、それでは、得られるトルクも減少してしまうため、この点においてなお改善の余地があった。
【0005】
本発明は、上記課題を解決するためになされたものであって、その目的は、トルクの低下を抑えつつ高回転化を図ることができるモータを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するモータは、ステータの巻線に駆動電流が供給されることで生じる回転磁界を受けてロータが回転するモータであって、前記巻線は、前記駆動電流によって互いに同一のタイミングで励磁され、かつ、直列接続された第1の巻線と第2の巻線とを備え、前記ロータ
のロータ磁極は、永久磁石を用いる磁石磁極と、ロータコアの一部を用いるコア磁極とを備え、前記磁石磁極が前記第1の巻線と対向するロータの回転位置で前記コア磁極が前記第2の巻線と対向するように構成され
、励磁タイミングが同一な前記第1の巻線及び前記第2の巻線と対向する全ての前記ロータ磁極の磁力を弱めるのではなく、そのうちの一部の磁極を前記コア磁極として前記ステータ側への磁力を弱める。
【0007】
この構成によれば、励磁タイミングが同一な第1の巻線及び第2の巻線に対し所定の回転位置で対向するロータ磁極が、永久磁石を用いる磁石磁極と、ロータコアの一部を用いるコア磁極とを含む構成となる。つまり、励磁タイミングが同一な第1の巻線及び第2の巻線と対向する全てのロータ磁極の磁力を弱めるのではなく、そのうちの一部の磁極をコア磁極としてステータ側への磁力を弱めることで、トルクの低下を極力抑えつつも、磁石磁極の磁力によって第1の巻線に生じる誘起電圧と、コア磁極の磁力によって第2の巻線に生じる誘起電圧とを合成した合成誘起電圧を小さく抑えることができ、その結果、モータの高回転化を図ることができる。
【0008】
なお、同一のタイミングで励磁される第1及び第2の巻線が直列接続された巻線態様では、第1及び第2の巻線でそれぞれ生じる誘起電圧の和が合成誘起電圧となることから、該合成誘起電圧が大きくなる傾向がある。このため、第1及び第2の巻線が直列接続された構成において上記のロータの磁極構成とすることで、合成誘起電圧の抑制効果をより顕著に得ることができ、モータの高回転化を図るのにより好適となる。
【0009】
上記モータにおいて、前記巻線は、供給される3相の駆動電流に応じた、それぞれ2n(nは2以上の整数)個のU相巻線、V相巻線及びW相巻線からなり、前記磁石磁極と前記コア磁極のそれぞれの個数がn個で構成されていることが好ましい。
【0010】
この構成によれば、ステータの各相の巻線の個数が4以上の偶数で構成され、ロータの磁石磁極及びコア磁極が2以上の同数(各相の巻線の半数)で構成される。このため、ロータを磁気的に、また機械的にバランスの優れた構成とすることが可能となる。
【0011】
上記モータにおいて、前記磁石磁極及び前記コア磁極は、周方向等間隔に交互に設けられていることが好ましい。
この構成によれば、ステータの同相の巻線(同一励磁タイミングの巻線)と対向するロータの磁石磁極及びコア磁極が周方向等間隔に交互に設けられるため、ロータを磁気的に、また機械的にバランスの優れた構成とすることができる。
【0012】
上記モータにおいて、前記コア磁極は、永久磁石を用いた異極の磁石磁極と周方向において隣り合うように構成されていることが好ましい。
この構成によれば、コア磁極は、永久磁石を用いた異極の磁石磁極と周方向において隣り合うように構成される。このため、例えばS極の磁石磁極の磁界によってコア磁極を好適にN極として機能させることができる。
【0013】
上記モータにおいて、前記コア磁極と前記異極の磁石磁極との間に空隙が設けられていることが好ましい。
この構成によれば、互いに隣り合うコア磁極と異極の磁石磁極との間に空隙が設けられるため、コア磁極と異極の磁石磁極との境界部分における磁束密度の急峻な変化を抑制することができ、その結果、トルク脈動の低減に寄与できる。
【0014】
上記モータにおいて、前記磁石磁極及び前記コア磁極は、前記ロータのN極及びS極の両方に備えられ、N極の前記コア磁極とS極の前記コア磁極とが空隙を介して周方向に隣り合うように構成されていることが好ましい。
【0015】
この構成によれば、互いに隣り合うN極のコア磁極とS極のコア磁極との間に空隙が設けられるため、各極のコア磁極の磁束量を所望の値に調整しやすく、その結果、モータの出力特性を容易に調整することが可能となる。
【0016】
上記モータにおいて、前記ロータコアには、該ロータコア内を流れる磁束を誘導するための磁気調整部が設けられていることが好ましい。
この構成によれば、コア磁極の磁束量を所望の値に調整しやすく、その結果、モータの出力特性を容易に調整することが可能となる。
【0017】
上記モータにおいて、前記磁気調整部は、前記ロータコアに埋設され前記コア磁極に磁束を流す補助磁石を備えていることが好ましい。
この構成によれば、コア磁極には、永久磁石の磁束だけでなく補助磁石の磁束も流れるため、コア磁極に流れる磁束が増加し、その結果、モータの高トルク化に寄与できる。
【0018】
上記モータにおいて、前記コア磁極は、永久磁石を用いた異極の磁石磁極と周方向において隣り合うように構成され、前記磁気調整部は、前記磁石磁極の磁束を隣りの前記コア磁極の周方向中心側に導く磁束誘導部を備えていることが好ましい。
【0019】
この構成によれば、磁石磁極(永久磁石)からロータコアを通じて隣りのコア磁極に向かう磁束が、磁束誘導部によってコア磁極の周方向中心側に誘導される。これにより、コア磁極における周方向の磁極中心(磁束密度のピーク位置)を、該コア磁極の周方向中心位置に近づけることができ、より好適な構成となる。
【0020】
上記モータにおいて、前記磁石磁極及び前記コア磁極は、前記ロータのN極及びS極の両方に備えられ、N極の前記磁石磁極とS極の前記磁石磁極とが周方向に隣り合うとともに、N極の前記磁石磁極におけるS極の前記磁石磁極とは反対側にはS極の前記コア磁極が設けられ、S極の前記磁石磁極におけるN極の前記磁石磁極とは反対側にはN極の前記コア磁極が設けられ、前記磁気調整部は、周方向に隣り合うN極の前記磁石磁極とS極の前記磁石磁極との間の磁束の短絡を抑制するように構成されることが好ましい。
【0021】
この構成によれば、周方向に隣り合うN極の磁石磁極とS極の磁石磁極との間の磁束の短絡が磁気調整部によって抑制されるため、磁石磁極から隣りのコア磁極に向かう磁束量の低下を抑えることができ、その結果、モータの高トルク化に寄与できる。
【0022】
上記モータにおいて、前記磁石磁極は、前記永久磁石が前記ロータコアの外周面に固着されてなることが好ましい。
この構成によれば、ロータが表面磁石型構造(SPM構造)をなすため、モータの高トルク化に寄与できる。
【0023】
上記モータにおいて、前記磁石磁極は、前記永久磁石が前記ロータコアに埋設されてなることが好ましい。
この構成によれば、ロータが埋込磁石型構造(IPM構造)をなすため、弱め界磁制御時における永久磁石の減磁を抑制する点で有利となる。
【0024】
上記モータにおいて、N極及びS極の前記磁石磁極にはそれぞれ、一対の前記永久磁石が軸方向視で径方向外側に拡がる略V字をなすように設けられていることが好ましい。
この構成によれば、N極及びS極の磁石磁極にはそれぞれ、一対の永久磁石が軸方向視で径方向外側に拡がる略V字をなすように埋設されるため、永久磁石の外周側のロータコア体積を大きくとることが可能となる。それにより、リラクタンストルクを増やすことが可能となり、モータの高トルク化に寄与できる。
【0025】
上記モータにおいて、前記磁気調整部は、N極及びS極の前記磁石磁極のそれぞれにおける前記永久磁石よりも径方向内側に設けられていることが好ましい。
この構成によれば、永久磁石がV字配置された磁石磁極において、異極の磁石磁極間の磁束の短絡を抑制するための磁気調整部が永久磁石よりも径方向内側に設けられるため、該磁気調整部によって異極の磁石磁極間の磁束の短絡を好適に抑制することができる。
【0026】
上記モータにおいて、前記ロータコアは、前記各永久磁石をそれぞれ収容する複数の磁石収容孔を有し、前記磁石収容孔の径方向端部と該磁石収容孔に収容された前記永久磁石との間に空隙が設けられていることが好ましい。
【0027】
この構成によれば、磁石収容孔の径方向端部と該磁石収容孔に収容された永久磁石との間に空隙が設けられるため、該空隙の磁気抵抗によって各永久磁石のそれぞれにおける磁束の短絡を抑制できる。
【0028】
上記モータにおいて、弱め界磁制御を実行可能に構成されることが好ましい。
この構成によれば、上記のように巻線に生じる誘起電圧が小さく抑えられることによって、巻線に供給する弱め界磁電流を小さく抑えることが可能となる。そして、弱め界磁電流を小さくできることで、弱め界磁制御時に永久磁石が減磁しづらくなり、また、巻線の銅損を抑えることができる。また、換言すると、同等の弱め界磁電流量で低減できる鎖交磁束量が増加するため、弱め界磁制御による高回転化をより効果的に得ることができる。
【発明の効果】
【0029】
本発明のモータによれば、トルクの低下を抑えつつ高回転化を図ることができる。
【発明を実施するための形態】
【0031】
以下、モータの一実施形態について説明する。
図1(a)に示すように、本実施形態のモータ10は、ブラシレスモータとして構成され、円環状のステータ11の内側にロータ21が配置されて構成されている。
【0032】
[ステータの構成]
ステータ11は、ステータコア12と、該ステータコア12に巻装された巻線13とを備えている。ステータコア12は、磁性金属にて略円環状に形成され、その周方向の等角度間隔においてそれぞれ径方向内側に延びる12個のティース12aを有している。
【0033】
巻線13は、ティース12aと同数の12個備えられ、各ティース12aにそれぞれ集中巻きにて同一方向に巻装されている。つまり、巻線13は、周方向等間隔(30°間隔)に12個設けられている。この巻線13は、供給される3相の駆動電流(U相、V相、W相)に応じて3相に分類され、
図1(a)において反時計回り方向に順に、U1、V1、W1、U2、V2、W2、U3、V3、W3、U4、V4、W4とする。
【0034】
各相で見ると、U相巻線U1〜U4は周方向等間隔(90°間隔)に配置されている。同様に、V相巻線V1〜V4は、周方向等間隔(90°間隔)に配置されている。また、同様に、W相巻線W1〜W4は、周方向等間隔(90°間隔)に配置されている。
【0035】
また、
図2に示すように、巻線13は各相毎に直列に接続されている。つまり、U相巻線U1〜U4、V相巻線V1〜V4、及びW相巻線W1〜W4はそれぞれ直列回路を構成している。なお、本実施形態では、U相巻線U1〜U4の直列回路、V相巻線V1〜V4の直列回路、及びW相巻線W1〜W4の直列回路がスター結線されている。
【0036】
[ロータの構成]
図1(b)に示すように、ロータ21は、ロータコア22と永久磁石23とを備えている。ロータコア22は、磁性金属にて略円盤状に形成され、中心部に回転軸24が固定されている。ロータコア22の外周部には、2つの磁石固定部25及び4つの突部26が形成されている。
【0037】
各磁石固定部25は、周方向において180°対向位置に設けられている。これら磁石固定部25にはそれぞれ2つの永久磁石23が固着され、合計で4個の永久磁石23がロータコア22の外周部に設けられている。
【0038】
各永久磁石23は、互いに同一形状であり、各永久磁石23の外周面は、回転軸24の軸線L方向から見て該軸線Lを中心とする円弧状をなしている。また、各永久磁石23の軸線Lを中心とする開角度(周方向幅)は45°に形成されている。なお、永久磁石23は、例えば異方性の焼結磁石であり、例えばネオジム磁石、サマリウムコバルト(SmCo)磁石、SmFeN系磁石、フェライト磁石、アルニコ磁石等で構成される。
【0039】
各永久磁石23は、磁気配向が径方向を向くように形成され、各磁石固定部25に設けられた2つの永久磁石23は、外周側に現れる磁極が互いに異極となるように構成されている。また、各永久磁石23は、同極のものが周方向において180°対向位置に配置されている。これら各永久磁石23は、ロータ21の一部の磁極を構成している。詳しくは、外周側にN極が現れる永久磁石23がN極の磁石磁極Mnを構成し、外周側にS極が現れる永久磁石23がS極の磁石磁極Msを構成している。
【0040】
ロータコア22の突部26は、各磁石固定部25の周方向間において2つずつ、周方向に隣り合うように設けられている。この互いに隣り合う一対の突部26の周方向間には空隙K1が形成されている。また、この互いに隣り合う一対の突部26の一方は、N極の磁石磁極Mn(外周側がN極の永久磁石23)と周方向に隣り合い、そのN極の永久磁石23の磁界によってS極の磁極(突極磁極Ps)として機能する。同様に、他方の突部26は、S極の磁石磁極Ms(外周側がS極の永久磁石23)と隣り合い、そのS極の永久磁石23の磁界によってN極の磁極(突極磁極Pn)として機能する。この一対のN極の突極磁極Pnは周方向において180°対向位置に配置され、一対のS極の突極磁極Psも同様に周方向において180°対向位置に配置されている。なお、各突部26の外周面は、軸方向から見て各永久磁石23の外周面と同一円上(回転軸24の軸線Lを中心とする同一円上)に位置する円弧状に形成されている。また、各突部26の開角度は、各永久磁石23の開角度よりも小さく設定されている。また、互いに異極となる突極磁極Pn,Ps(突部26)と磁石磁極Mn,Ms(永久磁石23)との間、つまり、N極の突極磁極PnとS極の磁石磁極Msとの間、及びS極の突極磁極PsとN極の磁石磁極Mnとの間にはそれぞれ空隙K2が形成されている。
【0041】
上記構成のロータ21では、その外周面(即ちステータ11との対向面)において、N極・S極が周方向等間隔(45°間隔)に交互に設定された8極ロータとして構成されている。具体的には、ロータ21の外周面(即ちステータ11との対向面)の磁極が、時計回り方向において順に、N極の磁石磁極Mn、S極の突極磁極Ps、N極の突極磁極Pn、S極の磁石磁極Ms、N極の磁石磁極Mn、・・・を繰り返す構成となっている。また、ロータ21のN極を構成する磁石磁極Mnと突極磁極Pnとは、周方向の中心位置が等角度間隔(90°間隔)に交互に配置され、同様に、ロータ21のS極を構成する磁石磁極Msと突極磁極Psとは、周方向の中心位置が等角度間隔(90°間隔)に交互に配置されている。
【0042】
ロータコア22には、回転軸24の径方向に沿って延びる4つのスリット孔27が形成されている。スリット孔27は周方向に90°間隔に配設され、周方向に隣り合う突極磁極Pn,Ps間の境界部と、周方向に隣り合う磁石磁極Mn,Mn間の境界部とにそれぞれ設けられている。また、各スリット孔27は、ロータコア22における回転軸24が固定された固定孔22aの近傍位置から径方向に沿って永久磁石23及び突部26の近傍位置まで延びている。なお、本実施形態では、各スリット孔27はロータコア22を軸方向に貫通している。これら各スリット孔27内は空隙であり、磁性金属のロータコア22よりも磁気抵抗が大きいため、各スリット孔27によってロータコア22内を通る各永久磁石23の磁束が隣り合う突極磁極Pn,Psに好適に誘導されるようになっている(
図1(a)の破線の矢印を参照)。
【0043】
次に、本実施形態の作用について説明する。
図示しない駆動回路からそれぞれ120°の位相差を持つ3相の駆動電流(交流)がU相巻線U1〜U4、V相巻線V1〜V4及びW相巻線W1〜W4にそれぞれ供給されると、各巻線U1〜W4が相毎に同一タイミングで励磁されてステータ11に回転磁界が発生し、その回転磁界に基づいてロータ21が回転する。このとき、3相の駆動電流の供給によってステータ11側に形成される磁極は、各相の巻線U1〜W4毎で同極となる。
【0044】
上記したように、ロータ21の極対数(つまり、N極とS極のそれぞれの個数)は、各相の巻線U1〜W4の個数と同数(本実施形態では「4」)で構成されている。これにより、ロータ21の回転時に、例えば、ロータ21のN極(磁石磁極Mn及び突極磁極Pn)のうちの1つがU相巻線U1と径方向に対向するとき、他のN極がU相巻線U2〜U4とそれぞれ径方向に対向するようになっている(
図1(a)参照)。
【0045】
ここで、ロータ21の4つのN極は、そのうちの半分が突部26による突極磁極Pnで構成され、その各突極磁極Pnは、隣り合う磁石磁極Msの永久磁石23の磁界によって機能する擬似的な磁極であるため、永久磁石23による磁石磁極Mnに比べてステータ11側に与える磁力が弱くなっている。これは、ロータ21のS極(突極磁極Ps及び磁石磁極Ms)においても同様である。
【0046】
これにより、例えば、各磁石磁極Mnと対向するU相巻線U1〜U4(
図1(a)に示す例ではU相巻線U1,U3)を鎖交する鎖交磁束φxに対して、各突極磁極Pnと対向するU相巻線U1〜U4(
図1(a)に示す例ではU相巻線U2,U4)を鎖交する鎖交磁束φyが減少される。従って、鎖交磁束φyが生じるU相巻線(突極磁極Pnと対向する巻線)に生じる誘起電圧は、鎖交磁束φxが生じるU相巻線(磁石磁極Mnと対向する巻線)に生じる誘起電圧よりも小さくなる。このため、各U相巻線U1〜U4に生じる誘起電圧を合成した合成誘起電圧は、突極磁極Pnと対向する一対のU相巻線(
図1(a)ではU相巻線U2,U4)での誘起電圧の減少分だけ減少する。なお、ここではU相巻線U1〜U4がロータ21のN極(磁石磁極Mn及び突極磁極Pn)と対向するときの合成誘起電圧の減少を例にとって説明したが、V相巻線V1〜V4及びW相巻線W1〜W4においても同様であり、また、ロータ21のS極(磁石磁極Ms及び突極磁極Ps)においても同様に突極磁極Psによる合成誘起電圧の減少が生じる。
【0047】
次に、本実施形態の特徴的な効果を記載する。
(1)ステータ11の巻線13は、供給される3相の駆動電流に応じた、それぞれ4つのU相巻線U1〜U4、V相巻線V1〜V4及びW相巻線W1〜W4からなり、各相の4つの巻線はそれぞれ直列接続されている。つまり、ステータ11の巻線13は、各相において、直列接続された少なくとも2つの巻線(第1の巻線及び第2の巻線)を備える。
【0048】
また、ロータ21のN極は、永久磁石23を用いる磁石磁極Mnと、ロータコア22の突部26を用いる突極磁極Pnとからなり、磁石磁極MnがU、V、W相のいずれかの相の第1の巻線(例えばU相巻線U1,U3)と対向するロータ21の回転位置で、突極磁極Pnが同相の第2の巻線(例えばU相巻線U2,U4)と対向するように構成される。また、ロータ21のS極も同様に、永久磁石23を用いる磁石磁極Msと、ロータコア22の突部26を用いる突極磁極Psとからなり、磁石磁極MsがU、V、W相のいずれかの相の第1の巻線(例えばU相巻線U1,U3)と対向するロータ21の回転位置で、突極磁極Psが同相の第2の巻線(例えばU相巻線U2,U4)と対向するように構成される。
【0049】
この構成によれば、ロータ21における同相の巻線13と対向する全てのN極(又はS極)の磁力を弱めるのではなく、そのうちの一部を突極磁極Pn(突極磁極Ps)として磁力を弱めている。これにより、トルクの低下を極力抑えつつも、ロータ21の磁極によって同相の巻線13に生じる合成誘起電圧を小さく抑えることができ、その結果、モータ10の高回転化を図ることができる。また、磁石磁極Mn,Msに対して磁力の弱い磁極を、ロータコア22の突部26による突極磁極Pn,Psで構成している(つまり、所謂コンシクエントポール型のロータ構造としている)ため、ロータ21の一部の磁極の磁力を弱くすることによることによるトルク低下を極力抑えることができる。
【0050】
なお、本実施形態のように、巻線13が各相でそれぞれ直列とされた巻線態様では、相毎の各巻線でそれぞれ生じる誘起電圧の和が合成誘起電圧となることから、該合成誘起電圧が大きくなる傾向がある。このため、巻線13が各相でそれぞれ直列とされた構成において上記のように突極磁極Pn,Psを設けることで、合成誘起電圧の抑制効果をより顕著に得ることができ、モータの高回転化を図るのにより好適となる。
【0051】
(2)U相巻線U1〜U4、V相巻線V1〜V4、及びW相巻線W1〜W4がそれぞれ2n個(nは2以上の整数であって、本実施形態ではn=2)で構成され、ロータ21の磁石磁極Mn,Ms及び突極磁極Pn,Psのそれぞれの個数がn個(つまり2個)で構成される。つまり、磁石磁極Mn,Ms及び突極磁極Pn,Psが互いに同数(各相の巻線の個数の半数)で構成されるため、磁石磁極Mnと突極磁極Pn(磁石磁極Msと突極磁極Ps)とを周方向等間隔に交互に設けることが可能となる。これにより、磁力及び質量の異なる磁石磁極Mnと突極磁極Pn(磁石磁極Msと突極磁極Ps)が周方向にバランスよく配置されることとなり、ロータ21を磁気的に、また機械的にバランスの優れた構成とすることができる。
【0052】
(3)突極磁極Pn,Psは、永久磁石23を用いた異極の磁石磁極Mn,Msと周方向において隣り合うように構成されるため、例えばS極の磁石磁極Msの磁界によって突極磁極Pnを好適にN極として機能させることができる。
【0053】
(4)互いに異極となる突極磁極Pn,Psと磁石磁極Mn,Msとの間に空隙K2が設けられるため、突極磁極Pn,Psと磁石磁極Mn,Msとの境界部分における磁束密度の急峻な変化を抑制することができ、その結果、トルク脈動の低減に寄与できる。
【0054】
(5)N極の突極磁極PnとS極の突極磁極Psとが空隙K1を介して周方向に隣り合うように構成される。つまり、互いに隣り合うN極の突極磁極PnとS極の突極磁極Psとの間に空隙K1が設けられるため、各極の突極磁極Pn,Psの磁束量を所望の値に調整しやすく、その結果、モータ10の出力特性を容易に調整することが可能となる。
【0055】
(6)ロータコア22には、該ロータコア22内を流れる磁束を誘導するためのスリット孔27(磁気調整部)が形成されている。この構成によれば、周方向に隣り合う永久磁石23によって磁化される突極磁極Pn,Psの磁束量を所望の値に調整しやすく、その結果、モータ10の出力特性を容易に調整することが可能となる。具体的には、周方向に隣り合う磁石磁極Mn,Mn間の境界部に形成されたスリット孔27は、該磁石磁極Mn,Ms間の磁束の短絡を抑制する。そのため、各磁石磁極Mn,Msから隣りの突極磁極Pn,Psに向かう磁束量の低下を抑えることができ、その結果、高トルク化に寄与できる。
【0056】
(7)磁石磁極Mn,Msは、永久磁石23がロータコア22の外周面(磁石固定部25)に固着されてなる。つまり、ロータ21が表面磁石型構造(SPM構造)をなすため、モータ10の高トルク化に寄与できる。
【0057】
なお、上記実施形態は、以下のように変更してもよい。
・上記実施形態では特に言及していないが、ロータ21の高回転時において弱め界磁制御を行ってもよい。上記実施形態では、自発的に磁束を発さない突極磁極Pn,Psをロータ21が備えることによって、巻線13に供給する弱め界磁電流を小さく抑えることが可能となる。そして、弱め界磁電流を小さくできることで、弱め界磁制御時に永久磁石23が減磁しづらくなり、また、巻線13の銅損を抑えることができる。また、換言すると、同等の弱め界磁電流量で低減できる鎖交磁束量が増加するため、弱め界磁制御による高回転化をより効果的に得ることができる。
【0058】
・上記実施形態では、ロータコア22の突部26は、各磁石固定部25の周方向間において2つずつ設けられたが、これに以外に例えば、
図3に示すように、各磁石固定部25の周方向間において1つずつ設けてもよい。なお、同図に示すように、周方向に隣り合う突極磁極Pn,Ps間の境界部に沿って設けられたスリット孔27が突部26まで延出されることが、永久磁石23の磁束を突極磁極Pn,Psに流す点でより好ましい。
【0059】
・ロータコア22に形成するスリット孔27の配置及び形状等の構成は、上記実施形態や
図3に示す例に限定されるものではなく、例えば、
図4〜
図7に示すような構成としてもよい。なお、
図4〜
図7では、上記実施形態のタイプ(突部26が2つに分割されたタイプ)を例にとって示しているが、
図3に示す例のような突部26が分割されていないタイプにも適用可能である。
【0060】
図4に示す例では、スリット孔27は、各永久磁石23の径方向内側であって、該各永久磁石23の周方向中心に対応する位置に配置されている。このように、永久磁石23の径方向内側にスリット孔27を配置することで、ロータコア22内部を通過する永久磁石23の磁束がスリット孔27の周方向両側に分岐される(
図4中、破線の矢印を参照)。これにより、永久磁石23の径方向内側におけるスリット孔27の周方向位置に応じて、各永久磁石23における隣り合う突部26(突極磁極Pn,Ps)との間の磁束量、及び隣り合う永久磁石23(磁石磁極Mn,Ms)との間の磁束量を決定することができ、モータ10の出力特性をより好適に調整することが可能となる。
【0061】
また、
図5に示す例では、各スリット孔27は、径方向内側に向かって凸となる湾曲形状をなしている。より詳しくは、各スリット孔27は、各永久磁石23の径方向内側であって該各永久磁石23の周方向中心に対応する位置から内周側に延びるとともに、そこから隣り合う突部26側に湾曲して突極磁極Pn,Ps同士の境界付近まで延びている。このような構成によっても、上記の
図4の例と略同様の効果を得ることができる。
【0062】
また、例えば
図6に示すように、スリット孔27に補助磁石28を嵌め込んだ構成としてもよい。なお、この構成では、スリット孔27及び補助磁石28が磁気調整部を構成している。また、補助磁石28は、例えばネオジム磁石、サマリウムコバルト(SmCo)磁石、SmFeN系磁石、フェライト磁石、アルニコ磁石等で構成され、また、焼結磁石及びボンド磁石のいずれの構成でもよい。
【0063】
図6に示す例では、補助磁石28は、周方向に隣り合う突極磁極Pn,Ps間の境界部に設けられたスリット孔(
図6中、スリット孔27a)に設けられている。つまり、補助磁石28は、N極の突極磁極PnとS極の突極磁極Psとの境界部に設けられている。そして、補助磁石28は、ロータ21の周方向に略沿った磁気配向を有し、周方向の突極磁極Pn側がN極、周方向の突極磁極Ps側がS極となるように磁化されている。
【0064】
このような構成によれば、突極磁極Pn,Psには、永久磁石23の磁束だけでなく補助磁石28の磁束も流れるため、突極磁極Pn,Psに流れる磁束が増加し、その結果、モータ10の高トルク化に寄与できる。なお、この場合においても、ロータ21からステータ11側に与える磁力が、磁石磁極Mn,Msよりも突極磁極Pn,Psで弱くなるように構成することが好ましい。
【0065】
また、同例では、永久磁石23に対する補助磁石28の磁気特性(残留磁束密度や保磁力)を異ならせることで、モータ10の出力特性を容易に調整することが可能となる。なお、補助磁石28は、ロータコア22内部に埋設されることから外部磁界の影響を受けにくいため、保磁力を小さく設定(又は残留磁束密度を高く設定)することが可能である。
【0066】
また、補助磁石28を設けた構成において、上記の
図4や
図5と同様のスリット孔27を適用した構成としてもよい。なお、
図7には、補助磁石28を設けた構成において、上記の
図5と同様のスリット孔27を適用した構成を示している。
【0067】
・上記実施形態のロータ21では、N極の磁石磁極Mn同士、及び突極磁極Pn同士がそれぞれ周方向において180°対向位置に設けられ、S極側においても同様に、磁石磁極Ms同士、及び突極磁極Ps同士がそれぞれ周方向において180°対向位置に設けられる。つまり、磁石磁極Mnと突極磁極Pnとが周方向に交互に配置され、磁石磁極Msと突極磁極Psも周方向に交互に配置されるが、これに特に限定されるものではない。例えば、N極の磁石磁極Mnの180°対向位置にN極の突極磁極Pnを設けてもよい。また同様に、S極の磁石磁極Msの180°対向位置にS極の突極磁極Psを設けてもよい。
【0068】
・上記実施形態では、ロータ21の例えばN極において、磁石磁極Mnと突極磁極Pnとを同数(各相の巻線13の個数の半数であって2個)で構成したが、必ずしも同数である必要はない。例えば、磁石磁極Mnを3個(又は1個)とし、突極磁極Pnを1個(又は3個)として構成してもよい。また、ロータのS極側(磁石磁極Ms及び突極磁極Ps)においても同様の変更を行ってもよい。
【0069】
・上記実施形態では、ロータ21のN極及びS極において突極磁極Pn及び突極磁極Psをそれぞれ備えたが、これに特に限定されるものではなく、例えば、ロータ21の一方の極のみに突極磁極を設け、他方の極を全て磁石磁極で構成してもよい。
【0070】
・上記実施形態では、各相の巻線、つまり、U相巻線U1〜U4、V相巻線V1〜V4、及びW相巻線W1〜W4がそれぞれ直列接続されたが、これに特に限定されるものではなく、巻線態様は適宜変更してもよい。
【0071】
例えば、
図8に示す例では、U相において、巻線U1,U2が直列接続され、また、巻線U3,U4が直列接続され、それら巻線U1,U2の直列対と巻線U3,U4の直列対とが並列接続されている。V相においても同様に、巻線V1,V2が直列接続され、また、巻線V3,V4が直列接続され、それら巻線V1,V2の直列対と巻線V3,V4の直列対とが並列接続されている。また、W相においても同様に、巻線W1,W2が直列接続され、また、巻線W3,W4が直列接続され、それら巻線W1,W2の直列対と巻線W3,W4の直列対とが並列接続されている。
【0072】
上記実施形態のロータ21の構成(
図1参照)の場合、例えばU相において巻線U1及び巻線U3には互いに同等の大きさの誘起電圧が生じる。また、巻線U2及び巻線U4には互いに同等の大きさの誘起電圧が生じる。このため、巻線U1,U2の直列対で生じる合成誘起電圧と、巻線U3,U4の直列対で生じる合成誘起電圧とが略同等となる。これにより、突極磁極Pn,Psを設けたことによる誘起電圧の減少が、巻線U1,U2の直列対及び巻線U3,U4の直列対の両方において常に生じることとなる。そして、巻線U1,U2の直列対と巻線U3,U4の直列対とが並列であるため、U相巻線全体における合成誘起電圧は、巻線U1,U2の直列対の合成誘起電圧(及び巻線U3,U4の直列対の合成誘起電圧)と略同等となり、該U相巻線全体における合成誘起電圧を効果的に抑制することができる。
【0073】
ここで、
図8に示す例において巻線U2と巻線U3を入れ替えた場合、すなわち、誘起電圧の大きさが同等である巻線U1,U3、及び巻線U2,U4をそれぞれ直列とした場合を考える。この場合、突極磁極Pn,Psを設けたことによる誘起電圧の減少が、巻線U2,U4の直列対と巻線U1,U3の直列対のいずれか一方のみで生じ、他方では誘起電圧が減少しない。そして、巻線U1,U3の直列対と巻線U2,U4の直列対とが並列であることから、U相巻線全体における合成誘起電圧を効果的に抑制する点で不利となる。なお、各U相巻線U1〜U4を並列とした場合においても同様に、U相巻線全体における合成誘起電圧を効果的に抑制する点で不利となる。
【0074】
以上のように、各相において巻線を直列とする場合には、ロータ21の所定の回転位置において磁石磁極Mn(磁石磁極Ms)と突極磁極Pn(突極磁極Ps)とにそれぞれ対向する巻線(例えばU相巻線U1とU相巻線U2)同士を直列接続することで、同相の巻線に生じた弱い誘起電圧と強い誘起電圧とを足し合わせて合成誘起電圧とすることができ、各相における合成誘起電圧を効果的に抑制することができる。
【0075】
なお、同図の例では、U相において、巻線U1,U2、及び巻線U3,U4をそれぞれ直列対としたが、巻線U1,U4、及び巻線U2,U3をそれぞれ直列対としても同様の効果を得ることができる。また、V相及びW相においても同様の変更が可能である。
【0076】
また、同図の例では、U相において、巻線U1,U2の直列対と巻線U3,U4の直列対とが並列接続されたが、これに特に限定されるものではなく、巻線U1,U2の直列対と巻線U3,U4の直列対とを分離し、その分離した直列対のそれぞれにU相の駆動電流を供給すべくインバータを一対設けてもよい。この構成によっても、同様の効果を得ることができる。また、V相及びW相においても同様の変更が可能である。
【0077】
また、上記実施形態(
図2参照)及び
図8に示す例では、巻線の結線態様をスター結線としたが、これに限らず、例えばデルタ結線としてもよい。
・上記実施形態のロータ21は、磁石磁極Mn,Msを構成する永久磁石23がロータコア22の外周面(磁石固定部25)に固着された表面磁石型構造(SPM構造)をなしているが、例えば
図9に示すように、ロータコア22の外周面22bよりも内側部分に永久磁石23aを埋め込む態様とした埋込磁石型構造(IPM構造)としてもよい。
【0078】
同図に示す例では、ロータコア22の外周面22bは軸方向視で円形をなし、磁石磁極Mn,Msを構成する各永久磁石23aの径方向外側面及び径方向内側面は、軸方向視において、ロータコア22の中心軸(回転軸24の軸線L)を中心とする円弧状をなしている。
【0079】
また、同図に示すロータ21は、上記実施形態と同様に、外周面22bにおいてN極・S極が周方向等間隔(45°間隔)に交互に設定された8極ロータとして構成されている。具体的には、N極の磁石磁極Mnと周方向に隣り合う磁極(磁石磁極Msとは反対側の磁極)は、ロータコア22の一部からなるコア磁極Csとして構成され、該コア磁極Csは、磁石磁極Mnの永久磁石23aの磁界によってS極の磁極として機能する。同様に、S極の磁石磁極Msと周方向に隣り合う磁極(磁石磁極Mnとは反対側の磁極)は、ロータコア22の一部からなるコア磁極Cnとして構成され、該コア磁極Cnは、磁石磁極Msの永久磁石23aの磁界によってN極の磁極として機能する。
【0080】
つまり、ロータ21の外周面の磁極は、時計回り方向において順に、N極の磁石磁極Mn、S極のコア磁極Cs、N極のコア磁極Cn、S極の磁石磁極Ms、N極の磁石磁極Mn、・・・を繰り返す構成となっている。また、ロータ21のN極を構成する磁石磁極Mnとコア磁極Cnとは、それらの周方向の中心位置が等角度間隔(90°間隔)となるように交互に配置され、同様に、ロータ21のS極を構成する磁石磁極Msとコア磁極Csとは、それらの周方向の中心位置が等角度間隔(90°間隔)となるように交互に配置されている。
【0081】
ロータコア22には、周方向に隣り合うコア磁極Cn,Cs間の境界部において径方向に沿って延びる一対のスリット孔31と、周方向に隣り合う磁石磁極Mn,Ms間の境界部において径方向に沿って延びる一対のスリット孔32とが形成されている。これらスリット孔31,32は、周方向等間隔(90°間隔)に交互に形成されている。
【0082】
各スリット孔31,32内は空隙であり、ロータコア22を軸方向に貫通している。また、各スリット孔31,32は、軸方向視で長方形をなしている。また、コア磁極Cn,Cs間のスリット孔31は、固定孔22aの近傍位置から径方向に沿ってロータコア22の外周面22bの近傍位置まで延びている。また、磁石磁極Mn,Ms間のスリット孔32は、固定孔22aの近傍位置から径方向に沿って永久磁石23aの近傍位置まで延びている。
【0083】
これらスリット孔31,32内が空隙であることから、磁性金属のロータコア22よりも磁気抵抗が大きいため、各スリット孔31,32によってロータコア22内を通る各永久磁石23aの磁束が隣り合うコア磁極Cn,Csに好適に誘導されるようになっている(
図9の破線の矢印を参照)。
【0084】
上記実施形態のようなSPM構造のロータ21では、ロータコア22の外周面に固着された永久磁石23がステータ11と直接的に対向することから高いトルクが得られるものの、弱め界磁制御時に永久磁石23が減磁しやすくなる。その点、IPM構造のロータ21では、磁石磁極Mn,Msを構成する永久磁石23aがロータコア22に埋設されていることから、弱め界磁制御時における永久磁石23の減磁を抑制することが可能となる。
【0085】
また、ロータコア22には、該ロータコア22内を流れる磁束を誘導するためのスリット孔31,32(磁気調整部)が形成されている。この構成によれば、周方向に隣り合う永久磁石23aによって磁化されるコア磁極Cn,Csの磁束量を所望の値に調整しやすく、その結果、モータの出力特性を容易に調整することが可能となる。なお、
図9に示す例において、コア磁極Cn,Cs間のスリット孔31を省略してもよい。
【0086】
また、
図10に示すロータ21は、
図9に示す構成を更に変更したものであり、コア磁極Cn,Cs間の各スリット孔31内に補助磁石33が設けられている。各補助磁石33は、周方向におけるコア磁極Cn側がN極、コア磁極Cs側がS極となるように磁化されている。なお、補助磁石33は、例えばネオジム磁石、サマリウムコバルト(SmCo)磁石、SmFeN系磁石、フェライト磁石、アルニコ磁石等で構成され、また、焼結磁石及びボンド磁石のいずれの構成でもよい。
【0087】
このような構成によれば、コア磁極Cn,Csには、永久磁石23aの磁束だけでなく補助磁石33の磁束も流れるため、コア磁極Cn,Csに流れる磁束が増加し、その結果、モータの高トルク化に寄与できる。なお、この場合においても、ロータ21からステータ11側に与える磁力が、磁石磁極Mn,Msよりもコア磁極Cn,Csで弱くなるように構成することが好ましい。
【0088】
なお、補助磁石33の配置箇所は、コア磁極Cn,Cs間のスリット孔31に限られるものではなく、
図11に示すように、磁石磁極Mn,Ms間のスリット孔32に補助磁石33を設けてもよい。この場合、各補助磁石33は、周方向における磁石磁極Ms側がN極、磁石磁極Mn側がS極となるように磁化されることが好ましい。同図のような構成によっても、コア磁極Cn,Csに流れる磁束を増加させることが可能となり、その結果、モータの高トルク化に寄与できる。なお、
図11に示す構成では、補助磁石33をスリット孔32における径方向の内側端部に設けたが、スリット孔32内における補助磁石33の配置位置は
図11に示す構成に限定されるものではなく、構成に応じて適宜変更可能である。
【0089】
また、
図12に示すロータ21は、
図9に示す構成を変更したものであり、スリット孔31とスリット孔32とをそれらの内側端部で連通する連通部34が形成されている。なお、同図に示す例では、ロータコア22において、固定孔22aを有する中心部22cを支持する一対の支持部22dがコア磁極Cn,Cs間の境界部に沿ってスリット孔31を分断するように形成されている。連通部34は、スリット孔31,32の径方向内側端部において、隣り合うコア磁極Cn,Csの間、及び隣り合う磁石磁極Mn,Msの間の磁気抵抗となる。このような構成によれば、連通部34によって磁石磁極Mn,Msを構成する永久磁石23aの間で生じうる短絡磁束を少なく抑えることができる。このため、コア磁極Cn,Csに流れる磁束が増加し、その結果、モータの高トルク化に寄与できる。
【0090】
また、
図13に示すロータ21は、
図12に示す構成を更に変更したものであり、ロータコア22において、中心部22cを支持する一対の支持部22eが磁石磁極Mn,Ms間の境界部に沿ってスリット孔32を分断するように形成されている。この構成によれば、支持部22d,22eによってロータコア22の中心部22cを安定して支持することが可能となる。なお、
図13に示す例において、支持部22dを省略した構成としてもよい。
【0091】
また、
図14に示すロータ21は、
図13に示す構成を更に変更したものであり、各連通部34内に補助磁石35が設けられている。N極のコア磁極CnとS極の磁石磁極Msとに跨って形成された連通部34内に設けられた補助磁石35は、径方向外側がN極となるように磁化されている。また、S極のコア磁極CsとN極の磁石磁極Mnとに跨って形成された連通部34内に設けられた補助磁石35は、径方向外側がS極となるように磁化されている。なお、各補助磁石35の一端部(スリット孔31とは反対側の端部)は、コア磁極Cn,Csと磁石磁極Mn,Msとの境界線に対応する位置に設定されている。同図のような構成によっても、コア磁極Cn,Csに流れる磁束を増加させることが可能となり、その結果、モータの高トルク化に寄与できる。なお、
図14に示す構成では、補助磁石35を各連通部34におけるコア磁極Cn,Cs寄りの位置に設けたが、連通部34内における補助磁石35の配置位置は
図14に示す構成に限定されるものではなく、構成に応じて適宜変更可能である。
【0092】
・上記実施形態では、ロータ21を8極とし、ステータ11の巻線13の個数を12個とした(つまり、8極12スロットのモータ構成とした)が、ロータ21の極数と巻線13の個数は構成に応じて適宜変更可能である。例えば、ロータ21の極数と巻線13の個数との関係が2n:3n(ただし、nは2以上の整数)となるように、ロータ21の極数と巻線13の個数を適宜変更してもよい。
【0093】
なお、6極9スロットや10極15スロット等の構成とした場合(ロータ21の極数と巻線13の個数の最大公約数nが奇数の場合)には、ロータ21の極対数が奇数、つまり、N極、S極の各数が奇数となる。このため、例えば、磁石磁極Mnと突極磁極Pnとを同数にできず、磁気的にアンバランスな構成となってしまう。その点、上記実施形態のように、ロータ21の極数と巻線13の個数の最大公約数nが偶数である構成では、磁石磁極Mnと突極磁極Pnとを同数とすることができ、磁気的にバランスの良い構成とすることが可能となる。
【0094】
また、ロータ21の極数と巻線13の個数との関係は必ずしも2n:3n(ただし、nは2以上の整数)である必要はなく、例えば、10極12スロットや14極12スロット等で構成してもよい。
【0095】
図15には、10極12スロットで構成したモータ30の一例を示している。なお、
図15の例では、上記実施形態と同一の構成については同一の符号を付してその詳細な説明は省略し、相異する部分について詳細に説明する。
【0096】
同図に示すモータ30において、ステータ11の12個の巻線13は、供給される3相の駆動電流(U相、V相、W相)に応じて分類され、
図15において反時計回り方向に順に、U1、バーU2、バーV1、V2、W1、バーW2、バーU1、U2、V1、バーV2、バーW1、W2とする。なお、正巻きで構成されるU相巻線U1,U2、V相巻線V1,V2、W相巻線W1,W2に対し、U相巻線バーU1,バーU2、V相巻線バーV1,バーV2、W相巻線バーW1,バーW2は逆巻きで構成される。また、U相巻線U1,バーU1は互いに180°対向位置にされ、同様に、U相巻線U2,バーU2は互いに180°対向位置にされる。これは他相(V相及びW相)においても同様である。
【0097】
U相巻線U1,U2,バーU1,バーU2は直列に繋がって構成され、同様に、V相巻線V1,V2,バーV1,バーV2は直列に繋がって構成され、W相巻線W1,W2,バーW1,バーW2は直列に繋がって構成されている。そして、U相巻線U1,U2,バーU1,バーU2にはU相の駆動電流が供給される。これにより、正巻きのU相巻線U1,U2に対して逆巻きのU相巻線バーU1,バーU2は常に逆極性(逆位相)で励磁されることとなるが、励磁タイミングは同一である。このことは他相(V相及びW相)においても同様である。
【0098】
モータ30のロータ21は、N極・S極が周方向等間隔(36°間隔)に交互に設定された10極ロータであって、3つの磁石磁極Mnと、2つの磁石磁極Msと、2つの突極磁極Pnと、3つの突極磁極Psとを備えている。具体的には、ロータ21の磁極が、時計回り方向において順に、S極の磁石磁極Ms、N極の磁石磁極Mn、S極の突極磁極Ps、N極の磁石磁極Mn、S極の磁石磁極Ms、N極の突極磁極Pn、S極の突極磁極Ps、N極の磁石磁極Mn、S極の突極磁極Ps、N極の突極磁極Pnとなるように構成されている。つまり、N極の磁石磁極Mnの周方向反対側(180°対向位置)にS極の突極磁極Psが位置し、S極の磁石磁極Msの周方向反対側(180°対向位置)にN極の突極磁極Pnが位置するように構成されている。また、ロータコア22には、周方向に隣り合う磁石磁極Mn,Ms間の境界部、及び周方向に隣り合う突極磁極Pn,Ps間の境界部にそれぞれ対応する位置に、上記実施形態と同様のスリット孔27が形成されている。
【0099】
なお、磁石磁極Mn,Ms及び突極磁極Pn,Psの各個数は、
図15の10極ロータの例に限られるものではなく、例えば、磁石磁極Mnが2つ、磁石磁極Msが3つ、突極磁極Pnが3つ、突極磁極Psが2つで構成してもよい。また、
図15に示す例のロータ21において、
図4又は
図5に示すようなスリット孔27を追加してもよく、また、
図6や
図7に示すようなスリット孔27aに補助磁石28を嵌め込んだ構成を追加してもよい。
【0100】
上記構成では、ロータ21の回転時において、例えばS極の磁石磁極MsがU相巻線U1と径方向に対向するとき、その周方向反対側においてN極の突極磁極PnがU相巻線バーU1と径方向に対向するようになっている(
図15参照)。つまり、互いに逆位相(同一タイミング)で励磁される巻線13(例えばU相巻線U1,バーU1)とそれぞれ対向する異極の磁極において、その一方が磁石磁極Ms(磁石磁極Mn)で構成され、他方が突極磁極Pn(突極磁極Ps)で構成されている。これにより、トルクの低下を極力抑えつつ、ロータ21の磁極によって逆位相の巻線13に生じる合成誘起電圧(例えばU相巻線U1,バーU1の合成誘起電圧)を小さく抑えることができ、その結果、モータ30の高回転化を図ることができる。
【0101】
なお、ロータ21の各磁極の配置は、
図15に示す例に限定されるものではなく、磁石磁極Mnの周方向反対側に突極磁極Psが位置し、磁石磁極Msの周方向反対側に突極磁極Pnが位置する構成であれば、ロータ21の各磁極の配置は適宜変更可能である。
【0102】
また、ステータ11側において、各U相巻線U1,U2,バーU1,バーU2が全て直列に接続される必要はなく、巻線U1,バーU1、及び巻線U2,バーU2をそれぞれ別の直列対とした構成としてもよい。また、V相及びW相においても同様に変更可能である。
【0103】
また、
図15には、10極12スロットで構成した例を示したが、14極12スロットの構成にも適用可能である。また、10極12スロット(又は14極12スロット)のロータ極数及びスロット数をそれぞれ等倍した構成にも適用可能である。また、
図15では、突部26を磁極に応じて複数に分割したタイプを例にとって示しているが、
図3に示す例のような突部26が分割されていないタイプにも適用可能である。
【0104】
・上記実施形態において、磁石磁極Mn,Msの磁束を突極磁極Pn,Ps(突部26)の周方向中心CL側(突部26の周方向中心側)に導くための磁束誘導部(磁気調整部)をロータコア22に設けてもよい。
【0105】
例えば、
図16に示す構成では、各突極磁極Pn,Psの径方向外側面に前記磁束誘導部としての磁束誘導凹部26aが凹設されている。より詳しくは、各突極磁極Pn(突部26)の径方向外側面において、磁束誘導凹部26aは、隣り合う磁石磁極Ms側の端部に形成されている。また同様に、各突極磁極Ps(突部26)の径方向外側面において、磁束誘導凹部26aは、隣り合う磁石磁極Mn側の端部に形成されている。なお、同図の例では、各磁束誘導凹部26aは、突部26の周方向幅のおよそ1/4程度に設定されている。また、各突部26の周方向中心CL及び各永久磁石23の周方向中心は、周方向等間隔(45°間隔)に設定されている。
【0106】
このような構成によれば、例えば、磁石磁極Ms(永久磁石23)からロータコア22を通じて隣りの突極磁極Pnに向かう磁束φaは、磁束誘導凹部26aによって突極磁極Pn(突部26)の周方向中心CL側に誘導される。これにより、ロータ21の各磁極(即ち、各磁石磁極Mn,Ms及び各突極磁極Pn,Ps)における周方向の磁極中心(磁束密度のピーク位置)を、周方向等間隔(同図の例では45°間隔)に構成することができ、その結果、高トルク化に寄与できる。
【0107】
なお、同図に示す例では、突極磁極Pn,Psの径方向外側面に、前記磁束誘導部(磁束誘導凹部26a)を設けたが、該磁束誘導部を設ける箇所はこれに限らず、例えば、突極磁極Pn,Psにおいてロータコア22に形成した孔(空隙部)を磁束誘導部として機能させてもよい。
【0108】
また、同図では、表面磁石型構造(SPM構造)に適用しているが、埋込磁石型構造(IPM構造)に適用してもよい。
IPM構造に適用したロータ21の一例を
図17に示す。同図に示すロータ21では、各磁極の配置構成(各磁石磁極Mn,Ms及びコア磁極Cn,Csの周方向位置)は、上記のIPM構造(例えば
図9の構成を参照)と略同様である。つまり、ロータ21の磁極は、時計回り方向において順に、N極の磁石磁極Mn、S極のコア磁極Cs、N極のコア磁極Cn、S極の磁石磁極Ms、N極の磁石磁極Mn、・・・を繰り返す構成となっている。
【0109】
図17に示す構成では、各磁石磁極Mn,Msは、ロータコア22に埋設された一対の永久磁石41を備えている。各磁石磁極Mn,Msにおいて、一対の永久磁石41は、軸方向視で外周側に拡がる略V字状に配置されるとともに、周方向における磁極中心線(
図17中の直線L1を参照)に対して線対称に設けられている。なお、各永久磁石41は直方体をなす。また、各磁石磁極Mn,Msにおける一対の永久磁石41は、ロータ21を周方向において極数(磁石磁極Mn,Ms及びコア磁極Cn,Csの総数)で等分したときの角度範囲(本例では45°の範囲)に収まるように配置されている。
【0110】
また、同図では、N極の磁石磁極Mn及びS極の磁石磁極Msの各永久磁石41の磁化方向を実線の矢印で示しており、矢印先端側がN極、矢印基端側がS極を表している。この矢印にて示されるように、N極の磁石磁極Mnにおける各永久磁石41は、該磁石磁極Mnの外周側をN極にするべく、互いに向かい合う面(前記磁極中心線側の面)にN極が現れるように磁化されている。また、S極の磁石磁極Msにおける各永久磁石41は、該磁石磁極Msの外周側をS極にするべく、互いに向かい合う面(前記磁極中心線側の面)にS極が現れるように磁化されている。
【0111】
ロータコア22には、周方向に隣り合うコア磁極Cn,Cs間の境界部において径方向に沿って延びる一対のスリット孔31が形成されている。各スリット孔31は、固定孔22aの近傍位置から径方向に沿ってロータコア22の外周面22bの近傍位置まで延びている。
【0112】
また、ロータコア22には、各磁石磁極Mn,Msにおける一対の永久磁石41よりも内周側位置に磁気抵抗孔42(磁気調整部)が形成されている。各磁気抵抗孔42は、軸方向視において径方向に沿って長い長方形の孔であり、各磁石磁極Mn,Msの周方向中心位置に設けられている。つまり、本例では、周方向に隣り合う磁石磁極Mn,Msの各磁気抵抗孔42の中心間が45°に設定されている。
【0113】
各スリット孔31及び各磁気抵抗孔42は、ロータコア22を軸方向に貫通しており、各スリット孔31内及び各磁気抵抗孔42内は空隙である。これにより、各磁気抵抗孔42は、周方向に隣り合う磁石磁極Mn,Ms間での磁束の短絡を抑制し、各スリット孔31は、磁石磁極Mn,Msの磁束がコア磁極Cn,Csを通じて短絡することを抑制する。つまり、各スリット孔31及び各磁気抵抗孔42によって、ロータコア22内を通る各磁石磁極Mn,Msの磁束が隣り合うコア磁極Cn,Csに好適に誘導されるようになっている。
【0114】
また、各永久磁石41の内周側及び外周側にはそれぞれ空隙K3,K4が設けられている。各空隙K3,K4は、ロータコア22に形成された、各永久磁石41をそれぞれ収容する各磁石収容孔44の一部であり、各永久磁石41の内周側側面が各空隙K3に面し、各永久磁石41の内周側側面が各空隙K4に面するように構成されている。つまり、永久磁石41と磁石収容孔44の径方向内側端部との間に空隙K3が設けられ、永久磁石41と磁石収容孔44の径方向外側端部との間に空隙K4が設けられている。
【0115】
これら各空隙K3,K4の磁気抵抗によって、各永久磁石41のそれぞれにおける磁束の短絡(各永久磁石41の磁束がロータコア22を介して自身のN・S極間で短絡すること)を抑制できるようになっている。つまり、各空隙K3,K4によっても、各磁石磁極Mn,Msの磁束が隣り合うコア磁極Cn,Csに好適に誘導され、高トルク化に寄与できる。
【0116】
ここで、本例のロータコア22には、磁石磁極Mn,Msの磁束をコア磁極Cn,Csの周方向中心CL側に導くための磁束誘導孔43(磁束誘導部)が形成されている。各磁束誘導孔43は、各コア磁極Cn,Csにおいて周方向に隣り合う磁石磁極Mn,Ms寄りの位置に設けられている。より詳しくは、各コア磁極Cn,Csおいて、磁束誘導孔43は、直近の永久磁石41が収容された磁石収容孔44(
図17中、磁石収容孔44a)と連通するとともに、該磁石収容孔44aから周方向に沿ってコア磁極Cn,Cs内まで延びるように形成されている。また、各磁束誘導孔43は、前記直近の永久磁石41の径方向外側端部に対応する位置に形成されている。なお、各磁束誘導孔43の径方向幅は、軸方向視における永久磁石41の長辺長さの1/4以下に設定されている。
【0117】
このような構成によれば、例えば、磁石磁極Msからロータコア22を通じて隣りのコア磁極Cnに向かう磁束φaは、磁束誘導孔43によってコア磁極Cnの周方向中心CL側に誘導される。これにより、ロータ21の各磁極(即ち、各磁石磁極Mn,Ms及び各コア磁極Cn,Cs)における周方向の磁極中心(磁束密度のピーク位置)を、周方向等間隔(同図の例では45°間隔)に構成することができ、その結果、高トルク化に寄与できる。
【0118】
また、本例の磁石磁極Mn,Msの構成(永久磁石41の配置構成)によれば、永久磁石41の外周側のロータコア体積(外周コア部22gの体積)を大きくとることが可能となるため、リラクタンストルクを増やすことが可能となり、より一層の高トルク化に寄与できる。
【0119】
また、本例では、周方向に隣り合うN極の磁石磁極MnとS極の磁石磁極Msとの間の磁束の短絡が磁気抵抗孔42によって抑制されるため、各磁石磁極Mn,Msから隣りのコア磁極Cn,Csに向かう磁束量の低下を抑えることができ、その結果、高トルク化に寄与できる。更に、磁気抵抗孔42は、一対の永久磁石41がV字配置された磁石磁極Mn,Msにおいて、該永久磁石41よりも径方向内側に設けられるため、磁気抵抗孔42によって周方向に隣接する異極の磁石磁極Mn,Ms間の磁束の短絡を好適に抑制することができる。
【0120】
なお、本例では、周方向に隣接するコア磁極Cn,Cs同士がスリット孔31の径方向両端部で繋がる構成となっているが、これに限らず、該コア磁極Cn,Cs同士がスリット孔31の径方向内側端部及び径方向外側端部のいずれか一方で繋がるように構成してもよい。また、
図17に示す例において、各磁気抵抗孔42をロータコア22の内周面(固定孔22a)まで径方向内側に延ばしてもよい。
【0121】
また、
図17に示す構成を以下に示すように変更してもよい。
図18に示すロータ21は、
図17に示す構成の各スリット孔31に補助磁石51を、各磁束誘導孔43に補助磁石52を配置した構成である。各補助磁石51は、各スリット孔31内の径方向内側寄りの位置に設けられている。なお、補助磁石51の径方向長さは、スリット孔31の径方向長さの半分以下に設定されている。
【0122】
同図においても、各永久磁石41及び各補助磁石51,52の磁化方向を実線の矢印で示しており、矢印先端側がN極、矢印基端側がS極を表している。この矢印にて示されるように、各補助磁石51は、周方向におけるコア磁極Cn側がN極、コア磁極Cs側がS極となるように磁化されている。また、N極の磁石磁極Mnの磁束誘導孔43に設けられた補助磁石52は、径方向外側がN極となるように磁化され、S極の磁石磁極Msの磁束誘導孔43に設けられた補助磁石52は、径方向外側がS極となるように磁化されている。なお、補助磁石51,52は、例えばネオジム磁石、サマリウムコバルト(SmCo)磁石、SmFeN系磁石、フェライト磁石、アルニコ磁石等で構成され、また、焼結磁石及びボンド磁石のいずれの構成でもよい。
【0123】
このような構成によれば、コア磁極Cn,Csには、隣り合う磁石磁極Mn,Msの磁束だけでなく補助磁石51,52の磁束も流れるため、コア磁極Cn,Csに流れる磁束が増加し、その結果、モータの高トルク化に寄与できる。なお、この場合においても、ロータ21からステータ11側に与える磁力が、磁石磁極Mn,Msよりもコア磁極Cn,Csで弱くなるように構成することが好ましい。
【0124】
なお、同図に示す例では、スリット孔31に補助磁石51を、磁束誘導孔43に補助磁石52をそれぞれ配置したが、補助磁石51,52のいずれか一方を省略した構成としてもよい。
【0125】
・上記実施形態では、永久磁石23を焼結磁石としたが、これ以外に例えば、ボンド磁石としてもよい。
・上記実施形態では、ロータ21をステータ11の内周側に配置したインナロータ型のモータ10に具体化したが、これに特に限定されるものではなく、ロータをステータの外周側に配置したアウタロータ型のモータに具体化してもよい。
【0126】
・上記実施形態では、ステータ11とロータ21とが径方向に対向するラジアルギャップ型のモータ10に具体化したが、これに特に限定されるものではなく、ステータとロータとが軸方向に対向するアキシャルギャップ型のモータに適用してもよい。
【0127】
・上記した実施形態並びに各変形例は適宜組み合わせてもよい。