(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0035】
以下に、本発明の実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。なお、この実施形態によりこの発明が限定されるものではない。また、この実施形態の構成要素には、当業者が置換可能かつ容易なもの、あるいは実質的に同一のものが含まれる。また、この実施形態に記載された複数の変形例は、当業者自明の範囲内にて任意に組み合わせが可能である。
【0036】
図1は、本実施形態に係る空気入りタイヤの平面図である。
【0037】
以下の説明において、タイヤ周方向とは、回転軸(図示せず)を中心軸とする周方向である。また、タイヤ幅方向とは、前記回転軸と平行な方向をいい、タイヤ幅方向内側とはタイヤ幅方向においてタイヤ赤道面(タイヤ赤道線)CLに向かう側、タイヤ幅方向外側とは、タイヤ幅方向においてタイヤ赤道面CLから離れる側をいう。また、タイヤ赤道面CLとは、空気入りタイヤ1の回転軸に直交すると共に、空気入りタイヤ1のタイヤ幅の中心を通る平面である。タイヤ赤道線とは、タイヤ赤道面CL上にあって空気入りタイヤ1の周方向に沿う線をいう。本実施形態では、タイヤ赤道線にタイヤ赤道面と同じ符号「CL」を付す。
【0038】
本実施形態の空気入りタイヤ1は、
図1に示すように、トレッド部2を有している。トレッド部2は、ゴム材からなり、空気入りタイヤ1のタイヤ径方向の最も外側で露出し、その表面がトレッド面2aとして空気入りタイヤ1の輪郭となる。また、本実施形態の空気入りタイヤ1は、例えば、サイドウォール部に設けられた指標により車両装着時での車両内外の向きが示されていることで車両内外の向きが指定されている。なお、車両内側および車両外側の指定は、車両に装着した場合に限らない。例えば、リム組みした場合に、タイヤ幅方向において、車両の内側および外側に対するリムの向きが決まっている。このため、空気入りタイヤ1は、リム組みした場合、タイヤ幅方向において、車両内側および車両外側に対する向きが指定される。
【0039】
トレッド部2は、トレッド面2aに、タイヤ周方向に沿って延在する周方向溝3が、タイヤ幅方向に複数(本実施形態では4本)並んで設けられている。そして、本実施形態では、タイヤ赤道面CLを挟んで、2本ずつ周方向溝3が設けられている。このうち、タイヤ赤道面CLを間においた車両外側の2本の周方向溝3のうちの車両外側の1本を第一周方向溝3Aとし、車両内側の1本を第二周方向溝3Bとする。また、タイヤ赤道面CLを間においた車両内側の2本の周方向溝3のうちの車両外側の1本を第三周方向溝3Cとし、車両内側の1本を第四周方向溝3Dとする。第三周方向溝3Cは他の周方向溝3(3A,3B,3D)に対して溝幅(タイヤ幅方向における溝開口幅)を細く形成されている。また、第一周方向溝3Aと第二周方向溝3Bとの間には、周方向細溝3Sが設けられている。このように、トレッド部2は、タイヤ赤道面CLを基準として非対称になっている。周方向溝3は、例えば、5mm以上15mm以下の溝幅で、5mm以上15mm以下の溝深さ(トレッド面2aの開口位置から溝底までの寸法)のものをいう。なお、本明細書では、第一周方向溝3A、第二周方向溝3B、第三周方向溝3Cおよび第四周方向溝3Dを主溝と呼ぶことがある。
【0040】
トレッド部2は、トレッド面2aに、周方向溝3により、陸部4がタイヤ幅方向に複数(本実施形態では5本)区画形成されている。そして、第一周方向溝3Aと第二周方向溝3Bとの間にある陸部4を第一陸部4Aとする。また、第三周方向溝3Cと第四周方向溝3Dとの間にある陸部4を第二陸部4Bという。第一陸部4Aの車両外側(タイヤ幅方向外側)の陸部4を第三陸部4Cという。また、第二周方向溝3Bと第三周方向溝3Cとの間であって、タイヤ赤道面CL上にある陸部4を第四陸部4Dという。また、第四周方向溝3Dの車両内側(タイヤ幅方向内側)の陸部4を第五陸部4Eという。
【0041】
各陸部4において、そのトレッド面2aにタイヤ周方向に対して交差してタイヤ周方向に複数並んで設けられる補助溝5および細溝6が形成されている。細溝6は、例えば、0.4mm以上1.2mm以下の溝幅で、周方向溝3以下の溝深さのものをいう。補助溝5は、例えば、0.5mm以上であって周方向溝3以下の溝幅で、周方向溝3以下の溝深さのものをいう。
【0042】
補助溝5は、第一補助溝5A、第二補助溝5B、第三補助溝5Cを有する。
【0043】
第一補助溝5Aは、第一周方向溝3Aに連通し、第二周方向溝3Bおよび周方向細溝3Sを貫通し、第四陸部4Dで終端するように形成されている。第二補助溝5Bは、第三周方向溝3Cおよび第四周方向溝3Dを貫通し、車両内側のショルダーの第五陸部4Eから第二陸部4Bを経てセンターの第四陸部4Dに至り終端して設けられている。つまり、第二補助溝5Bは、車両内側のショルダーの第五陸部4Eであって接地端Tの車両内側であるデザインエンドDに一端が配置され、センターの第四陸部4Dで他端が終端している。
【0044】
また、第一補助溝5Aおよび第二補助溝5Bは、センターの第四陸部4Dから離れる方向に漸次溝幅が広くなるように形成されている。これにより、排水性が向上するため、湿潤路面での制動性能の向上効果を助勢することができる。
【0045】
ここで、接地端Tとは、接地領域のタイヤ幅方向の両最外端をいい、
図1では、接地端Tをタイヤ周方向に連続して示している。接地領域は、空気入りタイヤ1を正規リムにリム組みし、かつ正規内圧を充填するとともに正規荷重の70%をかけたとき、この空気入りタイヤ1のトレッド部2のトレッド面2aが路面と接地する領域である。正規リムとは、JATMAで規定する「標準リム」、TRAで規定する「Design Rim」、あるいは、ETRTOで規定する「Measuring Rim」である。また、正規内圧とは、JATMAで規定する「最高空気圧」、TRAで規定する「TIRE LOAD LIMITS AT VARIOUS COLD INFLATION PRESSURES」に記載の最大値、あるいはETRTOで規定する「INFLATION PRESSURES」である。また、正規荷重とは、JATMAで規定する「最大負荷能力」、TRAで規定する「TIRE LOAD LIMITS AT VARIOUS COLD INFLATION PRESSURES」に記載の最大値、あるいはETRTOで規定する「LOAD CAPACITY」である。また、デザインエンドDとは、トレッド部2のタイヤ幅方向最外側端であって、補助溝5や細溝6が形成されるタイヤ幅方向最外側端をいい、
図1では、デザインエンドDをタイヤ周方向に連続して示している。
【0046】
図1では、第一補助溝5Aと第二補助溝5Bとがタイヤ幅方向に対して逆の向きに傾斜しつつ逆側に湾曲して設けられている。なお、図には明示しないが、第一補助溝5Aと第二補助溝5Bは、一方がタイヤ幅方向に沿って形成され、他方がタイヤ幅方向に傾斜して設けられていてもよい。
【0047】
第三補助溝5Cは、第三陸部4Cに、最も車両外側の第一周方向溝3Aに対して端部が離れて形成されている。より具体的に、第三補助溝5Cは、第三陸部4Cであって接地端Tの車両外側であるデザインエンドDに一端が配置され、第一周方向溝3Aから離れるように第三陸部4Cに他端が終端している。この第三補助溝5Cは、第二補助溝5Bと比してタイヤ幅方向に対して同じ向きに傾斜しつつ逆側に湾曲して設けられている。
【0048】
なお、第三補助溝5Cは、第一周方向溝3Aから離れて形成されているが、終端する他端と第一周方向溝3Aとの間に飾溝7が介在されている。飾溝7は、第三補助溝5C以下の溝幅および溝深さに形成されたものであり、空気入りタイヤ1の初期使用時において、摩耗により無くなるものである。
【0049】
第三補助溝5Cをさらに備えることにより、第三補助溝5Cのエッジ効果により雪上路面での制動性能の向上効果を助勢することができる。しかも、第三補助溝5Cの端部を第一周方向溝3Aに対して離して形成することで、第三陸部4Cの剛性が向上するため、乾燥路面での制動性能を向上する効果を助勢することができる。
【0050】
トレッド部2は、第一陸部4Aにおいて、第一周方向溝3Aおよび第二周方向溝3Bならびに複数の第一補助溝5Aによってそれぞれ区画された第一ブロック8Aを有する。また、トレッド部2は、第二陸部4Bにおいて、第三周方向溝3Cおよび第四周方向溝3Dならびに複数の第二補助溝5Bによってそれぞれ区画された第二ブロック8Bを有する。
【0051】
また、細溝6は、第一細溝6A、第二細溝6B、第三細溝6C1および6C2、第四細溝6D、第五細溝6E、第六細溝6F1および6F2、第七細溝6G1および6G2、第八細溝6Hを有する。
【0052】
第一細溝6Aは、第一補助溝5Aのタイヤ周方向の間に設けられている。第一細溝6Aは、一端が第一周方向溝3Aに連通し、他端が第二周方向溝3Bに連通して設けられている。第一細溝6Aは、複数の第一補助溝5A同士の中間、すなわち第一ブロック8Aの中央部を通過するように設けられている。
【0053】
第二細溝6Bは、第二ブロック8Bにおいて、第二補助溝5Bと比して、タイヤ幅方向に対して同じ向きに傾斜しつつ同じ側に湾曲して形成されている。この第二細溝6Bは、複数本(本実施形態では2本)を1組として配置され、一端が第三周方向溝3Cに連通し、他端が第四周方向溝3Dに連通して設けられている。
【0054】
第三細溝6C1および6C2は、第三補助溝5Cのタイヤ周方向の間に設けられており、第三陸部4Cに設けられている。第三細溝6C1および6C2は、第三補助溝5Cと比して、タイヤ幅方向に対して同じ向きに傾斜しつつ同じ側に湾曲して形成されている。第三細溝6C1および6C2は、複数本(本実施形態では2本)を1組として配置され、第一周方向溝3Aに対してそれぞれの一端部が連通し、接地端Tよりもタイヤ幅方向外側の位置で第四細溝6Dによってそれぞれの他端部が繋がっている。
【0055】
第三細溝6C1および6C2を設けることでエッジ効果が向上し、雪上路面での制動性能の向上効果を助勢することができる。しかも、タイヤ周方向に並ぶ複数本を1組として配置することで、エッジ効果がさらに向上し、雪上路面での制動性能の向上効果をより助勢することができる。しかも、タイヤ周方向に並ぶ複数本を1組として配置し車両外側の第三陸部4Cにおいてそれぞれの他端部を繋げることで、排水性が向上するため、湿潤路面での制動性能の向上効果を助勢することができる。なお、第三細溝6C1および6C2が湾曲して形成されることで、エッジ効果がさらに向上するため、雪上路面での制動性能の向上効果を助勢することができる。
【0056】
第五細溝6Eは、第四陸部4Dにおいて、第一補助溝5A同士の間に少なくとも1本設けられる。
【0057】
第六細溝6F1および6F2は、第四陸部4Dにおいて、第二補助溝5B同士の間に設けられる。
【0058】
第七細溝6G1および6G2は、第二補助溝5Bのタイヤ周方向の間に設けられており、第五陸部4Eに設けられている。第七細溝6G1および6G2は、第二補助溝5Bと比して、タイヤ幅方向に対して同じ向きに傾斜しつつ同じ側に湾曲して形成されている。第七細溝6G1および6G2は、複数本(本実施形態では2本)を1組として配置され、第四周方向溝3Dに対してそれぞれの一端部が連通し、接地端Tよりもタイヤ幅方向外側の位置で第八細溝6Hによってそれぞれの他端部が繋がっている。
【0059】
なお、第六細溝6F1、第二細溝6Bおよび第七細溝6G1は、第三周方向溝3Cおよび第四周方向溝3Dを貫通して連続して設けてもよいし、それぞれ別々に設けてもよい。また、第六細溝6F2、第二細溝6Bおよび第七細溝6G2は、第三周方向溝3Cおよび第四周方向溝3Dを貫通して連続して設けてもよいし、それぞれ別々に設けてもよい。
【0060】
また、トレッド部2は、第一陸部4Aのトレッド面2aに、タイヤ周方向に沿ってジグザグ状に延在する周方向細溝3Sが形成されている。周方向細溝3Sは、第一折れ曲がり部31と、この第一折れ曲がり部31とは反対側に折れ曲がる第二折れ曲がり部32とが交互に形成されたジグザグ形状になっている。周方向細溝3Sは、第一折れ曲がり部31および第二折れ曲がり部32が、第一ブロック8Aの中央付近に位置している。ここで、第一折れ曲がり部31および第二折れ曲がり部32が位置している、第一ブロック8Aの中央付近とは、タイヤ幅方向において、第一ブロック8Aの中心から25%以内の範囲をいう。すなわち、第一ブロック8Aの中心から第一周方向溝3Aまでのタイヤ幅方向の距離の25%以内、かつ、第一ブロック8Aの中心から第二周方向溝3Bまでのタイヤ幅方向の距離の25%以内の範囲で、第一ブロック8Aの中心から第一補助溝5Aまでのタイヤ周方向の距離の25%以内の範囲に、第一折れ曲がり部31および第二折れ曲がり部32が位置している。
【0061】
周方向細溝3Sは、第一折れ曲がり部31と第二折れ曲がり部32との間の部分が第一細溝6Aと交わっている。そして、周方向細溝3Sは、1つの第一ブロック8Aにおいて、第一細溝6Aと交わる部分を含む第一折れ曲がり部31と第二折れ曲がり部32との間の部分がそれ以外の部分より短い。なお、周方向細溝3Sは、例えば、0.5mm以上であって他の周方向溝3A,3B,3C,3D以下の溝幅で、他の周方向溝3A,3B,3C,3D以下の溝深さのものをいう。
【0062】
図2は、本実施形態に係る空気入りタイヤの一部拡大平面図であって、第三周方向溝3C付近の拡大平面図である。
【0063】
図2に示すように、本実施形態の空気入りタイヤ1では、第三周方向溝3Cにおいて、タイヤ幅方向の両側の開口縁に面取3C1,3C2が設けられている。面取3C1は、第二陸部4B側の第三周方向溝3Cの開口縁に設けられ、第二補助溝5Bの間で面取幅がタイヤ周方向で漸次変化して略三角形状に形成されている。また、面取3C2は、第四陸部4D側の第三周方向溝3Cの開口縁に設けられ、第二補助溝5Bの間で面取幅がタイヤ周方向で漸次変化して略三角形状に形成されている。そして、面取3C1,3C2は、第三周方向溝3Cの両側の開口縁で、面取幅が漸次変化する略三角形状を反転して配置されている。なお、図には明示しないが、面取3C1,3C2は、面取幅がタイヤ周方向で平行に形成されていてもよい。
【0064】
図3は、本実施形態に係る空気入りタイヤの一部拡大平面図であって、第四陸部4D付近の拡大平面図である。
【0065】
図3に示すように、本実施形態の空気入りタイヤ1は、第一補助溝5Aが第四陸部4D内で終端し、かつ、タイヤ周方向に複数設けられている。また、本実施形態の空気入りタイヤ1は、第二補助溝5Bが第四陸部4D内で終端し、かつ、タイヤ周方向に複数設けられている。そして、第四陸部4Dにおいて、第一補助溝5Aと第二補助溝5Bとは交わることなく交互に配置されている。
【0066】
また、第四陸部4Dにおいて、第一補助溝5A同士の間に、少なくとも1本の第五細溝6Eが設けられる。本実施形態では、1本の第五細溝6Eが設けられる。
【0067】
さらに、第四陸部4Dにおいて、第二補助溝5B同士の間に、第五細溝6Eの本数よりも多い本数の第六細溝6F1および6F2が設けられる。本実施形態では、2本の第六細溝6F1および6F2が設けられる。
【0068】
このように、タイヤ赤道面CLを挟んで片側の細溝の本数を少なくすることにより、その方向の剛性を高めることができる。
【0069】
図3を参照すると、本実施形態では、第四陸部4Dに、長さの異なる少なくとも2本の第六細溝6F1、6F2を設けている。本実施形態では、前進方向への走行時のタイヤの回転により、2本の第六細溝6F1、6F2のうち、長さの長い方の第六細溝6F1が、短い方の第六細溝6F2よりも先に接地する。つまり、第六細溝6F1、6F2は、第二補助溝5B同士の間の位置により長さが異なり、前進方向への走行時に、後に接地する方の第六細溝6F2の長さが、先に接地する方の第六細溝6F1の長さよりも短い。これにより、乾燥路面での制動性能を維持しつつ、雪上路面での制動性能を向上させることができる。なお、本実施形態では、溝の長さは、溝の幅の中間点を結んだ、中心線の長さをいう。
【0070】
ここで、第四陸部4Dに形成された第二補助溝5Bの長さをW2とした場合に、長さの長い方の第六細溝6F1の長さaは、
0.4*W2≦a≦0.7*W2
であることが好ましい。第六細溝6F1は、隣り合う第二補助溝5Bの長さより短くすることが好ましく、特に約50%の長さとすることが好ましい。第六細溝6F1をそれ以上長くすると、ブロック剛性が下がり、乾燥路面での制動性能が低下する。
【0071】
また、長さの異なる少なくとも2本の第六細溝6F1、6F2のうち、長さの長い方の第六細溝6F1の長さをa、長さの短い方の第六細溝6F2の長さをbとした場合に、
0.7a≦b≦0.9a
であることが好ましい。特に、隣り合う2本の第六細溝6F1、6F2同士については、短い方の第六細溝6F2の長さが長い方の第六細溝6F1の約80%とすることが好ましい。
【0072】
なお、第五細溝6Eならびに第六細溝6F1および6F2の形状は、直線形状でもよいし、曲線形状でもよい。特に、第五細溝6Eならびに第六細溝6F1および6F2の形状は円弧で形成されていることが好ましい。円弧とすることで、ブロックの支えを生み、雪上路面での制動性能を向上させることができる。
【0073】
第五細溝6Eならびに第六細溝6F1および6F2の形状が曲線形状である場合の曲線形状の向きについて
図4Aおよび
図4Bを参照して説明する。
【0074】
図4Aおよび
図4Bは、第五細溝6Eの形状の向きと、第六細溝6F1、6F2の形状の向きとの関係を説明する図である。
【0075】
図4Aに示すように、第五細溝6Eの曲線形状と第六細溝6F1、6F2の曲線形状とは、互いに向かい合うように逆向きに形成されている。つまり、第五細溝6Eと第六細溝6F1とについては、一方の曲線形状の凸方向がタイヤ回転方向に向き、他方の曲線形状の凹方向がタイヤ回転方向に向くように配置される。同様に、第五細溝6Eと第六細溝6F2とについても、一方の曲線形状の凸方向がタイヤ回転方向に向き、他方が曲線形状の凹方向がタイヤ回転方向に向くように配置される。このとき、第五細溝6Eと第六細溝6F1とは、タイヤ幅方向の両端部におけるタイヤ周方向の距離L1、L2が、タイヤ幅方向の中央におけるタイヤ周方向の距離L3よりも短い関係の配置になっている。
【0076】
ここで、
図4Bでは、第五細溝6Eと第六細溝6F1とについて、共に、曲線形状の凹方向がタイヤ回転方向に向くように配置されている。このとき、第五細溝6Eと第六細溝6F1とは、タイヤ幅方向の一方の端部におけるタイヤ周方向の距離L2はタイヤ幅方向の中央におけるタイヤ周方向の距離L3よりも短いが、タイヤ幅方向の他方の端部におけるタイヤ周方向の距離L1はタイヤ幅方向の中央におけるタイヤ周方向の距離L3よりも長い関係の配置になっている。この
図4Bのように第五細溝6Eと第六細溝6F1との曲線形状の凹方向が同一方向を向いて形成されるのは好ましくなく、
図4Aのように一方の曲線形状の凸方向がタイヤ回転方向に向き、他方の曲線形状の凹方向がタイヤ回転方向に向くように、逆向きに配置されるのが好ましい。第五細溝6Eと第六細溝6F2との関係についても同様である。
【0077】
このように、第五細溝6Eと、第六細溝6F1、6F2とについて、
図4Aのように、一方が曲線形状の凸方向がタイヤ回転方向に向き、他方が曲線形状の凹方向がタイヤ回転方向に向くように、逆向きに配置されていることにより、細溝同士が互いに支えあい、雪上路面での制動性能を低下させず乾燥路面での制動性能を向上させることができる。
【0078】
図3に戻り、第四陸部4Dに形成された第一補助溝5Aの長さをW1とし、第四陸部4Dに形成された第二補助溝5Bの長さをW2とした場合に、
W1≦W2
であることが好ましい。こうすることにより、タイヤ赤道面CLに対して車両内側と車両外側とで剛性を変えることができ、乾燥路面での制動性能、特に旋回時の性能を向上させることができる。
【0079】
また、第一補助溝5Aは車両外側に配置され、第二補助溝5Bは車両内側に配置されることが好ましい。こうすることにより、車両外側の剛性を高くすることができ、乾燥路面での制動性能、特に旋回時の性能を向上させることができる。
【0080】
以下、本実施形態に係る空気入りタイヤ1の変形例について
図5、
図6および
図7を参照して説明する。
【0081】
図5は、
図1の構成を模式的に示す図である。
図5を参照すると、第一周方向溝3Aと第二周方向溝3Bとの間に周方向細溝3Sが設けられている。第一補助溝5Aは、第一周方向溝3Aと第二周方向溝3Bとを連通するように設けられている。第一細溝6Aは、第一補助溝5A同士の間に設けられている。第一細溝6Aは、周方向細溝3Sを貫通している。
【0082】
また、第二補助溝5Bは、第三周方向溝3Cと第四周方向溝3Dとを連通するように設けられている。第二細溝6Bは、第二補助溝5B同士の間に設けられている。このような構成によれば、雪上路面での直進時およびコーナリング時の制動性能を安定させることができる。
【0083】
一方、
図6は、1本の周方向溝を有する変形例を模式的に示す図である。
図6を参照すると、本例の空気入りタイヤは、
図5の場合と異なり、第二周方向溝3Bおよび第三周方向溝3Cの代わりに、周方向細溝3BCを有している。
【0084】
図6の構成では、周方向細溝3S以外の周方向溝は、周方向細溝3BC1本だけである。この
図6の構成においても、第一細溝6Aは、第一補助溝5A同士の間に設けられ、周方向細溝3Sを貫通している。また、第二細溝6Bは、第二補助溝5B同士の間に設けられている。このような構成によれば、雪上路面での直進時およびコーナリング時の制動性能を安定させることができる。
【0085】
また、
図7は、3本の周方向溝を有する変形例を模式的に示す図である。
図7を参照すると、本例の空気入りタイヤは、
図5の場合と異なり、第二周方向溝3Bおよび第三周方向溝3Cの代わりに、周方向細溝3BCを有している。
【0086】
図7の構成では、周方向細溝3S以外の周方向溝は、第一周方向溝3A、周方向細溝3BCおよび第四周方向溝3Dの3本である。この
図7の構成においても、第一細溝6Aは、第一補助溝5A同士の間に設けられ、周方向細溝3Sを貫通している。また、第二細溝6Bは、第二補助溝5B同士の間に設けられている。このような構成によれば、雪上路面での直進時およびコーナリング時の制動性能を安定させることができる。
【0087】
以上説明したように、本実施形態の空気入りタイヤ1は、タイヤ赤道面CLを基準として非対称のトレッド部2を有し、トレッド部2は、タイヤ赤道面CLを基準としてタイヤ幅方向外側に形成された第一陸部4Aと、タイヤ赤道面CLを基準としてタイヤ幅方向内側に形成された第二陸部4Bとを含み、第一陸部4Aは、周方向に延びる周方向細溝3Sと、周方向に周期的に設けられて周方向細溝3Sを貫通する複数の第一補助溝5Aと、複数の第一補助溝5Aによってそれぞれ区画された第一ブロック8Aに設けられて周方向細溝3Sを貫通する第一細溝6Aとが形成され、第二陸部4Bは、周方向に周期的に設けられた複数の第二補助溝5Bと、複数の第二補助溝5Bによってそれぞれ区画された第二ブロック8Bに設けられた第二細溝6Bとが形成され、第二細溝6Bは、1つの区画あたりの本数が前記第一細溝6Aの本数よりも多い。
【0088】
この空気入りタイヤ1によれば、外側に位置する陸部に、周方向の細溝を設けることにより、雪上路面での直進時およびコーナリング時の制動性能を安定させることができ、湿潤路面での制動性能の向上効果を助勢することができる。
【0089】
また、本実施形態の空気入りタイヤ1では、周方向細溝3Sは、第一折れ曲がり部31と第一折れ曲がり部31とは反対側に折れ曲がる第二折れ曲がり部32とが交互に形成されたジグザグ形状であり、第一折れ曲がり部31および第二折れ曲がり部32が第一ブロック8Aの中央付近に位置している。
【0090】
この空気入りタイヤ1によれば、ストレートよりエッジの増えるジグザグ形状の周方向細溝3Sにより、エッジ効果を向上することができ、雪上路面での制動性能の向上効果を助勢することができる。また、ジグザグの折れ曲がり部が陸部の中央付近に位置することにより、折れ曲がり部が陸部端に位置する場合に比べてブロックの剛性を維持することができる。
【0091】
また、本実施形態の空気入りタイヤ1では、周方向細溝3Sは、1つの第一ブロック8Aにおいて、第一折れ曲がり部31と第二折れ曲がり部32との間の部分が第一細溝6Aと交わり、かつ、第一細溝6Aと交わる部分を含む第一折れ曲がり部31と第二折れ曲がり部32との間の部分がそれ以外の部分より短い。
【0092】
この空気入りタイヤ1によれば、ジグザグ部がブロックの中央に位置し、それを細溝が貫通することで、ブロックを4つにほぼ均等に分割することができ、前後横方向どちらからの剛性も保てるため、乾燥路面での制動性能を維持することができる。
【0093】
また、本実施形態の空気入りタイヤ1では、トレッド部2は、第一陸部4Aのタイヤ幅方向外側に設けられた第一周方向溝3Aと、第一周方向溝3Aのタイヤ幅方向外側に設けられた第三陸部4Cとをさらに含み、第三陸部4Cは、第一周方向溝3Aに非貫通の第三補助溝5Cが形成されている。
【0094】
この空気入りタイヤ1によれば、外側陸部に周方向溝に非貫通の補助溝を有することで雪上路面での制動性能の向上効果を助勢することができるとともに、リブ形状にすることでブロック剛性を上げて乾燥路面での制動性能を向上させることができる。
【0095】
また、本実施形態の空気入りタイヤ1では、第三補助溝5Cは、タイヤ周方向に複数形成されており、第三陸部4Cは、第三補助溝5C同士の間に少なくとも2本設けられ、一端が第一周方向溝3Aに連通する第三細溝6C1、6C2と、第三補助溝5C同士の間に設けられた少なくとも2本の第三細溝6C1、6C2の他端のそれぞれに接続され、周方向に延びる第四細溝6Dと、が形成されている。
【0096】
この空気入りタイヤ1によれば、少なくとも2本の細溝を配置することにより、陸部内にてエッジ効果を引き出すことができ、雪上路面での制動性能はもとより、排水性も高めることができる。
【0097】
また、本実施形態の空気入りタイヤ1では、トレッド部2は、第一陸部4Aのタイヤ幅方向外側の端部に形成され、第一陸部4Aを区画する第一周方向溝3Aと、第一陸部4Aのタイヤ幅方向内側の端部に形成され、第一陸部4Aを区画する第二周方向溝3Bと、第二陸部4Bのタイヤ幅方向内側の端部に形成され、第二陸部4Bを区画する第三周方向溝3Cと、第二陸部4Bのタイヤ幅方向外側の端部に形成され、第二陸部4Bを区画する第四周方向溝3Dとを含み、第一陸部4Aは、第一周方向溝3Aと、該第一周方向溝3Aよりタイヤ赤道面CLよりに設けられた第二周方向溝3Bとによって区画され、第二陸部4Bは、該第二陸部4Bのタイヤ赤道面CLよりに設けられた第三周方向溝3Cと該第二陸部4Bのタイヤ幅方向外側に設けられた第四周方向溝3Dとによって区画され、第二周方向溝3Bと第三周方向溝3Cとによって区画され、かつ、タイヤ赤道面CL上に位置する第四陸部4Dをさらに含み、第一補助溝5Aは、第二周方向溝3Bを貫通して第四陸部4Dに延在して該第四陸部4Dで終端し、第二補助溝5Bは、第三周方向溝3Cを貫通して第四陸部4Dに延在して該第四陸部4Dで終端する。
【0098】
この空気入りタイヤ1では、周方向溝を4本とし、タイヤ赤道面CL上に陸部を形成している。この構成により、トレッド面のセンター部分の陸部をブロック形状にせず、リブ化することで、乾燥路面での制動性能を向上させることができる。
【0099】
また、本実施形態の空気入りタイヤ1では、第三周方向溝3Cは、タイヤ幅方向の両側の開口縁に面取3C1,3C2が設けられている。
【0100】
面取りを設けることにより、エッジ効果を高め、雪上路面での制動性能の向上効果を助勢することができる。特に第三周方向溝の部分に面取りを配置させることによって、雪上路面での制動性能を効果的に向上させることができる。
【0101】
また、本実施形態の空気入りタイヤ1では、面取3C1,3C2は、前記第二補助溝5B同士の間で面取幅がタイヤ周方向で漸次変化して形成され、かつ、前記第三周方向溝3Cの両側の開口縁で反転して配置される。
【0102】
この空気入りタイヤ1によれば、面取が第三周方向溝の両側の開口縁で反転して互い違いに形成されていることで、排雪性が向上するため、雪上路面での制動性能の向上効果を助勢することができる。
【0103】
また、本実施形態の空気入りタイヤ1では、第四陸部4Dは、第二周方向溝3Bを貫通する第一補助溝5Aが終端する位置と、第三周方向溝3Cを貫通する第二補助溝5Bが終端する位置とが、タイヤ周方向に交互に配置される。
【0104】
この空気入りタイヤ1によれば、乾燥路面での耐摩耗性能と、湿潤路面および雪上路面での制動性能とを両立することができる。
【0105】
また、本実施形態の空気入りタイヤ1では、第四陸部4Dは、第二周方向溝3Bと第三周方向溝3Cとによって区画され、第一補助溝5Aは第四陸部4D内で終端し、かつ、タイヤ周方向に複数設けられ、第二補助溝5Bは第四陸部4D内で終端し、かつ、タイヤ周方向に複数設けられ、第一補助溝5Aと第二補助溝5Bとは交わることなく交互に配置され、第一補助溝5A同士の間に少なくとも1本設けられた第五細溝6Eと、第二補助溝5B同士の間に設けられ、かつ、第五細溝6Eより多い本数設けられた第六細溝6F1、6F2とをさらに含む。
【0106】
この空気入りタイヤ1によれば、乾燥路面での耐摩耗性能と、湿潤路面および雪上路面での制動性能とを両立することができる。
【0107】
また、本実施形態の空気入りタイヤ1では、第六細溝6F1、6F2は、第二補助溝5B同士の間の位置により長さが異なり、前進方向への走行時に長さの長い方の溝が、短い方の溝よりも先に接地する。
【0108】
この空気入りタイヤ1によれば、乾燥路面での制動性能を維持し、雪上路面での制動性能を向上させることができる。
【0109】
また、本実施形態の空気入りタイヤ1では、前記第四陸部4Dは、形成された第二補助溝5Bの長さをW2とした場合に、長さの長い方の第六細溝6F1の長さaが、
0.4*W2≦a≦0.7*W2
である。
【0110】
この空気入りタイヤ1によれば、ブロック剛性を維持し、乾燥路面での制動性能を維持することができる。
【0111】
また、本実施形態の空気入りタイヤ1では、長さの異なる少なくとも2本の第六細溝6F1、6F2のうち、長さの長い方の第六細溝6F1の長さをa、長さの短い方の第六細溝6F2の長さをbとした場合に、
0.7a≦b≦0.9a
である。
【0112】
この空気入りタイヤ1によれば、ブロック剛性を維持し、乾燥路面での制動性能を維持することができる。
【0113】
また、本実施形態の空気入りタイヤ1では、第六細溝6F1、6F2は、曲線形状である。
【0114】
この空気入りタイヤ1によれば、ブロックの支えを生み、雪上路面での制動性能を向上させることができる。
【0115】
また、本実施形態の空気入りタイヤ1では、第五細溝6Eの形状は、曲線形状であり、第五細溝6Eの曲線形状と第六細溝6F1,6F2の曲線形状とは、一方の曲線形状の凸方向がタイヤ回転方向に向き、他方の曲線形状の凹方向がタイヤ回転方向に向くように配置され、タイヤ幅方向の両端部におけるタイヤ周方向の距離が、タイヤ幅方向の中央におけるタイヤ周方向の距離よりも短い。
【0116】
この空気入りタイヤ1によれば、細溝同士が互いに支えあい、雪上路面での制動性能を低下させず乾燥路面での制動性能を向上させることができる。
【0117】
また、本実施形態の空気入りタイヤ1では、前記第四陸部4Dは、形成された第一補助溝5Aの長さをW1とし、形成された第二補助溝5Bの長さをW2とした場合に、
W1≦W2
である。
【0118】
この空気入りタイヤ1によれば、タイヤ赤道面CLに対して車両内側と車両外側とで剛性を変えることができ、乾燥路面での制動性能、特に旋回時の性能を向上させることができる。
【0119】
また、本実施形態の空気入りタイヤ1では、第一補助溝5Aは車両装着時での車両外側に配置され、第二補助溝5Bは車両装着時での車両内側に配置される。
【0120】
この空気入りタイヤ1によれば、車両外側の剛性を高くすることで、乾燥路面での制動性能、特に旋回時の性能を向上させることができる。
【0121】
また、本実施形態の空気入りタイヤ1では、第一補助溝5Aおよび第二補助溝5Bは、第四陸部4Dに配置される。
【0122】
この空気入りタイヤ1によれば、トレッド面の中央に第一補助溝および第二補助溝を配置し、乾燥路面での耐摩耗性能向上と、湿潤路面および雪上路面での制動性能向上とを両立することができる。
【0123】
また、本実施形態の空気入りタイヤ1では、第四周方向溝3Dの車両装着時での車両内側に設けられた第五陸部4Eをさらに含み、第二補助溝5Bは、第五陸部4Eおよび第四周方向溝3Dを貫通する。
【0124】
この空気入りタイヤ1によれば、車両外側の剛性を高くすることができ、乾燥路面での制動性能、特に旋回時の性能を向上させることができる。
【0125】
また、本実施形態の空気入りタイヤ1では、前記第二補助溝5Bは、タイヤ周方向に複数設けられており、第二補助溝5B同士の間には少なくとも2本の第七細溝6G1、6G2が設けられ、少なくとも2本の第七細溝6G1、6G2は、それぞれの一端が第四周方向溝3Dに連通し、かつ、それぞれの他端が周方向に延びる第八細溝6Hによって互いにつながっている。
【0126】
この空気入りタイヤ1によれば、少なくとも2本の細溝を配置することにより、陸部内にてエッジ効果を引き出すことができ、雪上路面での制動性能はもとより、排水性も高めることができる。
【0127】
また、本実施形態の空気入りタイヤ1では、第一細溝6A、第二細溝6B、第三細溝6C1および6C2、第四細溝6D、第七細溝6G1および6G2、第八細溝6H、第五細溝6E、第六細溝6F1および6F2は、溝幅が0.4mm以上1.2mm以下の範囲で形成される。
【0128】
この空気入りタイヤ1によれば、各細溝が、いわゆるサイプとして構成されるため、エッジ効果が向上し、雪上路面での制動性能の向上効果を助勢することができる。
【実施例】
【0129】
本実施例では、条件が異なる複数種類の試験タイヤについて、湿潤路面での制動性能、雪上路面での制動性能、および乾燥路面での制動性能、に関する性能試験が行われた。
【0130】
この性能試験では、タイヤサイズ205/55R16 91Vの空気入りタイヤを、16×6.5JJの正規リムに組み付け、正規内圧(200kPa)を充填し、試験車両(1600cc・フロントエンジンフロント駆動車)に装着した。
【0131】
湿潤路面での制動性能の評価方法は、上記試験車両にて水深1mmの湿潤路面のテストコースで時速100km/hからの制動距離が測定される。そして、この測定結果に基づいて従来例1を基準(100)とした指数評価が行われる。この評価は、数値が大きいほど好ましい。
【0132】
雪上路面での制動性能の評価方法は、上記試験車両にて雪上圧縮路面のテストコースで時速40km/hからのABS(Anti−lock Braking System)制動での制動距離が測定される。そして、この測定結果に基づいて従来例1を基準(100)とした指数評価が行われる。この評価は、数値が大きいほど好ましい。
【0133】
雪上路面での旋回性能の評価方法は、上記試験車両にて、雪上路面のテストコースを速度40[km/h]で走行し、コーナリング時における旋回安定性について、テストドライバーによる官能評価によって行う。この官能評価は、従来例1の空気入りタイヤを基準(100)とした指数評価が行われる。この評価は、その数値が大きいほど雪上路面での旋回性能が優れていることを示している。
【0134】
乾燥路面での制動性能の評価方法は、上記試験車両にて乾燥路面のテストコースで時速100km/hからの制動距離が測定される。そして、この測定結果に基づいて従来例1を基準(100)とした指数評価が行われる。この評価は、数値が大きいほど好ましい。
【0135】
表1に示す従来例1の空気入りタイヤは、車両装着時での車両外側の補助溝(第一補助溝5A)が第一周方向溝3Aおよび第二周方向溝3Bに連通し、かつ、車両装着時での車両内側の補助溝(第二補助溝5B)が第三周方向溝3Cおよび第四周方向溝3Dに連通している。また、従来例1の空気入りタイヤは、車両装着時での車両内側および車両外側の細溝6Aおよび6Bがそれぞれ1本である。また、従来例1の空気入りタイヤは、周方向に連通する周方向細溝3Sがなく、第三陸部4Cの第三補助溝5Cが第一周方向溝3Aに貫通しており、周方向溝(主溝)の本数が4本である。また、従来例1の空気入りタイヤは、第四陸部4Dにおいて第一補助溝5Aおよび第二補助溝5Bが主溝に貫通し、第五陸部4Eにおいて第二補助溝5Bが主溝に貫通する形状である。また、従来例1の空気入りタイヤは、第三陸部4Cの細溝の本数が1本で第一周方向溝3Aに貫通している形状であり、第五陸部4Eの細溝の本数が1本で第四周方向溝3Dに貫通している形状である。また、従来例1の空気入りタイヤは、各細溝の幅が0.8mmであり、第三周方向溝3Cの面取りがある形状である。また、従来例1の空気入りタイヤは、第四陸部4Dに第五細溝6Eが1本で第六細溝が1本形成された形状である。
【0136】
一方、表1に示す実施例1〜実施例12の空気入りタイヤは、車両装着時での車両外側の補助溝(第一補助溝5A)が第一周方向溝3Aおよび第二周方向溝3Bに連通し、かつ、車両装着時での車両内側の補助溝(第二補助溝5B)が第三周方向溝3Cおよび第四周方向溝3Dに連通している。また、実施例1〜実施例12の空気入りタイヤは、車両装着時での車両外側の細溝(第一細溝6A)が1本で車両装着時での車両内側の細溝(第二細溝6B)が2本である。
【0137】
実施例1および実施例2の空気入りタイヤは、周方向に連通する周方向細溝3Sの形状がストレートで、実施例3〜実施例12の空気入りタイヤは、周方向に連通する周方向細溝3Sの形状がジグザグである。
【0138】
実施例1〜実施例3の空気入りタイヤは、第三陸部4Cの第三補助溝5Cが第一周方向溝3Aに貫通している形状であり、実施例4〜実施例12の空気入りタイヤは、第三陸部4Cの補助溝が第一周方向溝3Aに貫通していない(非貫通)形状である。
【0139】
実施例1の空気入りタイヤは、周方向溝(主溝)の本数が1本、実施例2〜実施例4の空気入りタイヤは、周方向溝(主溝)の本数が3本、実施例5〜実施例12の空気入りタイヤは、周方向溝(主溝)の本数が4本である。
【0140】
実施例1〜実施例4の空気入りタイヤは、第四陸部4Dに形成された第一補助溝5Aおよび第二補助溝5Bが主溝に貫通する形状であり、実施例5〜実施例12の空気入りタイヤは、第四陸部4Dに形成された第一補助溝5Aおよび第二補助溝5Bが主溝に貫通しない形状である。
【0141】
実施例1〜実施例5の空気入りタイヤは、第五陸部4Eにおいて第二補助溝5Bが主溝に貫通しない形状であり、実施例6〜実施例12の空気入りタイヤは、第五陸部4Eにおいて第二補助溝5Bが主溝に貫通する形状である。
【0142】
実施例1〜実施例6の空気入りタイヤは、第四陸部4Dにおいて第一補助溝5Aおよび第二補助溝5Bの一方のみ(片側のみ)が形成されており、実施例7〜実施例12の空気入りタイヤは、第四陸部4Dにおいて第一補助溝5Aおよび第二補助溝5Bの両方が交互に配置されて形成されている。
【0143】
実施例1〜実施例7の空気入りタイヤは、第三陸部4Cの細溝の本数が1本で第一周方向溝3Aに貫通していない形状であり、実施例8〜実施例12の空気入りタイヤは、第三陸部4Cの細溝の本数が2本で第一周方向溝3Aに貫通している形状である。
【0144】
実施例1〜実施例8の空気入りタイヤは、第五陸部4Eの細溝の本数が1本で第四周方向溝3Dに貫通していない形状であり、実施例9〜実施例12の空気入りタイヤは、第五陸部4Eの細溝の本数が2本で第四周方向溝3Dに貫通している形状である。
【0145】
実施例1〜実施例9の空気入りタイヤは、各細溝の幅が1.3mmであり、実施例10〜実施例12の空気入りタイヤは、各細溝の幅が0.6mmである。
【0146】
実施例1〜実施例10の空気入りタイヤは、第三周方向溝3Cの面取りがない形状であり、実施例11および実施例12の空気入りタイヤは、第三周方向溝3Cの面取りがある形状である。
【0147】
実施例1〜実施例11の空気入りタイヤは、第四陸部4Dに第五細溝がなく、第六細溝が1本形成された形状であり、実施例12の空気入りタイヤは、第四陸部4Dに第五細溝が1本で第六細溝が2本形成された形状である。
【0148】
なお、表1に示す比較例1の空気入りタイヤは、第一補助溝5Aおよび第二補助溝5Bが周方向溝(主溝)に連通していないものとし、車両装着時での車両外側の細溝が1本で車両装着時での車両内側の細溝が2本である。比較例1の空気入りタイヤは、周方向に連通する周方向細溝3Sの形状がストレートで、第三陸部4Cの補助溝が第一周方向溝3Aに貫通していない(非貫通)形状である。比較例1の空気入りタイヤは、周方向溝(主溝)の本数が4本であり、第四陸部4Dにおいて第一補助溝5Aおよび第二補助溝5Bが主溝に貫通しない形状で、第五陸部4Eにおいて第二補助溝5Bが主溝に貫通しない形状である。比較例1の空気入りタイヤは、第四陸部4Dにおいて第一補助溝5Aおよび第二補助溝5Bの一方のみ(片側のみ)が形成されている形状である。比較例1の空気入りタイヤは、第三陸部4Cの細溝の本数が2本で第一周方向溝3Aに貫通していない形状である。比較例1の空気入りタイヤは、第五陸部4Eの細溝の本数が2本で第四周方向溝3Dに貫通していない形状である。比較例1の空気入りタイヤは、各細溝の幅が0.6mmであり、第三周方向溝3Cの面取りがない形状である。また、比較例1の空気入りタイヤは、第四陸部4Dに第五細溝6Eおよび第六細溝がない形状である。
【0149】
表1の試験結果に示すように、実施例1〜実施例12の空気入りタイヤは、湿潤路面での制動性能(表1の「ウエット性能(制動性)」)、雪上路面での制動性能(表1の「スノー性能(制動性)」)、雪上路面での旋回性能(表1の「スノー性能(旋回性)」)、乾燥路面での制動性能(表1の「ドライ性能(制動性)」、が向上していることが分かる。
【0150】
また、表2は、表1に示す実施例11を基準として複数種類の試験タイヤについて性能試験を行った結果を示す。湿潤路面、雪上路面および乾燥路面での制動性能の評価方法は、表1の場合と同様である。
【0151】
乾燥路面での旋回性能の評価方法は、上記試験車両にて、平坦かつ乾燥したテストコースを速度60[km/h]から100[km/h]で走行し、コーナリング時における旋回安定性について、テストドライバーによる官能評価によって行う。この官能評価は、実施例11の空気入りタイヤを基準(100)とした指数評価が行われる。この評価は、その数値が大きいほど乾燥路面での旋回性能が優れていることを示している。
【0152】
乾燥路面での耐偏摩耗性能の評価方法は、上記試験車両にて平均速度60[km/h]で5万[km]走行後におけるリブ状陸部に発生した偏摩耗(側方リブ状陸部と他のリブ状陸部とのトレッド面の摩耗量の差)が測定される。そして、この測定結果に基づいて実施例11を基準(100)とした指数評価が行われる。この評価は、その数値が大きいほど耐偏摩耗性能が優れていることを示している。
【0153】
表2に示す実施例11の空気入りタイヤは、周方向溝(主溝)の本数が4本で、第四陸部4Dに形成された第一補助溝5Aおよび第二補助溝5Bが周方向溝に貫通していない(非貫通)形状である。実施例11の空気入りタイヤは、第四陸部4Dにおいて、第一補助溝5Aおよび第二補助溝5Bが交互に配置されている形状である。実施例11の空気入りタイヤは、第一補助溝5A側の細溝がなく、第二補助溝5B側の細溝の本数が1本である。実施例11の空気入りタイヤは、第二補助溝5B側の細溝の長さが同一である。実施例11の空気入りタイヤは、第二補助溝5B側の細溝6F1の長さaが第二補助溝5Bの長さW2と同一であり、第二補助溝5B側の細溝6F2の長さbが細溝6F1の長さaと同一である。実施例11の空気入りタイヤは、細溝6E、6F1、6F2の形状が直線である。実施例11の空気入りタイヤは、細溝6F1、6F2に対する細溝6Eの配置が同一方向である。実施例11の空気入りタイヤは、第一補助溝5Aの長さW1が、第二補助溝5Bの長さW2と同一である。実施例11の空気入りタイヤは、第一補助溝5Aの位置が車両内側で第二補助溝5Bの位置が車両外側である。実施例11の空気入りタイヤは、各細溝の幅が0.6mmである。表2では、実施例11の空気入りタイヤを基準として実施例13〜実施例28の空気入りタイヤを評価している。
【0154】
一方、実施例13〜実施例25の空気入りタイヤは、周方向溝(主溝)の本数が2本で第一補助溝5Aおよび第二補助溝5Bが周方向溝に対して連通していない(非連通)形状であり、実施例26〜実施例28の空気入りタイヤは、周方向溝(主溝)の本数が4本で第一補助溝5Aおよび第二補助溝5Bが周方向溝に連通している形状である。
【0155】
実施例13〜実施例28の空気入りタイヤは、第一補助溝5Aおよび第二補助溝5Bが交互に配置されている形状である。実施例13〜実施例28の空気入りタイヤは、第一補助溝5A側の細溝の本数が1本で第二補助溝5B側の細溝の本数が2本である。
【0156】
実施例13の空気入りタイヤは、第二補助溝5B側の細溝の長さが同一であり、実施例14〜実施例28の空気入りタイヤは、第二補助溝5B側の細溝の長さが異なっている(長さが変化)形状である。
【0157】
実施例13および実施例14の空気入りタイヤは、第二補助溝5B側の細溝6F1の長さaが第二補助溝5Bの長さW2と同一であり、実施例15〜実施例28の空気入りタイヤは、第二補助溝5B側の細溝6F1の長さaが第二補助溝5Bの長さW2の30%(0.3*W2)、50%(0.5*W2)、40%(0.4*W2)、70%(0.7*W2)、80%(0.8*W2)になっている。
【0158】
実施例13〜実施例19の空気入りタイヤは、第二補助溝5B側の細溝6F2の長さbが細溝6F1の長さaと同一であり、実施例20〜実施例28の空気入りタイヤは、第二補助溝5B側の細溝6F2の長さbが細溝6F1の長さaの60%(0.6*a)、70%(0.7*a)、80%(0.8*a)、90%(0.9*a)になっている。
【0159】
実施例13〜実施例23の空気入りタイヤは、細溝6E、6F1、6F2の形状が直線であり、実施例24〜実施例28の空気入りタイヤは、細溝6E、6F1、6F2の形状が曲線である。
【0160】
実施例13〜実施例24の空気入りタイヤは、細溝6F1、6F2に対する細溝6Eの配置が同一方向であり、実施例25〜実施例28の空気入りタイヤは、細溝6F1、6F2に対する細溝6Eの配置が逆向きである。
【0161】
実施例13〜実施例25の空気入りタイヤは、第一補助溝5Aの長さW1が、第二補助溝5Bの長さW2と同一であり、実施例26〜実施例28の空気入りタイヤは、第一補助溝5Aの長さW1と第二補助溝5Bの長さW2との関係がW1≦W2である。
【0162】
実施例13〜実施例26の空気入りタイヤは、第一補助溝5Aの位置が車両内側で第二補助溝5Bの位置が車両外側であり、実施例27および28の空気入りタイヤは、第一補助溝5Aの位置が車両外側で第二補助溝5Bの位置が車両内側である。
【0163】
実施例13〜実施例27の空気入りタイヤは、各細溝の幅が1.3mmであり、実施例28の空気入りタイヤは、各細溝の幅が0.6mmである。
【0164】
表2の試験結果に示すように、実施例13〜実施例28の空気入りタイヤは、湿潤路面での制動性能(表2の「ウエット性能(制動性)」)、雪上路面での制動性能(表2の「スノー性能(制動性)」)、乾燥路面での制動性能(表2の「ドライ性能(制動性)」)、が向上していることが分かる。また、乾燥路面での旋回性能(表2の「ドライ性能(旋回性)」)、および、乾燥路面での耐摩耗性能(表2の「ドライ路面耐摩耗性能」)が向上していることが分かる。したがって、表1に示す実施例12と同様に、第四陸部4Dにおいて第一補助溝5Aおよび第二補助溝5Bが交互に配置され、かつ、第一補助溝5A側の細溝本数が1本で第二補助溝5B側の細溝本数が2本である場合において、実施例13〜実施例28のように細溝の長さ、形状および配置、ならびに第一補助溝5Aの長さおよび配置を変更することにより、制動性能を向上させることができる。
【0165】
【表1】
【0166】
【表2】