(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記捌き部材が回転部材から成り、前記重り部材が前記給送部材と前記捌き部材との間のシート材を給送方向の上流側に戻す方向に前記捌き部材を前記保持部材に対して相対的に回転変位させる位置に配置されることを特徴とする請求項1に記載のシート材給送装置。
前記捌き部材がパッドから成り、前記重り部材が前記給送部材と前記捌き部材との間のシート材を給送方向の上流側に戻す方向に前記捌き部材を前記保持部材に対して相対的にスライド変位させる位置に配置されることを特徴とする請求項1に記載のシート材給送装置。
前記捌き部材のシート材給送方向の下流側に配置されてシート材給送方向に延び、シート材給送方向の一端で前記重り部材を支持するとともに他端で前記捌き部材と係合し、シート材給送方向の両端の間に設けられてシート給送方向と交差する方向に延びる支軸を中心として回転可能に前記保持部材に設けられた重り支持部材を備えることを特徴とする請求項1又は請求項3に記載のシート材給送装置。
前記重り支持部材は前記重り部材を支持するシート材給送方向の一端と前記支軸とのシート材給送方向の長さが調整可能であることを特徴とする請求項4に記載のシート材給送装置。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明の実施形態を図に基づき説明する。なお、本発明は以下の内容に限定されるものではない。
【0019】
<第1実施形態>
最初に、本発明の第1実施形態の画像形成装置について、
図1を用いてその構造の概略を説明しつつ、画像出力動作を説明する。
図1は画像形成装置の部分垂直断面正面図の一例である。なお、図中の矢印付き二点鎖線はシート材の搬送経路及び搬送方向を示す。
【0020】
画像形成装置1は、
図1に示すように所謂タンデム型のカラー複写機であり、その本体筐体1aに原稿の画像を読み取る画像読取部2と、読み取った画像を用紙等のシート材に印刷する印刷部3と、印刷条件の入力や稼働状況の表示を行うための操作部4と、主制御部5とを備える。
【0021】
画像読取部2は不図示のプラテンガラスの上面に載置された原稿の画像を不図示のスキャナを移動して読み取る公知のものである。原稿の画像は赤(R)、緑(G)、青(B)の三色に色分解され、不図示のCCD(Charge Coupled Device)イメージセンサーで電気信号に変換される。これにより、画像読取部2は赤(R)、緑(G)、青(B)の色別の画像データを得る。
【0022】
画像読取部2が得た色別の画像データは主制御部5において各種処理が行われ、イエロー(Y)、マゼンタ(M)、シアン(C)、ブラック(K)の各再現色の画像データに変換されて主制御部5の不図示のメモリーに格納される。メモリーに格納された再現色別の画像データは位置ずれ補正のための処理を受けた後、像担持体である感光体ドラム21に対する光走査を行うためにシート材の搬送と同期して走査ラインごとに読み出される。
【0023】
印刷部3は電子写真方式によって画像を形成し、その画像をシート材に転写する。印刷部3は中間転写体を無端状のベルトとして形成した中間転写ベルト11を備える。中間転写ベルト11は駆動ローラ12、テンションローラ13及び従動ローラ14に巻き掛けられる。中間転写ベルト11には、テンションローラ13が不図示のバネによって
図1における上方に付勢されることにより張力が与えられる。中間転写ベルト11は駆動ローラ12によって
図1における反時計回りに回転移動する。
【0024】
駆動ローラ12は中間転写ベルト11を挟んで対向する二次転写ローラ15に圧して接触する。従動ローラ14の箇所では、中間転写ベルト11を挟んで従動ローラ14に対向するように設けられた中間転写クリーニング部16が中間転写ベルト11の外周面に接触する。中間転写クリーニング部16は中間転写ベルト11の外周面に形成されたトナー像がシート材Sに転写された後、中間転写ベルト11の外周面に残留したトナーなどの付着物を除去してクリーニングする。
【0025】
中間転写ベルト11の下方にはイエロー(Y)、マゼンタ(M)、シアン(C)、ブラック(K)の各再現色に対応する画像形成部20Y、20M、20C、20Kが設けられる。なおこの説明において、特に限定する必要がある場合を除き、「Y」、「M」、「C」、「K」の識別記号の記載を省略して、例えば「画像形成部20」と総称することがある。4台の画像形成部20は中間転写ベルト11の回転方向に沿って、回転方向の上流側から下流側に向けて一列にして配置される。4台の画像形成部20は構成がすべて同じであり、
図1における時計回りに回転する感光体ドラム21を中心としてその周囲に帯電部、露光部、現像部、ドラムクリーニング部及び一次転写ローラを備える。
【0026】
画像形成部20の下方には露光装置である走査光学装置23が配置される。走査光学装置23は4台の画像形成部20に対して1台で対応し、4個の感光体ドラム21各々に個別に対応した不図示の4つの半導体レーザ等の光源を有する。走査光学装置23は4つの半導体レーザを各再現色の画像階調データに応じて変調して、各再現色に対応するレーザ光を4個の感光体ドラム21に対して個別に出射する。
【0027】
中間転写ベルト11の上方には、4台の各再現色の画像形成部20に対応するトナーボトル31及びトナーホッパー32が設けられる。現像部及びトナーホッパー32に対しては各々の内部のトナーの残量を検出する不図示の残量検出部が設けられる。また、現像部とトナーホッパー32との間及びトナーホッパー32とトナーボトル31との間には各々不図示のトナーの補給装置が設けられる。残量検出部によって現像部の内部のトナーの残量の低下が検出されると、補給装置がトナーホッパー32から現像部にトナーを補給するように駆動する。さらに、残量検出部によってトナーホッパー32の内部のトナーの残量の低下が検出されると、補給装置がトナーボトル31からトナーホッパー32にトナーを補給するように駆動する。トナーボトル31は本体筐体1aに対して着脱可能に設けられ、適宜新しいものと交換することができる。
【0028】
走査光学装置23の下方にはシート材給送装置40が設けられる。シート材給送装置40は用紙等のシート材Sを複数積載して収容するシート材収容部41を備える。シート材収容部41に収容されたシート材Sはピップアップローラ42及び給送ローラ43によってその最上紙から順に1枚ずつシート材搬送路Qに送り出される。シート材収容部41からシート材搬送路Qに送り出されたシート材Sはレジストローラ対84の箇所に到達する。そして、レジストローラ対84がシート材Sの斜め送りを矯正(スキュー補正)しつつ中間転写ベルト11の回転と同期をとって、中間転写ベルト11と二次転写ローラ15との接触部(二次転写ニップ部)に向けてシート材Sを送り出す。
【0029】
画像形成部20では走査光学装置23から照射されたレーザ光によって感光体ドラム21の表面に静電潜像が形成され、その静電潜像が現像部によってトナー像として可視像化される。感光体ドラム21の表面に形成されたトナー像は感光体ドラム21が中間転写ベルト11を挟んで一次転写ローラと対向する箇所において中間転写ベルト11の外周面に一次転写される。そして、中間転写ベルト11の回転とともに所定のタイミングで各画像形成部20のトナー像が順次中間転写ベルト11に転写されることにより、中間転写ベルト11の外周面にはイエロー、マゼンタ、シアン、ブラックの4色のトナー像が重ね合わされたカラートナー像が形成される。
【0030】
中間転写ベルト11の外周面に一次転写されたカラートナー像はレジストローラ対84により同期をとって送られてきたシート材Sに、中間転写ベルト11と二次転写ローラ15とが接触して形成される二次転写ニップ部にて転写される。
【0031】
二次転写ニップ部の上方には定着部85が備えられる。二次転写ニップ部にて未定着トナー像が転写されたシート材Sは定着部85へと送られて加熱ローラ及び加圧ローラに挟まれ、トナー像が加熱、加圧されてシート材Sに溶融定着される。定着部85を通過したシート材Sは中間転写ベルト11の上方に設けられたシート材排出部86に排出される。
【0032】
操作部4は画像読取部2の正面側に設けられる。操作部4は、例えばユーザーによる印刷に使用するシート材Sの種類やサイズ、拡大縮小、両面印刷の有無といった印刷条件などの設定の入力や、ファクシミリ送信におけるファックス番号や送信者名などの設定の入力を受け付ける。また、操作部4は、例えば装置の状態や注意事項、エラーメッセージなどを表示部4wに表示することによって、それらをユーザーに対して報知するための報知部としての役割も果たす。
【0033】
また、画像形成装置1にはその全体の動作制御のため、不図示のCPUや画像処理部、その他の図示しない電子部品で構成された主制御部5が設けられる。主制御部5は中央演算処理装置であるCPUと画像処理部とを利用し、メモリーに記憶、入力されたプログラム、データに基づき画像読取部2や印刷部3などといった構成要素を制御して一連の画像形成動作、印刷動作を実現する。
【0034】
続いて、画像形成装置1のシート材給送装置40の構成について、
図1に加えて
図2〜
図6を用いて説明する。
図2及び
図3はシート材給送装置40の給送ローラ43及び捌き部の構成を示す側面図及び斜視図である。
図4は捌き部の斜視図である。
図5及び
図6は捌き部材の斜視図及び側面図である。なお、
図2及び
図6の上下方向がシート材給送装置40の上下方向である。また、
図3及び
図4に記載したX方向がシート材給送方向であり、Y方向がシート材給送方向に対して垂直を成す所謂シート材Sの幅方向である。
【0035】
シート材給送装置40は、
図1に示すように前述のシート材収容部41、ピップアップローラ42及び給送ローラ43に加えて、捌き部50を備える。
【0036】
ピックアップローラ42はシート材収容部41のシート材給送方向下流部の上方に配置される。シート材収容部41に積載されたシート材Sの材給送方向下流部が不図示の押上機構により持ち上げられ、シート材Sの最上紙が下方からピックアップローラ42を圧して接触する。シート材収容部41のシート材Sはピックアップローラ42によって給送ローラ43へと引き渡され、給送ローラ43によってシート材収容部41の外部のシート材搬送路Qへと送り出される。
【0037】
給送ローラ43はピックアップローラ42のシート材給送方向下流側に配置される。給送ローラ43はその表面の下部がシート材給送装置40からその外部へと延びるシート材搬送路Qに突出するように設けられる。給送ローラ43は不図示のモータに連結され、回転される。給送ローラ43とピックアップローラ42との間にそれらを互いに連結して駆動するための不図示の駆動機構が設けられる。この駆動機構により、給送ローラ43がモータによって回転すると、ピックアップローラ42も給送ローラ43と同じ方向に同じ周速で回転する。
【0038】
なお、給送ローラ43はシート材Sを給送する給送部材の一例であって、ローラ形状に限定されるわけではない。給送部材は、例えば平行移動するパッド状部材、ベルト状部材などで構成しても良い。さらに、給送ローラ43及びピックアップローラ42の役目をシート材給送方向に沿って回転する無端状のベルト状部材で構成しても良い。
【0039】
捌き部50は、
図2及び
図3に示すように給送ローラ43に対向して配置される。なお、給送ローラ43は
図2において時計回りに回転し、
図2の右方から左方に向けてシート材Sを給送する。捌き部50は、
図4に示す捌き部材51、保持部材52、付勢部材53(
図2に図示)及び重り部材54(
図2に図示)を備える。
【0040】
捌き部材51はシート材搬送路Qを挟んで給送ローラ43の下方に位置するように配置される。捌き部材51は、
図5及び
図6に示すようにシート材Sの幅方向から見た側面視(断面)が略扇形状を成し、シート材Sの幅方向に延びる立体を成す。捌き部材51の側面視略扇形状の円弧に対応する領域には摩擦部511が設けられる。摩擦部511はシート材給送方向及びシート材Sの幅方向に延びて湾曲する。摩擦部511は、例えばゴム材等で形成され、摩擦係数が例えば0.4〜1.9程度であることが好ましい。
【0041】
捌き部材51は摩擦部511を支持するための支持部512を備える。支持部512はシート材Sの幅方向両端のシート材給送方向に対して略平行を成す2箇所の側面各々に、シート材Sの幅方向に突出する軸部513を備える。また、支持部512は下面のシート材給送方向の上流端に重り部材54が連結される接続部514を備える。なお、本実施形態では摩擦部511と支持部512とを別部材としているが、これらを同一部材としても良い。すなわち、捌き部材51は摩擦部511のみで形成しても良い。さらに、摩擦部511は側面視略扇形状の円弧に対応する表層領域のみで構成しても良い。
【0042】
保持部材52は内部に空間を有する略直方体形状の箱形状を成し、その内部空間にて捌き部材51を保持する。保持部材52はその上面に摩擦部511よりも摩擦係数が低い低摩擦部521を有する。低摩擦部521は保持部材52の例えば外周面全体に設けても良いし、給送ローラ43に接触し得る領域のみに設けても良い。低摩擦部521は、例えばポリアセタール等の合成樹脂で構成される。
【0043】
低摩擦部521を有する保持部材52の上面は給送ローラ43と対向するとともに、シート材給送方向の略中央部が頂部となるなだらかな凸面になっている。すなわち、低摩擦部521は給送ローラ43に向かって突出する。保持部材52の上面の略中央部には矩形を成す開口522が形成される。保持部材52の内部には捌き部材51が収容される空間部523が形成される。空間部523の内部に収容された捌き部材51はその一部、詳細には摩擦部511が開口522から露出する。
【0044】
なお、
図3に示すように、保持部材52はその上面のシート材Sの幅方向(Y方向)の長さが給送ローラ43のシート材Sの幅方向の長さとほぼ同じである。保持部材52の上面の開口522はシート材Sの幅方向の長さが上面自体のシート材Sの幅方向の長さよりも短い。
【0045】
保持部材52はシート材Sの幅方向両端のシート材給送方向に対して略平行を成す2箇所の側面各々に、捌き部材51の軸部513が挿通される略円形状の保持穴524を備える。保持部材52は軸部513の軸線を中心として回転可能に捌き部材51を保持する。すなわち、保持部材52は捌き部材51を相対的に回転変位可能に保持する。すなわち、捌き部材51は保持部材52に対して相対的に回転変位する回転部材から成る。これにより、捌き部材51の摩擦部511をシート材給送方向の上流側または下流側に移動させることができる。
【0046】
なお、
図6に示すように、捌き部材51の給送ローラ43に接触する面、すなわち摩擦部511が設けられた一面は、回転方向において回転の中心軸線Cとの距離(半径)が漸次変化する。詳細には、その半径はシート材給送方向の上流側から下流側に行くに従って漸次長くなる(r<R)。例えば、回転の中心軸線Cを原点とする極座標を想定した場合に、半径R(θ)は以下の式(1)に示すアルキメデス曲線の式で表されることにして良い。
【0047】
R(θ)=r+αθ ・・・・・・(1)
α:定数
θ:回動角度
【0048】
保持部材52はシート材給送方向の上流端の下部に軸受525を備える。軸受525にはシート材給送装置40の内部に設けられた支軸44が挿通される。保持部材52は支軸44の軸線を中心として回転可能にシート材給送装置40に支持される。
【0049】
付勢部材53は保持部材52のシート材給送方向の下流端の下方に配置される。付勢部材53は例えば圧縮コイルばねから成り、保持部材52の下面と対向するシート材給送装置40の筐体内面との間にその軸線が上下方向に延びるように配置される。付勢部材53は支軸44の軸線を中心として回転可能な保持部材52のシート材給送方向の下流部を上方に向けて、すなわち給送ローラ43に向けて付勢する。すなわち、付勢部材53は捌き部材51が給送ローラ43に圧して接触する方向に保持部材52を付勢する。捌き部材51と給送ローラ43とが接触して形成されるニップ部にシート材Sが挿通される。
【0050】
重り部材54は捌き部材51の接続部514に連結される。前述のように、接続部514は捌き部材51の下面のシート材給送方向の上流端に設けられる。重り部材54は重力の作用により、
図2及び
図6において捌き部材51をその軸線回りに時計回りに回転させる、すなわち捌き部材51の摩擦部511をシート材給送方向の上流側に向けて移動させる方向に捌き部材51を保持部材52に対して相対的に変位させる。すなわち、捌き部材51と給送ローラ43とが接触して形成されるニップ部にシート材Sが重なって複数枚進入したときに、重り部材54は捌き部材51と給送ローラ43との間のシート材Sを給送方向の上流側に戻す方向に捌き部材51を保持部材52に対して相対的に変位させる。
【0051】
続いて、シート材給送装置40の動作について、
図7〜
図9を用いて説明する。
図7、
図8は給送ローラ43及び捌き部50の構成を示す側面図であって、給送ローラ43と捌き部材51との間にシート材が1枚、また2枚進入した場合の状態を示すものである。
図9は重送を阻止するための力を発生させる部材として重りとばねとを用いた場合の負荷抵抗の差を示す説明図である。
【0052】
図7に示すように、給送ローラ43と捌き部材51との間にシート材が1枚進入した場合に給送ローラ43が時計回りに回転すると、シート材Sと摩擦部511との間の摩擦力によって、捌き部材51は重り部材54の作用による力に抗して反時計回りに回転する。
【0053】
捌き部材51はその軸部513の軸線を中心とした半径が漸次変化する構造であり、
図7において反時計回りに回転すると、ニップ部におけるその半径が短くなる。これにより、保持部材52は付勢部材53の付勢力によって支軸44の軸線を中心として
図7において時計回りに回転し、低摩擦部521を有する保持部材52の上面がシート材S(給送ローラ43)に接近する。
【0054】
捌き部材51が所定量回転すると、保持部材52の低摩擦部521が主として
図7におけるシート材Sの下面に接触する状態になる。低摩擦部521は摩擦部511よりも摩擦係数が低いので、捌き部材51の摩擦部511が主としてシート材Sの下面に接触する状態と比較して、シート材Sと捌き部50との間の摩擦抵抗を軽減することができる。同様に、給送ローラ43の回転トルクも比較的小さくなるので、シート材Sに対する摩擦ダメージの発生が抑制され、シート材Sは給送ローラ43の回転によって好適に給送される。
【0055】
一方、
図8に示すように、給送ローラ43と捌き部材51との間にシート材が2枚進入した場合に給送ローラ43が時計回りに回転すると、2枚のシート材S1、S2の間の摩擦力と、摩擦部511と下側のシート材S2との間の摩擦力との関係によって、捌き部材51は重り部材54の作用による力が加わって時計回りに回転し、
図8に示す初期位置に変位する。すなわち、重り部材54は給送ローラ43と捌き部材51との間のシート材を給送方向の上流側に戻す方向に捌き部材51を保持部材52に対して相対的に回転変位させる。
【0056】
給送ローラ43と上側のシート材S1との間の摩擦力は2枚のシート材S1、S2の間の摩擦力よりも大きいので、上側のシート材S1は下側のシート材S2に対して滑るようにして給送される。摩擦部511と下側のシート材S2との間の摩擦力は2枚のシート材S1、S2の間の摩擦力よりも大きいので、重なった下側のシート材S2が給送されることがなく、シート材の重送の発生を防止することが可能である。なお、給送ローラ43と捌き部材51との間にシート材Sが3枚以上進入した場合も同様に、一番上側のシート材Sのみが給送されてそれ以外は給送されず、シート材の重送の発生を防止することが可能である。
【0057】
上記第1実施形態のシート材給送装置40によれば、シート材Sの重送、すなわち2枚目以降のシート材Sの給送の阻止に寄与するトルクリミッターとして重り部材54を利用しているので、部品寸法のばらつきや経年劣化などの影響を受け難くすることができる。したがって、2枚目以降のシート材Sの給送を阻止するための力を適正に設定し易くすることができ、トルクリミッターとしての働きを効果的に維持することが可能になる。
【0058】
ここで、重送を阻止するための力を発生させる部材として、重り部材54に代えて従来技術のようにばねを用いた場合について、
図7に加えて
図9を用いて考察する。この代替ばねは、例えば捌き部材51の重り部材54と同じ箇所に連結し、
図2及び
図6において捌き部材51をその軸線回りに時計回りに回転させる弾性力が作用するものとする。
【0059】
重り部材54に対する代替ばねの場合、
図7に示すように給送ローラ43と捌き部材51との間にシート材が1枚進入したとき、ばねは捌き部材51の回転変位に伴って比較的大きく変位して(伸びて)弾性力が増大することとなる。これにより、ばねの場合、
図9に示すように、給送ローラ43と捌き部材51との間にシート材が重なって進入したときと比較してシート材が1枚進入したとき、重送を阻止するための力が上昇し、シート材に対する捌き部材51の負荷抵抗が上昇する。同様に、給送ローラ43の回転トルクも比較的大きくなるので、シート材に対して摩擦ダメージが発生することが懸念される。
【0060】
一方、重り部材54の場合、
図7に示すように給送ローラ43と捌き部材51との間にシート材が1枚進入して捌き部材51が回転変位したとしても、重送を阻止するための力はほとんど変化しない。これにより、重り部材54の場合、
図9に示すように、給送ローラ43と捌き部材51との間にシート材が重なって進入したときに対して、シート材が1枚進入したときもシート材に対する捌き部材51の負荷抵抗は変化しない。したがって、給送ローラ43の回転トルクの増大を防止することができ、シート材に対する摩擦ダメージの発生を抑制することが可能である。
【0061】
また、シート材給送装置40は、捌き部材51が回転部材から成り、重り部材54が給送ローラ43と捌き部材51との間のシート材Sを給送方向の上流側に戻す方向に捌き部材51を保持部材52に対して相対的に回転変位させる位置に配置される。この構成によれば、捌き部材51として回転部材を用いた構成において、シート材Sの重送、すなわち2枚目以降のシート材Sの給送を阻止するための力を適正に設定し易くすることができ、トルクリミッターとしての働きを効果的に維持することが可能になる。
【0062】
なお、重り部材54はシート材給送装置40(画像形成装置1)が設置された緯度に基づいてその重さが設定可能であることとしても良い。この構成によれば、装置の設置場所に基づいて好適に、シート材Sの重送、すなわち2枚目以降のシート材Sの給送を阻止するための力を設定することが可能になる。
【0063】
<第2実施形態>
次に、本発明の第2実施形態のシート材給送装置について、
図10及び
図11を用いて説明する。
図10、
図11はシート材給送装置の給送ローラ及び捌き部の構成を示す側面図であって、給送ローラと捌き部材との間にシート材が1枚、また2枚進入した場合の状態を示すものである。なお、この実施形態の基本的な構成は先に説明した第1実施形態と同じであるので、第1実施形態と共通する構成要素には前と同じ名称、同じ符号を付してその詳細な説明を省略する場合がある。
【0064】
第2実施形態のシート材給送装置40は、
図10及び
図11に示すように捌き部50が重り部材54及び重り支持部材55を含む。重り部材54及び重り支持部材55は保持部材52の内部であって、捌き部材51のシート材給送方向の下流側に配置される。
【0065】
重り支持部材55はシート材給送方向に延びる。重り支持部材55はシート材給送方向の一端で重り部材54を支持するとともに他端で捌き部材51と係合する。重り支持部材55はシート材給送方向の下流側の一端において、重り部材54を下方から支持する。なお、重り部材54は不図示のガイド部材等によって上下方向に移動可能に配置される。また、重り支持部材55はシート材給送方向の上流側の一端において、捌き部材51の下面に対して下方から接触して係合する。
【0066】
重り支持部材55はシート材給送方向の両端の間に設けられてシート給送方向と交差する方向、すなわちシート材Sの幅方向に延びる支軸55aを有する。重り支持部材55は
支軸55aの軸線を中心として回転可能に保持部材52に設けられる。重り支持部材55はシート材給送方向の上流側端部及び下流側端部をシーソーのように上下動させて揺動する。
【0067】
図10に示すように、給送ローラ43と捌き部材51との間にシート材が1枚進入した場合に給送ローラ43が時計回りに回転すると、シート材Sと摩擦部511との間の摩擦力によって、捌き部材51は反時計回りに回転する。捌き部材51のこの回転に連動して、捌き部材51に係合する重り支持部材55が重り部材54の作用による力に抗して時計回りに回転する。
【0068】
一方、
図11に示すように、給送ローラ43と捌き部材51との間にシート材が2枚進入した場合に給送ローラ43が時計回りに回転すると、2枚のシート材S1、S2の間の摩擦力と、摩擦部511と下側のシート材S2との間の摩擦力との関係によって、捌き部材51は重り部材54の作用による力が加わって時計回りに回転し、
図11に示す初期位置に変位する。このとき、重り支持部材55は重り部材54の作用による力が加わって反時計回りに回転し、係合する捌き部材51を回転変位させる。
【0069】
上記第2実施形態のシート材給送装置40によれば、重り部材54を保持部材52の内部に配置したので、限られたスペースを有効活用することができ、シート材Sの重送、すなわち2枚目以降のシート材Sの給送を阻止することが可能になる。したがって、シート材給送装置40の小型化を図ることができ、比較的小さな重り部材54で効果的にシート材Sの重送を阻止することが可能になる。
【0070】
なお、重り支持部材55は重り部材54を支持するシート材給送方向の一端と支軸55aとのシート材給送方向の長さが調整可能であることが好ましい。この構成によれば、2枚目以降のシート材Sの給送を阻止するための力を任意に変更することができる。したがって、シート材給送装置40の使用状況に合わせて、2枚目以降のシート材Sの給送を阻止するための力を適正に調節することができ、トルクリミッターとしての働きを効果的に維持することが可能になる。
【0071】
<第3実施形態>
次に、本発明の第3実施形態のシート材給送装置について、
図12を用いて説明する。
図12はシート材給送装置の給送ローラ及び捌き部の構成を示す側面図である。なお、この実施形態の基本的な構成は先に説明した第1実施形態と同じであるので、第1実施形態と共通する構成要素には前と同じ名称、同じ符号を付してその詳細な説明を省略する場合がある。
【0072】
第3実施形態のシート材給送装置40は、
図12に示すように捌き部50の付勢部材53が重り531及びその取り付け部532を含む。重り531及び取り付け部532は保持部材52の軸受525のシート材給送方向の上流側に配置される。
【0073】
取り付け部532は軸受525の外周面に設けられ、その外周面からシート材給送方向の上流側に向かって所定長さで突出する形態を成す。重り531は取り付け部532のシート材給送方向の上流側端部に吊り下げられた状態で設けられる。付勢部材53は重り531が受ける重力の作用により、保持部材52のシート材給送方向の下流部を上方に向けて、すなわち給送ローラ43に向けて付勢する。すなわち、付勢部材53は重り531が受ける重力の作用により、捌き部材51が給送ローラ43に圧して接触する方向に保持部材52を付勢する。
【0074】
上記第3実施形態のシート材給送装置40によれば、給送ローラ43と捌き部材51との接触圧力に関して、部品寸法のばらつきや経年劣化などの影響を受け難くすることができる。したがって、シート材Sの給送性能の安定化を図ることが可能である。
【0075】
<第4実施形態>
次に、本発明の第4実施形態のシート材給送装置について、
図13〜
図15を用いて説明する。
図13はシート材給送装置の構成を示す側面図である。
図14は給送ローラ及び捌き部の構成を示す斜視図であり、
図15は捌き部の構成を示す部分断面側面図である。なお、この実施形態の基本的な構成は先に説明した第1実施形態と同じであるので、第1実施形態と共通する構成要素には前と同じ名称、同じ符号を付してその詳細な説明を省略する場合がある。
【0076】
第4実施形態のシート材給送装置40は、
図13及び
図14に示すように捌き部50が捌き部材51、保持部材52、付勢部材53、重り部材54、接触部材56及び摩擦材57を含む。
【0077】
捌き部材51はローラ状の回転部材から成り、シート材搬送路Qを挟んで給送ローラ43の下方に位置するように配置される。ローラ状を成す捌き部材51の外周面の全域にわたって摩擦部511が設けられる。捌き部材51はシート材給送方向と交差するシート材Sの幅方向の長さが給送ローラ43のシート材Sの幅方向の長さとほぼ同じである。捌き部材51はモータに連結されず、給送ローラ43と接触することによって給送ローラ43の回転に従って回転する。なお、捌き部材51の回転中心にある軸部513はシート材給送装置40の筐体に片持ち状態で回転可能に支持される。
【0078】
接触部材56は例えば円盤状を成し、シート材給送装置40に片持ち状態で回転可能に支持された捌き部材51の軸部513の端部に固定される。すなわち、接触部材56は捌き部材51及び軸部513の回転に従って、それらと同じ方向に回転する。接触部材56のシート材Sの幅方向の摩擦材57側の端面は、摩擦材57のシート材Sの幅方向の接触部材56側の端面と対向して隣接する。
【0079】
保持部材52はシート材Sの幅方向に延びる枠体の形態を成し、捌き部材51、重り部材54、接触部材56及び摩擦材57を保持する。保持部材52は例えば捌き部材51の回転軸線が給送ローラ43の回転軸線に離接する方向(
図13のZ方向)に沿って延びる不図示のガイド機構を介して、その方向にスライド移動可能にシート材給送装置40に支持される。
【0080】
付勢部材53は例えば保持部材52の下方に配置される。付勢部材53は例えば圧縮コイルばねから成り、保持部材52の下面と対向するシート材給送装置40の筐体内面との間にその軸線が
図13のZ方向に延びるように配置される。付勢部材53は保持部材52を給送ローラ43に向けて、すなわち捌き部材51が給送ローラ43に圧して接触する方向に保持部材52を付勢する。
【0081】
摩擦材57はローラ状の回転部材から成り、その回転軸線を捌き部材51の回転軸線に一致させて配置される。摩擦材57はシート材給送装置40の筐体に片持ち状態で回転不能に固定された固定軸57aに対して回転可能に支持される。
図15に示すように、摩擦材57と固定軸57aとが嵌合する箇所には、シート材Sの幅方向に延びるねじ部57bが設けられる。すなわち、ねじ部57bの作用により、摩擦材57は自身がその軸線回りに回転するに従って、シート材Sの幅方向に沿って接触部材56に対して離接する方向(
図15の左右横方向)に移動することができる。前述のように、摩擦材57のシート材Sの幅方向の接触部材56側の端面は、接触部材56のシート材Sの幅方向の摩擦材57側の端面と対向して隣接する。
【0082】
重り部材54は摩擦材57の外周面にワイヤ54aを介して取り付けられる。重り部材54は摩擦材57の固定軸57aに対してシート材給送方向の上流側に配置される。重り部材54は重力の作用により、
図14及び
図15において摩擦材57をその軸線回りに回転させ、さらにねじ部57bの作用で接触部材56に接近させる方向に回転変位させる。これにより、摩擦材57がシート材Sの幅方向に沿って接触部材56に押し付けられ、摩擦材57の回転力が接触部材56に伝達される。すなわち、重り部材54は重力の作用により、シート材Sが挿通されるニップ部における捌き部材51の外周面(摩擦部511)をシート材給送方向の上流側に向けて移動させる方向に捌き部材51を保持部材52に対して相対的に回転変位させる。すなわち、ニップ部にシート材Sが重なって複数枚進入したときに、重り部材54は捌き部材51と給送ローラ43との間のシート材Sを給送方向の上流側に戻す方向に捌き部材51を保持部材52に対して相対的に回転変位させる。
【0083】
ニップ部にシート材Sが1枚進入したときには、給送ローラ43がシート材給送方向に回転すると、シート材Sと摩擦部511との間の摩擦力によって、捌き部材51は重り部材54の作用による力に抗してシート材給送方向に回転する。捌き部材51の回転力が接触部材56を介して摩擦材57に伝達されると、ねじ部57bの作用で摩擦材57がシート材Sの幅方向に沿って
図15における左方向に接触部材56から離隔しようとする。これにより、接触部材56と摩擦材57とが互いに対向し合う各々の端面の間において滑りが生じ、摩擦材57の回転及び移動が停止する。シート材Sは給送ローラ43の回転によって好適に給送される。
【0084】
上記第4実施形態のシート材給送装置40によれば、捌き部材51として回転部材であるローラ状部材を用いた構成において、シート材Sの重送、すなわち2枚目以降のシート材Sの給送を阻止するための力を適正に設定し易くすることができ、トルクリミッターとしての働きを効果的に維持することが可能になる。
【0085】
なお、接触部材56と摩擦材57との間に電磁クラッチを設け、この電磁クラッチを利用して重り部材54の作用で摩擦材57に生じる回転力の接触部材56への伝達、遮断を行うようにしても良い。このとき、重り部材54の位置を検出するセンサーを設けて電磁クラッチの動作を制御しても良い。
【0086】
<第5実施形態>
次に、本発明の第5実施形態のシート材給送装置について、
図16〜
図18を用いて説明する。
図16はシート材給送装置の給送ローラ及び捌き部の構成を示す側面図である。
図17、
図18は給送ローラ及び捌き部の構成を示す側面図であって、給送ローラと捌き部材との間にシート材が1枚、また2枚進入した場合の状態を示すものである。なお、この実施形態の基本的な構成は先に説明した第1実施形態と同じであるので、第1実施形態と共通する構成要素には前と同じ名称、同じ符号を付してその詳細な説明を省略する場合がある。
【0087】
第5実施形態のシート材給送装置40は、
図16に示すように捌き部50が捌き部材51、保持部材52、付勢部材53及び重り部材54を備える。
【0088】
捌き部材51はシート材Sの幅方向から見た側面視(断面)が略台形状を成し、シート材Sの幅方向に延びる立体を成す。捌き部材51は摩擦部511及び支持部512を備える。
【0089】
摩擦部511は支持部512の傾斜した上面に設けられる。摩擦部511はシート材給送方向及びシート材Sの幅方向に延びて略平板状を成す。摩擦部511はシート材給送方向に関して、シート材給送方向の下流側が上流側よりも高くなる、すなわち給送ローラ43側に接近するように傾斜する。
【0090】
支持部512はシート材Sの幅方向両端のシート材給送方向に対して略平行を成す2箇所の側面各々に、シート材Sの幅方向に突出する突起部515を備える。突起部515は支持部512の2箇所の側面各々に2個ずつシート材給送方向に沿って並べて設けたが、この数は適宜変更することができる。なお、本実施形態では摩擦部511と支持部512とを別部材としているが、これらを同一部材としても良い。
【0091】
保持部材52は内部に空間を有する略直方体形状の箱形状を成し、その内部空間にて捌き部材51を保持する。保持部材52はその上面に摩擦部511よりも摩擦係数が低い低摩擦部521を有する。低摩擦部521は給送ローラ43に向かって突出する。保持部材52の上面の略中央部には矩形を成す開口522が形成される。保持部材52の内部には捌き部材51が収容される空間部523が形成される。空間部523内に収容された捌き部材51はその一部、詳細には摩擦部511が開口522から露出する。
【0092】
保持部材52はシート材Sの幅方向両端のシート材給送方向に対して略平行を成す2箇所の側面各々に、捌き部材51の突起部515が挿通される保持穴524を備える。保持穴524はシート材給送方向に沿って略平行に延びる長穴で構成され、1箇所の保持穴524に対して同一側面に設けられた2個の突起部515各々が挿通される。保持部材52はシート材給送方向に沿って略平行に移動可能に捌き部材51を保持する。すなわち、保持部材52は捌き部材51を相対的にスライド変位可能に保持する。すなわち、捌き部材51は保持部材52に対して相対的にスライド変位するパッドから成る。これにより、捌き部材51の摩擦部511をシート材給送方向の上流側または下流側に移動させることができる。
【0093】
付勢部材53は支軸44の軸線を中心として回転可能な保持部材52のシート材給送方向の下流部を上方に向けて、すなわち給送ローラ43に向けて付勢する。すなわち、付勢部材53は捌き部材51が給送ローラ43に圧して接触する方向に保持部材52を付勢する。
【0094】
重り部材54は捌き部材51のシート材給送方向上流端のシート材Sの幅方向に沿って延びる側面にワイヤ54aを介して取り付けられる。ワイヤ54aはその略中間においてシート材給送装置40の筐体に設けられてシート材Sの幅方向に沿って平行に延びる軸部材54bに巻き掛けられる。重り部材54は重力の作用により、捌き部材51、すなわち捌き部材51の摩擦部511をシート材給送方向の上流側に向けて移動させる方向(
図16の右方向)に捌き部材51を保持部材52に対して相対的に変位させる。すなわち、捌き部材51と給送ローラ43とが接触して形成されるニップ部にシート材Sが重なって複数枚進入したときに、重り部材54は捌き部材51と給送ローラ43との間のシート材Sを給送方向の上流側に戻す方向に捌き部材51を保持部材52に対して相対的に変位させる。
【0095】
続いて、シート材給送装置40の動作について、
図17及び
図18を用いて説明する。
【0096】
図17に示すように、給送ローラ43と捌き部材51との間にシート材が1枚進入した場合に給送ローラ43が時計回りに回転すると、シート材Sと摩擦部511との間の摩擦力によって、捌き部材51は重り部材54の作用による力に抗してシート材給送方向の下流側(
図17の左方向)に向かってスライド移動する。
【0097】
捌き部材51はシート材給送方向の下流側が上流側よりも高くなる構造であり、シート材給送方向の下流側に向かってスライド移動すると、ニップ部における捌き部材51の摩擦部511の表面から保持部材52の保持穴524の箇所までの距離が短くなる。これにより、保持部材52は付勢部材53の付勢力によって支軸44の軸線を中心として
図17において時計回りに回転し、低摩擦部521を有する保持部材52の上面がシート材S(給送ローラ43)に接近する。
【0098】
捌き部材51が所定量スライド移動すると、保持部材52の低摩擦部521が主として
図17におけるシート材Sの下面に接触する状態になる。低摩擦部521は摩擦部511よりも摩擦係数が低いので、捌き部材51の摩擦部511が主としてシート材Sの下面に接触する状態と比較して、シート材Sと捌き部50との間の摩擦抵抗を軽減することができる。同様に、給送ローラ43の回転トルクも比較的小さくなるので、シート材Sに対する摩擦ダメージの発生が抑制され、シート材Sは給送ローラ43の回転によって好適に給送される。
【0099】
一方、
図18に示すように、給送ローラ43と捌き部材51との間にシート材が2枚進入した場合に給送ローラ43が時計回りに回転すると、2枚のシート材S1、S2の間の摩擦力と、摩擦部511と下側のシート材S2との間の摩擦力との関係によって、捌き部材51は重り部材54の作用による力が加わってシート材給送方向の上流側(
図17の右方)に向かってスライド移動し、
図18に示す初期位置に変位する。すなわち、重り部材54は給送ローラ43と捌き部材51との間のシート材を給送方向の上流側に戻す方向に捌き部材51を保持部材52に対して相対的にスライド変位させる。
【0100】
給送ローラ43と上側のシート材S1との間の摩擦力は2枚のシート材S1、S2の間の摩擦力よりも大きいので、上側のシート材S1は下側のシート材S2に対して滑るようにして給送される。摩擦部511と下側のシート材S2との間の摩擦力は2枚のシート材S1、S2の間の摩擦力よりも大きいので、重なった下側のシート材S2が給送されることがなく、シート材の重送の発生を防止することが可能である。なお、給送ローラ43と捌き部材51との間にシート材Sが3枚以上進入した場合も同様に、一番上側のシート材Sのみが給送されてそれ以外は給送されず、シート材の重送の発生を防止することが可能である。
【0101】
上記のように、第5実施形態のシート材給送装置40は、捌き部材51がパッドから成り、重り部材54が給送ローラ43と捌き部材51との間のシート材Sを給送方向の上流側に戻す方向に捌き部材51を保持部材52に対して相対的にスライド変位させる位置に配置される。この構成によれば、捌き部材51としてパッドを用いた構成において、シート材Sの重送、すなわち2枚目以降のシート材Sの給送を阻止するための力を適正に設定し易くすることができ、トルクリミッターとしての働きを効果的に維持することが可能になる。したがって、第5実施形態のシート材給送装置40は、第1実施形態と同様の効果を得ることが可能である。
【0102】
以上、本発明の実施形態につき説明したが、本発明の範囲はこれに限定されるものではなく、発明の主旨を逸脱しない範囲で種々の変更を加えて実施することができる。また、複数の実施形態を組み合わせて実施することができる。
【0103】
例えば、上記実施形態では保持部材52が付勢部材53の付勢力によって支軸44の軸線を中心として回転可能な構成としたが、これは例示にすぎない。保持部材52は捌き部材51が給送ローラ43に対して圧して接触する構成であれば良く、例えば保持部材52をスライド移動可能な構成としても良い。
【0104】
また、上記実施形態では画像形成装置1が中間転写ベルト11を用いて複数色の画像を順次重ねて形成する所謂タンデム型のカラー印刷用画像形成装置であるが、このような機種に限定されるわけではなく、タンデム型ではないカラー印刷用画像形成装置やモノクロ印刷用の画像形成装置であっても構わない。