(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
機能液の流入口を有する一次液室と、前記機能液の流出口を有する二次液室と、前記一次液室と前記二次液室とを連通する連通流路を開閉する弁体と、前記二次液室の1の壁面に設けられ前記二次液室と大気とを液密に仕切ると共に、前記二次液室の圧力と大気圧との圧力差で応動する受圧部材と、前記受圧部材の応動を前記弁体に伝達して前記弁体を開閉する作動部材と、を備え、
前記受圧部材が、前記作動部材を作動させる受圧板部と、前記受圧板部の周囲に設けられた受圧膜部と、を有する自己封止弁に対し、
前記受圧部材を前記二次液室の大気側から押圧し、前記作動部材を介して前記弁体を強制的に開放する弁駆動装置であって、
前記受圧膜部に先行して前記受圧板部の押圧を解く押圧駆動部を、備えたことを特徴とする弁駆動装置。
【背景技術】
【0002】
従来、この種の弁駆動装置として、ヘッドに供給するインクを圧力調整するための、バルブユニットに組み込まれた押圧機構が知られている(特許文献1参照)。
このバルブユニットは、インク収容室を形成した収容室形成部材を有している。インク収容室は、供給チューブを介してインク供給機構に接続された第1室と、接続流路を介してヘッドに接続された第2室と、第1室と第2室とを連通する連通部と、を備えている。また、第2室には開口部が形成され、開口部には、これを閉塞するように可撓性部材が設けられている。可撓性部材には、その中央部に受圧板が設けられており、受圧板の周辺部には、可撓性部材が露出した状態となっている。さらに、第1室と第2室とに跨って弁が設けられている。弁は、シール付きのフランジ部と軸部とを有し、フランジ部は、第1室に配設され、軸部はフランジ部から第2室の可撓性部材の近傍まで延びている。また、第1室には、弁を閉塞させる方向に付勢する調整用の付勢機構が設けられている。
ヘッドからインクが吐出されると第2室が負圧となり、大気圧により可撓性部材が内側に撓む。可撓性部材が撓むと軸部が押圧され、弁が開放して第1室から第2室にインクが流入する。インクが第2室に流入し第2室の負圧が小さくなると、可撓性部材の撓みが小さくなり、やがて付勢機構の付勢力が勝って弁が閉塞する。このようにして、ヘッドに供給されるインクの圧力が調整される。
一方、押圧機構は、可撓性部材の外側に配設されたエアバックと、エアバックに接続されたエア駆動機構とを有している。エア駆動機構からエアバックにエアが供給されると、エアバックが膨張して可撓性部材を第2室側に撓ませる。これにより、弁が強制的に開放される。一方、エアバックからエアを抜くと、エアバックが収縮して可撓性部材の撓みが解消され、付勢機構により弁が閉塞される。
この押圧機構による弁の開閉は、いわゆるヘッドの加圧クリーニングを実施する際に実施される。第1室に接続された加圧機構の駆動に同期して、エアバックを膨張(エア駆動機構を駆動)させることで、ヘッドからインクを強制的に吐出し、ヘッド(ノズル)の加圧クリーニングを実施する。また、加圧機構の駆動停止に同期して、エアバックを収縮させることで、加圧クリーニングを終了する。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
このような、従来の押圧機構(弁駆動装置)では、加圧クリーニングを終了する過程で、収縮するエアバックが可撓性部材から離れてゆく。より詳細には、エアバックは、その形態上、受圧板に先行して受圧板の周辺部の可撓性部材から離れてゆく、このため、受圧板からエアバックが完全に離れたときには、可撓性部材(周辺部)が外側にわずかに撓んだ状態となる。すなわち、エアバックが可撓性部材から離れた状態で、第2室に残圧が生ずることになる。また、エアバックからエアが抜けるのに時間がかかり、弁の閉塞に時間がかかるものとなっていた。
したがって、加圧クリーニングが終了(加圧機構の駆動停止)したあとも、ヘッドにインクの液だれ(時間をかけてにじみ出る)が生じ、続くヘッド(のノズル面)のワイピング動作に、短時間で移行することができない問題があった。加圧クリーニングの終了からワイピング開始までの間に時間を要すると、ヘッドが水平等の横向きである場合では、にじみ出たインクに重力が作用し、ヘッドのノズルの性状が変化してしまい、効果的なワイピングが不可能になってしまう。
【0005】
本発明は、強制的に開放した自己封止弁の弁体を、二次液室に残圧を極力生ずることなく閉塞することができる弁駆動装置、機能液供給ユニットおよび液滴吐出装置を提供することを課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の弁駆動装置は、機能液の流入口を有する一次液室と、機能液の流出口を有する二次液室と、一次液室と二次液室とを連通する連通流路を開閉する弁体と、二次液室の1の壁面に設けられ二次液室と大気とを液密に仕切ると共に、二次液室の圧力と大気圧との圧力差で応動する受圧部材と、受圧部材の応動を弁体に伝達して弁体を開閉する作動部材と、を備え、受圧部材が、作動部材を作動させる受圧板部と、受圧板部の周囲に設けられた受圧膜部と、を有する自己封止弁に対し、受圧部材を二次液室の大気側から押圧し、作動部材を介して弁体を強制的に開放する弁駆動装置であって、受圧膜部に先行して受圧板部の押圧を解く押圧駆動部を、備えたことを特徴とする。
【0007】
この構成によれば、押圧駆動部により、受圧膜部に先行して受圧板部の押圧を解くようにしている。すなわち、押圧駆動部が受圧板部から離れ弁体が閉塞してから、押圧駆動部が受圧膜部からが離れることになる。このため、押圧駆動部が受圧部材から離れる過程で、受圧膜部が二次液室の外側に撓むことがない。したがって、弁体を閉塞したときに、二次液室に生ずる残圧を極力少なくすることができる。
【0008】
この場合、押圧駆動部は、受圧板部を押圧する板押圧部と、受圧膜部を押圧する膜押圧部と、板押圧部および膜押圧部を進退させて、押圧および押圧解除させる進退動機構と、進退動機構を制御し、受圧膜部に先行して受圧板部を押圧解除させる制御部と、を有することが好ましい。
【0009】
この構成によれば、制御部により進退動機構を制御することにより、受圧板部の押圧解除する動作の後に、受圧膜部の押圧解除する動作を精度良く行うことができる。
【0010】
この場合、板押圧部と膜押圧部とは、一体に形成され、板押圧部の先端部と膜押圧部の先端部とは、受圧膜部に先行して受圧板部を押圧解除させる位置関係にあることが好ましい。
【0011】
この構成によれば、板押圧部と膜押圧部とを単純な構造とすることができ、全体として低コストで押圧駆動部を構成することができる。
【0012】
また、制御部は、板押圧部および膜押圧部を低速で前進させると共に、高速で後退させることが好ましい。
【0013】
この構成によれば、二次液室に生ずる残圧を極力少なくすることができると共に、弁体を短時間で閉塞することができる。したがって、自己封止弁を短時間で定常状態に戻すことができ、次の動作や工程等に短時間で移行することができる。
【0014】
本発明の機能液供給ユニットは、上記した弁駆動装置と、自己封止弁と、を備えたことを特徴とする。
【0015】
この構成によれば、供給対象物に対し機能液を圧力調整して供給する調整モードと、機能液を高圧で多量に供給する強制モードと、で自己封止弁を使い分けることができる。そして、強制モードでは、強制的に開放した自己封止弁の弁体を、二次液室に残圧を極力生ずることなく閉塞することができるため、自己封止弁を短時間で調整モード(定常状態)に戻すことができる。
【0016】
本発明の液滴吐出装置は、上記した機能液供給ユニットと、流入口に連なり、機能液を加圧する機能液加圧部と、流出口に連なる液滴吐出ヘッドと、を備えたことを特徴とする。
【0017】
この構成によれば、機能液加圧部により機能液を加圧すると共に、弁駆動装置により自己封止弁の弁体を開放することで、液滴吐出ヘッドの加圧クリーニングを実施することができる。また、この加圧クリーニングが終了したときに、残圧による 液滴吐出ヘッドからの液だれ等を極力抑制することができる。なお、加圧クリーニングは、吸引によるクリーニングの代えて行われる、液滴吐出ヘッドのクリーニング方法である。
【0018】
この場合、弁体を強制的に開放したときに、液滴吐出ヘッドから吐出される機能液を受けるキャップユニットと、弁体が閉塞したタイミングで、液滴吐出ヘッドのノズル面を払拭するワイピングユニットと、を更に備えることが好ましい。
【0019】
この構成によれば、キャップユニットにより、加圧クリーニング時に液滴吐出ヘッドから吐出された機能液を受けることができる。また、加圧クリーニングが終了したときに、液滴吐出ヘッドからの液だれ等が抑制されるため、ワイピングユニットによる液滴吐出ヘッドのノズル面の払拭動作に、短時間で移行することができる。したがって、液滴吐出ヘッドのメンテナンスを短時間で効果的に実施することができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【
図1】実施形態に係る液滴吐出装置の構造を表した模式図である。
【
図2】実施形態に係る液滴吐出装置の制御系のブロック図である。
【
図3】液滴吐出装置におけるインク供給ユニット廻りの断面構造図である。
【
図4A】押圧部材が前進して、膜押圧部が受圧膜部に接触し、板押圧部が受圧板部に非接触となっている状態を表したインク供給ユニットの動作説明図である。
【
図4B】押圧部材が前進して、膜押圧部が受圧膜部に且つ板押圧部が受圧板部に接触した状態を表したインク供給ユニットの動作説明図である。
【
図4C】押圧部材が押圧位置に移動した状態を表したインク供給ユニットの動作説明図である。
【
図4D】押圧部材が後退して、膜押圧部が受圧膜部に且つ板押圧部が受圧板部に接触している状態を表したインク供給ユニットの動作説明図である。
【
図4E】押圧部材が後退して、膜押圧部が受圧膜部に接触し、板押圧部が受圧板部に非接触となっている状態を表したインク供給ユニットの動作説明図である。
【
図5】弁駆動装置が駆動したときの、自己封止弁の二次液室の圧力変化を表した説明図である。
【
図6A】メンテナンスにおける開始動作を表した動作説明図である。
【
図6B】メンテナンスにおける自己封止弁の開弁動作を表した動作説明図である。
【
図6C】メンテナンスにおける自己封止弁の開弁動作(受圧板部の押圧解除)を表した動作説明図である。
【
図6D】メンテナンスにおける自己封止弁の開弁動作(受圧膜部の押圧解除)を表した動作説明図である。
【
図6E】メンテナンスにおけるワイピング動作を表した動作説明図である。
【
図6F】メンテナンスにおけるフラッシング動作を表した動作説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、添付の図面を参照して、本発明の一実施形態に係る弁駆動装置、機能液供給ユニットおよび液滴吐出装置について説明する。この液滴吐出装置は、紙やフィルム等の記録媒体にインクジェット方式で印刷を行う印刷装置である。また、機能液供給ユニットであるインク供給ユニットは、機能液であるインクを液滴吐出装置の液滴吐出ヘッドに供給するものであり、インクの供給圧力を調整する自己封止弁(圧力調整弁)と、自己封止弁を強制的に開放する弁駆動装置とを有している。印刷時には、自己封止弁が単独で作動し、インクを液滴吐出ヘッドに所定の圧力で供給する。また、メンテナンス時には、弁駆動装置が作動し、自己封止弁を強制的に開放して液滴吐出ヘッドの加圧クリーニングを実施する。
【0022】
[液滴吐出装置]
図1は、実施形態に係る液滴吐出装置の構造を表した模式図である。同図に示すように、液滴吐出装置10は、装置フレーム11と、インクジェット方式の液滴吐出ヘッド13を有する印刷部12と、印刷部12を通過するように記録媒体Pを送る媒体送り部14と、を備えている。また、液滴吐出装置10は、上記のインク供給ユニット16(機能液供給ユニット)を有し、液滴吐出ヘッド13にインクを供給するインク供給部15と、液滴吐出ヘッド13のメンテナンスを行うメンテナンス部17と、これら構成装置を統括制御する制御部18と、を備えている。以下、X・Y・Zの直交座標系を用いて説明を進める。すなわち、記録媒体Pの送り方向をX軸方向、記録媒体Pの面内においてX軸方向に直交する方向をY軸方向、そしてX軸方向およびY軸方向に直交する方向をZ軸方向とする。
【0023】
媒体送り部14は、詳細は図示しないが、ニップローラー等で構成された送りローラーや、送りローラーを駆動する送りモーター21(
図2参照)およびギヤ列を有している。印刷に際し記録媒体Pは、この媒体送り部14により、
図1の上側から下側に向かってX軸方向に送られる。この場合、印刷部12による液滴吐出ヘッド13の主走査と、媒体送り部14による記録媒体Pの間欠送りである副走査(行送り)により、記録媒体Pへの印刷が実施される。
【0024】
印刷部12は、Y・M・C・B(ブラック)の各色のインクに対応する4つの液滴吐出ヘッド13と、4つの液滴吐出ヘッド13が搭載されたキャリッジ23と、キャリッジ23を介して液滴吐出ヘッド13をY軸方向に往復動させるヘッド移動機構24と、所定のギャップを存して液滴吐出ヘッド13に対峙すると共に、記録媒体Pの送り経路の一部を構成する平板状のプラテン25と、を備えている。
【0025】
ヘッド移動機構24は、動力源となるキャリッジモーター26と、キャリッジモーター26により駆動される駆動プーリー27aおよび従動プーリー27bと、駆動プーリー27aおよび従動プーリー27b間に掛け渡したタイミングベルト28と、キャリッジ23をY軸方向にスライド自在に支持するガイドロッド29と、を有している。キャリッジ23は、タイミングベルト28の一部に固定されており、キャリッジモーター26を介してタイミングベルト28が正逆方向に走行することで、4つの液滴吐出ヘッド13がガイドロッド29に案内されてY軸方向に往復動する。そして、この往復動に同期して4つの液滴吐出ヘッド13が適宜駆動することで(主走査)、カラー印刷が実施される。
【0026】
インク供給部15は、Y・M・C・Bの各色のインクを貯留するカートリッジ形式の4つのインクタンク31と、4つのインクタンク31と4つの液滴吐出ヘッド13を接続する4本のインクチューブ32と、各インクチューブ32に介設され、各インクタンク31のインクを各液滴吐出ヘッド13に送液する4つのインクポンプ33(
図2参照)と、を備えている。
【0027】
また、詳細は後述するが、インク供給部15は、各液滴吐出ヘッド13の近傍に位置して、インクチューブ32に介設した上記のインク供給ユニット16と、各インクタンク31の近傍に位置して、インクチューブ32に接続されたインク加圧部35(機能液加圧部:
図2参照)と、を備えている。インク加圧部35は、例えばインクタンク31を加圧するもの、或いはインクチューブ32に三方弁を介して接続したポンプ(ダイヤフラムポンプ)等で構成されている。そして、インク供給ユニット16は、自己封止弁36と、自己封止弁36を強制的に開放(開弁)する弁駆動装置37とを有している(
図3参照)。
【0028】
インクタンク31は、装置フレーム11に設けられており、インク供給部15は、いわゆるオフキャリッジ型の供給系を構成している。インクポンプ33が駆動すると、インクタンク31のインクは、インクチューブ32を介して液滴吐出ヘッド13に供給される。その際、インクは、インク供給ユニット16の自己封止弁36により圧力調整(減圧調整)され、所定の圧力で液滴吐出ヘッド13に供給される。また、弁駆動装置37とインク加圧部35とは同時に駆動され、後述する液滴吐出ヘッド13の加圧クリーニングを実施する(詳細は後述する)。
【0029】
メンテナンス部17は、往復動する液滴吐出ヘッド13の印刷領域から外れたホーム位置に配設されている。メンテナンス部17は、液滴吐出ヘッド13のノズル面13a(
図3参照)をキャッピングするキャップユニット41と、液滴吐出ヘッド13のノズル面13aを払拭するワイピングユニット42と、を有している。キャップユニット41は、ヘッドキャップ44を有し、ワイピングユニット42は、ワイパー45を有している。ヘッドキャップ44およびワイパー45には、兼用の駆動機構46(
図2参照)が連結されており、この駆動機構46により、ヘッドキャップ44は液滴吐出ヘッド13をキャッピングするキャップ位置と退避位置との間で、ワイパー45は液滴吐出ヘッド13に接触する払拭位置と退避位置との間で移動する。
【0030】
キャップユニット41は、後述する液滴吐出ヘッド13の加圧クリーニングにおいて、或いは液滴吐出ヘッド13の捨て吐出(フラッシング)において、ヘッドキャップ44によって液滴吐出ヘッド13から吐出されるインクを受ける。また、キャップユニット41は、液滴吐出装置10の稼働停止時等において、ヘッドキャップ44によって液滴吐出ヘッド13のノズル面13aを封止する。一方、ワイピングユニット42は、ヘッド移動機構24と協働し、ワイパー45によって、加圧クリーニングの直後に液滴吐出ヘッド13のノズル面13aに付着したインク等を払拭する。
【0031】
図2は、液滴吐出装置10における制御系のブロック図である。同図に示すように、制御部18には、各種の情報を入力する入力部51や各種の情報を記憶する記憶部52が接続されている。また、制御部18には、上記の媒体送り部14、印刷部12の液滴吐出ヘッド13およびヘッド移動機構24、インク供給部15およびメンテナンス部17が接続されている。
【0032】
制御部18は、媒体送り部14の送りモーター21を制御し、記録媒体Pの間欠送り(副走査)等を実施する。同様に、制御部18は、印刷データに基づいて、ヘッド移動機構24のキャリッジモーター26を制御すると共に、印刷部12の液滴吐出ヘッド13を吐出制御する。また、制御部18は、キャリッジモーター26を制御して、液滴吐出ヘッド13をキャップユニット41やワイピングユニット42に臨ませると共に、駆動機構46を制御し、ヘッドキャップ44をキャップ位置に、またワイパー45を払拭位置に移動させる。
【0033】
さらに、制御部18は、インク供給部15のインクポンプ33を駆動して液滴吐出ヘッド13にインクを供給する他、インク供給ユニット16の弁駆動装置37とインク加圧部35とを同期駆動して、加圧クリーニングを実施する。すなわち、制御部18は、インク供給部15に対し、通常の印刷動作を実施する印刷モード(調整モード)と、加圧クリーニングを実施するメンテナンスモード(強制モード)と、を切換えて実施する。そして、印刷モードでは、液滴吐出ヘッド13を駆動して印刷を実施し、メンテナンスモードでは、液滴吐出ヘッド13を駆動することなく、弁駆動装置37およびインク加圧部35を駆動して液滴吐出ヘッド13の加圧クリーニングを実施する。
【0034】
[インク供給ユニット]
ここで、
図3を参照して、インク供給ユニット16廻りの構造について詳細に説明する。上述のように、インク供給ユニット16は、インク色別の液滴吐出ヘッド13毎に設けられている。各インク供給ユニット16は、インクを圧力調整して液滴吐出ヘッド13に供給する自己封止弁36と、自己封止弁36を強制的に開弁(弁開放)する弁駆動装置37と、を有している。自己封止弁36は、流出側を液滴吐出ヘッド13に直結するように設けられ、弁駆動装置37は、自己封止弁36に対峙するように配設されている。そして、自己封止弁36の流入側には、上記のインクチューブ32の下流端が接続されている。
【0035】
[自己封止弁]
図3に示すように、自己封止弁36は、大気圧を基準にしてインクの供給圧力を調整する、いわゆる圧力調整弁である。自己封止弁36は、樹脂製のハウジング61と、ハウジング61内に画成された流入口63を有する一次液室62と、ハウジング61内に画成された流出口65を有する二次液室64と、一次液室62と二次液室64とを連通する連通流路66と、連通流路66を一次液室62側から開閉する弁体67と、を備えている。そして、流入口63には、インクチューブ32が接続され、流出口65には、液滴吐出ヘッド13が直結されている。
【0036】
また、自己封止弁36は、二次液室64の1の壁面(ハウジング61の開口部)に設けられ二次液室64と大気(外部)とを液密に仕切ると共に、二次液室64の圧力と大気圧との圧力差で応動する受圧部材71と、受圧部材71の応動を弁体67に伝達して弁体67を開閉動作させる作動部材72と、を備えている。弁体67と作動部材72とは、一体に形成されており、作動部材72は連通流路66を通過して受圧部材71に近傍まで延びている。一方、一次液室62に開口した連通流路66の開口縁部により弁座73が構成されており、弁体67に設けたシールリング74が弁座73に対し離接することで、連通流路66が開閉(開弁および閉弁)する。
【0037】
また、一次液室62には、弁体67を閉塞(閉弁)方向に弱く付勢する弁体バネ75が内蔵されており、この弁体バネ75が、受圧部材71の応動と拮抗して弁体67の閉弁動作と調整圧力の微調整とが行われる。受圧部材71は、ハウジング61の開口部を仕切る円形の膜体77と、同心上において膜体77の外側(二次液室64と反対側)に貼着した円形の受圧板部78とを有している。膜体77に対し受圧板部78は十分に小さい径に形成されており、外部から見た受圧部材71は、中央部に位置する受圧板部78と、受圧板部78の周囲に位置する膜体77の一部である受圧膜部77aとを有している。
【0038】
受圧板部78は、適度な剛性を有する樹脂板等で構成され、受圧膜部77a(膜体77)は、適度な柔軟性を有する樹脂フィルム等で構成されている。このため、二次液室64の圧力と大気圧との圧力差で応動する受圧部材71は、主に受圧膜部77aの応動により全体として応動する。受圧板部78の中心部には、膜体77を存して作動部材72の先端部が対峙しており、受圧部材71の応動が作動部材72を介して弁体67に伝達され、受圧部材71の応動と弁体バネ75の付勢力とがバランスをとりながら弁体67が開閉動作する。なお、受圧部材71は、受圧板部78に相当する硬質部と、受圧膜部77aに相当する軟質部と、から成るものであってもよい。
【0039】
このように構成された自己封止弁36では、液滴吐出ヘッド13のインク吐出(主に印刷)により二次液室64の圧力が下がってゆくと、大気圧により受圧部材71が二次液室64側に凹状に変形する。受圧部材71が変形すると、受圧板部78が作動部材72を押圧し、弁体バネ75に抗して弁体67を開弁させる。これにより、連通流路66を介して一次液室62から二次液室64にインクが流入する。このインクの流入が継続し二次液室64の圧力が高くなってゆくと、受圧部材71が大気圧に抗して外側に凸状に変形する。受圧部材71が外側に変形すると、弁体バネ75により、弁体67が二次液室64側に移動し連通流路66を閉塞(開閉弁)する。
【0040】
このように、自己封止弁36は、大気圧を基準に連通流路66を開閉し、一定の圧力で液滴吐出ヘッド13にインクを供給する。このため、液滴吐出ヘッド13から吐出されるインク滴が量的に安定することになる。
一方、本実施形態では、上述のように液滴吐出ヘッド13の加圧クリーニングを実施するが、かかる場合には、インク加圧部35によりインクを加圧しておいて、弁駆動装置37により自己封止弁36を強制的に開弁する。
【0041】
[弁駆動装置]
図3および
図4A〜
図4Eに示すように、弁駆動装置37は、自己封止弁36の受圧部材71に対峙するように配設され、受圧膜部77aに先行して受圧板部78の押圧を解く押圧駆動部80を、備えている。押圧駆動部80は、上記の受圧板部78を押圧する板押圧部82および上記の受圧膜部77aを押圧する膜押圧部83から成る押圧部材81と、押圧部材81を支持する支持部81aと、押圧部材81(板押圧部82および膜押圧部83)を受圧部材71に対し進退させる進退動機構84と、を有している。
【0042】
板押圧部82および膜押圧部83は、樹脂等で一体に形成されている。膜押圧部83は、受圧膜部77aに対応(対向)し正面から見て円環状に形成されている。膜押圧部83の先端部は、断面半円状に形成され、この部分が受圧膜部77aに対し離接する。また、板押圧部82は、受圧板部78に対応(対向)し正面から見て円状に形成されている。板押圧部82の先端部は、膜押圧部83に囲まれた平坦面の部分で形成され、この部分が受圧板部78に対し離接する。すなわち、膜押圧部83に対し板押圧部82が凹状に窪入形成されている。
【0043】
具体的には、板押圧部82の先端部(平坦面)と膜押圧部83の先端部とは、受圧板部78に先行し膜押圧部83によって受圧膜部77aが押圧され、且つ受圧膜部77aに先行し板押圧部82が受圧板部78を押圧解除する位置関係となっている。特に、この位置関係では、板押圧部82が受圧板部78から離れ弁体67が閉塞してから、膜押圧部83が受圧膜部77aから離れる。
【0044】
進退動機構84は、特に詳細は図示しないが、例えばDCモーター86と、DCモーター86に接続されたリードネジ機構87で構成されている。そして、リードネジ機構87の雌ネジ部材から延びるアーム88が、押圧部材81の支持部81aに連結されている。また、押圧部材81は、弁駆動装置37のベースフレーム(図示省略)にスライド自在に支持されている。そして、進退動機構84は、押圧部材81を、受圧部材71を押圧する押圧位置と受圧部材71から離間する押圧解除位置との間で進退させる。
【0045】
制御部18により、DCモーター86が正転すると、アーム88を介して押圧部材81が前進する。前進する押圧部材81は、先に膜押圧部83が受圧膜部77aに接触して(
図4A参照)これを押圧する。続いて板押圧部82が受圧板部78に接触して(
図4B参照)これを押圧する。さらに、押圧部材81が前進し押圧位置に達して停止する(
図4C参照)。このようにして、前進する押圧部材81が受圧部材71を押圧し、更に受圧板部78が作動部材72を押圧することで、自己封止弁36の弁体67が強制的に開弁される。
【0046】
この状態から、制御部18より、DCモーター86が逆転すると、アーム88を介して押圧部材81が後退する。後退する押圧部材81は、先に板押圧部82が受圧板部78から離間(押圧解除)する(
図4D参照)。続いて膜押圧部83が受圧膜部77aから離間(押圧解除)する(
図4E参照)。さらに、押圧部材81が後退し押圧解除位置に達して停止する。これにより、後退する押圧部材81が受圧部材71から離れるため、弁体バネ75の付勢力により、弁体67が閉弁される。この場合、板押圧部82が受圧板部78から離れ弁体67が閉塞するタイミングで、膜押圧部83が受圧膜部77aからが離れることになる。
【0047】
また、本実施形態の制御部18は、DCモーター86を低速で正転させ、正転時に比べて高速で逆転させるようにしている。すなわち、制御部18は、押圧部材81を低速で前進させると共に高速で後退させる。これにより、自己封止弁36の開弁動作はゆっくり行われ、閉弁動作は急速に行われる。なお、弁体67の閉塞動作は、インクの流れ方向と同方向となるため、インクチューブ32側にインクの脈動が発生することはない。
【0048】
図5は、弁駆動装置37が駆動したときの、自己封止弁36の二次液室64の圧力変化を表している。同図に示すように、膜押圧部83が受圧膜部77aに接触した状態(T1:
図4A参照)から二次液室64の圧力が上昇を開始する。続いて板押圧部82が受圧板部78に接触し、弁体67が開弁される。ここで、インク加圧部35の圧力が二次液室64に作用し、二次液室64の圧力が一定の圧力となる。また、この間に押圧部材81が押圧位置に達する(
図4C参照)。この状態で所定時間が経過し(加圧クリーニング)、押圧部材81が後退を開始して板押圧部82が受圧板部78から離れると(T2:
図4D参照)、相前後して弁体67が開弁し、二次液室64の圧力は急速に降下してゆく。そして、膜押圧部83が受圧膜部77aから離れたところで(T3:
図4E参照)、二次液室64はほぼ元の圧力に復帰する。
【0049】
図5中の仮想線(点線)は、エアバックを用いた上記の従来技術の場合であり、この点線で示すように、二次液室64の圧力が元の圧力に復帰するのに時間を要するものとなっている。また、
図5中の1点鎖線は、この圧力まで二次液室64の圧力が降下することにより、液滴吐出ヘッド13に液だれが生じない、とする目安の圧力(P1)である。すなわち、このP1の位置まで二次液室64の圧力が降下すれば、ワイピングへの移行が可能となる。
【0050】
なお、板押圧部82と膜押圧部83とを別体としてもよい。かかる場合に、板押圧部82に対し膜押圧部83をスライド自在とし、バネ等で板押圧部82に対し膜押圧部83を前進方向に付勢する構造とすることが好ましい。もっとも、板押圧部82と膜押圧部83とを別体とし、それぞれに進退動機構84を設ける構造としてもよい。また、進退動機構84は、ソレノイドや複動シリンダーで構成することも可能である。さらに、進退動機構84は、リードネジ機構87に代えて、リンク機構を設けるものであってもよい。
【0051】
[メンテナンス動作]
ここで、
図6Aないし
図6Fを参照して、制御部18による液滴吐出ヘッド13の加圧クリーニングを含む一連のメンテナンス動作について説明する。印刷モードからメンテナンスモードに移行すると、制御部18は、ヘッド移動機構24を駆動して液滴吐出ヘッド13をホーム位置に移動させると共に、上記の駆動機構46を駆動しヘッドキャップ44を液滴吐出ヘッド13のノズル面13aに近づける(
図6A参照)。次に、制御部18は、インク加圧部35を駆動しインクチューブ32内のインクを加圧すると共に、弁駆動装置37を正転駆動(DCモーター86が正転)する。
【0052】
弁駆動装置37が正転駆動すると、自己封止弁36が開弁し、インクが液滴吐出ヘッド13に勢い良く送られる。これにより、液滴吐出ヘッド13のノズル13bからインクが勢い良く吐出され、また吐出されたインクはヘッドキャップ44に受けられる(
図6B参照)。このようにして、液滴吐出ヘッド13のノズル13bからインクの流れに乗るようにして気泡等が排除され、液滴吐出ヘッド13がクリーニングされる。所定時間に亘るインク吐出(クリーニング)が終了すると、制御部18は、インク加圧部35の駆動を停止すると共に、二次液室64が大気圧に戻るタイミングに合わせて、弁駆動装置37を逆転駆動(DCモーター86が逆転)する。弁駆動装置37が逆転駆動すると、自己封止弁36が閉弁する(
図6Cおよび
図6D参照)。
【0053】
この自己封止弁36の閉弁動作において、受圧部材71から押圧部材81が離れる(押圧解除)が、その際、受圧板部78から板押圧部82が離れた後(
図6C参照)、受圧膜部77aから膜押圧部83が離れる(
図6D参照)。このため、二次液室64に残圧が生ずることがなく、二次液室64は押圧部材81の押圧解除に追従するようにして大気圧と同圧となる。したがって、押圧部材81が押圧解除位置に移動し、一連の加圧クリーニング動作が終了したときに、液滴吐出ヘッド13に液だれ(にじみ出る)等が生ずることがない。
【0054】
そこで、加圧クリーニング動作が終了したら、時間をおかずにワイピング動作に移行する。ワイピングでは、制御部18は、駆動機構46を駆動してワイパー45を払拭位置に移動させ、続いてヘッド移動機構24を駆動して液滴吐出ヘッド13をワイパー45を中心に短く往復動させる(
図6E参照)。これにより、液滴吐出ヘッド13のノズル面13aがワイパー45により相対的に払拭される。最後に、液滴吐出ヘッド13を駆動し、ヘッドキャップ44に向かって捨て吐出(フラッシング)を行う(
図6F参照)。このようにして、制御部18による液滴吐出ヘッド13のメンテナンスが実施される。
【0055】
[作用・効果]
以上のように、本実施形態によれば、受圧部材71に対し押圧部材81が押圧解除する際に、受圧板部78から板押圧部82が離れた後、受圧膜部77aから膜押圧部83が離れるようにしている。すなわち、板押圧部82が受圧板部78から離れ弁体67が閉塞してから、膜押圧部83が受圧膜部77aからが離れるようにしている。このため、押圧部材81が受圧部材71から離れる過程で、受圧膜部77aが二次液室64の外側に向かって撓むことがない。したがって、弁体67を閉塞したときに、二次液室64に残圧が生ずることがなく、自己封止弁36を閉弁した直後に生ずる液滴吐出ヘッド13からの液だれを有効に防止することができる。
【0056】
このことはまた、自己封止弁36の閉弁直後に、ワイピング動作への移行を可能にしている。すなわち、加圧クリーニングの終了からワイピング動作への移行を短時間で行うことができる。これにより、ノズル13bに気泡が侵入する等の性状が変化する前にワイピングを実施することができ、液滴吐出ヘッド13のメンテナンスを短時間で効果的に実施することができる。
【0057】
また、板押圧部82および膜押圧部83を低速で前進させると共に、高速で後退させるようにしている。これにより、弁体67を短時間で閉塞することができ、この点においても、液滴吐出ヘッド13のメンテナンスを短時間で実施することができる。