特許第6607105号(P6607105)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6607105回路基板及び半導体モジュール、回路基板の製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6607105
(24)【登録日】2019年11月1日
(45)【発行日】2019年11月20日
(54)【発明の名称】回路基板及び半導体モジュール、回路基板の製造方法
(51)【国際特許分類】
   H01L 23/36 20060101AFI20191111BHJP
   H01L 25/07 20060101ALI20191111BHJP
   H01L 25/18 20060101ALI20191111BHJP
   H01L 23/12 20060101ALI20191111BHJP
   H01L 23/28 20060101ALI20191111BHJP
【FI】
   H01L23/36 C
   H01L25/04 C
   H01L23/12 Q
   H01L23/12 D
   H01L23/28 B
【請求項の数】5
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2016-56519(P2016-56519)
(22)【出願日】2016年3月22日
(65)【公開番号】特開2017-174875(P2017-174875A)
(43)【公開日】2017年9月28日
【審査請求日】2018年9月26日
(73)【特許権者】
【識別番号】000006264
【氏名又は名称】三菱マテリアル株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100101465
【弁理士】
【氏名又は名称】青山 正和
(72)【発明者】
【氏名】大開 智哉
(72)【発明者】
【氏名】大井 宗太郎
【審査官】 河合 俊英
(56)【参考文献】
【文献】 特開平06−177280(JP,A)
【文献】 特開平07−135271(JP,A)
【文献】 特開昭62−252159(JP,A)
【文献】 特開2015−028998(JP,A)
【文献】 特開2011−077286(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 23/36
H01L 23/12
H01L 23/28
H01L 25/07
H01L 25/18
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
絶縁層の一方の面に前記絶縁層に接合された第一金属層と、該第一金属層に接合された第二金属層との積層構造からなる金属層が形成されるとともに、該第二金属層の周縁部の少なくとも一部に、前記第二金属層を厚さ方向に貫通する貫通部が形成され、該貫通部は、前記第二金属層の側面から離れた位置に形成され両端の開口が露出状態に配置されるとともに前記金属層の周縁部において、(1)又は(2)の状態とされていることを特徴とする回路基板。
(1)前記第二金属層の周縁部を薄肉にしてなる薄肉部が形成されるとともに、該薄肉部と前記第一金属層との間に隙間が形成され、前記隙間に前記貫通部の一方の開口が露出状態に配置されている
(2)前記第二金属層の側面部が前記第一金属層の側面よりも面方向に張り出しており、前記貫通部の前記第二金属層の表面とは反対側の開口が前記第二金属層と前記絶縁層との間に形成された隙間に開口している
【請求項2】
前記(2)の場合において、前記貫通部は、前記金属層の表面とは反対側の開口の一部が前記第一金属層により閉塞状態とされていることを特徴とする請求項記載の回路基板。
【請求項3】
請求項1又は2記載の前記回路基板に半導体素子が搭載されるとともに、該半導体素子を封止した状態で前記回路基板にモールド樹脂が設けられており、該モールド樹脂の一部が前記貫通部内に充填されていることを特徴とする半導体モジュール。
【請求項4】
絶縁層の表面に前記絶縁層に接合された第一金属層と、該第一金属層に接合された第二金属層との積層構造からなる金属層が形成されてなる回路基板を製造する方法であって、前記第二金属層となる第二金属板の周縁部の少なくとも一部の厚さを該第二金属板の中央部分より小さくして薄肉部を形成するとともに、該薄肉部に両端が開口するように貫通部を厚さ方向に形成しておき、前記貫通部の両端の開口を露出させた状態で前記第二金属板を前記絶縁層に接合された第一金属板からなる前記第一金属層に接合して前記金属層を形成することを特徴とする回路基板の製造方法。
【請求項5】
絶縁層の一方の面に、第一金属板の少なくとも一つの側面に対して第二金属板の側面を面方向に張り出させた状態としてこれら第一金属板及び第二金属板を積層することにより、前記第二金属板と前記絶縁層との間に隙間を形成するとともに、この隙間に開口するように前記第二金属板に厚さ方向に貫通部を形成しておき、これら絶縁層、第一金属板、第二金属板を前記貫通部の前記第二金属板の表面とは反対側の開口が前記第二金属板と前記絶縁層との間に形成された隙間に開口する状態で接合することにより、前記絶縁層の一方の面に、前記第一金属板及び第二金属板が積層されてなる金属層を形成することを特徴とする回路基板の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、パワーモジュール等に用いられる回路基板及び半導体モジュール、回路基板の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
パワーモジュールには、窒化アルミニウムを始めとするセラミックス基板の一方の面に、回路層を形成するための金属板が接合されるとともに、他方の面に放熱層を形成するための金属板が接合されたパワーモジュール用基板が用いられる。そして、このパワーモジュール用基板の放熱層に、アルミニウム合金等からなるヒートシンクが接合され、回路層の上には、はんだ材を介してパワー素子等の半導体素子が搭載され、ヒートシンク付きパワーモジュール用基板が製造される。
このようなパワーモジュール用基板において、回路層にはんだ付けされた半導体素子の接合信頼性確保のために、エポキシ樹脂等によって、パワーモジュール用基板及び半導体素子を樹脂封止することがある。この樹脂とパワーモジュール用基板には、実使用環境における熱サイクル等により応力が生じ、樹脂とパワーモジュール用基板の密着性が十分でないと、樹脂剥離が生じ、半導体素子下のはんだ層やセラミックス基板の信頼性への悪影響が生じる。
【0003】
そこで、例えば特許文献1では、半導体素子を接合するパワーモジュール用基板の回路層表面にディンプル加工を施し、その上から樹脂をモールドすることにより、樹脂密着性の向上を図っている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2007−329362号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
このようなパワーモジュール用基板においては、樹脂との密着性を確保することが非常に重要となるが、特許文献1の回路層表面にディンプル加工するだけでは、回路層の側面部における樹脂密着性が十分には得られない。
【0006】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたもので、回路層などの金属層の特に側面部における樹脂密着性を向上させ、長期的に信頼性の優れた半導体モジュールを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の回路基板は、絶縁層の一方の面に前記絶縁層に接合された第一金属層と、該第一金属層に接合された第二金属層との積層構造からなる金属層が形成されるとともに、該第二金属層の周縁部の少なくとも一部に、前記第二金属層を厚さ方向に貫通する貫通部が形成され、該貫通部は、前記第二金属層の側面から離れた位置に形成され両端の開口が露出状態に配置されるとともに前記金属層の周縁部において、(1)又は(2)の状態とされている。(1)前記第二金属層の周縁部を薄肉にしてなる薄肉部が形成されるとともに、該薄肉部と前記第一金属層との間に隙間が形成され、前記隙間に前記貫通部の一方の開口が露出状態に配置されている(2)前記第二金属層の側面部が前記第一金属層の側面よりも面方向に張り出しており、前記貫通部の前記第二金属層の表面とは反対側の開口が前記第二金属層と前記絶縁層との間に形成された隙間に開口している
【0008】
この回路基板をモールド樹脂により樹脂封止すると、貫通部の両端の開口が露出している場合には、そのモールド樹脂が貫通部の両端で接続されるように貫通部に充填され、また、貫通部の側部が直径より小さい幅で溝状に開口している場合には、その細幅の開口から貫通部の内部に充填される。したがって、いずれの場合にも、モールド樹脂が金属層の周縁部に食い込んだ状態となり、金属層に強固に保持され、樹脂密着性が向上する。
【0009】
た、前記(2)の場合において、前記貫通孔は、前記回路層の表面とは反対側の開口の一部が前記第一金属層により閉塞状態とされているものとしてもよい。
貫通孔の一部を第一金属層により閉塞した状態とすることにより、金属層と絶縁層との接合面積を広く確保することができ、回路基板としての熱伝達性を良好に確保することができる。
【0010】
本発明の半導体モジュールは、前記回路基板に半導体素子が搭載されるとともに、該半導体素子を封止した状態で前記回路基板にモールド樹脂が設けられており、該モールド樹脂の一部が前記貫通部内に充填されている。
【0011】
本発明の回路基板の製造方法は、絶縁層の表面に前記絶縁層に接合された第一金属層と、該第一金属層に接合された第二金属層との積層構造からなる金属層が形成されてなる回路基板を製造する方法であって、前記第二金属層となる第二金属板の周縁部の少なくとも一部の厚さを該第二金属板の中央部分より小さくして薄肉部を形成するとともに、該薄肉部に両端が開口するように貫通部を厚さ方向に形成しておき、前記貫通部の両端の開口を露出させた状態で前記第二金属板を前記絶縁層に接合された第一金属板からなる前記第一金属層に接合して前記金属層を形成する。
【0012】
金属層の一部に薄肉部を形成して貫通部を形成することにより、回路基板において貫通部の両端の開口を露出状態とすることができ、モールド樹脂を強固に保持することが可能になる。
【0013】
本発明の回路基板の製造方法は、絶縁層の一方の面に、第一金属板の少なくとも一つの側面に対して第二金属板の側面を面方向に張り出させた状態としてこれら第一金属板及び第二金属板を積層することにより、前記第二金属板と前記絶縁層との間に隙間を形成するとともに、この隙間に開口するように前記第二金属板に厚さ方向に貫通部を形成しておき、これら絶縁層、第一金属板、第二金属板を前記貫通部の前記第二金属板の表面とは反対側の開口が前記第二金属板と前記絶縁層との間に形成された隙間に開口する状態で接合することにより、前記絶縁層の一方の面に、前記第一金属板及び第二金属板が積層されてなる金属層を形成する。
【0014】
金属層を第一金属板と第二金属板との積層構造とすることにより、絶縁層との間の隙間を容易に形成して、貫通部の両端の開口を露出状態とすることができる。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、金属層の周縁部の少なくとも一部に貫通部を形成し、その貫通部の両端の開口が露出した状態とし、又は直径より小さい幅で側部が金属層の側面に溝状に開口した状態としたことにより、樹脂封止時にモールド樹脂の一部が貫通部に食い込むように充填され、回路基板とモールド樹脂との密着性を金属層の側面部において特に向上させることができ、半導体素子の良好な接合性を維持して、長期的に信頼性の高い半導体モジュールを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】本発明の第1実施形態に係る回路基板の縦断面図である。
図2図1の回路基板の回路層側から視た平面図である。
図3図1の回路基板を用いた半導体モジュールの縦断面図である。
図4図3の半導体モジュールにおける要部の拡大断面図である。
図5図1の回路基板の製造方法を工程順に示す縦断面図である。
図6図5に示す製造方法とは別の製造方法を工程順に示す縦断面図である。
図7】本発明の第2実施形態に係る回路基板の縦断面図である。
図8図7の回路基板を用いた半導体モジュールの縦断面図である。
図9図8の半導体モジュールにおける要部の拡大断面図である。
図10】回路層に設けられる貫通部の変形例を示す要部の斜視図である。
図11】貫通部のさらなる変形例を示す要部の斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明をパワーモジュール及びパワーモジュール用基板に適用した実施形態について、図面を参照しながら説明する。
図1及び図2に示す第1実施形態のパワーモジュール用基板10は、絶縁層であるセラミックス基板20と、その一方の面に形成された回路層30と、他方の面に形成された放熱層50とを備える。そして、図3に示すように、このパワーモジュール用基板10の回路層30の表面に半導体素子60が搭載され、半導体素子60にはリードフレーム65が接合され、さらに半導体素子60とパワーモジュール用基板10とリードフレーム65とをエポキシ樹脂等からなるモールド樹脂70により封止することで、パワーモジュール100が構成される。また、パワーモジュール100は、ヒートシンク110の上面に例えば熱伝達グリスを介して接触させ、クランプ(図示略)等により押し付けて使用する。
【0018】
パワーモジュール用基板10を構成するセラミックス基板20は、例えばAlN(窒化アルミニウム)、Si(窒化珪素)等の窒化物系セラミックス、もしくはAl(アルミナ)等の酸化物系セラミックスを用いることができ、厚さは0.2mm〜1.5mmの範囲内に設定される。
【0019】
回路層30は、セラミックス基板20の一方の面に接合された第一金属層31と、その第一金属層31のセラミックス基板20とは反対面に接合された第二金属層32とを備える。これら第一金属層31及び第二金属層32は純アルミニウム又はアルミニウム合金、もしくは銅又は銅合金からなる金属板をセラミックス基板20に接合することにより形成される。例えば、第一金属層31として、純度99.99質量%以上のアルミニウム(いわゆる4Nアルミニウム)からなる厚さが0.1mm〜3.0mmの範囲内に設定された第一金属板31´が用いられる。第二金属層32としては、純度99.90質量%未満のアルミニウムからなる厚さが0.1mm〜3.0mmの範囲内に設定された第二金属板32´が用いられ、これら金属板31´,32´及びセラミックス基板20相互間をろう材を用いて接合することにより回路層30が形成されている。あるいは、第二金属層32に銅又は銅合金からなる第二金属板を用いる場合には、第一金属板と固相拡散接合によって接合してもよい。
【0020】
そして、第二金属層32における半導体素子60の搭載領域Sを避けた部分に、第二金属層32を厚さ方向に貫通する複数の貫通孔40が形成されている。図3の符号61は半導体素子60を固着するはんだ層を示しており、半導体素子60の搭載領域Sとは、このはんだ層61の形成領域までを含むものとする。
また、第二金属層32の周縁部には、第一金属層31と接合される側の面に、薄肉部33を形成するための段部34が形成されており、このため、第一金属層31との間に隙間gが形成されている。そして、第二金属層32の貫通孔40の一部は、この隙間gに開口するように形成されている。
【0021】
放熱層50は、セラミックス基板20の回路層30とは反対面に金属板50´を接合することにより形成されており、その金属板50´としては、純アルミニウム又はアルミニウム合金が用いられる。例えば、純度99.99質量%以上のアルミニウム(いわゆる4Nアルミニウム)からなる厚さが0.1mm〜3.0mmの範囲内に設定された金属板40´が用いられ、この金属板50´をセラミックス基板20にろう材を用いて接合することにより放熱層50が形成されている。
【0022】
そして、回路層30の第二金属層32の前述した搭載領域Sに半導体素子60がはんだ付け等により接合され、その半導体素子60にリードフレーム65がはんだ等を用いて接合され、パワーモジュール用基板10及び半導体素子60、リードフレーム65がモールド樹脂70により樹脂封止され、パワーモジュール100が形成される。
このモールド樹脂70は、第二金属層32に貫通孔40が形成されていることにより、この貫通孔40内にも充填されており、図4に拡大して示したように、第二金属層32の周縁部においては、第一金属層31との間の隙間gにも充填され、モールド樹脂70が貫通孔40の両端で接続された状態となっている。
【0023】
このように構成されるパワーモジュール用基板10は、回路層30及び放熱層50を構成する各金属板31´,32´,50´と、セラミックス基板20とを用意して、セラミックス基板20と回路層30となる金属板31´,32´及び放熱層50となる金属板50´とを接合することにより製造される。
【0024】
このとき、第一金属層31となる金属板31´と第二金属層32となる金属板32´とはいずれも同じ平面積のものでよいし、異なる平面積のものでもよい。そして、図5(a)(b)に示すように、第二金属層32となる金属板32´の周縁部をプレス成形によって厚さが小さくなるように押し潰して薄肉部33を形成するとともに、複数の貫通孔40のうちの一部が、この薄肉部33の部分に配置されるように形成する。薄肉部33と貫通孔40の形成順序はいずれでもよく、図5(a)の鎖線で示すように薄肉部33を形成した後、同図(b)に示すように貫通孔40を形成してもよいし、逆でもよい。
また、図示例では、薄肉部33においては、この薄肉部33を形成したときの段部34にまたがるように貫通孔40が形成されており、貫通孔40は、第一金属板31´と接合される面と、薄肉部33の表面との両方にまたがって開口している。
【0025】
次に、セラミックス基板20に第一金属板31´及び放熱層用金属板50´を例えばAl−Si系ろう材を用いて接合して、セラミックス基板20に第一金属層31及び放熱層50を形成しておき、図5(c)に示すように、第一金属層31に第二金属板32´をろう材80を用いて接合する。この場合、第二金属板32´がアルミニウム又はアルミニウム合金からなる場合は、ろう材80として例えばMg含有ろう材(Al−Si−Mgろう材)を介して積層して、これらをろう付けする。Mg含有ろう材はフラックスを使用しないので、貫通孔40を溶融ろう材が埋めてしまうことがない。または、ろう材80として、JIS3003アルミニウム合金からなるアルミニウム合金層の両面に、Al−Si−Mgろう材層をクラッドしてなる両面クラッド材を用いてもよい。
第二金属板32´が銅又は銅合金からなる場合は、ろう材80を用いずに、固相拡散接合するとよい。
【0026】
このようにして第二金属板32´を接合することにより、セラミックス基板20の一方の面側に、積層状態の第一金属層31及び第二金属層32からなる回路層30が形成され、他方の面側に放熱層50が形成される。また、回路層30において、半導体素子60の搭載領域S以外の部分に複数の貫通孔40が形成され、そのうち、回路層30の周縁部においては、第二金属層32の段部34により、第一金属層31と第二金属層32との間に隙間gが形成され、その隙間gに貫通孔40の一方の開口が露出状態に配置される。
【0027】
次いで、回路層30の半導体素子搭載領域Sに半導体素子60をはんだ付けし、必要なリードフレーム65等を接続した後、放熱層50におけるセラミックス基板20との接合面とは反対面を除き、全体をモールド樹脂70により封止する。回路層30の第二金属層32には貫通孔40が形成されているため、モールド樹脂70は各貫通孔40内にも充填される。この場合、第二金属層32の周縁部では、貫通孔40が裏面の隙間gに開口しているため、モールド樹脂70が第二金属層32の表裏で貫通孔40を介して連結された状態となる。このため、モールド樹脂70が第二金属層32に強固に食いついた状態となって密着性が高められる。
このようにして製造されたパワーモジュール100は、露出している放熱層50の表面がヒートシンク110に当接され、クランプ等によって押し付け固定された状態に接合される。
【0028】
このパワーモジュール100は、使用環境において熱サイクル等が作用するが、モールド樹脂70が第二金属層32表面の貫通孔40に充填されているだけでなく、その周縁部の貫通孔40では両端で接続状態とされている。このため、この貫通孔40を介してモールド樹脂70が第二金属層32の周縁部に強固に食いついた状態となっているため剥がれにくく、長期的信頼性を向上させることができる。
なお、第二金属層32の貫通孔40の一方(回路層30の表面とは反対側)の開口を、第一金属層31により一部閉塞した状態とし、第二金属層32の段部34により側方に開放状態としていることにより、第一金属層31を広く形成することが可能であり、パワーモジュール用基板10としての熱伝達性を良好に維持することができる。
【0029】
このパワーモジュール100の製造方法において、図5(c)に示すように、セラミックス基板20に第一金属層31及び放熱層50を形成しておき、その第一金属層31に第二金属板32´を接合して、図1に示すパワーモジュール用基板10を形成し、その後に、半導体素子60を搭載してモールド樹脂70で封止し、最後にヒートシンク110に取り付けたが、以下の方法としてもよい。
【0030】
すなわち、図6(a)に示すように、セラミックス基板20に第一金属層31及び放熱層50を形成しておく。そして、第二金属板32´及びヒートシンク110がアルミニウム又はアルミニウム合金からなる場合は、図6(c)に示すように、ろう材80を介して第二金属板32´及びヒートシンク110を積層し、これらを一括して接合し、第一金属層31の上に第二金属層32、放熱層50にヒートシンク110を接合する。前述したように、ろう材80に、JIS3003アルミニウム合金からなるアルミニウム合金層の両面に、Al−Si−Mgろう材層をクラッドしてなる両面クラッド材を用いてもよい。また、第二金属板32´及びヒートシンク110が銅又は銅合金からなる場合は、ろう材80を用いずに、第一金属層と第二金属板32´、放熱層50とヒートシンク110とを固相拡散接合するとよい。
そして、図6(c)に鎖線で示すように、回路層30に半導体素子60を搭載しリードフレーム65等を接続した後、ヒートシンク110の上方の部分を一体でモールド樹脂70で封止することにより、パワーモジュール101を形成する。
【0031】
図7から図9は、本発明の第2実施形態を示している。この第2実施形態において第1実施形態と共通要素には同一符号を付して説明を簡略化する。
このパワーモジュール用基板11においては、回路層30が第一金属層31と第二金属層35との積層構造とされている点は第1実施形態と同様であるが、図7に示すように、第二金属層35の平面積が第一金属層31の平面積よりも大きく形成されていることにより、第二金属層35の側面部が第一金属層31の側面より面方向に張り出しており、周縁部の貫通孔40は、その張り出し部36に配置されるように形成されている。この図7に示す例では、第二金属層35の周縁部の貫通孔40は、その一部(例えば半分)が第一金属層31により閉塞された状態とされ、残りの部分(半分)が隙間gに開口している。
【0032】
このパワーモジュール用基板11を製造するには、回路層30については、第二金属層35となる金属板に貫通孔40を形成して、第一金属層31となる金属板の上に重ね合わせて、第二金属層35となる金属板の周縁部を第一金属層31となる金属板の側面から面方向に張り出した状態として接合すればよい。
そして、このパワーモジュール用基板11に半導体素子60をはんだ付けしてリードフレーム65等を取り付けた後、モールド樹脂70により封止すると、図8及び図9に示すように、モールド樹脂70が第二金属層35の貫通孔40内に充填され、第二金属層35の周縁部では第二金属層35の表裏で貫通孔40を介して接続された状態となる。したがって、モールド樹脂70が第二金属層35に強固に保持された状態となる。
なお、この第2実施形態においても、貫通孔40を第二金属層35において、第一金属板31´に接合される面と張り出し部36の両方にまたがるように開口しており、第一金属層31により貫通孔40の開口の一部が閉塞された状態となっているが、このようにすることにより、第一金属層31を広く形成することができ、この広い第一金属層31により回路層30として熱伝達を良好にすることができる。もちろん、第二金属層35の周縁部の貫通孔40を第一金属層31の側面から離れた位置で第二金属層35の張り出し部36のみに形成してもよい。
【0033】
前述した両実施形態においては、第二金属層32,35に貫通孔40を形成したが、この貫通孔40に代えて、図10又は図11に示す溝状の貫通部としてもよい。
図10に示す貫通部41は、横断面ほぼ円形の孔部41aの一側部が第二金属層37の側面にその厚さ方向に沿って開口したものである。その開口41bの幅Wは、孔部41aの直径dより小さく形成されている。
一方、図11に示す貫通部42は、横断面ほぼ円形の孔部42aの一側部が第二金属層37の側面よりも外方に配置されるように形成されていることにより、開口42bが第二金属層37の側面に厚さ方向に沿って形成されたものであり、図10の貫通部41と同様に、開口42bの幅Wは孔部42aの直径dより小さく形成されている。
【0034】
これら図10及び図11のいずれの貫通部41,42においても、モールド樹脂により封止されると、モールド樹脂が貫通部41,42内に充填され、この貫通部41,42が内部の孔部41a,42aの直径dよりも開口41b,42bの幅Wが小さいことから、モールド樹脂が第二金属層37に食い込んだ状態となり、第二金属層37に強固に保持される。
なお、これら図10及び図11の貫通部41,42の場合、第二金属層37の表面の開口と、その側面の開口41b、42bが露出していれば、他方(第一金属層側)の開口は必ずしも露出状態とされていなくてもよい。
また、この図10及び図11における貫通部41,42と、第1実施形態及び第2実施形態における貫通孔40とを総合して、本発明では貫通部と称している。
【0035】
なお、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において種々の変更を加えることが可能である。
いずれの実施形態も回路層に貫通部を形成したものとして示したが、放熱層に貫通部を設ける場合も含むものとする。本発明においては、回路層、放熱層を含めて金属層と称す。
また、第一金属層と第二金属層との積層構造の回路層に貫通部を形成する例としたが、第1実施形態のように第二金属層の周縁部に段部により薄肉部を形成する場合、あるいは、図10及び図11に示す例のように溝状の貫通部を形成する場合には、第一金属層を省略することも可能である。
【符号の説明】
【0036】
10,11 パワーモジュール用基板
30 回路層
20 セラミックス基板
31 第一金属層
31´ 第一金属板
32,35,37 第二金属層
32´ 第二金属板
33 薄肉部
34 段部
36 張り出し部
50 放熱層
40 貫通孔
41,42 貫通部
41a,42a 孔部
41b,42b 開口
60 半導体素子
61 はんだ層
65 リードフレーム
70 モールド樹脂
100 パワーモジュール
110 ヒートシンク
S 半導体素子搭載領域
g 隙間
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11