(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
従来の上記特許文献1〜3に記載された添加剤により、錫又は錫合金のめっき液の均一電着性は改善されてきたが、近年、めっき皮膜に対する品質への要求は高まり、更なる均一電着性の向上が求められている。またフリップチップ実装において半導体デバイスを接続するために基板に設けられるバンプ電極をめっき法により形成する場合、リフロー処理後のバンプの内部にボイドと呼ばれる空隙が形成されることがあり、接合不良を生じるおそれがあるこのボイドを形成しないことが求められている。しかしながら、均一電着性を向上することとボイドの発生を抑制することとは相反する関係になっている。即ち、均一電着性は、電極面の分極抵抗を大きくすることで改善される一方、ボイドの発生は、カソードの過電圧を小さくすることで抑制される。近年、両方の特性を満足させるめっき液の添加剤が求められてきた。
【0007】
本発明の目的は、均一電着性に優れ、かつバンプ電極を形成したときにボイドの発生を抑制する錫又は錫合金のめっき液を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の第1の観点は、(A)少なくとも第一錫塩を含む可溶性塩、(B)有機酸及び無機酸から選ばれた酸又はその塩、(C)添加剤を含むめっき液である。その特徴ある点は、前記添加剤が次の一般式(1)で表される1又は2以上の芳香族環を含むスルホニウム塩を含
み、前記可溶性塩の前記めっき液中での含有量が30〜100g/Lであり、前記有機酸及び無機酸から選ばれた酸又はその塩の前記めっき液中での含有量が80〜300g/Lであり、前記スルホニウム塩の前記めっき液中での含有量が0.1〜10g/Lであることにある。
【0009】
【化1】
【0010】
ただし、式(1)中、R
1、R
2は同一又は異なってもよく、フェニル基、ヒドロキシフェニル基、トリル基、水素原子、C
nH
2n+1;(n=1〜5)を示し、Phはフェニル基を示し、Xはハロゲンを示す。
【0011】
本発明の第2の観点は、第1の観点に基づく発明であって、前記添加剤が次の一般式(2)で表されるノニオン系界面活性剤を更に含むめっき液である。
【0012】
【化2】
【0013】
ただし、式(2)中、R
3、R
4は、下記の式(A)で示される基であり、 Y
1、Y
2は、単結合、−O−、−COO−及び−CONH−から選ばれる基であり、 Zはベンゼン環又は2,2−ジフェニルプロパンを表す。 式(A)中、nは2又は3を示す。mは1〜15の整数を示す。
【0014】
【化3】
【0015】
本発明の第3の観点は、第1又は第2の観点に基づく発明であって、前記添加剤が錯化剤及び/又は酸化防止剤を更に含むめっき液である。
【発明の効果】
【0016】
本発明の第1の観点のめっき液では、スルホニウム塩を添加剤として使用することにより、外観が良好で幅広い電流密度範囲で均一電着性を改善することができ、しかもバンプ電極を形成したときにボイドの発生を抑制でき、信頼性の高いめっき皮膜を形成できる。この結果、狭ピッチや複雑な配線パターンに高品質で対応し得る製品を製造することができる。
【0017】
本発明の第2の観点のめっき液では、上記式(2)で表されるノニオン系界面活性剤を更に含むことにより、バンプ電極を形成したときにボイドの発生を抑制できるとともに、めっき皮膜の厚さばらつきをより一層低減することができる。
【0018】
本発明の第3の観点のめっき液では、錯化剤及び/又は酸化防止剤を更に含むことにより、次の効果を奏する。錯化剤は銀などの貴金属を含むめっき液で貴金属イオンなどを浴中で安定化させるとともに析出合金組成を均一化する。また酸化防止剤は可溶性第一錫塩の第二錫塩への酸化を防止する。
【発明を実施するための形態】
【0019】
次に本発明を実施するための形態を説明する。
【0020】
本発明のめっき液は、錫又は錫合金のめっき液であって、(A)少なくとも第一錫塩を含む可溶性塩、(B)有機酸及び無機酸から選ばれた酸又はその塩、(C)添加剤を含む。この添加剤は次の一般式(1)で表される1又は2以上の芳香族環を含むスルホニウム塩を含む。上記可溶性塩は、第一錫塩と、この第一錫塩及び銀、銅、ビスマス、ニッケル、アンチモン、インジウム、亜鉛からなる群から選ばれた金属の塩の混合物とのいずれかよりなる。
【0022】
ただし、式(1)中、R
1、R
2は同一又は異なってもよく、フェニル基、ヒドロキシフェニル基、トリル基、水素原子、C
nH
2n+1;(n=1〜5)を示し、Phはフェニル基を示し、Xはハロゲンを示す。
【0023】
本発明の錫合金は、錫と、銀、銅、ビスマス、ニッケル、アンチモン、インジウム、亜鉛より選ばれた所定金属との合金であり、例えば、錫−銀合金、錫−銅合金、錫−ビスマス合金、錫−ニッケル合金、錫−アンチモン合金、錫−インジウム合金、錫−亜鉛合金の2元合金、錫−銅−ビスマス、錫−銅−銀合金などの3元合金が挙げられる。
【0024】
従って、本発明の可溶性塩(A)はめっき液中でSn
2+、Ag
+、Cu
+、Cu
2+、Bi
3+、Ni
2+、Sb
3+、In
3+、Zn
2+などの各種金属イオンを生成する任意の可溶性塩を意味し、例えば、当該金属の酸化物、ハロゲン化物、無機酸又は有機酸の当該金属塩などが挙げられる。
【0025】
金属酸化物としては、酸化第一錫、酸化銅、酸化ニッケル、酸化ビスマス、酸化アンチモン、酸化インジウム、酸化亜鉛などが挙げられ、金属のハロゲン化物としては、塩化第一錫、塩化ビスマス、臭化ビスマス、塩化第一銅、塩化第二銅、塩化ニッケル、塩化アンチモン、塩化インジウム、塩化亜鉛などが挙げられる。
【0026】
無機酸又は有機酸の金属塩としては、硫酸銅、硫酸第一錫、硫酸ビスマス、硫酸ニッケル、硫酸アンチモン、硝酸ビスマス、硝酸銀、硝酸銅、硝酸アンチモン、硝酸インジウム、硝酸ニッケル、硝酸亜鉛、酢酸銅、酢酸ニッケル、炭酸ニッケル、錫酸ナトリウム、ホウフッ化第一錫、メタンスルホン酸第一錫、メタンスルホン酸銀、メタンスルホン酸銅、メタンスルホン酸ビスマス、メタンスルホン酸ニッケル、メタスルホン酸インジウム、ビスメタンスルホン酸亜鉛、エタンスルホン酸第一錫、2−ヒドロキシプロパンスルホン酸ビスマスなどが挙げられる。
【0027】
本発明の酸又はその塩(B)は、有機酸及び無機酸、或いはその塩から選択される。上記有機酸には、アルカンスルホン酸、アルカノールスルホン酸、芳香族スルホン酸等の有機スルホン酸、或いは脂肪族カルボン酸などが挙げられ、無機酸には、ホウフッ化水素酸、ケイフッ化水素酸、スルファミン酸、塩酸、硫酸、硝酸、過塩素酸などが挙げられる。その塩は、アルカリ金属の塩、アルカリ土類金属の塩、アンモニウム塩、アミン塩、スルホン酸塩などである。当該成分(B)は、金属塩の溶解性や排水処理の容易性の観点から有機スルホン酸が好ましい。
【0028】
上記アルカンスルホン酸としては、化学式C
nH
2n+1SO
3H(例えば、n=1〜5、好ましくは1〜3)で示されるものが使用でき、具体的には、メタンスルホン酸、エタンスルホン酸、1―プロパンスルホン酸、2―プロパンスルホン酸、1―ブタンスルホン酸、2―ブタンスルホン酸、ペンタンスルホン酸などの他、ヘキサンスルホン酸、デカンスルホン酸、ドデカンスルホン酸などが挙げられる。
【0029】
上記アルカノールスルホン酸としては、化学式C
mH
2m+1−CH(OH)−C
pH
2p−SO
3H(例えば、m=0〜6、p=1〜5)で示されるものが使用でき、具体的には、2―ヒドロキシエタン―1―スルホン酸、2―ヒドロキシプロパン―1―スルホン酸、2―ヒドロキシブタン―1―スルホン酸、2―ヒドロキシペンタン―1―スルホン酸などの外、1―ヒドロキシプロパン―2―スルホン酸、3―ヒドロキシプロパン―1―スルホン酸、4―ヒドロキシブタン―1―スルホン酸、2―ヒドロキシヘキサン―1―スルホン酸、2―ヒドロキシデカン―1―スルホン酸、2―ヒドロキシドデカン―1―スルホン酸などが挙げられる。
【0030】
上記芳香族スルホン酸は、基本的にはベンゼンスルホン酸、アルキルベンゼンスルホン酸、フェノールスルホン酸、ナフタレンスルホン酸、アルキルナフタレンスルホン酸などであって、具体的には、1−ナフタレンスルホン酸、2―ナフタレンスルホン酸、トルエンスルホン酸、キシレンスルホン酸、p―フェノールスルホン酸、クレゾールスルホン酸、スルホサリチル酸、ニトロベンゼンスルホン酸、スルホ安息香酸、ジフェニルアミン―4―スルホン酸などが挙げられる。
【0031】
上記脂肪族カルボン酸としては、例えば、酢酸、プロピオン酸、酪酸、クエン酸、酒石酸、グルコン酸、スルホコハク酸、トリフルオロ酢酸などが挙げられる。
【0032】
本発明の添加剤(C)に含まれるスルホニウム塩は、前述の通り、次の一般式(1)で表される。
【0034】
式(1)中、R
1、R
2は同一でも良いし、異なっても良く、これらの置換基R
1、R
2は、
(a)フェニル基
(b)ヒドロキシフェニル基
(c)トリル基
(d)水素原子
(e)C
nH
2n+1;(n=1〜5)
の中から選ばれる。また式(1)中、Phはフェニル基を示し、Xはハロゲンを示す。
【0035】
本発明のスルホニウム塩の具体例は次の通りである。
(i)スルホニウム塩1は、トリフェニルスルホニウムクロライドである。上記式(1)中、置換基R
1、R
2はともにフェニル基であり、Xは塩素であり、下式で表される。
【0037】
(ii)スルホニウム塩2は、ジトリルフェニルスルホニウムクロライドである。上記式(1)中、置換基R
1、R
2はともにトリル基(CH
3−Ph)であり、Xは塩素であり、下式で表される。
【0039】
(iii)スルホニウム塩3は、ヒドロキシフェニルフェニルメチルスルホニウムクロライドである。上記式(1)中、置換基R
1はヒドロキシフェニル基(OH−Ph)であり、R
2はCH
3であり、Xは塩素であり、下式で表される。
【0041】
(iv)スルホニウム塩4は、フェニルジメチルスルホニウムブロマイドである。上記式(1)中、置換基R
1、R
2はともにCH
3であり、Xは臭素であり、下式で表される。
【0043】
(v)スルホニウム塩5は、エチルジフェニルスルホニウムクロライドである。上記式(1)中、置換基R
1はフェニル基であり、R
2はC
2H
5であり、Xは塩素であり、下式で表される。
【0045】
(vi)スルホニウム塩6は、メチルペンチルフェニルスルホニウムクロライドである。上記式(1)中、置換基R
1はCH
3であり、R
2はC
5H
11であり、Xは塩素であり、下式で表される。
【0047】
(vii)スルホニウム塩7は、ジフェニルスルホニウムクロライドである。上記式(1)中、置換基R
1はPhであり、R
2はHであり、Xは塩素であり、下式で表される。
【0049】
(viii)スルホニウム塩8は、デシルジフェニルスルホニウムクロライドである。上記式(1)中、置換基R
1はPhであり、R
2はC
10H
21であり、Xは塩素であり、下式で表される。
【0051】
本発明のめっき液には、その他の添加剤として、下記式(2)で表されるノニオン界面活性剤を更に含有することが好ましい。
【0053】
ただし、式(2)中、R
3、R
4は、下記の式(A)で示される基であり、 Y
1、Y
2は、単結合、−O−、−COO−及び−CONH−から選ばれる基であり、 Zはベンゼン環又は2,2−ジフェニルプロパンを表す。 式(A)中、nは2又は3を示す。mは1〜15の整数を示す。
【0055】
本発明の式(2)で表されるノニオン系界面活性剤の具体例は次の通りである。式(2)で表されるノニオン系界面活性剤1は、ポリオキシエチレンビスフェノールエーテルである。上記式(2)中、置換基R
3はH−(CH
2−CH
2−O)
p(pは2〜10の整数)、Y
1は−O−、Zは(C
6H
10)C
3H
4(C
6H
10)、Y
2は−O−、R
4はH−(CH
2−CH
2−O)
p(pは2〜10の整数)であり、下式で表される。
【0057】
式(2)で表されるノニオン系界面活性剤2は、ポリオキシエチレンフェニルエーテルである。上記式(2)中、置換基R
3はH−(CH
2−CH
2−O)
q(qは2〜15の整数)であって、Y
1は−O−、ZはC
6H
10、Y
2は単結合、R
4はCH
2−CH
2−OHであり、下式で表される。
【0059】
本発明のめっき液には、その他の添加剤として、上記以外の他の界面活性剤、錯化剤及び/又は酸化防止剤を更に含むことが好ましい。
【0060】
この場合の他の界面活性剤としては、通常のアニオン系界面活性剤、カチオン系界面活性剤、ノニオン系界面活性剤及び両性界面活性剤が挙げられる。
【0061】
アニオン系界面活性剤としては、ポリオキシエチレン(エチレンオキサイド:12モル含有)ノニルエーテル硫酸ナトリウム等のポリオキシアルキレンアルキルエーテル硫酸塩、ポリオキシエチレン(エチレンオキサイド:12モル含有)ドデシルフェニルエーテル硫酸ナトリウム等のポリオキシアルキレンアルキルフェニルエーテル硫酸塩、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム等のアルキルベンゼンスルホン酸塩、1−ナフトール−4−スルホン酸ナトリウム、2−ナフトール−3,6−ジスルホン酸ジナトリウム等のナフトールスルホン酸塩、ジイソプロピルナフタレンスルホン酸ナトリウム、ジブチルナフタレンスルホン酸ナトリウム等の(ポリ)アルキルナフタレンスルホン酸塩、ドデシル硫酸ナトリウム、オレイル硫酸ナトリウム等のアルキル硫酸塩等が挙げられる。
【0062】
カチオン系界面活性剤としては、モノ〜トリアルキルアミン塩、ジメチルジアルキルアンモニウム塩、トリメチルアルキルアンモニウム塩、ドデシルトリメチルアンモニウム塩、ヘキサデシルトリメチルアンモニウム塩、オクタデシルトリメチルアンモニウム塩、ドデシルジメチルアンモニウム塩、オクタデセニルジメチルエチルアンモニウム塩、ドデシルジメチルベンジルアンモニウム塩、ヘキサデシルジメチルベンジルアンモニウム塩、オクタデシルジメチルベンジルアンモニウム塩、トリメチルベンジルアンモニウム塩、トリエチルベンジルアンモニウム塩、ヘキサデシルピリジニウム塩、ドデシルピリジニウム塩、ドデシルピコリニウム塩、ドデシルイミダゾリニウム塩、オレイルイミダゾリニウム塩、オクタデシルアミンアセテート、ドデシルアミンアセテート等が挙げられる。
【0063】
ノニオン系界面活性剤としては、糖エステル、脂肪酸エステル、C
1〜C
25アルコキシルリン酸(塩)、ソルビタンエステル、C
1〜C
22脂肪族アミドなどにエチレンオキシド(EO)及び/又はプロピレンオキシド(PO)を2〜300モル付加縮合させたもの、シリコン系ポリオキシエチレンエーテル、シリコン系ポリオキシエチレンエステル、フッ素系ポリオキシエチレンエーテル、フッ素系ポリオキシエチレンエステル、エチレンオキサイド及び/又はプロピレンオキサイドとアルキルアミン又はジアミンとの縮合生成物の硫酸化或いはスルホン化付加物等が挙げられる。
【0064】
両性界面活性剤としては、ベタイン、カルボキシベタイン、イミダゾリニウムベタイン、スルホベタイン、アミノカルボン酸等が挙げられる。
【0065】
上記錯化剤は銀などの貴金属を含むめっき液で貴金属イオンなどを浴中で安定化させるとともに析出合金組成を均一化するために用いられる。錯化剤としては、オキシカルボン酸、ポリカルボン酸、モノカルボン酸などが挙げられる。具体的には、グルコン酸、クエン酸、グルコヘプトン酸、グルコノラクトン、グルコヘプトラクトン、ギ酸、酢酸、プロピオン酸、酪酸、アスコルビン酸、シュウ酸、マロン酸、コハク酸、グリコール酸、リンゴ酸、酒石酸、ジグリコール酸、チオグリコール酸、チオジグリコール酸、チオグリコール、チオジグリコール、メルカプトコハク酸、3,6−ジチア−1,8−オクタンジオール、3,6,9−トリチアデカン−1,11−ジスルホン酸、チオビス(ドデカエチレングリコール)、ジ(6−メチルベンゾチアゾリル)ジスルフィドトリスルホン酸、ジ(6−クロロベンゾチアゾリル)ジスルフィドジスルホン酸、グルコン酸、クエン酸、グルコヘプトン酸、グルコノラクトン、グルコヘプトラクトン、ジチオジアニリン、ジピリジルジスルフィド、メルカプトコハク酸、亜硫酸塩、チオ硫酸塩、エチレンジアミン、エチレンジアミン四酢酸(EDTA)、ジエチレントリアミン五酢酸(DTPA)、ニトリロ三酢酸(NTA)、イミノジ酢酸(IDA)、イミノジプロピオン酸(IDP)、ヒドロキシエチルエチレンジアミン三酢酸(HEDTA)、トリエチレンテトラミン六酢酸(TTHA)、エチレンジオキシビス(エチルアミン)−N,N,N′,N′−テトラ酢酸、グリシン類、ニトリロトリメチルホスホン酸、或はこれらの塩などが挙げられる。また、チオ尿素類などの含イオウ化合物、トリス(3−ヒドロキシプロピル)ホスフィンなどのリン化合物がある。また、導電性塩としては、硫酸、塩酸、リン酸、スルファミン酸、スルホン酸のナトリウム塩、カリウム塩、マグネシウム塩、アンモニウム塩、アミン塩などが挙げられる。
【0066】
上記光沢剤はめっき皮膜に光沢を付与するために用いられる。光沢剤としては、ベンズアルデヒド、o−クロロベンズアルデヒド、2,4,6−トリクロロベンズアルデヒド、m−クロロベンズアルデヒド、p−ニトロベンズアルデヒド、p−ヒドロキシベンズアルデヒド、フルフラール、1−ナフトアルデヒド、2−ナフトアルデヒド、2−ヒドロキシ−1−ナフトアルデヒド、3−アセナフトアルデヒド、ベンジリデンアセトン、ピリジデンアセトン、フルフリルデンアセトン、シンナムアルデヒド、アニスアルデヒド、サリチルアルデヒド、クロトンアルデヒド、アクロレイン、グルタルアルデヒド、パラアルデヒド、バニリンなどの各種アルデヒド、トリアジン、イミダゾール、インドール、キノリン、2−ビニルピリジン、アニリン、フェナントロリン、ネオクプロイン、ピコリン酸、チオ尿素類、N―(3―ヒドロキシブチリデン)―p―スルファニル酸、N―ブチリデンスルファニル酸、N―シンナモイリデンスルファニル酸、2,4―ジアミノ―6―(2′―メチルイミダゾリル(1′))エチル―1,3,5―トリアジン、2,4―ジアミノ―6―(2′―エチル―4―メチルイミダゾリル(1′))エチル―1,3,5―トリアジン、2,4―ジアミノ―6―(2′―ウンデシルイミダゾリル(1′))エチル―1,3,5―トリアジン、サリチル酸フェニル、或は、ベンゾチアゾール、2−メルカトプトベンゾチアゾール、2―メチルベンゾチアゾール、2―アミノベンゾチアゾール、2―アミノ―6―メトキシベンゾチアゾール、2―メチル―5―クロロベンゾチアゾール、2―ヒドロキシベンゾチアゾール、2―アミノ―6―メチルベンゾチアゾール、2―クロロベンゾチアゾール、2,5―ジメチルベンゾチアゾール、5―ヒドロキシ―2―メチルベンゾチアゾール等のベンゾチアゾール類などが挙げられる。
【0067】
上記酸化防止剤は、可溶性第一錫塩の第二錫塩への酸化を防止するために用いられる。酸化防止剤としては、次亜リン酸類を初め、アスコルビン酸又はその塩、フェノールスルホン酸(Na)、クレゾールスルホン酸(Na)、ハイドロキノンスルホン酸(Na)、ハイドロキノン、α又はβ−ナフトール、カテコール、レゾルシン、フロログルシン、ヒドラジン、フェノールスルホン酸、カテコールスルホン酸、ヒドロキシベンゼンスルホン酸、ナフトールスルホン酸、或いはこれらの塩などが挙げられる。
【0068】
本発明のスルホニウム塩(C)は単用又は併用でき、めっき液での含有量はは0.1〜10g/L、好ましくは0.5〜5g/Lである。含有量が適正範囲より少ないと均一電着性や皮膜外観の向上効果などが十分に得られず、多すぎるとヤケが発生するなどのおそれがある。
【0069】
また、上記所定の可溶性金属塩(A)は単用又は併用でき、めっき液中での含有量は30〜100g/L、好ましくは40〜60g/Lである。含有量が適正範囲より少ないと生産性が落ち、含有量が多くなるとめっき液のコストが上昇してしまう。
【0070】
無機酸、有機酸又はその塩(B)は単用又は併用でき、めっき液中での含有量は80〜300g/L、好ましくは100〜200g/Lである。含有量が適正範囲より少ないと導電率が低く電圧が上昇し、含有量が多くなるとめっき液の粘度が上昇しめっき液の撹拌速度が低下してしまう。
【0071】
なお、上記(A)〜(C)の各成分の添加濃度はバレルめっき、ラックめっき、高速連続めっき、ラックレスめっき、バンプめっきなどのめっき方式に応じて任意に調整・選択することになる。
【0072】
一方、本発明の電気めっき液の液温は一般に70℃以下、好ましくは10〜40℃である。陰極電流密度は一般に0.01〜150A/dm
2、好ましくは0.1〜100A/dm
2である。電流密度が低すぎると生産性が悪化し、高すぎると均一電着性が悪化してしまう。
【0073】
本発明のスルホニウム塩を含む錫又は錫合金のめっき液を被めっき物である電子部品に適用して、電子部品に所定の金属皮膜を形成することができる。電子部品としては、プリント基板、フレキシブルプリント基板、フィルムキャリア、半導体集積回路、抵抗、コンデンサ、フィルタ、インダクタ、サーミスタ、水晶振動子、スイッチ、リード線などが挙げられる。また、ウエハーのバンプ電極などのように電子部品の一部に本発明のめっき液を適用して皮膜を形成することもできる。
【実施例】
【0074】
<実施例1〜8と比較例2に使用するスルホニウム塩>
実施例1〜8のうち、実施例1は前記スルホニウム塩1を含有する錫めっき液の例、実施例2は前記スルホニウム塩2を含有する錫−銀合金めっき液の例、実施例3は前記スルホニウム塩3を含有する錫−銀合金めっき液の例、実施例4は前記スルホニウム塩4を含有する錫めっき液の例、実施例5は前記スルホニウム塩5を含有する錫−銅合金めっき液の例、実施例6は前記スルホニウム塩6を含有する錫−銀合金めっき液の例、実施例7は前記スルホニウム塩7を含有する錫−ビスマス合金めっき液の例、実施例8は前記スルホニウム塩6を含有する錫−亜鉛合金めっき液の例である。また比較例1〜2のうち、比較例1は前記スルホニウム塩を含まない錫めっき液の例、比較例2は前記スルホニウム塩8を含有する錫−銀合金めっき液の例である。実施例1、4と比較例1は酸性錫めっき液、実施例2〜3、5〜8と比較例2は酸性錫合金めっき液である。
【0075】
実施例1〜8のスルホニウム塩1〜7及び比較例2のスルホニウム塩8は化学薬品メーカーから購入することができる。実施例1〜8と比較例2に使用するスルホニウム塩の詳細を表1に示す。
【0076】
【表1】
【0077】
<実施例1〜8及び比較例1〜2>
上記(A)〜(C)の各成分と、界面活性剤、錯化剤、酸化防止剤の配合を種々変更した実施例1〜8及び比較例1〜2を表2及び表3に示す。表3において、「界面活性剤1」はポリオキシエチレンビスフェノールエーテルを、「界面活性剤2」はポリオキシエチレンフェニルエーテルをそれぞれ意味する。
【0078】
【表2】
【0079】
【表3】
【0080】
<評価試験>
実施例1〜8及び比較例1〜2で得られためっき液について、ハルセル試験とめっき試験を行い、各めっき液の電着性とボイド発生率を評価した。その結果を表4に示す。
【0081】
(a)ハルセル試験
ハルセル試験は、市販のハルセル試験器(山本鍍金試験器社製)を用い、めっき対象の基材は、銅製ハルセル板(縦70mm、横100mm、厚さ0.3mm)を使用した。ハルセル試験器にめっき液を入れ、液温を25℃とし、通電電流を2Aとした。めっき処理時間は5分間で、めっき処理中はめっき液を撹拌しなかった。ハルセル評価は、めっき処理したハルセル板のヤケの有無により行った。
【0082】
(b)めっき試験
(b-1) めっき膜厚のばらつき
第1のめっき試験は、銅製基板(縦10cm、横10cm、厚さ0.3mm)を液温
25℃のめっき液に浸漬し、5A/dm
2の電流密度で1分間を行った。得られためっき皮膜の10箇所の膜厚を蛍光X線膜厚測定器(エスアイアイ・ナノテクノロジー(株)社製)によって測定した。10箇所の膜厚の標準偏差(3σ)を算出し、めっき膜厚のばらつき、即ち電着が均一に行われたか評価した。
(b-2) めっき皮膜のボイド発生率
第2のめっき試験は、銅製基板(縦10cm、横7cm、厚さ0.3mm)を液温25℃のめっき液に浸漬し、3A/dm
2の電流密度で13分間通電し、膜厚20μmのめっき皮膜を基板上に形成した。このめっき皮膜付き基板の中央を縦10mm、横10mmの正方形の小片に切り出し、リフロー処理に模して、これらの小片を窒素雰囲気中、基板の表面温度が270℃になるまでホットプレートで昇温し、その温度で10秒間保持した後、急冷した。ボイドの評価はリフロー後のめっき皮膜を透過X線で観察し、ボイドが占める面積を縦10mm、横10mmの小片の面積で除してボイド面積率を算出することで行った。ボイドが発生したか否かは、ボイド面積率が0.1%以上の場合に「ボイド発生」と規定した。
【0083】
【表4】
【0084】
<評価の結果>
表4から明らかなように、スルホニウム塩を含まない錫めっき液にてめっきを行った比較例1では、めっき膜厚のばらつきが2.31と大きかった。また上記式(1)のR
2がC
10H
21のスルホニウム塩を含む錫めっき液にてめっきを行った比較例2では、C
nH
2n+1のnが10であったため、ボイド面積率が4.3%と大きかった。これに対して上記式(1)のR
1及びR
2が所定の条件を満たすスルホニウム塩を含む錫めっき液にてめっきを行った実施例1〜8では、めっき膜厚のばらつきが0.48〜0.69と小さかった。また実施例1〜8では、ボイド面積率も0.02〜0.08と小さく、均一電着性が良く、ボイドの発生がない、良好なめっき皮膜が得られたことが分かった。