特許第6607113号(P6607113)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6607113
(24)【登録日】2019年11月1日
(45)【発行日】2019年11月20日
(54)【発明の名称】自動変速機
(51)【国際特許分類】
   F16D 55/40 20060101AFI20191111BHJP
   F16D 65/16 20060101ALI20191111BHJP
   F16H 3/66 20060101ALI20191111BHJP
   F16D 25/063 20060101ALN20191111BHJP
   F16D 121/04 20120101ALN20191111BHJP
   F16D 125/06 20120101ALN20191111BHJP
【FI】
   F16D55/40 F
   F16D65/16
   F16H3/66 Z
   !F16D25/063 G
   F16D121:04
   F16D125:06 A
   F16D125:06 Z
【請求項の数】2
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2016-60762(P2016-60762)
(22)【出願日】2016年3月24日
(65)【公開番号】特開2017-172734(P2017-172734A)
(43)【公開日】2017年9月28日
【審査請求日】2018年9月11日
(73)【特許権者】
【識別番号】000000011
【氏名又は名称】アイシン精機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100130188
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 喜一
(74)【代理人】
【識別番号】100089082
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 脩
(74)【代理人】
【識別番号】100190333
【弁理士】
【氏名又は名称】木村 群司
(72)【発明者】
【氏名】新美 秀顕
(72)【発明者】
【氏名】中村 栄希
(72)【発明者】
【氏名】須和 敬太
(72)【発明者】
【氏名】藤堂 穂
(72)【発明者】
【氏名】深谷 剛
(72)【発明者】
【氏名】中島 卓也
【審査官】 羽鳥 公一
(56)【参考文献】
【文献】 特開2015−124841(JP,A)
【文献】 特開2015−190494(JP,A)
【文献】 特開平09−032920(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16D 25/00−39/00
F16D 48/00−71/04
F16H 3/00−3/78
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ハウジングと、
前記ハウジング内に収納され、回転軸線と同軸に設けられた複数の遊星歯車機構と、
複数の前記遊星歯車機構のうち一の前記遊星歯車機構の一要素を前記ハウジングに係脱可能に固定し、第一油室及び第二油室を有するダブルチャンバー式のブレーキと、を備え、
前記ブレーキは、
円筒形状であり前記回転軸線と同軸に形成され、外周面に第一摺動面が形成された第一筒部と、円筒形状であり前記第一筒部の外周側に前記第一筒部と同軸に形成され、内周面に第二摺動面が形成された第二筒部と、前記第一筒部及び前記第二筒部の前記回転軸線方向の一端を接続する接続部と、内径が前記第二筒部の内径よりも大きい内径の円筒形状であり前記第二筒部の前記回転軸線方向の他端側の端部に接続し、内周面に第三摺動面が形成された第三筒部と、から構成されたサポート部材と、
円環形状であり、内縁が前記第一摺動面と全周に渡って接触するともに、外縁が前記第二摺動面と全周に渡って接触し、前記接続部との間に前記第一油室を形成する内側ピストンと、
円筒形状であり、前記回転軸線と同軸に形成され、外縁が前記第二摺動面と全周に渡って接触する第一ピストン筒部と、円筒形状であり、前記第一ピストン筒部と同軸に前記第一ピストン筒部の外周側に形成され、外縁が前記第三摺動面と全周に渡って接触する第二ピストン筒部と、前記第一ピストン筒部と前記第二ピストン筒部とを接続し、前記第二筒部との間に前記第二油室を形成するピストン接続部とから構成され、前記内側ピストンと隣接して設けられ、前記内側ピストンと離脱可能に当接する外側ピストンと、
円環板形状であり、前記ハウジングに対して周方向に移動不能、且つ、前記回転軸線に沿って移動可能に、前記回転軸線方向に沿って複数設けられ、前記外側ピストンによって押圧される複数のアウタープレートと、
円環板形状であり、前記一要素に対して周方向に移動不能、且つ、前記回転軸線方向に沿って移動可能に、前記アウタープレートの間にそれぞれ設けられた複数のインナープレートと、を有する自動変速機。
【請求項2】
前記外側ピストンは、前記第一ピストン筒部の内周側に延在し、前記内側ピストンと隣接して形成された当接部を有し、
前記当接部には、前記当接部と前記内側ピストンとの間の空間と、前記内側ピストンと反対側の前記当接部の面とを連通する流通穴が形成されている請求項1に記載の自動変速機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動変速機に関する。
【背景技術】
【0002】
自動変速機の摩擦要素は、各変速段により必要なトルク容量が異なる。例えば、後進時や低速段のように大きなトルク容量を必要とする場合と、高速段のように比較的小さなトルク容量でよい場合である。そこで、1つの摩擦要素でこれらを使い分け、前記のトルクを伝達するのに適した係合トルクを発生させるため、特許文献1に示されるように、2つの油室及び2つのピストンを備えたダブルチャンバー式の摩擦要素(特許文献1ではブレーキ)を有する自動変速機がある。この自動変速機では、伝達するトルクに応じ、ブレーキで大きな係合トルクを発生させる必要がある場合には、2つの油室に油圧を供給し、ブレーキで比較的小さな係合トルクを発生させる場合には、1つの油室のみに油圧を供給している。このようにして、変速段ごとに異なるトルク容量の最適化を図っている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2015−124841号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1に示されるようなダブルチャンバー式のブレーキでは、2つのピストンに取り付けられたOリングとの摺動面の数が、1つの油室及び1つのピストンを備えたブレーキと比較して2倍となる。この摺動面は、Oリングとの間で油密を確保する必要が有るため、所定以下の面粗度に加工する必要があり、研削加工によって形成する必要がある。このため、特許文献1に示されるようなダブルチャンバー式のブレーキを有する自動変速機は、加工コストが高くなり、製造コストが高くなっていた。
【0005】
本発明は、上述した問題を解消するためになされたもので、製造コストを低減させることができるダブルチャンバー式のブレーキを有する自動変速機を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記の課題を解決するため、請求項1に係る自動変速機の発明は、ハウジングと、前記ハウジング内に収納され、回転軸線と同軸に設けられた複数の遊星歯車機構と、複数の前記遊星歯車機構のうち一の前記遊星歯車機構の一要素を前記ハウジングに係脱可能に固定し、第一油室及び第二油室を有するダブルチャンバー式のブレーキと、を備え、前記ブレーキは、円筒形状であり前記回転軸線と同軸に形成され、外周面に第一摺動面が形成された第一筒部と、円筒形状であり前記第一筒部の外周側に前記第一筒部と同軸に形成され、内周面に第二摺動面が形成された第二筒部と、前記第一筒部及び前記第二筒部の前記回転軸線方向の一端を接続する接続部と、内径が前記第二筒部の内径よりも大きい内径の円筒形状であり前記第二筒部の前記回転軸線方向の他端側の端部に接続し、内周面に第三摺動面が形成された第三筒部と、から構成されたサポート部材と、円環形状であり、内縁が前記第一摺動面と全周に渡って接触するともに、外縁が前記第二摺動面と全周に渡って接触し、前記接続部との間に前記第一油室を形成する内側ピストンと、円筒形状であり、前記回転軸線と同軸に形成され、外縁が前記第二摺動面と全周に渡って接触する第一ピストン筒部と、円筒形状であり、前記第一ピストン筒部と同軸に前記第一ピストン筒部の外周側に形成され、外縁が前記第三摺動面と全周に渡って接触する第二ピストン筒部と、前記第一ピストン筒部と前記第二ピストン筒部とを接続し、前記第二筒部との間に前記第二油室を形成するピストン接続部とから構成され、前記内側ピストンと隣接して設けられ、前記内側ピストンと離脱可能に当接する外側ピストンと、円環板形状であり、前記ハウジングに対して周方向に移動不能、且つ、前記回転軸線に沿って移動可能に、前記回転軸線方向に沿って複数設けられ、前記外側ピストンによって押圧される複数のアウタープレートと、
円環板形状であり、前記一要素に対して周方向に移動不能、且つ、前記回転軸線方向に沿って移動可能に、前記アウタープレートの間にそれぞれ設けられた複数のインナープレートと、を有する。
【0007】
このように、サポート部材は、外周面に第一摺動面が形成された第一筒部と、第一筒部の外周側に形成され、内周面に第二摺動面が形成された第二筒部と、内径が第二筒部の内径よりも大きく、第二筒部の回転軸線方向の他端側の端部に接続し、内周面に第三摺動面が形成された第三筒部を有している。そして、内側ピストンの内縁は、第一摺動面と全周に渡って接触し、内側ピストンの外縁は、第二摺動面と全周に渡って接触する。そして、外側ピストンの第一ピストン筒部の外縁は、第二摺動面と全周に渡って接触し、外側ピストンの第二筒部の外縁は、第三摺動面と全周に渡って接触する。これにより、内側ピストンの外縁と、外側ピストンの第一筒部の外縁は、共通の第二摺動面と全周に渡って接触している。このため、サポート部材に、4つの摺動面を形成すること無く、3つの摺動面を形成するだけで、ダブルチャンバー式のブレーキを構成することができる。この結果、サポート部材から摺動面を1つ削減することができ、摺動面を形成するための加工コストを低減させることができ、製造コストを低減させることができるダブルチャンバー式のブレーキを有する自動変速機を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】本実施形態の自動変速機のスケルトン図である。
図2】本施形態の自動変速機の各変速段におけるブレーキ及び各クラッチの作動状態を示す作動表である。
図3】本実施形態の自動変速機の断面図である。
図4】第三ブレーキの断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
(自動変速機の構成)
以下に、図1を用いて、本実施形態に係る自動変速機100について説明する。自動変速機100は、制御部10、入力軸11、出力軸12、ハウジング13、第一遊星歯車機構PG1、第二遊星歯車機構PG2、第三遊星歯車機構PG3、第四遊星歯車機構PG4、第一ブレーキB1、第二ブレーキB2、第三ブレーキB3、第一クラッチCl1、第二クラッチCl2、及び第三クラッチCl3を有している。なお、図1に示す一点鎖線は、各部材が設けられる回転軸線15であり、ハウジング13の径方向の中心を通り、ハウジング13の長手方向に延在している。
【0010】
ハウジング13は、筒状である。入力軸11は、ハウジング13に回転軸線15と同軸に回転可能に支承されている。入力軸11は、トルクコンバータ(不図示)を介してエンジン(不図示)に連結され、エンジンからの駆動力が入力される。出力軸12は、入力軸11の後方に、ハウジング13に回転軸線15と同軸に回転可能に支承されている。出力軸12は、デファレンシャル(不図示)を介して、駆動輪(不図示)が連結されている。
【0011】
第一遊星歯車機構PG1、第二遊星歯車機構PG2、第三遊星歯車機構PG3、第四遊星歯車機構PG4は、ハウジング13内に収納され、入力軸11側から出力軸12側に向かって順番に、回転軸線15と同軸に設けられている。第一遊星歯車機構PG1は、ダブルピニオン式である。第二遊星歯車機構PG2〜第四遊星歯車機構PG4は、シングルピニオン式である。
【0012】
第一遊星歯車機構PG1は、第一サンギヤS1、第一内ピニオンP1−1、第一外ピニオンP1−2、第一キャリヤC1、第一リングギヤR1を有している。第一サンギヤS1は、ハウジング13に回転軸線15回りに回転可能に支承されている。第一内ピニオンP1−1は、第一サンギヤS1の外周側に複数設けられ、第一サンギヤS1と噛合している。第一外ピニオンP1−2は、第一内ピニオンP1−1の外周側に複数設けられ、第一内ピニオンP1−1とそれぞれ噛合している。第一キャリヤC1は、第一内ピニオンP1−1及び第一外ピニオンP1−2を回転可能に支承している。第一リングギヤR1は、第一外ピニオンP1−2の外周側に設けられ、第一外ピニオンP1−2と噛合している。
【0013】
第二遊星歯車機構PG2は、第二サンギヤS2、第二ピニオンP2、第二キャリヤC2、及び第二リングギヤR2を有する。
第三遊星歯車機構PG3は、第三サンギヤS3、第三ピニオンP3、第三キャリヤC3、及び第三リングギヤR3を有する。
第四遊星歯車機構PG4は、第四サンギヤS4、第四ピニオンP4、第四キャリヤC4、及び第四リングギヤR4を有する。
【0014】
第二遊星歯車機構PG2〜第四遊星歯車機構PG4は、同じ構造であるので、第二遊星歯車機構PG2について代表してより詳細に説明する。第二サンギヤS2は、ハウジング13に回転軸線15回りに回転可能に支承されている。第二ピニオンP2は、第二サンギヤS2の外周側に複数設けられ、第二サンギヤS2と噛合している。なお、以下の説明において、外周側とは、回転軸線15の半径方向外側を指すものとする。第二キャリヤC2は、第二ピニオンP2を回転可能に支承している。第二リングギヤR2は、第二ピニオンP2の外周側に設けられ、第二ピニオンP2と噛合している。
【0015】
入力軸11と第一キャリヤC1は、第一ピース21によって連結されている。このため、入力軸11と第一キャリヤC1は一体回転する。第一リングギヤR1と第二リングギヤR2は、第二ピース22によって連結されている。このため、第一リングギヤR1と第二リングギヤR2は、一体回転する。第二キャリヤC2には、第三ピース23が連結されている。第二サンギヤS2、第三サンギヤS3、及び第四サンギヤS4は、第四ピース24によって連結されている。このため、第二サンギヤS2、第三サンギヤS3、及び第四サンギヤS4は、一体回転する。第三キャリヤC3、第四リングギヤR4、及び出力軸12は、第五ピース25によって連結されている。このため、第三キャリヤC3、第四リングギヤR4、及び出力軸12は、一体回転する。
【0016】
第一ブレーキB1は、第一サンギヤS1をハウジング13に係脱可能に固定する。
第二ブレーキB2は、第三ピース23をハウジング13に係脱可能に固定することにより、第二キャリヤC2をハウジング13に係脱可能に固定する。
第三ブレーキB3は、第三リングギヤR3をハウジング13に係脱可能に固定する。
【0017】
第一クラッチCl1は、第二ピース22と第四ピース24とを係脱可能に連結する。第一クラッチCl1が、第二ピース22と第四ピース24とを連結すると、第一リングギヤR1、第二リングギヤR2、第二サンギヤS2、第三サンギヤS3、及び第四サンギヤS4が一体回転する。
第二クラッチCl2は、第一キャリヤC1と第三ピース23とを係脱可能に連結することにより、第一キャリヤC1と第二キャリヤC2とを係脱可能に連結する。
第三クラッチCl3は、入力軸11及び第一ピース21と、第四キャリヤC4とを係脱可能に連結する。
【0018】
制御部10は、各ブレーキB1〜B3及び各クラッチCl1〜Cl3を、図2に示す作動表のとおりに作動させることにより、前進9段、後進1段のギヤ比を構成することができる。図2において、各変速段に対応する各ブレーキB1〜B3及び各クラッチCl1〜Cl3の欄に○が付されている状態では、各ブレーキB1〜B3及び各クラッチCl1〜Cl3が係合状態であることを示す。なお、図2において、B3inの欄に○が付されている状態では、後述する第一油室45に油圧が供給されている。また、図2において、B3outの欄に○が付されている状態では、後述する第二油室46に油圧が供給されている。
【0019】
図3に本実施形態の自動変速機100の断面図を示す。図3に示す各符号は、図1の各符号に対応している。
【0020】
(第三ブレーキの具体的構造)
以下に、図4を用いて、第三ブレーキB3の構造について詳細に説明する。第三ブレーキB3は、後述する第一油室45及び第二油室46を有するダブルチャンバー式である。第三ブレーキB3は、上述したように、第三遊星歯車機構PG3の一要素である第三リングギヤR3をハウジング13に係脱可能に固定するものである。第三ブレーキB3は、サポート部材41、内側ピストン51、外側ピストン52、第一Oリング61、第二Oリング62、第三Oリング63、第四Oリング64、複数のインナープレート71、複数のアウタープレート72、被押圧アウタープレート73、支持アウタープレート74、複数のリターンスプリング81、及びスプリング支持部材82を有している。なお、図4において、紙面上方向を自動変速機100及び第三ブレーキB3の径方向の外側、紙面下方向を自動変速機100及び第三ブレーキB3の径方向の中心側、外側紙面左側を自動変速機100及び第三ブレーキB3の前方、紙面右側を自動変速機100及び第三ブレーキB3の後方とする。
【0021】
サポート部材41は、ハウジング13内に収納されて取り付けられている。サポート部材41は、円環形状である。サポート部材41は、第一接続部41a、第一筒部41b、第二接続部41c、第三接続部41d、第二筒部41e、及び第三筒部41fとから構成され、これらが一体に形成されている。
【0022】
第一接続部41aは、自動変速機100の径方向に延在する円環板形状である。第一筒部41bは、円筒形状であり、第一接続部41aの内縁部から後方に延在している。第一筒部41bは、回転軸線15と同軸に形成されている。第二接続部41cは、円筒形状であり、第一接続部41aの外縁部から後方に延在している。第三接続部41dは、円環板形状であり、第二接続部41cの後端から径方向外側に延在している。第二筒部41eは、円筒形状であり、第三接続部41dの外縁部から後方に延在している。第二筒部41eは、第一筒部41bの外周側に、第一筒部41bと同軸に形成されている。このように、第一筒部41b及び第二筒部41eの前端(回転軸線15方向の一端)は、第一接続部41a、第二接続部41c、及び第三接続部41dによって接続されている。
【0023】
第三筒部41fは、円筒形状であり、第二筒部41eの後端(回転軸線15方向の他端側の端部)に接続している。第三筒部41fは、第二筒部41eと同軸に、第二筒部41eの外周側に形成されている。第三筒部41fの内径は、第二筒部41eの内径よりも大きくなっている。
【0024】
第一筒部41bの外周面には、第一摺動面41b1が形成されている。第二筒部41eの内周面には、第二摺動面41e1が形成されている。第三筒部41fの内周面には、第三摺動面41f1が形成されている。第一摺動面41b1、第二摺動面41e1、及び第三摺動面41f1は、回転軸線15を中心に同軸に形成されている。また、第一摺動面41b1、第二摺動面41e1、及び第三摺動面41f1は、回転軸線15に沿って形成されている。第一摺動面41b1と第二摺動面41e1は対向している。第一摺動面41b1と第三摺動面41f1は対向している。第一摺動面41b1、第二摺動面41e1、及び第三摺動面41f1は、研削加工によって、所定の面粗度以下の平滑な表面となっている。
【0025】
内側ピストン51は、円環形状である。内側ピストン51は、第一内側ピストン部51a、第二内側ピストン部51b、及び第三内側ピストン部51cとから構成され、これらが一体に形成されている。第一内側ピストン部51aは、円環板形状であり、自動変速機100の径方向に延在している。第二内側ピストン部51bは、円筒形状であり、第一内側ピストン部51aの外縁部から後方に延在している。第三内側ピストン部51cは、円環板形状であり、第二内側ピストン部51bの後端から外側に延在している。第一内側ピストン部51aの内周縁には、全周に渡って第一Oリング取付凹部51a1が凹んで形成されている。第一Oリング61は、第一Oリング取付凹部51a1に取り付けられている。第三内側ピストン部51cの外周縁には、全周に渡って第二Oリング取付凹部51c1が凹んで形成されている。第二Oリング62は、第二Oリング取付凹部51c1に取り付けられている。第一Oリング61及び第二Oリング62は、ゴムやエラストマー等の可撓性を有する材料で構成されている。このように、内側ピストン51は、内縁が第一Oリング61を介して第一摺動面41b1と全周に渡って接触するともに、外縁が第二Oリング62を介して第二摺動面41e1と全周に渡って接触している。
【0026】
内側ピストン51は、第一接続部41a及び第三接続部41dの後方において、第一筒部41bと第二接続部41cとの間の空間に、回転軸線15方向に沿って摺動可能に取り付けられている。第一内側ピストン部51aと第一接続部41aは、対向している。第三内側ピストン部51cと第三接続部41dは、対向している。内側ピストン51とサポート部材41との間には、第一油室45が形成されている。第一Oリング61は、第一摺動面41b1と全周に渡って接触している。第二Oリング62は、第二摺動面41e1と全周に渡って接触している。このため、第一油室45は油密となっている。第三接続部41dには、第一油室45に連通する第一油路41d1が形成されている。
【0027】
外側ピストン52は、第一当接部52a、第二当接部52b、第三当接部52c、第一ピストン筒部52d、ピストン接続部52e、及び第二ピストン筒部52fとから構成され、これらが一体に形成されている。第一当接部52aは、円環板形状であり、自動変速機100の径方向に延在している。第二当接部52bは、円筒形状であり、第一当接部52aの外縁部から後方に延在している。
【0028】
第三当接部52cは、円環板形状であり、第二当接部52bの後端から外周側に延在している。第三当接部52cには、第三当接部52cの前面と後面とを連通する複数の流通穴52c1が形成されている。流通穴52c1は、当接部52a〜52cと内側ピストン51との間の空間と、内側ピストン51と反対側の第三当接部52cの面とを連通している。これにより、内側ピストン51と外側ピストン52との間の空間にある空気が、複数の流通穴52c1を流通して、外側ピストン52の後方の空間に排出される。また、外側ピストン52の後方の空間にある空気が、複数の流通穴52c1を流通して、内側ピストン51と外側ピストン52との間の空間に流入する。このため、外側ピストン52の内側ピストン51に対する前後方向の相対移動が阻害されない。当接部52a〜52cは、第一ピストン筒部52dの前端から、第一ピストン筒部52dの内周側に延在している。
【0029】
第一ピストン筒部52dは、円筒形状であり、第三当接部52cの外縁部から後方に延在している。第一ピストン筒部52dは、回転軸線15と同軸に形成されている。ピストン接続部52eは、円環板形状であり、第一ピストン筒部52dの後端から外周側に延在している。第二ピストン筒部52fは、円筒形状であり、ピストン接続部52eの外縁部から後方に延在している。第二ピストン筒部52fは、第一ピストン筒部52dと同軸に第一ピストン筒部52dの外周側に形成されている。第二ピストン筒部52fの外径は、第一ピストン筒部52dの外径よりも大きくなっている。ピストン接続部52eは、第一ピストン筒部52dの後端と第二ピストン筒部52fの前端とを接続している。
【0030】
第一ピストン筒部52dの外周面には、全周に渡って第三Oリング取付凹部52d1が凹んで形成されている。第三Oリング63は、第三Oリング取付凹部52d1に取り付けられている。第二ピストン筒部52fの外周面には、全周に渡って第四Oリング取付凹部52f1が凹んで形成されている。第四Oリング64は、第四Oリング取付凹部52f1に取り付けられている。第三Oリング63及び第四Oリング64は、ゴムやエラストマー等の可撓性を有する材料で構成されている。このように、外側ピストン52の第一ピストン筒部52dの外縁は、第三Oリング63を介して第二摺動面41e1と全周に渡って接触し、外側ピストン52の第二ピストン筒部52fの外縁は、第四Oリング64を介して第三摺動面41f1と全周に渡って接触している。
【0031】
外側ピストン52は、内側ピストン51の後方に隣接して、回転軸線15方向に沿って摺動可能に設けられている。外側ピストン52は、内側ピストン51と離脱可能に当接する。第一当接部52aと第一内側ピストン部51aは、対向している。第三当接部52cと第三内側ピストン部51cは、対向している。このように、当接部52a〜52cは、内側ピストン51の後方に隣接している。内側ピストン51が後方に摺動すると、第一内側ピストン部51aが第一当接部52aに当接する。
【0032】
ピストン接続部52eの前端面と第二筒部41eの後端面とは対向している。ピストン接続部52eの前端面と第二筒部41eの後端面との間には、第二油室46が形成されている。第三Oリング63は、第二摺動面41e1と全周に渡って当接している。第四Oリング64は、第三摺動面41f1と全周に渡って当接している。このため、第二油室46は、油密となっている。第二筒部41eには、第二油室46と連通する第二油路41e2が形成されている。
【0033】
スプリング支持部材82は、第一当接部52aの後方に配置され、第一筒部41bに取り付けられている。リターンスプリング81は、第一当接部52aとスプリング支持部材82との間に、周方向に複数設けられ、外側ピストン52を前方に付勢している。
【0034】
本実施形態では、内側ピストン51は、円環板形状でなく、第一内側ピストン部51aが第三内側ピストン部51cに対して前方に位置した屈曲した形状である。また、外側ピストン52の当接部52a〜52cは、円環板形状でなく、第一当接部52aが第三当接部52cに対して前方に位置した屈曲した形状である。これにより、第一当接部52aの後方と、第三遊星歯車機構PG3との間にスペースが生じ、このスペースにスプリング支持部材82及びリターンスプリング81を配置することができる。この結果、自動変速機100の軸線方向の寸法を小型化することができる。
【0035】
インナープレート71は、円環板形状であり、第三リングギヤR3の外周部に、第三リングギヤR3に対して周方向に移動不能、且つ、回転軸線15方向に沿って移動可能に設けられている。インナープレート71の両面には、摩擦材が設けられている。複数のアウタープレート72は、円環板形状であり、ハウジング13の内周面に、ハウジング13に対して周方向に移動不能、且つ、回転軸線15方向に沿って移動可能に設けられている。インナープレート71とアウタープレート72は、交互に設けられている。
【0036】
被押圧アウタープレート73は、円環板形状であり、一番前方のインナープレート71の前方に隣接して配置され、ハウジング13の内周面に、周方向に移動不能、且つ、回転軸線15方向に沿って移動可能に設けられている。外側ピストン52がその摺動範囲の一番前方に位置している状態では、第二ピストン筒部52fの後端は被押圧アウタープレート73と所定の間隔をおいて対向している。支持アウタープレート74は、円環板形状であり、一番後方のインナープレート71の後方に隣接して配置され、ハウジング13の内周部に、周方向に移動不能、且つ、後方に移動不能に設けられている。このように、インナープレート71は、アウタープレート72(被押圧アウタープレート73、支持アウタープレート74)の間に設けられている。
【0037】
第一油室45と第二油室46には、それぞれ、独立して油圧が供給される。第二油室46に油圧が供給されると、外側ピストン52が、後方に移動し、第二ピストン筒部52fによって、被押圧アウタープレート73が後方に押圧される。すると、複数のインナープレート71と複数のアウタープレート72とが被押圧アウタープレート73と支持アウタープレート74との間で挟まれて圧着され、複数のインナープレート71と複数のアウタープレート72との間で摩擦力が生じ、第三ブレーキB3が係合状態となる。この結果、第三リングギヤR3がハウジング13に固定される。第二油室46に油圧が供給されている状態で、第一油室45に油圧が供給されると、内側ピストン51が後方に移動して、内側ピストン51が外側ピストン52を後方に押圧し、第二ピストン筒部52fが、被押圧アウタープレート73を後方に押圧する押圧力が増大する。すると、複数のインナープレート71と複数のアウタープレート72との間で摩擦力が増大し、第三ブレーキB3における係合トルクが増大する。
【0038】
なお、本実施形態では、図2に示すように、自動変速機100において、1速〜3速が形成される場合には、第一油室45及び第二油室46の両方に油圧が供給され、第三ブレーキB3において、大きな係合力が発生する。
【0039】
第一油室45及び第二油室46に供給されている油圧が無くなると、リターンスプリング81によって、外側ピストン52が前方に付勢されて、外側ピストン52が前方に移動し、内側ピストン51が外側ピストン52によって前方に押圧されて移動し、第二ピストン筒部52fが被押圧アウタープレート73から離間する。すると、複数のインナープレート71と複数のアウタープレート72との間で生じている摩擦力が無くなり、第三ブレーキB3が切断状態となり、第三リングギヤR3がハウジング13に対して回転可能となる。
【0040】
自動変速機100において、4速を形成する場合には、第三ブレーキB3において大きな係合力を発生させる必要が無い。このため、自動変速機100において、4速を形成する場合には、第二油室46のみに油圧が供給される。このように、本実施形態の第三ブレーキB3は、ダブルチャンバー式であるので、第三ブレーキB3の係合力を2段階に可変とすることができる。
【0041】
第二油室46に供給されている油圧が無くなると、リターンスプリング81によって、外側ピストン52が前方に付勢されて、外側ピストン52が前方に移動し、第二ピストン筒部52fが被押圧アウタープレート73から離間する。すると、複数のインナープレート71と複数のアウタープレート72との間で生じている摩擦力が無くなり、第三ブレーキB3が切断状態となり、第三リングギヤR3がハウジング13に対して回転可能となる。
【0042】
(本実施形態の効果)
このように、サポート部材41は、外周面に第一摺動面41b1が形成された第一筒部41bと、第一筒部41bの外周側に形成され、内周面に第二摺動面41e1が形成された第二筒部41eと、内径が第二筒部41eの内径よりも大きく、第二筒部41eの後端(回転軸線15方向の他端側の端部)に接続し、内周面に第三摺動面41f1が形成された第三筒部41fを有している。そして、内側ピストン51の内縁は、第一Oリング61を介して第一摺動面41b1と全周に渡って接触し、内側ピストン51の外縁は、第二Oリング62を介して第二摺動面41e1と全周に渡って接触している。そして、外側ピストン52の第一ピストン筒部52dの外縁は、第三Oリング63を介して第二摺動面41e1と全周に渡って接触し、外側ピストン52の第二ピストン筒部52fの外縁は、第四Oリング64を介して第三摺動面41f1と全周に渡って接触している。これにより、内側ピストン51の外縁と、外側ピストン52の第一ピストン筒部52dの外縁は、共通の第二摺動面41e1と全周に渡って接触している。このため、サポート部材41に、4つの摺動面を形成すること無く、3つの摺動面を形成するだけで、ダブルチャンバー式の第三ブレーキB3を構成することができる。この結果、サポート部材41から摺動面を1つ削減することができ、摺動面を形成するための加工コストを低減させることができ、製造コストを低減させることができるダブルチャンバー式の第三ブレーキB3を有する自動変速機100を提供することができる。
【0043】
外側ピストン52は、第一ピストン筒部52dの内周側に延在し、内側ピストン51と隣接して形成された当接部52a〜52cを有する。このため、第一油室45に油圧が供給された場合に、当接部52a〜52cによって、外側ピストン52が確実に内側ピストン51によって後方に押圧される。また、第三当接部52cには、当接部52a〜52cと内側ピストン51との間の空間と、内側ピストン51と反対側の第三当接部52cの面とを連通する流通穴52c1が形成されている。これにより、内側ピストン51と外側ピストン52との間の空間にある空気が、複数の流通穴52c1を流通して、外側ピストン52の後方の空間に排出される。また、外側ピストン52の後方の空間にある空気が、複数の流通穴52c1を流通して、内側ピストン51と外側ピストン52との間の空間に流入する。このため、外側ピストン52の内側ピストン51に対する前後方向の相対移動が阻害されない。この結果、第三ブレーキB3において係合トルクを迅速に発生させることができる。
【0044】
(別の実施形態)
内側ピストン51は円環板形状であっても差し支え無い。この実施形態では、外側ピストン52の第一ピストン筒部52dの前端に接続して、第一ピストン筒部52dの内周側に延在する当接部は、円環板形状である。
【0045】
上記説明した実施形態では、第三ブレーキB3のみがダブルチャンバー式である。しかし、第一ブレーキB1や第二ブレーキB2も、第三ブレーキB3と同様の構造のダブルチャンバー式である実施形態であっても差し支え無い。
【0046】
本実施形態のように、4つの摺動面でなく、3つの摺動面を有するダブルチャンバー式のブレーキは、図1に示される構成の自動変速機100だけでなく、図1に示される以外の構成の自動変速機のブレーキにも適用可能なことは言うまでも無い。
【符号の説明】
【0047】
13…ハウジング、41…サポート部材、41a…第一接続部(接続部)、41b…第一筒部、41b1…第一摺動面、41c…第二接続部(接続部)、41d…第三接続部(接続部)、41e…第二筒部、41e1…第二摺動面、41f…第三筒部、41f1…第三摺動面、45…第一油室、46…第二油室、51…内側ピストン、52…外側ピストン、52a…第一当接部(当接部)、52b…第二当接部(当接部)、52c…第三当接部(当接部)、52c1…流通穴、52d…第一ピストン筒部、52e…ピストン接続部、52f…第二ピストン筒部、100…自動変速機、71…インナープレート、72…アウタープレート、B3…第三ブレーキ(ダブルチャンバー式のブレーキ)、R3…第三リングギヤ(第三遊星歯車機構PG3の一要素)、PG1…第一遊星歯車機構、PG2…第二遊星歯車機構、PG3…第三遊星歯車機構、PG4…第四遊星歯車機構
図1
図2
図3
図4