特許第6607114号(P6607114)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6607114
(24)【登録日】2019年11月1日
(45)【発行日】2019年11月20日
(54)【発明の名称】打楽器用ペダル装置
(51)【国際特許分類】
   G10D 13/00 20060101AFI20191111BHJP
   G05G 1/30 20080401ALI20191111BHJP
   G10D 13/02 20060101ALI20191111BHJP
【FI】
   G10D13/00 191
   G05G1/30 Z
   G10D13/02 100
【請求項の数】7
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2016-60919(P2016-60919)
(22)【出願日】2016年3月24日
(65)【公開番号】特開2017-173642(P2017-173642A)
(43)【公開日】2017年9月28日
【審査請求日】2018年2月20日
(73)【特許権者】
【識別番号】000004075
【氏名又は名称】ヤマハ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100077539
【弁理士】
【氏名又は名称】飯塚 義仁
(74)【代理人】
【識別番号】100125265
【弁理士】
【氏名又は名称】貝塚 亮平
(72)【発明者】
【氏名】重永 文博
(72)【発明者】
【氏名】渡辺 裕恭
(72)【発明者】
【氏名】藤田 知宏
(72)【発明者】
【氏名】瀬戸 誠
【審査官】 大野 弘
(56)【参考文献】
【文献】 米国特許出願公開第2015/0082968(US,A1)
【文献】 米国特許第07777114(US,B1)
【文献】 特開2003−091276(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G10D 13/00
G05G 1/30
G10D 13/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
フレームと、
回転軸と、
前記フレームとは別体から成り、前記回転軸を回転自在に支持する支持部と、
支持部が締結される被締結部材と
を備え、前記支持部が前記被締結部材に対して締結されることによって、前記支持部が前記フレームに対して相対的に固定された位置に取り付けられ、
前記支持部は、前記被締結部材に対する取り付け位置を調整するための位置調整機構を備え、
前記位置調整機構は、前記支持部と前記被締結部材との間に配置された調整部材からなることを特徴とす打楽器用ペダル装置。
【請求項2】
前記支持部は、前記被締結部材に対する取り付け位置を規定する位置決め機構を備えることを特徴とする請求項1に記載の打楽器用ペダル装置。
【請求項3】
前記位置決め機構は、前記被締結部材に対して複数の当接面を持つように形成された取り付け部からなることを特徴とする請求項2に記載の打楽器用ペダル装置。
【請求項4】
フレームと、
回転軸と、
前記フレームとは別体から成り、前記回転軸を回転自在に支持する支持部と、
支持部が締結される被締結部材と
を備え、前記支持部が前記被締結部材に対して締結されることによって、前記支持部が前記フレームに対して相対的に固定された位置に取り付けられ、
前記支持部は、前記被締結部材に対する取り付け位置を規定する位置決め機構を備え、
前記位置決め機構は、前記被締結部材に対して2つの当接面を持つように形成された取り付け部からなり、該2つの当接面が略直角を成していることを特徴とする打楽器用ペダル装置。
【請求項5】
前記支持部は、前記被締結部材に対する取り付け位置を調整するための位置調整機構を備えることを特徴とする請求項に記載の打楽器用ペダル装置。
【請求項6】
フットボードと、
前記フットボードの踏み込みに応じて前記回転軸を回転する伝達機構と、
を更に備え、
前記被締結部材は前記フレームであることを特徴とする請求項1乃至5の何れかに記載の打楽器用ペダル装置。
【請求項7】
フットボードと、
前記フレームに取り付けられたヒール部と、
を更に備え、
前記回転軸は前記フットボードの後端に備えられ、
前記被締結部材は前記フレームまたは前記ヒール部であることを特徴とする請求項1乃至5の何れかに記載の打楽器用ペダル装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、例えばドラムセットのバスドラムなどの打楽器を演奏する際に用いる打楽器用ペダル装置に関し、特に回転軸の支持構造の改良に関する。
【0002】
図7(a)は、従来のペダル装置100の側面図を示し、(b)は、(a)のペダル装置100を矢印Eから見た正面図を示す。図7(a)、(b)に示す通り、ペダル装置100のフレーム110は、アンダープレート111上に立設された左右1対の支柱112を備え、支柱112の上端に備わる支持部113が、図示しないベアリングを介して回転軸102を回転自在に支持している。この回転軸102には、ロッカ部材103が固定され、該ロッカ部材103には、先端部にビーター107を有するロッド105が取り付けられる。フットボード106の前端には、例えばチェーン部材からなる伝達機構104の一端が接続され、該伝達機構104は他端においてロッカ部材103に接続される。そして、ユーザによるフットボード106の踏み込み操作に応じて、伝達機構104を介して回転軸102が回転し、回転軸102の回転に応じてビーター107がバスドラム(不図示)を打撃する。かかる一般的なペダル装置の構造は、例えば下記特許文献1などに示されている。
【0003】
従来のペダル装置100のフレーム110では、支柱112と支持部113とは一体成形されている。このため、一体成形時のゆがみ等により、支持部113に回転軸102を取り付けたときに、該回転軸102にガタ付きがある場合がある。しかし、従来の一体成形フレーム110では、回転軸102の端部を支持する支持部113及びベアリングのフレーム110に対する相対的位置が固定されているので、フレーム110(支持部113)に対する回転軸102の相対的な取り付け位置を調整するという手段がとれず、回転軸102のガタ付きを修正することは、できなかった。
【0004】
また、支持部113が支柱112と一体成形される場合、一体成形時のゆがみ等により、左右の支持部113の間で回転軸102の中心がずれてしまう。左右の支持部113の間の距離が離れているので、フレーム110形成後の後加工により軸中心のずれを修正することは、困難である。
【0005】
また、フットボード106は、ヒンジ部108を介してヒール部114に対して回転自在に取り付けられている。ヒンジ部108の回転軸108aを支持する支持部115もまた、ヒール部114と一体成形される。したがってフットボード106の後端のヒンジ部108の支持構造においても、ヒール部114に対するヒンジ部108の相対的な取り付け位置が調整できないこと、左右の支持部115の間で回転軸108aの中心がずれてしまうこと、及び、後加工による回転軸108aの中心ずれ修正が困難であること、という問題がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特許第2738318号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
この発明は、フレームに対して回転軸を精度高く組み付けることができるようにした打楽器用ペダル装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
この発明は、フレームと、回転軸と、前記フレームとは別体から成り、前記回転軸を回転自在に支持する支持部と、支持部が締結される被締結部材とを備え、前記支持部が前記被締結部材に対して締結されることによって、前記支持部が前記フレームに対して相対的に固定された位置に取り付けられ、前記支持部は、前記被締結部材に対する取り付け位置を調整するための位置調整機構を備え、前記位置調整機構は、前記支持部と前記被締結部材との間に配置された調整部材からなることを特徴とする打楽器用ペダル装置である。また、別の観点によれば、この発明は、フレームと、回転軸と、前記フレームとは別体から成り、前記回転軸を回転自在に支持する支持部と、支持部が締結される被締結部材とを備え、前記支持部が前記被締結部材に対して締結されることによって、前記支持部が前記フレームに対して相対的に固定された位置に取り付けられ、前記支持部は、前記被締結部材に対する取り付け位置を規定する位置決め機構を備え、前記位置決め機構は、前記被締結部材に対して2つの当接面を持つように形成された取り付け部からなり、該2つの当接面が略直角を成していることを特徴とする打楽器用ペダル装置である。
【0009】
この発明に係る打楽器用ペダル装置によれば、回転軸を回転自在に支持する支持部を、フレームとは別体で構成し、この支持部を被締結部材に対して締結することによって、前記支持部が前記フレームに対して相対的に固定された位置に取り付けられる。この構成により、フレームに対して支持部を取り付ける際に、該支持部のフレームに対する取り付け位置を調整することが可能となる。この取り付け位置の調整により、例えば、回転軸の軸中心を合わせることが可能となる。したがって、フレームと支持部を一体成形する従来技術に比べて、フレームに対して回転軸を精度高く組み付けることが可能となる。
【発明の効果】
【0010】
この発明に係る打楽器用ペダル装置によれば、フレームに対して回転軸を精度高く組み付けることができる、という優れた効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】この発明の一実施形態に係る打楽器用ペダル装置の側面図。
図2図1に示す打楽器用ペダル装置の正面図。
図3図1に示す打楽器用ペダル装置の後端部分を上から見た平面図。
図4】(a)図1に示すペダル装置を矢印Aから見た斜視図であって、伝達機構等を取り外した状態を示し、(b)は回転軸支持部を抽出して示す斜視図であり、(c)は回転軸支持部を取り外したフレーム(支柱)を示す斜視図、(d)は、(a)において回転軸を取り付けた状態を示す。
図5】回転軸支持部の一実施形態であって、ネジ穴が長穴からなる構成例を示す正面図。
図6】(a)図1に示すペダル装置の後端部分を矢印Bの示す部分を見た斜視図であって、伝達機構等を取り外した状態を示し、(b)はヒール部支持部を抽出して示す斜視図であり、(c)はヒール部支持部の底面図、(d)はヒール部支持部を取り外したヒール部を示す斜視図。
図7】(a)従来のペダル装置の側面図、(b)は(a)を矢印Eから見た正面図。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、添付図面を参照して、この発明に係る打楽器用ペダル装置の一実施形態ついて詳細に説明する。打楽器用ペダル装置(以下、単に「ペダル装置」とも言う)は、例えばドラムセットのバスドラムを演奏する際に用いる。
【0013】
図1は、ペダル装置の一例を示す側面図であり、図2は、図1のペダル装置を矢印Aから見た正面図である。以下の説明において、ペダル装置1の前後上下方向は、ペダル装置1が水平な床面に載置された状態を基準とし、図1の左側をペダル装置1の前方とし、図1の上側をペダル装置1の上方とする。
【0014】
図1及び図2に示すように、ペダル装置1は、床面に設置されるフレーム10を備えている。フレーム10は、アンダープレート11と、アンダープレート11の前端に設けられた左右一対の支柱12a、12bを含む。支柱12a、12bの上端には、それぞれ、該支柱12a、12bと別体からなり、回転軸2の両端を回転自在に支持する回転軸支持部13a、13bが取り付けられている。回転軸支持部13a、13bが支柱12a、12bの上端に取り付けられることにより、回転軸2がフレーム10の支柱12a、12bに対して回転自在に取り付けられる。すなわち、この場合、フレーム10の支柱12a、12bが、回転軸支持部13a、13bの締結される被締結部材となる。
【0015】
回転軸2の略中央にはロッカ部材3が固定されており、該ロッカ部材3に取り付けられたロッド5の先端にビーター7が取り付けられている。ロッカ部材3、ロッド5及びビーター7が、打撃機構を構成する。ロッカ部材3には、例えばチェーン部材からなる伝達機構4の上端が連結され、該伝達機構4の下端にはフットボード6が連結される。
【0016】
図3は、ペダル装置1の後端を上から見た平面図であって、ペダル装置1の前端部分の図示は省略している。図1及び図3に示す通り、フットボード6は、後端にヒンジ部8を備える。アンダープレート11の後端には、ヒール部14が設けられている。ヒール部14には、該ヒール部14とは別体からなり、ヒンジ部8の回転軸8aの両端を回転自在に支持する左右1対のヒンジ部支持部15a、15bが取り付けられている。ヒンジ部支持部15a、15bがヒール部14に取り付けられることにより、ヒンジ部8の回転軸8aがフレーム10のヒール部14に対して回転自在に取り付けられる。なお、ヒール部14の上面は例えばゴムからなるカバー部材16で覆われている。すなわち、この場合、ヒール部14が、ヒンジ部支持部15a、15bの締結される被締結部材となる。
【0017】
ユーザがフットボード6を踏み込むと、フットボード6は、図1に示された状態から、ヒンジ部8を支点に下方に枢動する。フットボード6の枢動に応じて、伝達機構4が下方に移動する。この伝達機構4の下方移動により、回転軸2が回転軸支持部13a、13bを支点に前方に回転する。すなわち、フットボード6の踏み込みに応じた回転力は、伝達機構4を介して回転軸2に伝達される。そして、回転軸2の回転に応じてビーター7が、図示しないバスドラムのドラムヘッドを打撃する。ユーザがフットボード2の踏み込みを解くと、フットボード6は、回転軸2の一端に連結された復帰用ばね9(図2参照)により付与された上方への復帰習性により、図1に示す位置に復帰する。
【0018】
次に、図4を参照して、回転軸支持部13a、13bの詳細な構成例について説明する。図4(a)は、ペダル装置1を図1の矢印Aから見た斜視図であって、回転軸2、伝達機構4等を取り外した状態を示し、後端側の図示を省略する。図4(b)は1つの回転軸支持部13aを拡大して示す斜視図を示し、(c)は、(a)において回転軸支持部13a、13bを取り外した状態を示す。
【0019】
図4(b)に示す通り、回転軸支持部13aは、回転軸2の端部が挿入される貫通穴30を備える。貫通穴30にはベアリング(図4(d)の符号34a、34b)が組み込まれている。回転軸支持部13aは、その下端に支柱12aに対する取り付け部として、2つの取り付け面31、32を備える。第1の取り付け面31は、支柱12aの上端面と略平行面、言い換えれば支柱12aの長さ方向に対して略直交面に、形成される。第2の取り付け面32は、前記第1の取り付け面31から下方に延びるように形成された脚部35の1側面であって、該第1の取り付け面31に対して略直角に形成される。該脚部35の他方の側面(第2の取り付け面32に対向する面)には、回転軸支持部13aを支柱12aに固定するためのネジを取り付けるネジ穴33が備わる。
【0020】
回転軸支持部13bは、図4(b)に示す回転軸支持部13aと同様な、貫通穴30と、支柱12bに対する取り付け面となる2面31、32と、ネジ穴33とを有する構成であり、その図示は省略する。
【0021】
各支柱12a、12bは、図4(c)に示す通り、上端に回転軸支持部13a、13bの各第1の取り付け面31に当接する第1当接面21a、21bと、回転軸支持部13a、13bの各第2の取り付け面32に当接する第2当接面22a、22bを備える。第2当接面22a、22bには、回転軸支持部13a、13bのネジ穴33に対応するネジ穴23a、23bが備わる。また、支柱12aと支柱12bの上端の間には、支柱12a、12bと一体成形されたサブフレーム12cが設けられている。支柱12a、12bの間に回転軸2と平行にサブフレーム12cを設けることにより、フレーム10の構造を安定させる。
【0022】
左右の支柱12a、12bは、第1当接面21a及び21bの平面度、及び、第2当接面22a及び22bの平面度を、後加工により、合わせるように形成されている。この左右の支柱12a,12bの間で平面度を合わせる加工は、平面に対する加工であるため高精度で行うことができる。これにより、各支柱12a,12bに取り付けられた回転軸支持部13a、13bの間で、回転軸2の中心を高精度で合わせることが可能となる。
【0023】
支柱12a,12bに対する回転軸支持部13a、13bの取り付け作業手順例を説明する。まず、回転軸2の両端にベアリング34a、34bを介して回転軸支持部13a及び13bを取り付け、次に、回転軸支持部13a、13bの2つの取り付け面31、32を支柱12a、12bの当接面21a、21b、22a、22bに当接し、そして、ネジ穴33、23a、23bに取り付けたネジにより、回転軸支持部13a、13bを支柱12a、12bに固定する。図4(d)は、(a)において回転軸2を取り付けた状態を示す。なお、取り付け作業の手順は、上記の一例に限らず、どのような手順でもよい。
【0024】
支柱12a,12bに対して回転軸支持部13a、13bを取り付ける際、回転軸支持部13a、13bが、2つの取り付け面31及び32で、支柱12a,12bに当接する構成であるため、その取り付け位置を、該2面31、32により規定される位置で、位置決めできる。すなわち、回転軸支持部13a、13bの位置決め機構は、該回転軸支持部13a、13bが支柱12a、12bに対して2以上の複数面(31及び32)で当接するようにように形成された取り付け部からなる。
【0025】
また、支柱12a、12bに対して回転軸支持部13a、13bを取り付ける際、例えば、ネジ穴33、23a、23bに取り付けたネジのネジ込み量の調整や、回転軸支持部13a、13bを左右両側から押さえつけた状態で固定すること等により、回転軸支持部13a、13bの取り付け位置を微調整できる。この取り付け位置調整により、フレーム10に組み付けた回転軸2のガタ付きを解消することができる。
【0026】
図5は、一実施形態として、回転軸支持部13a、13bのネジ穴33が左右方向に延びた長穴からなる構成例を示す。この場合、ネジ穴33が、回転軸支持部13a、13bの取り付け位置を調整するため位置調整機構として機能する。ユーザは、ネジ穴33の許容する範囲内で、支柱12a、12bに対する回転軸支持部13a、13bの取り付け位置を左右方向に調整できる。なお、ネジ穴33の形状は、例えば、上下方向に延びた長穴、あるいは、左右方向及び上下方向に位置調整可能な形状など、その他適宜の形状であってよい。
【0027】
このように、この実施例に係るペダル装置1によれば、回転軸支持部13a、13bを支柱12a、12bとは別体で構成したことにより、フレーム10の支柱12a、12bに対して回転軸2を精度高く組み付けることが可能となる。
【0028】
次に、図6を参照して、ヒンジ部支持部15a,15bの詳細な構成例について説明する。図6(a)は、ペダル装置1の後端を図1の矢印Bの示す部分を見た斜視図であって、カバー部材16を取り外した状態を示しており、前端側の図示を省略している。図6(a)に示す通り、ヒール部14の左右端部にヒンジ部支持部15a、15bが配置される。
【0029】
図6(b)は、1つのヒンジ部支持部15aを拡大して示す斜視図である。ヒンジ部支持部15aは、ヒンジ部8の回転軸8aを支持するための貫通穴50を備え、貫通穴50にはベアリング(不図示)が組み込まれる。ヒンジ部支持部15aは、ヒール部14に対する取り付け部として、2つの取り付け面51、52を備える。第1の取り付け面51は、ヒンジ部支持部15aの底面に対応し、第2の取り付け面52は、ヒンジ部支持部15aの後端側面に対応する。第1の取り付け面51と第2の取り付け面52とは、互いが略直角に形成される。図6(c)は、ヒンジ部支持部15aの底面図を示す。ヒンジ部支持部15aの底面(第1の取り付け面51)には、ヒンジ部支持部15aをヒール部14に固定するためのネジを取り付けるためのネジ穴53が備わる。ネジ穴53は、左右方向に延びた長穴からなり、該ネジ穴53の範囲で、ヒール部14に対するヒンジ部支持部15aの取り付け位置を左右方向に調整できる。
【0030】
ヒンジ部支持部15bは、図6(b)に示すヒンジ部支持部15aと同様な、貫通穴50と、2つの取り付け面51、52と、ネジ穴53とを有する構成であり、その図示は省略する。
【0031】
図6(d)は、(a)においてヒンジ部支持部15a,15bを取り外した状態を示す。(d)に示す通り、ヒール部14は、基部17と該基部17から立ち上がるヒール部本体18からなる。基部17とヒール部本体18とは一体成形される。基部17の左右端部には、ヒンジ部支持部15a、15bの第1の取り付け面51に当接する第1の当接面41a、41bが備わり、ヒール部本体18の側面には、ヒンジ部支持部15a、15bの第2の取り付け面52に当接する第2の当接面42a、42bが備わる。第1の当接面41a、41bには、ヒンジ部支持部15a、15bのネジ穴53に対応するネジ穴43a、43bが備わる。
【0032】
ヒール部14も、第1の当接面41aと41bの平面度及び第2の当接面42aと42bの平面度を、後加工により合わせるように形成される。これにより、ヒール部14に取り付けられた左右のヒンジ部支持部15a、15bの間で、ヒンジ部8の回転軸8aの中心を高精度に合わせることが可能となる。
【0033】
ヒール部14に対するヒンジ部支持部15a、15bの取り付け作業手順例を説明する。まず、ヒンジ部8の回転軸8aの両端にヒンジ部支持部15a、15bを取り付け、次に、ヒンジ部支持部15a、15bの2つの取り付け面51、52を、ヒール部14の当接面41a、41b、42a、42bに当接し、そして、ネジ穴53、43a、43bに取り付けたネジにより、ヒンジ部支持部15a、15bをヒール部14に固定する。なお、取り付け作業の手順は、上記の一例に限らず、どのような手順でもよい。
【0034】
ヒール部14に対してヒンジ部支持部15a、15bを取り付ける際、各ヒンジ部支持部15a、15bの2つの取り付け面51及び52が、ヒール部14の当接面41a、41b、42a、42bに当接する構成により、その取り付け位置を、該2面51、52により規定される位置で位置決めできる。すなわち、ヒンジ部支持部15a、15bは、位置決め機構として、該ヒンジ部支持部15a、15bがヒール部14に対して2以上の複数面(51及び52)で当接するように形成された取り付け部を備える。
【0035】
また、ヒール部14に対してヒンジ部支持部15a、15bを取り付ける際、例えば、ネジ穴53、43a、43bに取り付けたネジのねじ込み量の調整や、ヒンジ部支持部15a、15bを例えば左右両側から押さえつけて固定すること等により、ヒール部14に対するヒンジ部支持部15a、15bの取り付け位置を微調整することができる。この取り付け位置調整により、ヒール部14に組み付けたヒンジ部8の回転軸8aのガタ付きを解消することができる。
【0036】
また、ヒンジ部支持部15a、15bのネジ穴53が長穴で形成されているので、この長穴が位置調整機構として機能する。ユーザは、ネジ穴53の許容する範囲内で、ヒンジ部支持部15a、15bの取り付け位置を左右方向に調整できる。ネジ穴53の形状は、前後方向に延びた長穴、あるいは、左右方向及び前後方向に位置調整可能な形状など、その他適宜の形状であってよい。
【0037】
このように、この実施例に係るペダル装置1によれば、ヒンジ部支持部15a、15bをヒール部14とは別体で構成したことにより、ヒール部14に対してヒンジ部8の回転軸8aを精度高く組み付けることが可能となる。
【0038】
以上、この発明の一実施形態を説明したが、この発明は上記実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲、及び明細書と図面に記載された技術的思想の範囲内において種々の変形が可能である。
【0039】
例えば、回転軸支持部13a、13bに備わる取り付け位置調整機構の別の例として、回転軸支持部13a、13bと支柱12a、12bの間に、位置調整を行うための調整部材を配置するようにしてもよい。調整部材は、例えばワッシャーやバネ等の弾性体である。第1取り付け面31と第1当接面21a,21bの間に配置した調整部材により上下方向の位置を調整し、また、第2取り付け面32と第2当接面22a,22bの間に配置した調整部材により、前後方向の位置を調整できる。ヒンジ部支持部15a,15bの取り付け位置調整機構としても、ヒンジ部支持部15a,15bとヒール部14の間に配置された調整部材を適用し得る。
【0040】
また、回転軸支持部13a、13bの位置決め機構は、2以上の取り付け面31、32で支柱12a、12bに当接する構成に限らず、位置決めするためのガイド穴、あるいは、ガイド溝を、回転軸支持部13a、13b又は支柱12a,12bに備える構成など、その他適宜の構成であってよい。また、ヒンジ部支持部15a、15bの位置決め機構も、2以上の取り付け面51、52でヒール部14に当接する構成に限らず、位置決めするためのガイド穴、あるいは、ガイド溝を、ヒンジ部支持部15a、15b又はヒール部14の一方に備える構成など、その他適宜の構成であってよい。
【符号の説明】
【0041】
1 打楽器用ペダル装置、2 回転軸、3 ロッカ部材、4 伝達機構、5 ロッド、6 フットボード、7 ビーター、8 ヒンジ部、10 フレーム、11 アンダープレート、12a,12b 支柱、13a,13b 回転軸支持部、14 ヒール部、15,15b ヒンジ部支持部、31,32 取り付け面(取り付け部)、51,52 取り付け面(取り付け部)
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7