特許第6607118号(P6607118)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6607118
(24)【登録日】2019年11月1日
(45)【発行日】2019年11月20日
(54)【発明の名称】認証システム
(51)【国際特許分類】
   B41J 29/00 20060101AFI20191111BHJP
   H04L 9/32 20060101ALI20191111BHJP
   G06F 21/44 20130101ALI20191111BHJP
   H02J 7/10 20060101ALI20191111BHJP
   B41J 29/38 20060101ALI20191111BHJP
   B41J 2/175 20060101ALI20191111BHJP
【FI】
   B41J29/00 Z
   H04L9/00 673B
   G06F21/44
   H02J7/10 A
   B41J29/38 Z
   B41J2/175 167
【請求項の数】6
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2016-64136(P2016-64136)
(22)【出願日】2016年3月28日
(65)【公開番号】特開2017-177380(P2017-177380A)
(43)【公開日】2017年10月5日
【審査請求日】2018年11月28日
(73)【特許権者】
【識別番号】308014341
【氏名又は名称】富士通セミコンダクター株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100090273
【弁理士】
【氏名又は名称】國分 孝悦
(72)【発明者】
【氏名】高井 一章
【審査官】 上田 正樹
(56)【参考文献】
【文献】 特開平11−084589(JP,A)
【文献】 特開2012−088869(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2012/0204040(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B41J 29/00
B41J 2/175
B41J 29/38
G06F 21/44
H02J 7/10
H04L 9/32
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
被認証装置と、
前記被認証装置の認証を行う認証装置とを有し、
前記被認証装置は、第1の端子及び第2の端子を有する第1の強誘電体容量を有し、
前記認証装置は、
前記第1の強誘電体容量の前記第1の端子に接続される第1のノードと、
前記第1の強誘電体容量の前記第2の端子に接続される第2のノードと、
第3のノードと、
前記第2のノードと前記第3のノードとの間に接続される第1の負荷と、
前記第1のノードと前記第3のノードの電圧を制御する電源と、
前記第2のノードの電圧が閾値範囲内であるか否かを照合する電圧モニタとを有し、
前記電源は、前記第1のノードに対する前記第2のノードの電圧を負の電圧にし、その後、前記第2のノードに対して切断状態にし、その後、前記第1のノードに対する前記第3のノードの電圧を正の電圧にし、
前記電圧モニタは、前記電源が前記第1のノードに対する前記第3のノードの電圧を正の電圧にしている時に、前記第2のノードの電圧が閾値範囲内であるか否かを照合することを特徴とする認証システム。
【請求項2】
前記電圧モニタは、
第4のノードと、
第5のノードと、
前記第1のノードと前記第4のノードとの間に接続される第2の強誘電体容量と、
前記第4のノードと前記第3のノードとの間に接続される第2の負荷と、
前記第1のノードと前記第5のノードとの間に接続される第3の強誘電体容量と、
前記第5のノードと前記第3のノードとの間に接続される第3の負荷と、
前記第2のノードの電圧が前記第4のノードの電圧と前記第5のノードの電圧との間の電圧であるか否かを照合する比較器とを有することを特徴とする請求項1記載の認証システム。
【請求項3】
前記電源は、さらに、前記第1のノードに正の電圧パルスを印加するステップと、前記第2のノードに正の電圧パルスを印加するステップとを異なるタイミングで行うことを特徴とする請求項1又は2記載の認証システム。
【請求項4】
前記第1の負荷は、容量値を変更可能な容量であり、
前記閾値範囲は、前記容量の容量値に応じて変化することを特徴とする請求項1〜のいずれか1項に記載の認証システム。
【請求項5】
前記電源は、前記第3のノードに印加する前記正の電圧の値を変更可能であり、
前記閾値範囲は、前記正の電圧の値に応じて変化することを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の認証システム。
【請求項6】
前記第1の負荷は、抵抗値を変更可能な抵抗であり、
前記閾値範囲は、前記抵抗の抵抗値に応じて変化することを特徴とする請求項1〜のいずれか1項に記載の認証システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、認証システムに関する。
【背景技術】
【0002】
マスタ機器とスレーブ機器との間で一方向または双方向の認証を行う認証システムが知られている(特許文献1参照)。マスタ機器とスレーブ機器は、それぞれ、認証処理用のキーコードを不揮発的に記憶するマスタ側記憶デバイスとスレーブ側記憶デバイスを有する。少なくともスレーブ側記憶デバイスは、強誘電体素子のヒステリシス特性を利用した不揮発性ロジック、または、強誘電体メモリである。
【0003】
また、複数のメモリセルがアレイ状に配置されたメモリセルアレイを備える不揮発性記憶装置が知られている(特許文献2参照)。複数のメモリセルは、可変状態のメモリセルと、初期状態のメモリセルとを含む。可変状態のメモリセルは、異なる複数の電気的信号が印加されることによって、抵抗値が複数の可変抵抗値範囲の間を可逆的に遷移する。初期状態のメモリセルは、可変状態に変化させるような電気的ストレスであるフォーミングストレスが印加されない限り可変状態とならず、かつ、抵抗値が可変抵抗値範囲のいずれとも重複しない初期抵抗値範囲にある。メモリセルアレイにおいて、各メモリセルが初期状態にあるか可変状態にあるかの違いを利用してデータが記録されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2012−88869号公報
【特許文献2】特許第5689569号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
認証システムの解読技術が向上している。例えば、配線やトランジスタ等の回路情報を物理的に解読することが可能であり、その回路情報をそのまま複製することで、模造品を作製することができる。このため、デジタル的な被認証装置は、比較的容易に模造することができる。
【0006】
1つの側面では、本発明の目的は、解読が困難である認証システムを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
認証システムは、被認証装置と、前記被認証装置の認証を行う認証装置とを有し、前記被認証装置は、第1の端子及び第2の端子を有する第1の強誘電体容量を有し、前記認証装置は、前記第1の強誘電体容量の前記第1の端子に接続される第1のノードと、前記第1の強誘電体容量の前記第2の端子に接続される第2のノードと、第3のノードと、前記第2のノードと前記第3のノードとの間に接続される第1の負荷と、前記第1のノードと前記第3のノードの電圧を制御する電源と、前記第2のノードの電圧が閾値範囲内であるか否かを照合する電圧モニタとを有し、前記電源は、前記第1のノードに対する前記第2のノードの電圧を負の電圧にし、その後、前記第2のノードに対して切断状態にし、その後、前記第1のノードに対する前記第3のノードの電圧を正の電圧にし、前記電圧モニタは、前記電源が前記第1のノードに対する前記第3のノードの電圧を正の電圧にしている時に、前記第2のノードの電圧が閾値範囲内であるか否かを照合する。
【発明の効果】
【0008】
1つの側面では、解読が困難である認証システムを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1図1は、第1の実施形態による認証システムの構成例を示す回路図である。
図2図2は、第1の実施形態による認証システムの制御方法を示すタイミングチャートである。
図3図3は、第1の強誘電体容量のヒステリシス特性を示す図である。
図4図4は、第1のノード及び第2のノード間の電圧と、第2のノード及び第3のノード間の電圧を示す図である。
図5図5は、第1の強誘電体容量のヒステリシス特性の非線形特性を示す図である。
図6図6は、図1の電圧モニタの構成例を示す回路図である。
図7図7は、第1の強誘電体容量、第2の強誘電体容量及び第3の強誘電体容量の同じヒステリシス特性を示す図である。
図8図8は、第2の実施形態による認証システムの制御方法を示すタイミングチャートである。
図9図9は、第3の実施形態による認証システムの構成例を示す回路図である。
図10図10は、第3の実施形態による認証システムの制御方法を示すタイミングチャートである。
図11図11は、第4の実施形態による認証システムの構成例を示す回路図である。
図12図12は、第2のノードの電圧波形を示すタイムチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0010】
(第1の実施形態)
図1は、第1の実施形態による認証システムの構成例を示す回路図である。認証システムは、認証サーバ装置101と、クライアント装置102とを有する。クライアント装置102は、例えばインクカートリッジ等の被認証装置である。認証サーバ装置101は、例えばプリンタ等の認証装置であり、クライアント装置102の認証を行う。クライアント装置102を認証サーバ装置101に装着することにより、クライアント装置102は、認証サーバ装置101に電気的に接続される。すると、認証サーバ装置101は、クライアント装置102の認証を行う。
【0011】
クライアント装置102は、第1の端子(上側端子)及び第2の端子(下側端子)を有する第1の強誘電体容量Cf1を有する。認証サーバ装置101は、第1のノードNAと、第2のノードNBと、第3のノードNCと、スイッチSW1,SW2と、複数の容量C1〜Cnと、電源103と、電圧モニタ104とを有する。第1のノードNAは、第1の強誘電体容量Cf1の第1の端子に接続される。第2のノードNBは、第1の強誘電体容量Cf2の第2の端子に接続される。複数の容量C1〜Cnは、相互に容量値が異なり、スイッチSW2により第2のノードNBと第3のノードNCとの間に接続される第1の負荷である。容量C1の容量値は、複数の容量C1〜Cnの容量値の中の最小値である。容量Cnの容量値は、複数の容量C1〜Cnの容量値の中の最大値である。容量C1から容量Cnに向かって、容量値が順に大きくなっている。スイッチSW2は、認証毎に、複数の容量C1〜Cnの上側端子の中のいずれか1個を第2のノードNBにランダムに接続する。第3のノードNCは、複数の容量C1〜Cnの下側端子に共通に接続される。
【0012】
電源103は、第1のノードNA及び第3のノードNCの電圧を制御する。また、電源103は、スイッチSW1を介して、第2のノードNBに電圧を印加する。電圧モニタ104は、第2のノードNBの電圧が閾値範囲内であるか否かを照合し、認証結果信号OUTを出力する。具体的には、電圧モニタ104は、第2のノードNBの電圧が閾値範囲内である場合には、クライアント装置102が正規の被認証装置であるとして、認証成功の認証結果信号OUTを出力する。また、電圧モニタ104は、第2のノードNBの電圧が閾値範囲内でない場合には、クライアント装置102が正規の被認証装置でないとして、認証失敗の認証結果信号OUTを出力する。
【0013】
図2は本実施形態による認証システムの制御方法を示すタイミングチャートであり、図3は第1の強誘電体容量Cf1のヒステリシス特性300を示す図である。図3の横軸は、第1のノードNAに対する第2のノードNBの電圧Vabを示す。図3の縦軸は、第1の強誘電体容量Cf1の電荷量Qを示す。第1の強誘電体容量Cf1は、図3のヒステリシス特性300を有する。これに対し、容量C1〜Cnは、常誘電性の容量であり、ヒステリシス特性を有さない。
【0014】
クライアント装置102が認証サーバ装置101に接続されると、図2の認証処理が行われる。スイッチSW2は、認証毎に、複数の容量C1〜Cnの上側端子の中のいずれか1個の容量Cxを第2のノードNBにランダムに接続する。容量Cxは、複数の容量C1〜Cnの中で第2のノードNBに接続された1個の容量である。
【0015】
時刻t1の前では、スイッチSW1は、オン状態である。電源103は、第1のノードNA、第2のノードNB及び第3のノードNCに0Vを印加する。
【0016】
次に、時刻t1では、電源103は、第1のノードNAに正の電圧を印加する。すなわち、電源103は、第1のノードNAに対する第2のノードNBの電圧Vabを負の電圧にする。すると、時刻t2では、図3のヒステリシス特性300上の特性点が、前回の特性点の位置にかかわらず、特性点Q2に移動する。これにより、前回の特性点の状態をリセットすることができる。
【0017】
次に、時刻t3では、電源103は、第1のノードNAの電圧を0Vに戻す。すなわち、電源103は、第1のノードNAに対する第2のノードNBの電圧Vabを0Vにする。すると、時刻t4では、図3のヒステリシス特性300上の特性点が、特性点Q4に移動する。
【0018】
次に、時刻t5では、スイッチSW1は、オフ状態になり、電源103は、第2のノードNBに対して切断状態になる。
【0019】
次に、時刻t6では、電源103は、第3のノードNCに正の電圧V1を印加する。すなわち、電源103は、第1のノードNAに対する第3のノードNCの電圧を正の電圧にする。すると、時刻t7では、図3のヒステリシス特性300上の特性点が、スイッチSW2の接続状態に応じて、特性点Qc1〜Qcnの中のいずれか1個に移動する。スイッチSW2が容量C1を第2のノードNBに接続している状態では、図3のヒステリシス特性300上の特性点が、特性点Qc1に移動する。また、スイッチSW2が容量C2を第2のノードNBに接続している状態では、図3のヒステリシス特性300上の特性点が、特性点Qc2に移動する。また、スイッチSW2が容量Cnを第2のノードNBに接続している状態では、図3のヒステリシス特性300上の特性点が、特性点Qcnに移動する。第2のノードNBの電圧は、容量Cxと第1の強誘電体容量Cf1との容量比により決まり、スイッチSW2の接続先に応じて変わる。負荷線301は、小容量値の容量C1が接続された場合の負荷線であり、特性点Qc1の電圧Vabが低電圧になる。負荷線302は、中容量値の容量C2が接続された場合の負荷線であり、特性点Qc2の電圧Vabが中電圧になる。負荷線30nは、大容量値の容量Cnが接続された場合の負荷線であり、特性点Qcnの電圧Vabが高電圧になる。
【0020】
図4は、第1のノードNA及び第2のノードNB間の電圧と、第2のノードNB及び第3のノードNC間の電圧を示す図である。上記のように、ヒステリシス特性300は、容量C1の特性点Qc1と、容量C2の特性点Qc2と、容量Cnの特性点Qcnを有する。時刻t6では、電源103は、正の電圧V1(3.3V)を第3のノードNCに印加する。第1のノードNA及び第3のノードNC間の電圧は、電圧V1である。第2のノードNBの電圧は、容量Cxと第1の強誘電体容量Cf1とで容量分割された電圧になる。
【0021】
まず、スイッチSW2が容量C1を第2のノードNBに接続した場合を説明する。負荷線301は、容量C1が接続された場合のQ=C1×Vの負荷線である。第1のノードNA及び第2のノードNB間の電圧は電圧Vab1になり、第2のノードNB及び第3のノードNC間の電圧は電圧Vbc1になる。電圧Vab1と電圧Vbc1の加算値は、電圧V1になる。
【0022】
次に、スイッチSW2が容量C2を第2のノードNBに接続した場合を説明する。負荷線302は、容量C2が接続された場合のQ=C2×Vの負荷線である。第1のノードNA及び第2のノードNB間の電圧は電圧Vab2になり、第2のノードNB及び第3のノードNC間の電圧は電圧Vbc2になる。電圧Vab2と電圧Vbc2の加算値は、電圧V1になる。
【0023】
次に、スイッチSW2が容量Cnを第2のノードNBに接続した場合を説明する。負荷線30nは、容量Cnが接続された場合のQ=Cn×Vの負荷線である。第1のノードNA及び第2のノードNB間の電圧は電圧Vabnになり、第2のノードNB及び第3のノードNC間の電圧は電圧Vbcnになる。電圧Vabnと電圧Vbcnの加算値は、電圧V1になる。
【0024】
以上のように、第2のノードNBの電圧は、スイッチSW2により接続される容量Cxの容量値に応じて、非線形に変化する。そのため、クライアント装置102側で、第2のノードNBの認証電圧を予測することが困難であり、解読が極めて困難である。
【0025】
図5は、第1の強誘電体容量Cf1のヒステリシス特性300の非線形特性を示す図である。仮に、第1の強誘電体容量Cf1を、容量C1〜Cnと同様のヒステリシス特性を有さない常誘電性の容量に置き換えた場合には、電圧V及び電荷量Qの特性は、線形特性500になる。線形特性500は、容量C1が接続された場合の特性点Qc1と、容量C2が接続された場合の特性点Qc2xと、容量Cnが接続された場合の特性点Qcnxとを有する。線形特性500の場合では、第2のノードNBの認証電圧を予測することが比較的容易であり、解読も比較的容易である。これに対し、本実施形態では、ヒステリシス特性300により、第2のノードNBの電圧は、スイッチSW2により接続される容量Cxの容量値に応じて、非線形に変化するので、クライアント装置102側で、第2のノードNBの認証電圧を予測することが困難であり、解読が極めて困難である。
【0026】
また、第1の強誘電体容量Cf1のヒステリシス特性300は、電圧依存、周波数依存、及び温度依存が顕著で、かつ、製造条件に敏感なため、ヒステリシス特性300が一致した第1の強誘電体容量Cf1を複製するのは、製造上の難易度が高い。このため、クライアント装置102の模造が困難である。
【0027】
また、クライアント装置102側が第2のノードNBの電圧を制御して、第2のノードNBを認証用電圧レベルにするよう、クライアント装置102の模造品を作製することは難しい。認証サーバ装置101の認証用電圧レベルがいくらであるかをクライアント装置102側が知ることが困難なためである。
【0028】
図6は、図1の電圧モニタ104の構成例を示す回路図である。電圧モニタ104は、第4のノードNBaと、第5のノードNBbと、第2の強誘電体容量Cf2と、複数の容量C1a〜Cnaと、第3の強誘電体容量Cf3と、複数の容量C1b〜Cnbと、比較器601,602と、論理積(AND)回路603とを有する。第2の強誘電体容量Cf2及び第3の強誘電体容量Cf3は、第1の強誘電体容量Cf1に対し、同じ製造条件で製造され、同じヒステリシス特性300及び同じ温度特性等を有する。
【0029】
第2の強誘電体容量Cf2は、第1の強誘電体容量Cf1に対応し、図1の第1のノードNAと第4のノードNBaとの間に接続される。複数の容量C1a〜Cnaは、複数の容量C1〜Cnに対応し、スイッチSW3により第4のノードNBaと図1の第3のノードNCとの間に接続される第2の負荷である。容量C1a〜Cnaの容量値は、それぞれ、容量C1〜Cnの容量値に対して、0より大きくかつ1より小さい係数を乗じた値である。スイッチSW3は、スイッチSW2と同様に、認証毎に、複数の容量C1a〜Cnaの上側端子の中のいずれか1個を第4のノードNBaに接続する。第3のノードNCは、複数の容量C1a〜Cnaの下側端子に共通に接続される。
【0030】
第3の強誘電体容量Cf3は、第1の強誘電体容量Cf1に対応し、図1の第1のノードNAと第5のノードNBbとの間に接続される。複数の容量C1b〜Cnbは、複数の容量C1〜Cnに対応し、スイッチSW4により第5のノードNBbと図1の第3のノードNCとの間に接続される第3の負荷である。容量C1b〜Cnbの容量値は、それぞれ、容量C1〜Cnの容量値に対して、1より大きい係数を乗じた値である。スイッチSW4は、スイッチSW2と同様に、認証毎に、複数の容量C1b〜Cnbの上側端子の中のいずれか1個を第5のノードNBbに接続する。第3のノードNCは、複数の容量C1b〜Cnbの下側端子に共通に接続される。
【0031】
スイッチSW2、SW3及びSW4は、相互に同じ接続状態に制御される。例えば、スイッチSW1が第2のノードNBを容量C1に接続した場合には、スイッチSW3は、第4のノードNBaを容量C1aに接続し、スイッチSW4は、第5のノードNBbを容量C1bに接続する。また、スイッチSW2が第2のノードNBを容量C2に接続した場合には、スイッチSW3は、第4のノードNBaを容量C2aに接続し、スイッチSW4は、第5のノードNBbを容量C2bに接続する。
【0032】
図7は、第1の強誘電体容量Cf1、第2の強誘電体容量Cf2及び第3の強誘電体容量Cf3の同じヒステリシス特性300を示す図である。まず、スイッチSW2が第2のノードNBを容量C1に接続し、スイッチSW3が第4のノードNBaを容量C1aに接続し、スイッチSW4が第5のノードNBbを容量C1bに接続した場合を説明する。特性点Qc1は、第1の強誘電体容量Cf1の特性点であり、第2のノードNBの電圧を示す。特性点Qc1aは、第2の強誘電体容量Cf2の特性点であり、第4のノードNBaの電圧を示す。特性点Qc1bは、第3の強誘電体容量Cf3の特性点であり、第5のノードNBbの電圧を示す。
【0033】
比較器601は、第2のノードNBと第3のノードNCとの間の電圧Vbc1(特性点Qc1)が、第4のノードNBaと第3のノードNCとの間の電圧Vbc1a(特性点Qc1a)より低い場合にハイレベルを出力する。また、比較器601は、第2のノードNBと第3のノードNCとの間の電圧Vbc1(特性点Qc1)が、第4のノードNBaと第3のノードNCとの間の電圧Vbc1a(特性点Qc1a)より高い場合にローレベルを出力する。
【0034】
比較器602は、第2のノードNBと第3のノードNCとの間の電圧Vbc1(特性点Qc1)が、第5のノードNBbと第3のノードNCとの間の電圧Vbc1b(特性点Qc1b)より高い場合にハイレベルを出力する。また、比較器602は、第2のノードNBと第3のノードNCとの間の電圧Vbc1(特性点Qc1)が、第5のノードNBbと第3のノードNCとの間の電圧Vbc1b(特性点Qc1b)より低い場合にローレベルを出力する。
【0035】
論理積回路603は、比較器601及び602の出力信号が共にハイレベルの場合にハイレベルの認証結果信号OUTを出力し、それ以外の場合にはローレベルの認証結果信号OUTを出力する。すなわち、論理積回路603は、電圧Vbc1が閾値上限電圧Vbc1a及び閾値下限電圧Vbc1bの間の電圧である場合には、認証成功として、ハイレベルの認証結果信号OUTを出力する。また、論理積回路603は、電圧Vbc1が閾値上限電圧Vbc1a及び閾値下限電圧Vbc1bの間の電圧でない場合には、認証失敗として、ローレベルの認証結果信号OUTを出力する。
【0036】
次に、スイッチSW2が第2のノードNBを容量C2に接続し、スイッチSW3が第4のノードNBaを容量C2aに接続し、スイッチSW4が第5のノードNBbを容量C2bに接続した場合を説明する。特性点Qc2は、第1の強誘電体容量Cf1の特性点であり、第2のノードNBの電圧を示す。特性点Qc2aは、第2の強誘電体容量Cf2の特性点であり、第4のノードNBaの電圧を示す。特性点Qc2bは、第3の強誘電体容量Cf3の特性点であり、第5のノードNBbの電圧を示す。
【0037】
比較器601は、第2のノードNBと第3のノードNCとの間の電圧Vbc2(特性点Qc2)が、第4のノードNBaと第3のノードNCとの間の電圧Vbc2a(特性点Qc2a)より低い場合にハイレベルを出力する。また、比較器601は、第2のノードNBと第3のノードNCとの間の電圧Vbc2(特性点Qc2)が、第4のノードNBaと第3のノードNCとの間の電圧Vbc2a(特性点Qc2a)より高い場合にローレベルを出力する。
【0038】
比較器602は、第2のノードNBと第3のノードNCとの間の電圧Vbc2(特性点Qc2)が、第5のノードNBbと第3のノードNCとの間の電圧Vbc2b(特性点Qc2b)より高い場合にハイレベルを出力する。また、比較器602は、第2のノードNBと第3のノードNCとの間の電圧Vbc2(特性点Qc2)が、第5のノードNBbと第3のノードNCとの間の電圧Vbc2b(特性点Qc2b)より低い場合にローレベルを出力する。
【0039】
論理積回路603は、比較器601及び602の出力信号が共にハイレベルの場合にハイレベルの認証結果信号OUTを出力し、それ以外の場合にはローレベルの認証結果信号OUTを出力する。すなわち、論理積回路603は、電圧Vbc2が閾値上限電圧Vbc2a及び閾値下限電圧Vbc2bの間の電圧である場合には、認証成功として、ハイレベルの認証結果信号OUTを出力する。また、論理積回路603は、電圧Vbc2が閾値上限電圧Vbc2a及び閾値下限電圧Vbc2bの間の電圧でない場合には、認証失敗として、ローレベルの認証結果信号OUTを出力する。
【0040】
次に、スイッチSW2が第2のノードNBを容量Cnに接続し、スイッチSW3が第4のノードNBaを容量Cnaに接続し、スイッチSW4が第5のノードNBbを容量Cnbに接続した場合を説明する。特性点Qcnは、第1の強誘電体容量Cf1の特性点であり、第2のノードNBの電圧を示す。特性点Qcnaは、第2の強誘電体容量Cf2の特性点であり、第4のノードNBaの電圧を示す。特性点Qcnbは、第3の強誘電体容量Cf3の特性点であり、第5のノードNBbの電圧を示す。
【0041】
比較器601は、第2のノードNBと第3のノードNCとの間の電圧Vbcn(特性点Qcn)が、第4のノードNBaと第3のノードNCとの間の電圧Vbcna(特性点Qcna)より低い場合にハイレベルを出力する。また、比較器601は、第2のノードNBと第3のノードNCとの間の電圧Vbcn(特性点Qcn)が、第4のノードNBaと第3のノードNCとの間の電圧Vbcna(特性点Qcna)より高い場合にローレベルを出力する。
【0042】
比較器602は、第2のノードNBと第3のノードNCとの間の電圧Vbcn(特性点Qcn)が、第5のノードNBbと第3のノードNCとの間の電圧Vbcnb(特性点Qcnb)より高い場合にハイレベルを出力する。また、比較器602は、第2のノードNBと第3のノードNCとの間の電圧Vbcn(特性点Qcn)が、第5のノードNBbと第3のノードNCとの間の電圧Vbcnb(特性点Qcnb)より低い場合にローレベルを出力する。
【0043】
論理積回路603は、比較器601及び602の出力信号が共にハイレベルの場合にハイレベルの認証結果信号OUTを出力し、それ以外の場合にはローレベルの認証結果信号OUTを出力する。すなわち、論理積回路603は、電圧Vbcnが閾値上限電圧Vbcna及び閾値下限電圧Vbcnbの間の電圧である場合には、認証成功として、ハイレベルの認証結果信号OUTを出力する。また、論理積回路603は、電圧Vbcnが閾値上限電圧Vbcna及び閾値下限電圧Vbcnbの間の電圧でない場合には、認証失敗として、ローレベルの認証結果信号OUTを出力する。
【0044】
以上のように、比較器601及び602は、第2のノードNBの電圧が第4のノードNBaの電圧と第5のノードNBbの電圧との間の電圧であるか否かを照合する。第2のノードNB及び第3のノードNC間の容量Cxは、容量値を変更可能な容量である。電圧モニタ104の閾値範囲は、その容量Cxの容量値に応じて変化する。
【0045】
第4のノードNBaの電圧と第5のノードNBbの電圧との幅を広くすると、誤判定は減るが、クライアント装置102の模造品を作成し易くなる。強誘電体容量Cf1、Cf2及びCf3は、相互に同じ温度依存性を有する。温度変動により、強誘電体容量Cf1のヒステリシス特性が変動すれば、強誘電体容量Cf2及びCf3のヒステリシス特性もそれと同じ変動をする。すなわち、温度変動により電圧Vbc1が高くなれば、電圧Vbc1a及びVbc1bも高くなり、温度変動により電圧Vbc1が低くなれば、電圧Vbc1a及びVbc1bも低くなる。これにより、電圧モニタ104は、温度変動があっても、第4のノードNBaの電圧と第5のノードNBbの電圧との幅を広げる必要がなく、模造品を防止し、かつ正しい認証を行うことができる。
【0046】
なお、スイッチSW2が複数の容量C1〜Cnを選択する場合を例に説明したが、1個の可変容量の容量値を変更させるようにしてもよい。
【0047】
また、1回の認証において、スイッチSW2がランダムに複数の容量に順に接続し、複数の容量の電圧がそれぞれ閾値範囲内である場合のみ、認証成功の認証結果信号OUTを出力するようにしてもよい。
【0048】
また、第2のノードNB及び第3のノードNC間には1個の固定の容量を接続してもよい。その場合でも、温度変動により、第2のノードNBの電圧は変化するので、認証システムの解読は困難である。
【0049】
(第2の実施形態)
図8は、第2の実施形態による認証システムの制御方法を示すタイミングチャートである。図8のタイミングチャートは、図2のタイミングチャートに対して、処理801を追加したものである。処理801は、時刻t1の前に行われる。以下、本実施形態が第1の実施形態と異なる点を説明する。
【0050】
第1の強誘電体容量Cf1には、インプリントと言われるヒステリシス特性300の経時変化があり、誤認証の原因となりうる。第1の強誘電体容量Cf1の自発分極を複数回反転させることにより、インプリントによるヒステリシス特性300の経時変化を回復し、初期値のヒステリシス特性300に近づけることができる。このため、第1のノードNA及び第2のノードNBへ交互に電圧パルスを印加する処理801を複数回、時刻t1〜t7の認証処理の前に追加する。
【0051】
処理801について説明する。時刻t11では、スイッチSW1は、オン状態である。電源103は、第1のノードNAに正の電圧パルスを印加し、第2のノードNB及び第3のノードNCに0Vを印加する。これにより、図3のヒステリシス特性300において、特性点が左下端の特性点Q2に移動する。次に、時刻t12では、電源103は、第2のノードNBに正の電圧パルスを印加し、第1のノードNA及び第3のノードNCに0Vを印加する。これにより、図3のヒステリシス特性300において、特性点が右上端の特性点に移動する。この時刻t11の処理と時刻t12の処理を繰り返す。
【0052】
以上のように、電源103は、時刻t11の第1のノードNAに正の電圧パルスを印加するステップと、時刻t12の第2のノードNBに正の電圧パルスを印加するステップとを異なるタイミングで行う。この処理801を複数回繰り返すことにより、ヒステリシス特性300を初期値に戻し、誤認証を防止することができる。なお、強誘電体容量Cf2及びCf3も、強誘電体容量Cf1と同様に、処理801を複数回行うことが好ましい。
【0053】
(第3の実施形態)
図9は、第3の実施形態による認証システムの構成例を示す回路図である。図9の認証システムは、図1の認証システムに対して、スイッチSW2及び容量C1〜Cnを削除し、容量Ckを追加したものである。以下、本実施形態が第1及び第2の実施形態と異なる点を説明する。容量Ckは、第2のノードNB及び第3のノードNCの間に接続される。図6の電圧モニタ104でも、同様に、第4のノードNBa及び第3のノードNC間に1個の容量が接続され、第5のノードNBb及び第3のノードNC間に1個の容量が接続される。
【0054】
図10は、本実施形態による認証システムの制御方法を示すタイミングチャートである。図10のタイミングチャートは、図2のタイミングチャートに対して、時刻t6の処理が異なる。時刻t6では、電源103は、認証毎に、異なるレベルの電圧V1〜Vnの中のいずれか1個の電圧をランダムに、第3のノードNCに印加する。すると、第3のノードNCに印加する電圧V1〜Vnに応じて、第2のノードNBの電圧は、強誘電体容量Cf1と容量C1〜Cnとの容量分割により、非線形な異なる電圧V11〜V1nになる。すなわち、本実施形態の異なるレベルの電圧V1〜Vnを印加することは、第1の実施形態の異なる容量値の容量C1〜Cnを接続することに対応する。
【0055】
上記のように、電源103は、第3のノードNCに印加する正の電圧の値V1〜Vnを変更可能である。電圧モニタ104の閾値範囲は、正の電圧の値V1〜Vnに応じて変化する。本実施形態も、第1の実施形態と同様の効果を得ることができる。
【0056】
(第4の実施形態)
図11は、第4の実施形態による認証システムの構成例を示す回路図である。図11の認証システムは、図1の認証システムに対して、容量C1〜Cnの代わりに、抵抗R1〜Rnを設けたものである。抵抗R1の抵抗値は、複数の抵抗R1〜Rnの抵抗値の中の最小値である。抵抗Rnの抵抗値は、複数の抵抗R1〜Rnの中の最大値である。抵抗R1から抵抗Rnに向かって、抵抗値が順に大きくなっている。なお、複数の抵抗R1〜Rnの代わりに1個の可変抵抗を設けてもよく、第2のノードNB及び第3のノードNCの間の抵抗値を変更可能な抵抗を設ければよい。図6の電圧モニタ104でも、同様に、容量C1a〜C1n及びC1b〜Cnbの代わりに抵抗が設けられる。電圧モニタ104の閾値範囲は、第2のノードNB及び第3のノードNCの間の抵抗の抵抗値と強誘電体容量Cf1との時定数に応じて非線形に変化する。以下、本実施形態が第1の実施形態と異なる点を説明する。
【0057】
図12は、図2に対応し、時刻t6における第2のノードNBの電圧波形を示すタイムチャートである。第2のノードNBの電圧の立ち上がり速度は、スイッチSW2が接続する抵抗R1〜Rnに応じて変わる。電圧Vr1は、スイッチSW2により低抵抗値の抵抗R1が接続された場合の電圧であり、第1の強誘電体容量Cf1及び抵抗R1によるCR時定数が小さいので、立ち上がり速度が速い。また、電圧Vr2は、スイッチSW2により中抵抗値の抵抗R2が接続された場合の電圧であり、第1の強誘電体容量Cf1及び抵抗R2によるCR時定数が中位であるので、立ち上がり速度が中位である。また、電圧Vrnは、スイッチSW2により高抵抗値の抵抗Rnが接続された場合の電圧であり、第1の強誘電体容量Cf1及び抵抗RnによるCR時定数が大きいので、立ち上がり速度が遅い。時刻t21では、電圧モニタ104は、第1の実施形態と同様に、第2のノードNBの電圧が閾値範囲内であるか否かを照合する。これにより、本実施形態は、第1の実施形態と同様の効果を得ることができる。
【0058】
なお、本発明は強誘電体の非線形な容量特性を利用した認証システムを提供するものであり、上記実施形態は、何れも本発明を実施するにあたっての具体化の例を示したものに過ぎず、これらによって本発明の技術的範囲が限定的に解釈されてはならないものである。すなわち、本発明はその技術思想、又はその主要な特徴から逸脱することなく、様々な形で実施することができる。
【符号の説明】
【0059】
101 認証サーバ装置
102 クライアント装置
103 電源
104 電圧モニタ
Cf1 第1の強誘電体容量
C1〜Cn 容量
SW1,SW2 スイッチ
NA 第1のノード
NB 第2のノード
NC 第3のノード
図1
図2
図3
図4
図5
図6
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図8
図9
図10
図11
図12