(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下本発明を図面に示す形態に基づき説明する。ただし、本発明はこれら形態に限定されるものではない。なお、図面に表れる各部材は理解し易さの観点から大きさや形状を誇張、変形して表すことがある。
【0018】
なお、本明細書において、「板」、「シート」、「フィルム」の用語は、呼称の違いのみに基づいて、互いから区別されるものではない。例えば、「加熱電極シート」は板やフィルムと呼ばれ得るような部材をも含む概念であり、したがって、「加熱電極シート」は、「加熱電極板(基板)」や「加熱電極フィルム」と呼ばれる部材と、呼称の違いのみにおいて区別され得ない。
【0019】
また、「フィルム面(板面、シート面)」とは、対象となるフィルム状(板状、シート状)の部材を全体的かつ大局的に見た場合において対象となるフィルム状部材(板状部材、シート状部材)の平面方向と一致する最も広い面積の一対の表面のことを指す。
【0020】
本明細書において、「接合」とは、完全に接合を完了する「本接合」だけでなく、「本接合」の前に仮止めするための、いわゆる「仮接合」をも含むものとする。
【0021】
また、本明細書において用いる、形状や幾何学的条件ならびにそれらの程度を特定する、例えば、「平行」、「直交」、「同一」等の用語や長さや角度の値等については、厳密な意味に縛られることなく、同様の機能を期待し得る程度の範囲を含めて解釈することとする。
【0022】
なお、
図8に示すように本実施形態における加熱電極付きガラス板1、及び、加熱電極付きガラス板1を構成する透明な絶縁基板12、透明電極15、バスバー電極13などの構成要素は、湾曲している場合も多いが、他の図(
図1乃至
図7、
図8乃至
図13)では、理解の容易のため平面状として図示している。
【0023】
さらに、加熱電極付きガラス板1を乗り物に適用した際、加熱電極付きガラス板1に向かい合った時のガラス面に沿った水平方向に対応する方向を左右と呼称し、各図に於いて三次元直交座標系のX軸で表示する。又該X軸と直交すると共に加熱電極付きガラス板1の厚み方向に対応する方向を前後方向と呼称し、Z軸で表示する。そして、X軸及びZ軸と直交すると共に上下方向とも対応する方向を上下方向と呼称しY軸で表示する。
【0024】
図1は一つの実施形態を説明する図で、加熱電極付きガラス板1を其の板面の法線方向であるZ軸方向から平面視した概念図である。以降、斯かる平面視を単に「平面視」とも呼称し、又斯かる平面視で得られる形状を単に「平面視形状」とも呼称する。
図8に示されているように、乗り物の一例としての自動車2は、フロントウィンドウ、リアウィンドウ、サイドウィンドウ等の窓ガラスを有している。ここでは、フロントウィンドウの窓部が加熱電極付きガラス板1で構成されている例を説明する。
【0025】
また、
図1とは異なる実施形態でこの加熱電極付きガラス板1をその板面の法線方向(Z軸方向)から見たものを説明する
図2乃至
図6に示す。また、
図8には、
図1に記載の加熱電極付きガラス板1を自動車の窓部の一つであるフロントウィンドウに適用した例を示す。また、
図1の加熱電極付きガラス板1のA−A線に対応する横断面図を
図9に、
図1の加熱電極付きガラス板1のB−B線に対応する横断面図の実施形態を
図10、
図12、
図13に示す。
【0026】
尚、
図1乃至
図6は、図示と説明の便宜上、加熱電極付きガラス板1を第一のパネル11の法線方向から平面視した状態に於いて、第一のパネル11及び第一の接合層14を除いて図示している。
【0027】
図1乃至
図3に示したように、本実施形態の加熱電極付きガラス板1は、加熱電極付きガラス板1をその板面の法線方向(Z軸方向)から見たときの平面視に於いて、透明な絶縁基板12の互に対向する一対の辺の近傍に該辺と平行方向に延在する一対のバスバー電極を有する。
図1の実施形態に於いては、透明な絶縁基板の一方の板面上の左右(X軸方向)の端部近傍にはそれぞれ上下方向(Y軸方向)に延在する一対のバスバー電極、即ち、第一のバスバー電極13a及び第二のバスバー電極13b(両者を総称して「バスバー電極13」とも言う)バスバー電極13が形成されている。
【0028】
左右のバスバー電極13間には、透明電極15が設けられている。透明電極15は、透明電極の非形成領域16、及び、実際に加熱電極付きガラス板1を乗り物などに搭載する際の保持部として機能する余白部18を除いて、左右の第一のバスバー電極13aと第二のバスバー電極13bとの間の透明電極形成領域内に於いては一面に隙間なく、いわゆるベタパターンとして形成されている。
【0029】
そして、透明電極15の外周部のうちバスバー電極13とは接し無い側は、互に対向する一対のバスバー電極非形成辺とされている。
図1の実施形態に於いては、透明電極15の上下方向(Y軸方向)の両外縁部、即ち、上下両辺が、各々、バスバー電極上部非形成辺14a、バスバー電極下部非形成辺14bとされている。
【0030】
本実施形態において、透明電極の非形成領域16は、透明電極15の形成領域内部であり且つバスバー電極上部非形成辺14a又はバスバー電極下部非形成辺14bの少なくともいずれか一方の近傍に、透明電極15が設けられていない領域として形成される。
【0031】
言い換えれば、透明電極の非形成領域16は、全ての辺が透明電極15に接しており、本実施形態においてバスバー電極13が設けられていない、透明電極15の形成領域の上端(バスバー電極上部非形成辺14a)近く、または、下端(バスバー電極下部非形成辺14b)近くの透明電極15に囲まれて形成されているともいえる。
【0032】
このような位置に透明電極の非形成領域16を設けることにより、透明電極15に通電し、加熱電極付きガラス板が加熱される状態においても、電場の分布に不均一は低減され、電場の分布に不均一に由来する加熱時の温度の差は、実用上問題が生じないレベル緩和されるため、別途、電場の分布を調整するための構造を作るための工程不要となり、生産性を低下させることがなくなる。
【0033】
本実施形態において、透明電極の非形成領域16は、
図1のように一カ所のみ設けてもよいし、GPSの受信のように複数個所の送受信用アンテナを設けたい場合、また、機能が異なる複数の送受信装置の送受信部を離したい場合には、
図2のように左右方向に複数個所設けてもよいし、
図3のように上下に複数個所設けてもよい。
【0034】
そして、このような、透明電極の非形成領域16に送受信機、若しくは送受信機と接続された送受信用アンテナ19を設けてある(
図10、
図12、
図13)。従って、使用されていると送受信装置もしくは送受信用アンテナ19と、加熱電極付きガラス板を挟んで存在する送受信装置と通信する外部装置の間に導電性の加熱電極が介在することがなくなり、通信が阻害されることが大幅に軽減されるものである。
【0035】
自動車の窓部の場合、其の平面視形状が扇形又は略扇形、若しく、は台形又は略台形となる形態が多い。此の場合は、窓部に於いて加熱電極15による凍結や曇りの解消の必要性(優先度)は、主に中央部から運転席に対峙する部分にかけての領域で高く、窓部の周縁部は比較的低い。
【0036】
そこで、本実施形態に於いては、
図1の如く、窓部の平面視形状を其の上底(
図1に於いては+Y方向でもある上側)が短く下底(
図1に於いては−Y方向でもある下側)が長い扇形とした。
【0037】
これに伴い、透明な絶縁基板12の平面視形状も該窓部形状に対応した
図1の如き上底が下底より短い扇形とした。
【0038】
さらに、
図4乃至
図6に図示した、本実施形態では、透明電極15の形成領域内部であり且つバスバー電極上部非形成辺14a又はバスバー電極下部非形成辺14bの少なくともいずれか一方の近傍に、透明電極15が設けられていない領域として形成される透明電極の非形成領域16に代わって、透明電極15のバスバー電極上部非形成辺14a又はバスバー電極下部非形成辺14bの少なくともいずれか一方に透明電極の切欠き部17を設け、透明電極の切欠き部17に送受信機、もしくは送受信用アンテナ19が設けられた加熱電極付きガラス板1である。
【0039】
本実施形態において、透明電極の切欠き部17は、透明電極15のバスバー電極上部非形成辺14a又はバスバー電極下部非形成辺14bに設けられた透明電極の切欠き部17として形成される。
【0040】
言い換えれば、形成された透明電極の切欠き部17は、透明電極15の形成領域の上端(バスバー電極上部非形成辺14a)、若しくは下端部(バスバー電極下部非形成辺14b)の少なくても一方に、バスバー電極上部非形成辺14a又はバスバー電極の
下部非形成辺14bの一部を透明電極の切欠き部17が含む形で透明電極15に設けられた凹みとして形成されている。従って、透明電極の切欠き部17は、必ず一部が透明電極15と接するとともに、必ず一部は透明電極15と接していない開放部を含む実施形態となる。
【0041】
このような位置に透明電極の切欠き部17を設けることにより、透明電極15に通電し、加熱電極付きガラス板が加熱される状態においても、電場の分布に不均一は低減され、電場の分布に不均一に由来する加熱時の温度の差は、実用上問題が生じないレベルに緩和されるため、別途、電場の分布を調整するための構造を作るための工程が不要となり、生産性を低下させることがなくなる。
【0042】
そして、このような、透明電極の切欠き部17に送受信機、若しくは送受信機19と接続された送受信用アンテナを設けてある(
図4、
図5、
図6)。この際、送受信装置もしくは送受信用アンテナ19の一部は、実際に加熱電極付きガラス板1を乗り物などに搭載する際の保持部として機能する余白部にかかっていてもよい。本構成においても、使用されていると送受信装置もしくは送受信用アンテナ19と、加熱電極付きガラス板を挟んで存在する送受信装置と通信する外部装置の間に導電性の加熱電極が介在することがなくなり、通信が阻害されることが大幅に軽減されるものである。
【0043】
このような透明電極の切欠き部17の形成は、
図7に記載した参考図のように加熱電極付きガラス板1の上部(図示はしないが下部で当ても同様である。)に大きめにとった余白部18設け送受信装置もしくは送受信用アンテナ19を設けた加熱電極付きガラス板1と違いがないように思われるが、現実には、大きめにとった余白部18の場合は、余白部全体に加熱の効果が十分に及ばないため、窓の曇りや、窓に付着した雪や氷を取り除くのに時間がかかり、はなはだしい場合は、窓の曇りが残ったり、付着した雪や氷が解けなかったりする。
【0044】
一方、本実施形態においては、加熱されない部位が小さいため、周辺の熱の移動で透明電極の切欠き部17にも十分な加熱の効果が生じるため、窓の曇りや、窓に付着した雪や氷を取り除くのに時間がかかるといった不具合は見られなかった。
【0045】
このような位置に透明電極の切欠き部17を設けることにより、透明電極15に通電し、加熱電極付きガラス板が加熱される状態においても、電場の分布に不均一は低減され、電場の分布に不均一に由来する加熱時の温度の差は、実用上問題が生じないレベル緩和されるため、別途、電場の分布を調整するための構造を作るための工程は不要となり、生産性を低下させることがなくなる。
【0046】
本実施形態において、透明電極の切欠き部17は、
図4のように一カ所のみ設けてもよいし、GPSの受信のように複数個所の送受信用アンテナを設けたい場合、また、機能が異なる複数の送受信装置の送受信部を離したい場合には、
図5のように左右方向に複数個所設けてもよいし、
図6のように上下に複数個所設けてもよい。
【0047】
そして、このような、透明電極の切欠き部17に送受信機、若しくは送受信機19と接続された送受信用アンテナを設けてある(
図4、
図5、
図6)。従って、が使用されていると送受信装置もしくは送受信用アンテナ19と、加熱電極付きガラス板を挟んで存在する送受信装置と通信する外部装置の間に導電性の加熱電極が介在することがなくなり、通信が阻害されることが大幅に軽減されるものである。
【0048】
図8に示した例では、本実施形態の加熱電極付きガラス板を窓部に備えた乗り物として、加熱電極付きガラス板をフロントガラスに用いた自動車を例示している。本実施形態では、自動車のバッテリー等の電源から、配線部およびバスバー電極13を介して加熱電極である透明電極15に通電し、透明電極15を抵抗加熱により発熱させる。透明電極15で発生した熱によって透明な絶縁基板12が温められる。これにより、加熱電極付きガラス板1に付着した結露による曇りを取り除くことができる。また、加熱電極付きガラス板1に雪や氷が付着している場合には、この雪や氷を溶かすことができる。したがって、乗員の視界が良好に確保される。
【0049】
以下に各構成要素について詳細に説明する。
【0050】
まず、透明な絶縁基板12について説明する。透明な絶縁基板12は、
図8で示された例のように自動車のフロントウィンドウ等に用いる場合、乗員の視界を妨げないよう可視光透過率が高いものを用いることが好ましい。
【0051】
透明な絶縁基板12は板ガラスにより構成することができる。これには、当該加熱電極付きガラス板1が適用され乗り物が通常に有する窓に用いられる板ガラスと同じものを用いることができる。例えばソーダライムガラス(青板ガラス)、硼珪酸ガラス(白板ガラス)、石英ガラス、ソーダガラス、カリガラス等から成る普通板ガラス、フロート板ガラス、強化板ガラス、部分板ガラス等の無機ガラスが挙げられる。また、必要に応じて3次元的に曲面状に湾曲部を有するものであってもよい。
【0052】
ただし必ずしもガラス板は無機ガラスである必要はなく、アクリル樹脂、ポリカーボネート樹脂等の樹脂から成る樹脂板いわゆる樹脂ガラス(有機ガラスとも言う)であってもよい。ただし、耐候性、耐熱性、透明性等の観点から無機ガラスであることが好ましい。
【0053】
透明な絶縁基板12は、可視光領域における透過率が90%以上であることが好ましい。ここで、透明な絶縁基板12の可視光透過率は、分光光度計((株)島津製作所製「UV−3100PC」、JIS K 0115準拠品)を用いて測定波長380nm〜780nmの範囲内で測定したときの、各波長における透過率の平均値として特定される。なお、加熱電極付きガラス板1の用途上支障の無い範囲内に於いて、透明な絶縁基板12の一部または全体に着色するなどして、可視光透過率を低くしてもよい。この場合、太陽光の直射を遮ったり、車外から車内を視認しにしたりすることができる。
【0054】
また、透明な絶縁基板12は、1mm以上5mm以下の厚みを有していることが好ましい。このような厚みであると、強度及び光学特性に優れた透明な絶縁基板12を得ることができる。
【0055】
図11乃至
図13に示した断面図のように、加熱電極付きガラス板1が、一対の透明な絶縁基板12を有する構成の場合は、同一の材料で同一に構成されていてもよいし、或いは、材料および構成の少なくとも一方において互いに異なるようにしてもよい。透明な絶縁基板12は、異なる材料であってもよいが、熱膨張率が等しい同一の材料を用いたほうが温度変化に伴う反りを抑制出来、耐久性にも優れた加熱電極付きガラス板1となる。
【0056】
次にバスバー電極13について説明する。
【0057】
図1の平面図の如く本実施形態における加熱電極付きガラス板1は透明電極(加熱電極)15に通電するための一対のバスバー電極13(18a、18b)を有している。バスバー電極13は、透明電極15の電源からの電力を供給する配線である。電源は、水滴(曇り)、凍結(霜)等を溶解或いは蒸発させるに必要な電力を供給可能なものであれば特に限定されることはなく、適宜の電圧、電流、或いは周波数を有する公知の直流又は交流電源を用いれば良いが、加熱電極付きガラス板1が自動車に適用される場合には、電源として例えば自動車に既設の鉛蓄電池、リチウムイオン蓄電池等のバッテリーを直流電源として用いることができる。勿論、別途専用の電源(電池、発電機等)を用いても良い。又、電動機を動力とする鉄道車両の場合は架線から給電された直流又は交流電力を適宜の電圧及び電流に変換して用いることも出来る。このようなバスバー電極13は公知の構成を適用すればよい。
【0058】
バスバー電極13は、金属よりなる電極と比較して高抵抗である透明電極15の上下方向に均一に電圧供給されるように設けられる電極である。また、透明電極15と使用される材料は、一般に接触抵抗が高いため電源と接続する配線を直接つないだ場合、十分な信頼性が得られない場合があり、配線を接続した際の信頼性を向上する目的もある。
【0059】
バスバー電極13と透明電極15は、少なくとも一部が重なって接続している。
図9や
図11のいては透明電極15上にバスバー電極13を形成しているが、使用する材料や構成を考慮して透明電極15を形成した上にバスバー電極13を形成してもよいし、バスバー電極を形成した上に透明電極15を形成してもよい。
【0060】
バスバー電極13を構成する導体材料としては例えばタングステン、モリブデン、ニッケル、クロム、銅、金、銀、白金、アルミニウム、チタン、パラジウム、インジウム等の金属、或いはこれら金属を含む合金により一以上を例示することができる。
【0061】
製造方法は、通常知られている方法より、目的とする構成により適宜選択すればよい。例えば、パターン蒸着により形成してもよいし、蒸着後にエッチングにより形成してもよい。金属板、または、金属箔をエッチングで加工してもよい。
【0062】
また、これらの金属または合金の微粒子を分散して含むペースト材料を塗布または印刷することで形成してもよい。ペースト材料の場合には、つなぎとして更に樹脂、やガラスフリット、チクソ剤などを含んでいてもよい。さらに、必要に応じて加熱乾燥、硬化、焼成などのプロセスを加えることが出来る。
【0063】
本実施形態でバスバー電極13は、右のバスバー電極及び左のバスバー電極から形成されている。右のバスバー電極、左のバスバー電極はそれぞれ上下方向(
図1においてはY軸方向)に延びる帯状であり、右のバスバー電極と左のバスバー電極とは間隔を有して同じ方向に延びる(略平行となる)ように配置されている。
このような右のバスバー電極及び左のバスバー電極は公知の形態を適用することができ、帯状である当該電極の幅は3mm以上15mm以下が一般的である。
【0064】
次に透明電極15について説明する。透明電極15は、バッテリー等の電源から、電源接続線およびバスバー電極13を介して通電され、抵抗加熱により発熱する。そして、この熱が透明な絶縁基板12に伝わることで、透明な絶縁基板12が温められる。
【0065】
透明電極15は、バスバー電極13より給電されることによって熱を発生する加熱電極の役割を果たす電極である。透明電極15は、加熱電極付きガラス板1を乗り物に適用する際の保持部及びその周辺である余白部18、及び、透明電極の非形成領域16、透明電極の切欠き部17、及び、場合によってはバスバー電極13の形成部の一部を除いて、加熱電極付きガラス板1のほぼ全面に隙間なく形成される。また、加熱電極付きガラス板1の透明電極15は、バスバー電極13と電気的な接触のため少なくとも一部重なって形成される。
【0066】
透明電極15は、乗り物の操縦者の視界を確保する必要性から、可視光領域における透過率が80%以上であることが好ましい。ここで、透明電極15の可視光透過率は、分光光度計((株)島津製作所製「UV−3100PC」、JIS K 0115準拠品)を用いて測定波長380nm〜780nmの範囲内で測定したときの、各波長における透過率の平均値として特定される。なお、透明電極15の一部または全体に着色するなどして、可視光透過率を低くしてもよい。この場合、装飾としたり、太陽光の直射を遮ったり、車外から車内を視認しにくくしたりすることができる。
【0067】
透明電極15の材料としては、ITO(Indium Tin Oxide 酸化インジウム錫)、酸化亜鉛(Zinc Oxide:ZnO)、AZO(Aluminium doped Zinc Oxide アルミニウムドープ酸化亜鉛)、または、GZO(Gallium doped Zinc Oxide ガリウムドープ酸化亜鉛)などが使用され、スパッタリング、真空蒸着、ゾル・ゲル法、クラスタービーム蒸着、などによって形成可能である。
【0068】
また、カーボンナノチューブ(CNT)、銀ナノワイヤをはじめとする、直径が1nm〜100nm程度のナノメートル(nm)の桁の金属細線である所謂金属ナノワイヤ、PEDOT:PSS(poly(4−styrenesulfonate):PSS)をドープしたpoly(3,4−ethylenedioxythiophene:PEDOT)をはじめとする導電性ポリマー等を分散した組成物を印刷または塗布し、乾燥することによって形成してもよい。
【0069】
透明電極15は、0.1Ω/m
2から100Ω/m
2のシート抵抗を有することが好ましい。また、透明電極15の厚さは、5μm以上、30μm以下であることが好ましい。
【0070】
透明電極の非形成領域16、透明電極の切欠き部17の形成についても、通常用いられる方法にて容易に形成することが出来る。透明電極15の形成時にフォトレジストや粘着フィルムなどで被覆し、形成後にフォトレジストや粘着フィルムなどを除去するリフトオフ法を用いてもよいし、透明電極15の形成法が蒸着や印刷の場合には、特に新たな工程を加えることなく、パターン形成することが出来る。
【0071】
また、必要に応じて、このプロセスで、透明電極の非形成領域16や透明電極の切欠き部17に送受信用アンテナを形成する形状に透明電極15を形成している材料をパターニングして残すことにより透明電極15と送受信用アンテナを同時形成してもよい。
【0072】
以下に、加熱電極付きガラス板1の層構成について詳細に説明する。加熱電極付きガラス板1の層構成は、少なくとも、上記に記載したような、透明な絶縁基材12、バスバー電極13、及び、透明電極を備えていれば、どのような構成をとっていても問題はない。
【0073】
本実施形態における、層構成の一例は、
図9、
図10の断面図に記載したように、ガラスなどよりなる透明な絶縁基板12上に、透明電極の非形成領域16、透明電極の切欠き部17を除いて透明電極15を設け、その上にバスバー電極13電極を設け、透明電極の非形成領域16、透明電極の切欠き部17に送受信機もしくは送受信用アンテナ19を設けた形態を例示出来る。本形態は、透明電極15の材料が酸化亜鉛(Zinc Oxide:ZnO)等堅牢な材料からなる際には製造工程も簡略であり優れたコストメリットが得られる。
【0074】
更にこのような形態をとることにより、加熱電極付きガラス板1全体の厚みをさらに小さくすることができる。また、加熱電極付きガラス板1内の界面数をさらに低減することができる。したがって、光学特性の低下すなわち視認性の低下をさらに効果的に抑制することができる。加えて、加熱電極として機能する透明電極15と透明な絶縁基板12とが接触しているので、透明電極15による透明な絶縁基板12の加熱効率を上げることができる。
【0075】
また、本実施形態における、層構成の一例は、
図11乃至
図13の断面図に記載したように、透明な基材フィルム23上に透明電極の非形成領域16、透明電極の切欠き部17を除いて透明電極15を設け、その上にバスバー電極13を設けた加熱電極シートを用意して、その両面に接合層21、22を介して、ガラスなどの透明な絶縁基板12と接合する形態を例示することが出来る。
【0076】
加熱電極シートは、シート状の透明な基材フィルム23と、透明な基材フィルム23上に設けられた透明電極15と、透明電極15に通電するためのバスバー電極13とを有している。加熱電極シートは、一対の透明な絶縁基板12と略同一の平面寸法を有して、加熱電極付きガラス板1の全体にわたって配置されてもよいし、運転席の正面部分すなわち透明電極15の形成部に合わせて、加熱電極付きガラス板1の一部にのみ配置されてもよい。
【0077】
図12は、上記の層構成を持つ加熱電極付きガラス板1の内部の透明電極の非形成領域16、透明電極の切欠き部17に送受信機もしくは送受信用アンテナ19を設けた形態である。
【0078】
図13は、上記の層構成を持つ加熱電極付きガラス板1の外面の透明電極の非形成領域16、透明電極の切欠き部17に送受信機もしくは送受信用アンテナ19を設けた形態である。
【0079】
このような接合層21、22としては、種々の接着性または粘着性を有した材料からなる層を用いることができる。また、接合層は、可視光透過率が高いものを用いることが好ましい。典型的な接合層としては、ポリビニルブチラール(PVB)からなる層を例示することができる。接合層の厚みは、それぞれ0.15mm以上1mm以下であることが好ましい。一対の接合層は、同一の材料で同一に構成されていてもよいし、或いは、材料および構成の少なくとも一方において互いに異なるようにしてもよい。
【0080】
シート状の透明な基材フィルム23は、透明電極15及びバスバー電極13を支持する基材として機能する。透明な基材フィルム23は、可視光線波長帯域の波長(380nm〜780nm)を透過する一般に言うところの透明である電気絶縁性の基板である。
【0081】
透明な基材フィルム23に含まれる樹脂としては、可視光を透過する樹脂であればいかなる樹脂でもよいが、好ましくは熱可塑性樹脂を用いることができる。この熱可塑性樹脂としては、例えば、ポリメチルメタクリレート等のアクリル樹脂、ポリエチレンテレフタレート、アモルファスポリエチレンテレフタレート(A−PET)等のポリエステル樹脂、ポリエチレン樹脂、ポリプロピレン等のポリオレフィン樹脂、トリアセチルセルロース(三酢酸セルロース)等のセルロース系樹脂、ポリ塩化ビニル、ポリスチレン、ポリカーボネート樹脂、AS樹脂等を挙げることができる。とりわけ、アクリル樹脂、ポリ塩化ビニル、及びポリエステル樹脂は、エッチング耐性、耐候性、耐光性に優れており、好ましい。
【0082】
また、透明な基材フィルム23は、機械的強度、透明電極15の保持性、及び光透過性等を考慮すると、0.03mm以上0.30mm以下の厚みを有していることが好ましい。透明な基材フィルム23は、必要に応じて一軸又は二軸延伸したものを用いる。
【0083】
なお、加熱電極付きガラス板1は、図示された例に限られず、特定の機能を発揮することを期待されたその他の機能層が設けられても良い。また、一つの機能層が二つ以上の機能を発揮するようにしてもよいし、例えば、加熱電極付きガラス板1の透明な絶縁基板と加熱電極シート、接合層、後述する加熱電極シートの透明な基材フィルム23の、少なくとも一つに何らかの機能を付与するようにしてもよい。加熱電極付きガラス板1に付与され得る機能としては、一例として、反射防止(AR)機能、耐擦傷性を有したハードコート(HC)機能、赤外線遮蔽(反射)機能、紫外線遮蔽(反射)機能、防汚機能等を例示することができる。
【0084】
本実施形態においては、
図10、
図12及び
図13に示したように加熱電極付きガラス板1内部、又は加熱電極付きガラス板1の表面の、透明電極の非形成領域16や透明電極の切欠き部17の少なくとも一部に送受信機もしくは送受信用アンテナ19を設けている。
【0085】
本実施形態において受送信とは、電磁波を媒体とした情報の授受を示す。受信、送信の両方を行う場合のみではなく、受信のみ、送信のみの場合も含む概念である。
【0086】
本実施形態における送受信装置としては、ナビゲーションシステム(位置情報の取得装置、地図データの取得装置)、電子料金収受システム(Electronic Toll Collection System 略称ETC(登録商標))、音楽や動画データの利用する装置、テレビやラジオの受信装置などが例示される。また、今後も自動運転の実用化、IoTの導入に伴い、自動車の状態を送信する装置、運転に必要な情報を受信する装置などが例示される。
【0087】
送受信装置は、小型のものであれば、加熱電極付きガラス板1の板面の法線方向、即ち厚み方向に於いて、一対の透明な絶縁基板12の間であり且つ該板面の法線方向から見た平面視に於ける透明電極の非形成領域16である加熱電極付きガラス板1の内部に埋め込んで設けてもよい(
図12)。また、加熱電極付きガラス板1の板面の法線方向、即ち厚み方向に於いて、加熱電極付きガラス板1の外側面であり、且つ該板面の法線方向から見た平面視に於ける透明電極の非形成領域16に接着して設けてもよい(
図10、
図13)。
【0088】
また、送受信装置自体でなくても、送受信装置に接続された送受信用アンテナのみを加熱電極付きガラス板1の板面の法線方向、即ち厚み方向に於いて、加熱電極付きガラス板1の透明な絶縁基板12の間であり且つ該板面の法線方向から見た平面視に於ける透明電極の非形成領域16に埋め込んで設けてもよい(
図12)。また、加熱電極付きガラス板1の透明な絶縁基板12の外側面であり、且つ透明な絶縁基板12に接着して設けてもよい(
図10、
図13)。
【0089】
また、送受信用アンテナの場合には、透明電極15の形成時に、透明電極の非形成領域16に送受信用アンテナの機能を果たす透明電極のパターンを設けておくことにより、加熱電極付きガラス板1の板面の法線方向、即ち厚み方向に於いて、加熱電極付きガラス板1の透明な絶縁基板12の間であり且つ該板面の法線方向から見た平面視に於ける透明電極の非形成領域16に埋め込まれる形で設けてもよい(
図12)。