(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記のような防水構造を採用したものにおいて、シールリングはリテーナの嵌合筒部に予め嵌着された形態で、コネクタの組立現場等に搬送されるが、シールリングは言わば摩擦係合のみで保持されているのであるから、搬送時の振動等によりシールリングが位置ずれするおそれがある。シールリングの位置ずれが看過されたまま、リテーナがハウジングに装着されると、適正なシール性能が期待できない場合がある。特に位置ずれが微小な場合は、目視では確認し辛いので、結局はリテーナの装着後に洩れの有無の検査工程を設けねばならないという問題があった。
本明細書によって開示される技術は、上記のような事情に基づいて完成されたものであって、その目的は、シールリングを正規位置に強固に保持し得、かつ保持状態の適否を目視により容易に判別できるようにしたところにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本明細書によって開示される技術は、端子収容室が設けられたハウジングと、前記ハウジングの後面開口部を覆って装着されるリテーナと、前記リテーナの前面において前記ハウジングの前記後面開口部内にクリアランスを持って嵌合可能に設けられた嵌合筒部と、前記嵌合筒部の外周面に装着され前記後面開口部の内周面との間で弾縮されるシールリングと、が備えられ、前記シールリングの後面には、先端に係止頭部を有する抜止部が突出形成されているとともに、前記リテーナの周縁部には、前記抜止部を貫通可能な係止孔が設けられ、かつ前記係止孔の孔縁部に前記係止頭部が後方から係止するところに特徴を有する。
【0006】
シールリングは、抜止部の係止頭部を係止孔に押し込みつつリテーナの嵌合筒部の外周面に嵌合され、正規量嵌合されたところで抜止部の係止頭部が係止孔を通過して、係止頭部が係止孔の孔縁部に後方から係止することにより、シールリングは嵌合筒部の外周面の正規位置において抜け止めされて装着される。このようにシールリングが予め装着された状態でリテーナがハウジングの後面開口部に被着されると、シールリングが嵌合筒部の外周面と後面開口部の内周面との間で弾縮されて密着されることにより、リテーナとハウジングとの間がシールされる。
【0007】
シールリングの抜け止め機能を備えたことで、搬送時等にシールリングが位置ずれすることが防止され、リテーナをハウジングに装着した際において、確実なシール機能を得ることができる。また、シールリングに設けられた抜止部の係止頭部が係止孔の裏側に通過していることを目視することで、シールリングが正規位置に装着されていることが判別でき、ひいてはリテーナの装着時に正規のシール機能が発揮されることが担保される。そのため、洩れの有無を検査する大掛かりな検査工程を設ける必要が無く、コネクタの組立工程の簡略化を図ることができる。
【0008】
また、以下のような構成としてもよい。
(1)前記抜止部が板状をなし、前記係止頭部は、前記抜止部の両側縁から側方に張り出すように形成されている。
抜止部による抜止力を高めようとすれば、係止頭部の後縁を軸線と直角をなすように形成することが望ましいが、同係止頭部は成形型の型孔から無理抜きする必要がある関係上、係止頭部の後縁を直角に近付けるには限界がある。
そこで、抜止部を板状として同抜止部の両側縁から側方に張り出すように係止頭部を設けた形状としたから、係止頭部の後縁を軸線と直角をなすように形成しても、型孔の孔縁との係合面積が小さく抑えられることで無理抜きが可能となる。結果、高い抜止力を得ることができる。
【0009】
(2)前記シールリングの外周面には、前記ハウジングの前記後面開口部の内周面に密着するリップが全周に亘って形成されているとともに、前記シールリングの内周面における前記リップの内側に対応する位置には、切り込み溝が全周に亘って形成されている。
シールリングの内周面におけるリップの内側に対応する位置に切り込み溝が形成されていることで、シールリングの厚さが軸方向においてほぼ一定とされる。シールリングは、リテーナの嵌合筒部の外周面に対して、摩擦抵抗を受けて摺接しつつ装着されるが、上記のように厚さがほぼ一定とされていることで、装着時に座屈することが避けられ、ひいてはシールリングの装着をよりスムーズに行うことができる。
【0010】
(3)前記抜止部の前記係止頭部が先細り形状に形成されている。
抜止部の係止頭部を係止孔に押し込む動作が容易となり、ひいてはシールリングの装着作業が容易になる。
【発明の効果】
【0011】
本明細書によって開示される技術によれば、シールリングを正規位置に強固に保持し得、かつ保持状態の適否を目視により容易に判別することができる。
【発明を実施するための形態】
【0013】
<実施形態>
車両側コネクタに適用した一実施形態を、
図1ないし
図19に基づいて説明する。本実施形態の車両側コネクタVCは、電気自動車やハイブリッド自動車などに搭載されたバッテリ(図示せず)に接続され、このバッテリへの充電時に充電用コネクタ(図示せず)と嵌合接続されるようになっている。車両側コネクタVCは、5極コネクタであって、
図1ないし
図4に示すように、図示しない端子金具を収容して車両のボディに装着されるインレットハウジング20(以下、ハウジング20)と、端子金具を抜け止めするべく同ハウジング20の後面側に装着されるリテーナ50とを備えている。
【0014】
図示はしないものの、端子金具は、2本のパワー端子、1本のアース端子及び2本の信号用端子からなり、種類によって径寸法等を異にする場合があるが、基本的な構造は同様である。以下には、アース端子を例に採って説明する。
端子金具は、全体として丸棒状の鍛造品として形成され、小径の端子接続部、フランジ部、及び大径の電線接続部が前側から順次に設けられている。
【0015】
端子接続部の先端側が、相手の充電側端子(図示せず)と接続可能であり、同端子接続部の先端には、絶縁材からなるキャップ(図示せず)が嵌着されている。
電線接続部の後部側には、後面に開口した圧着孔(図示せず)が形成されている。図示しない電線は、絶縁被覆の端末が所定長さ切除(皮剥ぎ)された端末処理が施され、露出した芯線の端末が、上記の圧着孔に挿入されて圧着されることにより、電線の端末が端子金具における電線接続部に対して電気的に接続されるようになっている。
【0016】
ハウジング20は合成樹脂製であって、
図1及び
図4に示すように、車両のボディを構成するパネルに固定される取付板21と、端子金具が収容される端子収容室30が形成され取付板21を前後方向に貫通して設けられた端子収容部25と、取付板21の背面から端子収容部25の外周を囲むように突出形成された周壁40と、を備えている。
【0017】
取付板21は方形状に形成され、四隅に取付孔22が開口されている。
端子収容部25の外周にはフード部26が形成され、フード部26ともども端子収容部25の前端側が取付板21の前面に所定寸法突出した形態で、一体形成されている。
端子収容部25には5個の端子収容室30が形成され、
図1に示す配置で形成されている。端子収容室30は、収容する端子金具の種類に応じて長さ寸法等を異にする場合があるが、基本的な構造は同様である。
図4には、アース端子を収容する端子収容室30が示されている。
【0018】
端子収容室30は、概ね前後両面に開口した円形孔から形成されており、中間壁32を挟んだ前側が前部収容室、後側が後部収容室となっている。中間壁32の中心には、端子挿通孔33が貫通して形成されている。
端子金具は端子収容室30の後部収容室に後方から挿入され、端子接続部が端子挿通孔33を通して押し込まれたのち、フランジ部が中間壁32の後面に当接することで挿入が停止されるようになっている。このとき、端子接続部の先端部が前部収容室内に突出し、またフランジ部並びに電線接続部の後端寄りの位置までが後部収容室に収容された状態となる。
【0019】
ハウジング20の後面側には、各端子金具を抜け止めするための合成樹脂製のリテーナ50が装着されるようになっている。
詳細には、端子収容部25の後面側には、一部既述したように、同端子収容部25の後端部からその後方領域の回りを囲むようにして、後面開口の円筒形をなす周壁40が形成されている。この周壁40の後面開口部40Aに、リテーナ50が装着されるようになっている。
【0020】
リテーナ50は、
図7ないし
図11に示すように、円形の基板51の前面外周縁に、内筒53と外筒54とからなる二重筒部52が突出形成されたキャップ状に形成されている。
図4に示すように、二重筒部52における内筒53は、周壁40の後端部の内側にクリアランスを持って嵌合され、一方外筒54は、同周壁40の後端部の外側に略緊密に嵌合されるようになっている。
【0021】
基板51の前面には、
図11に示すように、5本の係止スリーブ55が前方に突出した形態で形成されている。各係止スリーブ55は、ハウジング20の端子収容部25における各端子収容室30と対応した位置に配され、端子収容室30における後部収容室内に略緊密に嵌合可能である。
後記するように、リテーナ50が周壁40の後面開口部40Aに正規に被着された場合には、
図4に示すように、5本の係止スリーブ55の先端が、後部収容室における中間壁32の所定間隔を開けた後方位置まで進出し、前止まりされた端子金具に後方から当接するようになっている。
なお、係止スリーブ55の内部には、端子金具におけるフランジ部から電線接続部、並びに電線接続部から後方に引き出された電線の端末の一部が挿通可能となっている。
【0022】
ハウジング20には、同ハウジング20の前面側に降り懸かった水をハウジング20外に排水するべく排水構造が形成されており、上記したリテーナ50がその一部を構成している。
【0023】
リテーナ50は、周壁40の後面開口部40Aを水密に塞いで装着されることで排水構造が形成されるようになっている。そのため、リテーナ50の二重筒部52における内筒53の外周面には、ゴム製のシールリング70が全周に亘って嵌着されている。
なお、リテーナ50のロック構造として、二重筒部52における外筒54の前縁には、
図7及び
図8に示すように、4個のロック片58が所定の角度間隔を開けて形成されているとともに、周壁40の外周面には、各ロック片58に嵌るロック突部(図示せず)が対応して形成されている。
【0024】
さらに、シールリング70とその装着構造について説明する。
シールリング70は、
図14ないし
図17に示すように、内筒53の突出長さに匹敵する幅(軸方向の長さ)と、内筒53の外周面と、周壁40の後面開口部40Aの内周面との間のクリアランスに緊密に嵌る厚さを持った環形に形成されている。シールリング70の外周面には、
図18に示すように、全周に亘る2条のリップ71が、軸方向に所定間隔を開けて形成されている。一方、シールリング70の内周面には、各リップ71の内側に対応する位置において、2本の切り込み溝72が全周に亘って形成されている。これにより、シールリング70の厚さが軸方向においてほぼ一定とされている。
【0025】
シールリング70の後面には、上下2個ずつ計4個の抜止部75が突出形成されている。詳細には、
図18に示すように、シールリング70の後端には、背の低いフランジ74が全周に亘って立ち上がり形成され、同フランジ74の外周部から抜止部75が突出形成されている。各抜止部75の形成位置は、
図14に示すように、中心線を挟んで左右に各25°振られた位置である。
【0026】
抜止部75は、シールリング70と略同じ厚さを有する板状に形成されており、先端部には、
図19に示すように、平面略台形をなす係止頭部76が、同抜止部75の左右両側縁から側方に張り出すように形成されている。係止頭部76は、係止縁となる後縁77が、同係止頭部76の軸線(中心線)と直角をなしている。また、係止頭部76は、先端に向けて次第に幅狭となったいわゆる先細り形状となっている。
一方、リテーナ50の基板51の外周縁、詳細には上記した二重筒部52の奥壁60に相当する部分には、
図12に示すように、シールリング70のフランジ74が嵌る嵌合溝61が全周に亘って形成され、同嵌合溝61の奥面には、各抜止部75(等幅の基端部)を挿通可能な4個の係止孔62が、対応して形成されている。
【0027】
シールリング70は、各抜止部75を各係止孔62に対応させた回動姿勢において、リテーナ50の二重筒部52における内筒53の外周に嵌合され、途中から係止頭部76を弾縮させて係止孔62に挿通しつつ、内筒53の外周面を摺接して押し込まれる。フランジ74が奥壁60の嵌合溝61に嵌って停止される正規位置まで押し込まれたところで、
図6に示すように、係止頭部76が係止孔62の裏側に抜けて元形に弾拡し、係止頭部76の後縁77が係止孔62の裏側の左右の孔縁部に係止されることで、シールリング70の抜け止めが図られるようになっている。
【0028】
なお、リテーナ50の基板51における後面の外周縁には、
図7及び
図10に示すように、カバー(図示せず)を取り付けるべく4枚の円弧形をなす取付板65が突出形成されていて、上記した係止孔62は、いずれも取付板65の内方に位置して形成されてはいるが、係止孔62は特に、
図10に示すように、各取付板65の側縁に寄った位置に形成されている。これは、取付板65が設けられているにも拘わらず、係止孔62が目視しやすくなることを意図している。
【0029】
リテーナ50は、上記のようにシールリング70が装着された形態から、各係止スリーブ55の先端を対応する端子収容室30における後部収容室の後端に嵌合させて所定の回動姿勢に位置合わせされ、各係止スリーブ55を後部収容室内に進入させ、また、シールリング70を、内筒53の外周面と、周壁40の後面開口部40Aの内周面との間で厚さ方向に弾縮しながら、二重筒部52内に周壁40の後端部を挿入しつつ押し込まれる。
図4及び
図5に示すように、周壁40の後端が二重筒部52の奥壁60、並びにシールリング70のフランジ74に当たる位置まで押し込まれたところで、各ロック片58がロック突部(図示せず)に弾性的に嵌り(
図2参照)、これによりリテーナ50は、周壁40の後面開口部40Aに水密に被着され、同被着状態にロックされる。
【0030】
リテーナ50が正規に被着された状態では、既述したように、5本の係止スリーブ55の先端が、後部収容室内に進出して、前止まりされた端子金具に後方から当接する。
それに加え、周壁40、端子収容部25及びリテーナ50の間において閉空間が形成されるようになっている。
【0031】
続いて、本実施形態の作用及び効果を説明する。
車両側コネクタVCは、例えば以下のような手順で組み立てられる。リテーナ50について、二重筒部52における内筒53の外周にシールリング70が嵌着される。
【0032】
詳細には、シールリング70は、後面に突設された各抜止部75を、二重筒部52の奥壁60に形成された各係止孔62に対応させた回動姿勢において、内筒53の外周に嵌合され、途中から係止頭部76を弾縮させて係止孔62に挿通しつつ、内筒53の外周面を摺接して押し込まれる。
抜止部75の係止頭部76は先細り形状とされているから、係止孔62に押し込む動作が容易にできる。また、シールリング70は、内筒53の外周面に対して摩擦抵抗を受けつつ摺動装着されるが、シールリング70の厚さが軸方向においてほぼ一定とされていることで、摺動時に座屈することが避けられる。従って、シールリング70の装着は比較的スムーズに行われる。
【0033】
図5に示すように、シールリング70のフランジ74が奥壁60の嵌合溝61に嵌って停止される正規位置まで押し込まれたところで、
図6に示すように、係止頭部76が係止孔62の裏側に抜けて元形に弾拡して、係止頭部76の後縁77が係止孔62の裏側の左右の孔縁部に係止され、これによりシールリング70の抜け止めが図られる。
シールリング70の装着後、リテーナ50の裏面側において、4本の抜止部75の係止頭部76が、それぞれ対応する係止孔62の裏側に通過しているのを目視することで、シールリング70が正規位置において、正規に抜け止めされていることが判別される。仮に、抜止部75の係止頭部76が係止孔62の裏側に抜けていない箇所があれば、係止頭部76が裏側に抜け出るまで、シールリング70の所定箇所を押し込む。
【0034】
5個の端子金具が対応する端子収容室30に前止まりして収容されたら、後方に待機していたリテーナ50が前方に移動される。そののちリテーナ50は、各係止スリーブ55を対応する端子収容室30の後部収容室に嵌合させて位置合わせされ、各係止スリーブ55を後部収容室内に進入させ、また、シールリング70を厚さ方向に弾縮しながら二重筒部52内に周壁40の後端部を挿入しつつ押し込まれる。
【0035】
図4及び
図5に示すように、周壁40の後端が二重筒部52の奥壁60に当たる正規位置までリテーナ50が押し込まれたところで、
図2に示すように、リテーナ50に設けられたロック片58が周壁40の図示しないロック突部に弾性的に嵌る。これによりリテーナ50は、周壁40の後面開口部40Aに水密に被着され、同被着状態にロックされる。
【0036】
このようにリテーナ50が正規に被着された状態では、
図4に示すように、5本の係止スリーブ55の先端が、対応する端子収容室30の中間壁32の後方位置まで進出して、前止まりされた端子金具に後方から当接し、これにより各端子金具の後方への抜け止めが図られる。
【0037】
また、リテーナ50がハウジング20の周壁40の後面開口部40Aに水密に被着されることで、周壁40、端子収容部25及びリテーナ50の間において閉空間が形成される。
最後に、リテーナ50の各係止スリーブ55の後端から引き出された5本の電線が、下向きに屈曲されたのち一纏めにされ、図示しないカバー内に収容されつつ下方に延出されることで、車両側コネクタVCの組み立てが完了する。
【0038】
上記のように組み立てられた車両側コネクタVCは、パネルに開口された取付孔に内面側(裏面側)から挿通され、取付板21の四隅をボルト締めすることでパネルに固定される。このとき、車両側コネクタVCは、上端が少し後方に傾いた後傾姿勢を採って取り付けられる。
一方、車両側コネクタVCの後面側において、一纏めとなって下方に延出された電線は、コルゲートチューブやブーツに通されて防水処理が施された上で、車両に搭載されたバッテリと接続される。
【0039】
充電作業時には、車両側コネクタVCのハウジング20(端子収容部25)の前面側に配された蓋を開放したのち、外部電源と接続された充電用コネクタが車両側コネクタVCのハウジング20(端子収容部25)と嵌合され、バッテリに対して充電される。
【0040】
以上のように本実施形態では、シールリング70をリテーナ50の二重筒部52における内筒53の外周面に嵌着する部分において、シールリング70の後面に、先端に係止頭部76を有する4個の抜止部75が突出形成されている一方、二重筒部52の奥壁60に、抜止部75を貫通可能な係止孔62が設けられ、かつ係止孔62の孔縁部に係止頭部76が後方から係止する構造となっていて、端的にはシールリング70の抜け止め機能が構築されている。
【0041】
そのため、リテーナ50をコネクタの組み立て現場等に搬送する際に、シールリング70が正規の装着位置から位置ずれすることが防止され、リテーナ50をハウジング20の周壁40の後面開口部40Aに被着した際において、確実なシール機能を得ることができる。
また、シールリング70に設けられた抜止部75の係止頭部76が係止孔62の裏側に通過しているのを目視することで、シールリング70が正規位置に装着されていることが判別でき、ひいてはリテーナ50の装着時に正規のシール機能が発揮されることも担保される。そのため、洩れの有無を検査する大掛かりな検査工程を設ける必要が無く、コネクタの組立工程の簡略化を図ることが可能となる。
【0042】
なお、係止頭部付きの抜止部を係止孔に挿入して抜け止めを図る構造を採った場合に、抜止力を高めようとすれば、係止頭部の後縁を軸線と直角をなすように形成することが望ましいが、同係止頭部は成形型の型孔から無理抜きする必要がある関係上、係止頭部の後縁を直角に近付けるには限界がある。
そこで本実施形態では、抜止部75を板状として同抜止部75の両側縁から側方に張り出すように係止頭部76を設けた形状としたから、係止頭部76の後縁77を軸線と直角をなすように形成しても、型孔の孔縁との係合面積が小さく抑えられることで無理抜きが可能となる。結果、抜止部75による高い抜止力を得ることができる。
【0043】
本実施形態のシールリング70は、密着性を高めるために、外周面に2条のリップ71が形成されているが、一方、内周面には、各リップ71の内側に対応する位置において2本の切り込み溝72が全周に亘って形成されている。これにより、シールリング70の厚さが軸方向においてほぼ一定とされている。
シールリング70は、リテーナ50の二重筒部52における内筒53の外周面に対して摩擦抵抗を受けつつ装着されるが、上記のように厚さがほぼ一定とされていることで、装着時に座屈することが避けられ、ひいてはシールリング70の装着をよりスムーズに行うことができる。
また、リテーナ50に設けられた抜止部75の係止頭部76が先細り形状に形成されているから、同抜止部75の係止頭部76を係止孔62に押し込む動作が容易となり、これもシールリング70をスムーズに装着する上で有益となる。
【0044】
<他の実施形態>
本明細書で開示される技術は、上記記述及び図面によって説明した実施形態に限定されるものではなく、例えば次のような種々の態様も含まれる。
(1)シールリングの後面に設けられる抜止部75の数や配置は、上記実施形態に例示したものに限らず任意であるが、複数個であって、かつ全周に亘ってバランイ良く配されていることが好ましい。
(2)上記実施形態では、抜止部75が板状である場合を例示したが、丸や角の棒状等、他の形状であってもよい。
【0045】
(3)シールリングの外周面に形成されるリップ71の条数は、上記実施形態に例示した2条に限らず、1条又は3条以上の複数条であってもよい。その場合、シールリングの内周面に形成される切り込み溝72は、リップ71の条数と同数とすることが好ましい。
(4)一方、シールリングの内周面の切り込み溝72は必ずしも必要ではなく、切り込み溝72が形成されていないもの、あるいは外周面のリップ71の位置とは無関係に内周リップを設けたものであってもよく、そのようなものも技術的範囲に含まれる。
(5)上記実施形態に例示した車両側コネクタVCの組立手順はあくまでも一例であって、例えばリテーナ50に対するシールリング70の装着タイミングをずらす等、適宜に変更し得るものである。
【0046】
(6)リテーナに設けられた係止スリーブ55の後端開口について、必要に応じて個室ゴム栓によりシールするようにしてもよい。
(7)上記実施形態では、ハウジング20の後面側に引き出された電線を直角に屈曲して延出した場合を例示したが、電線が後方に向けて軸線方向に沿って延出される形態であってもよい。
(8)本明細書開示技術は車両側コネクタに限らず、端子金具が収容されたハウジングの後面開口に、同端子金具を抜け止めするためのリテーナが被着される形態のコネクタ全般の防水構造について、広く適用することができる。