特許第6607144号(P6607144)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6607144
(24)【登録日】2019年11月1日
(45)【発行日】2019年11月20日
(54)【発明の名称】車両用暖房装置
(51)【国際特許分類】
   B60H 1/08 20060101AFI20191111BHJP
   B60H 1/03 20060101ALI20191111BHJP
   B60H 1/22 20060101ALI20191111BHJP
   F01P 3/20 20060101ALI20191111BHJP
【FI】
   B60H1/08 621C
   B60H1/03 C
   B60H1/03 Z
   B60H1/22 651B
   F01P3/20 H
【請求項の数】2
【全頁数】21
(21)【出願番号】特願2016-104499(P2016-104499)
(22)【出願日】2016年5月25日
(65)【公開番号】特開2017-210104(P2017-210104A)
(43)【公開日】2017年11月30日
【審査請求日】2018年7月6日
(73)【特許権者】
【識別番号】000004260
【氏名又は名称】株式会社デンソー
(74)【代理人】
【識別番号】110001128
【氏名又は名称】特許業務法人ゆうあい特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】多田 和弘
(72)【発明者】
【氏名】小林 寛幸
(72)【発明者】
【氏名】谷畑 拓也
【審査官】 田中 一正
(56)【参考文献】
【文献】 特開2004−042758(JP,A)
【文献】 特開2016−002862(JP,A)
【文献】 特開平06−297933(JP,A)
【文献】 特開2016−060300(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60H 1/08
B60H 1/03
B60H 1/22
F01P 3/20
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
吸込口(36a)と吐出口(36b)とを有し、該吸込口から吸い込んだ熱媒体を前記吐出口から吐出するポンプ(36)と、
前記熱媒体から放熱させる放熱器(381)と、
前記ポンプの吐出口から吐出された熱媒体を、エンジン(34)、前記放熱器の順に流して前記ポンプの吸込口に戻す熱媒体循環路(40)と、
前記熱媒体循環路において前記ポンプから前記エンジンに至る途中に設けられ、前記ポンプの吐出口へ接続された入口ポート(42a、60a)と第1出口ポート(42b、60b)と前記エンジンへ接続された第2出口ポート(42c、60c)とを有し、前記入口ポートから前記第1出口ポートへ流れる前記熱媒体の第1流量と前記入口ポートから前記第2出口ポートへ流れる前記熱媒体の第2流量との割合を変更可能に構成された流路制御装置(42、60)と、
前記第1出口ポートと前記ポンプの吸込口とを接続し、該第1出口ポートから流出した熱媒体を該吸込口へ流す第1流路(44)と、
該第1流路に設けられ、該第1流路を流れる熱媒体を加熱する加熱装置(12)と、
前記第1流路において前記加熱装置に対し熱媒体流れ下流側に設けられ、前記第1流路を流れる熱媒体の熱で車室内への送風空気を加熱する加熱用熱交換器(30)と、
前記エンジンの熱媒体出口(34b)と前記加熱装置の熱媒体入口(12c)とを接続する第2流路(46)と、
該第2流路に設けられ、該第2流路を開閉する流路開閉装置(48)と、
前記流路制御装置が前記第2流量よりも前記第1流量を多くし且つ前記流路開閉装置が前記第2流路を閉じる第1切替状態と、前記流路制御装置が前記第1流量よりも前記第2流量を多くし且つ前記流路開閉装置が前記第2流路を閉じる第2切替状態と、前記流路制御装置が前記第1流量よりも前記第2流量を多くし且つ前記流路開閉装置が前記第2流路を開く第3切替状態とを切り替える制御部(50)とを備え
前記加熱装置は冷凍サイクル(10)の一部を構成し、該冷凍サイクルを循環する冷媒と前記熱媒体とを熱交換させることにより該熱媒体を加熱し、
前記熱媒体は液体であり、
前記流路制御装置は、前記第2切替状態が成立している場合においても前記加熱装置に前記熱媒体を流通させる車両用暖房装置。
【請求項2】
前記流路制御装置(42)は、前記入口ポートを前記第1出口ポートと前記第2出口ポートとの一方へ連通させる三方弁で構成されている請求項1に記載の車両用暖房装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、エンジンに流通する熱媒体の熱で車室内への送風空気を加熱する車両用暖房装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
この種の車両用暖房装置として、例えば特許文献1に記載された車両用空調装置が従来から知られている。この特許文献1に記載された車両用空調装置は、2つの冷却水回路を備えている。その2つの冷却水回路の一方であるヒータコア側の冷却水回路は、車室内への送風空気を加熱する熱交換器としてのヒータコアと冷凍サイクルの水−冷媒熱交換器との間でエンジン冷却水を循環させる。そして、このヒータコア側の冷却水回路には、エンジン冷却水を循環させるためにポンプが設けられている。
【0003】
その一方で、2つの冷却水回路の他方であるエンジン側の冷却水回路は、エンジンとラジエータとの間でエンジン冷却水を循環させる。そして、このエンジン側の冷却水回路には、特許文献1に明確には記載されていないが、エンジン冷却水を循環させるために、ヒータコア側のポンプとは別のポンプが設けられている。エンジン側の冷却水回路に設けられるポンプは、一般的に、エンジンと一体構成になっている。
【0004】
また、車両用空調装置は三方弁を備えており、その三方弁は、エンジンから流出した冷却水をヒータコア側に導入する場合と、ヒータコア側の冷却水回路とエンジン側の冷却水回路とを切り離す場合とを切り替える。
【0005】
このように、特許文献1の車両用空調装置は、熱媒体としてのエンジン冷却水を流通させるために2台のポンプを備えている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2003−320838号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
特許文献1の車両用空調装置のように、エンジン廃熱とエンジン以外の熱源とを併用して暖房を行う暖房装置では、上述したように、熱媒体を循環させるポンプが2台必要とされていた。発明者らの詳細な検討の結果、このようなことが見出された。
【0008】
本発明は上記点に鑑みて、ポンプが1台であってもエンジン廃熱とエンジン以外の熱源とを併用して暖房を行うことを可能とする車両用暖房装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するため、請求項1に記載の発明によれば、車両用暖房装置は、
吸込口(36a)と吐出口(36b)とを有し、その吸込口から吸い込んだ熱媒体を吐出口から吐出するポンプ(36)と、
熱媒体から放熱させる放熱器(381)と、
ポンプの吐出口から吐出された熱媒体を、エンジン(34)、放熱器の順に流してポンプの吸込口に戻す熱媒体循環路(40)と、
熱媒体循環路においてポンプからエンジンに至る途中に設けられ、ポンプの吐出口へ接続された入口ポート(42a、60a)と第1出口ポート(42b、60b)とエンジンへ接続された第2出口ポート(42c、60c)とを有し、入口ポートから第1出口ポートへ流れる熱媒体の第1流量と入口ポートから第2出口ポートへ流れる熱媒体の第2流量との割合を変更可能に構成された流路制御装置(42、60)と、
第1出口ポートとポンプの吸込口とを接続し、その第1出口ポートから流出した熱媒体をその吸込口へ流す第1流路(44)と、
その第1流路に設けられ、その第1流路を流れる熱媒体を加熱する加熱装置(12)と、
第1流路において加熱装置に対し熱媒体流れ下流側に設けられ、第1流路を流れる熱媒体の熱で車室内への送風空気を加熱する加熱用熱交換器(30)と、
エンジンの熱媒体出口(34b)と加熱装置の熱媒体入口(12c)とを接続する第2流路(46)と、
その第2流路に設けられ、その第2流路を開閉する流路開閉装置(48)と、
流路制御装置が第2流量よりも第1流量を多くし且つ流路開閉装置が第2流路を閉じる第1切替状態と、流路制御装置が第1流量よりも第2流量を多くし且つ流路開閉装置が第2流路を閉じる第2切替状態と、流路制御装置が第1流量よりも第2流量を多くし且つ流路開閉装置が第2流路を開く第3切替状態とを切り替える制御部(50)とを備え
加熱装置は冷凍サイクル(10)の一部を構成し、その冷凍サイクルを循環する冷媒と熱媒体とを熱交換させることにより熱媒体を加熱し、
熱媒体は液体であり、
流路制御装置は、第2切替状態が成立している場合においても加熱装置に熱媒体を流通させる
【0010】
これにより、車両用暖房装置は例えば、上記第1切替状態では、エンジンの廃熱を利用せずに加熱装置を熱源とした暖房を行うことができる。また、車両用暖房装置は、上記第2切替状態では、車室内の空調には関与せず、専らエンジン廃熱を放熱器で放熱させることができる。また、車両用暖房装置は、上記第3切替状態では、エンジンと加熱装置との双方を熱源とした暖房を行うことができ、更に、加熱装置の加熱動作を停止させることでエンジンを単独の熱源とした暖房も行うことができる。このようにエンジン廃熱と、エンジン以外の熱源としての加熱装置とを併用して暖房を行うことを可能にすると共に、そのような暖房を行うことをポンプが1台であっても実現することができる。
【0011】
なお、特許請求の範囲およびこの欄で記載した括弧内の各符号は、後述する実施形態に記載の具体的内容との対応関係を示す一例である。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】第1実施形態において、車両用空調装置および車両用暖房装置の全体構成の概略を示した図である。
図2】第1実施形態の車両用暖房装置のうち、エンジン冷却水流路全体のエンジン冷却水の流通状態が第1切替状態である場合において、エンジン冷却水の主要な流通経路を実線で示した図である。
図3】第1実施形態の車両用暖房装置のうち、エンジン冷却水流路全体のエンジン冷却水の流通状態が第2切替状態である場合において、エンジン冷却水の主要な流通経路を実線で示した図である。
図4】第1実施形態の車両用暖房装置のうち、エンジン冷却水流路全体のエンジン冷却水の流通状態が第3切替状態である場合において、エンジン冷却水の主要な流通経路を実線で示した図である。
図5】第2実施形態において、室内空調ユニットおよび車両用暖房装置の全体構成の概略を示した図であって、第1実施形態の図1に相当する図である。
図6】第3実施形態において、車両用空調装置および車両用暖房装置の全体構成の概略を示した図であって、第1実施形態の図1に相当する図である。
図7】第3実施形態の車両用暖房装置において第1切替状態でのエンジン冷却水の流れを示した図であって、第1実施形態の図2に相当する図である。
図8】第3実施形態の車両用暖房装置において第2切替状態でのエンジン冷却水の流れを示した図であって、第1実施形態の図3に相当する図である。
図9】第3実施形態の車両用暖房装置において第3切替状態でのエンジン冷却水の流れを示した図であって、第1実施形態の図4に相当する図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、図面を参照しながら、本発明を実施するための形態を説明する。なお、以下の各実施形態相互において、互いに同一もしくは均等である部分には、図中、同一符号を付してある。
【0014】
(第1実施形態)
図1は、本実施形態において、車両用空調装置1および車両用のエンジン冷却兼暖房装置2の全体構成の概略を示した図である。この車両用空調装置1およびエンジン冷却兼暖房装置2(以下、車両用暖房装置2と呼ぶ)は、例えば、走行用の駆動源としてエンジン34と電動機とを有するハイブリッド車両に搭載される。
【0015】
車両用空調装置1は、図1に示すように、冷凍サイクル10、室内空調ユニット25、および、不図示の空調制御装置等を備えている。この冷凍サイクル10は、車両用空調装置1において、空調対象空間である車室内へ送風される車室内送風空気を冷却あるいは加熱する役割を果たす。
【0016】
冷凍サイクル10は、車室内を冷房する冷房運転モードの冷媒回路(すなわち、冷房用冷媒回路)、車室内を暖房する暖房運転モードの冷媒回路(すなわち、暖房用冷媒回路)など、複数の冷媒回路に切替え可能な構成となっている。図1の実線矢印FL1は、冷凍サイクル10における冷房運転モード時の冷媒流れ要するに冷房用冷媒回路の冷媒流れを示しており、破線矢印FL2は暖房運転モード時の冷媒流れ要するに暖房用冷媒回路の冷媒流れを示している。
【0017】
また、本実施形態の冷凍サイクル10では、冷媒としてHFC系冷媒(具体的には、R134a)が採用されており、冷凍サイクル10は、高圧側冷媒圧力が冷媒の臨界圧力を超えない蒸気圧縮式の亜臨界冷凍サイクルを構成している。もちろん、HFO系冷媒(例えば、R1234yf)等が採用されてもよい。
【0018】
図1に示すように、冷凍サイクル10は、圧縮機11、水冷式コンデンサ12、暖房用膨脹弁13、室外熱交換器14、冷房用膨脹弁16、室内蒸発器18、アキュムレータ19、迂回通路開閉弁20、および膨脹弁迂回通路22等を有している。
【0019】
冷凍サイクル10の構成機器のうち、圧縮機11は、冷凍サイクル10において冷媒を吸入し、圧縮して吐出するものである。すなわち、圧縮機11が圧縮する流体は、冷凍サイクル10を循環する冷媒である。
【0020】
圧縮機11は吸入ポート11aと吐出ポート11bとを有し、例えばエンジンルーム内に配置されている。圧縮機11の吸入ポート11aは、圧縮機11の外部から冷媒を圧縮機11内へ流入させる冷媒入口である。一方、圧縮機11の吐出ポート11bは、圧縮機11の外部へ冷媒を流出させる冷媒出口である。
【0021】
圧縮機11の吐出ポート11bには、水冷式コンデンサ12の冷媒入口12aが接続されている。この水冷式コンデンサ12は、冷媒入口12aと、冷媒出口12bと、熱媒体入口であるエンジン冷却水入口12cと、熱媒体出口であるエンジン冷却水出口12dとを備えている。そして、その冷媒入口12aおよび冷媒出口12bは冷凍サイクル10の冷媒流路に設けられ、そのエンジン冷却水入口12cおよびエンジン冷却水出口12dは車両用暖房装置2の第1流路44に設けられている。
【0022】
水冷式コンデンサ12では、冷媒入口12aから水冷式コンデンサ12内に流入した冷媒は冷媒出口12bから暖房用膨脹弁13へ流出する。それと共に、エンジン冷却水入口12cから水冷式コンデンサ12内に流入したエンジン冷却水はエンジン冷却水出口12dからヒータコア30へ流出する。
【0023】
そして、水冷式コンデンサ12は、車両用暖房装置2の第1流路44を流れるエンジン冷却水を加熱する加熱装置として機能する。具体的には、水冷式コンデンサ12は、冷凍サイクル10を循環し水冷式コンデンサ12を通過する冷媒とエンジン冷却水とを熱交換させ、その熱交換により冷媒を凝縮させると共にエンジン冷却水を加熱する。なお、水冷式コンデンサ12は、車両用暖房装置2と冷凍サイクル10との両方に重複して含まれる。
【0024】
水冷式コンデンサ12の冷媒出口12bには、暖房用膨脹弁13の冷媒入口が接続されている。この暖房用膨脹弁13は、水冷式コンデンサ12から流出した高圧冷媒を減圧膨張させる減圧装置である。暖房用膨脹弁13は、弁開度が電動で調節される電気式の可変絞り機構で構成され、空調制御装置から出力される制御信号によってその可変絞り機構の作動が制御される。また、暖房用膨脹弁13は、冷媒を減圧する減圧作用を発揮する絞り状態になるだけでなく、減圧作用を発揮しない全開状態にもなるように構成されている。
【0025】
暖房用膨脹弁13の冷媒出口には、室外熱交換器14の冷媒入口が接続されている。室外熱交換器14は、例えばエンジンルーム内など車室外に、室外送風機15と共に配置されている。室外熱交換器14は、その室外熱交換器14を通過する空気と暖房用膨脹弁13から流出した冷媒とを熱交換させる。その室外熱交換器14を通過する空気とは、例えば車両走行または室外送風機15の送風によってエンジンルーム内へ導入される車外の空気である。
【0026】
室外熱交換器14の冷媒出口には、冷房用膨脹弁16の冷媒入口が接続されている。この冷房用膨脹弁16は、上述した暖房用膨脹弁13と同様の基本構成を備えた減圧装置である。すなわち、冷房用膨脹弁16は電気式の可変絞り機構であり、空調制御装置から出力される制御信号によってその作動が制御される。また、冷房用膨脹弁16は、冷媒を減圧する減圧作用を発揮する絞り状態になるだけでなく、冷房用膨脹弁16を冷媒が通過することを阻止する全閉状態にもなるように構成されている。
【0027】
冷房用膨脹弁16の冷媒出口には、室内蒸発器18の冷媒入口が接続されている。室内蒸発器18は室内空調ユニット25の空調ケース26内に収容されている。この室内蒸発器18は、その室内蒸発器18の内部を流通する冷媒と室内蒸発器18を通過する空気とを熱交換させ、その熱交換により冷媒を蒸発させると共にその通過する空気を冷却する。
【0028】
室内蒸発器18の冷媒出口には、アキュムレータ19の冷媒入口が接続されている。アキュムレータ19は、その内部に流入した冷媒の気液を分離して余剰冷媒を蓄える気液分離器である。さらに、アキュムレータ19の気相冷媒出口には、圧縮機11の吸入ポート11aが接続されている。
【0029】
また、室外熱交換器14の冷媒出口には、上記の冷房用膨脹弁16および室内蒸発器18と並列に、膨脹弁迂回通路22が接続されている。この膨脹弁迂回通路22は、冷房用膨脹弁16および室内蒸発器18を迂回させて冷媒をアキュムレータ19の冷媒入口へ導く冷媒通路である。また、膨脹弁迂回通路22には、迂回通路開閉弁20が配置されている。この迂回通路開閉弁20は膨脹弁迂回通路22を開閉する電磁弁であり、空調制御装置から出力される制御信号によって、その作動が制御される。
【0030】
次に、室内空調ユニット25について説明する。室内空調ユニット25は、車室内最前部のインストルメントパネルの内側に配置されている。この室内空調ユニット25は、図1に示すように、空調ケース26、室内送風機27、内外気切替装置28、通風路切替ドア29、ヒータコア30、不図示の複数の吹出口ドア、および前述の室内蒸発器18等を有している。なお、室内蒸発器18は、冷凍サイクル10と室内空調ユニット25との両方に重複して含まれ、ヒータコア30は、車両用暖房装置2と室内空調ユニット25との両方に重複して含まれる。
【0031】
室内空調ユニット25の空調ケース26は、室内空調ユニット25の外殻を形成するとともに、車室内への送風空気(すなわち、車室内送風空気)の空気通路を空調ケース26の内部に形成する。そして、この空調ケース26内には、室内送風機27、ヒータコア30、および前述の室内蒸発器18等が収容されている。
【0032】
詳細には、空調ケース26は、その空調ケース26内の空気通路の一部として温風通路26aおよびバイパス通路26bを形成している。この温風通路26aおよびバイパス通路26bは何れも室内蒸発器18に対し空気流れ下流側に配置されている。温風通路26aにはヒータコア30が配置されている。
【0033】
そのヒータコア30は、エンジン冷却水が流れる第1流路44において水冷式コンデンサ12に対しエンジン冷却水下流側に設けられている。そして、ヒータコア30は、その第1流路44を流れるエンジン冷却水の熱で車室内への送風空気を加熱する加熱用熱交換器として機能する。詳細に言えば、ヒータコア30は、温風通路26aでヒータコア30を通過する送風空気と水冷式コンデンサ12のエンジン冷却水出口12dから流出したエンジン冷却水とを熱交換させることにより、その通過する送風空気を加熱する。
【0034】
バイパス通路26bは温風通路26aと並列に設けられており、室内蒸発器18からの空気を温風通路26aを迂回させ且つ車室内へ向けて流す。
【0035】
空調ケース26の空気流れ最上流側には、車室内の空気(すなわち、内気)と車室外の空気(すなわち、外気)とを切替導入する内外気切替装置28が配置されている。この内外気切替装置28は内外気切替ドアを有し、その内外気切替ドアによって、空調ケース26内に内気を導入させる内気導入口の開口面積と外気を導入させる外気導入口の開口面積とを連続的に調整する。これにより、内外気切替装置28は、空調ケース26内に導入される内気の風量と外気の風量との風量割合を連続的に変化させる。
【0036】
内外気切替装置28の空気流れ下流側であって室内蒸発器18の空気流れ上流側には、内外気切替装置28を介して吸入した空気を車室内へ向けて送風する室内送風機27が配置されている。この室内送風機27は、遠心多翼ファン(すなわち、シロッコファン)を電動モータにて駆動する電動送風機である。室内送風機27の回転数は、空調制御装置から出力される制御電圧によって制御される。
【0037】
また、空調ケース26内には通風路切替ドア29が設けられており、その通風路切替ドア29は、室内蒸発器18の空気流れ下流側であって、且つ、温風通路26aおよびバイパス通路26bの空気流れ上流側に配置されている。
【0038】
例えば、通風路切替ドア29は、温風通路26aの入口とバイパス通路26bの入口とを開閉する回動式ドア装置である。通風路切替ドア29は、空調制御装置から出力される制御信号によって作動が制御される図示しないサーボモータによって駆動される。
【0039】
そして、通風路切替ドア29は、その回動位置に応じて、温風通路26aとバイパス通路26bとに流れる合計風量に対する温風通路26aに流れる風量の割合すなわち温風風量割合を調節する。この温風風量割合の調節により、空調ケース26から吹き出される吹出空気の温度が調節される。
【0040】
通風路切替ドア29は、室内空調ユニット25から吹き出される空調風の温度を調節する周知のドア装置と同様に、最大冷房位置から最大暖房位置までの間で連続的に回動することができる。その最大冷房位置とは、通風路切替ドア29が温風通路26aを全閉にすると共にバイパス通路26bを全開にするドア位置である。また、最大暖房位置とは、通風路切替ドア29が温風通路26aを全開にすると共にバイパス通路26bを全閉にするドア位置である。
【0041】
空調ケース26の空気流れ最下流部には、温風通路26aからの空気とバイパス通路26bからの空気とが合流して成る合流空気を車室内へ吹き出す複数の開口孔である吹出口が配置されている。例えば、その複数の吹出口としては、車両前面窓ガラス内側面に向けて空調風を吹き出すデフロスタ吹出口、車室内の乗員の上半身に向けて空調風を吹き出すフェイス吹出口、乗員の足元に向けて空調風を吹き出すフット吹出口などが挙げられる。その複数の吹出口にはそれぞれ、空調制御装置から出力される制御信号に従って吹出口を開閉する吹出口ドアが配置されている。
【0042】
次に、車両用暖房装置2について説明する。車両用暖房装置2は、液体の熱媒体であるエンジン冷却水を循環させることにより、水冷式のエンジン34の冷却と車室内の暖房との一方または両方を行う。
【0043】
具体的には図1に示すように、車両用暖房装置2は、ウォータポンプ36、ラジエータユニット38、熱媒体循環路40、流路制御装置42、第1流路44、第2流路46、流路開閉装置48、暖房装置制御部50、冷却水温度センサ52、前述の水冷式コンデンサ12、およびヒータコア30を主要構成要素として備えている。
【0044】
ウォータポンプ36は電動のポンプである。ウォータポンプ36は吸込口36aと吐出口36bとを有し、その吸込口36aから吸い込んだエンジン冷却水を吐出口36bから吐出する。ウォータポンプ36の吐出量はウォータポンプ36の回転数に対応しており、そのウォータポンプ36の回転数は暖房装置制御部50によって制御される。ウォータポンプ36の吐出量はエンジン34または水冷式コンデンサ12へのエンジン冷却水の供給量に対応するので、そのエンジン冷却水の供給量は、ウォータポンプ36によって調節可能である。なお、本実施形態のエンジン34は、エンジン冷却水を流通させるポンプを含んでおらず、エンジン冷却水を流通させるポンプとしては、車両用暖房装置2は図1のウォータポンプ36だけを有している。
【0045】
ラジエータユニット38は、ラジエータ381とリザーブタンク382とラジエータバイパス流路383とサーモスタット384とを有している。そのラジエータ381とリザーブタンク382とラジエータバイパス流路383とサーモスタット384は一体的に構成されている。ラジエータユニット38は、例えばエンジンルーム内など車室外に、室外熱交換器14および室外送風機15と共に配置されている。
【0046】
ラジエータ381は、エンジン冷却水から放熱させる放熱器である。すなわち、ラジエータ381は、そのラジエータ381内を流通するエンジン冷却水とラジエータ381を通過する空気とを熱交換させ、その熱交換により、エンジン冷却水から放熱させる。そのラジエータ381を通過する空気とは、例えば車両走行または室外送風機15の送風によってエンジンルーム内へ導入される車外の空気である。
【0047】
熱媒体循環路40は、エンジン冷却水が流れる流路であって、ウォータポンプ36と流路制御装置42とエンジン34とラジエータ381とサーモスタット384とを環状に連結している。すなわち、熱媒体循環路40は、ウォータポンプ36の吐出口36bから吐出されたエンジン冷却水を、流路制御装置42、エンジン34、ラジエータ381、サーモスタット384の順に流してウォータポンプ36の吸込口36aに戻す。熱媒体循環路40は、車両用暖房装置2の中で、エンジン34を冷却するためのエンジン冷却側回路を構成している。
【0048】
リザーブタンク382は、ラジエータユニット38のラジエータ回路に設けられ、熱媒体循環路40に連結されている。リザーブタンク382は、エンジン冷却水を貯留するタンクであり、熱媒体循環路40とその熱媒体循環路40に接続された第1および第2流路44、46とに流通するエンジン冷却水の温度変化に応じた体積変化を吸収する。
【0049】
ラジエータバイパス流路383は、エンジン冷却水の流れにおいて、ラジエータ381およびリザーブタンク382と並列に設けられている。そして、エンジン冷却水流れにおけるラジエータバイパス流路383の上流端はラジエータ381のエンジン冷却水入口に接続され、ラジエータバイパス流路383の下流端はサーモスタット384に接続されている。
【0050】
サーモスタット384は、サーモスタット384内を流通するエンジン冷却水の温度を感知しその温度に応じて流路を切り替える三方弁である。サーモスタット384は、第1入口ポート384aと第2入口ポート384bと出口ポート384cとを有している。
【0051】
サーモスタット384の第1入口ポート384aおよび出口ポート384cは熱媒体循環路40に設けられている。そして、第1入口ポート384aはラジエータ381のエンジン冷却水出口に接続され、出口ポート384cはウォータポンプ36の吸込口36aに接続されている。また、サーモスタット384の第2入口ポート384bはラジエータバイパス流路383の下流端に接続されている。
【0052】
このような接続関係により、サーモスタット384内を流通するエンジン冷却水の温度が所定値以上である場合には、サーモスタット384は、第1入口ポート384aを出口ポート384cへ連通させると共に第2入口ポート384bを閉塞する。これにより、矢印ARaのようにラジエータ381からウォータポンプ36の吸込口36aへエンジン冷却水が流通可能となり、ラジエータバイパス流路383からウォータポンプ36の吸込口36aへのエンジン冷却水流れは遮断される。
【0053】
その一方で、サーモスタット384内を流通するエンジン冷却水の温度が所定値未満である場合には、サーモスタット384は、第2入口ポート384bを出口ポート384cへ連通させると共に第1入口ポート384aを閉塞する。これにより、矢印ARbのようにラジエータバイパス流路383からウォータポンプ36の吸込口36aへエンジン冷却水が流通可能となり、ラジエータ381からウォータポンプ36の吸込口36aへのエンジン冷却水流れは遮断される。
【0054】
なお、上記のエンジン冷却水の温度に対する所定値は、例えばサーモスタット384内の弁体を作動させるバネ部材のバネ力等に応じて定まり、エンジン34を過剰に冷却しないように予め設定されている。
【0055】
流路制御装置42は、入口ポート42aと第1出口ポート42bと第2出口ポート42cとを有する流路切替機構である。要するに、流路制御装置42は三方弁である。流路制御装置42の作動は暖房装置制御部50によって制御される。
【0056】
流路制御装置42は、熱媒体循環路40においてウォータポンプ36の吐出口36bからエンジン34に至る途中に設けられている。また、流路制御装置42の入口ポート42aはウォータポンプ36の吐出口36bへ接続され、第1出口ポート42bは第1流路44へ接続され、第2出口ポート42cはエンジン34のエンジン冷却水入口34a(すなわち、熱媒体入口34a)へ接続されている。すなわち、流路制御装置42が有する3つのポート42a、42b、42cのうち入口ポート42aおよび第2出口ポート42cは熱媒体循環路40に設けられている。
【0057】
また、流路制御装置42は、入口ポート42aから第1出口ポート42bへ流れるエンジン冷却水の流量である第1流量と、入口ポート42aから第2出口ポート42cへ流れるエンジン冷却水の流量である第2流量との流量割合を変更可能に構成されている。具体的には、流路制御装置42は、入口ポート42aを第1出口ポート42bと第2出口ポート42cとの一方へ連通させる三方弁であるので、その流量割合を段階的に変化させる。
【0058】
すなわち、流路制御装置42は、入口ポート42aと第1出口ポート42bとを連通させると共に第2出口ポート42cを閉塞する第1連通状態と、入口ポート42aと第2出口ポート42cとを連通させると共に第1出口ポート42bを略閉塞する第2連通状態とに択一的に切り替えられる。そして、流路制御装置42内での漏れ等が無ければ、流路制御装置42の第1連通状態では、入口ポート42aへ流入するエンジン冷却水の流入流量に対する第1流量の割合は100%で、その流入流量に対する第2流量の割合は0%になる。
【0059】
逆に、流路制御装置42の第2連通状態では、その流入流量に対する第1流量の割合は略0%で、その流入流量に対する第2流量の割合は略100%になるが、第1出口ポート42bは完全には閉塞されない。そのため、第2連通状態では、第1連通状態に比して第1流量が格段に小さくはなるものの零にはならず、エンジン冷却水は第1流路44へ僅かに流通する。
【0060】
第1流路44は、エンジン冷却水の流れにおける上流端と下流端とを有している。そして、第1流路44の上流端は流路制御装置42の第1出口ポート42bに接続され、第1流路44の下流端はウォータポンプ36の吸込口36aに接続されている。すなわち、第1流路44は、流路制御装置42の第1出口ポート42bとウォータポンプ36の吸込口36aとを接続し、第1出口ポート42bから流出したエンジン冷却水をウォータポンプ36の吸込口36aへ流す。
【0061】
そして、第1流路44には、水冷式コンデンサ12とヒータコア30とが、エンジン冷却水流れ上流側から、水冷式コンデンサ12、ヒータコア30の順で直列に設けられている。そして、その第1流路44中に冷却水温度センサ52が設けられている。第1流路44は、エンジン34以外の暖房用熱源(具体的には、水冷式コンデンサ12)を経由する空調側回路を構成している。
【0062】
冷却水温度センサ52は、水冷式コンデンサ12のエンジン冷却水出口12dから流出したエンジン冷却水の温度を検出する検出器である。冷却水温度センサ52は、そのエンジン冷却水の温度を示す検出信号を暖房装置制御部50へ出力する。
【0063】
第2流路46は、エンジン冷却水の流れにおける上流端と下流端とを有している。そして、第2流路46の上流端はエンジン34のエンジン冷却水出口34b(すなわち、熱媒体出口34b)に接続され、第2流路46の下流端は水冷式コンデンサ12のエンジン冷却水入口12cに接続されている。要するに、第2流路46は、エンジン34のエンジン冷却水出口34bと水冷式コンデンサ12のエンジン冷却水入口12cとを接続している。
【0064】
流路開閉装置48は、第2流路46に設けられた電磁開閉弁である。流路開閉装置48は、暖房装置制御部50からの制御信号に従って第2流路46を開閉する。流路開閉装置48は、その第2流路46の開閉により、エンジン34のエンジン冷却水出口34bを第1流路44に対して連通または遮断する。
【0065】
暖房装置制御部50は、不図示のCPU、ROM、RAM等からなるマイクロコンピュータで構成された電子制御装置である。暖房装置制御部50は、その暖房装置制御部50に接続されたセンサ等からの信号が不図示の入力回路によってA/D変換された後にマイクロコンピュータに入力されるように構成されている。暖房装置制御部50は、車両用暖房装置2に設けられた制御部であり、その車両用暖房装置2に関わる種々の制御を実行する。例えば、その種々の制御の1つとして、暖房装置制御部50は、エンジン冷却水の流通経路を切り替える流通経路制御を実行する。
【0066】
暖房装置制御部50は、その流通経路制御において詳細には流路制御装置42と流路開閉装置48とを制御する。それにより、暖房装置制御部50は、第1切替状態と第2切替状態と第3切替状態とを択一的に切り替える。言い換えれば、暖房装置制御部50は、熱媒体循環路40および第1、第2流路44、46から成るエンジン冷却水流路全体におけるエンジン冷却水の流通状態を、この第1〜3切替状態のうちの何れか一の切替状態にする。
【0067】
具体的に、第1切替状態では、流路制御装置42は上記第2流量よりも第1流量を多くする。要するに、流路制御装置42は第1連通状態になる。それと共に、流路開閉装置48は第2流路46を閉じる。これにより、車両用暖房装置2では図2の実線で示された経路をエンジン冷却水の主要な流通経路として、エンジン冷却水は、矢印AR1a、AR1bに示すように循環する。すなわち、ウォータポンプ36から吐出されるエンジン冷却水は、「ウォータポンプ36の吐出口36b→流路制御装置42→水冷式コンデンサ12→ヒータコア30」の順に流れてから、ウォータポンプ36の吸込口36aに吸い込まれる。
【0068】
また、第1切替状態では、リザーブタンク382は、図2の実線で示されたエンジン冷却水の主要な流通経路を構成する流路へ連通している。そのため、循環中のエンジン冷却水の温度変化に応じた体積変化は、リザーブタンク382によって吸収される。
【0069】
第2切替状態では、流路制御装置42は上記第1流量よりも第2流量を多くする。要するに、流路制御装置42は第2連通状態になる。それと共に、流路開閉装置48は第2流路46を閉じる。これにより、車両用暖房装置2では図3の実線で示された経路をエンジン冷却水の主要な流通経路として、エンジン冷却水は、矢印AR2aに示すように循環する。すなわち、ウォータポンプ36から吐出されるエンジン冷却水は、「ウォータポンプ36の吐出口36b→流路制御装置42→エンジン34→ラジエータ381→サーモスタット384」の順に流れてから、ウォータポンプ36の吸込口36aに吸い込まれる。
【0070】
このようなエンジン冷却水の流れにより、エンジン34の廃熱が車室内の空調に利用されない場合に、そのエンジン34の廃熱をラジエータ381で外気へ放散しエンジン34の冷却を行うことができる。なお、第2切替状態では、リザーブタンク382へエンジン冷却水が流通するので、エンジン冷却水の温度変化に応じた体積変化は、リザーブタンク382によって吸収される。
【0071】
第3切替状態では、流路制御装置42は第2連通状態になる。それと共に、流路開閉装置48は第2流路46を開く。これにより、車両用暖房装置2では図4の実線で示された経路をエンジン冷却水の主要な流通経路として、エンジン冷却水は、矢印AR3a、AR3b、AR3cに示すように循環する。
【0072】
すなわち、ウォータポンプ36から吐出されるエンジン冷却水は、「ウォータポンプ36の吐出口36b→流路制御装置42→エンジン34→流路開閉装置48→水冷式コンデンサ12→ヒータコア30」の順に流れてから、ウォータポンプ36の吸込口36aに吸い込まれる。それと共に、エンジン34から流出したエンジン冷却水の一部は、サーモスタット384を経由してウォータポンプ36の吸込口36aに吸い込まれる。
【0073】
そのため、エンジン廃熱がヒータコア30での放熱に対し過剰になった場合には、エンジン冷却水は、サーモスタット384によりラジエータ381へ循環させられ、そのラジエータ381で放熱させられる。
【0074】
なお、第3切替状態でも第1切替状態と同様に、循環中のエンジン冷却水の温度変化に応じた体積変化は、リザーブタンク382によって吸収される。
【0075】
また、図4の矢印AR3cのようにサーモスタット384の第2入口ポート384bから出口ポート384cへ流れるエンジン冷却水の流量は、エンジン34から流出したエンジン冷却水の温度をサーモスタット384が感知するに足ればよい。
【0076】
また、図2〜4では、エンジン冷却水の主要な流通経路は実線で示され且つ主要な流通経路以外の経路は破線で示されているが、このことは後述の図7〜9でも同様である。
【0077】
図1に戻り、次に、車両用空調装置1の運転モードについて説明する。車両用空調装置1は、例えば冷房運転モードおよび暖房運転モード等を含む複数の運転モードのうちの何れかで運転される。以下では、冷房運転モードと暖房運転モードとについて説明するが、車両用空調装置1は、それら以外の運転モードでも運転されることがある。なお、運転モードは、乗員のスイッチ操作によって手動で切り替えられてもよいし、外気温度や車室内温度などの各種パラメータに応じて自動的に切り替えられてもよい。
【0078】
(a)冷房運転モード
冷房運転モードでは、空調制御装置の制御により、暖房用膨脹弁13は減圧作用を発揮しない全開状態とされ、冷房用膨脹弁16は減圧作用を発揮する絞り状態とされる。また、迂回通路開閉弁20は閉弁状態とされる。これにより、冷凍サイクル10は、図1の実線矢印FL1に示すように冷媒が流れる冷房用冷媒回路に切り替えられる。
【0079】
すなわち、この冷房用冷媒回路に切り替えられた冷凍サイクル10では、圧縮機11の吐出ポート11bから吐出される冷媒は、「圧縮機11の吐出ポート11b→水冷式コンデンサ12→暖房用膨脹弁13→室外熱交換器14→冷房用膨脹弁16→室内蒸発器18→アキュムレータ19→圧縮機11の吸入ポート11a」の順に流れて循環する。そして、室外熱交換器14は、冷媒を凝縮させる凝縮器として機能する。
【0080】
また、空調制御装置は、冷房運転モードでは、通風路切替ドア29を最大冷房位置に位置決めする。従って、室内蒸発器18で冷却された車室内送風空気の全量がバイパス通路26bへ流れ、その車室内送風空気は加熱されずに車室内へ吹き出される。これにより、車室内の冷房を実現することができる。
【0081】
また、この冷房運転モード時には、車両用暖房装置2において暖房装置制御部50は、エンジン冷却水流路全体におけるエンジン冷却水の流通状態を第2切替状態にする。すなわち、暖房装置制御部50は第2切替状態を成立させる。これにより、車両用暖房装置2は車室内の冷房には関与せず、専らエンジン廃熱をラジエータ381で放熱させる運転を行う。
【0082】
また、この第2切替状態が成立している場合において流路制御装置42は上述のように第2連通状態になるが、流路制御装置42の第1出口ポート42bは完全には閉塞されない。従って、流路制御装置42は、エンジン冷却のため図3の矢印AR2aのようにエンジン冷却水を流通させると同時に、図3の矢印AR2b、AR2cのように、水冷式コンデンサ12へ一定流量のエンジン冷却水を流通させる。これにより、車両用空調装置1の冷房運転モード時において、水冷式コンデンサ12でのエンジン冷却水の沸騰が防止される。なお、このときの流路制御装置42の第1出口ポート42bの開度は例えば、流路制御装置42から水冷式コンデンサ12へ流れるエンジン冷却水が出来るだけ少ない流量でエンジン冷却水の沸騰が防止されるように予め実験的に定められている。
【0083】
(b)暖房運転モード
暖房運転モードでは、空調制御装置の制御により、暖房用膨脹弁13は絞り状態とされ、冷房用膨脹弁16は全閉状態とされる。また、迂回通路開閉弁20は開弁状態とされる。これにより、冷凍サイクル10は、図1の破線矢印FL2に示すように冷媒が流れる暖房用冷媒回路に切り替えられる。
【0084】
すなわち、この暖房用冷媒回路に切り替えられた冷凍サイクル10では、圧縮機11の吐出ポート11bから吐出される冷媒は、「圧縮機11の吐出ポート11b→水冷式コンデンサ12→暖房用膨脹弁13→室外熱交換器14→迂回通路開閉弁20→アキュムレータ19→圧縮機11の吸入ポート11a」の順に流れる。そして、室外熱交換器14は、冷媒を蒸発させる蒸発器として機能する。
【0085】
また、空調制御装置は、暖房運転モードでは、通風路切替ドア29を最大暖房位置に位置決めする。それと共に、車両用暖房装置2において暖房装置制御部50は、エンジン冷却水流路全体におけるエンジン冷却水の流通状態を第1切替状態または第3切替状態にする。従って、暖房用冷媒回路を循環する冷媒は、水冷式コンデンサ12でエンジン冷却水へ放熱して凝縮し、その冷媒によって加熱されたエンジン冷却水はヒータコア30で車室内送風空気へ放熱する。
【0086】
また、室内空調ユニット25において、室内送風機27からの車室内送風空気は室内蒸発器18で冷却されずにその室内蒸発器18を通過し、その車室内送風空気の全量が温風通路26aへ流れる。そして、その車室内送風空気はヒータコア30で加熱されてから車室内へ吹き出される。これにより、車室内の暖房を実現することができる。
【0087】
ここで、この暖房運転モード時に、車両用暖房装置2では暖房装置制御部50は上記のように第1切替状態または第3切替状態を成立させるが、例えば暖房装置制御部50は、エンジン34が停止している場合に第1切替状態を成立させる。これにより、エンジン34の廃熱を利用せずに水冷式コンデンサ12を流通する冷媒の熱を用いた暖房、すなわち冷凍サイクル10単独を熱源とした暖房が行われる。
【0088】
一方、暖房装置制御部50は、エンジン34の駆動中には第3切替状態を成立させる。これにより、エンジン34の廃熱と水冷式コンデンサ12を流通する冷媒の熱との双方を利用した暖房が行われる。また、車両用暖房装置2でその第3切替状態が成立している場合において、エンジン冷却水に対する水冷式コンデンサ12の加熱動作が停止された場合すなわち圧縮機11が停止された場合には、エンジン34を単独の熱源とした暖房が行われる。
【0089】
上述したように、本実施形態によれば図2〜4に示すように、暖房装置制御部50は、上述した第1切替状態と第2切替状態と第3切替状態とを択一的に切り替える。これにより、車両用暖房装置2は、上記第1切替状態では、エンジン34の廃熱を利用せずに水冷式コンデンサ12を熱源とした暖房を行うことができる。また、車両用暖房装置2は、上記第2切替状態では、車室内の空調には関与せず、専らエンジン34の廃熱をラジエータ381で放熱させることができる。また、車両用暖房装置2は、上記第3切替状態では、エンジン34と水冷式コンデンサ12との双方を熱源とした暖房を行うことができ、更に、水冷式コンデンサ12の加熱動作を停止させることでエンジン34を単独の熱源とした暖房も行うことができる。
【0090】
このようにエンジン34の廃熱と、エンジン34以外の熱源としての水冷式コンデンサ12とを併用して暖房を行うことを可能にすると共に、そのような暖房を行うことをウォータポンプ36が1台であっても実現することができる。すなわち、エンジン冷却水を吐出するウォータポンプ36に、エンジン冷却用としての機能に加え車室内暖房用としての機能を付加することができる。
【0091】
例えば特許文献1に記載の車両用空調装置ではエンジン冷却用のウォータポンプと車室内空調用のウォータポンプとがそれぞれ必要とされる。これに対し本実施形態によれば、そのエンジン冷却用のウォータポンプと車室内空調用のウォータポンプとを図1のウォータポンプ36として共通化することができる。これにより、特許文献1の車両用空調装置と比較して、ウォータポンプ36の設置スペースの確保を容易にし、且つ部品点数削減によるコスト低減を図ることが容易である。
【0092】
また、本実施形態によれば、水冷式コンデンサ12は冷凍サイクル10の一部を構成し、その冷凍サイクル10を循環する冷媒とエンジン冷却水とを熱交換させる。従って、車室内の冷房を行う機能を備えた冷凍サイクル10を利用してエンジン冷却水を加熱することが可能である。
【0093】
また、本実施形態によれば、車両用暖房装置2で第1または第3切替状態が成立している場合だけでなく第2切替状態が成立している場合においても、流路制御装置42は、水冷式コンデンサ12にエンジン冷却水を流通させる。従って、冷凍サイクル10の運転中において水冷式コンデンサ12内にエンジン冷却水が滞留しないので、水冷式コンデンサ12内でのエンジン冷却水の沸騰を防止することができる。このことは、例えば冷凍サイクル10で車室内の冷房が行われる際に特に有効である。
【0094】
また、本実施形態によれば、流路制御装置42は、入口ポート42aを第1出口ポート42bと第2出口ポート42cとの一方へ連通させる三方弁で構成されている。従って、ウォータポンプ36から吐出されたエンジン冷却水が流れる流路の切替えを簡潔な構成で実現することが可能である。
【0095】
また、本実施形態によれば、車両用暖房装置2で第1〜3切替状態の何れが成立していても、リザーブタンク382は、エンジン冷却水の主要な流通経路を構成する流路へ連通している。従って、循環中のエンジン冷却水の温度変化に応じた体積変化をそのリザーブタンク382によって吸収することが可能である。
【0096】
(第2実施形態)
次に、第2実施形態について説明する。本実施形態では、前述の第1実施形態と異なる点を主として説明する。また、前述の第1実施形態と同一または均等な部分については省略または簡略化して説明する。このことは後述の第3実施形態でも同様である。
【0097】
図5に示すように、本実施形態では、水冷式コンデンサ12を有する冷凍サイクル10(図1参照)は設けられておらず、それに替えて、車両用暖房装置2は電気ヒータ56を備えている。
【0098】
本実施形態の電気ヒータ56は、第1実施形態の水冷式コンデンサ12に相当する加熱装置であり、本実施形態の車両用暖房装置2において、電気ヒータ56はその水冷式コンデンサ12に置き換わっている。すなわち、第1流路44には、電気ヒータ56とヒータコア30とが、エンジン冷却水流れ上流側から、電気ヒータ56、ヒータコア30の順で直列に設けられている。そして、その第1流路44中に冷却水温度センサ52が設けられている。
【0099】
また、電気ヒータ56は例えばPTCヒータであり、供給される電力に応じて発熱し、電気ヒータ56を通過するエンジン冷却水を加熱する。その電気ヒータ56へ供給される電力は暖房装置制御部50によって制御される。
【0100】
本実施形態では、前述の第1実施形態と共通の構成から奏される効果を第1実施形態と同様に得ることができる。
【0101】
また、本実施形態によれば、車両用暖房装置2は、第1流路44を流れるエンジン冷却水を加熱する加熱装置として電気ヒータ56を備えている。従って、エンジン冷却水に対する電気ヒータ56の加熱のオンオフ切替えを、その電気ヒータ56に対する通電の切替えによって容易に行うことが可能である。
【0102】
また、前述の第1実施形態では、車両用暖房装置2で第2切替状態が成立している場合においても、流路制御装置42の第1出口ポート42bは完全には閉塞されない。これに対し、本実施形態では、車両用暖房装置2で第2切替状態が成立している場合には、その流路制御装置42の第1出口ポート42bは完全に閉塞されて構わない。なぜなら、第2切替状態が成立している場合には電気ヒータ56への通電を止めれば、エンジン冷却水の沸騰を防止できるからである。
【0103】
なお、第1実施形態における車室内の冷房は、水冷式コンデンサ12を車両用暖房装置2と共有する冷凍サイクル10によって行われるが、本実施形態では例えば、車両用暖房装置2から独立した不図示の冷凍サイクルによって車室内の冷房が行われてもよい。
【0104】
(第3実施形態)
次に、第3実施形態について説明する。本実施形態では、前述の第1実施形態と異なる点を主として説明する。
【0105】
図6に示すように、本実施形態では流路制御装置60が、第1実施形態の流路制御装置42と異なっている。従って、本実施形態では、第1実施形態の流路制御装置42の入口ポート42aが流路制御装置60の入口ポート60aに置き換わっている。これと同様に、第1実施形態の流路制御装置42の第1出口ポート42bが流路制御装置60の第1出口ポート60bに置き換わり、第1実施形態の流路制御装置42の第2出口ポート42cが流路制御装置60の第2出口ポート60cに置き換わっている。
【0106】
具体的に、本実施形態の流路制御装置60は水混合弁である。従って、その流路制御装置60は、第1実施形態の流路制御装置42と同様に、入口ポート60aから第1出口ポート60bへの第1流量と、入口ポート60aから第2出口ポート60cへの第2流量との流量割合を変更可能に構成されている。但し、本実施形態の流路制御装置60は、第1実施形態の流路制御装置42とは異なり、その流量割合を連続的に変化させることができる。
【0107】
なお、本実施形態の流路制御装置60の第1連通状態は第1実施形態の流路制御装置42の第1連通状態と同じ連通状態であり、本実施形態の流路制御装置60の第2連通状態は第1実施形態の流路制御装置42の第2連通状態と同じ連通状態である。また、流路制御装置60の第2連通状態でも第1出口ポート60bが完全には閉塞されないということは、第1実施形態と同様である。
【0108】
本実施形態の暖房装置制御部50は、第1実施形態と同様に、第1切替状態と第2切替状態と第3切替状態とを択一的に切り替える。
【0109】
すなわち、第1切替状態では、流路制御装置60は第1連通状態になり、流路開閉装置48は第2流路46を閉じる。従って、第1実施形態と同様、図7に示すように、エンジン冷却水は、矢印AR1a、AR1bに沿って循環する。
【0110】
また、第2切替状態では、流路制御装置60は第2連通状態になり、流路開閉装置48は第2流路46を閉じる。従って、第1実施形態と同様、図8に示すように、エンジン冷却水は、矢印AR2aに沿って循環する。
【0111】
また、第3切替状態では、流路制御装置60は第2連通状態になり、流路開閉装置48は第2流路46を開く。従って、第1実施形態と同様、図9に示すように、エンジン冷却水は、矢印AR3a、AR3b、AR3cに示すように循環する。
【0112】
但し、本実施形態では、水混合弁である流路制御装置60は上記第1流量と第2流量との流量分配を連続的に変更し最適に制御可能である。従って、例えばエンジン34の冷間始動時において暖機完了に至る前には、図9の矢印AR3dのようにエンジン34を迂回するエンジン冷却水の第1流量が、流路制御装置60が第2連通状態である場合に比して過渡的に増やされることがある。
【0113】
なお、車両用空調装置1の冷房運転モードおよび暖房運転モードと、車両用暖房装置2における第1切替状態、第2切替状態、および第3切替状態との関係は、前述の第1実施形態と同様である。
【0114】
本実施形態では、前述の第1実施形態と共通の構成から奏される効果を第1実施形態と同様に得ることができる。
【0115】
また、本実施形態は第1実施形態に基づいた変形例であるが、本実施形態を前述の第2実施形態と組み合わせることも可能である。
【0116】
(他の実施形態)
(1)上述の第1実施形態において、図1の車両用空調装置1および車両用暖房装置2は、例えばハイブリッド車両に搭載されるが、それに限らず、例えば走行用の駆動源としての電動機を有さないエンジン車両に搭載されてもよい。このことは、第2および第3実施形態においても同様である。
【0117】
(2)上述の第1および第2実施形態において、流路制御装置42および流路開閉装置48はそれぞれ別個の機器として設けられている。これに関し、流路制御装置42および流路開閉装置48は、その流路制御装置42および流路開閉装置48を一体化した1つの機能部品に置き換えられても差し支えない。このことは、第3実施形態の流路制御装置60および流路開閉装置48についても同様である。
【0118】
(3)上述の第1および第2実施形態において、流路制御装置42およびウォータポンプ36はそれぞれ、エンジン34とは別個の機器として設けられている。これに関し、流路制御装置42およびウォータポンプ36は何れもエンジン34と一体構造にされていても差し支えない。このことは、第3実施形態の流路制御装置60、ウォータポンプ36、およびエンジン34についても同様である。
【0119】
(4)上述の第1および第3実施形態において、車両用暖房装置2で第2切替状態が成立している場合であっても、流路制御装置42、60の第1出口ポート42b、60bは完全には閉塞されない。しかしながら、これは一例であり、流路制御装置42、60は、第2切替状態が成立している場合に第1出口ポート42b、60bが完全に閉塞される構成であることも考えられる。そのような構成の場合には、暖房装置制御部50は、タイマーまたは冷却水温度センサ52の検出温度等を用いて所定時間毎に、流路制御装置42、60が第1出口ポート42b、60bからエンジン冷却水を間欠的に流出させるように流路制御装置42、60の連通状態を切り替える。これにより、水冷式コンデンサ12でのエンジン冷却水の沸騰が防止される。
【0120】
(5)上述の各実施形態において、車両用暖房装置2は車室内の暖房に用いられるが、例えば車室内の除湿など暖房以外の用途に用いられても差し支えない。
【0121】
(6)上述の各実施形態において、車両用暖房装置2が有する暖房装置制御部50は、車両用空調装置1の不図示の空調制御装置と別個の制御装置として構成されているが、これは一例である。例えば、その空調制御装置と暖房装置制御部50とが一体として1つの制御装置を構成していても差し支えない。
【0122】
(7)上述の第1実施形態では、エンジン34の廃熱と水冷式コンデンサ12とを併用して暖房を行うことをウォータポンプ36が1台であっても実現することができるが、ウォータポンプ36は複数台設けられていても構わない。このことは、第2実施形態および第3実施形態でも同様である。
【0123】
(8)上述の各実施形態において、サーモスタット384は、ラジエータバイパス流路383の下流端と熱媒体循環路40との接続箇所に設けられているが、これは一例である。例えば、サーモスタット384は、ラジエータバイパス流路383の下流端ではなくそのラジエータバイパス流路383の上流端と熱媒体循環路40との接続箇所に設けられていても差し支えない。
【0124】
なお、本発明は、上述の実施形態に限定されることなく、様々な変形例や均等範囲内の変形をも包含する。また、上記各実施形態は、互いに無関係なものではなく、組み合わせが明らかに不可な場合を除き、適宜組み合わせが可能である。
【0125】
また、上記各実施形態において、実施形態を構成する要素は、特に必須であると明示した場合および原理的に明らかに必須であると考えられる場合等を除き、必ずしも必須のものではないことは言うまでもない。また、上記各実施形態において、実施形態の構成要素の個数、数値、量、範囲等の数値が言及されている場合、特に必須であると明示した場合および原理的に明らかに特定の数に限定される場合等を除き、その特定の数に限定されるものではない。
【0126】
また、上記各実施形態において、構成要素等の材質、形状、位置関係等に言及するときは、特に明示した場合および原理的に特定の材質、形状、位置関係等に限定される場合等を除き、その材質、形状、位置関係等に限定されるものではない。
【0127】
(まとめ)
上記各実施形態の一部または全部で示された第1の観点によれば、流路制御装置は、熱媒体循環路においてポンプからエンジンに至る途中に設けられ、ポンプの吐出口へ接続された入口ポートと第1出口ポートとエンジンへ接続された第2出口ポートとを有する。また、流路制御装置は、入口ポートから第1出口ポートへ流れる熱媒体の第1流量と入口ポートから第2出口ポートへ流れる熱媒体の第2流量との割合を変更可能に構成されている。また、第1流路は第1出口ポートとポンプの吸込口とを接続し、その第1出口ポートから流出した熱媒体をその吸込口へ流す。また、加熱装置は第1流路に設けられ、その第1流路を流れる熱媒体を加熱する。また、加熱用熱交換器は、第1流路において加熱装置に対し熱媒体流れ下流側に設けられ、第1流路を流れる熱媒体の熱で車室内への送風空気を加熱する。また、第2流路は、エンジンの熱媒体出口と加熱装置の熱媒体入口とを接続する。また、流路開閉装置はその第2流路に設けられ、その第2流路を開閉する。
【0128】
また、第2の観点によれば、加熱装置は冷凍サイクルの一部を構成し、その冷凍サイクルを循環する冷媒と熱媒体とを熱交換させる。従って、車両に設けられている冷凍サイクルを利用して熱媒体を加熱することが可能である。
【0129】
また、第3の観点によれば、流路制御装置は、流路制御装置が上記第1流量よりも上記第2流量を多くし且つ流路開閉装置が第2流路を閉じる第2切替状態が成立している場合においても加熱装置に熱媒体を流通させる。従って、冷凍サイクルの運転中において加熱装置に熱媒体が滞留しないので、加熱装置での熱媒体の沸騰を防止することができる。このことは、例えば冷凍サイクルで車室内の冷房が行われる際に特に有効である。
【0130】
また、第4の観点によれば、加熱装置は電気ヒータである。従って、熱媒体に対する加熱装置の加熱のオンオフ切替えを、加熱装置に対する通電の切替えによって容易に行うことが可能である。
【0131】
また、第5の観点によれば、流路制御装置は、入口ポートを第1出口ポートと第2出口ポートとの一方へ連通させる三方弁で構成されている。従って、ポンプから吐出された熱媒体が流れる流路の切替えを簡潔な構成で実現することが可能である。
【符号の説明】
【0132】
12 水冷式コンデンサ(加熱装置)
30 ヒータコア(加熱用熱交換器)
34 エンジン
36 ウォータポンプ(ポンプ)
40 熱媒体循環路
42、60 流路制御装置
44 第1流路
46 第2流路
48 流路開閉装置
381 ラジエータ(放熱器)
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9