特許第6607173号(P6607173)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 株式会社村田製作所の特許一覧

<>
  • 特許6607173-積層型電子部品 図000002
  • 特許6607173-積層型電子部品 図000003
  • 特許6607173-積層型電子部品 図000004
  • 特許6607173-積層型電子部品 図000005
  • 特許6607173-積層型電子部品 図000006
  • 特許6607173-積層型電子部品 図000007
  • 特許6607173-積層型電子部品 図000008
  • 特許6607173-積層型電子部品 図000009
  • 特許6607173-積層型電子部品 図000010
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6607173
(24)【登録日】2019年11月1日
(45)【発行日】2019年11月20日
(54)【発明の名称】積層型電子部品
(51)【国際特許分類】
   H03H 7/01 20060101AFI20191111BHJP
   H01G 4/40 20060101ALI20191111BHJP
【FI】
   H03H7/01 Z
   H01G4/40 A
【請求項の数】5
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2016-233133(P2016-233133)
(22)【出願日】2016年11月30日
(65)【公開番号】特開2017-212716(P2017-212716A)
(43)【公開日】2017年11月30日
【審査請求日】2018年6月7日
(31)【優先権主張番号】特願2016-101845(P2016-101845)
(32)【優先日】2016年5月20日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000006231
【氏名又は名称】株式会社村田製作所
(74)【代理人】
【識別番号】110001195
【氏名又は名称】特許業務法人深見特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】宮原 邦浩
【審査官】 橋本 和志
(56)【参考文献】
【文献】 特開2010−178004(JP,A)
【文献】 国際公開第2014/129279(WO,A1)
【文献】 特開2009−130085(JP,A)
【文献】 特開2000−101378(JP,A)
【文献】 特開平10−209705(JP,A)
【文献】 特開2005−086676(JP,A)
【文献】 特開2013−128232(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H03H 7/01
H01G 4/40
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
電子部品素体である積層体と、シールド電極と、信号電極および接地電極を含む外部電極とを備えた積層型電子部品であって、
前記積層体は、一方主面および他方主面と、前記一方主面と前記他方主面とを接続する4つの側面とを有する直方体状であって、内部に前記一方主面および前記他方主面に平行な第1のパターン導体と、前記一方主面および前記他方主面に直交する第1のビア導体および第2のビア導体とを備えており、
前記シールド電極は、少なくとも1つの側面に設けられており、
前記外部電極は、前記他方主面に設けられており、
前記第1のビア導体の一方端は、前記信号電極と当該信号電極の面積内で接続され、前記第1のビア導体の他方端は、前記第1のパターン導体と前記他方主面側で接続されており、
前記第2のビア導体の一方端は、前記第1のパターン導体と前記一方主面側で接続されており、
前記第1のパターン導体は、前記一方主面側から見たとき、前記第2のビア導体と前記シールド電極との間の距離が、前記第1のビア導体と前記シールド電極との間の距離より長くなり、かつ前記第2のビア導体と前記第1のパターン導体との接続箇所の少なくとも一部が、前記第1のビア導体が接続された前記信号電極の面積外となるように延伸して設けられており、
前記第2のビア導体の長さは、前記第1のビア導体の長さより長いことを特徴とする、積層型電子部品。
【請求項2】
前記積層体は、内部に前記一方主面および前記他方主面に平行な第2のパターン導体をさらに含み、前記第2のパターン導体は、前記第2のビア導体の他方端と前記他方主面側で接続されており、かつインダクタまたはキャパシタを構成していることを特徴とする、請求項1に記載の積層型電子部品。
【請求項3】
前記シールド電極は、前記4つの側面のそれぞれに設けられていることを特徴とする、請求項1または2に記載の積層型電子部品。
【請求項4】
前記積層体は、内部に前記一方主面および前記他方主面に平行な第3のパターン導体と、前記一方主面および前記他方主面に直交する第3のビア導体とを備えており、
前記第3のビア導体の一方端は、前記接地電極と当該接地電極の面積内で接続され、前記第3のビア導体の他方端は、前記第3のパターン導体と前記他方主面側で接続されており、
前記第3のパターン導体の一端は、前記シールド電極に接続されていることを特徴とする、請求項1ないしのいずれか1項に記載の積層型電子部品。
【請求項5】
前記シールド電極は、第1の部分と、一方端が当該第1の部分に接続され、他方端が前記他方主面に到達する第2の部分とを含んでおり、
前記接地電極は、第1の部分と、一方端が当該第1の部分に接続され、他方端が前記シールド電極の第2の部分が設けられている側面に到達する第2の部分とを含んでおり、
前記シールド電極の第2の部分と、前記接地電極の第2の部分とが接続されていることを特徴とする、請求項1ないしのいずれか1項に記載の積層型電子部品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、積層型電子部品に関するものであり、特に電子部品素体である積層体の底面に外部電極が設けられ、かつ積層体の側面にシールド電極が設けられている積層型電子部品に関する。
【背景技術】
【0002】
電子部品素体である積層体の側面にシールド電極が設けられている積層型電子部品の一例として、特開2002−76807号公報(特許文献1)に記載の積層型電子部品が挙げられる。
【0003】
図9は、特許文献1に記載の積層型電子部品300の外観斜視図である。積層型電子部品300は、電子部品素体である積層体301と、第1のシールド電極302aおよび第2のシールド電極302bと、第1の外部電極303aおよび第2の外部電極303bとを備えている。
【0004】
積層体301は、直方体状である。第1のシールド電極302aは、積層体301の短手方向において対向する2つの側面のうちの一方に設けられており、第2のシールド電極302bは、他方に設けられている。また、第1の外部電極303aは、積層体301の長手方向において対向する2つの側面のうちの一方に設けられており、第2の外部電極303bは、他方に設けられている。
【0005】
積層体301の内部構造については、図示を省略するが、パターン導体とビア導体とにより、複数のインダクタが構成されている。また、パターン導体により、複数のキャパシタが構成されている。そして、これらのインダクタおよびキャパシタにより、帯域通過フィルタが構成されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2002−76807号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ここで、前述したように積層体の側面にシールド電極を備えた積層型電子部品において、パターン導体と外部電極との接続がビア導体で行なわれる場合を考える。ここで、外部電極としては、信号電極と接地電極とが含まれる複数のパッド電極が積層体の底面に所定の配列で並べられている、いわゆるLGA(Land Grid Array)などが挙げられるが、これに限られるものではない。
【0008】
このような積層型電子部品において、フィルタ特性の設計値からのずれを小さくするため、ビア導体とその近傍に設けられているシールド電極との間の意図しない浮遊容量を小さくしたい場合、ビア導体をできるだけシールド電極から離れた位置に形成する必要がある。しかしながら、ビア導体を信号電極の面積内に形成しようとすると、信号電極の面積が小さい、あるいは信号電極が側面に近い場合、ビア導体をシールド電極から十分に離すことができない虞がある。その場合、ビア導体とその近傍に設けられているシールド電極との間の浮遊容量が小さくならない虞がある。
【0009】
そこで、この発明の目的は、積層体内部のパターン導体と積層体の底面に設けられた信号電極との間を接続するビア導体と、その近傍に設けられているシールド電極との間の浮遊容量が小さい積層型電子部品を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
この発明では、上記のビア導体とその近傍に設けられているシールド電極との間の浮遊容量が小さくなるように、ビア導体の配設の仕方についての改良が図られる。
【0011】
この発明に係る積層型電子部品は、電子部品素体である積層体と、シールド電極と、信号電極および接地電極を含む外部電極とを備えている。積層体は、一方主面および他方主面と、一方主面と他方主面とを接続する4つの側面とを有する直方体状である。また、積層体は、その内部に一方主面および他方主面に平行な第1のパターン導体と、一方主面および他方主面に直交する第1のビア導体および第2のビア導体とを備えている。シールド電極は、少なくとも1つの側面に設けられている。外部電極は、他方主面に設けられている。外部電極としては、前述したように例えばLGAなどが挙げられるが、これに限られるものではない。
【0012】
第1のビア導体の一方端は、信号電極とその信号電極の面積内で接続され、第1のビア導体の他方端は、第1のパターン導体と他方主面側で接続されている。第2のビア導体の一方端は、第1のパターン導体と一方主面側で接続されている。第1のパターン導体は、一方主面側から見たとき、第2のビア導体とシールド電極との間の距離が、第1のビア導体とシールド電極との間の距離より長くなり、かつ第2のビア導体と第1のパターン導体との接続箇所の少なくとも一部が、第1のビア導体が接続された信号電極の面積外となるように延伸して設けられている。
【0013】
上記の構成を有している積層型電子部品では、積層体内部のパターン導体と積層体の底面に設けられた信号電極との間を接続するビア導体が、第1のビア導体および第2のビア導体に分かれている。そして、第2のビア導体は、上記の特徴を有する第1のパターン導体に接続されることにより、その近傍に設けられているシールド電極から十分離されている。したがって、信号電極の面積が小さい、あるいは信号電極が側面に近い場合であっても、上記のビア導体およびシールド電極の間の浮遊容量が小さい。
【0014】
この発明に係る積層型電子部品は、以下の特徴を備えることが好ましい。すなわち、第2のビア導体の長さは、第1のビア導体の長さより長い。
【0015】
上記の構成を有している積層型電子部品では、シールド電極から十分離されている第2のビア導体の比率が第1のビア導体の比率より多いため、上記のビア導体およびシールド電極の間の浮遊容量が確実に小さくなる。
【0016】
この発明に係る積層型電子部品は、以下の特徴を備えることが好ましい。すなわち、積層体は、その内部に一方主面および他方主面に平行な第2のパターン導体をさらに含む。そして、第2のパターン導体は、第2のビア導体の他方端と他方主面側で接続されており、かつインダクタまたはキャパシタを構成している。
【0017】
上記の構成を有している積層型電子部品では、前述したようにビア導体およびシールド電極の間の浮遊容量が小さい。したがって、第2のパターン導体が例えばLC並列共振器の回路中のインダクタまたはキャパシタを構成し、積層型電子部品が積層帯域通過フィルタである場合、フィルタ特性の設計値からのずれが小さい。
【0018】
この発明に係る積層型電子部品およびその好ましい実施形態は、以下の特徴を備えることがさらに好ましい。すなわち、シールド電極は、積層体の4つの側面のそれぞれに設けられている。
【0019】
上記の構成を有している積層型電子部品では、外部からのノイズによる影響が効果的に抑制されている。
【0020】
この発明に係る積層型電子部品およびその好ましい実施形態は、以下の特徴を備えることがさらに好ましい。すなわち、積層体は、内部に一方主面および他方主面に平行な第3のパターン導体と、一方主面および他方主面に直交する第3のビア導体とを備えている。第3のビア導体の一方端は、接地電極とその接地電極の面積内で接続され、第3のビア導体の他方端は、第3のパターン導体と他方主面側で接続されている。そして、第3のパターン導体の一端は、シールド導体に接続されている。
【0021】
上記の構成を有している積層型電子部品では、シールド導体と接地電極とが積層型電子部品の外表面において隔離している。すなわち、接地導体を含む外部電極と電子機器の回路基板上の実装電極とがはんだ接続される際に、シールド導体へのはんだの濡れ上がりが抑制される。その結果、この発明に係る積層型電子部品と他の電子部品との間の、濡れ上がったはんだによる導通が抑制される。したがって、この発明に係る積層型電子部品と他の電子部品とを高密度で実装することができる。
【0022】
この発明に係る積層型電子部品およびその好ましい実施形態は、以下の特徴を備えることもさらに好ましい。すなわち、シールド導体は、第1の部分と、一方端がその第1の部分に接続され、他方端が積層体の他方主面に到達する第2の部分とを含んでいる。接地電極は、第1の部分と、一方端がその第1の部分に接続され、他方端がシールド導体の第2の部分が設けられている側面に到達する第2の部分とを含んでいる。そして、シールド導体の第2の部分と、接地電極の第2の部分とが接続されている。
【0023】
上記の構成を有している積層型電子部品では、すなわち、シールド導体と接地電極とが、積層型電子部品の外表面で直接接続されている。その結果、シールド導体と接地電極とを接続するためのパターン導体およびビア導体を、積層体の内部に設けなくてもよい。したがって、積層体内部のパターン導体およびビア導体の配置の自由度を高くすることができる。なお、シールド導体と接地電極とを接続するためのパターン導体およびビア導体を積層体の内部に設ける構造と併用することも可能であり、その場合は接地効果を高くすることができる。
【発明の効果】
【0024】
この発明に係る積層型電子部品では、積層体内部のパターン導体と積層体の底面に設けられた信号電極との間を接続するビア導体と、その近傍に設けられているシールド電極との間の浮遊容量が小さい。
【図面の簡単な説明】
【0025】
図1】この発明に係る積層型電子部品の実施形態である積層型電子部品100の要部を示す透視斜視図である。
図2】積層型電子部品100の要部の、図1に示した切断面における矢視断面図である。
図3】積層型電子部品100に対する比較例である積層型電子部品200の要部を示す透視斜視図である。
図4】積層型電子部品200の要部の、図3に示した切断面における矢視断面図である。
図5】積層型電子部品100の、シールド電極と接地電極との接続構造に着目した透視斜視図である。
図6】積層型電子部品100とはシールド電極と接地電極との接続構造のみが異なる積層型電子部品100Aの、シールド電極と接地電極との接続構造に着目した透視斜視図である。
図7】この発明に係る積層型電子部品の実施形態の第1の変形例である積層型電子部品100B、および第2の変形例である積層型電子部品100Cの天面側からの透視平面図である。
図8】この発明に係る積層型電子部品の実施形態の第3の変形例である積層型電子部品100Dの透視斜視図である。
図9】背景技術の積層型電子部品300の外観斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下にこの発明の実施形態を示して、この発明の特徴とするところをさらに詳しく説明する。この発明が適用される積層型電子部品としては、例えば積層帯域通過フィルタが挙げられるが、これに限られるものではない。
【0027】
−積層型電子部品の実施形態−
この発明に係る積層型電子部品の実施形態である積層型電子部品100について、図1および図2を用いて説明する。なお、図面は、要部のみを示すものであり、後述する積層体の内部には、図示されたもの以外に、回路を構成するためのパターン導体およびビア導体が多数存在するが、それらについては簡略化のため言及および図示を省略している。また、以後の図面についても、同様に要部のみを示す。
【0028】
また、図面において、製造工程上で発生するシールド電極、外部電極、パターン導体、ビア導体および積層体の形状のばらつきなどは反映されていない。すなわち、以後で用いる図面は、たとえ実際の製品と異なる部分があったとしても、本質的な面で実際の製品を表すものと言うことができる。
【0029】
図1は、積層型電子部品100の、要部が示された透視斜視図である。図2(A)は、積層型電子部品100の要部を、図1に示されているA1−A1線を含む面(一点鎖線により表示)で切断した場合を示す矢視断面図である。図2(B)は、同じく図1に示されているA2−A2線を含む面(一点鎖線により表示)で切断した場合を示す矢視断面図である。図1および図2では、後述するシールド電極と接地電極との接続構造(図5および図6参照)の図示は省略されている。
【0030】
積層型電子部品100は、電子部品素体である積層体1と、シールド電極2と、外部電極3とを含んでいる。積層体1は、一方主面および他方主面と、一方主面と他方主面とを接続する4つの側面とを有する直方体状である。図1においては、一方主面が図上の天面に相当し、他方主面が底面に相当する。
【0031】
積層体1は、誘電体層(符号なし)と、一方主面および他方主面に平行な、第1のパターン導体4aおよび第2のパターン導体4bを含むパターン導体4と、一方主面および他方主面に直交する、第1のビア導体5aおよび第2のビア導体5bを含むビア導体5とを備えている。誘電体層は、例えば低温焼成セラミック材料などからなり、パターン導体4およびビア導体5は、例えばCuなどからなる。積層体1の内部には、前述したように、これら以外のパターン導体およびビア導体が多数存在しており、例えばLC並列共振器を構成している。
【0032】
シールド電極2は、第1のシールド電極2a、第2のシールド電極2b、第3のシールド電極2cおよび第4のシールド電極2dを含んでいる。各シールド電極は、例えばCuなどからなり、積層体1の4つの側面にそれぞれ1枚ずつ設けられている。この場合、外部からのノイズによる影響が効果的に抑制されるため好ましい。ただし、積層型電子部品100のシールド電極は、4枚に限られず、4つの側面のうち、必要な箇所に設ければよい。また、積層型電子部品100では、各シールド電極は、積層体1の稜部で互いに接続されているが、それぞれが離された状態で設けられていてもよい。
【0033】
外部電極3は、LGAであり、第1の信号電極3a、第2の信号電極3b、第3の信号電極3e、第4の信号電極3fおよび第1の接地電極3c、第2の接地電極3dが、積層体1の底面に所定の配列で並べられた状態で設けられている。積層型電子部品100では、いわゆるマトリックス状の配列となっているが、これに限られない。なお、積層型電子部品100の外部電極3は、6枚に限られず、回路上必要となる数を設けるようにすればよい。なお、外部電極としては、LGAに限られるものではなく、例えば所定の配列で並べられたはんだバンプなどが用いられてもよい。
【0034】
積層型電子部品100では、第1のパターン導体4aは、積層体1の一方主面側から見たときに、第2の信号電極3bの重心位置と第1の接地電極3cの重心位置とを結ぶ方向に延伸した帯状の導体であり、一方端部および他方端部が接続領域となっている。ただし、延伸する方向はこれに限られない。また、第2のパターン導体4bは、例えばLC並列共振器の回路中のキャパシタを構成するパターン導体となっている。
【0035】
積層型電子部品100では、第1のビア導体5aの一方端は、第2の信号電極3bと、第2の信号電極3bの重心位置で接続されている。ただし、この接続箇所は、これに限られず、第2の信号電極3bの面積内であればよい。また、第1のビア導体5aの他方端は、第1のパターン導体4aの一方端部と、積層体1の他方主面すなわち底面側で接続されている。なお、第1のビア導体5aの他方端と第1のパターン導体4aとの接続箇所は、第1のパターン導体4aの一方端部から中央側にずれた位置でもよい。
【0036】
積層型電子部品100では、第2のビア導体5bの一方端は、積層体1の一方主面側から見たときに、第2の信号電極3bの面積外で、第1のパターン導体4aの他方端部と、積層体1の一方主面すなわち天面側で接続されている。したがって、第1のビア導体5aおよび第2のビア導体5bの近傍に設けられているシールド電極は、第2のシールド電極2bおよび第3のシールド電極2cである。
【0037】
第1のパターン導体4aは、積層体1の一方主面側から見たとき、第2のビア導体5bと第2のシールド電極2bとの間の距離d1Xが、第1のビア導体5aと第2のシールド電極2bとの間の距離d2X(後述)より長くなり、第2のビア導体5bと第3のシールド電極2cとの間の距離d1Yが、第1のビア導体5aと第3のシールド電極2cとの間の距離d2Y(後述)より長くなり、かつ第2のビア導体5bと第1のパターン導体4aとの接続箇所が、第1のビア導体5aが接続された第2の信号電極3bの面積外となるように延伸して設けられている(図2参照)。
【0038】
なお、第2のビア導体5bの一方端と第1のパターン導体4aの他方端部との接続箇所は、その一部が第2の信号電極3bの面積内に重なっていてもよい。また、第2のビア導体5bの一方端と第1のパターン導体4aとの接続箇所は、第1のパターン導体4aの他方端部から中央側にずれた位置でもよい。
【0039】
このことについて、積層型電子部品100に対する比較例である積層型電子部品200を用いて説明する。図3は、積層型電子部品200の透視斜視図である。図4(A)は、積層型電子部品200の要部を、図3に示されているA3−A3線を含む面(一点鎖線により表示)で切断した場合を示す矢視断面図である。図4(B)は、同じく図3に示されているA4−A4線を含む面(一点鎖線により表示)で切断した場合を示す矢視断面図である。
【0040】
積層型電子部品200は、電子部品素体である積層体201と、シールド電極202(第1のシールド電極202aないし第4のシールド電極202d)と、外部電極203(第1の信号電極203a、第2の信号電極203b、第3の信号電極203e、第4の信号電極203fおよび第1の接地電極203c、第2の接地電極203d)とを含んでいる。そして、積層体201は、その内部に一方主面および他方主面に平行なパターン導体204と、一方主面および他方主面に直交するビア導体205とを備えている。シールド電極202および外部電極203は、この発明に係る積層型電子部品100と同様である。
【0041】
積層型電子部品200では、ビア導体205の一方端は、第2の信号電極203bと、第2の信号電極203bの重心位置で接続されている。すなわち、ビア導体205の近傍に設けられているシールド電極は、積層型電子部品100と同様に、第2のシールド電極202bおよび第3のシールド電極202cである。
【0042】
その際、ビア導体205と第2のシールド電極202bとの間の距離はd2Xであり、これは積層型電子部品100の第1のビア導体5aと第2のシールド電極2bとの間の距離である。また、ビア導体205と第3のシールド電極202cとの間の距離はd2Yであり、これは積層型電子部品100の第1のビア導体5aと第3のシールド電極2cとの間の距離である(図4参照)。
【0043】
この場合、ビア導体205全体と第2のシールド電極202bとの間、およびビア導体205全体と第3のシールド電極202cとの間に、浮遊容量が発生する。この浮遊容量の大きさは、積層体201を構成する誘電体材料の比誘電率が大きくなるにつれ、フィルタ特性の設計値からのずれの原因となり得る。
【0044】
一方、この発明に係る積層型電子部品100では、前述したように、第1のパターン導体4aにより、第2のビア導体5bと第2のシールド電極2bおよび第3のシールド電極2cとの間の距離が、第1のビア導体5aと第2のシールド電極2bおよび第3のシールド電極2cとの間の距離より長くされている。静電容量は導体間の距離に反比例するため、第2のビア導体5bと上記のシールド電極との間に発生する浮遊容量の大きさは、小さく抑えられることになる。
【0045】
したがって、積層型電子部品100における第1のビア導体5aおよび第2のビア導体5bとその近傍のシールド電極との間に発生する浮遊容量の大きさは、積層型電子部品200におけるビア導体205とその近傍のシールド電極との間に発生する浮遊容量の大きさに比べて小さくなる。すなわち、積層型電子部品100のフィルタ特性は、設計値からのずれが小さく抑えられている。
【0046】
ここで、この発明に係る積層型電子部品の、シールド電極と接地電極との接続構造について図5および図6を用いて説明する。図5は、積層型電子部品100の、シールド電極と接地電極との接続構造に着目した透視斜視図である。図5に示すように、積層体1は、内部に一方主面および他方主面に平行な第3のパターン導体6a、6bと、一方主面および他方主面に直交する第3のビア導体7a、7bとを備えている。
【0047】
第3のビア導体7bの一方端は、第2の接地電極3dと第2の接地電極3dの面積内で接続され、第3のビア導体7bの他方端は、第3のパターン導体6bと他方主面側で接続されている。そして、第3のパターン導体6bの一端は、第2のシールド電極2bに接続されている。また、第3のパターン導体6aと第3のビア導体7aとは、上記と同様の位置関係にあり、第3のビア導体7aは第1の接地電極3cと接続され、第3のパターン導体6aの一端は、第1のシールド電極2aに接続されている。
【0048】
この接続構造では、第1の接地電極3cおよび第2の接地電極3dと対応する電子機器の回路基板上の実装電極とがはんだ接続される際に、第1のシールド電極2aおよび第2のシールド電極2bへのはんだの濡れ上がりが抑制される。その結果、積層型電子部品100と他の電子部品との間の、濡れ上がったはんだによる導通(はんだブリッジ)が抑制される。したがって、積層型電子部品100と他の電子部品とを高密度で実装することができる。
【0049】
図6は、積層型電子部品100とはシールド電極と接地電極との接続構造のみが異なる積層型電子部品100Aの、シールド電極と接地電極との接続構造に着目した透視斜視図である。図6に示すように、第2のシールド電極2bは、第1の部分2b1と、一方端が第1の部分2b1に接続され、他方端が積層体1の他方主面に到達する第2の部分2b2とを含んでいる。また、第1のシールド電極2aは、上記と同様の構造である不図示の第1の部分2a1と第2の部分2a2とを含んでいる。
【0050】
第2の接地電極3dは、第1の部分3d1と、一方端が第1の部分3d1に接続され、他方端が第2のシールド電極2bが設けられている側面に到達する第2の部分3d2とを含んでいる。積層型電子部品100Aでは、第1の部分3d1の幅と第2の部分3d2の幅とが同じとなっているが、これらの幅は異なっていてもよい。また、第2のシールド電極2bの第2の部分2b2の幅と、第2の接地電極3dの第2の部分3d2の幅とが同じとなっているが、これについても異なっていてもよい。そして、第2のシールド電極2bの第2の部分2b2と、第2の接地電極3dの第2の部分3d2とが接続されている。
【0051】
また、第1の接地電極3cは、第2の接地電極3dと同様の構造であり、不図示の第1の部分3c1と第2の部分3c2とを含んでいる。そして、第1のシールド電極2aの第2の部分2a2と、第1の接地電極3cの第2の部分3c2とが接続されている。
【0052】
この接続構造では、第1のシールド電極2aと第1の接地電極3cとを接続するためのパターン導体およびビア導体、ならびに第2のシールド電極2bと第2の接地電極3dとを接続するためのパターン導体およびビア導体を、積層体1の内部に設けなくてもよい。したがって、積層体1内部のパターン導体およびビア導体の配置の自由度を高くすることができる。
【0053】
−積層型電子部品の実施形態の第1および第2の変形例−
この発明に係る積層型電子部品の実施形態の第1の変形例である積層型電子部品100Bおよび第2の変形例である積層型電子部品100Cについて、図7を用いて説明する。積層型電子部品100B、100Cは、第1のパターン導体4aの形状が積層型電子部品100と異なっている。それ以外の構成要素は積層型電子部品100と共通であるため、共通する構成要素の説明については省略または簡略化することがある。以後の説明においても、共通する構成要素の説明については同様である。
【0054】
図7(A)は、この発明に係る積層型電子部品の実施形態の第1の変形例である積層型電子部品100Bの天面側からの透視平面図である。図7(B)は、この発明に係る積層型電子部品の実施形態の第2の変形例である積層型電子部品100Cの天面側からの透視平面図である。
【0055】
積層型電子部品100Bでも、積層体1の一方主面側から見たとき、第2のビア導体5bとその近傍のシールド電極との間の距離は、第1のビア導体5aと同じシールド電極との間の距離よりも長くなっている。一方、積層型電子部品100Bでは、第2のビア導体5bと第2のシールド電極2bとの間の距離d1Xは、第1のビア導体5aと第2のシールド電極2bとの間の距離d2Xより長くなっているが、第2のビア導体5bと第3のシールド電極2cとの間の距離は、第1のビア導体5aと第3のシールド電極2cとの間の距離d2Yと同じになっている。
【0056】
また、積層型電子部品100Cのように、第2のビア導体5bと第3のシールド電極2cとの間の距離d1Yを、第1のビア導体5aと第3のシールド電極2cとの間の距離d2Yより長くし、第2のビア導体5bと第2のシールド電極2bとの間の距離を、第1のビア導体5aと第2のシールド電極2bとの間の距離d2Xと同じにしてもよい。ただし、積層型電子部品100Cのように、第1のビア導体5aと近い方のシールド電極(第2のシールド電極2b)との距離が長くなるように、第1のパターン導体4aにより第2のビア導体5bの配置位置をずらす方が効果的である。
【0057】
−積層型電子部品の実施形態の第3の変形例−
この発明に係る積層型電子部品の実施形態の第3の変形例である積層型電子部品100Dについて、図8を用いて説明する。積層型電子部品100Dは、第2のパターン導体4bの形状が積層型電子部品100と異なっている。それ以外の構成要素は積層型電子部品100と共通である。
【0058】
図8は、この発明に係る積層型電子部品の実施形態の第3の変形例である積層型電子部品100Dの透視斜視図である。第2のパターン導体4bは、積層型電子部品100では、例えばLC並列共振器の回路中のキャパシタを構成するパターン導体となっていたが、積層型電子部品100Dでは、インダクタを構成するためのパターン導体となっている。
【0059】
この場合でも、第1のパターン導体4aは、第2のビア導体5bと第2のシールド電極2bとの間の距離が、第1のビア導体5aと第2のシールド電極2bとの間の距離より長くなり、第2のビア導体5bと第3のシールド電極2cとの間の距離が、第1のビア導体5aと第3のシールド電極2cとの間の距離より長くなるように延伸して設けられている。なお、前述の第1および第2の変形例のように、第2のビア導体5bと1つのシールド電極との間の距離が長くなるようにしてもよい。
【0060】
そして、第1のパターン導体4aにより第2のビア導体5bの配置位置を第1のビア導体5aの配置位置からずらす際に、第2のパターン導体4bと第2のシールド電極2bおよび第3のシールド電極2cとの間の距離が長くなるように、第2のパターン導体4bの配置位置も同時にずらされている。さらに、第2のパターン導体4bと第2のシールド電極2bおよび第3のシールド電極2cとが対向する領域の長さが短くなるように、第2のパターン導体4bの形状も調整されている。
【0061】
そのようにすることで、第2のパターン導体4bと第2のシールド電極2bおよび第3のシールド電極2cとの間に発生する浮遊容量の大きさが、小さく抑えられることになる。
【0062】
したがって、積層型電子部品100Dにおける第2のパターン導体4bならびに第1のビア導体5aおよび第2のビア導体5bとその近傍のシールド電極との間に発生する浮遊容量の大きさが十分に小さくなる。すなわち、積層型電子部品100Dのフィルタ特性も、設計値からのずれが十分に小さく抑えられている。
【0063】
なお、この発明は上記の実施形態に限定されるものではなく、この発明の範囲内において、種々の応用、変形を加えることができる。また、この明細書に記載の各実施形態は、例示的なものであり、異なる実施形態間において、構成の部分的な置換または組み合わせが可能であることを指摘しておく。
【符号の説明】
【0064】
100、100A、100B、100C、100D 積層型電子部品
1 積層体
2 シールド電極
2a 第1のシールド電極
2b 第2のシールド電極
2c 第3のシールド電極
2d 第4のシールド電極
3 外部電極
3a 第1の信号電極
3b 第2の信号電極
3c 第1の接地電極
3d 第2の接地電極
3e 第3の信号電極
3f 第4の信号電極
4 パターン導体
4a 第1のパターン導体
4b 第2のパターン導体
5 ビア導体
5a 第1のビア導体
5b 第2のビア導体
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9