特許第6607192号(P6607192)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6607192
(24)【登録日】2019年11月1日
(45)【発行日】2019年11月20日
(54)【発明の名称】透明固形洗浄剤
(51)【国際特許分類】
   C11D 1/10 20060101AFI20191111BHJP
   C11D 17/06 20060101ALI20191111BHJP
   C11D 3/20 20060101ALI20191111BHJP
   A61K 8/44 20060101ALI20191111BHJP
   A61K 8/34 20060101ALI20191111BHJP
   A61Q 19/10 20060101ALI20191111BHJP
【FI】
   C11D1/10
   C11D17/06
   C11D3/20
   A61K8/44
   A61K8/34
   A61Q19/10
【請求項の数】14
【全頁数】17
(21)【出願番号】特願2016-554119(P2016-554119)
(86)(22)【出願日】2015年10月15日
(86)【国際出願番号】JP2015079196
(87)【国際公開番号】WO2016060207
(87)【国際公開日】20160421
【審査請求日】2018年9月13日
(31)【優先権主張番号】特願2014-210999(P2014-210999)
(32)【優先日】2014年10月15日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000000066
【氏名又は名称】味の素株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100080791
【弁理士】
【氏名又は名称】高島 一
(74)【代理人】
【識別番号】100125070
【弁理士】
【氏名又は名称】土井 京子
(74)【代理人】
【識別番号】100136629
【弁理士】
【氏名又は名称】鎌田 光宜
(74)【代理人】
【識別番号】100121212
【弁理士】
【氏名又は名称】田村 弥栄子
(74)【代理人】
【識別番号】100163658
【弁理士】
【氏名又は名称】小池 順造
(74)【代理人】
【識別番号】100174296
【弁理士】
【氏名又は名称】當麻 博文
(74)【代理人】
【識別番号】100137729
【弁理士】
【氏名又は名称】赤井 厚子
(74)【代理人】
【識別番号】100151301
【弁理士】
【氏名又は名称】戸崎 富哉
(72)【発明者】
【氏名】弓岡 理奈
【審査官】 柴田 啓二
(56)【参考文献】
【文献】 特開2010−202760(JP,A)
【文献】 特開昭55−025465(JP,A)
【文献】 特開平04−001297(JP,A)
【文献】 特開平07−173488(JP,A)
【文献】 特開2003−306694(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C11D
A61K 8/44
A61Q 19/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
以下の成分(A)、(B)および(C)を含有する透明固形洗浄剤であって、(B)1重量部に対して(A)11.7140重量部および(C)2.5〜2400重量部を含有する透明固形洗浄剤:
(A)N−アシルグルタミン酸塩:20〜50重量部
(B)アシルグリシン塩:0.01〜4.4重量部
(C)多価アルコール:11〜24重量部
【請求項2】
さらに以下の成分(D)を含有する請求項1に記載の透明固形洗浄剤:
(D)低級アルコール。
【請求項3】
(A)N−アシルグルタミン酸塩が、ナトリウム、カリウム及びトリエタノールアミンからなる群から選択される少なくともひとつとの塩である請求項1または2に記載の透明固形洗浄剤。
【請求項4】
(B)アシルグリシン塩が、ナトリウム、カリウム及びトリエタノールアミンからなる群から選択される少なくともひとつとの塩である請求項1〜のいずれか1項に記載の透明固形洗浄剤。
【請求項5】
(C)多価アルコールが、グリセリン、ソルビトール、グリコシルトレハロース、トレハロースおよびスクロースからなる群から選択される少なくとも1種である請求項1〜のいずれか1項に記載の透明固形洗浄剤。
【請求項6】
(D)低級アルコールが、エタノールおよびイソプロピルアルコールからなる群から選択される少なくとも1種である請求項2〜のいずれか1項に記載の透明固形洗浄剤。
【請求項7】
pHが6.1〜6.9である請求項1〜のいずれか1項に記載の透明固形洗浄剤。
【請求項8】
仕込み時の含有量として、以下の成分(A)〜(D)を含有する透明固形洗浄剤:
(A)N−アシル酸性アミノ酸塩:20〜50重量部
(B)アシルグリシン塩:0.01〜4.4重量部
(C)多価アルコール:11〜24重量部
(D)低級アルコール:2.5〜30重量部。
【請求項9】
(A)の酸性アミノ酸がグルタミン酸またはアスパラギン酸である請求項に記載の透明固形洗浄剤。
【請求項10】
(A)N−アシル酸性アミノ酸塩が、ナトリウム、カリウム及びトリエタノールアミンからなる群から選択される少なくともひとつとの塩である請求項またはに記載の透明固形洗浄剤。
【請求項11】
(B)アシルグリシン塩が、ナトリウム、カリウム及びトリエタノールアミンからなる群から選択される少なくともひとつとの塩である請求項10のいずれか1項に記載の透明固形洗浄剤。
【請求項12】
(C)多価アルコールが、グリセリン、ソルビトール、グリコシルトレハロース、トレハロースおよびスクロースからなる群から選択される少なくとも1種である請求項11のいずれか1項に記載の透明固形洗浄剤。
【請求項13】
(D)低級アルコールが、エタノールおよびイソプロピルアルコールからなる群から選択される少なくとも1種である請求項12のいずれか1項に記載の透明固形洗浄剤。
【請求項14】
pHが6.1〜6.9である請求項8〜13のいずれか1項に記載の透明固形洗浄剤。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、保存安定性や使用性に優れた透明固形洗浄剤に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、透明固形洗浄剤としては、高級脂肪酸塩を主剤とし、透明化剤としてグリセリンやショ糖、ソルビトールなどを添加したものが主に用いられている。透明固形洗浄剤は、高級感を与え、商品価値が高いものであるが、高級脂肪酸塩を主剤とした透明固形洗浄剤は、透明性に欠け、皮膚への刺激、硬水中での起泡性の悪さなどといった欠点があるため、アシル酸性アミノ酸を用いた透明固形洗浄剤が検討されている。
【0003】
例えば、N−長鎖アシル酸性アミノ酸塩を主剤とした透明固形洗浄剤は、透明性に優れ、皮膚に対して温和であることが知られているが、高温安定性や泡立ちといった面で不十分であった(特許文献1)。
またN−長鎖アシル酸性アミノ酸塩の塩をエタノールアミン塩とアルカリ金属塩を併用した透明固形洗浄剤では、製造時の加熱により着色を生じてしまうことや、柔らかい剤型から、容器への付着性といった点で問題があった(特許文献2)。
【0004】
さらにN−長鎖アシル酸性アミノ酸塩のカリウム塩とナトリウム塩とエタノールアミン塩とのモル構成比を考慮した透明状固形洗浄剤では、高温多湿の環境下で柔らかくなるといった点で問題があった(特許文献3)。
またN−長鎖アシル酸性アミノ酸塩にアルキル変性シリコーンを成分として配合した透明固形洗浄剤では、低温での安定性や、起泡力やすすぎやすさなどの使用性の面で不十分であった(特許文献4)。
【0005】
いっぽう、アシル酸性アミノ酸とアシル中性アミノ酸とを組み合わせて配合した洗浄剤組成物も知られているが、透明固形洗浄剤に関するものではなく(特許文献5)、透明固形洗浄剤組成物に関して上記問題点を解決すべくこれら2種のN−アシルアミノ酸塩を組み合わせて検討した例はこれまで知られていない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開昭55-25465号公報
【特許文献2】特開平4-1297号公報
【特許文献3】特開平6-264092号公報
【特許文献4】WO2011/104886
【特許文献5】特開平11-323379号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、透明性が高く、低刺激で使用感が良好で、製造時の加熱に対する安定性や低温および高温での保存安定性に優れている透明固形洗浄剤を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは上記課題を解決するために鋭意研究を重ねた結果、特定のアシル酸性アミノ酸塩、アシルグリシン塩および多価アルコールを特定の配合比の組成物(好ましくは特定のpH)とすることで製造性に優れ、製造時の加熱による着色の抑制(加熱に対する安定性)や、低温および高温においての保存安定性を維持したまま、使用性に優れた透明性の高い透明固形洗浄剤が得られること、さらに特定の低級アルコールを特定の割合で混合することで使用感や製造性に優れた透明固形洗浄剤を提供できることを見出し、本発明を完成した。
【0009】
すなわち、本発明は以下の通りである。
[1]以下の成分(A)、(B)および(C)を含有する透明固形洗浄剤であって、(B)1重量部に対して(A)4.5〜5000重量部および(C)2.5〜2400重量部を含有する透明固形洗浄剤:
(A)N−アシル酸性アミノ酸塩
(B)アシルグリシン塩
(C)多価アルコール。
[2]さらに以下の成分(D)を含有する[1]に記載の透明固形洗浄剤:
(D)低級アルコール。
[3](A)の酸性アミノ酸がグルタミン酸またはアスパラギン酸である[1]または[2]に記載の透明固形洗浄剤。
[4](A)N−アシル酸性アミノ酸塩が、ナトリウム、カリウム及びトリエタノールアミンからなる群から選択される少なくともひとつとの塩である[1]〜[3]のいずれか1項に記載の透明固形洗浄剤。
[5](B)アシルグリシン塩が、ナトリウム、カリウム及びトリエタノールアミンからなる群から選択される少なくともひとつとの塩である[1]〜[4]のいずれか1項に記載の透明固形洗浄剤。
[6](C)多価アルコールが、グリセリン、ソルビトール、グリコシルトレハロース、トレハロースおよびスクロースからなる群から選択される少なくとも1種である[1]〜[5]のいずれか1項に記載の透明固形洗浄剤。
[7](D)低級アルコールが、エタノールおよびイソプロピルアルコールからなる群から選択される少なくとも1種である[2]〜[6]のいずれか1項に記載の透明固形洗浄剤。
[8]pHが6.1〜6.9である[1]〜[7]のいずれか1項に記載の透明固形洗浄剤。
[9]仕込み時の含有量として、以下の成分(A)〜(D)を含有する透明固形洗浄剤:
(A)N−アシル酸性アミノ酸塩:20〜50重量部
(B)アシルグリシン塩:0.01〜4.4重量部
(C)多価アルコール:11〜24重量部
(D)低級アルコール:2.5〜30重量部。
[10](A)の酸性アミノ酸がグルタミン酸またはアスパラギン酸である[9]に記載の透明固形洗浄剤。
[11](A)N−アシル酸性アミノ酸塩が、ナトリウム、カリウム及びトリエタノールアミンからなる群から選択される少なくともひとつとの塩である[9]または[10]に記載の透明固形洗浄剤。
[12](B)アシルグリシン塩が、ナトリウム、カリウム及びトリエタノールアミンからなる群から選択される少なくともひとつとの塩である[9]〜[11]のいずれか1項に記載の透明固形洗浄剤。
[13](C)多価アルコールが、グリセリン、ソルビトール、グリコシルトレハロース、トレハロースおよびスクロースからなる群から選択される少なくとも1種である[9]〜[12]のいずれか1項に記載の透明固形洗浄剤。
[14](D)低級アルコールが、エタノールおよびイソプロピルアルコールからなる群から選択される少なくとも1種である[9]〜[13]のいずれか1項に記載の透明固形洗浄剤。
[15]pHが6.1〜6.9である[9]〜[14]のいずれか1項に記載の透明固形洗浄剤。
[16]仕込み時の含有量として、以下の成分(A)〜(D)を含有する透明固形洗浄剤:
(A)N−アシル酸性アミノ酸塩:20〜50重量%
(B)アシルグリシン塩:0.01〜4.4重量%
(C)多価アルコール:11〜24重量%
(D)低級アルコール:2.5〜30重量%。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、製造時の加熱により着色することなく透明性を維持し、また低温や高温に温度が変化しても商品価値の高い外観を保ち、さらに着色等の変更が自由にできる透明固形洗浄剤を提供することができる。
本発明によれば、泡立ち、泡量、泡保持といった起泡力やすすぎやすさなど使用性に優れた透明固形洗浄剤を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明は、(A)N−アシル酸性アミノ酸塩および(B)アシルグリシン塩、および(C)多価アルコール、さらに必要に応じて(D)低級アルコールを特定の割合で含有する透明固形洗浄剤に関する(以下本発明の透明固形洗浄剤と略することもある)。
透明度は、サンプルを1cmの厚さに切断し、12ポイントの活字上におき、これを通して活字の文字が識別できるかどうかで評価できる。
【0012】
本発明における成分(A)N−アシル酸性アミノ酸塩はD体、L体およびDL体のいずれも使用することができる。またこれらのN−アシル酸性アミノ酸塩は、夫々単独で用いてもよいし、2種以上を任意の割合で混合して用いてもよい。
【0013】
本発明における成分(A)N−アシル酸性アミノ酸塩のアシル基は、炭素原子数8〜20の脂肪酸から誘導されるアシル基であり、炭素原子数8〜18の脂肪酸から誘導されるアシル基が好ましく、炭素原子数12〜14の脂肪酸から誘導されるアシル基がより好ましい。
例えば、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、オレイン酸、イソステアリン酸等や、それらの混合物である牛脂脂肪酸、ヤシ油脂肪酸、パーム核油脂肪酸等から誘導されるアシル基が挙げられ、ラウリン酸、ミリスチン酸、ヤシ油脂肪酸から誘導されるアシル基が好ましく、ラウリン酸、ミリスチン酸から誘導されるアシル基がより好ましい。
【0014】
本発明における成分(A)における酸性アミノ酸としては、酸性アミノ酸であれば特に限定されないが、グルタミン酸、アスパラギン酸等が挙げられ、グルタミン酸やアスパラギン酸が好ましい。
【0015】
N−アシル酸性アミノ酸の塩としては、リチウム塩、ナトリウム塩、カリウム塩等のアルカリ金属塩;カルシウム塩、マグネシウム塩等のアルカリ土類金属塩;モノエタノールアミン塩、ジエタノールアミン塩、トリエタノールアミン(TEA)塩等のアルカノールアミン塩;アンモニウム塩;および塩基性有機物塩等が挙げられる。これらのうち、泡立ちや保存安定性に優れたものを得る点で、アルカリ金属塩およびアルカノールアミン塩が好ましく、ナトリウム塩、カリウム塩、トリエタノールアミンがより好ましい。
また成分(A)は、本発明の透明固形洗浄剤を調製するときに、N−アシル酸性アミノ酸と上記塩を形成する物質(例えば、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、TEA等)と一緒に加えて中和し塩の形態としてもよい。さらに成分(A)は、未中和のN−アシル酸性アミノ酸を含んでいてもよい。
【0016】
本発明に用いられるN−アシル酸性アミノ酸塩は、具体的には、N−ラウロイルグルタミン酸、N−ミリストイルグルタミン酸、N−ココイル(ヤシ油脂肪酸アシル)グルタミン酸、N−ラウロイルアスパラギン酸、N−ミリストイルアスパラギン酸又はN−ココイルアスパラギン酸のモノナトリウム塩、モノカリウム塩、トリエタノールアミン塩等が挙げられる。これらは1種でも2種以上混合して使用してもよい。なかでもN−ラウロイルグルタミン酸、N−ミリトイルグルタミン酸、N−ココイルグルタミン酸のナトリウム塩またはトリエタノールアミン塩、またはそれらの混合物が好ましい。
【0017】
本発明における成分(B)アシルグリシン塩は夫々単独で用いてもよいし、2種以上を任意の割合で混合して用いてもよい。
【0018】
本発明における成分(B)アシルグリシン塩のアシル基は、炭素原子数8〜20の脂肪酸から誘導されるアシル基であり、炭素原子数8〜18の脂肪酸から誘導されるアシル基が好ましく、炭素原子数12〜14の脂肪酸から誘導されるアシル基がより好ましい。
例えば、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、オレイン酸、イソステアリン酸等や、それらの混合物である牛脂脂肪酸、ヤシ油脂肪酸、パーム核油脂肪酸等から誘導されるアシル基が挙げられ、ラウリン酸、ミリスチン酸、ヤシ油脂肪酸から誘導されるアシル基が好ましく、ラウリン酸、ミリスチン酸、ヤシ油脂肪酸から誘導されるアシル基が泡の持続性や低温使用性の点からより好ましい。
【0019】
アシルグリシンの塩としては、リチウム塩、ナトリウム塩、カリウム塩等のアルカリ金属塩;カルシウム塩、マグネシウム塩等のアルカリ土類金属塩;モノエタノールアミン塩、ジエタノールアミン塩、トリエタノールアミン塩等のアルカノールアミン塩;アンモニウム塩;および塩基性有機物塩等が挙げられる。
これらのうち、泡立ちやすすぎやすさ、保存安定性に優れたものを得る点で、アルカリ金属塩が好ましく、ナトリウム塩、カリウム塩がより好ましい。
また成分(B)は、本発明の透明固形洗浄剤を調製するときに、アシルグリシンと上記塩を形成する物質(例えば、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、TEA等)と一緒に加えて中和し塩の形態としてもよい。さらに成分(B)は、未中和のアシルグリシンを含んでいてもよい。
具体的には、N−ココイル(ヤシ油脂肪酸アシル)グリシンカリウム、N−ココイルグリシンナトリウム等が挙げられ、N−ココイルグリシンカリウム、N−ココイルグリシンナトリウムが好ましい。
【0020】
本発明における成分(C)多価アルコールは、グリセリン、ジグリセリン、ポリグリセリンなどのグリセリン類、ソルビトール、グリコシルトレハロース、トレハロース、スクロース、エリスリトールやキシリトールなどの糖アルコール、イソプレングリコール、ジプロピレングリコール、エトキシジグリコール、1,3−ブチレングリコールなどのグリコール類が挙げられる。これらは単独で、もしくは2種以上を混合してよい。なかでも、製造時の加熱による着色の抑制(加熱に対する安定性)や、低温および高温においての保存安定性を維持したまま、使用性に優れた透明性の高い透明固形洗浄剤を得るうえで、グリセリン類、糖アルコールが好ましく、グリセリン、ソルビトールがより好ましい。
【0021】
本発明における成分(D)低級アルコールは、炭素数1〜4の直鎖又は分岐のアルコールであり、エタノール、n−プロピルアルコール、イソプロピルアルコール、n−ブチルアルコール、プロパノール等が挙げられる。製造性や製造時の高温加熱による着色を抑制するという観点からは、エタノール、n−プロピルアルコール、イソプロピルアルコールが好ましく、エタノール、イソプロピルアルコールがより好ましい。
【0022】
本発明の透明固形洗浄剤においては、(B)1重量部に対して(A)4.5〜5000重量部を含有することを特徴とする。好ましくは、(B)1重量部に対して(A)6.7〜150重量部であり、より好ましくは(A)11.7〜140重量部である。この範囲であれば、透明性を維持し、製造時の高温加熱時に発生する着色を抑制し、泡立ちやすすぎやすさ等に優れた透明固形洗浄剤を提供することができる。
【0023】
また本発明の透明固形洗浄剤は、(B)1重量部に対して、通常(C)2.5〜2400重量部を含有し、好ましくは(C)3.7〜80重量部を含有し、より好ましくは(C)5〜40重量部を含有する。この範囲であれば、保存安定性等に優れた透明固形洗浄剤を提供することができる。
【0024】
さらに本発明の透明固形洗浄剤は、成分(D)を含有してもよい。含有量は特に限定されないが、通常透明固形洗浄剤全体(100重量部)に対して、5重量部以下を含有し、好ましくは3重量部以下を含有する。
【0025】
本発明の透明固形洗浄剤のpHは、通常6を超え7未満であるが、6.1〜6.9が好ましく、6.3〜6.7がより好ましい。この範囲であれば透明性を維持し、製造時の高温加熱時に発生する着色を抑制し、泡立ちやすすぎやすさに優れた透明固形洗浄剤を提供することができる。
ここで透明固形洗浄剤のpHは、1%水溶液(40℃)でのpHと定義される。
【0026】
本発明の透明固形洗浄剤は、成分(A)〜(D)を仕込み時に後述の用量で配合して製造されたものであることを特徴とする。仕込み後混合物を、加熱して各成分を均一に溶解し、これを型に注入し、冷却固化、乾燥熟成を経て、透明固形洗浄剤を得ることができる。
【0027】
成分(A)の仕込み時の含有量としては、通常20重量部以上、好ましくは30重量部以上、より好ましくは35重量部以上、特に好ましくは37重量部以上であり、通常50重量部以下であり、好ましくは45重量部以下であり、より好ましくは44重量部以下である。
(A)が20重量部より少ない場合には、低温や高温で保存した場合には析出や軟化を起こすため、透明固形洗浄剤としての剤型が保てず、泡性能も不十分である。50重量部を超えると製造時にゲル化してしまい製造が不可能になる場合がある。
【0028】
成分(B)の仕込み時の含有量としては、通常0.01重量部以上、好ましくは0.1重量部以上、より好ましくは0.2重量部以上、特に好ましくは0.3重量部以上であり、通常4.5重量部未満であり、好ましくは4.4重量部以下であり、より好ましくは4重量部以下であり、特に好ましくは3重量部以下である。
(B)が0.01重量部より少ない場合では、泡性能に十分な効果が発揮できず、4.5重量部以上では、製造時の着色や高温保存での安定性が悪くなる場合がある。
【0029】
成分(C)の仕込み時の含有量としては、通常10重量部を超え、好ましくは11重量部以上、より好ましくは12重量部以上、特に好ましくは15重量部以上であり、通常25重量部未満であり、好ましくは24重量部以下であり、より好ましくは22重量部以下であり、特に好ましくは20重量部以下である。
(C)が10重量部以下では、低温や高温保存での安定性が悪くなり、25重量部以上では、高温保存での安定性が悪くなり、泡立ちが悪くなる場合がある。
【0030】
成分(D)の仕込み時の含有量としては、通常2重量部を超え、好ましくは2.5重量部以上、より好ましくは3重量部以上であり、通常40重量部未満であり、好ましくは30重量部以下であり、より好ましくは25重量部以下であり、特に好ましくは20重量部以下である。
(D)が2重量部以下では、製造時のゲル化により製造が不可能であり、40重量部以上では、乾燥に時間がかかる場合がある。
【0031】
仕込み時のpHとしては、通常pH6を超え7未満であるが、6.1以上が好ましく6.2以上がより好ましく、6.3以上が特に好ましく、また6.9以下が好ましく、6.8以下がより好ましく、6.7以下が特に好ましい。
例えばpHが6以下では、低温での安定性が悪くなり、7以上では、高温での安定性が悪くなることから上記範囲のpHで仕込む場合には安定性のよい透明固形洗浄剤を製造することができる。
【0032】
本発明の透明固形洗浄剤は、自体公知の方法で製造することができる。例えば、上記した各成分の混合物およびその他の添加物を混合し、この混合物を通常、70〜90℃、好ましくは70〜80℃に、20分〜1時間、好ましくは20分〜30分間加熱して各成分を均一に溶解する。溶融状態の組成物を、製品形状を有する成形用の型に注入し、15分〜30分間かけて冷却・固化して、乾燥熟成を経て、透明固形洗浄剤を得ることができる。
【0033】
本発明の透明固形洗浄剤において、本発明の効果を阻害しない範囲で通常使用される各種添加剤を添加することができる。
例えば、セチルアルコール、ステアリルアルコール、ベヘニルアルコール、イソステアリルアルコール、オクチルドデカノール、オレイルアルコール、ミリスチルアルコール等の高級アルコール;ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、硬化牛脂脂肪酸、ヤシ油脂肪酸、パーム油脂肪酸等の高級脂肪酸およびその塩;トリメチルグリシン等の保湿剤;アニオン性界面活性剤、カチオン性界面活性剤、両性界面活性剤、非イオン性界面活性剤等の界面活性剤;植物油、動物系油脂、天然系油脂誘導体、鉱物系油脂、低級および高級脂肪酸エステル、N−アシルグルタミン酸エステル等の合成系油脂;シリコーン化合物;高分子物質;動植物抽出物;アミノ酸;核酸;ビタミン;酵素;抗炎症剤;殺菌剤;防腐剤;抗酸化剤;紫外線吸収剤;キレート剤;制汗剤;酸化染料;pH調整剤;パール化剤;等の化粧品原料基準、化粧品種別配合成分規格、医薬部外品原料規格、日本薬局方、日本薬局外医薬品成分規格、食品添加物公定書等の各種公定書記載の原料等が挙げられる。
【実施例】
【0034】
以下、実施例により本発明をさらに詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
【0035】
[固形洗浄剤組成物の調製]
表1〜8に示す量(重量部)の各成分を混合し、この混合物を70〜80℃に加熱して各成分を均一に溶解する。次いで、これを型に注入する。その後、これを冷却固化、乾燥熟成を経て、透明固形洗浄剤を得た。乾燥熟成は、多価アルコール、低級アルコールの配合量により異なるが、20日〜2か月程度行った。pHの調整は水酸化ナトリウムを適宜添加して行った。
【0036】
上記に従って得られた各固形洗浄剤について、諸特性を以下の基準で評価した。結果を表1〜8に示した。
【0037】
[製造性]
製造性を以下の基準で評価した:
×;製造時に増粘してしまうもの
△;乾燥時間が1か月以上必要なもの
〇;製造可能なもの。
なお増粘してしまったものは、評価の対象外とした(表中「−」で示す)。
【0038】
[安定性]
製造時の加熱安定性を70〜80℃の条件下で以下の基準で評価した:
〇;加熱時に着色しないもの
×;加熱後、着色するもの。
【0039】
[低温保存安定性]
低温保存安定性を0℃の条件下で以下の基準で評価した:
◎;3か月以上透明でかつ硬く極めて良好であるもの
〇;1か月〜3か月透明でかつ硬く良好であるもの
△;3か月経過時に少し析出があるもの
×;3か月で析出するもの。
【0040】
[高温保存安定性]
高温保存安定性を45℃の条件下で以下の基準で評価した:
◎;3か月以上透明でかつ硬く極めて良好であるもの
〇;1か月〜3か月透明でかつ硬く良好であるもの
△;3か月経過時に少し軟化しているもの
×;3か月で軟化するもの。
【0041】
[使用感]
各固形洗浄剤について、40℃の水道水で手洗いを行い、泡立ち、泡量、泡保持、すすぎやすさについて以下の基準で評価した。評価は下記基準に従って5名のパネラーによって行い、5名の平均値により、4.0以下〜3.5以上を◎;3.5未満〜2.5以上を○;2.5未満〜1.5以上を△;1.5未満を×とした。
【0042】
<泡立ち、泡量、泡保持>
4;非常に良好
3;良好
2;やや低い
1;低い
【0043】
<すすぎやすさ>
4;非常に早い
3;早い
2;やや遅い
1;遅い
【0044】
【表1】
【0045】
【表2】
【0046】
【表3】
【0047】
【表4】
【0048】
【表5】
【0049】
【表6】
【0050】
【表7】
【0051】
【表8】
【0052】
実施例1〜19の固形洗浄剤は、製造時の加熱による着色が抑制され透明性に優れ、低温や高温時で保存した場合でも安定で、さらに洗浄剤に要求される良好な使用感を有することが確認された。
【0053】
本出願は日本で出願された特願2014−210999を基礎としており、その内容は本明細書に全て包含されるものである。