特許第6607237号(P6607237)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6607237ゴム被覆撚線コードの製造方法および装置
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6607237
(24)【登録日】2019年11月1日
(45)【発行日】2019年11月20日
(54)【発明の名称】ゴム被覆撚線コードの製造方法および装置
(51)【国際特許分類】
   D07B 1/06 20060101AFI20191111BHJP
   B29C 48/18 20190101ALI20191111BHJP
   B29C 48/34 20190101ALI20191111BHJP
   D07B 1/16 20060101ALI20191111BHJP
   H01B 7/02 20060101ALN20191111BHJP
   H01B 13/14 20060101ALN20191111BHJP
【FI】
   D07B1/06 A
   B29C48/18
   B29C48/34
   D07B1/16
   !H01B7/02 Z
   !H01B13/14 Z
【請求項の数】8
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2017-158637(P2017-158637)
(22)【出願日】2017年8月21日
(65)【公開番号】特開2019-35174(P2019-35174A)
(43)【公開日】2019年3月7日
【審査請求日】2018年11月9日
(73)【特許権者】
【識別番号】000006714
【氏名又は名称】横浜ゴム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001368
【氏名又は名称】清流国際特許業務法人
(74)【代理人】
【識別番号】100129252
【弁理士】
【氏名又は名称】昼間 孝良
(74)【代理人】
【識別番号】100155033
【弁理士】
【氏名又は名称】境澤 正夫
(72)【発明者】
【氏名】西尾 悟
【審査官】 相田 元
(56)【参考文献】
【文献】 特開2005−139585(JP,A)
【文献】 特開2003−340926(JP,A)
【文献】 特開平06−210761(JP,A)
【文献】 実開平02−123024(JP,U)
【文献】 特開2014−176991(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
D07B 1/00− 9/00
B29C 48/18
B29C 48/34
H01B 7/02
H01B 13/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
繰り出し部から繰り出した撚線コードを巻き取り部に巻きつつ、移動している前記撚線コードの外周面に未加硫ゴムを被覆することにより、連続的にゴム被覆撚線コードを製造するゴム被覆撚線コードの製造方法において、
前記撚線コードに前記未加硫ゴムを被覆する位置の前記撚線コードの移動方向上流側の近傍位置で前記撚線コードに追加の張力を付与して、この追加の張力が付与された状態の前記撚線コードの前記外周面に前記未加硫ゴムを被覆することを特徴とするゴム被覆撚線コードの製造方法。
【請求項2】
前記近傍位置から前記未加硫ゴムを被覆する位置までの前記撚線コードの延在長さを1m以内にした請求項1に記載のゴム被覆撚線コードの製造方法。
【請求項3】
前記近傍位置で前記撚線コードを、回転ローラの外周面にこの外周面に沿って当接させて前記回転ローラを移動させることにより、前記撚線コードに前記追加の張力を付与する請求項1または2に記載のゴム被覆撚線コードの製造方法。
【請求項4】
前記近傍位置で前記撚線コードを、外周面に周溝を有する溝付き回転ローラの前記周溝に沿って係合させてガイドし、前記溝付き回転ローラの向きを変えて前記周溝による前記撚線コードに対するガイド方向を変化させることにより、前記撚線コードに前記追加の張力を付与する請求項1または2に記載のゴム被覆撚線コードの製造方法。
【請求項5】
撚線コードの繰り出し部および巻き取り部と、ゴム押出機と、前記繰り出し部と前記巻き取り部との間に設置されて前記ゴム押出機により押し出された前記未加硫ゴムを前記撚線コードに被覆する被覆部とを備えて、前記繰り出し部から前記巻き取り部に移動している前記撚線コードの外周面に前記未加硫ゴムが被覆されることにより、連続的にゴム被覆撚線コードが製造される構成にしたゴム被覆撚線コードの製造装置において、
前記被覆部の前記撚線コードの移動方向上流側の近傍位置に配置された張力付与部を有し、移動している前記撚線コードに前記張力付与部により追加の張力が付与されて、この追加の張力が付与された状態の前記撚線コードの前記外周面に前記未加硫ゴムが被覆される構成にしたことを特徴とするゴム被覆撚線コードの製造装置。
【請求項6】
前記張力付与部から前記被覆部までの前記撚線コードの延在長さが1m以内に設定されている請求項5に記載のゴム被覆撚線コードの製造方装置。
【請求項7】
前記張力付与部が、回転ローラと、この回転ローラを移動させる移動機構とを有して、前記撚線コードが前記回転ローラの外周面にこの外周面に沿って当接する構成にした請求項5または6に記載のゴム被覆撚線コードの製造装置。
【請求項8】
前記張力付与部が、外周面に周溝を有する溝付き回転ローラと、この溝付き回転ローラの向きを変える方向変更機構とを有して、前記撚線コードが前記周溝に沿って係合してガイドされて、前記回転ローラの向きを変えることで前記周溝による前記撚線コードに対するガイド方向が変化する構成にした請求項5または6に記載のゴム被覆撚線コードの製造装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ゴム被覆撚線コードの製造方法および装置に関し、さらに詳しくは、撚線コードの撚り戻りを防止しながら外周面に未加硫ゴムを安定して被覆することができるゴム被覆撚線コードの製造方法および装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
タイヤなどのゴム製品の製造工程では、外周面が未加硫ゴムにより被覆された撚線コードが使用されている。撚線コードに未加硫ゴムを被覆する方法は幾つか知られているが、未加硫ゴムを被覆する際の圧力などの影響によって、撚線コードの撚りが戻ることがある。
【0003】
撚り戻しが生じた撚線コードに未加硫ゴムを被覆すると、図10(A)に例示するように、被覆する未加硫ゴム13から撚線コード12の一部(素線12a)が露出する不具合が生じる。或いは、図10(B)に例示するように、撚線コード12が偏心、変形した状態で未加硫ゴム13により被覆される不具合が生じる。このような不具合が生じたゴム被覆撚線コード11aを用いてゴム製品を製造すれば、品質に影響が生じる可能性がある。
【0004】
未加硫ゴムではないが、樹脂が外周面に被覆される撚線の撚り戻しを防止する方法が提案されている(特許文献1参照)。特許文献1では、撚線に被覆させた樹脂を僅かに硬化させた後、この被覆撚線を把持しながら撚りをかける方向に回転付勢されるクランプを通過させて被覆撚線を引き取りながら樹脂を硬化させる。
【0005】
この提案の方法では、樹脂を被覆した後に撚線にあらためて撚りをかけているが、撚り戻しが生じている撚線に未加硫ゴムを被覆した後であらためて撚りをかけても、図7に例示したような不具合を十分に防止することはできない。さらに、未加硫ゴムは溶融樹脂のように短時間で硬化させることができず、また、過度に硬化させると粘着力(接着力)が低下するため、ゴム被覆撚線コードを後工程で使用できなくなる。それ故、この提案の方法を、撚線コードの外周面に未加硫ゴムを被覆する場合に適用することはできない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特公平3−11489号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の目的は、撚線コードの撚り戻りを防止しながら外周面に未加硫ゴムを安定して被覆することができるゴム被覆撚線コードの製造方法および装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するため本発明のゴム被覆撚線コードの製造方法は、繰り出し部から繰り出した撚線コードを巻き取り部に巻きつつ、移動している前記撚線コードの外周面に未加硫ゴムを被覆することにより、連続的にゴム被覆撚線コードを製造するゴム被覆撚線コードの製造方法において、前記撚線コードに前記未加硫ゴムを被覆する位置の前記撚線コードの移動方向上流側の近傍位置で前記撚線コードに追加の張力を付与して、この追加の張力が付与された状態の前記撚線コードの前記外周面に前記未加硫ゴムを被覆することを特徴とする。
【0009】
本発明のゴム被覆撚線コードの製造装置は、撚線コードの繰り出し部および巻き取り部と、ゴム押出機と、前記繰り出し部と前記巻き取り部との間に設置されて前記ゴム押出機により押し出された前記未加硫ゴムを前記撚線コードに被覆する被覆部とを備えて、前記繰り出し部から前記巻き取り部に移動している前記撚線コードの外周面に前記未加硫ゴムが被覆されることにより、連続的にゴム被覆撚線コードが製造される構成にしたゴム被覆撚線コードの製造装置において、前記被覆部の前記撚線コードの移動方向上流側の近傍位置に配置された張力付与部を有し、移動している前記撚線コードに前記張力付与部により追加の張力が付与されて、この追加の張力が付与された状態の前記撚線コードの前記外周面に前記未加硫ゴムが被覆される構成にしたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、撚線コードの外周面に未加硫ゴムを被覆する直前に、撚線コードに追加の張力を付与することで、撚線コードを構成する素線どうしが密に結束して、撚線コードが撚り締まりされる。そのため、撚線コードに被覆する未加硫ゴムによる押出圧力が作用しても、撚線コードの撚り戻りが発生し難くなり、外周面に未加硫ゴムを安定的に被覆することが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】本発明のゴム被覆撚線コードの製造装置を正面視で例示する説明図である。
図2図1の製造装置を平面視で例示する説明図である。
図3】正常な撚線コードを横断面視で例示する説明図である。
図4図1の加熱部と張力付与部との間における撚線コードを横断面視で例示する説明である。
図5図1の張力付与部により撚線コードに追加の張力を付与している状態を正面視で例示する説明図である。
図6】製造されたゴム被覆撚線コードを横断面視で例示する説明図である。
図7図1の張力付与部の変形例を正面視で示す説明図である。
図8図7の張力付与部を平面視で例示する説明図である。
図9図8の張力付与部により撚線コードに追加の張力を付与している状態を例示する説明図である。
図10】ゴム被覆撚線コードの不良品を横断面視で例示する説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明のゴム被覆撚線コードの製造方法および装置を、図に示す実施形態に基づいて具体的に説明する。
【0013】
図1図2に例示する本発明のゴム被覆撚線コードの製造装置1(以下、製造装置1という)は、撚線コード12の外周面に未加硫ゴム13が被覆されたゴム被覆撚線コード11を連続的に製造する。撚線コード12は図3に例示するように、金属製の複数の素線12aを撚り合わせて形成されている。撚りが締まった正常な撚線コード12は、図3に例示するように、それぞれの素線12aが密に結束した状態になっている。
【0014】
製造装置1は、撚線コード12の繰り出し部5および巻き取り部10と、ゴム押出機2と、繰り出し部5と巻き取り部10との間に設置された被覆部4と、被覆部4の近傍位置に配置された張力付与部8とを有している。撚線コード12は繰り出し部5から巻き取り部10まで連続している。この実施形態では、製造装置1はさらに、撚線コード12をある程度の長さ貯留させる貯線部6と撚線コード12を加熱する加熱部7とを有している。
【0015】
ストックされた撚線コード12を繰り出す繰り出し部5は、例えば、撚線コード12が巻回されるリールで構成される。繰り出し部5は、繰り出される撚線コード12に作用する張力を調整可能なブレーキを有している。
【0016】
外周面に未加硫ゴム13が被覆された撚線コード12、即ち、ゴム被覆撚線コード11を巻き取る巻き取り部10は、例えば、撚線コード12が巻回されるリールで構成される。巻き取り部10は、駆動モータ等により回転駆動されて、繰り出し部5から繰り出された撚線コード12を移動させて、ゴム被覆撚線コード11を巻き取る。
【0017】
ゴム押出機2は、未加硫ゴム13を先端部の押出ヘッド3から押し出す。未加硫ゴム13の温度は例えば70℃〜90℃程度である。押出ヘッド3には箱状の被覆部4が連結されている。押し出された未加硫ゴム13は被覆部4に充満して一時的に被覆部4に貯留され、その後、被覆部4の外部に排出される。被覆部4の対向する側面には、撚線コード12が挿通する入口4aと出口4bが形成されている。この実施形態では、未加硫ゴム13が押し出される方向と撚線コード12の移動方向は直交しているが、両者の方向がなす角度は90°に限定されず、適宜の角度に設定することができる。
【0018】
撚線コード12に追加の張力を付与する張力付与部8は、被覆部4の撚線コード12の移動方向上流側の近傍位置に配置されている。例えば、張力付与部8から被覆部4までの撚線コード12の延在長さが1m以内になる位置に、張力付与部8は配置される。張力付与部8の詳細は後述する。
【0019】
貯線部6と加熱部7は、繰り出し部5と張力付与部8との間に配置されている。貯線部6は加熱部7よりも撚線コード12の移動方向上流側に配置されている。貯線部6は、一対の回転ローラを有していて、それぞれの回転ローラ間に撚線コード12がローラ幅方向にずらして掛け回されている。
【0020】
加熱部7は、所定温度に加熱できるヒータを有している。加熱部7に撚線コード12を通過させることで加熱して、撚線コード12の温度を、ゴム押出機2により押し出される未加硫ゴム13の温度に近づける。この加熱によって、撚線コード12に未加硫ゴム13を接着させ易くなる。加熱部7は、張力付与部8と被覆部4との間に配置することもできる。
【0021】
この実施形態の張力付与部8は、外周面に周溝を有する3個の溝付き回転ローラ8A、8B、8Cと、1個の溝付き回転ローラ8Bを移動させる移動機構9aとを有している。移動機構9aとしては、流体シリンダなどを用いることができる。移動機構9aによる溝付き回転ローラ8Bの移動量は所望の量に制御される。
【0022】
3個の溝付き回転ローラ8A、8B、8Cは、それぞれの回転軸8dを撚線コード12の移動方向を横断して直交する方向に向けて、撚線コード12の移動方向に間隔をあけて配置されている。真ん中に位置する溝付き回転ローラ8Bが他の2個の溝付き回転ローラ8A、8Cよりも上方に位置している。2個の溝付き回転ローラ8A、8Cは移動せずにその位置に固定されたままであるが、1個の溝付きローラ8Bは移動機構9aにより上下移動される。撚線コード12は2個の溝付き回転ローラ8A、8Cの上部および1個の溝付き回転ローラ8Bの下部で、それぞれの溝付き回転ローラ8A、8B、8Cの周溝に沿って係合してガイドされている。撚線コード12は、それぞれの溝付き回転ローラ8A、8B、8Cの外周面に当接する。
【0023】
次に、本発明のゴム被覆撚線コードの製造方法の手順を説明する。
【0024】
図1、2に例示するように、巻き取り部10の駆動によって、撚線コード12を繰り出し部5から巻き取り部10まで引き出して移動させる。この移動過程で、撚線コード12は、貯線部6、加熱部7、張力付与部8、被覆部4を順次、通過する。移動している撚線コード12には、繰り出し部5のブレーキによって所定の張力が作用する。
【0025】
加熱部7と張力付与部8との間では、図4に例示するように撚線コード12は、素線12aの結束が緩んだ状態になっていることがある。この状態の撚線コード12に未加硫ゴム13を被覆すると、未加硫ゴム13の押出圧力によって、それぞれの素線12aの結束が一段と緩んで撚線コード12に撚り戻りが生じる。その結果、図10に例示するような不良品のゴム被覆撚線コード11aが製造される。
【0026】
そこで本発明では、移動している撚線コード12に対して、張力付与部8により追加の張力を付与し、追加の張力が付与された状態の撚線コード12の外周面に未加硫ゴム13を被覆する。この実施形態では図5に例示するように、溝付き回転ローラ8Bを、撚線コード12が当接している外周面側の方向(下方)に移動させることにより、撚線コード12に追加の張力を付与する。
【0027】
追加の張力を付与することで、図3に例示するようにそれぞれの素線12aを密に結束させて撚線コード12を撚り締め(増し締め)することができる。本発明では、この状態の撚線コード12の外周面に未加硫ゴム13を被覆するので、撚線コード12に作用する未加硫ゴム13の押出圧力がある程度の大きさであっても、撚線コード12の撚り戻りが発生し難くなる。したがって、撚線コード12の外周面に未加硫ゴム13を安定的に被覆することが可能になる。その結果、撚線コード12の外周面の全範囲が未加硫ゴム13により被覆されて、撚線コード12の偏心や変形が防止された図6に例示する良品のゴム被覆撚線コード11を連続的に製造することができる。
【0028】
張力付与部8から被覆部4までの撚線コード12の延在長さを1m以内に設定すると、張力付与部8により撚線コード12に付与した追加の張力を、被覆部4まで維持し易くなる。より好ましくは、張力付与部8から被覆部4までの撚線コード12の延在長さを0.5m以内に設定する。
【0029】
追加の張力は、撚線コード12に撚り戻しを生じさせない大きさの範囲で適宜、設定する。例えば、追加の張力を付与する前に撚線コード12に作用している張力の20%以上120%以下、或いは、30%以上100%以下の大きさの張力を、追加の張力として張力付与部8により撚線コード12に付与する。
【0030】
溝付き回転ローラ8A、8B、8Cの数は3個に限らず、2個、4個などにすることもできる。撚線コード12に張力を付与する際に移動させる溝付き回転ローラ8A、8B、8Cの数は、1個に限らず複数にすることもできる。
【0031】
この実施形態では、それぞれの溝付き回転ローラ8A、8B、8Cが、それぞれの回転軸8dを撚線コード12を横断する方向に向けて配置されているが、回転軸8dの方向はこれに限定されない。例えば、それぞれの回転軸8dを、撚線コード12を縦断する方向に向けて、溝付き回転ローラ8A、8B、8Cを配置することもできる。
【0032】
また、溝付き回転ローラ8A、8B、8Bのすべてまたは少なくとも1個を、外周面に周溝を有していない単純な回転ローラに置き換えることもできる。或いは、溝付き回転ローラ8A、8B、8Cの少なくとも1個を、回転しない支持部材に置き換えることもできる。
【0033】
張力付与部8は、図7図8に例示する構成にすることもできる。この張力付与部8は、3個の溝付き回転ローラ8A、8B、8Cと、2個の溝付き回転ローラ8B、8Cの向きを変える方向変更機構9bとを有している。2個の溝付き回転ローラ8B、8Cは、回転軸8dがピン8eによって回動可能にフレームに連結されている。方向変更機構9bとしては、流体シリンダなどを用いることができる。方向変更機構9bを構成する流体シリンダのロッドを出し入れすることで、溝付き回転ローラ8B、8Cはピン8eを中心にして回動する。これに伴い、溝付き回転ローラ8B、8Cの向きが変更される。方向変更機構9bにより変更される溝付き回転ローラ8B、8Cの向きは、所望の方向に制御される。
【0034】
3個の溝付き回転ローラ8A、8B、8Cは、それぞれの回転軸8dを撚線コード12の移動方向を横断して直交する方向に向けて、撚線コード12の移動方向に間隔をあけて配置されている。それぞれの溝付き回転ローラ8A、8B、8Cは同じ高さ位置に配置されているが、高さ位置を異ならせることもできる。撚線コード12は2個の溝付き回転ローラ8A、8Cの上部および1個の溝付き回転ローラ8Bの下部で、それぞれの溝付き回転ローラ8A、8B、8Cの周溝に沿って係合してガイドされている。それぞれの溝付き回転ローラ8A、8B、8Cの間を縫うように掛け回された撚線コード12は、それぞれの溝付き回転ローラ8A、8B、8Cの外周面に当接する。
【0035】
この方向変更機構9bを用いて、移動している撚線コード12に対して追加の張力を付与するには、図9に例示するように、溝付き回転ローラ8B、8Cの向きを変えてそれぞれの周溝による撚線コード12に対するガイド方向を変化させる。即ち、それぞれの周溝による撚線コード12に対するガイド方向を変化させるように、溝付き回転ローラ8B、8Cの向きを変更する。この実施形態では、それぞれの溝付き回転ローラ8B、8Cの向きを互いに反対方向に変化させている。これにより、それぞれの溝付き回転ローラ8B、8Cの撚線コード12に対するガイド方向が変化して、撚線コード12には追加の張力が付与される。
【0036】
方向変更機構9bを用いると、それぞれの溝付き回転ローラ8A、8B、8Cの配置位置をそのままにして、溝付き回転ローラ8A、8Cをその配置位置で向きを変えるだけで撚線コード12に追加の張力を付与することができる。そのため、張力付与部8の作動に要するスペースを小さくするには有利になる。
【0037】
溝付き回転ローラ8A、8B、8Cの数は3個に限らず、2個、4個などにすることもできる。撚線コード12に張力を付与する際に、向きを変更させる溝付き回転ローラ8A、8B、8Cの数は、2個に限らず1個や3個以上にすることもできる。それぞれの溝付き回転ローラ8A、8B、8Cは、それぞれの回転軸8dを撚線コード12を横断する方向に向けて配置するだけでなく、撚線コード12を縦断する方向に向けて配置することもできる。
【符号の説明】
【0038】
1 ゴム被覆撚線コードの製造装置
2 ゴム押出機
3 押出ヘッド
4 被覆部
4a 入口
4b 出口
5 繰り出し部
6 貯線部
7 加熱部
8 張力付与部
8A、8B、8C 溝付き回転ローラ
8d 回転軸
8e ピン
9a 移動機構
9b 方向変更機構
10 巻き取り部
11 ゴム被覆撚線コード(良品)
11a ゴム被覆撚線コード(不良品)
12 撚線コード
12a 素線
13 未加硫ゴム
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10