特許第6607250号(P6607250)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6607250流体分離用炭素膜および流体分離用炭素膜モジュール
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6607250
(24)【登録日】2019年11月1日
(45)【発行日】2019年11月20日
(54)【発明の名称】流体分離用炭素膜および流体分離用炭素膜モジュール
(51)【国際特許分類】
   B01D 71/02 20060101AFI20191111BHJP
   B01D 53/22 20060101ALI20191111BHJP
   B01D 69/00 20060101ALI20191111BHJP
【FI】
   B01D71/02 500
   B01D53/22
   B01D69/00
【請求項の数】10
【全頁数】20
(21)【出願番号】特願2017-505879(P2017-505879)
(86)(22)【出願日】2017年1月17日
(86)【国際出願番号】JP2017001416
(87)【国際公開番号】WO2017126504
(87)【国際公開日】20170727
【審査請求日】2019年8月5日
(31)【優先権主張番号】特願2016-10451(P2016-10451)
(32)【優先日】2016年1月22日
(33)【優先権主張国】JP
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000003159
【氏名又は名称】東レ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002000
【氏名又は名称】特許業務法人栄光特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】北畑 雅弘
(72)【発明者】
【氏名】竹内 康作
(72)【発明者】
【氏名】三原 崇晃
(72)【発明者】
【氏名】堀口 智之
【審査官】 河野 隆一朗
(56)【参考文献】
【文献】 特開2012−040464(JP,A)
【文献】 特開平04−082920(JP,A)
【文献】 特開平05−220360(JP,A)
【文献】 特開平07−171360(JP,A)
【文献】 特開昭59−062304(JP,A)
【文献】 実開昭57−047202(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B01D 53/22
B01D 61/00 − 71/82
C02F 1/44
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
繊維状の流体分離用炭素膜であって、共連続多孔構造を有するコア層と、該コア層の周囲に形成された実質的に共連続多孔構造を有しないスキン層からなり、繊維表面に高低差1μm以上の凸部が形成されてなり、前記凸部の凸部断面コア層比が50%以上98%以下である、流体分離用炭素膜。
【請求項2】
混合ガスを分離する、請求項1に記載の流体分離用炭素膜。
【請求項3】
前記凸部の高さが、繊維断面の外縁に内接する内接円の半径の1/2以下である、請求項1または2に記載の流体分離用炭素膜。
【請求項4】
前記凸部が繊維軸方向に100μm以上連続する畝状突起である、請求項1〜のいずれか1項に記載の流体分離用炭素膜。
【請求項5】
前記畝状突起が前記流体分離用炭素膜の全長に渡って連続する、請求項に記載の流体分離用炭素膜。
【請求項6】
前記畝状突起が複数本形成されてなる、請求項またはに記載の流体分離用炭素膜。
【請求項7】
繊維断面において、前記複数本の畝状突起が放射状に形成されてなる、請求項に記載の流体分離用炭素膜。
【請求項8】
前記畝状突起の平均形成間隔が、該畝状突起の平均幅の1/3以上4倍以下である、請求項に記載の流体分離用炭素膜。
【請求項9】
前記畝状突起の平均幅が1μm以上100μm以下である、請求項のいずれか1項に記載の流体分離用炭素膜。
【請求項10】
請求項1〜のいずれか1項に記載の流体分離用炭素膜を含む流体分離用炭素膜モジュール。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、流体分離用炭素膜および流体分離用炭素膜モジュールに関するものである。
【背景技術】
【0002】
混合流体から特定の流体成分を選択的に分離・精製する流体分離法として、膜分離法が知られている。膜分離法は他の流体分離法と比較して省エネルギーな手法であるため、注目されている。
【0003】
流体分離の中で、ガス分離に用いられる分離膜の素材としては、ポリイミド膜などの有機膜が提案されているが、このような有機膜は耐熱性や耐薬品性に劣る課題があった(例えば、特許文献1)。
【0004】
一方、耐熱性に優れるゼオライトを分離膜に用いることが報告されているが、ゼオライト膜では耐酸性に乏しく、また、それ単独では所望の形状に成形加工することが困難であるため、多孔質の支持体上に膜を形成する必要があった。さらに、その製造工程は煩雑であり、高価であるという課題もあった(例えば、特許文献2)。
【0005】
上記のような課題を解決すべく、流体分離用炭素膜を用いた膜分離が注目されている。流体分離用炭素膜は優れたガス分離性能を示し、なおかつ耐熱性や耐薬品性が要求される環境でも使用できることから、その実用化が期待されている。
【0006】
流体分離用炭素膜としては、例えば、中空状のセラミックス多孔質体の表面にフェノール樹脂やポリイミドなどの樹脂を塗布し、非酸化性雰囲気下で炭化した炭素膜が報告されている(例えば、特許文献3、4)。しかしながら、このような炭素膜は製造工程が煩雑であり高価であった。
【0007】
また、自立型の流体分離用炭素膜として、中空糸炭素膜についても報告されている(例えば、特許文献5)。中空糸炭素膜は製造工程が比較的単純で安価に製造でき、また、単位容積あたりに占める膜面積を大きくすることができるため、平膜に比べてコンパクトな分離膜モジュールの製作が可能という利点がある。
【0008】
また、様々な素材を用いた膜分離における共通の課題として、膜同士の密着により流体の流れが妨げられ、分離性能が低下するという問題があった。これを解決するため、分離膜表面に凹凸を付与し、異形断面化することにより膜同士の密着を改善したとの報告がある(例えば、特許文献6、7)。しかしながら、流体分離用炭素膜は、その脆性のためモジュール化時に凸部が欠陥となることが多いため、異形断面化は難しいことが知られている。
【0009】
ところで、発電所から排出される窒素中の不純物である二酸化炭素の分離技術や、天然ガスの精製プラントにおけるメタンガスの純度向上およびパイプラインの腐食防止のための二酸化炭素の分離技術において、膜分離法の適用が検討されている。例えば、特許文献8では、ゼオライト表面に撥水被膜層を設けた分離膜により、水蒸気存在下でも高効率に二酸化炭素を分離できることが報告されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】日本国特開昭61−133118号公報
【特許文献2】日本国特開平7−089714号公報
【特許文献3】日本国特開平10−52629号公報
【特許文献4】日本国特開2003−286018号公報
【特許文献5】日本国特開平5−220360号公報
【特許文献6】日本国特開昭62−225206号公報
【特許文献7】日本国特開平7−171360号公報
【特許文献8】日本国特開2012−236155号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
流体分離用炭素膜においても有機膜やゼオライト膜と同様に、膜同士の密着により分離性能が低下するという課題があった。また、上記の発電所や天然ガスプラントにおけるガスの分離・精製工程においては、分離前の混合ガス中に水蒸気を含み、その水蒸気が凝結して液体の水となり膜の目詰まりを引き起こすことがある。そのため、二酸化炭素のガス透過速度が大幅に低下し、分離係数が大幅に低下するという課題もあった。
【0012】
本発明は、上記従来の実情を鑑みてなされたものであって、膜同士の密着を抑制し、かつ水蒸気を含む混合ガスの分離において目詰まりが発生しにくい流体分離用炭素膜を提供することを解決すべき課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明者らは、鋭意検討を重ねた結果、繊維状の流体分離用炭素膜であって、繊維表面に高低差1μm以上の凸部が形成されてなる流体分離用炭素膜によって、上記課題を解決できることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0014】
すなわち、本発明は下記<1>〜<12>に関するものである。
<1>繊維状の流体分離用炭素膜であって、繊維表面に高低差1μm以上の凸部が形成されてなる流体分離用炭素膜。
<2>共連続多孔構造を有するコア層と、該コア層の周囲に形成された実質的に共連続多孔構造を有しないスキン層からなる繊維状の流体分離用炭素膜である、<1>に記載の流体分離用炭素膜。
<3>前記凸部の凸部断面コア層比が50%以上98%以下である、<1>または<2>に記載の流体分離用炭素膜。
<4>混合ガスを分離する、<1>〜<3>のいずれか1つに記載の流体分離用炭素膜。
<5>前記凸部の高さが、繊維断面の外縁に内接する内接円の半径の1/2以下である、<1>〜<4>のいずれか1つに記載の流体分離用炭素膜。
<6>前記凸部が繊維軸方向に100μm以上連続する畝状突起である、<1>〜<5>のいずれか1つに記載の流体分離用炭素膜。
<7>前記畝状突起が前記流体分離用炭素膜の全長に渡って連続する、<6>に記載の流体分離用炭素膜。
<8>前記畝状突起が複数本形成されてなる、<6>または<7>に記載の流体分離用炭素膜。
<9>繊維断面において、前記複数本の畝状突起が放射状に形成されてなる、<8>に記載の流体分離用炭素膜。
<10>前記畝状突起の平均形成間隔が、該畝状突起の平均幅の1/3以上4倍以下である、<9>に記載の流体分離用炭素膜。
<11>前記畝状突起の平均幅が1μm以上100μm以下である、<6>〜<10>のいずれか1つに記載の流体分離用炭素膜。
<12><1>〜<11>のいずれか1つに記載の流体分離用炭素膜を含む流体分離用炭素膜モジュール。
【発明の効果】
【0015】
本発明により、膜同士の密着を抑制し、かつ水蒸気を含む混合ガスの分離においても高い分離係数が得られる流体分離用炭素膜、特に二酸化炭素のガス分離に有用な流体分離用炭素膜を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1図1は、実施例1で作製した流体分離用炭素膜のコア層の走査型電子顕微鏡写真である。
図2図2は、本発明の流体分離用炭素膜の一態様における繊維軸方向の断面模式図である。
図3図3は、本発明の流体分離用炭素膜の一態様における繊維軸方向の凸部の断面模式図である。
図4図4は、実施例1、2で使用した多葉型1穴口金の模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
<流体分離用炭素膜>
本発明の流体分離用炭素膜(以下、単に「炭素膜」ということがある。)は、繊維状の形態を持ち、繊維表面に高低差1μm以上の凸部が形成されてなる。
繊維状とは、平均直径に対して平均長さが100倍以上の形態を指す。繊維状の炭素膜は、複数本の炭素膜を内蔵したガス分離膜モジュールとすることで、フィルム状と比較して単位体積当りの膜面積を大きくすることができる利点がある。
【0018】
本発明の流体分離用炭素膜としては、特に、共連続多孔構造を有するコア層と、該コア層の周囲に形成された実質的に共連続多孔構造を有しないスキン層からなる繊維状の流体分離用炭素膜が好ましい。
【0019】
本発明の流体分離用炭素膜で分離される流体は、2種類以上の流体の混合物であり、2種類以上の混合ガスであることが好ましい。この混合ガスは純粋なガスの混合物である必要はなく、少量の不純物を含有していても構わない。不純物は特に限定されないが、水蒸気などの気体だけでなく、水や砂、油などの液体や固体も含まれる。ガスの成分は、炭素膜の細孔の分子ふるい効果により選択的透過性が得られる気体分子であれば特に限定されないが、炭素膜分離によく用いられる気体分子として、二酸化炭素、メタン、エタン、アンモニア、窒素、塩化水素、水素、酸素などが挙げられる。
【0020】
コア層は、後述するスキン層の内側に形成される共連続多孔構造を有する層であり、本発明の流体分離用炭素膜の中心を形成する層である。「共連続多孔構造」とは、枝部(炭素部)と細孔部(空隙部)がそれぞれ連続しつつ三次元的に規則的に絡み合った構造であり、具体的には、図1に例示される通り、液体窒素中で充分に冷却した試料をピンセット等により割断した断面を走査型電子顕微鏡で表面観察した際に、奥行き方向に枝部と空隙部がそれぞれ連続した構造が観察されることをいう。
【0021】
このような構造を有することで、枝部がそれぞれ互いに構造体を支えあう効果が生じて応力を膜全体に分散させるため、圧縮や曲げなどの外力に対して大きな耐性を有し、耐圧性をより向上させることができる。
【0022】
一般的に、膜分離で用いられる樹脂製の中空糸膜の場合、その内部構造の種類として、細孔が連通していない独立気泡型と、細孔が連通している連続多孔構造型に分類されるが、該分類を本発明における流体分離用炭素膜のコア層に適用した場合、連続多孔構造型に分類される。さらに、後述するように、コア層はX線散乱が観測されるような均一性の高い共連続多孔構造で構成されるため耐圧性が高くなり、供給するガスの圧力が高い場合でも破損せずに使用することが可能となる。
【0023】
コア層の共連続多孔構造は、構造周期が0.002μm〜10μmであることが好ましい。コア層の構造周期が0.002μm以上であると、空隙部にガスを流す際の圧力損失が低減して、流速を高めることができる。また、圧力損失が低下すると、より省エネルギーで分離・精製できる効果も奏する。構造周期は0.01μm以上であることがより好ましく、0.05μm以上であることがさらに好ましい。
【0024】
一方、構造周期が10μm以下であると、圧縮や曲げといった断面方向にかかる力に強くなるため、耐圧性を向上させることができる。構造周期は8μm以下であることがより好ましい。
【0025】
コア層の共連続多孔構造の構造周期は、本発明の流体分離用炭素膜にX線を入射し、小角散乱にて得られた散乱強度のピークトップの位置における散乱角度2θにより、下式で算出されるものである。
【0026】
【数1】
【0027】
L:構造周期(μm)、λ:入射X線の波長(μm)
【0028】
ただし、コア層の構造周期が大きくて小角散乱が観測できない場合がある。その場合はX線コンピュータ断層撮影(X線CT)によって構造周期を得る。具体的には、X線CTによって撮影した三次元画像をフーリエ変換した後に、その二次元スペクトルの円環平均を取り、一次元スペクトルを得る。その一次元スペクトルにおけるピークトップの位置に対応する特性波長を求め、その逆数としてコア層の構造周期を算出する。
【0029】
なお、上記の構造周期の解析に際して、後述するスキン層については、構造周期が上記の範囲外となるため解析に影響はなく、上記式で算出される構造周期をもって、コア層の共連続多孔構造の構造周期とする。
【0030】
また、コア層の中心部における平均空隙率が10〜80%であることが好ましい。平均空隙率とは、包埋した試料をクロスセクションポリッシャー法(CP法)により精密に形成させた断面を、1±0.1(nm/画素)となる倍率にて70万画素以上の解像度で観察し、その画像から計算に必要な着目領域を512画素四方で設定し、炭素膜の断面積をC、細孔部分の面積をDとして、以下の式で算出し、任意の断面20箇所の算術平均値により算出された値である。
平均空隙率(%)=D/C×100
【0031】
平均空隙率が高いほどガスや液体の流路として圧力損失が小さく、流速を高めることができる一方、低いほど圧縮や曲げといった断面方向にかかる力に強くなるため、取り扱い性や高圧条件での使用に際して有利となる。そのため、平均空隙率は15%以上がより好ましく、18%以上がさらに好ましい。一方、平均空隙率が低いほど耐圧性が向上し、高圧条件で使用することができる。そのため、平均空隙率は75%以下がより好ましく、70%以下がさらに好ましい。
【0032】
なお、上記におけるコア層の中心部とは、膜の断面における質量分布が均一であると仮定した際の重心を指し、例えば、膜の形態が丸断面を持つ繊維の場合は、繊維軸と直交する断面において繊維表面からの距離が同一となる点を指す。
【0033】
本発明の流体分離用炭素膜のコア層の共連続多孔構造における細孔の平均直径は、小さすぎると圧力損失が増加してガスの透過度が低下するため30nm以上がより好ましく、50nm以上がさらに好ましい。また、細孔の平均直径が大きすぎると、炭素の枝部が構造体全体を支えあう効果が低下して耐圧性が低下するため、3,000nm以下が好ましく、2,500nm以下がより好ましい。
【0034】
ここで、細孔の平均直径は水銀圧入法による細孔径分布測定によって得た測定値を用いる。水銀圧入法とは、共連続多孔構造の細孔に圧力を加えて水銀を浸入させ、圧力と圧入された水銀量から細孔容積と比表面積を求め、細孔を円筒と仮定したときに細孔容積と比表面積の関係から得た細孔直径を算出するものである。水銀圧入法では5nm〜500μmの細孔直径分布曲線を取得できる。
なお、後述するスキン層は実質的に細孔を有しないため、炭素膜全体の細孔の平均直径は、実質的にコア層の細孔の平均直径と同一である。
【0035】
スキン層は、コア層の周囲に形成された、共連続多孔構造を実質的に有しない層である。「共連続多孔構造を実質的に有しない」とは、クロスセクションポリッシャー法(CP法)により形成させた断面を、1±0.1(nm/画素)となる倍率で観察した際に、孔径が解像度以下であることにより明確な細孔が観察されない部分が、前述のX線分析から算出される構造周期Lの3倍の長さを一辺とする正方形の領域以上の面積で存在することを意味する。
【0036】
スキン層の厚みは特に限定されず、適宜選択することができるが、厚すぎると膜としてガスの透過度が低下する傾向が見られることから、10μm以下であることが好ましく、5μm以下であることがより好ましく、1μm以下であることがさらに好ましい。
また、下限についても特に限定されないが、スキン層は膜の形態を保ち、分離機能層としての役割を有する観点から1nm以上であることが好ましく、100nm以上であることがより好ましい。
【0037】
流体分離用炭素膜に共連続多孔構造を実質的に有しないスキン層が存在することで、混合ガスを分離・精製するための分離層としての機能を有するとともに、耐圧性を高めることができる。
なお、本発明の流体分離用炭素膜は、スキン層の外側に、さらにコート層を有するものであってもよい。ここで、コート層を形成する成分は特に限定されず、各種有機、無機高分子化合物を使用することができる。
【0038】
本発明の流体分離用炭素膜は、繊維表面に高低差1μm以上の凸部が形成されてなることを特徴とする。以下、説明の都合上、本発明の典型的な実施形態として、図2の符号を参照しつつ説明するが、図2の実施形態によりなんら本発明は限定されない。
【0039】
高低差1μm以上の凸部とは、繊維軸方向に垂直な当該凸部を含む断面を観察した場合に、当該凸部の頂点から炭素膜の外縁に内接する内接円Cに向けて引いた垂線の長さhが1μm以上であることを意味する。
【0040】
高低差1μm以上の凸部を有することにより、モジュール化した際に炭素膜同士の密着による分離性能の低下を抑制するとともに、炭素膜表面の撥水性が向上し、混合ガス中の水蒸気の滞留が防止される。
【0041】
また、凸部の高さが炭素膜の外縁に内接する内接円の半径に対し相対的に大きすぎると、炭素膜や当該炭素膜を用いた流体分離用炭素膜モジュールを製造する際に凸部が潰れたり、あるいは欠けたりする恐れがあるため、凸部の高さは、繊維断面の外縁に内接する内接円の半径の1/2以下であることが好ましい。なお、繊維断面の外縁に内接する内接円が楕円である場合には、半径は長半径を意味する。
【0042】
十分な膜同士の密着性の抑制効果を得る、および十分な撥水性を発現させて液体の水によるスキン層の閉塞を防止するためには、凸部が、繊維軸方向に100μm以上連続する畝状突起であることが好ましい。
【0043】
さらに、繊維軸方向における凸部の連続性が高いほど膜同士の密着の抑制効果および撥水性が高まるため、流体分離用炭素膜の全長に渡って連続する畝状突起を有することがより好ましい。このような畝状突起の数は特に制限されないが、複数本形成されていることが好ましい。
【0044】
繊維断面において、複数本の畝状突起が放射状に形成されてなる流体分離用炭素膜は、特に好ましい態様である。この場合、膜同士の密着の抑制効果および撥水性発現の観点から、畝状突起の平均形成間隔は、畝状突起の平均幅の1/3以上4倍以下であることが好ましく、1/2以上2倍以下がより好ましい。
【0045】
なお、本明細書において、畝状突起の幅は、炭素膜の断面において、当該凸部の頂点から炭素膜の外縁に内接する内接円に向けて引いた垂線の中点を通り、かつ当該内接円と当該垂線の交点における当該内接円の接線Tと平行な直線Lを引き、当該直線と繊維断面の外縁(凸部の外縁)との2つの交点(以下、当該交点を「畝状突起の中腹点」という。)の間の距離wと定義する。なお、炭素膜の外縁に内接する内接円は、外縁の形状に合わせて真円または楕円を選択する。
【0046】
また、畝状突起の形成間隔は、隣接する畝状突起の中腹点を結ぶ線分の長さsと定義する。平均高さ、平均幅、平均形成間隔は、繊維断面における全ての畝状突起についてこれらを測定したときの平均値である。
【0047】
畝状突起の平均幅は特に限定されないが、平均幅が狭すぎるとモジュール化時やガス導入時に凸部が潰れるため、1μm以上が好ましく、5μm以上がより好ましい。一方、平均幅が広すぎると断面上に形成できる凸部の数が少なくなり、膜同士の密着の抑制効果および撥水性が低下するため、100μm以下が好ましく、50μm以下がより好ましい。
【0048】
また、異なる幅の複数の畝状突起が繊維表面に形成されてなる炭素膜は、膜同士の密着の抑制効果および撥水性がより高まる効果があるため好ましい。炭素膜は、繊維表面に2種類以上の幅の畝状突起を持つことが好ましく、3種類以上がより好ましい。
【0049】
炭素膜の外縁に内接する内接円の直径(真円の場合)または長径(楕円の場合)(以下、本明細書において「炭素膜の直径d」とする。)は特に限定されないが、モジュール化する際の取り扱い性を維持する観点から、10μm以上であることが好ましい。また、曲げ剛性の向上や、モジュール化したときの単位体積当りの膜面積向上の観点から、500μm以下であることが好ましい。
【0050】
繊維の長さは任意に決定することができるが、モジュール化する際の取り扱い性向上やガスの透過性能向上の観点から、10mm以上が好ましい。
【0051】
さらに、本発明の流体分離用炭素膜としては、前記凸部内にスキン層だけでなくコア層も形成されていることが好ましい。従来の炭素膜は凸部を形成させると、その脆性のためモジュール化時に凸部が欠陥となることが多かったが、凸部内にコア層が存在することにより凸部の強度が高くなり欠陥の発生を抑制することができる。
【0052】
そのため、凸部内のコア層の存在比率が高いことが好ましい。凸部内のコア層の存在比率を表す指標として、凸部断面コア層比を次式で定義する。
凸部断面コア層比(%)=Sc/Sa×100
【0053】
ここで、Saは注目する凸部の断面積、Scは注目する凸部断面におけるコア層の面積をそれぞれ表す。凸部の強度という観点から、凸部断面コア層比が高ければ高いほど良い。しかし、あまりに凸部断面コア層比が高すぎる場合、凸部が完全にスキン層に覆われず欠陥が存在する確率が高くなる。
【0054】
そのため、凸部断面コア層比が50%以上98%以下であることが好ましい。なお、6カ所以上凸部が存在する場合は3か所以上、3か所以上5カ所以下の凸部が存在する場合は2か所以上で凸部断面コア層比を計算し、その算術平均をとるものとする。
【0055】
以下、説明の都合上、本発明の典型的な実施形態として、図3の符号を参照しつつ説明するが、図3の実施形態によりなんら本発明は限定されない。
【0056】
SaおよびScは、クロスセクションポリッシャー法(CP法)により精密に形成させた凸部の断面を電子顕微鏡で観察し、画像解析を行うことにより算出する。
Saは、注目する凸部の断面が全て収まる倍率で観察した画像に対し、炭素膜の外縁となる内接円を表す円弧をフィッティングし、その円弧と凸部の外周部が作る面積とする。
【0057】
Scは、注目する凸部の断面が全て収まる倍率で観察した画像に対し、コア層とスキン層の境界点を繋いでできる多角形の面積とする。
Scの計算精度はこの境界点の数により決定されるため、できるだけ多く定義することが好ましく、さらに、境界点はできるだけ凸部断面全体に均一に定義することが好ましい。
【0058】
均一な境界点を定義するための好ましい方法を述べる。
繊維表面として定義した円弧上における左右の境界点PbとPbを決定する。境界点PbとPbを結ぶ直線Lhを引き、直線Lhの垂線であって境界点PbとPb上を通る直線をそれぞれ、LvおよびLvとする。さらに、直線Lvと直線Lvで挟まれる領域を、直線Lvまたは直線Lvに平行な直線でn等分し、その平行な直線上(図3ではLv〜Lv)における境界点Pを決定する。nは、できるだけ大きい方がScの計算精度が高まるため好ましく、具体的には、5以上が好ましく、8以上がより好ましい。
【0059】
また、本発明の流体分離用炭素膜は、繊維表面の窒素元素比率が元素比率で0.1〜30%であることが好ましい。ここでいう元素比率とは、XPS分析装置によって測定される値のことを示す。
【0060】
窒素元素比率が高いほど、特に二酸化炭素分離膜として二酸化炭素と炭素膜との親和性が高まる傾向にあり、二酸化炭素の透過性が向上する。
また、窒素元素比率は、低いほど高温環境にさらされた際の炭素膜としての耐久性に優れ、炭素膜として撥水効果が高まるため好ましい。
これらの観点から、窒素元素比率は、1〜25%であることがより好ましく、3〜18%であることがより好ましい。
【0061】
<流体分離用炭素膜の製造方法>
本発明の流体分離用炭素膜は、一例として、炭化可能樹脂と消失樹脂とを相溶させて樹脂混合物とする工程(工程1)と、相溶させた状態の樹脂混合物を紡糸し、微細な相分離構造を形成する工程(工程2)と、得られた前駆体を焼成により炭化する工程(工程3)とを有する製造方法により製造することができる。
【0062】
〔工程1〕
工程1は、炭化可能樹脂10〜90重量%と、消失樹脂90〜10重量%と相溶させ、樹脂混合物とする工程である。
【0063】
ここで、炭化可能樹脂とは、焼成により炭化し、枝部(炭素部)として残存する樹脂であり、熱可塑性樹脂および熱硬化性樹脂の双方を用いることができる。
【0064】
熱可塑性樹脂の場合、加熱や高エネルギー線照射などの簡便なプロセスで不融化処理を実施可能な樹脂を選択することが好ましい。また、熱硬化性樹脂の場合、不融化処理が不要の場合が多く、こちらも好適な材料として挙げられる。
【0065】
熱可塑性樹脂の例としては、ポリフェニレンオキシド、ポリビニルアルコール、ポリアクリロニトリル、フェノール樹脂、全芳香族ポリエステルが挙げられ、熱硬化性樹脂の例としては、不飽和ポリエステル樹脂、アルキド樹脂、メラミン樹脂、ユリア樹脂、ポリイミド樹脂、ジアリルフタレート樹脂、リグニン樹脂、ウレタン樹脂などを列挙することができる。
これらは単独で用いても、混合された状態で用いても構わないが、熱可塑性樹脂あるいは熱硬化性樹脂それぞれで混合することも成形加工の容易さから好ましい。
【0066】
それらの中でも、炭化収率と成形性、経済性の観点から、熱可塑性樹脂を用いることが好ましく、ポリフェニレンオキシド、ポリビニルアルコール、ポリアクリロニトリル、全芳香族ポリエステルがより好ましく用いられる。
【0067】
また、消失樹脂とは、後述する工程2に引き続いて、不融化処理と同時もしくは不融化処理後、または焼成と同時のいずれかの段階で除去することのできる樹脂である。
【0068】
消失樹脂を除去する方法については特に限定されず、薬品を用いて解重合するなどして化学的に除去する方法、消失樹脂を溶解する溶媒を添加して溶解除去する方法、加熱して熱分解によって消失樹脂を低分子量化して除去する方法などが好ましく用いられる。これらの手法は単独で、もしくは組み合わせて使用することができ、組み合わせて実施する場合にはそれぞれを同時に実施しても別々に実施してもよい。
【0069】
化学的に除去する方法としては、酸またはアルカリを用いて加水分解する方法が経済性や取り扱い性の観点から好ましい。酸またはアルカリによる加水分解を受けやすい樹脂としては、ポリエステル、ポリカーボネート、ポリアミドなどが挙げられる。
【0070】
消失樹脂を溶解する溶媒を添加して除去する方法としては、混合された炭化可能樹脂と消失樹脂に対して、連続して溶媒を供給して消失樹脂を溶解、除去する方法や、バッチ式で混合して消失樹脂を溶解、除去する方法などが好ましい例として挙げられる。
【0071】
溶媒を添加して除去する方法に適した消失樹脂の具体的な例としては、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレンなどのポリオレフィン、アクリル樹脂、メタクリル樹脂、ポリビニルピロリドン、脂肪族ポリエステル、ポリカーボネートなどが挙げられる。中でも、溶媒への溶解性から非晶性の樹脂であることがより好ましく、その例としては、ポリスチレン、メタクリル樹脂、ポリカーボネートが挙げられる。
【0072】
熱分解によって消失樹脂を低分子量化して除去する方法としては、混合された炭化可能樹脂と消失樹脂をバッチ式で加熱して熱分解する方法や、連続して混合された炭化可能樹脂と消失樹脂を加熱源中へ連続的に供給しつつ加熱して熱分解する方法が挙げられる。
【0073】
消失樹脂は、これらの中でも、後述する工程3において、炭化可能樹脂を焼成により炭化する際に熱分解により消失する樹脂であることが好ましく、後述する炭化可能樹脂の不融化処理の際に大きな化学変化を起さず、かつ焼成後の炭化収率が10%未満となる熱可塑性樹脂であることが好ましい。
【0074】
このような消失樹脂の具体的な例としては、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレンなどのポリオレフィン、アクリル樹脂、メタクリル樹脂、ポリアセタール、ポリビニルピロリドン、脂肪族ポリエステル、芳香族ポリエステル、脂肪族ポリアミド、ポリカーボネートなどを列挙することができ、これらは、単独で用いても、混合された状態で用いても構わない。
【0075】
工程1においては、炭化可能樹脂と消失樹脂を相溶させ、樹脂混合物(ポリマーアロイ)とする。ここでいう「相溶させ」とは、温度および/または溶媒の条件を適切に選択することにより、光学顕微鏡で炭化可能樹脂と消失樹脂の相分離構造が観察されない状態を作り出すことをいう。
【0076】
炭化可能樹脂と消失樹脂は、樹脂同士のみの混合により相溶させてもよいし、さらに溶媒を加えることにより相溶させてもよい。
【0077】
複数の樹脂が相溶する系としては、低温では相分離状態にあるが高温では1相となる上限臨界共溶温度(UCST)型の相図を示す系や、逆に、高温では相分離状態にあるが低温では1相となる下限臨界共溶温度(LCST)型の相図を示す系などが挙げられる。また、特に炭化可能樹脂と消失樹脂の少なくとも一方が溶媒に溶解した系である場合には、非溶媒の浸透によって後述する相分離が誘発されるものも好ましい例として挙げられる。
【0078】
加えられる溶媒については特に限定されず、溶解性の指標となる炭化可能樹脂と消失樹脂の溶解度パラメーター(SP値)の平均値からの差の絶対値が、5.0以内であることが好ましい。
【0079】
SP値の平均値からの差の絶対値は、小さいほど溶解性が高いことが知られているため、差がないことが好ましい。また、SP値の平均値からの差の絶対値は、大きいほど溶解性が低くなり、炭化可能樹脂と消失樹脂との相溶状態を取ることが難しくなる。
このことからSP値の平均値からの差の絶対値は、3.0以下であることが好ましく、2.0以下が最も好ましい。
【0080】
相溶する系の具体的な炭化可能樹脂と消失樹脂の組み合わせ例としては、溶媒を含まない系であれば、ポリフェニレンオキシド/ポリスチレン、ポリフェニレンオキシド/スチレン−アクリロニトリル共重合体、全芳香族ポリエステル/ポリエチレンテレフタレート、全芳香族ポリエステル/ポリエチレンナフタレート、全芳香族ポリエステル/ポリカーボネートなどが挙げられる。溶媒を含む系の具体的な組合せ例としては、ポリアクリロニトリル/ポリビニルアルコール、ポリアクリロニトリル/ポリビニルフェノール、ポリアクリロニトリル/ポリビニルピロリドン、ポリアクリロニトリル/ポリ乳酸、ポリビニルアルコール/酢酸ビニル−ビニルアルコール共重合体、ポリビニルアルコール/ポリエチレングリコール、ポリビニルアルコール/ポリプロピレングリコール、ポリビニルアルコール/デンプンなどを挙げることができる。
【0081】
炭化可能樹脂と消失樹脂を混合する方法については限定されず、均一に混合できる限りにおいて公知の種々の混合方式を採用できる。具体例としては、攪拌翼を持つロータリー式のミキサーや、スクリューによる混練押出機などが挙げられる。
【0082】
また、炭化可能樹脂と消失樹脂を混合する際の温度(混合温度)を、炭化可能樹脂と消失樹脂が共に軟化する温度以上とすることも好ましい。ここで、軟化する温度とは、炭化可能樹脂または消失樹脂が結晶性高分子であれば融点、非晶性樹脂であればガラス転移点温度を適宜選択すればよい。
【0083】
混合温度を炭化可能樹脂と消失樹脂が共に軟化する温度以上とすることで、両者の粘性を下げられるため、より効率のよい攪拌、混合が可能になる。混合温度の上限についても特に限定されず、熱分解による樹脂の劣化を防止し、品質に優れた炭素膜の前駆体を得る観点から、400℃以下であることが好ましい。
【0084】
また、工程1においては、炭化可能樹脂10〜90重量%に対し消失樹脂90〜10重量%を混合する。炭化可能樹脂と消失樹脂が前記範囲内であると、最適な細孔サイズや空隙率を任意に設計できるため好ましい。
炭化可能樹脂が10重量%以上であれば、炭化後の膜における力学的な強度を保つことが可能になるほか、収率が向上するため好ましい。また、炭化可能な樹脂が90重量%以下であれば、消失樹脂が効率よく空隙を形成できるため好ましい。
【0085】
炭化可能樹脂と消失樹脂の混合比については、それぞれの材料の相溶性を考慮して、上記の範囲内で任意に選択することができる。具体的には、一般に樹脂同士の相溶性はその組成比が1対1に近づくにつれて悪化するため、相溶性のあまり高くない系を原料に選択した場合には、炭化可能樹脂の量を増やす、減らすなどして、いわゆる偏組成に近づけることで相溶性を改善することも好ましい態様として挙げられる。
【0086】
また、炭化可能樹脂と消失樹脂を混合する際に、溶媒を添加することも好ましい。溶媒を添加することで炭化可能樹脂と消失樹脂の粘性を下げ、成形を容易にするほか、炭化可能樹脂と消失樹脂を相溶化させやすくなる。ここでいう溶媒も特に限定されず、炭化可能樹脂、消失樹脂のうち少なくともいずれか一方を溶解、膨潤させることが可能な常温で液体であるものであればよく、炭化可能樹脂および消失樹脂をいずれも溶解するものであれば、両者の相溶性を向上させることが可能となるためより好ましい。
【0087】
溶媒の添加量は、炭化可能樹脂と消失樹脂の相溶性を向上させ、粘性を下げて流動性を改善する観点から、炭化可能樹脂と消失樹脂の合計重量に対して20重量%以上であることが好ましい。また、一方で溶媒の回収、再利用に伴うコストの観点から、炭化可能樹脂と消失樹脂の合計重量に対して90重量%以下であることが好ましい。
【0088】
〔工程2〕
工程2は、工程1において相溶させた状態の樹脂混合物を紡糸し、微細な相分離構造を形成する工程である。
【0089】
相溶させた状態の樹脂混合物を紡糸する方法は特に限定されず、後述の相分離法に合わせた紡糸法を適宜選択できる。樹脂混合物が熱可塑性樹脂の組合せであれば、樹脂の軟化温度以上に加熱してから溶融紡糸を行うことができる。また、樹脂混合物に溶媒が含まれる場合には、溶液紡糸として乾式紡糸、乾湿式紡糸や湿式紡糸などを適宜選択することができる。
【0090】
溶融紡糸は、混練押出機などを用いて加熱、溶融(流動状態)させた樹脂混合物を口金から押し出し、冷却しつつ巻取ることで繊維化する方法であり、工程速度が後述の溶液紡糸よりも速く、生産性に優れている。また、溶媒の揮散が起こらないため、工程中の安全対策にかかる費用を抑えられることから低コストでの製造が可能であるため好ましい。
【0091】
また、溶液紡糸は、予め調した樹脂混合物と溶媒からなる紡糸ドープを計量、口金から押し出すことで繊維化する方法であり、こちらは相分離状態を緻密に制御することが可能である。特に凝固浴を用いる乾湿式紡糸、湿式紡糸については、後述する熱誘起相分離、非溶媒誘起相分離などを適宜組み合わせて前駆体繊維の相分離状態を緻密に制御できることから、更に好ましい態様である。
【0092】
なお、紡糸を行う際、多葉型や歯車型等、外縁に凹凸を有する形状の口金を用いることや、スリット状の形態を持つ孔を1以上組み合わせて形成される形状の口金を用いることで、繊維表面に繊維軸方向に連続する畝状突起を有する炭素膜を形成することができる。
【0093】
炭化可能樹脂と消失樹脂を相分離させる方法は特に限定されず、例えば、温度変化によって相分離を誘発する熱誘起相分離法、非溶媒を添加することによって相分離を誘発する非溶媒誘起相分離法が挙げられる。
【0094】
これら相分離法は、単独で、もしくは組み合わせて使用することができる。組み合わせて使用する場合の具体的な方法は、例えば、凝固浴を通して非溶媒誘起相分離を起こした後、加熱して熱誘起相分離を起こす方法や、凝固浴の温度を制御して非溶媒誘起相分離と熱誘起相分離を同時に起こす方法、口金から吐出された樹脂を冷却して熱誘起相分離を起こした後に非溶媒と接触させる方法などが挙げられる。
【0095】
さらに、次いで凝固浴中を通過させた後、乾燥することで微細構造を形成し、炭素膜の前駆体を得ることができる。ここで、凝固液は特に限定されないが、例えば、水、エタノール、飽和食塩水、およびそれらと工程1で使用する溶媒との混合溶媒などが挙げられる。
【0096】
(消失樹脂の除去)
工程2において得られた炭素膜の前駆体は、炭化工程(工程3)に供される前、または炭化工程(工程3)と同時、またはその両方で消失樹脂の除去処理を行うことが好ましい。
【0097】
除去処理の方法は特に限定されない。具体的には、酸、アルカリ、酵素を用いて消失樹脂を化学的に分解、低分子量化して除去する方法や、消失樹脂を溶解する溶媒により溶解除去する方法、電子線、ガンマ線、紫外線、赤外線などの放射線や熱を用いて消失樹脂を分解除去する方法などが挙げられる。
【0098】
特に熱分解によって消失樹脂を除去処理することができる場合には、予め消失樹脂の80重量%以上が消失する温度で熱処理を行うこともできるし、炭化工程(工程3)もしくは後述の不融化処理において消失樹脂を熱分解、ガス化して除去することもできる。
【0099】
炭化工程(工程3)もしくは後述の不融化処理において熱処理と同時に消失樹脂を熱分解、ガス化して除去すると、生産性が高くなることから好ましい。
【0100】
(不融化処理)
工程2において得られた炭素膜の前駆体は、炭化工程(工程3)に供される前に不融化処理を行うことが好ましい。
【0101】
不融化処理の方法は特に限定されず、公知の方法を用いることができる。具体的な方法としては、酸素存在下で加熱することで酸化架橋を起こす方法、電子線、ガンマ線などの高エネルギー線を照射して架橋構造を形成する方法、反応性基を持つ物質を含浸、混合して架橋構造を形成する方法などが挙げられ、中でも、酸素存在下で加熱することで酸化架橋を起こす方法は、プロセスが簡便であり製造コストを低く抑えることが可能である点から好ましい。これらの手法は単独もしくは組み合わせて使用してもよく、それぞれを同時に使用しても別々に使用してもよい。
【0102】
酸素存在下で加熱することで酸化架橋を起こす方法における加熱温度は、架橋反応を効率よく進める観点から、150℃以上が好ましく、炭化可能樹脂の熱分解、燃焼等による重量ロスからの収率悪化を防ぐ観点から、350℃以下が好ましい。
【0103】
また、処理中の酸素濃度については特に限定されないが、18%以上の酸素濃度を持つガスを供給することが製造コストを低く抑えることが可能となるため好ましい。ガスの供給方法については特に限定されないが、空気をそのまま加熱装置内に供給する方法や、ボンベ等を用いて純酸素を加熱装置内に供給する方法などが挙げられる。
【0104】
電子線、ガンマ線などの高エネルギー線を照射して架橋構造を形成する方法としては、市販の電子線発生装置やガンマ線発生装置などを用いて、炭化可能樹脂へ電子線やガンマ線などを照射することで、架橋を誘発する方法が挙げられる。照射による架橋構造の効率的な導入から照射強度の下限は1kGy以上であると好ましく、主鎖の切断による分子量低下から膜強度が低下するのを防止する観点から、1000kGy以下であることが好ましい。
【0105】
反応性基を持つ物質を含浸、混合して架橋構造を形成する方法は、反応性基を持つ低分子量化合物を炭素膜の前駆体に含浸して、加熱または高エネルギー線を照射して架橋反応を進める方法、予め反応性基を持つ低分子量化合物を混合しておき、加熱または高エネルギー線を照射して架橋反応を進める方法などが挙げられる。
【0106】
〔工程3〕
工程3は、工程2において得られた炭素膜の前駆体、あるいは必要に応じて消失樹脂の除去および/または不融化処理に供された前駆体を焼成し、炭化して炭素膜を得る工程である。
【0107】
炭素膜の前駆体を充分に炭化させるために、焼成は不活性ガス雰囲気において400℃以上に加熱することにより行うことが好ましい。ここで、不活性ガスとは、加熱時に化学的に不活性であるものを言い、具体的な例としては、ヘリウム、ネオン、窒素、アルゴン、クリプトン、キセノン、二酸化炭素などである。
【0108】
中でも、窒素、アルゴンを用いることが、不活性であることと経済的な観点から好ましい。また、加熱する温度の上限は特に限定されないが、低いほど経済的であるため好ましく、およその目安は1500℃である。
【0109】
不活性ガスの流量は、加熱装置内の酸素濃度を充分に低下させられる量であればよく、加熱装置の大きさ、炭素膜の前駆体の供給量、加熱温度などによって適宜最適な値を選択することが好ましい。流量の上限についても特に限定されないが、経済性や加熱装置内の温度変化を少なくする観点から、温度分布や加熱装置の設計に合わせて適宜設定することが好ましい。
【0110】
連続的に炭化処理を行う場合の加熱方法については、一定温度に保たれた加熱装置内に、膜をローラーやコンベヤ等を用いて連続的に供給しつつ取り出す方法であると、生産性を高くすることが可能であるため好ましい。
【0111】
一方、加熱装置内にてバッチ式処理を行う場合の昇温速度、降温速度の下限は特に限定されないが、昇温、降温にかかる時間を短縮することで生産性を高めることができるため、1℃/分以上の速度が好ましい。また、昇温速度、降温速度の上限は特に限定されないが、加熱装置を構成する部材の耐熱衝撃特性よりも遅くすることが好ましい。
【0112】
(凸部の形成)
繊維表面への凸部の形成方法は特に限定されないが、前述のように工程2で多葉型や歯車型の口金を用いて紡糸する方法が好ましい。また、工程2の紡糸後〜工程3までのいずれかの工程、好ましくは工程3の焼成前までに、エンボス加工等物理的な押圧により繊維の一部を凹ませることで凸部を形成させる方法を用いることもできる。
【0113】
<流体分離用炭素膜モジュール>
本発明の流体分離用炭素膜モジュールは、本発明の流体分離用炭素膜、ポッティング樹脂、ベッセルを含む。
【0114】
ポッティング樹脂は、流体分離用炭素膜を複数本束ね固定する、および/またはベッセル内面に本発明の流体分離用炭素膜を固定するために使用される樹脂である。
ポッティング樹脂としては、流体分離用炭素膜間の隙間や本発明の流体分離用炭素膜とベッセル内面の隙間を完全に塞ぐことができる、種々の熱硬化性または熱可塑性樹脂を用いることができる。
【0115】
熱硬化性樹脂としては、エポキシ樹脂、ポリウレタン樹脂、シリコン樹脂などを例示することができる。
熱可塑性樹脂としては、ポリエーテルスルホン、ポリカーボネート、非晶ポリアリレート、ポリオレフィン、ポリエステル、ポリアミド、ポリエーテルなどを例示することができる。
【0116】
ベッセルは、その中に流体分離用炭素膜を収容する筒状のケーシング部材である。
ベッセルの断面形状は、特に限定されないが、楕円形または円形であると、ベッセルの耐圧性を高くできる点で好ましく、特に円形であることが好ましい。また、ベッセルの素材は、特に限定されないが、金属、樹脂、複合材料などが用いられる。
【実施例】
【0117】
以下に本発明の好ましい実施の例を記載する。
【0118】
[評価手法]
(共連続多孔構造の有無)
繊維状の炭素膜を液体窒素中で充分に冷却後、ピンセットで割断して形成した断面のコア層部分を走査型電子顕微鏡で表面観察し、炭素骨格の枝部と細孔部(空隙部)がそれぞれ連続しつつ三次元的に規則的に絡み合った構造が見られた場合、共連続多孔構造を有していると判定した。
【0119】
(断面の畝状突起の形状測定)
炭素膜を液体窒素中で冷却後、ピンセットで割断して形成した断面を走査型電子顕微鏡で観察し、断面が全て収まる任意の倍率で画像を取得した。続いて、画像処理ソフト“ImageJ”を用いて、炭素膜の外縁に内接する真円または楕円の内接円を作図した。
【0120】
また、畝状突起の頂点から当該内接円に垂線を引き、その垂線の長さを畝状突起の高さとした。また、当該畝状突起の頂点から炭素膜の外縁に内接する内接円に向けて引いた垂線の中点を通り、かつ当該内接円と当該垂線の交点における当該内接円の接線と平行な直線を引き、当該直線と繊維断面の外縁(畝状突起の外縁)との2つの交点(畝状突起の中腹点)の間の距離を、畝状突起の幅とした。
【0121】
また、隣接する畝状突起の中腹点を結ぶ線分の長さを畝状突起の形成間隔とした。断面中の全ての畝状突起において畝状突起の高さ、畝状突起の幅および畝状突起の形成間隔を測定し、その平均値をそれぞれ畝状突起の平均高さ、平均幅、平均形成間隔とした。
【0122】
(平均空隙率)
炭素膜を樹脂中に包埋し、その後カミソリ等で炭素膜の断面を露出させ、日本電子製スパッタリング装置SM−09010を用いて加速電圧5.5kVにて試料表面にアルゴンイオンビームを照射、エッチングを施した。
【0123】
得られた炭素膜の断面を株式会社日立ハイテクノロジーズ製走査型電子顕微鏡S−5500にて膜断面の中心部を1±0.1(nm/画素)となる倍率で、70万画素以上の解像度で観察した画像から、計算に必要な膜断面を512画素四方で設定し、炭素膜の断面積をC、細孔部分の面積をDとして、以下の式で任意の断面20箇所の算術平均により平均空隙率を算出した。
平均空隙率(%)=D/C×100
【0124】
(構造周期)
炭素膜を試料プレートに挟み、CuKα線光源から得られたX線源から散乱角度10度未満の情報が得られるように、光源、試料および二次元検出器の位置を調整した。二次元検出器から得られた画像データ(輝度情報)から、ビームストッパーの影響を受けている中心部分を除外して、ビーム中心から動径を設け、角度1°毎に360°の輝度値を合算して散乱強度分布曲線を得た。得られた曲線においてピークを持つ位置の散乱角度2θより、連続多孔構造部分の構造周期を下記の式によって得た。
【0125】
【数2】
【0126】
L:構造周期(μm)、λ:入射X線の波長(μm)
【0127】
また、構造周期が1μm以上であり、X線散乱のピークが観測されない場合には、X線顕微鏡で0.3°ステップ、180°以上の範囲で連続回転像を撮影し、CT像を得た。得られたCT像に対してフーリエ変換を実施し、その二次元スペクトルの円環平均を取り、一次元スペクトルを得た。その一次元スペクトルにおけるピークトップの位置に対応する特性波長を求め、その逆数として構造周期を得た。
【0128】
(凸部断面コア層比)
炭素膜を樹脂中に包埋し、その後カミソリ等で炭素膜の断面を露出させ、日本電子製スパッタリング装置SM−09010を用いて加速電圧5.5kVにて試料表面にアルゴンイオンビームを照射、エッチングを施した。
【0129】
得られた炭素膜の断面を株式会社日立ハイテクノロジーズ製走査型電子顕微鏡S−5500にて、注目する凸部の断面が全て収まる倍率で観察した画像を取得し、画像処理ソフト“ImageJ”を用いて、凸部断面コア層比の計算に必要な、注目する凸部の断面積Saおよび注目する凸部断面におけるコア層の面積Scの計算を行った。このとき境界点は、直線Lvと直線Lvで挟まれる領域を8等分する線分上に定義した。
【0130】
(窒素原子比率)
窒素原子比率は、XPS装置(Quantera SXM(PHI社製))を用いて、励起X線monochromatic Al Kα1,2線(1486.6eV)、X線径100μm、光電子脱出角度45°(試料表面に対する検出器の傾き)として測定した。
【0131】
得られたデータを、スムージング:9−point smoothing、横軸補正:C1sメインピークを284.6eVとして解析し、全元素に対する窒素元素の比率を原子%にて算出した。
【0132】
(ガス透過速度の測定)
10本の炭素膜を束ねてステンレス製のベッセルに収容し、束ねた炭素膜の端をエポキシ樹脂系のポッティング樹脂によりケーシング内面に固定するとともにケーシングの両端を封止して、炭素膜モジュールを作製し、ガス透過速度を測定した。
【0133】
測定ガスは所定濃度の水蒸気を含む二酸化炭素あるいはメタンを用い、炭素膜モジュールは測定ガスを外部から繊維状ガス分離膜内に導入する外圧式モジュールとした。測定ガスを外圧式モジュール内に流し、二酸化炭素およびメタンの単位時間当たりの流量を初期と24hr経過後に測定した。
【0134】
[実施例1]
70gのポリサイエンス社製ポリアクリロニトリル(M15万)と70gのシグマ・アルドリッチ社製ポリビニルピロリドン(M4万)、および、溶媒として400gの和光純薬工業株式会社製ジメチルスルホキシド(DMSO)をセパラブルフラスコに投入し、3時間攪拌および還流を行いながら150℃で均一かつ透明な溶液を調製した。このときポリアクリロニトリルの濃度およびポリビニルピロリドンの濃度はそれぞれ10重量%であった。
【0135】
得られた溶液を25℃まで冷却した後、図4に示した、直径d’が300μmの円の周りに、高さh’が190μm、幅w’が80μmの切欠きを周囲に等間隔で12カ所持つ多葉型の1穴口金から3mL/分で溶液を吐出して凝固浴へ導き、その後5m/分の速度で引き取り、バット上に堆積させることで原糸を得た。なお、多葉型1穴口金の切欠きの高さh’、幅w’は、前記の炭素膜の凸部の高さhと幅wの定義と同様に考える。得られた原糸は半透明であり、相分離を起こしていた。
【0136】
得られた原糸を循環式乾燥機にて乾燥して原糸表面の水分を乾燥させた後、真空乾燥を行い、乾燥後の原糸を得た。その後250℃に保った電気炉中へ原糸を投入し、酸素雰囲気で加熱することで不融化処理を行った。不融化処理を行った原糸は、黒色に変化した。
【0137】
得られた不融化原糸を窒素雰囲気、到達温度600℃、保持時間5分の条件で炭化処理を行うことで、炭素膜とした。
【0138】
得られた炭素膜は、外縁の内接円の直径が260μmであり、さらに12本の畝状突起を有し、凸部(畝状突起)の平均高さは40μm、平均幅は25μm、平均形成間隔は44μmであった。炭素膜のコア層には図1に示すような共連続多孔構造が形成されており、共連続多孔構造の構造周期は0.073μm、平均空隙率は55%であった。
【0139】
また、3か所の凸部から凸部断面コア層比を求めたところ、平均値は73%であった。得られた炭素膜の繊維表面について窒素原子比率を測定したところ、12%であった。
【0140】
また、得られた炭素膜について、水蒸気を含む雰囲気で二酸化炭素とメタンの透過速度を測定したところ、高い二酸化炭素透過速度と、二酸化炭素/メタンの分離係数が測定範囲内で初期から24hr経過後まで安定して得られ、優れた分離性能を示した。
【0141】
[実施例2]
実施例1で調したポリマー溶液を25℃まで冷却した後、図4に示した、直径d’が75μmの円の周りに、高さh’が48μm、幅w’が20μmの切欠きを周囲に等間隔で12カ所持つ多葉型の1穴口金から3mL/分で溶液を吐出して凝固浴へ導き、その後5m/分の速度で引き取り、バット上に堆積させることで原糸を得た。その後、実施例1と同様の手法にて乾燥、焼成を行い、炭素膜を得た。
【0142】
得られた炭素膜は、外縁の内接円の直径が66μmであり、さらに12本の畝状突起を有し、凸部(畝状突起)の平均高さは11μm、平均幅は6μm、平均形成間隔は11μmであった。炭素膜のコア層には共連続多孔構造が形成されており、共連続多孔構造の構造周期は0.072μm、平均空隙率は53%であった。また、3か所の凸部から凸部断面コア層比を求めたところ、平均値は10%であった。
【0143】
また、得られた炭素膜について、水蒸気を含む雰囲気で二酸化炭素とメタンの透過速度を測定したところ、測定開始時は、高い二酸化炭素透過速度と二酸化炭素/メタンの分離係数が測定範囲内で安定して得られた。
【0144】
しかし、24hr経過後、単位時間当たりの流量を測定したところ、測定範囲外の非常に大きな透過速度を記録したため、二酸化炭素/メタンの分離係数は測定不能であった。測定後ケーシングしていた炭素膜を取り出し、繊維表面を電子顕微鏡で観察したところ、凸部に割れが生じていた。
【0145】
実施例1では、初期状態も24hr経過後も、安定して高い分離係数を示した。実施例2では、初期状態では安定して高い分離係数を示し、24hr経過後は凸部の割れによるガスのリークが発生した。
【0146】
実施例2では、凸部断面コア層比が実施例1よりも非常に小さいため、測定ガスの導入による振動などで炭素膜同士が接触した際に凸部に割れが生じたことが示唆される。
【0147】
本発明を詳細にまた特定の実施態様を参照して説明したが、本発明の精神と範囲を逸脱することなく様々な変更や修正を加えることができることは当業者にとって明らかである。本出願は2016年1月22日出願の日本特許出願(特願2016−010451)に基づくものであり、その内容はここに参照として取り込まれる。
【符号の説明】
【0148】
1.炭素膜(繊維断面)
2.凸部(畝状突起)
3.コア層
4.スキン層
C:炭素膜の繊維断面の外縁に内接する内接円
T:炭素膜の外縁に内接する内接円の接線
L:凸部の頂点から炭素膜の外縁に内接する内接円に向けて引いた垂線の中点を通り、かつ接線Tと平行な直線
C’:多葉型口金の外縁に内接する内接円
T’:多葉型口金の外縁に内接する内接円の接線
図1
図2
図3
図4