特許第6607258号(P6607258)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6607258
(24)【登録日】2019年11月1日
(45)【発行日】2019年11月20日
(54)【発明の名称】弾性波装置
(51)【国際特許分類】
   H03H 9/64 20060101AFI20191111BHJP
   H03H 9/25 20060101ALI20191111BHJP
   H03H 9/72 20060101ALI20191111BHJP
【FI】
   H03H9/64 Z
   H03H9/25 C
   H03H9/72
【請求項の数】8
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2017-547846(P2017-547846)
(86)(22)【出願日】2016年10月27日
(86)【国際出願番号】JP2016081850
(87)【国際公開番号】WO2017073652
(87)【国際公開日】20170504
【審査請求日】2018年3月1日
(31)【優先権主張番号】特願2015-214777(P2015-214777)
(32)【優先日】2015年10月30日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000006231
【氏名又は名称】株式会社村田製作所
(74)【代理人】
【識別番号】110001232
【氏名又は名称】特許業務法人 宮▲崎▼・目次特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】山田 貴之
【審査官】 ▲高▼橋 徳浩
(56)【参考文献】
【文献】 特開2013−247466(JP,A)
【文献】 国際公開第2014/196245(WO,A1)
【文献】 特開2009−260463(JP,A)
【文献】 国際公開第2013/128636(WO,A1)
【文献】 国際公開第2014/139590(WO,A1)
【文献】 特開2010−109894(JP,A)
【文献】 特表2012−501564(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H03H3/007−H03H3/10
H03H9/00−H03H9/76
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
LiNbOからなる第1の圧電基板と、
前記第1の圧電基板に構成されており、複数の第1のIDT電極を有する第1の帯域通過型フィルタと、
前記第1の圧電基板上に設けられており、前記複数の第1のIDT電極を覆っている誘電体層と、
第2の圧電基板と、
前記第2の圧電基板に構成されており、複数の第2のIDT電極を有し、かつ前記第1の帯域通過型フィルタとは通過帯域が異なる第2の帯域通過型フィルタと、
前記第1の帯域通過型フィルタに接続されている帯域阻止フィルタと、
を備え、
前記帯域阻止フィルタが前記第1の圧電基板以外の圧電基板に構成されており、
前記第1の帯域通過型フィルタが、入力端子及び出力端子の内の一方である第1の端子を有し、
前記第1の端子とグラウンド電位との間に前記帯域阻止フィルタが接続されており、
前記第2の帯域通過型フィルタが複数の端子を有し、
前記帯域阻止フィルタが前記第1の端子に接続されている第2の端子を有し、
前記第2の帯域通過型フィルタが有するいずれの端子と前記第1の端子との距離よりも、前記第2の端子と前記第1の端子との距離の方が短い、弾性波装置。
【請求項2】
前記帯域阻止フィルタが、前記第1の端子とグラウンド電位との間に並列に接続されている複数の並列腕共振子を有する、請求項に記載の弾性波装置。
【請求項3】
LiTaOからなる第3の圧電基板をさらに備え、
前記帯域阻止フィルタが前記第3の圧電基板に構成されている、請求項1または2に記載の弾性波装置。
【請求項4】
前記帯域阻止フィルタが前記第2の圧電基板に構成されている、請求項1または2に記載の弾性波装置。
【請求項5】
前記第2の圧電基板がLiTaOからなる、請求項1〜のいずれか1項に記載の弾性波装置。
【請求項6】
前記第1の帯域通過型フィルタがアンテナに接続される第3の端子を有し、前記第2の帯域通過型フィルタがアンテナに接続される第4の端子を有し、前記第3の端子と前記第4の端子とが接続されており、
前記第1の帯域通過型フィルタの通過帯域が、前記第2の帯域通過型フィルタの通過帯域よりも低域側に位置している、請求項に記載の弾性波装置。
【請求項7】
前記帯域阻止フィルタが少なくとも1個の第3のIDT電極を有する、請求項1〜のいずれか1項に記載の弾性波装置。
【請求項8】
前記第3のIDT電極における最短の電極指中心間距離が、前記複数の第2のIDT電極における最短の電極指中心間距離よりも短い、請求項に記載の弾性波装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、弾性波装置に関する。
【背景技術】
【0002】
通信の高速化のために、キャリアアグリゲーション(CA)などが用いられている。CAにおいては、一般的に、複数の帯域通過型フィルタのアンテナ端子を共通化し、周波数帯域が異なる複数の信号を同時に送受信する。それによって、通信の高速化が図られている。弾性波装置が、上記帯域通過型フィルタとして用いられている。
【0003】
下記の特許文献1に記載の弾性波装置においては、LiNbOからなる圧電基板上に、IDT電極が設けられている。IDT電極は、圧電基板上に設けられたSiOからなる絶縁物層により覆われている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2006−295976号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1の弾性波装置においては、高次モードの発生により、通過帯域外の減衰量が小さくなることがあった。このような弾性波装置をCAに用いる場合、高次モードの周波数帯域付近に別の帯域通過型フィルタ装置の通過帯域が位置することがあった。そのため、当該別の帯域通過型フィルタ装置の通過帯域内においてリップルが発生することがあった。また、上記帯域通過型フィルタ装置の挿入損失が劣化することがあった。
【0006】
本発明の目的は、高次モードを効果的に抑制することができる、弾性波装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に係る弾性波装置は、LiNbOからなる第1の圧電基板と、前記第1の圧電基板に構成されており、複数の第1のIDT電極を有する第1の帯域通過型フィルタと、前記第1の圧電基板上に設けられており、前記複数の第1のIDT電極を覆っている誘電体層と、第2の圧電基板と、前記第2の圧電基板に構成されており、複数の第2のIDT電極を有し、かつ前記第1の帯域通過型フィルタとは通過帯域が異なる第2の帯域通過型フィルタと、前記第1の帯域通過型フィルタに接続されている帯域阻止フィルタとを備え、前記帯域阻止フィルタが前記第1の圧電基板以外の圧電基板に構成されている。
【0008】
本発明に係る弾性波装置のある特定の局面では、前記第1の帯域通過型フィルタが、入力端子及び出力端子の内の一方である第1の端子を有し、前記第1の端子とグラウンド電位との間に前記帯域阻止フィルタが接続されている。この場合には、第1の帯域通過型フィルタ以外の帯域通過型フィルタの挿入損失などの劣化が生じ難い。
【0009】
本発明に係る弾性波装置の他の特定の局面では、前記帯域阻止フィルタが、前記第1の端子とグラウンド電位との間に並列に接続されている複数の並列腕共振子を有する。この場合には、帯域阻止フィルタの阻止帯域における減衰量を大きくすることができる。よって、第1の帯域通過型フィルタにおいて、高次モードをより一層抑制することができる。また、帯域阻止フィルタを小型にすることもできる。
【0010】
本発明に係る弾性波装置のさらに他の特定の局面では、前記第2の帯域通過型フィルタが複数の端子を有し、前記帯域阻止フィルタが前記第1の端子に接続されている第2の端子を有し、前記第2の帯域通過型フィルタが有するいずれの端子と前記第1の端子との距離よりも、前記第2の端子と前記第1の端子との距離の方が短い。この場合には、第1の帯域通過型フィルタと帯域阻止フィルタとの間の寄生容量を小さくすることができる。よって、弾性波装置の挿入損失の劣化が生じ難い。
【0011】
本発明に係る弾性波装置の別の特定の局面では、LiTaOからなる第3の圧電基板がさらに備えられており、前記帯域阻止フィルタが前記第3の圧電基板に構成されている。この場合には、帯域阻止フィルタにおける高次モードの発生を抑制することができる。
【0012】
本発明に係る弾性波装置のさらに別の特定の局面では、前記帯域阻止フィルタが前記第2の圧電基板に構成されている。
【0013】
本発明に係る弾性波装置のさらに別の特定の局面では、前記第2の圧電基板がLiTaOからなる。この場合には、帯域阻止フィルタにおける高次モードの発生を抑制することができる。
【0014】
本発明に係る弾性波装置のさらに別の特定の局面では、前記第1の帯域通過型フィルタがアンテナに接続される第3の端子を有し、前記第2の帯域通過型フィルタがアンテナに接続される第4の端子を有し、前記第3の端子と前記第4の端子とが接続されており、前記第1の帯域通過型フィルタの通過帯域が、前記第2の帯域通過型フィルタの通過帯域よりも低域側に位置している。この場合には、弾性波装置の挿入損失の劣化が生じ難い。
【0015】
本発明に係る弾性波装置のさらに別の特定の局面では、前記帯域阻止フィルタが少なくとも1個の第3のIDT電極を有する。
【0016】
本発明に係る弾性波装置のさらに別の特定の局面では、前記第3のIDT電極における最短の電極指中心間距離が、前記複数の第2のIDT電極における最短の電極指中心間距離よりも短い。この場合には、帯域阻止フィルタを小型にすることができる。よって、第2の圧電基板上における電極構造などの設計の自由度を高めることができる。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、高次モードの発生が効果的に抑制されている、弾性波装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1図1は、本発明の第1の実施形態に係る弾性波装置の電極構造を示す略図的平面断面図である。
図2図2(a)は、本発明の第1の実施形態における第1の帯域通過型フィルタ及び帯域阻止フィルタの回路図であり、図2(b)は、第2の帯域通過型フィルタの回路図である。
図3図3は、図1中のI−I線に沿う部分に相当する、本発明の第1の実施形態における第1の帯域通過型フィルタの略図的断面図である。
図4図4は、図1中のII−II線に沿う部分に相当する、本発明の第1の実施形態における第2の帯域通過型フィルタの略図的断面図である
図5図5は、本発明の第1の実施形態及び比較例における第1の帯域通過型フィルタの減衰量周波数特性を示す図である。
図6図6は、本発明の第2の実施形態における第1の帯域通過型フィルタ及び帯域阻止フィルタの回路図である。
図7図7は、本発明の第3の実施形態に係る弾性波装置の電極構造を示す略図的平面断面図である。
図8図8は、本発明の第4の実施形態に係る弾性波装置の電極構造を示す略図的平面断面図である。
図9図9は、本発明の第4の実施形態の変形例に係る弾性波装置の回路図である。
図10図10は、本発明の第5の実施形態に係る弾性波装置の模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、図面を参照しつつ、本発明の具体的な実施形態を説明することにより、本発明を明らかにする。
【0020】
なお、本明細書に記載の各実施形態は、例示的なものであり、異なる実施形態間において、構成の部分的な置換または組み合わせが可能であることを指摘しておく。
【0021】
図1は、本発明の第1の実施形態に係る弾性波装置の電極構造を示す略図的平面断面図である。なお、後述する誘電体層及び支持部材は図1において省略されている。また、後述する各弾性波共振子や縦結合共振子型弾性波フィルタは、矩形に2本の対角線を引いた略図により示されている。図3図4図7及び図8においても同様である。
【0022】
図2(a)は、第1の実施形態における第1の帯域通過型フィルタ及び帯域阻止フィルタの回路図であり、図2(b)は、第2の帯域通過型フィルタの回路図である。
【0023】
図1に示されているように、弾性波装置1は第1,第2の圧電基板4A,4Bを有する。第1の圧電基板4Aは、LiNbOからなる。第2の圧電基板4Bは、LiTaOからなる。第1の圧電基板4A上には、複数の第1のIDT電極を有する第1の帯域通過型フィルタ2Aが構成されている。第2の圧電基板4B上には、第1の帯域通過型フィルタ2Aとは通過帯域が異なる第2の帯域通過型フィルタ2Bが構成されている。第2の帯域通過型フィルタ2Bは、複数の第2のIDT電極を有する。各第1,第2のIDT電極の電極指の対数や電極指の長さなどは、それぞれ異なっていてもよく、あるいは同じであってもよい。
【0024】
第2の圧電基板4B上には、少なくとも1個の第3のIDT電極を有する帯域阻止フィルタ3も構成されている。このように、帯域阻止フィルタ3は、第1の圧電基板4A以外の圧電基板に構成されている。帯域阻止フィルタ3が第3のIDT電極を複数有する場合、各第3のIDT電極の電極指の対数や電極指の長さなどはそれぞれ異なっていてもよい。
【0025】
図2(a)に示されているように、帯域阻止フィルタ3は、第1の帯域通過型フィルタ2Aに接続されている。本実施形態では、帯域阻止フィルタ3は、第1の帯域通過型フィルタ2Aとグラウンド電位との間に接続されている。
【0026】
第1の帯域通過型フィルタ2Aは、Band25の受信フィルタである。よって、第1の帯域通過型フィルタ2Aの通過帯域は、1930MHz以上、1995MHz以下である。第2の帯域通過型フィルタ2Bは、Band4の受信フィルタである。よって、第2の帯域通過型フィルタ2Bの通過帯域は、2110MHz以上、2155MHz以下である。なお、第1,第2の帯域通過型フィルタ2A,2Bの通過帯域は、これに限定されない。また、第1,第2の帯域通過型フィルタ2A,2Bの内の少なくとも一方は送信フィルタであってもよい。
【0027】
本実施形態の特徴は、帯域阻止フィルタ3に、第1の帯域通過型フィルタ2Aが接続されていることにある。それによって、弾性波装置1における第1の帯域通過型フィルタ2Aの高次モードを効果的に抑制することができる。これを、本実施形態の具体的な構成と共に、以下において説明する。
【0028】
図2(a)に示されているように、第1の帯域通過型フィルタ2Aは、出力端子である第1の端子6及びアンテナに接続される第3の端子8を有する。帯域阻止フィルタ3は、第1の端子6に接続されている第2の端子7を有する。なお、上述したように、第1の帯域通過型フィルタ2Aは送信フィルタであってもよい。その場合においては、第1の端子6は入力端子である。
【0029】
第1の帯域通過型フィルタ2Aは、複数の弾性波共振子S1〜S3,P1a,P1b,P2a,P2b及び第1の縦結合共振子型弾性波フィルタ5Aを有する。複数の弾性波共振子S1〜S3,P1a,P1b,P2a,P2b及び第1の縦結合共振子型弾性波フィルタ5Aは、それぞれ上記第1のIDT電極を有する。本実施形態では、第1の縦結合共振子型弾性波フィルタ5Aは9IDT型だが、第1の縦結合共振子型弾性波フィルタ5Aが有するIDT電極の個数は特に限定されない。
【0030】
第3の端子8と第1の縦結合共振子型弾性波フィルタ5Aとの間には、複数の弾性波共振子S1,S2が互いに直列に接続されている。第1の縦結合共振子型弾性波フィルタ5Aと第1の端子6との間には、弾性波共振子S3が接続されている。弾性波共振子S1と弾性波共振子S2との間の接続点とグラウンド電位との間には、複数の弾性波共振子P1a,P1bが互いに直列に接続されている。第1の縦結合共振子型弾性波フィルタ5Aと弾性波共振子S3との間の接続点とグラウンド電位との間には、複数の弾性波共振子P2a,P2bが互いに直列に接続されている。
【0031】
帯域阻止フィルタ3は、2個の並列腕共振子3a,3bを有する。第2の端子7とグラウンド電位との間に、並列腕共振子3a,3bが互いに並列に接続されている。
【0032】
他方、図2(b)に示されているように、第2の帯域通過型フィルタ2Bは、アンテナに接続される第4の端子9及び出力端子である第5の端子10を有する。
【0033】
第2の帯域通過型フィルタ2Bは、複数の弾性波共振子S11〜S13及び第2の縦結合共振子型弾性波フィルタ5Ba,5Bbを有する。複数の弾性波共振子S11〜S13及び第2の縦結合共振子型弾性波フィルタ5Ba,5Bbは、それぞれ上記第2のIDT電極を有する。本実施形態では、第2の縦結合共振子型弾性波フィルタ5Ba,5Bbはそれぞれ3IDT型だが、第2の縦結合共振子型弾性波フィルタ5Ba,5Bbがそれぞれ有するIDT電極の個数は特に限定されない。
【0034】
第4の端子9と第2の縦結合共振子型弾性波フィルタ5Ba,5Bbとの間には、弾性波共振子S11が接続されている。第2の縦結合共振子型弾性波フィルタ5Ba,5Bbと第5の端子10との間においては、複数の弾性波共振子S12,S13が互いに直列に接続されている。複数の第2の縦結合共振子型弾性波フィルタ5Ba,5Bbは、弾性波共振子S11と弾性波共振子S12との間において、互いに並列に接続されている。
【0035】
図1に示すように、弾性波装置1は、第1,第2の圧電基板4A,4B上において、図2(a)及び図2(b)に示した回路に相当する電極構造を有する。第1,第2の圧電基板4A,4B上には、第1〜第5の端子6〜10及びグラウンド電位に接続される複数のグラウンド端子11が設けられている。第1の端子6と第2の端子7とは、第1の接続電極16aにより接続されている。なお、第1,第2の帯域通過型フィルタ2A,2B及び帯域阻止フィルタ3の電極構造及び回路構成は特に限定されない。
【0036】
図3は、図1中のI−I線に沿う部分に相当する、第1の実施形態における第1の帯域通過型フィルタの略図的断面図である。図4は、図1中のII−II線に沿う部分に相当する、第1の実施形態における第2の帯域通過型フィルタの略図的断面図である。
【0037】
図3に示されているように、第1の圧電基板4A上には、SiOからなる誘電体層13が設けられている。誘電体層13は、複数の第1のIDT電極を覆っている。より具体的には、図1に示した複数の弾性波共振子S1〜S3,P1a,P1b,P2a,P2b及び第1の縦結合共振子型弾性波フィルタ5Aを覆っている。これにより、LiNbOからなる第1の圧電基板4Aに構成されている第1の帯域通過型フィルタ2Aの温度特性を向上させることができる。
【0038】
なお、誘電体層13を構成する誘電体は、特に限定されない。
【0039】
他方、図4に示されているように、第2の圧電基板4B上には、誘電体層は設けられていない。
【0040】
図1において支持部材は省略されているが、第1の圧電基板4A上において、破線Aに示されている位置に支持部材が設けられている。支持部材は、第1の帯域通過型フィルタ2Aが構成されている部分を囲むように設けられている。図3に示されているように、支持部材14上には、カバー部材15が設けられている。第1の圧電基板4A、支持部材14及びカバー部材15により囲まれた中空空間が形成されている。
【0041】
同様に、第2の圧電基板4B上にも、図1に示した破線Bの位置に支持部材が設けられている。図4に示すように、第2の圧電基板4B、支持部材14及びカバー部材15により囲まれた中空空間が形成されている。
【0042】
図1に戻り、第1,第2の圧電基板4A,4B上には、複数のビア電極12が設けられている。複数のビア電極12の一方端部は、第1〜第5の端子6〜10及び各グラウンド端子11に接続されている。図3に示されているように、各ビア電極12は、支持部材14及びカバー部材15を貫通している。各ビア電極12の他方端部には、バンプ18が接続されている。第2の圧電基板上に設けられているビア電極も同様に、支持部材及びカバー部材を貫通しており、バンプに接続されている。
【0043】
このように、本実施形態では、第1,第2の帯域通過型フィルタはWLP構造を有する。なお、第1,第2の帯域通過型フィルタは、例えばCSPなどの、WLP構造以外のパッケージ構造を有していてもよい。
【0044】
次に、本実施形態と比較例とを比較することにより、本実施形態の効果を説明する。
【0045】
比較例は、第1の帯域通過型フィルタが帯域阻止フィルタに接続されていない点で、第1の実施形態と異なる。上記以外の点においては、比較例の弾性波装置は、第1の実施形態の弾性波装置1と同様の構成を有する。
【0046】
図5は、第1の実施形態及び比較例における第1の帯域通過型フィルタの減衰量周波数特性を示す図である。実線は第1の実施形態の結果を示し、破線は比較例の結果を示す。周波数帯域Cは、第1の帯域通過型フィルタの通過帯域を示し、周波数帯域Dは、第2の帯域通過型フィルタの通過帯域を示す。周波数帯域Eは、WiFi帯を示す。
【0047】
比較例においては、第1の帯域通過型フィルタの通過帯域の1.2倍の周波数帯域付近である、WiFi帯付近において、高次モードが発生している。この高次モードは、上記誘電体層が設けられていることにより発生する。
【0048】
これに対して、本実施形態では、高次モードを抑制できていることがわかる。第1の帯域通過型フィルタには帯域阻止フィルタが接続されている。帯域阻止フィルタは、それぞれ阻止帯域を形成している複数の並列腕共振子により構成されている。よって、帯域阻止フィルタは、複数の阻止帯域を有する。この各阻止帯域は、高次モードが発生する周波数付近に位置している。よって、高次モードを効果的に抑制することができる。このように、本実施形態では、誘電体層が設けられていることにより第1の帯域通過型フィルタの温度特性を向上させることができ、かつ高次モードを抑制することができる。従って、本実施形態の弾性波装置1は、CAなどに好適に用いることができる。
【0049】
なお、帯域阻止フィルタの構成は特に限定されず、帯域阻止フィルタは、少なくとも1個の阻止帯域を有していればよい。帯域阻止フィルタは、第1の帯域通過型フィルタにおいて発生する高次モードに応じて構成することができる。
【0050】
図2(a)に戻り、本実施形態では、帯域阻止フィルタ3は並列腕共振子3a,3bにより構成されている。それによって、帯域阻止フィルタ3の阻止帯域における減衰量をより一層大きくすることができる。よって、高次モードをより一層抑制することができる。さらに、帯域阻止フィルタ3の小型化を図ることができる。帯域阻止フィルタ3は、第2の圧電基板4Bに構成されている。従って、第2の圧電基板4B上における電極構造などの設計の自由度を高めることができる。
【0051】
第2の圧電基板4BはLiTaOからなる。よって、帯域阻止フィルタ3からの高次モードの発生を抑制することができる。従って、本実施形態の弾性波装置1は、CAなどにより一層好適に用いることができる。
【0052】
なお、第2の圧電基板4Bは、LiNbOからなっていてもよい。
【0053】
帯域阻止フィルタ3の第3のIDT電極における最短の電極指中心間距離は、第2の帯域通過型フィルタ2Bの複数の第2のIDT電極における最短の電極指中心間距離よりも短いことが好ましい。それによって、帯域阻止フィルタ3を小型にすることができる。よって、第2の圧電基板4B上における電極構造などの設計の自由度をより一層高めることができる。
【0054】
より好ましくは、複数の第1のIDT電極における最短の電極指中心間距離よりも複数の第2のIDT電極における最短の電極指中心間距離の方が短いことが望ましい。この場合には、第3のIDT電極の電極指中心間距離がより一層短いため、帯域阻止フィルタ3をより一層小型にすることができる。
【0055】
第2の帯域通過型フィルタ2Bが有するいずれの端子と第1の帯域通過型フィルタ2Aの第1の端子6との距離よりも、帯域阻止フィルタ3の第2の端子7と第1の端子6との距離の方が短い。これにより、上記第1の接続電極16aの長さを短くすることができる。よって、第1の帯域通過型フィルタ2Aと帯域阻止フィルタ3との間の寄生容量を小さくすることができる。従って、弾性波装置1の挿入損失の劣化が生じ難い。
【0056】
図6は、第2の実施形態における第1の帯域通過型フィルタ及び帯域阻止フィルタの回路図である。
【0057】
第2の実施形態は、帯域阻止フィルタ23が第1の帯域通過型フィルタ2Aに直列に接続されている点及び帯域阻止フィルタ23の構成が、第1の実施形態と異なる。上記の点以外においては、第2の実施形態の弾性波装置は、第1の実施形態の弾性波装置1と同様の構成を有する。
【0058】
帯域阻止フィルタ23は、第1の帯域通過型フィルタ2Aに接続されている直列腕共振子23aと、直列腕共振子23aとグラウンド電位との間に接続されている並列腕共振子23bとを有する。このように、帯域阻止フィルタ23は、ラダー型の構成を有していてもよい。この場合には、広い周波数帯域において、高次モードを抑制することができる。
【0059】
帯域阻止フィルタ23の阻止帯域は、直列腕共振子23aの反共振周波数と、並列腕共振子23bの共振周波数とにより形成されている。直列腕共振子23aの反共振周波数と並列腕共振子23bの共振周波数とは、一致していてもよく、あるいは隣接していてもよい。
【0060】
図7は、第3の実施形態に係る弾性波装置の電極構造を示す略図的平面断面図である。
【0061】
弾性波装置31は、第1,第2の圧電基板4A,4Bと異なる第3の圧電基板34Cを有し、第3の圧電基板34C上に帯域阻止フィルタ33が構成されている点において、第1の実施形態と異なる。上記の点以外においては、弾性波装置31は第1の実施形態の弾性波装置1と同様の構成を有する。
【0062】
より具体的には、第3の圧電基板34C上には、帯域阻止フィルタ33の並列腕共振子3a,3bに接続されている第2の端子7が設けられている。第3の圧電基板34C上には、並列腕共振子3a,3bに接続されており、かつグラウンド電位に接続されるグラウンド端子11も設けられている。第2の端子7は、第1の接続電極16aにより第1の端子6に接続されている。
【0063】
本実施形態においても、第1の帯域通過型フィルタ2Aの高次モードを抑制することができる。
【0064】
第3の圧電基板34Cは、LiTaOからなることが好ましい。それによって、第1の実施形態と同様に、帯域阻止フィルタ33からの高次モードの発生を抑制することができる。なお、第3の圧電基板34Cは、LiNbOからなっていてもよい。
【0065】
図8は、第4の実施形態に係る弾性波装置の電極構造を示す略図的平面断面図である。
【0066】
弾性波装置41は、第1の帯域通過型フィルタ2Aの第3の端子8と第2の帯域通過型フィルタ2Bの第4の端子9とが第2の接続電極46bにより接続されている点において、第1の実施形態と異なる。上記以外の点においては、弾性波装置41は、第1の実施形態の弾性波装置1と同様の構成を有する。
【0067】
本実施形態のように、第1,第2の帯域通過型フィルタ2A,2Bがアンテナに共通接続される場合においても、第1の帯域通過型フィルタ2Aの高次モードを効果的に抑制することができる。
【0068】
ここで、第2の帯域通過型フィルタ2Bが構成されている第2の圧電基板4Bは、LiTaOからなる。そのため、第2の帯域通過型フィルタ2Bの通過帯域よりも高域側においてバルク放射による応答が生じる。他方、第1の帯域通過型フィルタ2Aが構成されている第1の圧電基板4Aは、LiNbOからなる。よって、第1の帯域通過型フィルタ2Aの通過帯域よりも高域側にはバルク放射による応答は生じない。
【0069】
本実施形態では、第1の帯域通過型フィルタ2Aの通過帯域はBand25であり、第2の帯域通過型フィルタ2Bの通過帯域であるBand4よりも低域側に位置している。よって、第2の帯域通過型フィルタ2Bのバルク放射による応答が第2の接続電極46bを介して第1の帯域通過型フィルタ2A側に漏洩したとしても、第1の帯域通過型フィルタ2Aの通過帯域における挿入損失の劣化は生じ難い。加えて、第2の帯域通過型フィルタ2Bの通過帯域における挿入損失の劣化も生じ難い。
【0070】
帯域阻止フィルタ3は、第1の帯域通過型フィルタ2Aの端子の内、他の帯域通過型フィルタに接続されていない端子である第1の端子6に接続されていることが好ましい。それによって、帯域阻止フィルタ3から高次モードが発生したとしても、他の帯域通過型フィルタの挿入損失の劣化などが生じ難い。
【0071】
なお、帯域阻止フィルタ3は、第1の帯域通過型フィルタ2Aの端子の内、第1の端子6以外の端子に接続されていてもよい。
【0072】
図9に示す第4の実施形態の変形例のように、弾性波装置61は、第2の帯域通過型フィルタ62Bにより構成されている送信フィルタを有するデュプレクサであってもよい。第2の帯域通過型フィルタ62Bの構成は特に限定されないが、第2の帯域通過型フィルタ62Bはラダー型フィルタである。
【0073】
より具体的には、第2の帯域通過型フィルタ62Bは、第4の端子9と第5の端子10との間に互いに直列に接続されている複数の直列腕共振子S61〜S63を有する。直列腕共振子S61と直列腕共振子S62との間の接続点とグラウンド電位との間には、並列腕共振子P61が接続されている。直列腕共振子S62と直列腕共振子S63との間の接続点とグラウンド電位との間には、並列腕共振子P62が接続されている。直列腕共振子S63と第5の端子10との間の接続点とグラウンド電位との間には、並列腕共振子P63が接続されている。
【0074】
この場合においても、第1の帯域通過型フィルタ2Aにおいて発生する高次モードを抑制することができる。
【0075】
図10は、第5の実施形態に係る弾性波装置の模式図である。
【0076】
弾性波装置51は、第1,第2の帯域通過型フィルタ2A,2Bとアンテナ側において共通接続されている第3の帯域通過型フィルタ52Cを有する点で、第4の実施形態と異なる。上記以外の点においては、弾性波装置51は、第4の実施形態の弾性波装置41と同様の構成を有する。
【0077】
第3の帯域通過型フィルタ52Cの通過帯域は、特に限定されないが、本実施形態ではWiFi帯に位置している。
【0078】
本実施形態においても、第1の帯域通過型フィルタ2Aの高次モードを抑制することができる。なお、本実施形態では、第1の実施形態と同様に、WiFi帯付近における高次モードが抑制されている。よって、第1の帯域通過型フィルタ2Aに共通接続されている第3の帯域通過型フィルタ52Cの通過帯域における挿入損失の劣化が生じ難い。
【0079】
なお、第1,第2の帯域通過型フィルタ2A,2Bにアンテナ側において共通接続されている帯域通過型フィルタの個数は特に限定されない。
【符号の説明】
【0080】
1…弾性波装置
2A,2B…第1,第2の帯域通過型フィルタ
3…帯域阻止フィルタ
3a,3b…並列腕共振子
4A,4B…第1,第2の圧電基板
5A…第1の縦結合共振子型弾性波フィルタ
5Ba,5Bb…第2の縦結合共振子型弾性波フィルタ
6〜10…第1〜第5の端子
11…グラウンド端子
12…ビア電極
13…誘電体層
14…支持部材
15…カバー部材
16a…第1の接続電極
18…バンプ
23…帯域阻止フィルタ
23a…直列腕共振子
23b…並列腕共振子
31…弾性波装置
33…帯域阻止フィルタ
34C…第3の圧電基板
41…弾性波装置
46b…第2の接続電極
51…弾性波装置
52C…第3の帯域通過型フィルタ
61…弾性波装置
62B…第2の帯域通過型フィルタ
S1〜S3,S11〜S13,P1a,P1b,P2a,P2b…弾性波共振子
S61〜S63…直列腕共振子
P61〜P63…並列腕共振子
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10