(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
直流電源から供給される直流電力の高電位側に接続された第1スイッチング素子と第3スイッチング素子及び前記直流電力の低電位側に接続された第2スイッチング素子と第4スイッチング素子の4つスイッチング素子によって構成され、
前記高電位側と反対側の第1スイッチング素子と接続する第1出力端は、前記低電位側と反対側の第2スイッチング素子と接続し、前記高電位側と反対側の第3スイッチング素子と接続する第2出力端は、前記低電位側と反対側の第4スイッチング素子と接続し、
前記第1出力端及び前記第2出力端を介して、前記第1スイッチング素子から前記第4スイッチング素子までの各々に供給されるパルスにより、前記直流電力を変換して交流電力を出力する発振回路と、
前記発振回路から出力された前記交流電力を、受電装置の負荷に出力するために送出する送電アンテナと、
前記受電装置の要求電圧を示す規定値を保持するメモリと、
前記規定値との誤差を示す制御誤差情報を、前記受電装置から受信する受信回路と、
(1)前記第1スイッチング素子に供給されるパルスと前記第4スイッチング素子に供給されるパルスとの間の位相差Δθ及び前記第2スイッチング素子に供給されるパルスと前記第3スイッチング素子に供給されるパルスとの間の前記位相差Δθを、初期の位相差に設定し、
(2)前記発振回路から出力される交流電力の電圧の周波数を初期の周波数に設定し、
(3)前記発振回路から出力される交流電力の電圧の周波数を変更させ、前記受信した制御誤差情報を所定の範囲に収束させ、
(4)前記位相差Δθを変更し、前記発振回路を用いて前記発振回路から出力する前記交流電力の電圧を変更させ、前記受信した制御誤差情報を所定の範囲に収束させ、
(5)前記発振回路から出力される交流電力の電圧の周波数を変えて前記交流電力の伝送効率が最大となる交流電力の周波数を決定し、前記伝送効率を前記メモリに保持し、
現在の前記伝送効率が、前回の前記伝送効率よりも低くなるまで、前記(4)〜(5)を繰り返した後、前回の前記位相差および前回の前記周波数に設定し、前記交流電力を前記負荷に出力させる制御回路と、を具備した、
送電装置。
前記制御回路は、前記第2スイッチング素子に供給されるパルスの先頭に、前記第1スイッチング素子に供給されるパルスの反転パルスを供給し、前記第1スイッチング素子と前記第2スイッチング素子とが、一定時間、オフとなるデッドタイムを設け、
そして、前記第3スイッチング素子に供給されるパルスの先頭に、前記第4スイッチング素子に供給されるパルスの反転パルスを供給し、前記第3スイッチング素子と前記第4スイッチング素子とが、一定時間、オフとなるデッドタイムを設ける、
請求項1に記載の送電装置。
前記制御回路は、前記位相差Δθが発生している期間では、前記発振回路を用いて、前記第1スイッチング素子と前記第3スイッチング素子とを同時にオンさせるか、または、前記第2スイッチング素子と前記第4スイッチング素子を同時にオンさせるかのいずれか一方の指示をする、
請求項1または請求項2のいずれか1項に記載の送電装置。
直流電源から供給される直流電力の高電位側に接続された第1スイッチング素子と第3スイッチング素子及び前記直流電力の低電位側に接続された第2スイッチング素子と第4スイッチング素子の4つスイッチング素子によって構成され、
前記高電位側と反対側の第1スイッチング素子と接続する第1出力端は、前記低電位側と反対側の第2スイッチング素子と接続し、前記高電位側と反対側の第3スイッチング素子と接続する第2出力端は、前記低電位側と反対側の第4スイッチング素子と接続し、
前記第1出力端及び前記第2出力端を介して、前記第1スイッチング素子から前記第4スイッチング素子までの各々に供給されるパルスにより、前記直流電力を変換して交流電力を出力する発振回路と、
前記発振回路から出力された前記交流電力を、受電装置の負荷に出力するために送出する送電アンテナと、
前記受電装置の要求電圧を示す規定値を保持するメモリと、
前記規定値との誤差を示す制御誤差情報を、前記受電装置から受信する受信回路と、
を備えた送電装置において実行されるプログラムであって、
前記送電装置のコンピュータに対して、
(1)前記第1スイッチング素子に供給されるパルスと前記第4スイッチング素子に供給されるパルスとの間の位相差Δθ及び前記第2スイッチング素子に供給されるパルスと前記第3スイッチング素子に供給されるパルスとの間の前記位相差Δθを、初期の位相差に設定し、
(2)前記発振回路から出力される交流電力の電圧の周波数を初期の周波数に設定し、
(3)前記発振回路から出力される交流電力の電圧の周波数を変更させ、前記受信した制御誤差情報を所定の範囲に収束させ、
(4)前記位相差Δθを変更し、前記発振回路を用いて前記発振回路から出力する前記交流電力の電圧を変更させ、前記受信した制御誤差情報を所定の範囲に収束させ、
(5)前記発振回路から出力される交流電力の電圧の周波数を変えて前記交流電力の伝送効率が最大となる交流電力の周波数を決定し、前記伝送効率を前記メモリに保持し、
現在の前記伝送効率が、前回の前記伝送効率よりも低くなるまで、前記(4)〜(5)を繰り返した後、前回の前記位相差および前回の前記周波数に設定し、前記交流電力を前記負荷に出力させる処理と、を実行させるプログラム。
【発明を実施するための形態】
【0009】
(本開示の基礎となった知見)
本発明者らは、「背景技術」の欄において記載した無線電力伝送システムに関し、以下に述べる検討を行った。
【0010】
特許文献1のような共振磁界結合方式の無線電力伝送システムでは、高い伝送効率を維持するために、伝送経路上の各回路ブロックの入出力インピーダンスを予め整合させている。しかし、実際には、アンテナ周辺の環境が変化、即ち、送電および受電アンテナ間の配置関係が変化することによって、2つのアンテナのインピーダンスが変化してしまう。その結果、特許文献1では、最適な伝送効率となる周波数の変化に追従できない。また、特許文献1では、負荷のインピーダンスが変化した場合も、最適な伝送効率となる周波数の変化に追従できない。
【0011】
特許文献2は、電力伝送を行う際に、最適な伝送効率を与えるために、周波数をスイープして最適な周波数を決定する無線電力伝送システムを開示している。しかし、特許文献2は、伝送効率の調整を出力電力の周波数制御のみで行っている。
【0012】
また、伝送系のインピーダンスが変化するということは、無線電力伝送システムへの入力電圧が一定の場合には、出力電圧が変化することを意味する。このような場合の対応として、特許文献3は、軽負荷時はインバータの周波数を調整する周波数制御を行う電源システムを開示している。また、特許文献3は、出力電圧を一定にするために、定常時はインバータの制御パルスのオン時間比(以後、交流電圧の出力時間比と呼ぶ)を調整する。しかし、特許文献3は、出力電圧の調整を、出力電力の周波数制御のみで行うか、また、交流電圧の出力時間比を制御することのみで行っている。
【0013】
上記のように、特許文献2及び特許文献3のいずれも、出力電圧及び伝送効率の両方の調整を、出力電力の周波数制御及び交流電圧の出力時間比の制御の双方を用いて行うものではない。
【0014】
以下、出力電力の周波数を制御することのみで、出力電圧と伝送効率とを調整した場合の課題について、まず説明する。
【0015】
図1Aは、本開示の一態様の無線電力伝送システムの比較例における、送電装置から受電装置に供給する交流電力の周波数(伝送周波数)と、負荷に供給される電圧(出力電圧)との関係の例を示すグラフである。本例は、回路シミュレータを用いて解析したものである。上記無線電力伝送システムの構成は、後述する
図2Aと同様である。また、送電装置から受電装置に供給する交流電力を制御する制御回路は、特許文献2及び特許文献3と同様に、周波数制御のみを使用している。また、送電アンテナ及び受電アンテナの構成は、後述する
図6と同様である。
【0016】
送電アンテナの仕様として、例えば、インダクタンス値を40(mF)、周波数f0に対する抵抗値を1.86f0(mΩ)、共振コンデンサ容量を73(pF)とし、受電アンテナの仕様として、インダクタンス値を25.84(mF)、周波数f0に対する抵抗値を2.22f0(mΩ)、共振コンデンサ容量を750(pF)とした。次に、DC電源1030の直流電圧Vdcを12V、受電装置1020の目標電圧を5V、周波数スイープ範囲を110kHz〜140kHzとし、負荷のインピーダンスRLが5Ω、10Ω、20Ωの各場合における例を示している。
【0017】
このグラフに示されるように、出力電圧は負荷のインピーダンスおよび伝送周波数に依存して変化する。従って、負荷のインピーダンスが変化した場合には、出力電圧を一定にするため、伝送周波数を変化させるのがよい。例えば、図示される例において、負荷のインピーダンスが5Ω〜20Ωの範囲で変動する場合、出力電圧を5Vに維持するためには、伝送周波数を130kHz〜150kHzの範囲で変動させるのがよい。
【0018】
しかしながら、特許文献2及び特許文献3のように、出力電圧を一定に維持するために伝送周波数を変化させた場合、必ずしも伝送効率が最適化されない。
図1Bは、伝送周波数と伝送効率との関係の例を示すグラフである。
図1Bについて詳しく述べると、
図1Bは、
図1AにおけるRL=5Ωの場合における送電装置の伝送効率Eff_Tx、送受電アンテナの伝送効率Eff_RF、および全体の伝送効率Effを示している。このグラフに示されるように、伝送周波数が約110kHzのときに伝送効率が最大になり、130kHz〜150kHzの範囲では伝送効率が最大にならないことが分かる。
【0019】
このように、特許文献2及び特許文献3は、目標電圧5Vに対しては周波数130kHz〜150kHzの範囲がよいので、この範囲で伝送周波数を決めることになる。しかし、実際は、この伝送周波数130kHz〜150kHzでは伝送効率は最大より低くなってしまう。伝送周波数が約110kHzのときに伝送効率が最大である。
【0020】
以上により、周波数制御のみでは、負荷に一定電圧で出力することと伝送効率の高い周波数で伝送することを両立することが難しいことが分かる。
【0021】
次に、交流電圧の出力時間比のみで、出力電圧と伝送効率とを調整した場合は、交流電圧の出力時間比のみの調整で、出力電圧を調整することは可能であるが、負荷に一定電圧で出力することと、伝送効率の高い周波数で伝送することとを両立することは困難である。出力電圧を一定にした状態では、交流電圧の出力時間比を調整しても、出力電力の周波数も一定であるので、送電および受電アンテナ間の配置関係が変化した後に最適な伝送効率となる周波数に対応できない。
【0022】
本発明者らは、鋭意検討の結果、上記課題を見いだした。上記の課題は以下の理由によるものと考えられる。
【0023】
即ち、無線電力伝送システムは、2つの共振器(送電アンテナ及び受電アンテナ)を磁気的に共振結合することにより、振動エネルギを共振周波数で無線伝送している。そして、送電アンテナと受電アンテナとが共振している共振周波数付近では、送電受電時の電力ロスが最小となる。よって、伝送効率は、2つの共振器の共振周波数の付近(約110kHz)で最大となる。一方、負荷から要求される電圧は、機器(受電装置)により様々な電圧が要求される。従って、必ずしも、伝送効率が最大となる共振周波数の付近(約110kHz)の出力電圧は、受電装置が要求する電圧になるとは限らない。例えば、ある負荷、例えば、10Ωに対して、伝送効率が最大となる伝送周波数が1つ決まる。この場合、前記決定された伝送周波数は約110kHzである。
図1Aに示すように、この伝送周波数(約110kHz)に対応する負荷の出力電圧も1つ決まり、それは8Vであることが分かる。
【0024】
しかし、スマートフォン、タブレット端末、携帯電話または電気自動車といった非接触充電が可能な機器(受電装置)への充電の要求電圧は、様々である。例えば、スマートフォンが5Vを要求する場合、上述の8Vでは要求電圧より高い電圧になってしまう。その結果、スマートフォンの要求電圧(5V)をオーバしており、8Vの電圧の電力をスマートフォンに与えると、スマートフォンの回路が損傷してしまう虞がある。
【0025】
従って、上記課題は、送電及び受電アンテナの共振周波数付近で最大効率となる伝送周波数と、受電装置が要求する電圧の伝送周波数とが、一致していないために起こると考えられる。また、最大効率となる伝送周波数と、受電装置が要求する電圧の伝送周波数とが仮に一致していたとしても、アンテナ周辺の環境が変化、例えば、送電及び受電アンテナの距離が変化すると、送電アンテナ及び受電アンテナの共振周波数が変化し、伝送効率が最大となる伝送周波数が変化する。この場合、送電アンテナ及び受電アンテナの変化した後の共振周波数付近で伝送効率が最大となる。このため、伝送効率が最大となる伝送周波数と受電装置が要求する電圧の伝送周波数とにずれが生じてしまう。また、負荷が変動する場合も、アンテナ周辺の環境が変化する場合と同じで送電アンテナ及び受電アンテナの共振周波数が変化し、伝送効率が最大となる伝送周波数が変化する。そのため、伝送効率が最大となる伝送周波数と受電装置が要求する電圧の伝送周波数とにずれが生じてしまう。これらの場合も、上記の場合同様、受電装置の目標電圧になる伝送周波数に合わせると、伝送効率が最大の電力で伝送できない。一方、伝送効率が最大となる伝送周波数に合わせると、目標電圧にならない。
【0026】
上記課題も、送電アンテナ及び受電アンテナの共振周波数付近で最大効率となる伝送周波数と、受電装置が要求する電圧の伝送周波数とが、一致していないために起こると考えられる。
【0027】
よって、無線電力伝送システムの送電装置では、負荷が変動し、アンテナ周辺の環境が変化する場合でも、負荷に一定電圧を出力しながら、電力を高効率で伝送できることが望まれている。また、様々な受電装置の要求電圧を満たしながら、電力を高効率で伝送することが望まれている。
【0028】
以上の考察により、本発明者らは、以下の発明の各態様を想到するに至った。
【0029】
本開示にかかる送電装置の一態様は、
直流電源から供給される直流電力の高電位側に接続された第1スイッチング素子と前記直流電力の低電位側に接続された第2スイッチング素子とを有し、前記第1スイッチング素子と接続された第1出力端と前記第2スイッチング素子と接続された第2出力端を介して、前記直流電力から変換された交流電力を出力する発振回路と、
前記発振回路から出力された前記交流電力を、受電装置の負荷に出力するために送出する送電アンテナと、
前記受電装置の要求電圧、要求電流または要求電力の少なくとも1つを示す規定値を保持するメモリと、
前記受電装置の負荷に供給されている電圧、電流または電力の少なくとも1つを受信する受信回路と、
前記第1スイッチング素子と前記第2スイッチング素子とを用いて、前記発振回路の前記第1出力端の電圧と前記第2出力端の電圧とを同電位にする時間を変えて前記発振回路から出力される交流電力の電圧の出力時間比を変更し、
前記発振回路から出力される交流電力の電圧の周波数を変えて前記交流電力の効率が最大となる交流電力の周波数を決定し、
前記受信した電圧、電流または電力の少なくとも1つを前記規定値の範囲に収束させ、前記効率が最大の交流電力を前記負荷に出力する制御回路と、を備える。
【0030】
従来の送電装置においては、前記受信した電圧、電流または電力の少なくとも1つを、前記受電装置の要求電圧、要求電流または要求電力の少なくとも1つを示す規定値の範囲に収束させたとしても、効率が最大となる交流電力とはならない。一方、前記送電装置が前記受電装置に、効率が最大となる交流電力を出力としたとしても、前記送電装置が前記受電装置から受信した電圧、電流または電力の少なくとも1つは、前記受電装置の要求電圧、要求電流または要求電力の少なくとも1つを示す規定値の範囲外となってしまう。
【0031】
本態様によれば、効率が最大となる交流電力の周波数を決定しながら、前記送電装置が前記受電装置から受信した電圧、電流または電力の少なくとも1つを前記規定値の範囲に収束させるように、記送電装置発振回路から出力される交流電力の電圧の出力時間比を変更する。
【0032】
そのため、前記送電装置から出力され、効率が最大となる前記交流電力の周波数と、前記受電装置から要求される前記交流電力の電圧の周波数とが、一致しない状態であっても、前記送電装置が前記受電装置から受信した電圧、電流または電力の少なくとも1つを前記規定値の範囲に収束させ、前記受電装置で受電される前記交流電力の効率を最大とすることができる。
【0033】
以下、添付の図面を参照しながら、本開示のより具体的な実施形態を説明する。以下の説明において、同一または対応する要素には同一の参照符号を付している。
【0034】
(実施の形態1)
図2Aは、本開示の実施の形態1による無線電力伝送システムのハードウェア構成を示すブロック図である。本実施形態の無線電力伝送システムは、直流(DC)電源1030から入力される直流(DC)エネルギを交流エネルギに変換して出力する送電装置1000と、送電装置1000から出力された交流エネルギを無線で伝送する送受電アンテナ1010と、送受電アンテナ1010によって伝送された交流エネルギを直流エネルギに変換して負荷1040に供給する受電装置1020とを備えている。送受電アンテナ1010は、送電アンテナ1010aと受電アンテナ1010bとの対からなり、各アンテナは、コイルおよびコンデンサを含む共振回路によって構成される。送受電アンテナ1010は、共振磁界結合によって送電装置1000から出力された交流エネルギを無線で受電装置1020に伝送する。伝送された交流エネルギは、受電装置1020内の整流回路1021によって直流(DC)エネルギに変換され、負荷1040に供給される。
【0035】
送電装置1000および送電アンテナ1010aは、送電装置に搭載され、受電アンテナ1010b、受電装置1020、負荷1040は、受電装置に搭載され得る。受電装置は、例えばスマートフォン、タブレット端末、携帯端末などの電子機器、または電気自動車などの電動機械であり得る。送電装置は、受電装置に無線で電力を供給する充電器であり得る。負荷1040は、例えば二次電池であり、受電装置1020から出力された直流エネルギによって充電され得る。
【0036】
受電装置1020は、受電アンテナ1010bから伝送された交流エネルギを直流エネルギに変換して負荷1040に出力する整流回路1021と、負荷1040に出力する電圧および電流を検出する出力検出回路1022と、出力検出回路1022による検出結果を送電装置1000に伝達する通信回路1023とを有している。
【0037】
送電装置1000は、DC電源1030から入力された直流電圧および電流を検出する入力検出回路1002と、入力された直流エネルギを複数のスイッチング素子によって交流エネルギに変換する発振回路1001と、発振回路1001に含まれる複数のスイッチング素子にパルスを送出するパルス出力回路1007と、パルス出力回路1007にパルス生成指示を出す制御回路1009と通信回路1023からの信号を受信する受信回路1103とを有している。発振回路1001は、入力されたパルスに応じて導通状態を変化させる複数のスイッチング素子を有し、各スイッチング素子の導通状態を変化させることによって入力された直流エネルギを交流エネルギに変換することができる。受信回路1103は、通信回路1023から伝達される出力検出回路1022の検出結果、および入力検出回路1002の検出結果を受信し、制御回路1009へ出力する。制御回路1009は、伝達された出力検出回路1022の検出結果、および入力検出回路1002の検出結果に基づいて、発振回路1001から出力される電圧の周波数および出力時間比を決定する。ここで、電圧の「出力時間比」とは、1周期のうち、所定値(例えば最大振幅の数%〜20%程度)よりも大きい電圧が出力される時間の割合を意味し、前記時間以外の時間では送電アンテナ1010aの両端電圧を同じ電位で固定する。出力時間比及び、送電アンテナ1010aの両端電圧を同じ電位で固定することは、スイッチング素子に入力するパルスのデューティ比および位相の少なくとも一方を調整することによって制御され得る。本実施形態では、パルスの位相を調整することによって出力時間比を調整するとともに送電アンテナ1010aの両端電圧を同じ電位で固定するように制御する例を説明する。制御回路1009は、発振回路1001から出力される電圧の周波数および出力時間比が、決定した周波数および出力時間比にそれぞれなるように、パルス出力回路1007を制御する。より具体的には、決定した周波数および出力時間比に応じたパルスを各スイッチング素子に出力するようにパルス出力回路1007を制御する。
【0038】
このような構成により、本実施形態の無線電力伝送システムは、送電装置1000における出力特性を変化させて、負荷1040に供給する電圧を一定にするとともに、伝送効率を最大に近づけることができる。このため、負荷1040が例えば二次電池の場合において、充電量に応じてインピーダンスが変動したり、受電アンテナ1010bの位置がずれて系全体のインピーダンスが変動したとしても高効率な充電を持続することができる。
【0039】
なお、
図2Aでは、前記送電アンテナと前記受電アンテナと同じサイズを有するように描かれているが、本開示はこのような例に限られない。前記送電アンテナの方が前記受電アンテナよりも小型であってもよいし、その逆であってもよい。また、送受電コイル1010には、前記送電アンテナおよび前記受電アンテナの一方または両方が複数含まれていてもよい。無線電力伝送システムは、図示される構成要素以外の要素を備えていてもよい。
【0040】
以下、各構成要素をより詳細に説明する。
【0041】
図2Bは、
図2Aにおける制御回路1009が有する機能的な構成を示すブロック図である。
図2Aと共通する構成要素には同じ参照符号を付している。
図2Bには、制御回路1009によって実現される4つの機能ブロックが記載されている。具体的には、位相制御部1003、最適位相検出部1004、周波数制御部1005、最適周波数検出部1006である。制御回路1009は、例えばCPU(Central Processing Unit)と、メモリに格納されたコンピュータプログラムとの組み合わせによって実現され得る。CPUがコンピュータプログラムに記述された命令群を実行することにより、
図2Bに示す各機能ブロックの機能を実現する。あるいは、1つの半導体回路にコンピュータプログラムを組み込んだDSP(Digital Signal Processor等のハードウェアによって同様の機能が実現されてもよい。
【0042】
最適位相検出部1004は、通信回路1023から伝達された出力検出回路1022の検出結果と、入力検出回路1002の検出結果とに基づいて、負荷1040に出力される電圧を一定にする最適なパルスの位相を決定する。位相制御部1003は、最適位相検出部1004によって決定されたパルスの位相をパルス出力回路1007に通知する。一方、最適周波数検出部1006は、通信回路1023から伝達された出力検出回路1022の検出結果と、入力検出回路1002の検出結果とに基づいて、伝送効率を最大にする最適なパルスの周波数を決定する。周波数制御部1005は、最適周波数検出部1006によって決定された周波数をパルス出力回路1007に通知する。上記決定された周波数は、所定の周波数の幅で伝送効率が最大となる周波数を探索して決定しているので、厳密な意味では、上記周波数は伝送効率が最大となる周波数ではない場合も含まれる。あくまで伝送効率が最大付近(最大点を含む)の周波数である。また、上記伝送効率が最大となる周波数は、伝送効率の値が予め設定した閾値以上となった周波数であっても良い。
【0043】
上記実施の形態1では、通信回路1023は、出力検出回路1022の検出結果を最適位相検出部1004と最適周波数検出部1006に伝達している。
【0044】
ここで、受電装置1020と送電装置1000の通信について説明する。
図2Bに示すように、送電装置のいずれかの場所に受信回路1103を設けて、通信回路1023から出力検出回路1022の検出結果を受信回路が受信する。そして、受信回路が最適位相検出部1004と最適周波数検出部1006に検出結果を伝達してもよい。また、最適位相検出部1004と最適周波数検出部1006が受信回路を有していて、直接も検出結果を受信してもよい。
【0045】
受信装置1020が受信する情報は、
図15で説明される受電装置の要求電圧、要求電流または要求電力の要求値及びそれらの規定値、さらに規定値の範囲であってもよい。次に、要求値、要求値の規定値、及び規定値の範囲の例について述べる。例えば、スマ−トフォンの場合、負荷に対する目標電圧は、5Vである。そのときの許容される要求電圧の規定値は、例えば、±0.04V又は、−0.04V〜+0.04Vである。さらに、電圧の規定値の範囲は、例えば、5V±0.04V又は、4.96V〜5.04Vである。
【0046】
また、受信装置1020が受信する情報は、負荷に供給されている電圧、電流または電力の実測値であってもよい。また、受信装置1020が受信する情報は、
図15で説明される負荷に出力された交流電力の電圧、電流又は電力の誤差情報(要求値−実測値)であってもよい。
図2Bに示すように、上記受信回路が受信する情報は、送電装置のいずれかの場所に配置されたメモリに格納して、取り出して利用してもよい。また、上記受信回路が受信する情報少なくとも1つは、予め送電装置のメモリに格納していて、受電装置からの何らかの信号で、上記情報を取り出して利用してもよい。
【0047】
また、上記受電装置が送信する情報は、受電装置のいずれかの場所に配置されたメモリに、格納されていてもよい。
【0048】
パルス出力回路1007は、例えば公知のゲートドライバであり、位相制御部1003および周波数制御部1005から入力された位相および周波数の情報に基づき、発振回路1001の各スイッチング素子に入力するパルスを生成する。
【0049】
図3は、本実施形態における発振回路1001の構成を示すブロック図である。発振回路1001は、4つのスイッチング素子(S1〜S4)を有する。各スイッチング素子は、例えばMOSFET(Metal Oxide Semiconductor Field Effect Transistor)などの電界効果トランジスタによって実現され得る。
【0050】
スイッチング素子S1およびS3の片端は、配線によってDC電源1030の電圧の高い側と接続され、スイッチング素子S2およびS4の片端は、配線によってDC電源1030の電圧の低い側と接続されている。なお、この時に入力フィルタとして、DC電源1030とスイッチング素子の間にLC型またはCLC型フィルタが挿入されていてもよい。また、上記片端の意味は、スイッチング素子の入力端子のことである。
【0051】
スイッチング素子S1およびS2の間と、スイッチング素子S3およびS4の間とから延びる配線によって発振回路1001および送電アンテナ1010aは接続されている。パルス出力回路1007が各スイッチング素子のゲートにパルスを入力する(電圧を印加する)ことにより、各スイッチング素子を導通状態にすることができる。本明細書では、各スイッチング素子のゲートに電圧が印加され、電流が流れる状態を「オン」と呼び、電圧が印加されずに電流が流れない状態を「オフ」と呼ぶことがある。
【0052】
4つのスイッチング素子S1〜S4は、DC電源1030からの入力電圧と同じ極性の電圧を導通時に出力するスイッチング素子対(S1およびS4)と、入力電圧と逆の極性の電圧を導通時に出力するスイッチング素子対(S2およびS3)とによって構成される。スイッチング素子S1およびS4をオンにしている状態と、スイッチング素子S2およびS3をオフにしている状態とを周波数f0で交互に繰り返すことにより、入力された直流電圧を周波数f0の交流電圧に変換することができる。
【0053】
本実施形態における制御回路1009は、電力伝送中、各スイッチング素子に入力するパルスの周波数、および各スイッチング素子対を構成する2つのスイッチング素子に入力する2つのパルスの間の位相差(「位相ずれ値」と呼ぶこともある。)Δθを制御する。すなわち、ある時刻にスイッチング素子S1、S2に入力されるパルスの位相をそれぞれθ1、θ2とすると、スイッチング素子S1、S2に入力されるパルスの位相は、それぞれθ2−Δθ、θ1−Δθと表すことができる。最適位相検出部1004および位相制御部1003は、位相差Δθを、入力検出回路1002および出力検出回路1022のそれぞれの検出結果に応じて最適な値に変化させる。ここで、スイッチング素子S2のパルスは、典型的には、スイッチング素子S1のパルスに対して反転したパルスとし、スイッチング素子S2のパルスの位相は、スイッチング素子S1のパルスの位相に対して半周期ずれた位相に設定される。すなわち、θ2=θ1+180°に設定される。
【0054】
図4Aは、スイッチング素子S1〜S4の各々に入力されるパルスのタイミングを模式的に示す図である。パルス出力部1007は、スイッチング素子S1への出力パルスに対して、一定時間の同時オフ時間(「デッドタイム」と称する。)を設けた反転パルスをスイッチング素子S2に出力する。同様に、スイッチング素子S3への出力パルスに対して、前記一定時間の同時オフ時間を設けた反転パルスをスイッチング素子S4に出力するパルス出力部1007は、さらに、位相ずれ値Δθが0の場合に、スイッチング素子S1とスイッチング素子S4とを同時にオンにし、スイッチング素子S2とスイッチング素子S3とを同時にオンにするように各パルスを出力する。スイッチング素子S1およびS2に入力する2つのパルス間と、スイッチング素子S3およびS4に入力する2つのパルス間にデッドタイムを設ける理由は、パルスの立ち上がりおよび立ち下がりの瞬間にスイッチング素子S1およびS2、またはスイッチング素子S3およびS4が同時にオンになって、負荷短絡が生じてスイッチング素子が破壊されることを防止するためである。このため、
図4Aに示す例では、各パルスのデューティ比は50%よりも小さい値に設定されている。
【0055】
図5Aは、位相のずれがない場合(Δθ=0)におけるスイッチング素子S1〜S4にそれぞれ印加されるパルス電圧Vgs1〜Vgs4、発振回路1001から出力される電圧Va、および電圧Vaを正弦波に変換したときの電圧Vouの波形の例を示す図である。
図5Bは、位相が90度ずれている場合(Δθ=90°)におけるこれらの電圧の波形の例を示す図である。これらの図に示されるように、位相ずれ値Δθを0よりも大きくすることにより、発振回路1001から出力される出力時間比が小さくなり、それにともなって、出力される交流電圧の振幅を小さくすることができる。
【0056】
この時、位相ずれ値Δθの期間は、スイッチング素子S1とS3が同時にオンしているか、スイッチング素子S2とS4が同時にオンしている状態になっており、その結果、送電アンテナ1010aの両端電圧はスイッチング素子S1とS3が同時にオンしている場合には、DC電源1030の高いほうの電圧に固定され、またスイッチング素子S2とS4が同時にオンしている場合には、DC電源1030の低いほうの電圧に固定される。
【0057】
これにより、すべてのスイッチング素子をオフすることで前記出力時間比を小さくする場合に比べて、送電アンテナ1010aの両端電圧が不定状態にならないため、還流電流の発生を抑えることができる。
【0058】
なお、ここではスイッチング素子S1とS4、スイッチング素子S2とS4への制御パルスの位相にずれを与える方式で説明したが、
図4Bに示すように制御パルスをスイッチング素子S1とS3の対、スイッチング素子S2とS4の対で同じデューティ比であり、かつスイッチング素子S1とS2の対、スイッチング素子S3とS4の対でデッドタイムを加えて互いに位相が反転するように与えることで、送電アンテナ1010aの両端電圧をDC電源1030の電圧の低い側に固定する時間を設ける方式で実現してもよい。また、
図4Bでは、スイッチング素子S1とS3の対のデューティ比がスイッチング素子S2とS4の対のデューティ比よりも小さくなるような例で説明したが、逆に大きくなるようにして、送電アンテナ1010aの両端電圧をDC電源1030の電圧の高い側に固定する時間を設けるようにしてもよい。
【0059】
続いて、送電アンテナ1010aおよび受電アンテナ1010bの構成例を説明する。
【0060】
送電アンテナ1010aおよび受電アンテナ1010bは、共振磁界結合によって非接触で周波数f0の高周波電力を伝送することができる。受電アンテナ1010bは、送電アンテナ1010aに接触しておらず、送電アンテナ1010aから例えば数ミリメートル〜数十センチメートル程度離間している。伝送される高周波電力の周波数(伝送周波数)f0は、例えば50Hz〜300GHzの範囲に設定され得る。伝送周波数は、20kHz〜10GHzの範囲内に設定されてもよく、20kHz〜20MHzの範囲内に設定されてもよく、20kHz〜1MHzの範囲内に設定されてもよい。
【0061】
本実施形態の無線電力伝送システムにおける「アンテナ」は、放射電磁界の送受信を行うための通常のアンテナではなく、共振器の電磁界の近傍成分(エバネッセント・テール)の結合を利用して2つの物体間でエネルギー伝送を行うための要素である。共振磁界を利用した無線電力伝送によれば、電磁波を遠方に伝搬させるときに生じるエネルギー損失(放射損失)が生じないため、極めて高い効率で電力を伝送することが可能である。このような共振電磁界(近接場)の結合を利用したエネルギー伝送では、ファラデーの電磁誘導の法則を利用した公知の無線電力伝送に比べて損失が少ないだけではなく、例えば数メートルも離れた2つの共振器(アンテナ)間で高効率にエネルギーを伝送することが可能になる。
【0062】
このような原理に基づく無線電力伝送を行うには、2つの共振アンテナ間で結合を生じさせるのがよい。このため、送電アンテナ1010aおよび受電アンテナ1010bの共振周波数は、伝送周波数f0に実質的に同一の周波数に設定される。ただし、これらの共振周波数が伝送周波数と完全に一致しなくてよい。
【0063】
一般に、固有の共振周波数を有する二つの共振器が電気的に結合した場合、共振周波数が変化することが知られている。仮に2つの共振器の共振周波数が同一であったとしても、上記結合により共振器対としての共振周波数は2つの周波数に分離する。結合共振器対が示す2つの共振周波数の内、周波数が高いものを偶モードの共振周波数(fH)、周波数が低いものを奇モードの共振周波数(fL)と呼ぶ。このとき、共振器間の結合係数kは、以下の式1で表される。
【0064】
k=(fH2−fL2)÷(fH2+fL2) ・・・(式1)
結合が強いほど、kは大きい値となり、2つの共振周波数の分離量が増大する。本実施形態では、kの値は比較的低い値、例えば、0.1<k<0.5、ある例では0.2<k<0.4の範囲内に設定され得る。kの値は0.5を超えてもよいが、kの値を0.5よりも小さい値に設定することにより、送受アンテナ間の距離の増大や、送受アンテナ間のサイズの非対称性などの影響を受けにくいという、共振磁界結合方式ならではの効果を得ることができる。
【0065】
各アンテナを構成する共振器のQ値は、システムが要求するアンテナ間電力伝送の伝送効率、及び結合係数kの値にも依存するが、例えば数十〜100、ある例では100よりも大きい値に設定され得る。
【0066】
図6は、送電アンテナ1010aおよび受電アンテナ1010bの等価回路の例を示す図である。
図6に示す例では、送電アンテナ1010aは、インダクタ1011aおよびコンデンサ1012aが直列に接続された直列共振回路である。受電アンテナ1010bは、インダクタ1011bおよびコンデンサ1012bが並列に接続された並列共振回路である。送電アンテナ1010aおよび受電アンテナ1010bは、寄生抵抗も有している。送電アンテナ1010aおよび受電アンテナ1010bは、図示される例に限らず、直列共振回路および並列共振回路のいずれであってもよい。
【0067】
なお、本実施形態では、送受電アンテナ1010は、共振磁界結合によって電力を伝送するが、従来の電磁誘導方式によって電力を伝送してもよい。その場合、これらのアンテナの結合係数は、1に近い値に設定される。
【0068】
続いて、本実施形態における制御回路1009による制御方式を説明する。本実施形態では、以下の2種類の制御方式のいずれかを採用することができる。
【0069】
<制御方式1:位相制御⇒周波数制御>
まず、本実施形態における制御方式の第1の例を説明する。
【0070】
図7は、本制御方式の処理を示すフローチャートである。DC電源1030から直流(DC)エネルギを受けると、送電装置1000における入力検出回路1002は、DC電源1030から入力される電圧および電流を検出し、検出結果を最適位相検出部1004および最適周波数検出部1006に出力する。位相制御部1003および周波数制御部1005は、それぞれ、予め決められた初期の周波数と位相ずれ値を示す情報をパルス出力部1007に出力する。これに基づいて、パルス出力回路1007は、発振回路1001の各スイッチング素子のゲートに、当該周波数および位相ずれ値を有する発振制御パルスを出力する(初期伝送)。これにより、発振回路1001は、DC電源1030から供給された直流エネルギを交流エネルギに変換し、送受電コイル1010を通じて受電装置1020に送出する(ステップS301)。
【0071】
続いて、最適位相検出部1004は、受電装置1020との間で通信が確立しているか否かを判断する(ステップS302)。通信の確立は、後述するように、受電側の通信回路1023から出力検出回路1022による検出結果が伝達されたか否かによって判断される。通信が確立していない場合、位相制御部1003および周波数制御部1005は、パルス出力回路1007にパルスの出力を停止させる(ステップS303)。その後、所定時間が経過するまで待機し(ステップS304)、所定時間経過後、再びステップS301に戻る。
【0072】
ステップS302において通信が確立していると判断した場合、最適位相検出部1004および最適周波数検出部1006は、通信回路1023から受電装置における出力電圧および電流についてのフィードバックを受ける(ステップS305)。具体的には、DC電源1030から発振回路1001および送受電アンテナ1010を介して送られてきたエネルギを受電装置1020が受けると、まず、出力検出回路1022が、負荷1040に供給される電圧および電流を検出し、その検出結果を通信回路1023に出力する。通信回路1023は、出力検出回路1022による検出結果を最適位相検出部1004および最適周波数検出部1006に伝達する。
【0073】
この時の伝達方法としては、例えば、整流回路1021の出力端に負荷インピーダンスを変動させるスイッチを設け、発振回路1001とは十分に異なる周波数でそのスイッチをオン/オフさせる方法がある。すなわち、負荷に対して並列に抵抗や容量を入れて、その結線の導通を切り替えることで負荷インピーダンスを変化させる。負荷インピーダンスの変化により、送電装置1000の入出力も変動するため、スイッチをオン/オフさせることにより、出力検出回路1022の検出結果を周波数変調して情報として送電装置1000に伝達することができる。送電装置1000では、スイッチのオン/オフによって生じる送電アンテナ1010aの両端電圧の変動や、発振回路1001の入力端に発生する電流量の変化を検出し、検出結果を復調することによって伝達された情報を読み取ることができる。情報の伝達方法は上記の方法に限らず、NFC(Near Field Communication)やWireless LANなどのまったく別の通信方法によって情報を送信してもよい。
【0074】
このような方法により、最適位相検出部1004は、ステップS302において、通信が確立しているか否かを判断できる。すなわち、受電側からの情報を復調できたとき、通信が確立したと判断する。逆に、受電側からの情報を復調できなかったとき、通信が確立していないと判断する。
【0075】
受電装置からのフィードバックを受けた後、最適位相検出部1004は、負荷1040に出力される電圧が規定値の範囲内か否かを判定する(ステップS306)。
【0076】
通信が確立したとき、上述のメモリに格納されている目標電圧と許容される電圧の規定値の範囲の情報は、通信回路から送電回路の受信回路に送信される。そして、負荷に対する目標電圧と許容される電圧の規定値の範囲の情報が、送電回路のいずれかに配置されているメモリに格納される。なお、負荷に対する目標電圧と許容される電圧の規定値の範囲は、受電回路から送電回路に送られるとしたが、予め、送電回路内のいずれかのメモリに格納されているものとしてもよい。
【0077】
この判定は、不図示のメモリなどの記録媒体に予め格納されたテーブルを参照して行われる。本実施形態では、記録媒体に、負荷1040のインピーダンス、伝送周波数、および位相ずれ値に対応する出力電圧の変化を示すテーブルが格納されている。また、後述するステップS309において参照される、負荷1040のインピーダンスおよび伝送周波数に対応する伝送効率を示すテーブルも同様に格納されている。
図8、9は、そのようなテーブルの一例を示している。このようなテーブルが、送電側の入力電圧の値ごとに予め実験やシミュレーションに基づいて作成される。なお、
図8、9に示すテーブルは、1つのテーブルに統合されていてもよいし、さらに細分化されていてもよい。最適位相検出部1004は、
図8に示すようなテーブルを参照することにより、通信回路1023から伝達された出力電圧および出力電流の値と、入力検出回路1002によって検出された入力電圧の値とに基づいて、最適な位相ずれ値を検出する。最適位相検出部1004は、まず、受電側で検出された出力電圧と、予め設定された出力すべき目標電圧との差を算出し、その差が所定の範囲内か否かを判断する(ステップS306)。その差が所定の範囲内であれば、最適周波数検出部1006へ処理を移行させる。また、その差が所定値の範囲外であれば、位相ずれ値を変更する処理を行う(ステップS307)。このとき、最適周波数検出部1006は、出力電圧・電流値から算出した負荷インピーダンス値と、上記電圧の差と、上記のテーブルとに基づき、位相ずれ値の変化幅Δθ’を決定し、その情報を位相制御部1003に出力する。ここで、現在の出力電圧値が目標電圧値よりも高い場合には、Δθ’は正の値、低い場合には、Δθ’は負の値となる。
【0078】
位相制御部1003は、前記位相ずれ値の変化幅Δθ’と現在の位相ずれ値Δθtとから新しい位相ずれ値(Δθt+Δθ’)を求め、その情報をパルス出力部1007に出力する。パルス出力部1007は、新しい位相ずれ値(Δθt+Δθ’)に対応する発振制御パルスを発振回路1001に入力する。具体的には、スイッチング素子S3、S4に入力するパルスの位相が、スイッチング素子S1、S2に入力するパルスの位相に比べ、それぞれ(Δθt+Δθ’)だけずれるように、各パルスの位相を変更する。その後、ステップS305に戻り、ステップS306において、最適位相検出部1004が、出力電圧と目標電圧値との差が所定の範囲内であると判定するまで、位相ずれ値を変更する処理が行われる。
【0079】
なお、本説明では、位相ずれ値をテーブルに基づき決定するとしたが、テーブルで格納せずに、目標値との差分に対する変化式として表現され、前記変化式から求めることとしても良い。また、さらに位相ずれ値の変化幅Δθ’を事前に設定された一定値として位相ずれ値を求めることとしても良い。
【0080】
ステップS306において、最適位相検出部1004が、出力電圧が規定値の範囲内にあると判定すると、最適周波数検出部1006は、伝送効率がピーク値に達したか否かを判定する(ステップS308)。送電装置100は、負荷インピーダンス値と周波数に対応する伝送効率のテーブル(
図9)と、周波数を変化させる前の伝送効率とを記憶保持するメモリを有している。最適周波数検出部1006は、通信回路1023からの入力と入力電力検出回路1002からの入力とを受けて、両者の電力の比を計算することによって現在の伝送効率を算出し、メモリに記憶保持された前回の伝送効率と比較する。比較した結果、現在の伝送効率が前回の伝送効率よりも高い場合は、まだピーク値には達していないと判断し、周波数を変更する処理を行う(ステップS309)。具体的には、最適周波数検出部1006は、負荷インピーダンス値と伝送周波数に対応する伝送効率のテーブルに基づいて周波数の変化幅を決定し、その結果を周波数制御部1005に出力する。周波数制御部1005は、決定された周波数の変化幅と現在の周波数とから新しい周波数を求め、パルス出力部1007に通知する。パルス出力部1007は、新しく決定された周波数の発振制御パルスを発振回路1001に出力する。このようにして、新しい周波数で発振した結果、受電装置1020の出力電圧が変化する。このため、再度ステップS305〜S307の処理を行い、最適位相ずれ検出部1004と位相制御部1003によって、出力電圧が目標電圧値に近づくように位相ずれ値を調整する。その後、ステップS308において、最適周波数検出部1006が、新規の伝送効率が前回の伝送効率よりも低くなり、ピークを迎えたと判断するまで、周波数制御と位相制御とが繰り返される。このようにして、最適周波数検出部1006は、伝送効率のピーク点を検出し、同時に最適位相検出部1004によって、受電装置1020の出力電圧を目標電圧値に近づけることができる。最終的に新規の伝送効率が前回の伝送効率よりも低くなると(ステップS308におけるYes)、位相制御部1003および周波数制御部1005は、それぞれ前回の位相ずれ値および前回の周波数をパルス出力部1007へ通知し、パルス出力部1007は、その周波数および位相ずれ値に応じたパルスを出力して伝送を継続する(ステップS310)。このようにして、最適周波数検出部1006は、伝送効率が最も高くなる周波数を検出し、同時に最適位相検出部1004は、受電装置1020の出力電圧を目標電圧値にする位相差を検出することができる。これにより、受電側の目標電圧値を維持しながら伝送効率を高く維持することが可能である。
【0081】
<制御方式2:周波数制御⇒位相制御>
次に、本実施形態の制御方式の第2の例を説明する。
図10は、本制御方式の処理を示すフローチャートである。本制御方式では、上記第1の例におけるステップS306〜S309の代わりに、ステップS406〜S410が行われる点を除いて、上記第1の例と共通である。このため、第1の例と異なる点を中心に説明する。本制御方式では、周波数制御を行った後、位相制御が行われる点が第1の例と異なっている。
【0082】
上記第1の例と同様に、ステップS301における初期伝送が行われた後、ステップS302〜S305の処理を経て、最適周波数検出部1006は、現在の伝送効率がピーク値に達したか否かを判断する(ステップS406)。具体的には、通信回路1023からの入力と入力電力検出部1002からの入力を受けて、両者の電力の比を計算することにより、現在の伝送効率を算出し、メモリに記憶保持された値と比較する。比較した結果、新しい伝送効率が前回の伝送効率よりも高い場合は、周波数を変更する処理を行う(ステップS407)。この際、最適周波数検出部1006は、負荷インピーダンス値と伝送周波数に対応する伝送効率のテーブル(
図8)を参照して周波数の変化幅を決定し、その情報を周波数制御部1005に出力する。周波数制御部1005は、決定された周波数の変化幅と現在の周波数とから新しい周波数を求め、パルス出力部1007に通知する。パルス出力部1007は、通知された新しい周波数に応じた発振制御パルスを発振回路1001に入力する。その後、再びステップS305に戻り、ステップS406において、新規の伝送効率が前回の伝送効率よりも低くなったことを最適周波数検出部1006が検出するまで、同様の周波数制御が繰り返される。このようにして、最適周波数検出部1006は、伝送効率のピーク点をとる伝送周波数を決定する。
【0083】
ステップS406において伝送効率のピーク点をとる伝送周波数が決定されると、最適位相検出部1004は、出力電圧が規定値の範囲内か否かを判定する(ステップS408)。上記第1の例と同様、通信回路1023から入力された出力電圧と、出力すべき所定の目標電圧との差を算出し、その差が所定値の範囲であれば、出力電圧が規定値の範囲内であると判定する。このとき、位相制御部1003および周波数制御部1005は、現在の位相ずれ値と周波数をパルス出力部1007へ出力し、伝送を継続する(ステップS310)。一方、出力電圧と目標電圧との差が所定値の範囲外であれば、位相ずれ値を変更する処理を行う(ステップS409)。具体的には、出力電圧・電流値から算出した負荷インピーダンス値と、上記電圧の差と、
図8に示すテーブルとに基づき、位相ずれ値の変化幅を決定し、その情報を位相制御部1003へ出力する。位相制御部1003は、位相ずれ値の変化幅と現在の位相ずれ値とから新しい位相ずれ値を求め、その情報をパルス出力部1007に出力する。パルス出力部1007は、新たに決定された位相ずれ値に応じた発振制御パルスを発振回路1001に出力する。その後、最適位相検出部1004は、再度、受電装置1020における出力電圧および電流を通信回路からフィードバックし(ステップS410)、ステップS408の判定処理を行う。最適位相検出部1004は、現在の出力電圧と目標電圧値との差が上記所定値の範囲になるまで、位相ずれ値を変化させる制御を行う。
【0084】
以上のように、本制御方式では、まず最適周波数検出部1006が伝送効率のピーク点をとる伝送周波数検出し、次に最適位相検出部1004が、受電装置1020の出力電圧を目標電圧値に近づける位相ずれ値を検出する。これにより、伝送効率と定電圧出力とを両立できる。
【実施例1】
【0085】
次に、無線電力伝送システムの上記の制御方式の実施例1について説明する。本実施例では、回路シミュレータを用いて、上記制御を行う回路モデルを用いて伝送効率の変化を比較することにより、本開示の実施形態の効果を検証した。本実施例では、実施形態1と同様の構成を採用し、送電アンテナの仕様として、インダクタンス値を40(mF)、周波数f0に対する抵抗値を1.86f0(mΩ)、共振コンデンサ容量を73(pF)とし、受電アンテナの仕様として、インダクタンス値を25.84(mF)、周波数f0に対する抵抗値を2.22f0(mΩ)、共振コンデンサ容量を750(pF)とした。次に、DC電源1030の直流電圧Vdcを12V、受電装置1020の目標電圧を5V、周波数スイープ範囲を110kHz〜140kHz、負荷インピーダンスを5Ω、10Ω、20Ωとした。
【0086】
図11Aは、負荷5Ω時の伝送周波数と位相ずれ値に対する伝送効率の変動を示すグラフである。同様に
図11B、
図11Cに、それぞれ、負荷10Ω時、負荷20Ω時のグラフを示す。
【0087】
図11A〜11Cに示すように、実施形態1の制御を行った場合のシステム全体の伝送効率は、周波数のみでの制御(位相ずれ0度の場合)よりも、負荷5Ω、負荷10Ω、負荷20Ω時でそれぞれ最大で約4.6%、約2.9%、約1%向上した。
図11A〜11Cに示すように、本開示の実施形態による制御の効果は、顕著であることがわかった。
【0088】
本開示の実施の形態1の変形例について説明する。
【0089】
図12は、発振回路の構成を変更した例を示すブロック図である。この例では、発振回路が4つではなく2つのスイッチング素子を有し、制御回路が2つのパルス間の位相差(位相ずれ値)を制御する代わりに各パルスのデューティ比を制御する点が実施の形態1とは異なっている。その他の構成については、実施の形態1と同様である。
【0090】
図12の発振回路1101は、2つのスイッチング素子S1、S2と、2つのコンデンサC1、C2とを有している。2つのスイッチング素子S1、S2のペア、および2つのコンデンサC1、C2のペアは、DC電源1030に対して並列に接続されている。スイッチング素子S1およびS2の間と、コンデンサC1、C2の間とから延びる配線によって発振回路1001および送電アンテナ1010aは接続されている。パルス出力回路1007が各スイッチング素子のゲートにパルスを交互に入力することにより、直流電力が交流電力に変換される。
【0091】
図2の制御回路1209は、実施の形態1における最適位相検出部1004および位相制御部1003の代わりに、最適デューティ検出部1204およびデューティ制御部1203を備えている。これらの要素が、スイッチング素子S1、S2に入力するパルスのデューティ比を変化させることによって発振回路1001から出力される電圧の出力時間比を変化させる。これにより、負荷の出力電圧を一定に近づけることができる。
【0092】
実施の形態1の制御では、例えば
図7におけるステップS307または
図10におけるステップS409の代わりに、パルスのデューティ比を変更する処理が行われる。このため、
図8に示すテーブルにおける位相ずれ値の代わりにデューティ比の変化量を記録したテーブルが予め用意される。このような制御により、実施形態1と同様に、出力電圧を一定に維持しながら、高い伝送効率を維持することができる。
【0093】
なお、実施の形態1のような4つのスイッチング素子を用いた構成においても、位相制御の代わりにデューティ制御を行ってもよい。また、位相制御とデューティ制御とを併用してもよい。但し、デューティ制御を行う場合には、すべてのスイッチング素子がオフの状態の際に発生する還流電流によるノイズを低減するために、デューティ比が45%以上の範囲内になるように行うことが望ましい。位相制御とデューティ制御を併用する場合においても同様の理由で位相制御の比率を高くすることが望ましい。さらに、スイッチング素子の数は2個や4個に限られず、さらに多くのスイッチング素子を設けてもよい。本開示の無線電力伝送システムは、送電装置に入力される電圧および電流と、受電装置から出力される電圧および電流とに基づいて、発振回路から出力される電圧の周波数および出力時間比を調整するパルス制御を行う限り、どのように構成されていてもよい。
【0094】
(実施の形態2)
<制御方式3>
次に、実施の形態2について説明する。本開示の実施形態の制御方式は第3の例となる。実施の形態1では、受電装置1020からフィードバックされる情報は、負荷1040に対する出力電圧及び電流の値としていた。しかし、予め設定された出力電圧及び電流値と出力検出回路が検出した値の差(誤差の値)をフィードバックされる情報としてもよい。実施の形態2では、誤差の値をフィードバックする場合の例で説明する。
【0095】
図13は、本実施の形態の概略的な構成要素を示すブロック図であり、
図2Aと共通する構成要素には同じ参照符号を付している。
図13には、制御回路1009によって実現される4つの機能ブロックが記載されている。具体的には、制御誤差判定部1105、最適制御判定部1106、周波数制御部1005、および位相制御部1003である。制御回路1009は、例えばCPU(Central Processing Unit)と、メモリに格納されたコンピュータプログラムとの組み合わせによって実現され得る。CPUがコンピュータプログラムに記述された命令群を実行することにより、
図513に示す各機能ブロックの機能を実現する。あるいは、1つの半導体回路にコンピュータプログラムを組み込んだDSP(Digital Signal Processor)等のハードウェアによって同様の機能が実現されていてもよい。
【0096】
制御誤差判定部1105は、受信回路1103から伝達された制御誤差情報が示す誤差の値が所定の範囲内にあるか否かを判定する。最適制御判定部1106は、制御誤差判定部1105の判定結果と入力検出回路1002の検出結果とに基づいて、負荷に入力される電圧を所望の値に維持し、かつ、伝送効率を最大に近づける最適なパルスのタイミングを決定する。具体的には、出力するパルスの周波数および位相ずれ量を決定し、それらの情報を、周波数制御部1005および位相制御部1003にそれぞれ送信する。位相制御部1003および周波数制御部1005は、最適制御判定部1106から送られた情報に基づいてパルス出力回路1007を駆動する。
【0097】
パルス出力回路1004は、例えば公知のゲートドライバであり、位相制御部1003および周波数制御部1005からそれぞれ入力された位相ずれ量および周波数の情報に基づき、発振回路1001の各スイッチング素子に入力するパルスを生成する。
【0098】
パルス出力回路1007は、DC電源1030から入力される電流および電圧の少なくとも一方を検出する。DC電源1030が定電圧源である場合には、入力検出回路1002は、少なくとも電流を検出するように構成され得る。DC電源1030が定電流源である場合には、入力検出回路1002は、少なくとも電圧を検出するように構成され得る。これにより、送電装置1000の消費電力が最小に近づくようにパルス出力回路1007から発振回路1001の各スイッチング素子に入力されるパルスを制御することが可能となる。以下の説明では、DC電源1030は定電圧源であるものとする。
【0099】
図14Aは、受電装置1020における出力検出回路1022の構成例を示す図である。この例では、出力検出回路1022は、出力電圧検出回路1022aによって実現されている。出力電圧検出回路1022aは、負荷1040に供給される電圧を検出して、誤差算出回路1024に検出結果を出力する。誤差算出回路1024は、検出された電圧と、受電装置1020が要求する所定の電圧との差分を示す制御誤差情報を生成する。
【0100】
通信回路1023は、その制御誤差情報を送電装置1000内の受信回路1103へ伝達する。
【0101】
なお、
図14Aに示す例では、負荷に供給される電圧に基づいて制御誤差情報を算出しているが、電流や電力に基づいて制御誤差情報を算出してもよい。
図6B14Bは、受電装置1020における出力検出回路1022の他の構成例を示す図である。この例では、出力検出回路1022は、出力電流検出回路1022bによって実現されている。出力電流検出回路1022bは、負荷1040に供給される電流を検出し、検出結果を誤差算出回路1024に出力する。誤差算出回路1024は、検出された電流と、受電装置1020が要求する所定の電流との差分を示す制御誤差情報を生成する。通信回路1023は、その制御誤差情報を送電装置1000内の受信回路1103へ送信する。
【0102】
図14Cは、受電装置1020における出力検出回路1022の他の構成例を示す図である。この例では、出力検出回路1022は、出力電圧検出回路1022aおよび出力電流検出回路1022bによって実現されている。出力電圧検出回路1022aおよび出力電流検出回路1022bは、負荷1040に供給される電圧および電流をそれぞれ検出し、検出結果を誤差算出回路1024にそれぞれ出力する。誤差算出回路1024は、検出された電圧および電流の情報から電力を算出し、その電力と受電装置1020が要求する所定の電力との差分を示す制御誤差情報を生成する。通信回路1023は、その制御誤差情報を送電装置1000内の受信回路1103に伝達する。
【0103】
受電装置1020における送信回路1023から送電装置1000における受信回路1003への情報の伝達方法は、これまで説明した実施の形態1と同様の方式でよいので、ここでは説明を割愛する。
【0104】
制御誤差情報は、例えば下記の演算によって求めることができる。
【0105】
(制御誤差情報の値)=(要求値)−(検出値)
ここで、検出値は、受電装置1020が受け取った交流エネルギを直流エネルギに変換した後、負荷1040に入力される電圧、電流、または電力の値である。要求値は、受電装置1020が要求する電圧、電流、または電力の値である。制御誤差情報が正の値ならば、受電装置1020の要求に対して供給が不足していることを示し、負の値ならば過剰供給を示し、制御誤差が0ならば、適切な供給量であることを示す。制御誤差情報の値の決め方は上記の例に限定されず、検出値と要求値との差分を示す情報であればよい。これは、差分そのものを示す数値に限らず、差分から換算される数値であってもよい。
【0106】
上記のように、出力検出回路1022は、負荷1040に与えられる電圧および負荷1040を流れる電流の少なくとも一方を検出するように構成されていればよい。ここで、「負荷1040に与えられる電圧」とは、負荷1040に直接入力される電圧のみならず、その電圧に連動して変化する電圧であってもよい。同様に、「負荷1040を流れる電圧」とは、負荷1040に直接流れる電流のみならず、その電流に連動して変化する電流であってもよい。例えば、整流回路1021と負荷1040との間に不図示の回路素子や分岐点がある場合、それらの回路素子や分岐点と整流回路1021との間で電圧や電流を検出してもよい。
【0107】
続いて、本実施形態における制御回路1009による動作を説明する。以下の説明では、
図6A14Aに示すように電圧に基づいて制御誤差情報を生成する場合を想定するが、電流または電力に基づいて制御誤差情報を生成する場合も以下の動作は同様である。
【0108】
図15は、制御回路1009の処理を示すフローチャートである。送電装置1000がDC電源1030から直流(DC)エネルギを受けると、位相制御部1003および周波数制御部1005は、それぞれ、予め決められた初期の周波数および位相ずれ量を示す情報をパルス出力部1004に出力する。これに基づいて、パルス出力回路1004は、発振回路1001の各スイッチング素子のゲートに、当該周波数および位相ずれ量を有する発振制御パルスを出力する(初期伝送)。これにより、発振回路1001は、DC電源1030から供給された直流エネルギを交流エネルギに変換し、送受電アンテナ1010を通じて受電装置1020に送出する(ステップS400)。
【0109】
次に、制御誤差判定部1105は、受信回路1003から受電装置1020で生成された制御誤差情報を取得する(ステップS401)。上記のように、DC電源1030から発振回路1001および送受電アンテナ1010を介して送られてきたエネルギを受電装置1020が受けると、まず、出力検出回路1022が、負荷1040に供給される出力電圧を検出し、検出結果と所望の値との差分を示す制御誤差情報を送信回路1023に送出する。送信回路1023は、制御誤差情報を受信回路1003に伝達する。
【0110】
受電装置から制御誤差情報のフィードバックを受けた後、制御誤差判定部10051105は、制御誤差情報が所定の範囲内か否かを判定する(ステップS402)。誤差が所定の範囲外であれば、最適制御判定部1106は、制御誤差が減少するように周波数を所定の値だけ変更するように周波数制御部1005に指示する(ステップS403)。その後、ステップS401に戻り、制御誤差判定部1105は、受信回路1003を介して制御誤差情報を再度取得する。ステップS402において、制御誤差情報が所定の範囲内であると判定するまで、ステップS403の周波数を変更する処理が行われる。ステップS402において、制御誤差が所定の範囲内にあると判定すると、制御回路1009は、ステップS501以降の効率探索ステップへ処理を移行させる。
【0111】
ステップS401からステップS403までは、出力電圧を所定の範囲内にするためのステップであり、効率探索前の前準備である。位相ずれ量の制御による出力電圧の調整は降圧機能しかもたないため、位相ずれ量が0度のときに特定の周波数で受電装置が要求する所定の電圧値に満たない場合、その周波数では位相制御による出力調整ができない。このため、制御回路1009は、周波数を変化(本実施形態では低下)させたときに出力電圧が所定の電圧値以上になるように、上限となる周波数を決定するための準備ステップとしてステップS401からS403を実行する。
【0112】
なお、使用するすべての周波数帯において、あらかじめ受電電圧が十分に高くなるように各アンテナのコイルを設計していた場合には、ステップS401からステップS403を省略してもよい。また、本実施形態ではステップS403において制御誤差が減少するように周波数のみを変更したが、受電電圧の要求値が高すぎて周波数の変更だけでは制御誤差を所定の範囲内にするという条件を満足できない場合は周波数に加えて位相ずれ量を変更してもよい。
【0113】
以下、効率探索ステップについて説明する。効率探索ステップでは、制御誤差情報が示す誤差が所定の範囲内に納まるように位相ずれ量を所定の値ずつ変化させる第1の動作(ステップS502〜S504)と、第1の動作完了後、入力検出回路の検出結果が示す値(ここでは電流の値)が最小値に近づくように周波数を所定の値だけ変化させる第2の動作(ステップS505、S506)とを繰り返す。より詳細には、制御回路1009は、周波数を変化させる第2の動作を実行した後、位相ずれ量を変化させずに制御誤差情報を再度取得し、制御誤差情報が示す誤差が上記の所定の範囲内にないとき、そのときの位相ずれ量の値を初期値として第1の動作を再度実行する。以上の動作を繰り返すことにより、負荷への出力電圧を一定に維持しながら、伝送効率を最適化できる。以下、個々の具体的な処理を説明する。
【0114】
まず、周波数制御部1005は、入力検出回路の検出値を暫定最小値として、不図示のメモリなどの記録媒体に記録するとともに、周波数を所定の値だけ変更する(ステップS501)。次に、制御誤差判定部1105は、受信回路1103から送信された制御誤差情報を取得する(ステップS502)。続いて、制御誤差判定部1105は、制御誤差情報の値が所定の範囲内か否かを判定する(ステップS503)。誤差が所定の範囲外であれば、制御誤差が減少するように位相ずれ量を所定の値だけ変更する(ステップS504)。その後、ステップS502に戻り、ステップS503において、制御誤差情報が所定の範囲内であると判定するまで、位相ずれ量を変更する処理を継続する。
【0115】
ステップS503において、制御誤差が所定の範囲内にあると判定すると、最適制御判定部1106へ処理を移行させ、送電装置1000の入力検出回路1002により検出された電流の値が前回の値よりも大きいか否かを判定する(ステップS505)。言い換えれば、電流の値が最小値に達したか否かを判定する。現在の電流の値がメモリなどの記録媒体に記録されている前回の電流の値よりも大きい場合、それは前回の電流の値が極小値であったことを意味する。逆に、現在の電流の値が前回の電流の値以下である場合、まだ極小値(最小値)には達していないと判断できる。そこで、記録媒体に格納されている値と現在の電流値とを比較し、現在の電流値が前回の電流値よりも低い場合は、まだ最小値には達していないと判断し、その電流値を新たな暫定最小値として記録媒体に記録し、所定のステップ量だけ周波数を変更する(ステップS506)。このようにして、新しい周波数で発振すると、受電装置1020の出力電圧が変化する。このため、制御回路1009は、再度ステップS502〜S505の処理を行い、制御誤差情報が示す誤差が所定の範囲内であると判定するまで、位相ずれ量を変更する処理を行う。ステップS504の位相ずれ量の調整の結果、ステップS503において、制御誤差が所定の範囲内にあると判定すると、再度、送電装置の入力電流(すなわち消費電力)が最小かどうかを判定する(ステップS505)。最終的に新規の消費電力が前回の消費電力よりも高くなると、前回の周波数における消費電力が最小と判断し(ステップS505のYes)、最小であったときの周波数および位相ずれ量に設定して一定時間、送電を継続する(S507)。その後、所定の時間(例えば数秒〜数十秒)が経過したとき、ステップS502に戻り、再びステップS502からステップS507の探索を繰り返し、負荷の変化に常に追従させる。これにより、受電側の要求する目標電圧値を維持しながら伝送効率を高く維持することが可能である。
【実施例2】
【0116】
次に、上述した第3の方式である実施例2について説明する。実施例2の無線電力伝送システムにおいて、制御誤差情報が所定の範囲内に維持される条件を満足し、制御誤差が限りなく小さい場合の諸特性の一例を
図16Aから
図16Dに示す。
図16Aから
図16Dは、横軸を周波数として、縦軸にそれぞれ受電電圧、位相ずれ量、送電装置1000の消費電流、伝送効率をプロットした図である。制御誤差が所定の範囲内に維持されているとき、
図16Aに示すように周波数をf1、f2、f3、f4の順で変化させたとしても、受電電圧は一定の目標電圧に維持される。制御誤差が所定の範囲内に維持するためには、各周波数において、
図8Bに示すように位相ずれ量を周波数に応じて変化させるのがよい。このように位相ずれ量を制御したとき、送電装置1000の消費電流は
図16Cに示すように変化し、周波数f3で最も電流が小さくなる。一方、伝送効率は
図16Dのように変化し、周波数f3で最も効率が高くなる。以上のことから、送電側の消費電流が最も小さくなる周波数で伝送効率が最も高くなることがわかる。
【0117】
制御誤差情報が所定の範囲内にあれば、負荷に与えられる電圧も所定の範囲内に維持され、負荷の変動の間隔に比べて十分に短い時間で見たときには、負荷で消費される受電電力は一定とみなせる。その場合、送電側の消費電力が最も小さくなる周波数で伝送効率が最も高くなることは明らかである。一方、電力は電圧×電流で表される。本実施形態では、DC電源1030が定電圧源であるため、送電装置1000に入力される電圧が一定となる。すなわち、送電装置1000の消費電流が最も小さいときが、送電側での消費電力が最も小さくなり、結果、伝送効率が最も高くなる。
【0118】
図17は本実施例における探索制御の一例を示す模式図である。
図18Aは
図17に示す探索制御を行ったときの制御誤差情報が示す誤差の時間変化を示す図である。同じく、
図18Bは探索制御を行ったときの周波数の時間経過を示す図である。
図18Cは探索制御を行ったときの位相ずれ量の時間経過を示す図である。
図18Dは、制御誤差が0に十分近くなったときに入力検出回路1002によって検出される電流の時間経過を示す図である。
【0119】
この例では、まず、
図17に示すように、時刻t0において初期周波数f0および初期位相ずれ量φ0で制御を開始したとき、受電電圧が目標電圧よりも低いため、制御誤差は正の値を示す。そこで、制御誤差が0に近づくように周波数を変更する。この例では、周波数が低下するほど受電電圧は増加するため、周波数をf0からf1まで減少させて制御誤差を0に近づける。この処理は、前述の準備ステップS401からS403に対応する。時間t1において制御誤差が0になり、受電電圧を目標電圧に調整できたら、効率探索ステップに入り、周波数をf1からf2に変更する。周波数の変更により、受電電圧が目標電圧からずれた分を、位相ずれ量をφ0からφ1に変更して再び受電電圧を目標電圧に一致させる。このような動作を繰り返した結果、周波数f3で最も電流が低くなり、伝送効率が高いと判断できたとする。この場合、時刻t4以降は周波数f3で伝送を継続する。
【0120】
本実施例では、周波数を変更するときに出力調整を開始する位相ずれ量をφ0に戻さずに、前回の周波数における制御誤差が所定の範囲内であったときの位相ずれ量を保持したままにする。このため、周波数を変更したときに受電側が要求する目標電圧とのずれを抑えることができる。
【0121】
制御方法は上記の例に限定されず、例えば、
図19Aから
図19Dに示す方法を採用してもよい。
図19Aから
図19Dは、周波数を変更する際に、
図20に示すような前回の値と前々回の値から予測した位相ずれ量で出力調整を開始する方式における制御の例を示している。
【0122】
図19Aは制御誤差情報の時間経過を示す図である。同じく、
図19Bは制御した周波数の時間経過を示す図である。
図19Cは制御した位相ずれ量の時間経過を示す図である。
図19Dは、制御誤差が0に十分近くなったときに入力検出回路1002によって検出される電流の時間経過を示す図である。
【0123】
時刻t1で周波数f1のときに制御誤差が0になる位相ずれ量がφ0、時間t2で周波数f2のときに制御誤差が0になる位相ずれ量がφ1だった場合、
図20に示すように、周波数をf3に変更する際、下記の(式2)によって位相ずれ量φ20を予測することができる。
【0124】
φ20=(φ1−φ0)*(f3−f1)/(f2−f1)+φ0 ・・・ (式2)
このため、
図19Cに示す例では、周波数f3における出力調整は位相ずれ量φ20の状態から開始するように制御される。時刻t3において、周波数をf4に変更する際にも、同様の式に基づいて位相ずれ量φ30を予測することができる。このような制御によれば、
図17、18に示す制御に比べて、出力電圧の調整に要する時間を短縮でき、より高速な制御が可能である。
【0125】
なお、上記の式は単純な例にすぎず、他の方式によって位相ずれ量の初期値φ20、φ30などを求めてもよい。例えば、前々回以前の位相ずれ量も考慮して位相ずれ量の予測値を算出してもよい。これらの予測制御では、制御回路1009は、周波数を変更する際、少なくとも前回および前々回の位相ずれ量に基づいて位相ずれ量の予測値を求め、その予測値を初期値として、ステップS502からS504の動作を実行すればよい。
【0126】
なお、本実施形態例では、ステップS505における判定は、送電側の電流を用いて説明したが、DC電源1030が定電圧源であるために電流が判断基準になりえた。すなわち、DC電源1030が定電流源であるならば、判定基準に電圧を用いてもよい。また、ステップS505における判定は、送電側の消費電力に基づいて行ってもよい。その場合、入力検出回路は、送電装置内の電流および電圧の両方を検出して消費電力を算出すればよい。DC電源1030の出力電圧が、負荷が大きい場合に低下してしまうような場合には、電力そのものを判定基準とすることにより、精度を向上させることができる。
【0127】
また、上記の説明では、
図17に示す受電電圧−周波数特性を前提にしたため、高い周波数から低い周波数に変更しながら受電電圧を一定に近づけているが、このような制御に限定されない。システムの受電電圧−周波数特性に応じて最適な方法で周波数および出力時間比を制御すればよい。
【0128】
本実施例によれば、受電側の電力そのものの情報を必要とせず、制御誤差情報から効率が最も高い周波数を探索する。WPC(Wireless Power Consortium)が策定したワイヤレス給電の国際標準規格であるQi規格では、無線電力伝送システムにおける受電装置からフィードバックされる情報として、制御誤差情報のほかにも、受電側の電力情報も規定されている。Qi規格では、受電装置からフィードバックされる電力情報の送信頻度は1500msecと規定され、制御誤差情報の送信頻度は250msecと規定されている。このため、受電側の電力情報と送電側で検出される電力情報とから伝送効率を算出し、伝送効率が最高になる周波数を探索した場合、最適な周波数を見つけるまでに要する時間が長くなる。本実施形態では、制御誤差情報を用いているため、最適な周波数をより高速に探索することができる。
【0129】
また、本実施形態例における制御は、受信回路1003が所定の範囲内の制御誤差情報を受信したときに、送電側の消費電流が最も小さくなる条件を探索する方式であるため、必要な情報は、受電側の電圧などから算出される制御誤差情報と送電側の電流などの情報だけで良い。このため、伝送効率を直接算出する場合(送電側の電流と電圧の情報、および、受電側の電流と電圧の情報が必要)に比べて必要な情報の数が少なく、制御にかかる負担を軽くすることができる。
【0130】
<制御方式4>
次に、本開示の実施形態の制御方式の第4の例を説明する。
図21は制御方式4における送電装置1000の機能的な構成を示すブロック図である。
図2B,13と共通する構成要素には同じ参照符号を付している。制御方式4では、位相制御部1003の代わりにパルスのデューティ比を制御するデューティ制御部1203を備える。この点を除けば、上述の制御方式3と共通である。このため、上述の制御方式3と異なる点を中心に説明する。
【0131】
制御方式4では、制御回路1009は、各スイッチング素子に入力するパルスのデューティ比を変化させることによって出力時間比を調整する。
図22Aおよび
図22Bは、発振回路に入力されるパルス波形の例を示す図である。
図22Aは、デューティ比が50%の場合において、スイッチング素子S1〜S4にそれぞれ印加されるパルス電圧、発振回路1001から出力される電圧Va、および電圧Vaを正弦波に変換したときの電圧Voutの波形の一例を示している。
図22Bは、デューティ比が25%の場合におけるこれらの電圧の波形の一例を示している。これらの図に示されるように、デューティ比を50%からずらすことにより、出力される交流電圧Vaの出力時間比、および正弦波電圧Voutの振幅を小さくすることができる。言い換えれば、デューティ比が50%のときに最大出力が得られ、デューティ比を50%よりも小さい任意の値に下げることで出力調整を行うことができる。
【0132】
制御方式4における制御フローは、上述の制御方式3における制御フローにおいて、位相制御に関する部分がデューティ制御部1103によるデューティ制御に置き換わる点を除いて同じである。このため、詳細な動作の説明は省略する。
【0133】
なお、
図2Bに示す発振回路1001は、4個のスイッチング素子を有するフルブリッジ構成の回路であるが、本実施形態では、
図12に示すような2個のスイッチング素子を有するハーフブリッジ構成の回路を用いてもよい。これにより、より簡単な構成で本実施形態における高効率かつ安定な動作を実現できる。
【0134】
<制御方式5>
次に、本開示の実施形態の制御方式の第5の例を説明する。
図23は本実施例における送電装置1000の機能的な構成を示すブロック図である。
図2B及び
図13と共通する構成要素には同じ参照符号を付している。本実施例では、DC電源1030と発振回路1001との間にDC/DCコンバータ1011が接続されている。そして、制御回路1009が位相制御部1003やデューティ制御部1103の変わりに電圧制御部1203を備える点で、実施の形態1及び実施の形態2とは異なる。電圧制御部1303は、DC/DCコンバータ1011の出力電圧を制御するように構成されている。それ以外は実施の形態1及び実施の形態2と共通である。制御方式5では、パルス出力回路1004およびDC/DCコンバータ1011が、発振回路1001から出力される電圧の周波数および振幅を調整する調整回路を構成している。
【0135】
また、制御方式5では、発振回路1001の各スイッチング素子に入力されるパルスは、所定の位相ずれ量およびデューティ比で固定されており、発振回路1001に供給する直流電圧をDC/DCコンバータ1011によって変化させることにより、発振回路1001から出力される電圧の振幅を調整する。DC/DCコンバータ1011は、例えば、チョークコイルを用いた非絶縁型のコンバータや、トランスを用いた絶縁型のコンバータなど、公知の構成を採用することができる。制御回路1009における電圧制御部1008cは、DC/DCコンバータ1011に含まれるスイッチング素子へのパルスの入力タイミングを調整するなどの方法により、DC/DCコンバータ1011の出力電圧を変化させることができる。
【0136】
また、制御方式5における制御フローは実施形態1における制御フローにおいて、位相制御に関する部分が電圧制御部1303によるDC/DCコンバータ1011の出力電圧を変化させる制御に置き換わる点を除いて同じである。このため、詳細な動作の説明は省略する。
【0137】
また、制御方式5でも、第2の実施形態と同じく
図12に示すようなハーフブリッジ構成の発振回路1001を用いてもよい。これにより、フルブリッジ構成よりも簡単な構成で本実施形態における高効率かつ安定な動作を実現できる。
【0138】
以上のように、本開示の技術の例示として、実施の形態1〜2を説明した。しかしながら、本開示における技術は、これらに限定されず、適宜、変更、置き換え、付加、省略などを行った実施の形態にも適用可能である。また、上記実施の形態1〜2で説明した各構成要素を組み合わせて、新たな実施の形態とすることも可能である。以下、他の実施例を例示する。
【0139】
実施例3では、
図15に示す動作を説明したが、これは一例である。上述のように、準備ステップ(S401〜S403)を省略し、効率探索ステップ(S501〜S507)のみを実行してもよい。また、制御回路は、制御誤差情報が示す誤差が所定の範囲内に納まるように発振回路から出力される電圧の出力時間比または振幅を所定の値だけ変化させる第1の動作と、入力検出回路の検出結果が示す値が最小値に近づくように発振回路から出力される電圧の周波数を所定の値だけ変化させる第2の動作とを実行するように構成されていればよい。
【0140】
上記の各実施例では、受電装置1020が整流回路1021を有し、負荷1040に直流エネルギを供給することを前提としているが、本開示の技術はそのような構成に限定されない。例えば交流電動機などの交流負荷にエネルギを無線で供給する用途では、受電装置1020が整流回路1021を有しない構成も考えられる。その場合、負荷1040に与えられる電圧または負荷を流れる電流の実効値と所定の目標値との差分を示す情報を制御誤差情報として上記のいずれかの制御を行ってもよい。
【0141】
(本開示の第1側面にかかる送電装置)
本開示の第1側面にかかる送電装置は、
直流電源から供給される直流電力の高電位側に接続された第1スイッチング素子と前記直流電力の低電位側に接続された第2スイッチング素子とを有し、前記第1スイッチング素子と接続された第1出力端と前記第2スイッチング素子と接続された第2出力端を介して、前記直流電力から変換された交流電力を出力する発振回路と、
前記発振回路から出力された前記交流電力を、受電装置の負荷に出力するために送出する送電アンテナと、
前記受電装置の要求電圧、要求電流または要求電力の少なくとも1つを示す規定値を保持するメモリと、
前記受電装置の負荷に供給されている電圧、電流または電力の少なくとも1つを受信する受信回路と、
前記第1スイッチング素子と前記第2スイッチング素子とを用いて、前記発振回路の前記第1出力端の電圧と前記第2出力端の電圧とを同電位にする時間を変えて前記発振回路から出力される交流電力の電圧の出力時間比を変更し、
前記発振回路から出力される交流電力の電圧の周波数を変えて前記交流電力の効率が最大となる交流電力の周波数を決定し、
前記受信した電圧、電流または電力の少なくとも1つを前記規定値の範囲に収束させ、前記効率が最大の交流電力を前記負荷に出力する。
【0142】
上記側面によると、前記送電装置は、前記発振回路から出力される交流電力の電圧の周波数を変えて前記交流電力の効率が最大となる交流電力の周波数を決定する。前記送電装置は、前記交流電力の電圧の周波数だけを調整するのではなく、前記送電装置発振回路から出力される交流電力の電圧の出力時間比を変更する。
【0143】
即ち、前記送電装置において、前記受信した電圧、電流または電力の少なくとも1つを、前記受電装置の要求電圧、要求電流または要求電力の少なくとも1つを示す規定値の範囲に収束させたとしても、効率が最大となる交流電力とはならない。
【0144】
一方、前記送電装置が前記受電装置に、効率が最大となる交流電力を出力としたとしても、前記送電装置が前記受電装置から受信した電圧、電流または電力の少なくとも1つは、前記受電装置の要求電圧、要求電流または要求電力の少なくとも1つを示す規定値の範囲外となってしまう。
【0145】
本態様によれば、効率が最大となる交流電力の周波数を決定しながら、前記送電装置が前記受電装置から受信した電圧、電流または電力の少なくとも1つを前記規定値の範囲に収束させるように、記送電装置発振回路から出力される交流電力の電圧の出力時間比を変更する。
【0146】
そのため、前記送電装置から出力される前記交流電力の電圧の周波数と、前記受電装置で受電される前記交流電力の電圧の周波数とが、一致しない状態であっても、前記送電装置が前記受電装置から受信した電圧、電流または電力の少なくとも1つを前記規定値の範囲に収束させ、前記受電装置で受電される前記交流電力の効率を最大とすることができる。
【0147】
上記側面において、例えば、前記受信回路は、前記受電装置から、前記要求電圧、前記要求電流または前記要求電力の少なくとも1つを示す前記規定値を受信し、前記制御回路は、前記受信した規定値を前記メモリに格納してもよい。
【0148】
上記側面において、例えば、前記制御回路は、前記発振回路から出力される交流電力の周波数を高周波から低周波に変化させて前記交流電力の効率が最大となる交流電力の周波数を決定してもよい。
【0149】
上記側面によると、前記交流電力の電圧の周波数を高周波から低周波に変化させることで、前記受電装置の負荷に供給する電圧を徐々に上げることできる。その結果、瞬時に高電圧になるのを防ぎ、前記受電装置の内部回路が損傷することを回避できる。
【0150】
上記側面において、例えば、前記効率が最大となる交流電力が決定された際の前記交流電力の周波数において、前記発振回路から出力される交流電力の電圧の出力時間比を変更してもよい。
【0151】
上記側面によると、前記効率が最大となる交流電力の周波数を決定した後、前記発振回路から出力される交流電力の電圧の出力時間比を変更するので、交流電力の電圧の出力時間比を変化する工程が1回で終了できる。その結果、短時間で要求値の規定値を満足しつつ最大効率の交流電力を負荷に出力することができる。
【0152】
上記側面において、例えば、前記制御回路は、前記交流電力の電圧の出力時間比を変更して、前記負荷に供給される電圧を前記規定値に収束させた後、前記交流電力の電圧の周波数を変えて前記交流電力の効率が最大となる交流電力の周波数を決定荷に供給される電圧を前記規定値に収束させた後、前記交流電力の電圧の周波数を変えて前記交流電力の効率が最大となる交流電力の周波数を決定してもよい。
【0153】
上記側面によると、まず、前記送電装置が前記受電装置から受信した電圧、電流または電力の少なくとも1つを前記規定値の範囲に収束させる。その後に、前記交流電力の電圧の周波数を変えて前記交流電力の効率が最大となる交流電力を探索する。そのため、前記規定値の範囲付近において、前記交流電力の電7圧の周波数を変えるので、例えば、前記受電装置の内部回路の破壊等の悪影響を低減できる。
【0154】
上記側面において、例えば、前記受信回路は、前記負荷に出力された交流電力、前記負荷に出力された交流電力の電圧、電流又は電力の少なくとも一つと、前記規定値との誤差を示す誤差情報を、前記受電装置から受信し、前記制御回路は、前記誤差情報が示す前記誤差を用いて、前記受信した電圧、電流又は電力の少なくとも1つを前記規定値の範囲に収束させてもよい。
【0155】
上記側面によると、前記受電装置において、前記負荷に出力された交流電力、前記負荷に出力された交流電力の電圧、電流又は電力の少なくとも一つと前記規定値との誤差を算出する。そのため、前記送電装置では、前記誤差を算出しなくても、前記受信した誤差情報が示す前記誤差を用いて、前記受信した電圧、電流又は電力の少なくとも1つを前記規定値の範囲に収束させればよく、前記送電装置側での計算負荷を低減できる。
【0156】
上記側面において、例えば、前記発振回路は、前記第1出力端と前記第2出力端が前記送電アンテナに接続され、前記直流電源の電圧の高い側に接続された2つの前記第1スイッチング素子と低い側に接続された2つの前記第2スイッチング素子の4つスイッチング素子からなり、前記制御回路から供給されるパルスに応じて前記スイッチング素子の導通状態を変化させて、前記直流エネルギを前記交流エネルギに変換する発振回路であって、前記4つのスイッチング素子は、前記直流電力と同じ極性の電圧を導通時に出力する前記第1スイッチング素子と前記第2スイッチング素子からなるスイッチング素子対、および前記直流電力と逆の極性の電圧を導通時に出力する前記第1スイッチング素子と前記第2スイッチング素子からなるスイッチング素子対によって構成され、前記スイッチング素子対の2つの前記第1スイッチング素子と前記第2スイッチング素子に前記制御回路から供給される前記パルスの位相差を変更し、前記発振回路から出力される交流電力の電圧の前記出力時間比を変えてもよい。
【0157】
上記側面によると、デュ−ティ制御に比べて、第1スイッチング素子と第2スイッチング素子とを同時にOFFする場合が少ないので、ノイズが少ない電力を受電装置に供給できる。
【0158】
なお、上記の側面は、無線電力伝送システムとして実現されてもよい。
【0159】
(本開示の第2側面にかかる送電装置)
本開示の第2側面にかかる送電装置は、
直流電源から供給される直流電力の高電位側に接続された第1スイッチング素子と前記直流電力の低電位側に接続された第2スイッチング素子とを有し、前記第1スイッチング素子と接続された第1出力端と前記第2スイッチング素子と接続された第2出力端を介して、前記直流電力から変換された交流電力を出力する発振回路と、
前記直流電源から前記発振回路に供給される直流電力の電流値を検出する入力検出回路と、
前記発振回路から出力された前記交流電力を、受電装置の負荷に出力するために送出する送電アンテナと、
前記受電装置の要求電圧、または要求電流または要求電力の少なくとも1つを示す規定値を保持するメモリと、
前記受電装置の負荷に供給されている電圧または電流のいずれか一つを継続して受信する受信回路と、
前記第1スイッチング素子と前記第2スイッチング素子とを用いて、前記発振回路の前記第1出力端の電圧と前記第2出力端の電圧とを同電位にする時間を変えて前記発振回路から出力される交流電力の電圧の出力時間比を変更し、前記継続して受信した電圧または電流のいずれか一つを前記規定値の範囲に収束させ、前記直流電源から前記発振回路に供給される直流電力の電流値が最小となる交流電力の周波数を決定し、
前記要求電力を前記直流電力の電流値が最小となる交流電力で除算した値に対応する効率を有する交流電力を、前記効率が最大の交流電力として前記負荷に出力する制御回路と、
を具備する。
【0160】
上記側面によると、例えば、前記交流電力の効率が最大となる交流電力の周波数を決定するのではなく、前記入力検出回路が検出する電流値が最小となる交流電力の周波数を決定する。
【0161】
即ち、前記直流電源から前記発振回路に供給される直流電力の電流値が最小となる場合、前記発振回路から出力される交流電力の効率は最大となる。そのため、前記受電装置の負荷が必要とする要求電圧、要求電流または要求電力の少なくとも1つを示す規定値を1回は受信し、それらを送電装置のメモリに保持する。前記要求電圧、前記要求電流から前記要求電力は容易に算出可能である。そして、交流電力の電圧の出力時間比を変更し、継続して受信した電圧または電流のいずれか一つを前記規定値の範囲に収束させながら、直流電力の電流値が最小となる交流電力の周波数を決定する。前記要求電力を前記直流電力の電流値が最小となる交流電力で除算した値が効率であるので、前記直流電力の電流値が最小となる値が、交流電力の最大効率点となる。
【0162】
このようにすることで、比較的短期間に、前記発振回路から出力される交流電力の効率を最大化できる。
【0163】
上記側面において、例えば、前記発振回路は、前記第1出力端と前記第2出力端が前記送電アンテナに接続され、前記直流電源の電圧の高い側に接続された2つの前記第1スイッチング素子と低い側に接続された2つの前記第2スイッチング素子の4つスイッチング素子からなり、前記制御回路から供給されるパルスに応じて前記スイッチング素子の導通状態を変化させて、前記直流エネルギを前記交流エネルギに変換する発振回路であって、前記4つのスイッチング素子は、前記直流電源と同じ極性の電圧を導通時に出力する前記第1スイッチング素子と前記第2スイッチング素子からなるスイッチング素子対、および前記直流電力と逆の極性の電圧を導通時に出力する前記第1スイッチング素子と前記第2スイッチング素子からなるスイッチング素子対によって構成され、前記スイッチング素子対の2つの前記第1スイッチング素子と前記第2スイッチング素子に前記制御回路から供給される前記パルスの位相差を変更し、前記発振回路から出力される交流電力の電圧の前記出力時間比を変えてもよい。
【0164】
上記側面によると、デュ−ティ制御に比べて、第1スイッチング素子と第2スイッチング素子とを同時にOFFする場合が少ないので、ノイズが少ない電力を受電装置に供給できる。
【0165】
なお、上記の側面は、無線電力伝送システムとして実現されてもよい。
【0166】
(本開示の第3側面にかかる送電装置)
本開示の第3側面にかかる送電装置は、
第1スイッチング素子と接続された第1出力端と第2スイッチング素子と接続された第2出力端を介して、直流電源から供給される直流電力から変換された交流電力を出力する発振回路と、
前記発振回路から出力された前記交流電力を、受電装置の負荷に出力するために送出する送電アンテナと、
前記受電装置の要求電圧、要求電流または要求電力の少なくとも1つを示す規定値を保持するメモリと、
前記受電装置の負荷に供給されている電圧、電流または電力の少なくとも1つを受信する受信回路と、
前記第1スイッチング素子と前記第2スイッチング素子とを用いて、前記発振回路の前記第1出力端の電圧と前記第2出力端の電圧とを同電位にする時間を変えて前記発振回路から出力される交流電力の電圧の出力時間比を変更し、
前記発振回路から出力される交流電力の電圧の周波数を変えて前記交流電力の効率が最大となる交流電力の周波数を決定し、
前記受信した電圧、電流または電力の少なくとも1つを前記規定値の範囲に収束させ、前記効率が最大の交流電力を前記負荷に出力する制御回路と、
を具備している。
【0167】
上記側面によると、効率が最大となる交流電力の周波数を決定しながら、前記送電装置が前記受電装置から受信した電圧、電流または電力の少なくとも1つを前記規定値の範囲に収束させるように、記送電装置発振回路から出力される交流電力の電圧の出力時間比を変更する。
【0168】
そのため、前記送電装置から出力される前記交流電力の電圧の周波数と、前記受電装置で受電される前記交流電力の電圧の周波数とが、一致しない状態であっても、前記送電装置が前記受電装置から受信した電圧、電流または電力の少なくとも1つを前記規定値の範囲に収束させ、前記受電装置で受電される前記交流電力の効率を最大とすることができる。
【0169】
(本開示の第4側面にかかる送電装置のプログラム)
本開示の第4側面にかかる送電装置のプログラムは、
第1スイッチング素子と接続された第1出力端と第2スイッチング素子と接続された第2出力端を介して、直流電源から供給される直流電力から変換された交流電力を出力する発振回路と、前記発振回路から出力された前記交流電力を、受電装置の負荷に出力するために送出する送電アンテナと、前記受電装置の要求電圧、要求電流または要求電力の少なくとも1つを示す規定値を保持するメモリと、前記受電装置の負荷に供給されている電圧、電流または電力の少なくとも1つを受信する受信回路と、を備えた送電装置において実行されるプログラムであって、
前記送電装置のコンピュータに対して、
前記第1スイッチング素子と前記第2スイッチング素子とを用いて、前記発振回路の前記第1出力端の電圧と前記第2出力端の電圧とを同電位にする時間を変えて前記発振回路から出力される交流電力の電圧の出力時間比を変更させる処理と、
前記発振回路から出力される交流電力の電圧の周波数を変えて前記交流電力の効率が最大となる交流電力の周波数を決定させる処理と、
前記受信した電圧、電流または電力の少なくとも1つを前記規定値の範囲に収束させ、前記効率が最大の交流電力を前記負荷に出力させる処理と、を実行させるプログラム。
【0170】
上記側面によると、効率が最大となる交流電力の周波数を決定しながら、前記送電装置が前記受電装置から受信した電圧、電流または電力の少なくとも1つを前記規定値の範囲に収束させるように、記送電装置発振回路から出力される交流電力の電圧の出力時間比を変更する。
【0171】
そのため、前記送電装置から出力される前記交流電力の電圧の周波数と、前記受電装置で受電される前記交流電力の電圧の周波数とが、一致しない状態であっても、前記送電装置が前記受電装置から受信した電圧、電流または電力の少なくとも1つを前記規定値の範囲に収束させ、前記受電装置で受電される前記交流電力の効率を最大とすることができる。
【0172】
上記側面において、例えば、前記送電装置のコンピュータに実現させるための前記プログラムを記録した、前記コンピュータで読み取り可能な記録媒体としてもよい。
【0173】
(本開示の第5側面にかかる送電装置を有する無線電力伝送システム)
本開示の第5側面にかかる無線電力伝送システムは、
入力された直流エネルギを交流エネルギに変換して出力する送電回路と、
前記送電回路から出力された前記交流エネルギを送出する送電アンテナと、
前記送電アンテナによって送出された前記交流エネルギの少なくとも一部を受け取る受電アンテナと、
前記受電アンテナが受け取った前記交流エネルギを直流エネルギに変換して負荷に供給する受電回路と、
を備え、
前記受電回路は、
前記負荷に出力する電圧および電流を検出する出力検出回路と、
前記出力検出回路による検出結果を前記送電回路に伝達する通信回路と、
を有し、
前記送電回路は、
入力された直流電圧および直流電流を検出する入力検出回路と、
入力されたパルスに応じて導通状態を変化させる複数のスイッチング素子を有し、各スイッチング素子の導通状態を変化させることによって前記直流エネルギを前記交流エネルギに変換する発振回路と、
前記パルスを生成して各スイッチング素子に出力するパルス出力回路と、
前記発振回路から出力される電圧の周波数および出力時間比が、前記通信回路から伝達された前記出力検出回路の検出結果、および前記入力検出回路の検出結果に基づいて決定される周波数および出力時間比にそれぞれなるように前記パルス出力回路を制御する制御回路と、を有する。
【0174】
上記側面において、例えば、前記制御回路は、前記出力検出回路および前記入力検出回路の各々の検出結果に基づいて、伝送効率が最大に近づくように前記周波数を変化させてもよい。
【0175】
上記側面において、例えば、前記制御回路は、前記出力検出回路および前記入力検出回路の各々の検出結果に基づいて、前記受電回路から前記負荷に供給される電圧が所定値に近づくように、前記発振回路から出力される前記電圧の出力時間比を変化させてもよい。
【0176】
上記側面において、例えば、前記制御回路は、各スイッチング素子に入力する前記パルスのデューティ比を変化させるように前記パルス出力回路に指示することによって前記発振回路から出力される前記電圧の出力時間比を変化させてもよい。
【0177】
上記側面において、例えば、前記複数のスイッチング素子は、入力電圧と同じ極性の電圧を導通時に出力するスイッチング素子と、入力電圧と逆の極性の電圧を導通時に出力するスイッチング素子とによって構成されてもよい。
【0178】
上記側面において、例えば、前記複数のスイッチング素子は、入力電圧と同じ極性の電圧を導通時に出力するスイッチング素子対、および入力電圧と逆の極性の電圧を導通時に出力するスイッチング素子対によって構成されてもよい。
【0179】
(本開示の第6側面にかかる送電装置を有する無線電力伝送システム)
本開示の第6側面にかかる無線電力伝送システムは、
入力された直流エネルギを交流エネルギに変換して出力する送電回路と、前記送電回路から出力された前記交流エネルギを送出する送電アンテナと、
前記送電アンテナによって送出された前記交流エネルギの少なくとも一部を受け取る受電アンテナと、
前記受電アンテナが受け取った前記交流エネルギを直流エネルギに変換して負荷に供給する受電回路と、
を備え、
前記受電回路は、
前記負荷に出力する電圧および電流を検出する出力検出回路と、
前記出力検出回路による検出結果を前記送電回路に伝達する通信回路と、
を有し、
前記送電回路は、
入力された直流電圧および直流電流を検出する入力検出回路と、
入力されたパルスに応じて導通状態を変化させる4つのスイッチング素子を有し、各スイッチング素子の導通状態を変化させることによって前記直流エネルギを前記交流エネルギに変換する発振回路であって、前記4つのスイッチング素子は、入力電圧と同じ極性の電圧を導通時に出力するスイッチング素子対、および入力電圧と逆の極性の電圧を導通時に出力するスイッチング素子対によって構成される発振回路と、
前記パルスを生成して各スイッチング素子に出力するパルス出力回路と、
前記通信回路から伝達された前記出力検出回路の検出結果、および前記入力検出回路の検出結果に基づいて、前記複数のスイッチング素子の各々に入力する前記パルスの周波数、および各スイッチング素子対を構成する2つのスイッチング素子に入力する2つのパルスの間の位相差を決定し、決定した前記周波数および前記位相差に応じたパルスを各スイッチング素子に出力するように前記パルス出力回路を制御する制御回路と、
を有する。
【0180】
上記側面によると、前記制御回路は、前記出力検出回路および前記入力検出回路の各々の検出結果に基づいて、伝送効率が最大に近づくように前記周波数を変化させてもよい。
【0181】
上記側面によると、前記制御回路は、前記出力検出回路および前記入力検出回路の各々の検出結果に基づいて、前記受電回路から前記負荷に供給される電圧が所定値に近づくように、各スイッチング素子対を構成する2つのスイッチング素子に入力する前記2つのパルスの間の位相差を変化させてもよい。
【0182】
上記側面によると、前記制御回路は、前記負荷に供給される電圧が前記所定値に維持されるように前記位相差を調整しながら、前記伝送効率が最大に近づくように前記周波数を調整してもよい。
【0183】
上記側面によると、前記制御回路は、前記伝送効率を最大に近づける制御を行った後、前記出力電圧を前記所定値に近づける制御を行ってもよい。
【0184】
上記側面によると、前記制御回路は、伝送開始時に、前記位相差を予め定められた値に設定した上で前記周波数を調整する制御を行ってもよい。
【0185】
上記側面によると、前記送電アンテナおよび前記受電アンテナの結合係数をkとするとき、0.1<k<0.5を満足してもよい。
【0186】
上記側面によると、前記負荷は二次電池であり、前記受電アンテナおよび前記受電回路は、前記二次電池を備える電子機器に搭載されてもよい。
【0187】
なお、上記の側面は、無線電力伝送システムの送電装置として実現されてもよい。
【0188】
(本開示の第7側面にかかる送電装置を有する無線電力伝送システム)
本開示の第7側面にかかる無線電力伝送システムは、
入力された直流エネルギを交流エネルギに変換して出力する送電回路と、
前記送電回路から出力された前記交流エネルギを送出する送電アンテナと、
前記送電アンテナによって送出された前記交流エネルギの少なくとも一部を受け取る受電アンテナと、
前記受電アンテナが受け取った前記交流エネルギを直流エネルギに変換して負荷に供給する受電回路と、を備え、
前記受電回路は、
前記負荷に与えられる電圧および前記負荷を流れる電流の少なくとも一方を検出する出力検出回路と、
前記出力検出回路による検出結果が示す値と、予め設定された目標値との誤差を示す制御誤差情報を算出する誤差算出回路と、前記制御誤差情報を前記送電回路に伝達する送信回路と、を有し、
前記送電回路は、前記送電回路に入力される電圧および電流の少なくとも一方を検出する入力検出回路と、
入力された直流エネルギを交流エネルギに変換して出力する発振回路と、
前記発振回路から出力される電圧の周波数、および前記電圧の出力時間比または振幅を調整する調整回路と、
前記送信回路から伝達された前記制御誤差情報を受信する受信回路と、
前記発振回路から出力される電圧の周波数、および前記電圧の出力時間比または振幅が、前記制御誤差情報、および前記入力検出回路の検出結果に基づいて決定される周波数、および出力時間比または振幅にそれぞれなるように前記調整回路を制御する制御回路と、
を有する。
【0189】
上記側面によると、前記制御回路は、前記制御誤差情報が示す誤差が所定の範囲内に納まるように前記発振回路から出力される電圧の出力時間比または振幅を所定の値だけ変化させる第1の動作と、前記入力検出回路の検出結果が示す値が最小値に近づくように前記電圧の周波数を所定の値だけ変化させる第2の動作とを実行してもよい。
【0190】
上記側面によると、前記制御回路は、前記第1の動作を実行した後、前記入力検出回路の検出結果が示す値がまだ最小値に達していない場合に前記第2の動作を実行し、前記第2の動作を実行した後、前記制御誤差情報を再度取得し、取得した前記制御誤差情報が示す誤差が前記所定の範囲内にないとき、前記第1の動作を再度実行してもよい。
【0191】
上記側面によると、前記発振回路は、入力されたパルスに応じて導通状態を変化させる複数のスイッチング素子を有し、各スイッチング素子の導通状態を変化させることによって前記直流エネルギを前記交流エネルギに変換するように構成され、前記調整回路は、前記発振回路の各スイッチング素子に前記パルスを出力するパルス出力回路を有し、前記制御回路は、前記パルス出力回路から出力される各パルスの周波数を変化させることにより、前記発振回路から出力される前記電圧の周波数を変化させせてもよい。
【0192】
上記側面によると、前記複数のスイッチング素子は、導通時に入力電圧と同じ極性の電圧を出力するスイッチング素子対と、導通時に入力電圧と逆の極性の電圧を出力するスイッチング素子対とを含み、前記制御回路は、前記制御誤差情報、および前記入力検出回路の検出結果に基づいて、前記複数のスイッチング素子の各々に入力すべきパルスの周波数、および各スイッチング素子対を構成する2つのスイッチング素子に入力すべき2つのパルスの間の位相ずれ量を決定し、決定した前記周波数および前記位相ずれ量に応じたパルスを各スイッチング素子に出力するように前記パルス出力回路に指示することにより、前記発振回路から出力される前記電圧の周波数および出力時間比を制御してもよい。
【0193】
上記側面によると、前記制御回路は、前記制御誤差情報が示す誤差が所定の範囲内に納まるように前記位相ずれ量を所定の値ずつ変化させる第1の動作と、第1の動作完了後、前記入力検出回路の検出結果が示す値が最小値に近づくように前記周波数を所定の値だけ変化させる第2の動作とを繰り返してもよい。
【0194】
上記側面によると、前記制御回路は、前記第2の動作を実行した後、前記位相ずれ量を変化させずに前記制御誤差情報を再度取得し、前記制御誤差情報が示す誤差が前記所定の範囲内にないとき、前記位相ずれ量の値を初期値として前記第1の動作を再度実行してもよい。
【0195】
上記側面によると、前記制御回路は、前記第2の動作において前記周波数を変更する際、少なくとも前回および前々回の前記位相ずれ量に基づいて決定される値に前記位相ずれ量を変更して前記制御誤差情報を再度取得し、前記制御誤差情報が示す誤差が前記所定の範囲内にないとき、変更後の前記位相ずれ量の値を初期値として前記第1の動作を再度実行してもよい。
【0196】
上記側面によると、前記制御回路は、各スイッチング素子に入力する前記パルスのデューティ比を変化させるように前記パルス出力回路を制御することにより、前記発振回路から出力される前記電圧の出力時間比を変化させてもよい。
【0197】
上記側面によると、前記調整回路は、前記発振回路に入力される直流電圧の大きさを変化させるDC/DCコンバータをさらに有し、前記制御回路は、前記DC/DCコンバータから出力される電圧を変化させることによって前記発振回路から出力される前記電圧の振幅を変化させてもよい。
【0198】
なお、上記の側面は、無線電力伝送システムの送電装置として実現されてもよい。
【0199】
なお、上記の側面は、無線電力伝送システムの送電装置に搭載されたコンピュータによって実行されるコンピュータプログラムとして実現されてもよい。