【文献】
YANG, Tim et al.,Layer thickness dependence of spin orbit torques and fields in Pt/Co/AlO trilayer structures,Japanese Journal of Applied Physics,2015年 3月 5日,Vol. 54,pp. 04DM05-1−04DM05-6,<DOI: http://dx.doi.org/10.7567/JJAP.54.04DM05>
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記金属は、Al、Cr、Fe、Co、Rh、Pd、Ag、Ir、Pt、Au、Mo、Wの群から選択される少なくとも1つの元素を含むことを特徴とする請求項1から5のいずれか一項に記載のスピン流磁化回転素子。
前記界面スピン生成層の厚さが前記界面スピン生成層を構成する原子の原子半径の2倍以下であることを特徴とする請求項2から6のいずれか一項に記載のスピン流磁化回転素子。
前記界面スピン生成層のうち、前記第1強磁性金属層に最も近い位置にある前記界面スピン生成層の厚さが、他の前記界面スピン生成層の厚さより薄いことを特徴とする請求項3に記載のスピン流磁化回転素子。
前記スピン伝導層がAl、Si、Cu、Ag、GaAs、及びGeのうち少なくともいずれか一種の元素を含む材料から構成されることを特徴とする請求項1から13のいずれか一項に記載のスピン流磁化回転素子。
前記界面スピン生成層がMo、Ru、Rh、Pd、Ta、W、Ir、Pt、Au、又はBiのいずれかの元素を含む材料から構成されることを特徴とする請求項1から14のいずれか一項に記載のスピン流磁化回転素子。
前記スピン伝導層の厚さが、前記スピン伝導層の有するスピン拡散長以下の厚さであることを特徴とする請求項1から15のいずれか一項に記載のスピン流磁化回転素子。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、本発明について、図を適宜参照しながら詳細に説明する。以下の説明で用いる図面は、本発明の特徴をわかりやすくするために便宜上特徴となる部分を拡大して示している場合があり、各構成要素の寸法比率などは実際とは異なっていることがある。以下の説明において例示される材料、寸法等は一例であって、本発明はそれらに限定されるものではなく、本発明の効果を奏する範囲で適宜変更して実施することが可能である。本発明の素子において、本発明の効果を奏する範囲で他の層を備えてもよい。
【0024】
(スピン流磁化回転素子)
図1(a)、(b)に、本発明の一実施形態に係るスピン流磁化回転素子の一例の模式図を示す。
図1(a)は平面図であり、
図1(b)は
図1(a)のスピン軌道トルク配線2の幅方向の中心線であるX−X線で切った断面図である。
【0025】
図1(a)、(b)に示すスピン流磁化回転素子10は、磁化方向が変化する第1強磁性金属層1と、第1強磁性金属層の面直方向である第1方向に対して交差する第2の方向に延在し、第1強磁性金属層1に接合されるスピン軌道トルク配線2と、を備え、スピン軌道トルク配線2は、スピン伝導層3と界面スピン生成層4が第1方向に交互に積層された構造であり、スピン伝導層3のうち一つが第1強磁性金属層と接合される。
【0026】
以下、第1強磁性金属層1の面直方向もしくは第1強磁性金属層1とスピン軌道トルク配線2とが積層する方向(第1方向)をz方向、z方向と垂直でスピン軌道トルク配線2と平行な方向(第2方向)をx方向、x方向及びz方向と直交する方向(第3方向)をy方向とする。なお、第1強磁性金属層1におけるスピン軌道トルク配線2と接合される面、又はスピン軌道トルク配線2と対向する面に垂直な方向を第1強磁性金属層1の面直方向とする。また、z方向(第1方向)のうち、スピン軌道トルク配線2から第1強磁性金属層1に向かう方向をz方向上方といい、第1強磁性金属層1からスピン軌道トルク配線2に向かう方向をz方向下方という。
【0027】
図1(a)、(b)を含めて以下では、スピン軌道トルク配線2が第1強磁性金属層1の面直方向である第1方向に対して交差する方向に延在する構成の例として、第1方向に対して直交する方向に延在する構成について説明する。
【0028】
本実施形態のスピン流磁化回転素子10すなわち、純スピン流によるSOT効果で強磁性金属層の磁化回転を行う素子は、純スピン流によるSOTのみで強磁性金属層の磁化反転を行う磁気抵抗効果素子において用いることができ、この場合、特にスピン流磁化反転素子と言える。一方、本実施形態のスピン流磁化回転素子は、従来のSTTを利用する磁気抵抗効果素子において強磁性金属層の磁化反転のアシスト手段あるいは主力手段として用いることもできる。
【0029】
<第1強磁性金属層>
第1強磁性金属層1は、磁化方向が変化するように公知の強磁性材料を含む。第1強磁性金属層1の更なる詳細については、下記の磁気抵抗効果素子の応用における第1強磁性金属層101に関連して説明する。
【0030】
<スピン軌道トルク配線>
スピン軌道トルク配線2は、電流が流れると純スピン流が生成され、スピン軌道トルクを誘起するように構成される。本実施形態のスピン軌道トルク配線2は、スピン伝導層3と界面スピン生成層4とが第1方向に交互に積層された構造を有する。
【0031】
スピン伝導層3と界面スピン生成層4との間の界面には、界面ラシュバ効果によりスピン蓄積(上向きスピン又は下向きスピンの一方が多く存在している状態)が生じる。スピン蓄積は純スピン流を生じさせる。
【0032】
界面ラシュバ効果の詳細なメカニズムについては明らかでないが、以下のように考えられる。異種材料間の界面においては、空間反転対称性が破れていて、面直方向(界面に垂直な方向)にポテンシャル勾配が存在しているとみなされる。このような面直方向にポテンシャル勾配がある界面に沿って電流が流れる場合、つまり電子が2次元の面内を運動する場合、電子の運動方向と垂直且つ面内の方向において有効磁場がスピンに作用して、その有効磁場の方向にスピンの向きが揃う。これにより、界面にスピン蓄積が形成される。そして、このスピン蓄積は、面外に拡散する純スピン流を生じさせる。
【0033】
図1(a)、(b)において、スピン軌道トルク配線2の上面に強磁性体である第1強磁性金属層1を接触させると、界面で生じた純スピン流は、スピン軌道トルク配線2内を拡散して伝わり、遂には第1強磁性金属層1に到達し、第1強磁性金属層1中に拡散して流れ込む。すなわち、第1強磁性金属層1にスピンが注入される。
【0034】
本実施形態のスピン流磁化回転素子10では、このようにスピン軌道トルク配線2に電流を流して純スピン流を生成し、その純スピン流がスピン軌道トルク配線2に接する第1強磁性金属層1に拡散する構成とすることで、その純スピン流によるスピン軌道トルク(SOT)効果によって第1強磁性金属層1の磁化回転が起きる。SOT効果が十分に大きければ、第1強磁性金属層1の磁化は反転される。この場合、上記のように、本実施形態のスピン流磁化回転素子を、特にスピン流磁化反転素子と呼ぶことができる。
【0035】
(スピン伝導層)
スピン伝導層3は、電気抵抗を下げるために電気抵抗率が小さく、且つ、スピン流を第1強磁性金属層1まで伝導するためにスピン拡散長(スピン蓄積が消失する距離)の長い材料から構成される。例えば、スピン伝導層3を構成する材料として、Al、Si、Cu、Ag、GaAs、Geの少なくとも一種の元素を含む材料が挙げられる。スピン伝導層3の材料は、単体として用いてもよく、合金、化合物等として組み合わせて用いてもよい。
【0036】
スピン伝導層3の厚さは、好ましくは、そのスピン伝導層3の有するスピン拡散長以下の厚さにされる。これによって、スピン情報を失わずに、第1強磁性金属層1までスピン流を伝えることができる。スピン拡散長は特に用いられる材料に依存する。例えば、単体のCu、Agのスピン拡散長は、室温において100nm以上に達することが知られている。非特許文献3を参照すると、単体のCu結晶のスピン拡散長は室温で500μmにも達し、単体のAg結晶のスピン拡散長は室温において700μmにも達すると報告されている。従って、スピン伝導層3の厚さを、十分にスピン拡散長以下に設定することができる。尚、非特許文献3に記載されているように、各種材料のスピン拡散長は当業者には既知であるか、推定可能なものであり、当業者であれば、本願の開示に基づき、各種材料を用いる場合において、スピン伝導層の厚さをスピン拡散長以下に設定することができる点に留意されたい。
【0037】
(界面スピン生成層)
界面スピン生成層4は、大きなスピン軌道トルク(SOT)を生じさせる材料から構成される。このような材料としては、非磁性の重金属、例えば、Mo、Ru、Rh、Pd、Ta,W、Ir、Pt、Au、及びBiのうち少なくとも一種の元素を含む材料が挙げられ、界面スピン生成層4の材料は、単体として用いてもよく、合金、化合物等として組み合わせて用いてもよい。
【0038】
界面スピン生成層4を構成する材料(重金属)は、スピン伝導層3を構成する材料(配線材料)よりもスピン拡散長が短い。従って、界面スピン生成層4の厚さは、スピン流がスピン情報を失わずに界面スピン生成層4を通り抜けて第1強磁性金属層1に到達するために薄くされる。
【0039】
特に、界面スピン生成層4の厚さは、その界面スピン生成層4を構成する原子の原子半径の2倍以下の厚さにされる。ここで、原子半径とは、当業者に一般的に認識されているように、単体の結晶中での最小原子間距離の半分のことを意味する。
【0040】
そうすると、原子半径の2倍以下の厚さとは、原子半径のちょうど2倍の厚さに対応する単原子層の厚さの場合と、単原子層の厚さよりも薄い厚さの場合とを含む。ここで、単原子層の厚さよりも薄い厚さとは、その層には欠陥があり、つまりは穴が開いており、層全体の平均厚さとしては原子半径の2倍よりも薄くなるということを意味する。このような穴が開いた界面スピン生成層4では、穴を介してスピン流が伝導し易くなり、且つ、発生し易くなる。言い換えると、界面スピン生成層4は、完全な層を構成していなくてもよく、スピン伝導層3内に含まれる層、例えばスピン伝導層3内にドープされた層となり得る。このような極薄の界面スピン生成層4の場合、界面スピン生成層4は、上記元素単体からなる。
【0041】
純スピン流が界面スピン生成層4を通り抜けるようにするためには、界面スピン生成層4の厚さを薄くした構造だけではなく、他の構造も考えられる。例えば、界面スピン生成層4の代替構造として、細線(ストリップ)を並べた構造や、メッシュ状の構造や、機械的に穿孔をあけた構造が考えられる。このような構造においても、純スピン流が界面スピン生成層4を効果的に通り抜けることができる。特に、界面スピン生成層4に機械的に穿孔をあける場合には、穿孔の位置分布を制御することができ、つまりは、界面スピン生成層4を通り抜けるスピン流の流れを制御することができるので好ましい。
【0042】
図1(a)、(b)では、3層のスピン伝導層3と2層の界面スピン生成層4とを交互に積層することによって、5層構造(図面下から順に、スピン伝導層3、界面スピン生成層4、スピン伝導層3、界面スピン生成層4、スピン伝導層3)を形成しており、第1方向(z方向)において最上層に位置するスピン伝導層3が第1強磁性金属層1に接合している。このような5層構造、又はこれ以上の層数の構造(例えば7層構造)においては、界面スピン生成層4が2層以上存在しており、界面数を効果的に増やし、スピン蓄積、つまりはスピン流を増大させているため、少ない電流で磁化回転(磁化反転)を実現することができる。
【0043】
しかしながら、本発明は上記のような5層構造に限られるものではなく、最上層に位置するスピン伝導層3のうち一つ(第1方向(z方向)において最上層に位置するスピン伝導層3)が第1強磁性金属層1に接合されている限りにおいて、交互に積層されるスピン伝導層3の数と界面スピン生成層4の数とは変更可能である。すなわち、スピン軌道トルク配線2は、少なくとも一つのスピン伝導層3と、少なくとも一つの界面スピン生成層4とを備え、スピン伝導層3のうち一つが第1強磁性金属層1に接合されていれば(又は最近接していれば)良い。例えば、
図2A、2Bに示す本発明の他の実施形態では、二つのスピン伝導層3と一つの界面スピン生成層4とを交互に積層することによって、3層構造(図面下から順に、スピン伝導層3、界面スピン生成層4、スピン伝導層3)を形成している。そして、スピン伝導層3の一方(第1方向(z方向)において最上層に位置するスピン伝導層3)が第1強磁性金属層1に接合される。
【0044】
また、スピン伝導層3と界面スピン生成層4の積層構造において、複数のスピン伝導層3が全て同じ厚さを有さなくてもよく、同様に、複数の界面スピン生成層4が全て同じ厚さを有さなくてもよい。言い換えると、複数のスピン伝導層3が異なる厚さを有してもよく、複数の界面スピン生成層4が異なる厚さを有してもよい。例えば、界面スピン生成層4が複数存在している場合、第1強磁性金属層1に最も近い位置にある界面スピン生成層4(つまり、複数の界面スピン生成層4のうち、第1方向(z方向)において最上部に位置する界面スピン生成層4)の厚さを、他の界面スピン生成層4の厚さよりも薄くすることが好ましい構成となり得る。ここで、複数の界面スピン生成層4の厚さが全て原子半径の2倍以下という場合において、一つの界面スピン生成層4の厚さが他の界面スピン生成層4の厚さよりも薄いとは、一つの界面スピン生成層4がより多くの欠陥(穴)を有することを意味する。これによって、下層に位置する他の界面スピン生成層4とスピン伝導層3との界面において生じた純スピン流が、最上層に位置する界面スピン生成層4を通り抜けて、その上のスピン伝導層3を伝導し、第1強磁性金属層1にまで到達することが促進される。
【0045】
更に、複数のスピン伝導層3が全て同じ材料から構成されなくてもよく、同様に、複数の界面スピン生成層4が全て同じ材料から構成されなくてもよい。言い換えると、複数のスピン伝導層3が異なる材料で構成されてもよく、複数の界面スピン生成層4が異なる材料で構成されてもよい。例えば、一つの界面スピン生成層4を挟む二つのスピン伝導層3を異なる材料で構成することができる。この場合、第1強磁性金属層1に近い方のスピン伝導層3(第1方向(z方向)に沿って上方に位置するスピン伝導層)のスピン抵抗率(スピン流の流れ難さ)を、第1強磁性金属層1に遠い方のスピン伝導層3(第1方向(z方向)に沿って下方に位置するスピン伝導層)のスピン抵抗率よりも小さくするように材料を選択する。例えば、CuはAgよりも高いスピン抵抗率を有するため、第1強磁性金属層1に近い方のスピン伝導層3をAgで構成し、第1強磁性金属層1に遠い方のスピン伝導層3をCuで構成する。これによって、下方に位置するスピン伝導層3と界面スピン生成層4との界面で生じた純スピン流が、スピン抵抗率の高い材料によって反射されて、上方の第1強磁性金属層1に向かう。
【0046】
好ましくは、各スピン伝導層3の厚さ及び各界面スピン生成層4の厚さは、これらの層の積層体であるスピン軌道トルク配線2の厚さが20nm以下になるように設定される。スピン軌道トルク配線2の厚さが20nmを超えて厚くなり過ぎると、スピン軌道トルク配線2とその上に積層される第1強磁性金属層1との間の界面ラフネスが大きくなるため、磁気抵抗効果が安定しなくなる可能性がある。スピン軌道トルク配線2の厚さは1nm以上が好ましく、2nm以上10nm以下がより好ましいが、これに限定されない。
【0047】
スピン流磁化回転素子10は、スピン軌道トルク配線2の第1強磁性金属層1に接合する面の反対側の面に接合する絶縁層を、さらに備えることができる。この構成では、磁気抵抗効果素子やその他の用途に適用する場合に、スピン軌道トルク配線2に流す電流が第1強磁性金属層1に接合する面の反対側の面から漏れることが防止され、より電流集中効果を高めることができる。
【0048】
上述した実施形態ではスピン軌道トルク配線は、第1強磁性金属層に直接接続された場合を説明したが、後述のように、第1強磁性金属層とスピン軌道トルク配線との間に、キャップ層のような他の層を介在させてもよい。すなわち、スピン軌道トルク配線の一面上に第1強磁性金属層が位置し、スピン軌道トルク配線において、スピン伝導層のうち一つが第1強磁性金属層に最近接する構成としてもよい。キャップ層の更なる詳細については、下記の磁気抵抗効果素子の応用におけるキャップ層104に関連して説明する。
【0049】
本実施形態のスピン流磁化回転素子は後述するように磁気抵抗効果素子に適用することができる。用途としては磁気抵抗効果素子に限られず、他の用途にも適用できる。他の用途としては、例えば、上記のスピン流磁化回転素子を各画素に配設して、磁気光学効果を利用して入射光を空間的に変調する空間光変調器においても用いることができるし、磁気センサにおいて磁石の保磁力によるヒステリシスの効果を避けるために磁石の磁化容易軸に印加する磁場をSOTに置き換えてもよい。
【0050】
(磁気抵抗効果素子)
本発明の一実施形態に係る磁気抵抗効果素子は、本発明の上記実施形態に係るスピン流磁化回転素子と、磁化方向が固定されている第2強磁性金属層と、第1強磁性金属層と第2強磁性金属層に挟持された非磁性層とを備える。
【0051】
図3は、本発明のスピン流磁化回転素子の応用例であり、また、本発明の一実施形態に係る磁気抵抗効果素子を模式的に示した斜視図である。なお、
図3においては、本発明のスピン流磁化回転素子の特徴部分は図示を省略している。
【0052】
図3に示す磁気抵抗効果素子100は、本発明の上記実施形態に係るスピン流磁化回転素子(第1強磁性金属層101と、スピン軌道トルク配線120)と、磁化方向が固定された第2強磁性金属層103と、第1強磁性金属層101及び第2強磁性金属層103に挟持された非磁性層102とを有する。第1強磁性金属層101は上記第1強磁性金属層1と同じ構成を有し、スピン軌道トルク配線120は上記スピン軌道トルク配線2と同じ構成を有する。また、
図3に示す磁気抵抗効果素子100は、磁気抵抗効果素子部105(第1強磁性金属層101、非磁性層102、及び第2強磁性金属層103)とスピン軌道トルク配線120とを有するということもできる。
【0053】
本発明の一実施形態に係る磁気抵抗効果素子は、スピン軌道トルク配線120を備えることで、純スピン流によるSOTのみで磁気抵抗効果素子の磁化反転を行う構成(以下、「SOTのみ」構成ということがある)とすることもできるし、従来のSTTを利用する磁気抵抗効果素子において純スピン流によるSOTを併用する構成とすることもできる。
【0054】
図3を含めて以下では、スピン軌道トルク配線120が磁気抵抗効果素子部105の積層方向に対して交差する方向に延在する構成の例として、直交する方向に延在する構成の場合について説明する。
図3においては、磁気抵抗効果素子100の積層方向に電流を流すための配線130と、その配線130を形成する基板110も示している。また、磁気抵抗効果素子100は、第1強磁性金属層101とスピン軌道トルク配線120との間にキャップ層104を備える。
【0055】
<磁気抵抗効果素子部>
磁気抵抗効果素子部105は、磁化方向が固定された第2強磁性金属層103と、磁化方向が変化する第1強磁性金属層101と、第2強磁性金属層103及び第1強磁性金属層101に挟持された非磁性層102とを有する。
【0056】
第2強磁性金属層103の磁化が一方向に固定され、第1強磁性金属層101の磁化の向きが相対的に変化することで、磁気抵抗効果素子部105は磁気抵抗効果素子として機能する。保磁力差型(擬似スピンバルブ型;Pseudo spin valve 型)のMRAMに適用する場合には、第2強磁性金属層の保磁力は第1強磁性金属層の保磁力よりも大きく、また、交換バイアス型(スピンバルブ;spin valve型)のMRAMに適用する場合には、第2強磁性金属層では反強磁性層との交換結合によって磁化方向が固定される。
【0057】
また、磁気抵抗効果素子部105は、非磁性層102が絶縁体からなる場合は、トンネル磁気抵抗(TMR:Tunneling Magnetoresistance)素子であり、非磁性層102が金属からなる場合は巨大磁気抵抗(GMR:Giant Magnetoresistance)素子である。
【0058】
本実施形態の磁気抵抗効果素子部105としては、公知の磁気抵抗効果素子部の構成を用いることができる。例えば、各層は複数の層からなるものでもよいし、第2強磁性金属層の磁化方向を固定するための反強磁性層等の他の層を備えてもよい。
【0059】
第2強磁性金属層103は固定層、ピン層、参照層等と呼ばれ、第1強磁性金属層101は自由層、フリー層、記憶層等と呼ばれる。
【0060】
第2強磁性金属層103及び第1強磁性金属層101は、磁化方向が層に平行な面内方向である面内磁化膜でも、磁化方向が層に対して垂直方向である垂直磁化膜でもいずれでもよい。
【0061】
第2強磁性金属層103の材料には、公知のものを用いることができる。例えば、Cr、Mn、Co、Fe及びNiからなる群から選択される金属及びこれらの金属を1種以上含み強磁性を示す合金を用いることができる。またこれらの金属と、B、C、及びNの少なくとも1種以上の元素とを含む合金を用いることもできる。具体的には、Co−FeやCo−Fe−Bが挙げられる。
【0062】
また、より高い出力を得るためにはCo
2FeSiなどのホイスラー合金を用いることが好ましい。ホイスラー合金は、X
2YZの化学組成をもつ金属間化合物を含み、Xは、周期表上でCo、Fe、Ni、あるいはCu族の遷移金属元素又は貴金属元素であり、Yは、Mn、V、CrあるいはTi族の遷移金属でありXの元素種をとることもでき、Zは、III族からV族の典型元素である。例えば、Co
2FeSi、Co
2MnSiやCo
2Mn
1−aFe
aAl
bSi
1−bなどが挙げられる。
【0063】
また、第2強磁性金属層103の第1強磁性金属層101に対する保磁力をより大きくするために、非磁性層102に接する面の反対側の面において第2強磁性金属層103と接する層(ピニング層)として、IrMn,PtMnなどの反強磁性材料の層を設けてもよい。具体的には、第2強磁性金属層103と配線130との間にこのような層を設けてもよい。さらに、第2強磁性金属層103の漏れ磁場を第1強磁性金属層101に影響させないようにするため、シンセティック強磁性結合の構造としてもよい。
【0064】
さらに第2強磁性金属層103の磁化の向きを積層面に対して垂直にする場合には、CoとPtの積層膜を用いることが好ましい。具体的には、第2強磁性金属層103は[Co(0.24nm)/Pt(0.16nm)]6/Ru(0.9nm)/[Pt(0.16nm)/Co(0.16nm)]4/Ta(0.2nm)/FeB(1.0nm)とすることができる。
【0065】
第1強磁性金属層101の材料として、強磁性材料、特に軟磁性材料を適用できる。例えば、Cr、Mn、Co、Fe及びNiからなる群から選択される金属、これらの金属を1種以上含む合金、これらの金属とB、C、及びNの少なくとも1種以上の元素とが含まれる合金等を用いることができる。具体的には、Co−Fe、Co−Fe−B、Ni−Feが挙げられる。
【0066】
第1強磁性金属層101の磁化の向きを積層面に対して垂直にする場合には、第1強磁性金属層の厚みを2.5nm以下とすることが好ましい。これにより、第1強磁性金属層101と非磁性層102との界面で、第1強磁性金属層101に垂直磁気異方性を付加することができる。また、垂直磁気異方性は第1強磁性金属層101の膜厚を厚くすることによって効果が減衰するため、第1強磁性金属層101の膜厚は薄い方が好ましい。なお、第1強磁性金属層の厚さは0.5nm以上とすることが好ましく、0.5nm以上2.0nm以下とすることがより好ましいが、これに限定されない。
【0067】
非磁性層102には、公知の材料を用いることができる。例えば、非磁性層102が絶縁体からなる場合(つまり、トンネルバリア層である場合)、その材料としては、Al
2O
3、SiO
2、Mg、及び、MgAl
2O
4等を用いることができる。またこれらの他にも、Al,Si,Mgの一部が、Zn、Be等に置換された材料等も用いることができる。これらの中でも、MgOやMgAl
2O
4はコヒーレントトンネルが実現できる材料であるため、スピンを効率よく注入できる。また、非磁性層102が金属からなる場合、その材料としては、Cu、Au、Ag等を用いることができる。
【0068】
また、第1強磁性金属層101の非磁性層102と反対側の面には、
図3に示すようにキャップ層104が形成されていることが好ましい。キャップ層104は、第1強磁性金属層101からの元素の拡散を抑制することができる。またキャップ層104は、磁気抵抗効果素子部105の各層の結晶配向性にも寄与する。その結果、キャップ層104を設けることで、磁気抵抗効果素子部105の第2強磁性金属層103及び第1強磁性金属層101の磁性を安定化し、磁気抵抗効果素子部105を低抵抗化することができる。
【0069】
キャップ層104には、導電性が高い材料を用いることが好ましい。例えば、Ru、Ta、Cu、Ag、Au等を用いることができる。キャップ層104の結晶構造は、隣接する強磁性金属層の結晶構造に合せて、面心立方(fcc)構造、六方最密充填(hcp)構造又は体心立方(bcc)構造から適宜設定することが好ましい。
【0070】
また、キャップ層104には、Ag、Cu、Mg、及び、Alからなる群から選択されるいずれかを用いることが好ましい。詳細は後述するが、キャップ層104を介してスピン軌道トルク配線120と磁気抵抗効果素子部105が接続される場合、キャップ層104はスピン軌道トルク配線120から伝播するスピンを散逸しないことが好ましい。銀、銅、マグネシウム、及び、アルミニウム等は、スピン拡散長が100nm以上と長く、スピンが散逸しにくいことが知られている。
【0071】
キャップ層104の厚みは、キャップ層104を構成する材料のスピン拡散長以下であることが好ましい。キャップ層104の厚みがスピン拡散長以下であれば、スピン軌道トルク配線120から伝播するスピンを磁気抵抗効果素子部105に十分伝えることができる。なお、スピン軌道トルク配線のスピンを第1強磁性金属層に注入できるのであれば、キャップ層104以外の層を第1強磁性金属層とスピン軌道トルク配線との間に介在させてもよい。このような層としては、厚さ0.5〜2.0nm程度のAg、Cu、Mg、及び、Alが挙げられる。
【0072】
<基板>
基板110は、平坦性に優れることが好ましい。平坦性に優れた表面を得るために、材料として例えば、Si、AlTiC等を用いることができる。
【0073】
基板110の磁気抵抗効果素子部105側の面には、下地層(図示略)が形成されていてもよい。下地層を設けると、基板110上に積層される第2強磁性金属層103を含む各層の結晶配向性、結晶粒径等の結晶性を制御することができる。
【0074】
下地層は、絶縁性を有していることが好ましい。配線130等に流れる電流が散逸しないようにするためである。下地層には、種々のものを用いることができる。例えば1つの例として、下地層には(001)配向したNaCl構造を有し、Ti、Zr、Nb、V、Hf、Ta、Mo、W、B、Al、Ceの群から選択される少なくとも1つの元素を含む窒化物の層を用いることができる。
【0075】
他の例として、下地層にはXYO
3の組成式で表される(002)配向したペロブスカイト系導電性酸化物の層を用いることができる。ここで、サイトXはSr、Ce、Dy、La、K、Ca、Na、Pb、Baの群から選択された少なくとも1つの元素を含み、サイトYはTi、V、Cr、Mn、Fe、Co、Ni、Ga、Nb、Mo、Ru、Ir、Ta、Ce、Pbの群から選択された少なくとも1つの元素を含む。
【0076】
他の例として、下地層には(001)配向したNaCl構造を有し、かつMg、Al、Ceの群から選択される少なくとも1つの元素を含む酸化物の層を用いることができる。
【0077】
他の例として、下地層には(001)配向した正方晶構造または立方晶構造を有し、かつAl、Cr、Fe、Co、Rh、Pd、Ag、Ir、Pt、Au、Mo、Wの群から選択される少なくとも1つの元素を含む層を用いることができる。
【0078】
また、下地層は一層に限られず、上述の例の層を複数層積層してもよい。下地層の構成を工夫することにより磁気抵抗効果素子部105の各層の結晶性を高め、磁気特性の改善が可能となる。
【0079】
<配線>
配線130は、磁気抵抗効果素子部105の第2強磁性金属層103に電気的に接続され、
図5においては、配線130とスピン軌道トルク配線120と電源(図示略)とで閉回路を構成し、磁気抵抗効果素子部105の積層方向に電流が流される。
【0080】
配線130は、導電性の高い材料であれば特に問わない。例えば、アルミニウム、銀、銅、金等を用いることができる。
【0081】
上述した本実施形態では、磁気抵抗効果素子100において、積層が後になり基板110から遠い側に配置される第1強磁性金属層101が磁化自由層とされ、積層が先であり基板110に近い側に配置される第2強磁性金属層103が磁化固定層(ピン層)とされている、いわゆるボトムピン構造の例を挙げたが、磁気抵抗効果素子100の構造は特に限定されるものではなく、いわゆるトップピン構造であってもよい。
【0082】
<電源>
磁気抵抗効果素子100は、磁気抵抗効果素子部105の積層方向に電流を流す第1電源140と、スピン軌道トルク配線120に電流を流す第2電源150とを更に備える。
【0083】
第1電源140は、配線130とスピン軌道トルク配線120とに接続される。第1電源140は磁気抵抗効果素子100の積層方向に流れる電流を制御することができる。
第2電源150は、スピン軌道トルク配線120の両端に接続されている。第2電源150は、磁気抵抗効果素子部105の積層方向に対して直交する方向に流れる電流である、スピン軌道トルク配線120に流れる電流を制御することができる。
【0084】
上述のように、磁気抵抗効果素子部105の積層方向に流れる電流はSTTを誘起する。これに対して、スピン軌道トルク配線120に流れる電流はSOTを誘起する。STT及びSOTはいずれも第1強磁性金属層101の磁化反転に寄与する。
【0085】
このように、磁気抵抗効果素子部105の積層方向と、この積層方向に直行する方向に流れる電流量を2つの電源によって制御することで、SOTとSTTが磁化反転に対して寄与する寄与率を自由に制御することができる。
【0086】
例えば、デバイスに大電流を流すことができない場合は磁化反転に対するエネルギー効率の高いSTTが主となるように制御することができる。すなわち、第1電源140から流れる電流量を増やし、第2電源150から流れる電流量を少なくすることができる。
また、例えば薄いデバイスを作製する必要があり、非磁性層102の厚みを薄くせざるを得ない場合は、非磁性層102に流れる電流を少なくことが求められる。この場合は、第1電源140から流れる電流量を少なくし、第2電源150から流れる電流量を多くし、SOTの寄与率を高めることができる。
【0087】
第1電源140及び第2電源150は公知のものを用いることができる。
【0088】
上述のように、本発明のSTT方式及びSOT方式を併用する構成の場合の磁気抵抗効果素子によれば、STT及びSOTの寄与率を、第1電源及び第2電源から供給される電流量により自由に制御することができる。そのため、デバイスに要求される性能に応じて、STTとSOTの寄与率を自由に制御することができ、より汎用性の高い磁気抵抗効果素子として機能することができる。
【0089】
(製造方法)
本発明の実施形態に係るスピン流磁化反転素子及びそれを備える磁気抵抗効果素子の製造方法は、特に限定されるものではなく、公知の成膜法を用いることができる。成膜法は、例えば、物理的気相成長(PVD)法として、抵抗加熱蒸着、電子ビーム蒸着、分子線エピタキシー(MBE)法、イオンプレーティング法、イオンビームデポジション法、スパッタリング法等を用いることができる。あるいは、化学的気相成長(CVD)法として、熱CVD法、光CVD法、プラズマCVD法、有機金属気相成長(MOCVD)法、原子層堆積(ALD)法等を用いることもできる。更に、原子半径の2倍以下の厚さという極薄の界面スピン生成層を形成するために、単原子層ドーピング法(デルタドーピング法)を用いることもできる。以下では、スピン軌道トルク型磁化反転素子を適用した磁気抵抗効果素子の製造方法の一例について説明することでスピン軌道トルク型磁化反転素子の製造方法の説明も兼ねる。
【0090】
まず、支持体となる基板上にスピン軌道トルク配線を作製する。例えばMBE法を用いて、スピン伝導層を成膜する。その上に、例えば低成膜レートに調整したスパッタリング法を用いて界面スピン生成層を形成する。その後、更にスピン伝導層を成膜するという工程を繰り返すことで、スピン伝導層と界面スピン生成層が交互に積層した積層体が得られる。次いで、フォトリソグラフィー等の技術を用いて、スピン軌道トルク配線を所定の形状に加工する。
【0091】
そして、スピン軌道トルク配線以外の部分は、酸化膜等の絶縁膜で覆う。スピン軌道トルク配線及び絶縁膜の露出面は、化学機械研磨(CMP)により研磨することが好ましい。
【0092】
次いで、磁気抵抗効果素子を作製する。磁気抵抗効果素子を、例えばスパッタリング法を用いて作製する。磁気抵抗効果素子がTMR素子の場合、例えば、トンネルバリア層は第1強磁性金属層上に最初に0.4〜2.0nm程度のマグネシウム、アルミニウム、及び複数の非磁性元素の二価の陽イオンとなる金属薄膜をスパッタリングし、プラズマ酸化あるいは酸素導入による自然酸化を行い、その後の熱処理によって形成される。
【0093】
得られた積層膜は、アニール処理することが好ましい。反応性スパッタで形成した層は、アモルファスであり結晶化する必要がある。例えば、強磁性金属層としてCo−Fe−Bを用いる場合は、Bの一部がアニール処理により抜けて結晶化する。
【0094】
アニール処理して製造された磁気抵抗効果素子は、アニール処理しないで製造された磁気抵抗効果素子と比較して、磁気抵抗比が向上する。アニール処理によって、非磁性層のトンネルバリア層の結晶サイズの均一性及び配向性が向上するためであると考えられる。
【0095】
アニール処理としては、Arなどの不活性雰囲気中で、300℃以上500℃以下の温度で、5分以上100分以下の時間加熱した後、2kOe以上10kOe以下の磁場を印加した状態で、100℃以上500℃以下の温度で、1時間以上10時間以下の時間加熱することが好ましい。
【0096】
磁気抵抗効果素子を所定の形状にする方法としては、フォトリソグラフィー等の加工手段を利用できる。まず磁気抵抗効果素子を積層した後、磁気抵抗効果素子のスピン軌道トルク配線と反対側の面に、レジストを塗工する。そして、所定の部分のレジストを硬化し、不要部のレジストを除去する。レジストが硬化した部分は、磁気抵抗効果素子の保護膜となる。レジストが硬化した部分は、最終的に得られる磁気抵抗効果素子の形状と一致する。
【0097】
そして、保護膜が形成された面に、イオンミリング、反応性イオンエッチング(RIE)等の処理を施す。保護膜が形成されていない部分は除去され、所定の形状の磁気抵抗効果素子が得られる。
【0098】
本発明は、上記実施形態にかかるスピン軌道トルク型磁化反転素子の構成及び製造方法に必ずしも限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において種々の変更を加えることが可能である。
【0099】
(磁気メモリ)
本発明の一実施形態に係る磁気メモリ(MRAM)は、本発明の上記実施形態に係る磁気抵抗効果素子を複数備える。
【0100】
(磁化反転方法)
本発明の上記実施形態に係る磁気抵抗効果素子において磁化反転を行う場合、スピン軌道トルク配線に流す電流密度を1×10
7A/cm
2未満とすることが好ましい。スピン軌道トルク配線に流す電流の電流密度が大きすぎると、スピン軌道トルク配線に流れる電流によって熱が生じる。熱が第2強磁性金属層に加わると、第2強磁性金属層の磁化の安定性が失われ、想定外の磁化反転等が生じる場合がある。このような想定外の磁化反転が生じると、記録した情報が書き換わるという問題が生じる。すなわち、想定外の磁化反転を避けるためには、スピン軌道トルク配線に流す電流の電流密度が大きくなりすぎないようにすることが好ましい。スピン軌道トルク配線に流す電流の電流密度は1×10
7A/cm
2未満であれば、少なくとも発生する熱により磁化反転が生じることを避けることができる。
【0101】
磁化反転方法は、本発明の実施形態に係る磁気抵抗効果素子において、STT方式及びSOT方式を併用する構成の場合、スピン軌道トルク配線の電源に電流を印加した後に、磁気抵抗効果素子の電源に電流を印加してもよい。
【0102】
SOT磁化反転工程とSTT磁化反転工程は、同時に行ってもよいし、SOT磁化反転工程を事前に行った後にSTT磁化反転工程を加えて行ってもよい。第1電源140と第2電源150から電流を同時に供給してもよいし、第2電源150から電流を供給後に、加えて第1電源140から電流を供給してもよいが、SOTを利用した磁化反転のアシスト効果をより確実に得るためには、スピン軌道トルク配線の電源に電流が印加した後に、磁気抵抗効果素子の電源に電流を印加することが好ましい。すなわち、第2電源150から電流を供給後に、加えて第1電源140から電流を供給することが好ましい。