(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
基材の一方の面上に熱膨張性材料を含む熱膨張層が形成された樹脂成形シートを用い、前記樹脂成形シートの少なくとも一方の面に電磁波を熱に変換する熱変換層を形成する工程と、
前記熱変換層に電磁波を照射し、前記熱膨張層を膨張させる工程と、を備え、
前記熱膨張層を膨張させる際、前記基材を前記熱膨張層の膨張に追従して変形させ、前記基材をエンボス状に変形させ、前記基材の変形量を前記熱膨張層の膨張高さより大きくする、
ことを特徴とする造形物の製造方法。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本実施の形態に係る樹脂成形シートと、これを用いた造形物及び造形物の製造方法及び製品とについて、図面を用いて詳細に説明する。
【0014】
本実施形態では、熱膨張層の隆起を利用して樹脂成形シートを成形することにより、造形物を製造する。ここで、本明細書において、「造形物」は、単純な形状、幾何学形状、文字、装飾等、形状を広く含む。ここで、装飾とは、視覚及び/又は触覚を通じて美感を想起させるものである。また、「造形(又は造型)」は、単に造形物を形成することに限らず、装飾を加える加飾、装飾を形成する造飾のような概念をも含む。更に装飾性のある造形物とは、加飾又は造飾の結果として形成される造形物を示す。
【0015】
本実施形態の造形物は、三次元空間内の特定の二次元面(例えば、XY平面)を基準とし、その面に対し垂直な方向(例えばZ軸)に凹凸を有する。このような造形物は、立体(3D)画像の一例であるが、所謂3Dプリンタ技術によって製造される立体画像と区別するため、2.5次元(2.5D)画像又は疑似三次元(Pseudo-3D)画像と呼ぶ。また、このような造形物を製造する技術は、三次元画像印刷技術の一例であるが、所謂3Dプリンタと区別するため、2.5D印刷技術又は疑似三次元(Pseudo-3D)印刷技術と呼ぶ。
【0016】
また、以下の実施形態では、「樹脂成形シート」は成形前のシートを示す。また、「造形物」は、樹脂成形シートを成形することで得られる。加えて、本実施形態の造形物を備える物を「製品」と呼ぶ。
【0017】
<実施形態1>
(樹脂成形シート10)
樹脂成形シート10は、
図1に示すように、基材11と、基材11の一方の面上に設けられた熱膨張層12と、を備える。詳細に後述するように、樹脂成形シート10では、熱膨張層12が膨張する力を利用し、熱膨張層12の膨張する方向に追従するように基材11を変形させ、変形後の形状を維持させる。このようにして、樹脂成形シート10を用いて造形物を形成する。
【0018】
基材11は、熱膨張層12を支持するシート状の部材であり、基材11の一方の面(第1の面)上に熱膨張層12が設けられる。基材11は、樹脂からなるシートである。樹脂としては、例えば熱可塑性樹脂である。熱可塑性樹脂としては、これらに限定するものではないが、ポリエチレン(PE)又はポリプロピレン(PP)等のポリオレフィン、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)、ポリエステル樹脂、ナイロン等のポリアミド、ポリ塩化ビニル(PVC)、ポリイミド等が挙げられる。基材の厚さは、これに限るものではないが、100μm〜1000μmである。
【0019】
また、基材11は熱膨張層12の膨張する力等により変形することが求められるため、基材11として用いる材料、基材11の厚さ等は、熱膨張層12の膨張する力により容易に変形するように決定される。また、基材11は変形後の形状を維持することが必要であるため、基材11として用いる材料、基材11の厚さ等は、変形後の形状を維持可能なように決定される。また、基材11は、加工後の造形物20の用途に応じて適した材料、厚み等に設計する。例えば、造形物20の用途によっては、変形後の形状を維持するだけでなく、押圧によって変形された後に元の形状に復元可能な弾性力を有することが求められる。このような場合には、変形後の基材11が要求される弾性力を有するよう、基材11の材料等を決定する。
【0020】
熱膨張層12は、基材11の一方の面(
図1では、上面)上に設けられる。熱膨張層12は、加熱の程度(例えば、加熱温度、加熱時間)に応じた大きさに膨張する層であって、バインダ中に熱膨張性材料(熱膨張性マイクロカプセル、マイクロパウダー)が分散配置されている。熱膨張層12において、これに限るものではないが、バインダに対し熱膨張性材料は10重量%〜70重量%で含まれる。なお、熱膨張層12は、1つの層を有する場合に限らず、複数の層を有してもよい。熱膨張層12のバインダとしては、エチレン−酢酸ビニル系ポリマー、アクリル系ポリマー等の任意の熱可塑性樹脂を用いる。また、熱膨張性マイクロカプセルは、プロパン、ブタン、その他の低沸点気化性物質(発泡剤)を、熱可塑性樹脂の殻内に含むものである。殻は、例えば、ポリスチレン、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、ポリ酢酸ビニル、ポリアクリル酸エステル、ポリアクリロニトリル、ポリブタジエン、あるいは、それらの共重合体等の熱可塑性樹脂から形成される。例えば、熱膨張性マイクロカプセルの平均粒径は、約5〜50μmである。このマイクロカプセルを熱膨張開始温度以上に加熱すると、樹脂からなる殻が軟化し、内包されている低沸点気化性物質が気化し、その圧力によって殻がバルーン状に膨張する。用いるマイクロカプセルの特性にもよるが、マイクロカプセルの粒径は膨張前の粒径の5倍程度に膨張する。なお、マイクロカプセルの粒径には、ばらつきがあり、全てのマイクロカプセルが同じ粒径を有するものではない。
【0021】
また、本実施形態では、後述するように、基材11及び熱膨張層12の厚み、材料等は、熱膨張層12の発泡による高さの増加量よりも、基材11の変形量が多くなるように設定される。また、特に本実施形態では、基材11を所望の形に変形させることを目的とする。このため、熱膨張層12は、少なくとも基材11を所望の形に変形可能な程度の厚みを備えればよい。従って、熱膨張層12は、基材11の厚みと同じ又は薄く形成されることが好適である。熱膨張層12の厚みは、これに限るものではないが、例えば5μm〜200μmである。もっとも、例えば、基材11が変形しにくい材料である、造形物の形状により熱膨張層12を高く発泡させる必要がある等、熱膨張層12を厚く形成する必要がある場合には、熱膨張層12は基材11よりも厚く形成されてもよい。
【0022】
加えて、熱膨張層12は、少なくとも基材11を変形させる領域に設けられていればよく、熱膨張層12は基材11を少なくとも部分的に覆うように設けられる。
【0023】
(樹脂成形シートの製造方法)
また、本実施形態の樹脂成形シート10は、以下に示すようにして製造される。
まず、
図2(a)に示すように、基材11としてシート状の材料、例えばポリエチレンテレフタレート(PET)からなるシートを用意する。基材11は、ロール状であっても、予め裁断されていてもよい。
【0024】
次に、熱可塑性樹脂等からなるバインダと熱膨張性材料(熱膨張性マイクロカプセル)とを混合させ、熱膨張層12を形成するための塗布液を調製する。続いて、バーコータ、ローラーコータ、スプレーコータ等の公知の塗布装置を用いて、塗布液を基材11上に塗布する。熱膨張層12の形成は、塗布装置以外の装置(例えば印刷装置)を用いて形成してもよい。続いて、塗膜を乾燥させ、
図2(b)に示すように熱膨張層12を形成する。なお、目標とする熱膨張層12の厚みを得るため、塗布液の塗布及び乾燥を複数回行ってもよい。また、ロール状の基材11を用いた場合は、必要であれば裁断を行う。
これにより、樹脂成形シート10が製造される。
【0025】
(造形物20)
次に、造形物20について
図3を用いて説明する。
造形物20は、樹脂成形シート10を成形加工したシートである。具体的に
図3に示すように、基材11は、上面に凸部11aを備え、下面に凸部11aに対応する形状を有する凹部11bを備える。熱膨張層12は、上面に凸部12aを備える。基材11の凸部11a及び熱膨張層12の凸部12aは、周囲の領域から突出している。また、基材11の凹部11bを覆って、熱膨張層12を膨張させるための熱変換層82が形成されている。
【0026】
本実施形態では、詳細に後述するように、樹脂成形シート10の下面(裏面)に、電磁波を熱に変換する電磁波熱変換層(以下、単に熱変換層又は変換層と称する)を形成し、電磁波を照射することで、熱変換層82を発熱させる。熱変換層82は、電磁波の照射により、熱を帯びるため、帯熱層とも呼べる。樹脂成形シート10の裏面に設けられた熱変換層82で生じた熱は、基材11へと伝達される。この際、基材11が軟化することが好適である。加えて、熱変換層82で生じた熱は、熱膨張層12へと伝達することにより、熱膨張層12中の熱膨張性材料が発泡し、その結果、熱膨張層12が膨張する。熱変換層82は、熱変換層82が設けられていない他の領域と比較し、電磁波を速やかに熱へと変換する。このため熱変換層82の近傍の領域のみを選択的に加熱することができ、熱膨張層12の特定の領域のみを選択的に膨張させることができる。また、基材11は、熱膨張層12を発泡、膨張させる際に熱膨張層12の膨張する方向に追従する形で変形し、変形後はその形状を維持する。
【0027】
熱膨張層12が膨張することにより、熱膨張層12には
図3に示す凸部12aが形成される。この凸部12aが形成される際、熱膨張層12が膨張する力は基材11とは反対の方向(
図3に示す上側)に働く。この膨張する力に引かれるようにして、基材11は
図3に示す上方向に変形する。そして、周囲の領域から突出するように、基材11の上面に凸部11aが形成される。また、基材11の裏面では、表面に形成される凸部11aの形状に対応する凹部11bが形成される。凹部11bの形状は、凸部11aとほぼ同じ形状であり、基材11の厚み分だけ凸部11aを縮小させた形状である。本明細書では、このような熱膨張層12の凸部12a、基材11の凸部11a及び凹部11bの形状をエンボス形状と表現する。
【0028】
所謂エンボス加工の一つの手法では、上下の金型に対応する凹凸の形状を形成し、上下の金型の間にシートを挟み込み、プレスすることでシートの表面に凹凸の形状を形成する。これに対して本実施形態では、基材11は、熱膨張層12が膨張する力に引かれて変形するため、金型は用いない。しかし、変形後の形状は、エンボス加工を用いて形成される形状に類似するため、本明細書では、熱膨張層12の凸部12a、基材11の凸部11a及び凹部11bのような形状をエンボス形状と表現する。
【0029】
また、本実施形態の造形物20では、特に熱膨張層12を利用して基材11を変形させるため、
図3に示すように、基材11の変形量Δh1は、熱膨張層12の発泡高さΔh2と比較して大きい。なお、変形量Δh1は、基材11の変形していない領域の表面と比較した凸部11aの高さである。また、熱膨張層12の発泡高さ(差分)Δh2は、熱膨張層12の膨張後の高さから、熱膨張層12の膨張前の高さを引いたものである。また、差分Δh2は、熱膨張性材料の膨張によって生じた熱膨張層12の高さの増加量とも言いうる。
【0030】
本実施形態において造形物20は、着色されていることは必須ではない。もっとも、
図4に示すように、造形物20の表側にカラーインク層81を、造形物20の裏側にカラーインク層83を設けることも可能である。カラーインク層81、83は両方形成されても、いずれか一方のみが形成されてもよい。特に、造形物20の表側には熱膨張層12が形成されているため、熱膨張層12上に設けられたカラーインク層81はマットな質感を呈する。一方、造形物20の裏側には樹脂からなる基材11が位置するため、基材11の裏側上に設けられるカラーインク層83は、光沢のある質感、いわゆるグロス感を呈する。このような材料の質感の違いを利用し、造形物20の表側と裏側とで異なる質感を表現することも可能である。
【0031】
(スイッチ及び電子機器)
次に、本実施形態の造形物20を用いたスイッチ34と、スイッチ34を備える電子機器30について図面を用いて説明する。本実施形態のスイッチ34と電子機器30とは、造形物20を備える製品の一例である。後述するように、電子機器30は入力部33の化粧カバーとして造形物20を備えるため、電子機器30も造形物20を備える製品である。
図5では、電子機器30として電卓を例に挙げ、本実施形態のスイッチ34を電卓のキートップとして使用する構成を例に挙げる。なお、電子機器30としては、電卓に限られず、プリンタ、リモコン等であってもよく、この他の電子機器であってもよい。また、本実施形態のスイッチ34は、その機能や目的は任意である。本実施形態のような、数字、文字等を入力する目的に限られるものではなく、単に電源をオンオフするためのスイッチであってもよく、その他の目的に使用されてもよい。
【0032】
電子機器30は、表示部31と入力部33と制御部(図示せず)とを備える。表示部31は、液晶パネル等の表示パネル32を有し、表示パネル32には入力部33によって入力された数字、演算の結果等の情報が表示される。入力部33は、0〜9までの数字、四則演算といった演算記号が表示された複数のスイッチ(キートップ)34を備える。また、図示しない制御部は、集積回路等を備え、入力部33から入力された情報について演算を行い、その結果を表示部31に表示する。なお、本実施形態では、造形物20は、入力部33を装飾する表面シート(化粧シート)として使用される。
【0033】
スイッチ34は、
図6に示すように、いわゆるメンブレンスイッチであり、回路基板36上に設けられた下部コンタクト部37(コンタクトパッド37a,37b)と、回路基板36上に設けられた上部シート38と、上部シート38の下面に設けられた上部コンタクト部39と、造形物20と、を備える。なお、
図6は、
図5に示すVI−VI線断面図である。また、回路基板36は図示しない筐体中に収められていてもよい。
【0034】
下部コンタクト部37は、コンタクトパッド37a、37bを備える。コンタクトパッド37a及び37bは、導電性材料から形成され、相互に離間して配置される。また、コンタクトパッド37a及び37bは、それぞれが図示しない配線に接続される。上部コンタクト部39が、コンタクトパッド37a及び37bに接触することで、コンタクトパッド37aと37bとの間が導通し、スイッチ34が押されたことが検知される。
【0035】
なお、下部コンタクト部37の構成は任意であり、コンタクトパッド37a、37bとは一体に形成されてもよい。例えば、下部コンタクト部37は上部コンタクト部39と対向する領域において、平面形状がつづら折り状に形成されてもよい。この場合、コンタクトパッド37aと37bとの間に上部コンタクト部39が接触することで、下部コンタクト部37の抵抗率が変わり、スイッチ34が押されたことが検知される。
【0036】
上部シート38は、導電性を有しない材料からなるシートであり、例えば、PET等の樹脂からなる。上部シート38の下面(回路基板36に対向する面)の下部コンタクト部37と対向する領域に、凸部38aと凸部38aに対応する形状の凹部38bが形成される。凹部38bによって、上部シート38と回路基板36との間にドーム状の空間が形成される。凹部38bは下部コンタクト部37と対向し、凹部38bの中心には、上部コンタクト部39が設けられる。上部シート38の凸部38aは、押圧されることによって凹み、力が解放されることで元の形状に復元する。
【0037】
上部コンタクト部39は、導電性材料を含み、下部コンタクト部37と対向する位置に設けられる。また、上部コンタクト部39は、例えば円形の平面形状を有する。導電性材料としては銅、銀等が挙げられる。導電性材料は、その他、公知の材料を含んでもよい。上部コンタクト部39は、下部コンタクト部37と接触することにより、下部コンタクト部37のコンタクトパッド37a、37b間を導通させる。
【0038】
造形物20は、上部シート38を覆うようにして、スイッチ34の最表面に設けられる。造形物20の基材11は、凸部11aを備え、更に凸部11aに対応する形状に形成された凹部11bを備える。凹部11bは、上部シート38に設けられた凸部38aを覆う形状及び大きさに形成されている。また、造形物20は、熱膨張層12の上にカラーインク層81を備える。カラーインク層81によってスイッチの色、表示する数字等を表現することができる。なお、カラーインク層81は、凸部12aの上に設けられるだけでなく、凸部12aの周囲にも設けられてもよい。更に、造形物20の上には、別途保護フィルムなどを設けてもよい。
【0039】
スイッチ34では、
図6に示す上側から造形物20が下方向に押圧される。具体的に、基材11の凸部11a、上部シート38の凸部38a等が下方向に押圧される。造形物20及び上部シート38は、この力を受け凹むように変形し、その結果上部コンタクト部39が下部コンタクト部37に接触する。これにより、コンタクトパッド37aと37bとの間が導通するため、スイッチ34が押されたことが検知される。本実施形態では、電卓であるため、数字もしくは演算記号が入力されたことが検知される。また、造形物20等を押圧する力が解放されると、造形物20と上部シート38とは、元の形状へと復元する。
【0040】
(造形物の製造方法)
次に、樹脂成形シート10を成形することで、造形物を形成する造形物の製造方法(樹脂成形処理)の流れを説明する。以下の造形物の製造方法では、ロール状に巻かれた樹脂成形シート10を使用する場合(ロール式)を例に挙げて説明するが、枚葉式であってもよい。
【0041】
まず、本実施形態の造形物20の製造方法で用いる印刷装置40及び膨張装置50について説明する。カラー画像の印刷及び熱変換層の印刷をするための印刷装置40としては、例えばオフセット印刷装置を利用する。印刷装置40は、
図7に示すように、版胴41と、ブランケット42と、インクローラー43と、水ローラー44と、圧胴45と、を備える。
【0042】
版胴41は、その表面に画線部と非画線部とを備える刷版を有する。画線部は親油性(撥水性)であり、非画線部は親水性である。画線部と非画線部とは、例えば、フォトリソグラフィを利用して形成される。具体的には、親水性の支持体上に親油性の感光層を設け、画線部のみが露出するマスク(ネガフィルム)を介して感光層を露光させる。続いて、非画線部の感光層を除去することにより、画線部に親油性の感光層のみが残存する。なお、刷版の製造方法は任意であり、フィルムを介さずに、直接刷版上に印刷するデータをレーザー等を使用して焼き付けて製造することも可能である。
【0043】
版胴41には、水ローラー44によって湿し水が供給される。湿し水は、版胴上の刷版の非画線部(親水性)のみに乗る。また、版胴41にはインクローラー43によって、インクが供給される。インクは水が乗っている非画線部には乗らず、インクは、刷版の画線部(親油性)上にのみ付着する。
【0044】
ブランケット42は、例えばゴム筒から形成される。ブランケット42には、版胴41上に付着したインクが転写される。また、ブランケット42と対向する位置に、圧胴45が設置されている。更に、ブランケット42上のインクは、ブランケット42と樹脂成形シート10の表面との接触により樹脂成形シート10上に転写される。
【0045】
カラー画像(カラーインク層)を印刷する場合、シアンC、マゼンタM、イエローY及びブラックKの4色のインク毎に、
図7に示す装置を使用する。また、シアンC、マゼンタM、イエローY及びブラックKのインクは、既知のインクを使用する。また、各色の画像を印刷するための印刷装置40は、個別に設置されても連続して設置されてもよい。印刷装置40が連続して設置される場合は、ロールから取り出された樹脂成形シート10は、CMYKの各色の印刷装置40へと順番に搬送され、CMYKの画像が順番に印刷される。樹脂成形シート10が巻き取られる段階では、樹脂成形シート10の表面にはカラー画像が印刷された状態となる。また、各色の印刷順は任意に変更可能である。
【0046】
なお、本実施形態では、電磁波を照射することにより熱変換層82を発熱させる。このため、カラー画像を印刷するためのブラック(K)のインク中にカーボンが含まれると、カーボンが電磁波を吸収して発熱する可能性があるため、ブラック(K)のインクにはカーボンが含まれていないことが好ましい。
【0047】
また、熱変換層82を印刷する場合は、
図7に示す印刷装置40において、インクローラーに供給するインクを、電磁波熱変換材料を含むインク(以下、発泡インクと称する)とする。電磁波熱変換材料(熱変換材料)は、電磁波を熱に変換可能な材料である。熱変換材料の一例としては、カーボン分子であるカーボンブラック(グラファイト)が挙げられる。この場合、電磁波を照射することにより、グラファイトが電磁波を吸収して熱振動し、熱が発生する。なお、熱変換材料は、グラファイトに限られず、例えば、赤外線吸収材料などの無機材料も使用することができる。具体的には、六ホウ化金属化合物又は酸化タングステン系化合物が好ましく、特に近赤外領域で吸収率が高く(透過率が低く)、かつ可視光領域の透過率が高いことから六ホウ化ランタン(LaB
6)又はセシウム酸化タングステンが好ましい。なお、上記無機赤外線吸収剤はいずれかを単独で用いてもよく、又は2つ以上の異なる材料を併用してもよい。
【0048】
また、発泡インクの色は、黒色、白色等任意である。発泡インクは、基材11の色に応じた着色がなされてもよい。また、特に熱変換材料として六ホウ化ランタン(LaB
6)又はセシウム酸化タングステンを使用すると、発泡インクの色味を抑えることができ好適である。この場合、発泡インクを透明(視認しにくい又は視認できない色)とすることもできる。
【0049】
次に、熱膨張層12を膨張させる膨張装置50を
図8に示す。膨張装置50は、照射部51、反射板52、温度センサ53、冷却部54及び筐体55を備え、照射部51、反射板52、温度センサ53及び冷却部54は筐体55内に収められている。樹脂成形シート10は、膨張装置50の下を搬送される。
【0050】
照射部51は、ランプヒータ、例えばハロゲンランプを備えており、樹脂成形シート10に対して、近赤外領域(波長750〜1400nm)、可視光領域(波長380〜750nm)、又は、中赤外領域(波長1400〜4000nm)の電磁波(光)を照射する。熱変換材料を含む発泡インクによる熱変換層82が印刷された樹脂成形シート10に電磁波を照射すると、熱変換層82が印刷された部分では、熱変換層82が印刷されていない部分に比べて、より効率良く電磁波が熱に変換される。そのため、樹脂成形シート10のうちの熱変換層82が印刷された部分が主に加熱され、膨張を開始する温度に達すると熱膨張性材料が膨張する。なお、照射部51はハロゲンランプに限られず、電磁波を照射可能であれば、他の構成を採ることも可能である。また、電磁波の波長も上記の範囲に限定されるものではない。
【0051】
反射板52は、照射部51から照射された電磁波を受ける被照射体であって、ランプヒータから照射された電磁波を樹脂成形シート10に向けて反射する機構である。反射板52は、照射部51の上側を覆うように配置されており、照射部(ランプヒータ)51から上側に向けて照射された電磁波を下側に向けて反射する。反射板52によって、ランプヒータから照射された電磁波を効率良く樹脂成形シート10に照射することができる。
【0052】
温度センサ53は、熱電対、サーミスタ等であって、反射板52の温度を測定する測定手段として機能する。温度センサ53は、照射部51が電磁波を照射している際に、反射板52の温度を測定する。反射板52は照射部51から照射される電磁波を受けるため、照射部51が照射している電磁波の強さ、すなわち電磁波のエネルギーの大きさに応じて変化する。そのため、反射板52の温度は、照射部51が照射している電磁波の強さの指標として用いることもできる。
【0053】
冷却部54は、反射板52の上側に設けられており、膨張装置50の内部を冷却する冷却手段として機能する。冷却部54は、少なくとも1つの給気ファンを備えており、膨張装置50の外部から照射部51へと空気を送ることによって、照射部51を冷却する。
【0054】
膨張装置50において、樹脂成形シート10は、ロールから取り出され、図示しない搬送ローラーによって搬送されながら、照射部51によって照射される電磁波を受ける。その結果、樹脂成形シート10に設けられた熱変換層82が熱を帯びる。この熱が基材11及び熱膨張層12へと伝達する。熱膨張層12の少なくとも一部は膨張する。また、基材11は、この熱によって軟化することもある。熱膨張層12が膨張する力に引かれ、結果として基材11が変形する。熱膨張層12の膨張後、樹脂成形シート10は巻き取られる。なお、基材11の変形量によっては、樹脂成形シート10は巻き取られず、裁断されてもよい。
【0055】
次に、
図9に示すフローチャート及び
図10(a)〜
図10(c)に示す樹脂成形シート10の断面図を参照して、樹脂成形シート10を成形し、シート表面に造形物を形成する処理の流れを説明する。
【0056】
第1に、樹脂成形シート10を準備する。また、カラーインク層81を形成するためのカラー画像データ、樹脂成形シート10の表面において発泡及び膨張させる部分を示す発泡データ(熱変換層82を形成するためのデータ)は、事前に決定しておく。樹脂成形シート10をその表面が上に向いた状態で
図7に示す印刷装置40へと搬送し、印刷装置40を用いて樹脂成形シート10の表面に、カラー画像(カラーインク層81)を印刷する(ステップS1)。具体的には、シアンC、マゼンタM、イエローY及びブラックKの各印刷装置40は、指定されたカラー画像データに従って、樹脂成形シート10の表面に、シアンC、マゼンタM、イエローY及びブラックKの画像を印刷する。その結果、
図10(a)に示すように樹脂成形シート10の表面にカラーインク層81が形成される。
【0057】
第2に、印刷装置40を用いて、樹脂成形シート10の裏面に熱変換層82を印刷する(ステップS2)。熱変換層82は、電磁波熱変換材料を含むインク、例えばカーボンブラックを含む発泡インクで形成された層である。印刷装置40は、指定された発泡データに従って、樹脂成形シート10の裏面に、熱変換材料を含む発泡インクを印刷する。その結果、
図10(b)に示すように、樹脂成形シート10の裏面に熱変換層82が形成される。なお、熱変換層82を濃く印刷すると発熱量が増えるため、熱膨張層12が高く膨張する。従って、基材11の高い変形量が得られる。これを利用して熱変換層82の濃淡の制御により、変形高さを制御することもできる。
【0058】
第3に、熱変換層82が印刷された樹脂成形シート10を、裏面が上側を向くように膨張装置50へと搬送する。膨張装置50では、搬送された樹脂成形シート10へ照射部51によって電磁波を照射する(ステップS3)。具体的に説明すると、膨張装置50では、照射部51によって樹脂成形シート10の裏面に電磁波を照射する。樹脂成形シート10の裏面に印刷された熱変換層82に含まれる熱変換材料は、照射された電磁波を吸収することによって発熱する。その結果、熱変換層82が発熱し、熱変換層82で生じた熱は熱膨張層12に伝達し、熱膨張性材料が発泡、膨張する。熱変換層82から生ずる熱により基材11が軟化することが好適である。熱膨張層12の膨張の結果、
図10(c)に示すように、樹脂成形シート10の熱膨張層12のうちの熱変換層82が印刷された領域が膨張し、盛り上がる。基材11は、熱膨張層12の膨張する力に引かれて変形する。
【0059】
以上のような手順によって、樹脂成形シート10の表面上に造形物が形成され、造形物20が製造される。
【0060】
このように本実施形態の樹脂成形シート、造形物及び造形物の製造方法では、熱変換層82を印刷により形成し、熱変換層82へ電磁波を照射することによって、樹脂成形シート10を容易に所望の形状に変形させることができる。特に、印刷及び電磁波の照射を用いることで、成形するための金型などが不要となり、樹脂成形シート10の成形に要する時間及び費用を低減させることが可能となる。
【0061】
また、特に上述した実施形態のようにスイッチとして利用する場合、ドーム状に変形された基材11の上に位置する熱膨張層12は、基材11を変形させるために膨張されている。このため、スイッチとして機能する領域の熱膨張層12は、その他の領域と比較し、弾力性が増加しており、クッション性を備えるという効果も加えることができる。
【0062】
また、本実施形態では、熱変換層(発泡データ)82の濃淡の制御、電磁波の制御等を用いることで、熱膨張層12を隆起させる位置、高さ等を任意に制御して、容易に樹脂成形シート10を成形し、造形物を形成することができる。更に、カラー画像の印刷を組み合わせることもでき、良好に造形物を形成することが可能となる。
【0063】
ここで、電磁波の制御は、膨張装置50において樹脂成形シート10に電磁波を照射して膨張させる際、樹脂成形シート10を所望の高さに膨張させるために、樹脂成形シート10が単位面積当たりに受けるエネルギー量を制御することをいう。具体的に、樹脂成形シート10が単位面積当たりに受けるエネルギー量は、照射部の照射強度、移動速度、照射時間、照射距離、温度、湿度、冷却等のパラメータによって変化する。電磁波の制御は、このようなパラメータの少なくとも1つを制御することによって実行される。
【0064】
また、上記の実施形態では、印刷装置40として水ありのオフセット印刷装置を例に挙げて説明したが、これに限られない。印刷装置40は水なしオフセット印刷装置であってもよい。また、オフセット印刷装置に限らず、グラビア印刷、シルクスクリーン印刷、フレキソ印刷、インクジェット印刷、等任意の印刷装置を利用することも可能である。また、各印刷装置で用いるインクも水系インク、溶剤系インク、紫外線硬化インク等、公知のインクを使用することができる。また、膨張装置50の構成も
図8に示す構成に限られない。
【0065】
(変形例)
上述した実施形態1では、造形物20をスイッチ34の化粧カバーとして利用する構成を例に挙げて説明したがこれに限られない。例えば、上部シート38は省略することができる。
【0066】
具体的には、
図11に示すように、造形物20の裏に設けられた熱変換層82を上部コンタクト部39として機能させることも可能である。この場合、
図11に示すように、スイッチ34は、回路基板36上に設けられた下部コンタクト部37と、上部コンタクト部39と、造形物20と、を備える。本変形例では、造形物20の基材11の凹部11bに設けられた上部コンタクト部39は、熱膨張層12を膨張させるために使用する熱変換層82である。換言すると、本変形例では、熱変換層82が上部コンタクト部39の機能も有する。
【0067】
このような熱変換層82は、導電性を有する電磁波熱変換材料を含む発泡インクを用いて形成することが好ましい。このような材料の一例としては、カーボンブラック(グラファイト)が挙げられる。なお、熱変換層82の導電性を変更するため、発泡インク中に銀ペーストのような導電性材料を更に添加することも可能である。また、電磁波熱変換材料の導電性が低い又は導電性を有していない場合は、導電性材料を発泡インクに添加することによって、本変形例のような熱変換層82を形成してもよい。
【0068】
また、
図12に示すように、造形物20の裏面に設けられた熱変換層82上に、直接上部コンタクト部39を設けることにより、上部シート38を省略することも可能である。この場合、スイッチ34は、回路基板36上に設けられた下部コンタクト部37と、上部コンタクト部39と、造形物20と、を備える。本変形例では、造形物20の基材11の裏面に形成された熱変換層82上に上部コンタクト部39が配置される。上部コンタクト部39は、シール状に予め形成された導電材料を貼り付けることによって形成されてもよく、導電ペーストを印刷することによって形成されてもよい。
【0069】
<実施形態2>
実施形態2に係るシール60につき、以下図面を用いて説明する。本実施形態では、造形物20を、シール60として利用する場合を例に挙げる。本実施形態のシール60は、造形物20を備える製品の一例である。実施形態1と共通する特徴については、同一の符号を付し、詳細な説明は省略する。
【0070】
シール60は、
図13に示すように、造形物20と、接着層61と、剥離シート62と、を備える。造形物20は、樹脂成形シート10に実施形態1に記載した方法によって製造されたものである。造形物20は、基材11の上に熱膨張層12を備え、熱膨張層12の上面にはカラーインク層81が形成される。なお、
図13では、熱変換層82の図示を省略している。
【0071】
接着層61は、基材11の裏面に設けられる。接着層61は、造形物20を対象物へと接着させるための層である。接着層61の接着強さは、シール60の用途に応じて任意に決定される、例えばシール60が対象物から容易に剥離しないような強度であってもよいし、貼り付けた後、容易に剥離できるような強度であってもよい。また、接着層61が含む材料も、シール60の用途に応じて任意に決定することができる。例えば、接着層61は、熱硬化性樹脂又は熱可塑性樹脂からなる樹脂系接着剤、エラストマー系接着剤、等の既知の接着剤を含む。また、接着層61は、接着剤に代え、ゴム系粘着剤、アクリル系粘着剤、シリコーン系粘着剤、又はウレタン系粘着剤のような既知の粘着剤を含んでもよい。
【0072】
剥離シート62は、接着層61を覆って設けられる。剥離シート62としては、樹脂製のフィルム(シート)、紙などを使用することができる。剥離シート62は、接着層61に異物が付着することを防ぐ。また、剥離シート62を剥がすことによって、シール60の接着層61を露出させ、シール60を対象物へと貼り付けることができる。なお、剥離シート62はシール60の用途、貼り付ける対象物、接着層61の材料等に応じ、省略することが可能である。
【0073】
また、接着層61と剥離シート62とは、樹脂成形シート10の成形前に設けられてもよい。換言すると、樹脂成形シート10の状態で、基材11の裏面に接着層61と剥離シート62とを設け、接着層61と剥離シート62を備えた樹脂成形シート10を、実施形態1に示す造形物の製造方法によって成形し、シール60を製造することができる。この場合、
図13に示すように、基材11の凹部11b上にも接着層61が形成されている。なお、成形する形状によっては、凹部11b下で剥離シート62が部分的に剥離してもよい。
【0074】
また、接着層61と剥離シート62とは、成形後に設けることもできる。この場合は、樹脂成形シート10を実施形態1に示す造形物の製造方法によって成形した後、接着層61と剥離シート62とを設ける。この場合は、接着層61は、図示するように凹部11bを含む基材11の下面全体に設けられていてもよい。又は図示する例とは異なり、接着層61は、凹部11bの一部以外の領域を覆うように、もしくは基材11の凹部11b以外の領域上だけに設けられてもよい。剥離シート62についても同様に、図示するように接着層61全体を覆うように設けられてもよい。また、図示する例とは異なり、剥離シート62が、接着層61を覆うが、基材11の凹部11bからは離れて設けてられてもよい。
【0075】
上述したように、樹脂成形シート10に熱変換層を印刷により形成し、電磁波を照射することによって、容易に所望の形状に変形させ、造形物20を製造することができる。従って、本実施形態のようなシール60も容易に製造することができる。
【0076】
<実施形態3>
実施形態3に係る照明器具70について図を用いて説明する。本実施形態では、造形物20を照明器具70の部品であるランプシェード71として利用する点に特徴を有する。本実施形態の照明器具70及びランプシェード71は、造形物20を備える製品の一例である。また、実施形態3では、スタンド型の照明器具70を例に挙げる。
【0077】
照明器具70は、
図14(a)に示すように、ランプシェード71と、ランプ台72と、を備える。ランプ台72は、円盤状の台座73と、台座73の中心に設けられた支柱74と、支柱の先端に設けられた光源(図示せず)と、を備える。光源は、電球、例えばLED(Light Emitting Diode)電球である。光源は、任意の光源を用いることができ、例えば蛍光灯等であってもよい。
【0078】
ランプシェード71は、
図14(a)に示すように、円筒形状であり、ランプ台72の上部において図示しない光源を囲むように設置される。ランプシェード71は、造形物20からなり、造形物20の上端及び下端には枠76及び77が設けられる。造形物20は、
図14(a)に示すように、ストライプ状に熱膨張層12が膨張されて形成される。
【0079】
また、造形物20は、
図14(b)に示すように、熱膨張層12が隆起することによって基材11が変形した領域Aと、熱膨張層12が隆起されておらず、基材11が変形していない領域Bとを備える。なお、
図14(b)は、
図14(a)において一点鎖線で囲んだ領域の断面図である。ここで、領域Aでは、熱膨張層12の隆起により、基材11が変形している。このような熱膨張層12の隆起と基材11の変形とを利用することにより、造形物20上に造形物を形成することができる。領域Aと領域Bとでは、透光性に差が生ずる場合もあるし、生じない場合もある。
【0080】
また、基材11は変形に応じて延ばされるため、領域Aにおける基材11の厚みは、変形していない領域Bの厚みと比較して薄い。特にこのような厚みの差が生じた場合に、領域Aと領域Bとで透光性が変わるように基材11の材料、厚み等を設計することが好適である。また、特に熱膨張層12の厚み等を変更し、熱膨張層12を透明(視認できない程度の色味を含む)又は薄い白色に形成することにより、このような透光性の差を表すことができ、更に好適である。具体的には、基材11が変形された領域Aは、変形していない領域Bと比較して高い透光性を有するように設計する。これにより、造形物20に形成された造形物による陰影を、光源によってランプシェード71の表面に浮き上がらせることができる。
【0081】
本実施形態において造形物20は、着色されていることは必須ではない。もっとも、
図14(c)に示すように、造形物20の表面及び裏面にカラーインク層81、83を設けることが可能である。カラーインク層81、83はいずれか一方のみが設けられてもよい。上述したように、特に、熱膨張層12上に設けられたカラーインク層81はマットな質感を呈する。一方、基材11の裏面に設けられるカラーインク層83は、光沢のある質感、いわゆるグロス感を呈する。このような材料の質感の違いを利用し、造形物20の表面と裏面とで異なる質感を表現することも可能である。特に
図14(a)に示すようなランプシェードでは、造形物20の表面も裏面も視認することが可能である。このため、特に表裏の異なる質感を視認でき、造形物20による表現の幅を拡げることができる。
【0082】
なお、ランプシェード71は、図示するような、自立するスタンドタイプの照明器具70に利用する場合に限られず、ペンダントタイプの照明器具、シーリングライトといった各種の照明器具に利用することが可能である。また、造形物20上に形成される形状は、図示した例に限られない。造形物20上に形成する形状に応じ、領域Aと比較してより高く変形する領域及び/又は領域Aと領域Bとの間の高さに変形する領域を更に設けてもよい。また、このような領域の数も任意である。
【0083】
更に、照明器具70は、光源と造形物20とを備えれば、その目的に限定はない。例えば、照明器具70は、周囲を照らす点に主目的がある必要はなく、単に陰影を浮き上がらせるものであることもでき、現れる陰影を観賞することに主目的を有するものでもよい。
【0084】
本実施形態では、ランプシェード71として、造形物20を用いる。上述したように、樹脂成形シート10に熱変換層82を印刷により形成し、電磁波を照射することによって、容易に所望の形状に変形させ、造形物20を製造することができる。従って、本実施形態のようなランプシェード71も容易に製造することができる。
【0085】
また、特に基材11が変形する領域と、変形しない領域とで、透光性を異ならせることにより、陰影を浮き上がらせるという効果を加えることも可能である。
【0086】
<実施形態4>
実施形態4に係る造形物22について、以下図面を用いて説明する。実施形態4に係る造形物22が、上述した実施形態1に係る造形物20と異なるのは、シート表面に表側変換層84を形成し、熱膨張層12の一部を更に膨張させる点にある。実施形態1と重複する部分については、同一の参照符号を使用し、詳細な説明を省略する。また、本実施形態のスイッチも実施形態1と同様に製品の一例である。
【0087】
スイッチ35の断面図を、
図15に示す。スイッチ35は、回路基板36上に設けられた下部コンタクト部37と、上部シート38と、上部シート38の下面に設けられた上部コンタクト部39と、造形物22と、を備える。
【0088】
造形物22は、上部シート38を覆うようにして、スイッチ35の最表面に設けられる。造形物22の基材11は、凸部11aを備え、更に凸部11aに対応する形状に形成された凹部11bを備える。凹部11bは、上部シート38に設けられた凸部38aを覆う形状、大きさに形成されている。また、特に本実施形態では、熱膨張層12の凸部12aの一部に更に凸部12dを備える。凸部12dは、後述するように、熱膨張層12の上面に表側変換層84を形成し、熱膨張層12の上面に電磁波を照射することによって、熱膨張層12の一部を膨張させる。凸部12dの形状は、スイッチ35の識別表示、例えば、
図5に示す電卓の数字、演算記号等としてもよい。また、凸部12dは、点字などであってもよい。また、造形物22は、熱膨張層12の上にカラーインク層81を備える。カラーインク層81によってスイッチの色、表示する数字等を表現することができる。カラーインク層81は、凸部12aの上に設けられるだけでなく、凸部12aの周囲にも設けられてもよい。更に、造形物22の上には、別途保護フィルムなどを設けてもよい。
【0089】
スイッチ35では、実施形態1と同様に、
図15に示す上側から造形物22が下方向に押圧される。造形物22及び上部シート38は、この力を受けて凹むように変形し、上部コンタクト部39が下部コンタクト部37に接触する。また、造形物22に対する力が解放されると、造形物22と及び上部シート38は、元の形状へと復元する。本実施形態では、特に凸部11dを備えるため、スイッチ35の触感を変更することが可能となる。
【0090】
次に、
図16に示すフローチャート及び
図17(a)〜
図17(e)に示す樹脂成形シート10の断面図を参照して、樹脂成形シート10を成形することによる造形物を形成する造形物の製造方法(樹脂成形処理)の流れを説明する。
【0091】
第1に、樹脂成形シート10を準備する。カラーインク層81を形成するためのカラー画像データ、樹脂成形シート10の表面において発泡及び膨張させる部分を示す表側発泡データ(表側変換層84に対応)と、樹脂成形シート10の裏面において発泡及び膨張させる部分を示す発泡データ(熱変換層82に対応)とは、事前に決定しておく。次に、印刷装置40を用いて、樹脂成形シート10の表面に表側変換層84を印刷する(ステップS21)。表側変換層84は、電磁波熱変換材料を含むインク、例えばカーボンブラックを含む発泡インクで形成された層である。印刷装置40は、指定された表側発泡データに従って、樹脂成形シート10の表面に発泡インクを用いて印刷を行う。その結果、
図17(a)に示すように、樹脂成形シート10の表面に表側変換層84が形成される。
【0092】
第2に、表側変換層84が印刷された樹脂成形シート10を、表面が上側を向くように膨張装置50へと搬送する。膨張装置50では、搬送された樹脂成形シート10へ照射部51によって電磁波を照射する(ステップS22)。具体的に説明すると、膨張装置で50は、照射部51によって樹脂成形シート10の表面に電磁波を照射する。樹脂成形シート10の表面に印刷された表側変換層84に含まれる熱変換材料は、照射された電磁波を吸収することによって発熱する。その結果、表側変換層84が発熱し、生じた熱が熱膨張層12に伝達し、熱膨張性材料が発泡、膨張する。その結果、
図17(b)に示すように、樹脂成形シート10の熱膨張層12のうちの表側変換層84が印刷された領域が膨張し、盛り上がる。なお、このステップでは、基材11を変形させてもさせなくともよい。
【0093】
第3に、樹脂成形シート10をその表面が上に向いた状態で印刷装置へと搬送し、印刷装置を用いて樹脂成形シート10の表面にカラー画像(カラーインク層81)を印刷する(ステップS23)。ここで、本実施形態では、カラー印刷を施す段階で、樹脂成形シート10には凸部12dが生じている。このため、凸部12dの形状に応じて、
図7に示す印刷装置40に代え、例えばフレキソ印刷装置といった印刷装置を用いてもよい。具体的には、シアンC、マゼンタM、イエローY及びブラックKの各印刷装置は、指定されたカラー画像データに従って、樹脂成形シート10の表面に、シアンC、マゼンタM、イエローY及びブラックKの画像を印刷する。その結果、
図17(c)に示すようにカラーインク層81が形成される。
【0094】
第4に、印刷装置を用いて、樹脂成形シート10の裏面に熱変換層82を印刷する(ステップS24)。熱変換層82は、電磁波熱変換材料を含むインク、例えばカーボンブラックを含む発泡インクで形成された層である。印刷装置は、指定された発泡データに従って、樹脂成形シート10の裏面に印刷を施す。その結果、
図17(d)に示すように、樹脂成形シート10の裏面に熱変換層82が形成される。なお、本ステップでも、樹脂成形シート10には凸部12dが生じている。このため、凸部12dの形状に応じて、
図7に示す印刷装置40に代え、適切な印刷装置、例えばフレキソ印刷装置を選択して印刷を実行してもよい。
【0095】
第5に、熱変換層82が印刷された樹脂成形シート10を、裏面が上側を向くように膨張装置50へと搬送する。膨張装置50では、搬送された樹脂成形シート10へ照射部51によって電磁波を照射する(ステップS25)。具体的に説明すると、膨張装置50では、照射部51によって樹脂成形シート10の裏面に電磁波を照射する。樹脂成形シート10の裏面に印刷された熱変換層82に含まれる熱変換材料は、照射された電磁波を吸収することによって発熱する。その結果、熱変換層82で生じた熱が熱膨張層12に伝達し、熱膨張性材料が発泡、膨張する。その結果、
図17(e)に示すように、樹脂成形シート10の熱膨張層12のうちの熱変換層82が印刷された領域が膨張し、盛り上がる。基材11は、熱膨張層12の膨張する力に引かれて変形する。
【0096】
本実施形態では、上述した実施形態と同様に、樹脂成形シート10に熱変換層を印刷により形成し、電磁波を照射することによって、容易に所望の形状に変形させ、造形物22を形成することができる。これに加え、表側変換層84を利用し、熱膨張層12の少なくとも一部を膨張させた後、熱変換層82を利用して基材11を変形させることができる。これにより、スイッチ35の表面の一部を浮きだたせ、造形物22の触感を変えることが可能という効果を更に備える。また、表側変換層84を利用することにより、造形物22の表面に形成可能な造形物の範囲を拡大させることができる。
【0097】
<実施形態5>
実施形態5に係る樹脂成形シート15を、図面を用いて説明する。実施形態5に係る樹脂成形シート15が、上述した実施形態と異なるのは、熱変換層82が形成される面である樹脂成形シート15の第2の面(裏面)を覆う第1のフィルム16を有する点にある。上述した実施形態と重複する部分は、同一の符号を付し、詳細な説明は省略する。
【0098】
図18(a)に示すように、樹脂成形シート15は、基材11と、熱膨張層12と、基材11の裏面上に設けられた第1のフィルム16と、を備える。第1のフィルム16は、熱膨張層12を膨張させた後に熱変換層を除去するために設けられる。従って、第1のフィルム16は、基材11の裏面上において、少なくとも熱変換層82が形成される領域に設けられていれば、基材11の裏面上に全体的に設けられても、部分的に設けられてもよい。また、第1のフィルム16は、基材11に対して剥離可能に接着されている。第1のフィルム16としては、公知の樹脂フィルムを用いることができ、例えば、ポリエチレン、ポリビニルアルコール、ポリプロピレン、ポリ塩化ビニル、又はこれらの共重合体等から選択される樹脂からなるフィルムである。第1のフィルム16は、例えば、エチレン−ビニルアルコール共重合体からなるフィルムを使用する。
【0099】
樹脂成形シート15を製造する場合は、
図2(b)に示す熱膨張層12を製造する工程の前又は後に、樹脂フィルムを熱圧着などの公知の方法を使用して基材11の裏面に設ける。
【0100】
また、熱変換層82を使用して樹脂成形シート15の熱膨張層12を膨張させた状態を
図18(b)に示す。熱変換層82は、
図18(b)に示すように、第1のフィルム16上であって、熱膨張層12を膨張させることで基材11を変形させる領域に設けられる。また、基材11の成形後は、
図18(c)に示すように、第1のフィルム16を基材11から除去する。これにより、本実施形態の造形物25では、第1のフィルム16と共に熱変換層82が除去される。
【0101】
本実施形態の造形物の製造方法では、実施形態1の
図9のフローチャートを用いて説明すると、ステップS2の熱変換層82を形成する工程では、第1のフィルム16上に熱変換層82を形成する。また、ステップS3の後に、第1のフィルム16を基材11から除去する工程を更に行う。
【0102】
また、実施形態4のように、樹脂成形シートの両方の面に熱変換層を形成する場合、
図18(d)に示すように、樹脂成形シート15の表側の面に第2のフィルム17を更に備えてもよい。なお、熱膨張層12上にカラーインク層81を形成する場合は、表側変換層84を用いて熱膨張層12を膨張させた後であって、カラーインク層81を形成する工程の前に第2のフィルム17を除去する工程を行うことが好適である。なお、本実施形態では、形成した熱変換層を除去するか否かにより、樹脂成形シート15は、第1のフィルム16と第2のフィルム17の少なくともいずれか一方を備える。
【0103】
本実施形態では、樹脂成形シート15が第1のフィルム16と第2のフィルム17の少なくともいずれか一方を備えることにより、熱膨張層12を膨張させた後に、熱変換層(熱変換層82、表側変換層84)を除去することができる。特に、熱変換層がカーボンを含む場合、熱変換層によって、造形物25の色がくすむなど、造形物25の外観に影響を及ぼすことがある。本実施形態では、使用後の熱変換層を除去できるため、熱変換層が造形物25の色に影響を与えることを防ぐことができる。
【0104】
上述した実施形態は、様々な変形及び応用が可能である。例えば、各実施形態の特徴を組み合わせることが可能である。一例としては、実施形態1で示した、造形物20の表面及び裏面にカラーインク層81、83を設ける構成を、実施形態3のシール60と組み合わせることも可能である。また、実施形態4においても、実施形態1の変形例と同様に上部シート38を省略し、熱変換層82に上部コンタクト部39の機能を持たせることも可能である。また、明示した以外の組み合わせも可能である。
【0105】
また、上述した実施形態1では、樹脂成形シート10の裏面に熱変換層82を形成し、基材11を成形する場合を例に挙げたが、これに限らず、熱変換層82を樹脂成形シート10の表面に形成して、基材11を成形することも可能である。
【0106】
上述した実施形態1では、電子機器30は入力部33の化粧カバーとして造形物20を備える構成を例に挙げたがこれに限られない。電子機器30は、入力部33以外の部分に造形物20、22を備えることも可能である。例えば、電子機器30の装飾部分に造形物20、22を用いることも可能である。
【0107】
また、基材11と熱膨張層12との間に、基材11と熱膨張層12との間の接着性を高めるための層を備えてもよい。また、熱膨張層12は、最表面に印刷方式に応じて必要とされる層を備えてもよい。例えば、熱膨張層12は、インクジェット方式で印刷する場合にはインクの定着を向上させるためのインク受容層を更に備えてもよい。同様に、基材11も最表面(
図1に示す基材11の下面)に印刷方式に応じて必要とされる層、例えばインク受容層を備えてもよい。
【0108】
上述したスイッチ、電子機器、シール、又は照明器具は、造形物20を備える製品の一例であって、本発明の製品は、上述した実施形態の製品に限られない。
【0109】
また、各実施形態において用いられている図は、いずれも各実施形態を説明するためのものである。従って、樹脂成形シートの各層の厚みが、図に示されているような比率で形成されると限定して解釈されることを意図するものではない。また、樹脂成形シート及び造形物に関する「表」又は「裏」の用語は、樹脂成形シート及び造形物の用途などを限定するものではない。
【0110】
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、本発明は特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。以下に、本願出願の当初の特許請求の範囲に記載された発明を付記する。
【0111】
[付記]
[付記1]
基材の一方の面上に熱膨張性材料を含む熱膨張層が形成された樹脂成形シートであって、
前記熱膨張層を膨張させた際、前記基材は前記熱膨張層の膨張に追従して変形し、前記基材がエンボス状に変形し、前記基材の変形量は前記熱膨張層の膨張高さより大きくなる、
ことを特徴とする樹脂成形シート。
【0112】
[付記2]
前記基材の厚みは、前記熱膨張層の厚みと同じ、又は前記熱膨張層より厚い、
ことを特徴とする付記1に記載の樹脂成形シート。
【0113】
[付記3]
前記基材は、熱可塑性樹脂から形成される、
ことを特徴とする付記1又は2に記載の樹脂成形シート。
【0114】
[付記4]
前記熱膨張層と前記基材の他方の面との少なくともいずれか一方の少なくとも一部を覆うように設けられたフィルムを更に備える、
ことを特徴とする付記1乃至3のいずれか1つに記載の樹脂成形シート。
【0115】
[付記5]
基材の一方の面上に熱膨張性材料を含む熱膨張層が形成された樹脂成形シートを用い、前記樹脂成形シートの少なくとも一方の面に電磁波を熱に変換する熱変換層を形成する工程と、
前記熱変換層に電磁波を照射し、前記熱膨張層を膨張させる工程と、を備え、
前記熱膨張層を膨張させる際、前記基材を前記熱膨張層の膨張に追従して変形させ、前記基材をエンボス状に変形させ、前記基材の変形量を前記熱膨張層の膨張高さより大きくする、
ことを特徴とする造形物の製造方法。
【0116】
[付記6]
前記基材の厚みは、前記熱膨張層の厚みと同じ、又は前記熱膨張層より厚い、
ことを特徴とする付記5に記載の造形物の製造方法。
【0117】
[付記7]
前記基材は、熱可塑性樹脂から形成される、
ことを特徴とする付記5又は6に記載の造形物の製造方法。
【0118】
[付記8]
前記樹脂成形シートは、前記熱膨張層と前記基材の他方の面との少なくともいずれか一方の少なくとも一部を覆うように設けられたフィルムを更に備え、
前記熱変換層を形成する工程では、前記フィルム上に前記熱変換層を形成する、
ことを特徴とする付記5乃至7のいずれか1つに記載の造形物の製造方法。
【0119】
[付記9]
基材の一方の面上に熱膨張性材料を含む熱膨張層を備え、
前記熱膨張層の少なくとも一部が膨張されており、
前記熱膨張層が膨張された領域において、前記基材はエンボス状に成形されており、該領域における前記基材の変形量は、前記熱膨張層の膨張高さより大きい、
ことを特徴とする造形物。
【0120】
[付記10]
付記9に記載の造形物を備える、
ことを特徴とする製品。
【0121】
[付記11]
前記製品はスイッチであって、
前記造形物と、
前記基材の他方の面において、前記エンボス状に成形された前記領域に対向して配置される下部コンタクト部と、
前記基材の他方の面上の前記領域に設けられた上部コンタクト部と、を備える、
ことを特徴とする付記10に記載の製品。
【0122】
[付記12]
前記上部コンタクト部は、上部シートを介して前記基材の他方の面上に設けられる、
ことを特徴とする付記11に記載の製品。
【0123】
[付記13]
前記領域上には、電磁波を熱に変換する熱変換層が設けられており、
前記熱変換層が、前記上部コンタクト部として機能する、
ことを特徴とする付記11に記載の製品。
【0124】
[付記14]
前記領域上には、電磁波を熱に変換する熱変換層が設けられており、
前記上部コンタクト部は、前記熱変換層の上に設けられる、
ことを特徴とする付記11に記載の製品。
【0125】
[付記15]
付記11乃至14のいずれか1つに記載のスイッチを備える電子機器である、
ことを特徴とする製品。
【0126】
[付記16]
前記製品はシールであって、
前記造形物を備え、
前記造形物の他方の面上に、接着層を更に備える、
ことを特徴とする付記10に記載の製品。
【0127】
[付記17]
前記製品は照明器具であって、
前記造形物をランプシェードとして備える、
ことを特徴とする付記10に記載の製品。
【0128】
[付記18]
前記造形物は、前記熱膨張層が膨張された領域における透光性が、前記熱膨張層が膨張されていない領域と比較して高い、
ことを特徴とする付記17に記載の製品。