特許第6607312号(P6607312)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6607312
(24)【登録日】2019年11月1日
(45)【発行日】2019年11月20日
(54)【発明の名称】インダクタ部品
(51)【国際特許分類】
   H01F 17/06 20060101AFI20191111BHJP
   H01F 17/00 20060101ALI20191111BHJP
   H01F 27/28 20060101ALI20191111BHJP
【FI】
   H01F17/06 A
   H01F17/00 C
   H01F27/28 K
【請求項の数】8
【全頁数】17
(21)【出願番号】特願2018-514527(P2018-514527)
(86)(22)【出願日】2017年4月19日
(86)【国際出願番号】JP2017015670
(87)【国際公開番号】WO2017188077
(87)【国際公開日】20171102
【審査請求日】2018年10月19日
(31)【優先権主張番号】特願2016-87338(P2016-87338)
(32)【優先日】2016年4月25日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000006231
【氏名又は名称】株式会社村田製作所
(74)【代理人】
【識別番号】100105980
【弁理士】
【氏名又は名称】梁瀬 右司
(74)【代理人】
【識別番号】100121027
【弁理士】
【氏名又は名称】木村 公一
(74)【代理人】
【識別番号】100178995
【弁理士】
【氏名又は名称】丸山 陽介
(72)【発明者】
【氏名】大坪 喜人
【審査官】 田中 崇大
(56)【参考文献】
【文献】 国際公開第2015/146736(WO,A1)
【文献】 実開平06−002659(JP,U)
【文献】 特開2014−038884(JP,A)
【文献】 特開平03−077360(JP,A)
【文献】 特表2010−516056(JP,A)
【文献】 国際公開第2010/004491(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01F17/00−21/12
27/00
27/02
27/06
27/08
27/23
27/26
27/28−27/29
27/30
27/32
27/36
27/42
38/42−41/04
41/08
41/10
H05K1/00−1/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
主面を有する樹脂層と、
前記樹脂層の内部に設定された巻回軸の周囲を巻回するインダクタ電極とを備え、
前記インダクタ電極は、内巻部と外巻部を有し、
前記内巻部は、
前記主面に対して垂直な方向から見たときに、一端が前記巻回軸に対して一方側に配置されるとともに他端が前記巻回軸に対して他方側に配置され、前記主面に対して垂直な方向における前記巻回軸の一方側で、前記巻回軸方向に並んで配列された複数の配線用の第1配線部と、
前記主面に対して垂直な方向から見たときに、一端が前記巻回軸に対して前記一方側に配置されるとともに他端が前記巻回軸に対して前記他方側に配置され、前記各第1配線部それぞれと複数の対を成すように、前記主面に対して垂直な方向における前記巻回軸の他方側で、前記巻回軸方向に並んで配列された複数の配線用の第2配線部と、
前記各第1配線部それぞれの前記一端と、当該第1配線部と対を成す前記第2配線部の前記一端とを接続する複数の第1金属ピンと、
前記各第1配線部それぞれの前記他端と、当該第1配線部と対を成す前記第2配線部に隣接する前記第2配線部の前記他端とを接続する複数の第2金属ピンとを有し、
前記外巻部は、
前記主面に対して垂直な方向から見たときに、一端が前記巻回軸に対して前記一方側に配置されるとともに他端が前記巻回軸に対して前記他方側に配置され、前記主面に対して垂直な方向における前記巻回軸の前記一方側であって前記各第1配線部よりも前記巻回軸から離れた位置で、前記巻回軸方向に並んで配列された複数の配線用の第3配線部と、
前記主面に対して垂直な方向から見たときに、一端が前記巻回軸に対して前記一方側に配置されるとともに他端が前記巻回軸に対して前記他方側に配置され、前記各第3配線部それぞれと複数の対を成すように、前記主面に対して垂直な方向における前記巻回軸の前記他方側であって前記各第2金属板よりも前記巻回軸から離れた位置で、前記巻回軸方向に並んで配列された複数の配線用の第4配線部と、
前記各第3配線部それぞれの前記一端と、当該第3配線部と対を成す前記第4配線部の前記一端とを接続する複数の第3金属ピンと、
前記各第3配線部それぞれの前記他端と、当該第3配線部と対を成す前記第4配線部に隣接する前記第4配線部の前記他端とを接続する複数の第4金属ピンとを有し、
複数の前記第1ないし第4金属ピンは同じ太さに形成され、
前記第1ないし第4配線部は、一端側に比べ他端側が幅広な形状を有し、
前記第1金属ピンおよび前記第3金属ピンは、前記主面に対して垂直な方向から見たときに、前記巻回軸の前記一方側に設定された領域であって、所定幅で前記巻回軸と平行な方向に伸びる第1領域内に、少なくとも一部が重なるように配列され
記第2金属ピンおよび前記第4金属ピンは、前記主面に対して垂直な方向から見たときに、前記巻回軸の前記他方側に設定された領域であって、前記所定幅で前記巻回軸と平行な方向に伸びる第2領域内に、少なくとも一部が重なるように配列され、
前記第1領域および前記第2領域の前記所定幅は、前記各金属ピンの横断面の最大幅であり、
前記各第1配線部と前記第3配線部とは、前記主面に対して垂直な方向から見たときに、互いに重ならないように、前記巻回軸の方向で交互に配列されている
ことを特徴とするインダクタ部品。
【請求項2】
前記巻回軸は、前記主面に対して垂直な方向から見たときに、円形をなし、
前記巻回軸には環状のコイルコアが配置されていることを特徴とする請求項1に記載のインダクタ部品。
【請求項3】
前記各第2配線部と前記各第4配線部とは、前記主面に対して垂直な方向から見たときに、互いに重ならないように、前記巻回軸の方向で交互に配列されていることを特徴とする請求項2に記載のインダクタ部品。
【請求項4】
前記各第1配線部、前記各第2配線部、前記各第3配線部、および前記各第4配線部のそれぞれは、前記主面に対して垂直な方向から見たときに、少なくとも前記一端が前記樹脂層の周縁に達するように形成されていることを特徴とする請求項1ないし3のいずれかに記載のインダクタ部品。
【請求項5】
前記各第1配線部、前記各第2配線部、前記各第3配線部、および前記各第4配線部のそれぞれは、金属板で形成されていることを特徴とする請求項1ないし4のいずれかに記載のインダクタ部品。
【請求項6】
前記各第1配線部、前記各第2配線部、前記各第3配線部、および前記各第4配線部のそれぞれは、めっきで形成されていることを特徴とする請求項1ないし4のいずれかに記載のインダクタ部品。
【請求項7】
前記インダクタ電極は2巻き以上の多重巻きの構造を持つことを特徴とする請求項1ないし6のいずれかに記載のインダクタ部品。
【請求項8】
前記各第2配線部と前記各第4配線部とが重なる部分を有する場合に、前記各第2配線部と前記各第4配線部との距離は、前記各第1配線部と前記各第3配線部との距離よりも大きいことを特徴とする請求項1または2に記載のインダクタ部品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、樹脂層とインダクタ電極とを備えるインダクタ部品に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、図8に示すように、プリント基板やプリプレグで形成されたコア基板101にコイル102が設けられたインダクタ部品100が知られている(例えば特許文献1参照)。
この場合、コア基板101の内部に環状の磁性体層103が配置され、コイル102が磁性体層103の周囲を螺旋状に巻回している。コイル102は、磁性体層103の内周に沿って配列された複数の内側層間接続導体102aと、これらの内側層間接続導体102aと複数の対を成すように磁性体層103の外周に沿って配列された複数の外側層間接続導体102bと、それぞれ所定の内側層間接続導体102aと外側層間接続導体102bの上端同士を接続する複数の上側配線パターン102cと、それぞれ所定の内側層間接続導体102aと外側層間接続導体102bの下端同士を接続する複数の下側配線パターン102dとで構成される。ここで、各層間接続導体102a,102bは、いずれもコア基板101を貫通する貫通孔の内面に導体膜が形成されてなるスルーホール導体で形成される。また、各配線パターン102c,102dは、いずれも導電性ペーストを用いた印刷パターンで形成される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2000−40620号(段落0018、図1など参照)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
近年の電子機器の小型・高機能化に伴って、これに搭載されるインダクタ部品の小型・高機能化が要求されている。インダクタ部品の特性向上を図るための一つの方策は、インダクタ電極(上述のインダクタ部品100ではコイル102)の抵抗値を下げることである。しかしながら、従来のインダクタ部品100では、コイル102を構成する各層間接続導体102a,102bはいずれも貫通孔の内面に導体膜が形成されたスルーホール導体で形成されており、上側配線パターン102cと下側配線パターン102dとの接続抵抗を下げるのにも限界がある。ここで、貫通孔に導電性ペーストを充填してビア導体化すれば、接続抵抗を下げることができるが、導電性ペーストは有機溶剤等に金属フィラを混合して形成されるのが一般的であり、金属部に空隙や隙間が発生する事から、この場合は純粋な金属よりも比抵抗が高い。また、各配線パターン102c,102dも同様に導電性ペーストで形成されており、インダクタ電極全体の低抵抗化を図るのが困難である。また、インダクタ部品の特性向上を図るための他の方策として、コイル102の巻数を増やすことが考えられるが、従来のインダクタ部品100でコイル102の巻数を増やそうとすると、各配線パターン102c、102dを細く形成する必要があり、インダクタ部品100の抵抗値が上がり特性が低下してしまうという問題がある。
【0005】
本発明は、上記した課題に鑑みてなされたものであり、小型で特性の優れたインダクタ部品を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記した目的を達成するために、本発明のインダクタ部品は、主面を有する樹脂層と、前記樹脂層の内部に設定された巻回軸の周囲を巻回するインダクタ電極とを備え、前記インダクタ電極は、内巻部と外巻部を有し、前記内巻部は、前記主面に対して垂直な方向から見たときに、一端が前記巻回軸に対して一方側に配置されるとともに他端が前記巻回軸に対して他方側に配置され、前記主面に対して垂直な方向における前記巻回軸の一方側で、前記巻回軸方向に並んで配列された複数の配線用の第1配線部と、前記主面に対して垂直な方向から見たときに、一端が前記巻回軸に対して前記一方側に配置されるとともに他端が前記巻回軸に対して前記他方側に配置され、前記各第1配線部それぞれと複数の対を成すように、前記主面に対して垂直な方向における前記巻回軸の他方側で、前記巻回軸方向に並んで配列された複数の配線用の第2配線部と、前記各第1配線部それぞれの前記一端と、当該第1配線部と対を成す前記第2配線部の前記一端とを接続する複数の第1金属ピンと、前記各第1配線部それぞれの前記他端と、当該第1配線部と対を成す前記第2配線部に隣接する前記第2配線部の前記他端とを接続する複数の第2金属ピンとを有し、前記外巻部は、前記主面に対して垂直な方向から見たときに、一端が前記巻回軸に対して前記一方側に配置されるとともに他端が前記巻回軸に対して前記他方側に配置され、前記主面に対して垂直な方向における前記巻回軸の前記一方側であって前記各第1配線部よりも前記巻回軸から離れた位置で、前記巻回軸方向に並んで配列された複数の配線用の第3配線部と、前記主面に対して垂直な方向から見たときに、一端が前記巻回軸に対して前記一方側に配置されるとともに他端が前記巻回軸に対して前記他方側に配置され、前記各第3配線部それぞれと複数の対を成すように、前記主面に対して垂直な方向における前記巻回軸の前記他方側であって前記各第2金属板よりも前記巻回軸から離れた位置で、前記巻回軸方向に並んで配列された複数の配線用の第4配線部と、前記各第3配線部それぞれの前記一端と、当該第3配線部と対を成す前記第4配線部の前記一端とを接続する複数の第3金属ピンと、前記各第3配線部それぞれの前記他端と、当該第3配線部と対を成す前記第4配線部に隣接する前記第4配線部の前記他端とを接続する複数の第4金属ピンとを有し、複数の前記第1ないし第4金属ピンは同じ太さに形成され、前記第1ないし第4配線部は、一端側に比べ他端側が幅広な形状を有し、前記第1金属ピンおよび前記第3金属ピンは、前記主面に対して垂直な方向から見たときに、前記巻回軸の前記一方側に設定された領域であって、所定幅で前記巻回軸と平行な方向に伸びる第1領域内に、少なくとも一部が重なるように配列され、前記第2金属ピンおよび前記第4金属ピンは、前記主面に対して垂直な方向から見たときに、前記巻回軸の前記他方側に設定された領域であって、前記所定幅で前記巻回軸と平行な方向に伸びる第2領域内に、少なくとも一部が重なるように配列され、前記第1領域および前記第2領域の前記所定幅は、前記各金属ピンの横断面の最大幅であり、前記各第1配線部と前記第3配線部とは、前記主面に対して垂直な方向から見たときに、互いに重ならないように、前記巻回軸の方向で交互に配列されていることを特徴としている。
【0007】
この構成によると、インダクタ電極の一部を、導電性ペーストやめっきよりも比抵抗が低い第1〜第4金属ピンで形成することにより、インダクタ電極全体の低抵抗化を図ることがでるため、インダクタ部品の特性(例えば、インダクタンス値)を向上することができる。また、インダクタ電極が内巻部と外巻部とを有する立体的な配線構造(多重巻構造)とすることで、例えば、各第1配線部と各第3配線部とを同一面に形成する場合と比較して、各配線部のパターン幅を広げて抵抗値を下げることができる。また、インダクタ電極が、内巻部と外巻部を有する多重巻き構成の場合、内巻部の配線パターンと外巻部の配線パターンが重なることにより、不要な寄生容量が生じてインダクタ特性が劣化する場合がある。そこで、各第1配線部と各第3配線部とを互いに重ならないように配列することで、両配線部が重なることに起因する寄生容量を低減できるため、インダクタ電極の特性を向上することができる。また、上記した従来のインダクタ電極を多重巻き構造にする場合、外巻部の層間接続導体は内巻部の層間接続導体よりもコイルコアの外側に配置するため、インダクタ部品が大型化するという問題があるが、各金属ピンを第1領域または第2領域に少なくとも一部が重なるように配列することで、インダクタ部品の大型化を防止することができる。すなわち、小型で特性が優れたインダクタ部品を提供することができる。また、従来のようにスルーホール導体やビアホール導体の形成が必要ないため、小型で特性の優れたインダクタ部品を安価に製造することができる。
【0008】
また、前記巻回軸は、前記主面に対して垂直な方向から見たときに、円形をなし、前記巻回軸には環状のコイルコアが配置されていてもよい。この場合、インダクタ電極のインダクタンス値を効果的に増やすことができる。
【0009】
また、前記各第2配線部と前記各第4配線部とは、前記主面に対して垂直な方向から見たときに、互いに重ならないように、前記巻回軸の方向で交互に配列されていてもよい。この場合、前記主面に対して垂直な方向における前記巻回軸の一方側だけでなく、他方側においても各配線部が重ならないように配列されるため、インダクタ電極の各配線部間に生じる寄生容量をさらに低減することができる。
【0010】
また、前記各第1配線部、前記各第2配線部、前記各第3配線部、および前記各第4配線部のそれぞれは、前記主面に対して垂直な方向から見たときに、少なくとも前記一端が前記樹脂層の周縁に達するように形成されていてもよい。この構成によると、インダクタ部品の金属部分が増えるため、インダクタ部品の放熱性を向上することができる。また、各配線部の一端が樹脂層の周縁に達することで各配線部の一部が樹脂層から露出した状態となるため、樹脂層内に溜まった熱が放熱され易くなる。
【0011】
また、前記各第1配線部、前記各第2配線部、前記各第3配線部、および前記各第4配線部のそれぞれは、金属板で形成されるようにしてもよい。この構成によると各配線部を比抵抗の低い金属板で形成することで、インダクタ部品全体の抵抗値を下げることができる。
【0012】
また、前記各第1配線部、前記各第2配線部、前記各第3配線部、および前記各第4配線部のそれぞれは、めっきで形成されるようにしてもよい。この構成によると、配線パターンの形成方法として一般的なめっきを用いることができるため、例えば、各配線部を配線基板の配線パターンにより形成することができ、実用的である。
【0013】
前記インダクタ電極は2巻き以上の多重巻きの構造であってもよい。この場合、インダクタ電極の巻き数を増やすことができる。
【0014】
前記各第2配線部と前記各第4配線部とが重なる部分を有する場合に、前記各第2配線部と前記各第4配線部との距離は、前記各第1配線部と前記各第3配線部との距離よりも大きくてもよい。この場合、各第2配線部と各第4配線部で重なる部分を有するために、寄生容量が発生する恐れがあるが、各第2配線部と各第4配線部との距離を、各第1配線部と各第3配線部との距離よりも大きくすることにより、寄生容量の発生を低減することができる。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、インダクタ電極の一部を、導電性ペーストやめっきよりも比抵抗が低い第1〜第4金属ピンで形成することにより、インダクタ電極全体の低抵抗化を図ることがでるため、インダクタ部品の特性(例えば、インダクタンス値)を向上することができる。また、各第1配線部と各第3配線部とを互いに重ならないように配列することで、両配線部が重なることに起因する寄生容量を低減することができるため、インダクタ電極の特性を向上することができる。更に、図示していないが本構造を展開する事で多重巻きの実現が可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】本発明の第1実施形態にかかるインダクタ部品の断面図である。
図2図1のインダクタ電極を説明するための図である。
図3図1のインダクタ電極の上側配線部を示す図である。
図4図1のインダクタ電極の下側配線部を示す図である。
図5】本発明の第2実施形態にかかるインダクタ電極を説明するための図である。
図6図5のインダクタ電極の上側配線部を示す図である。
図7図5のインダクタ電極の下側配線部を示す図である。
図8】従来のインダクタ部品の斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
<第1実施形態>
本発明の第1実施形態にかかるインダクタ部品について図1図4を参照して説明する。なお、図1はインダクタ電極の断面図である。図2はインダクタ電極の斜視図であって、配線構造を示す図である。また、図3(a)は、外巻上側配線部の平面図、図3(b)は内巻上側配線部の平面図、図3(c)は外巻上側配線部と内巻上側配線部を重ねた平面図、図4(a)は、内巻下側配線部の平面図、図4(b)は外巻下側配線部の平面図、図4(c)は内巻下側配線部と外巻下側配線部を重ねた平面図である。
【0018】
この実施形態のインダクタ部品1aは、インダクタ電極7、コイルコア4、および樹脂層11を備え、例えば、携帯端末装置等の電子機器のマザー基板に実装されるものである。
【0019】
コイルコア4は、環状に形成され(図3(a)参照)、Ni−Zn系やMn−Zn系フェライト等の一般的なコイルコアとして採用される磁性材料で形成される。また、樹脂層11は、第1樹脂層11a、第2樹脂層11b、第3樹脂層11cを有し、第2樹脂層11bは第1樹脂層11aの上面に積層され、第3樹脂層11cは第1樹脂層11aの下面に積層される。各樹脂層11a〜11cは、例えば、エポキシ樹脂などの一般的に封止樹脂として使用される種々の材料で形成することができる。
【0020】
インダクタ電極7は、図2に示すように、内巻部7aおよび外巻部7bを備える、いわゆる多重巻き構成であり、樹脂層11の内部であって、コイルコア4の周方向に設定された巻回軸WA(図3(a)参照)の周囲を巻回する。インダクタ電極7の内巻部7aは、複数の内巻上側配線部2a(本発明の「第1配線部」に相当)と、複数の内巻下側配線部2b(本発明の「第2配線部」に相当)と、複数の内巻内周側金属ピン3a(本発明の「第1金属ピン」に相当)と、複数の内巻外周側金属ピン3b(本発明の「第2金属ピン」に相当)とを有する。
【0021】
各内巻上側配線部2aは、いずれもコイルコア4の上側(本発明の「主面に対して垂直な方向における巻回軸の一方側」に相当)に配置されており、平面視したときに、一端がコイルコア4の内周側に配置されるとともに、他端がコイルコア4の外周側に配置された状態で、巻回軸WA方向(コイルコア4の周方向)に並んで配列される。このとき、各内巻上側配線部2aはいずれも第1樹脂層11aの上面に形成されており、各内巻上側配線部2aは同一平面上に配置される。
【0022】
各内巻下側配線部2bは、コイルコア4の下側(本発明の「主面に対して垂直な方向における巻回軸の他方側」に相当)において、各内巻上側配線部2aと複数の対を成すよう設けられる。このとき、各内巻下側配線部2bは、各内巻上側配線部2aと同様に、平面視したときに、一端がコイルコア4の内周側に配置されるとともに、他端がコイルコア4の外周側に配置された状態で、巻回軸WA方向(コイルコア4の周方向)に並んで配列される。このとき、各内巻下側配線部2bはいずれも第1樹脂層11aの下面に形成されており、各内巻下側配線部2bは同一平面上に配置される。
【0023】
各内巻内周側金属ピン3aは、いずれも対を成す一組の内巻上側配線部2aおよび内巻下側配線部2bの一端同士を接続する。この実施形態では、各内巻内周側金属ピン3aは、円柱状に形成され、長さ方向が樹脂層11の上面に対して略垂直な方向になるように配置される。また、各内巻内周側金属ピン3aは、上端面が接続対象の内巻上側配線部2aに接続され、下端面が接続対象の内巻下側配線部2bに接続される。また、各内巻内周側金属ピン3aは、平面視において、いずれも端面の全体がコイルコア4の内周側の第1領域5に収まるように配置される(図3(b)参照)。なお、第1領域5については後述する。
【0024】
各内巻外周側金属ピン3bは、いずれも1つの内巻上側配線部2aの他端と、これと対を成す内巻下側配線部2bに隣接する内巻下側配線部2bの他端とを接続する。この実施形態では、各内巻外周側金属ピン3bは、各内巻内周側金属ピン3aと同様に、円柱状に形成され、長さ方向が樹脂層11の上面に対して略垂直な方向になるように配置される。また、各内巻外周側金属ピン3bは、上端面が接続対象の内巻上側配線部2aに接続され、下端面が接続対象の内巻下側配線部2bに接続される。また、各内巻外周側金属ピン3bは、平面視において、いずれも端面の全体がコイルコア4の外周側の第2領域6に収まるように配置される(図3(b)参照)。なお、第2領域6については後述する。これらの構成により、コイルコア4の周囲を螺旋状に巻回するインダクタ電極7の内巻部7aが形成されている。
【0025】
インダクタ電極7の外巻部7bは、図2に示すように、複数の外巻上側配線部2c(本発明の「第3配線部」に相当)と、複数の外巻下側配線部2d(本発明の「第4配線部」に相当)と、複数の外巻内周側金属ピン3c(本発明の「第3金属ピン」に相当)と、複数の外巻外周側金属ピン3d(本発明の「第4金属ピン」に相当)とを有する。
【0026】
各外巻上側配線部2cは、いずれもコイルコア4の上側であって、各内巻上側配線部2aよりもコイルコア4から離れた位置に配置されており、平面視したときに、一端がコイルコア4の内周側に配置されるとともに、他端がコイルコア4の外周側に配置された状態で、巻回軸WA方向に並んで配列される。このとき、各外巻上側配線部2cはいずれも第2樹脂層11bの上面に形成されており、各外巻上側配線部2cは同一平面上に配置される。
【0027】
各外巻下側配線部2dは、コイルコア4の下側であって、各内巻下側配線部2bよりもコイルコア4から離れた位置において、各外巻上側配線部2cと複数の対をなすよう設けられる。各外巻下側配線部2dは、各外巻上側配線部2cと同様、平面視したときに、一端がコイルコア4の内周側に配置されるとともに、他端がコイルコア4の外周側に配置された状態で、巻回軸WA方向に並んで配列される。このとき、各外巻下側配線部2dはいずれも第3樹脂層11cの下面に形成されており、各外巻下側配線部2dは同一平面上に配置される。
【0028】
各外巻内周側金属ピン3cは、いずれも対をなす一組の外巻上側配線部2cおよび外巻下側配線部2dの一端同士を接続する。各外巻内周側金属ピン3cは、円柱状に形成され、長さ方向が樹脂層11の上面に対して略垂直な方向になるように配置される。また、各外巻内周側金属ピン3cは、上端面が接続対象の外巻上側配線部2cに接続され、下端面が接続対象の外巻下側配線部2dに接続される。また、各外巻内周側金属ピン3cは、平面視において、いずれも端面の全体がコイルコア4の内周側の第1領域5に収まるように配置される(図3(a)参照)。
【0029】
各外巻外周側金属ピン3dは、いずれも1つの外巻上側配線部2cの他端と、これと対を成す外巻下側配線部2dに隣接する外巻下側配線部2dの他端とを接続する。各外巻外周側金属ピン3dは、他の金属ピン3a〜3cと同様、円柱状に形成され、長さ方向が樹脂層11の上面に対して略垂直な方向になるように配置される。また、各外巻外周側金属ピン3dは、上端面が接続対象の外巻上側配線部2cに接続され、下端面が接続対象の外巻下側配線部2dに接続される。また、各外巻外周側金属ピン3dは、平面視において、いずれも端面の全体がコイルコア4の外周側の第2領域6に収まるように配置される(図3(a)参照)。これらの構成により、内巻部7aの外側でコイルコア4の周囲を螺旋状に巻回するインダクタ電極7の外巻部7bが形成されている。
【0030】
なお、各金属ピン3a〜3dは、例えば、Cu、Al、Ag、Niなどの配線パターンとして一般的に使用される金属またはこれらの合金で形成された線材をせん断加工するなどして形成することができる。また、この実施形態では、各金属ピン3a〜3dが略同じ太さで形成されている。
【0031】
また、各配線部2a〜2cは、例えば、導電性ペーストやめっきで用いて形成するか、導電性ペーストで形成された下地電極上にめっきで形成された表面電極の2重構造で形成することができる。
【0032】
次に、外巻上側配線部2cと内巻上側配線部2aの配置について、図3を参照して説明する。
【0033】
図3(a)に示すように、各外巻上側配線部2cは、コイルコア4の周方向(巻回軸WA方向)に沿って、略等間隔に配列されている。また、図3(b)に示すように、内巻上側配線部2aも、コイルコア4の周方向に沿って、略等間隔に配列されている。図3(c)に示すように、外巻上側配線部2cと内巻上側配線部2aを重ねて見た場合、外巻上側配線部2cと内巻上側配線部2aが交互に配列され、外巻上側配線部2cは、隣接する2つの内巻上側配線部2aと重ならないように配置される。
【0034】
同様に、図4を参照して、内巻下側配線部2bと外巻下側配線部2dの配置について説明する。図4(a)、(b)に示すように、各下側配線部2b、2dも各上側配線部2c、2aと同様に、環状のコイルコア4の周方向に沿って、略等間隔に配列されている。図4(c)に示すように、内巻下側配線部2bと外巻下側配線部2dを重ねて見た場合、内巻下側配線部2bと外巻下側配線部2dが交互に配列され、内巻下側配線部2bは、隣接する2つの外巻下側配線部2dと重ならないように配置される。
【0035】
次に、各金属ピン3a〜3dの配置について説明する。図3に示すように、コイルコア4の内周側には第1領域5、外周側には第2領域6が設定されている。第1領域5は各内周側金属ピン3a、3cの端面の最大幅(直径)と同じ幅を有する環状領域であり、第2領域6は各外周側金属ピン3b、3dの端面の最大幅(直径)と同じ幅を有する環状領域である。
【0036】
図3(a)に示すように、各外巻内周側金属ピン3cは、一方の端面31cの全体が第1領域5に収まるように配置され、各外巻外周側金属ピン3dは、一方の端面31dの全体が第2領域6に収まるように配置される。また、図3(b)に示すように、各内巻内周側金属ピン3aは、一方の端面31aの全体が第1領域5に収まるように配置され、各内巻外周側金属ピン3bは、一方の端面31bの全体が第2領域6に収まるように配置される。
【0037】
また、図3(c)に示すように、第1領域5において、各外巻内周側金属ピン3cの一方の端面31cと各内巻内周側金属ピン3aの一方の端面31aとは交互に配列され、第2領域6において、各外巻外周側金属ピン3dの一方の端面31dと各内巻外周側金属ピン3bの端面31bも交互に配列される。
【0038】
同様に、図4(a)、(b)に示すように、各金属ピン3a〜3dの他方の端面32a〜32dもそれぞれ、端面の全体が第1領域5または第2領域6に収まるように配置される。また、図4(c)に示すように、第1領域5、第2領域6のそれぞれにおいて、各金属ピン3a、3bおよび各金属ピン3c、3dは交互に配列される。
【0039】
なお、この実施形態では、各内周側金属ピン3a、3cの端面31a、31c、32a、32cの全体が第1領域5内に収まるように配列されており、第1領域5において、各内巻内周側金属ピン3aおよび外巻内周側金属ピン3cは交互に配列されている。すなわち、各端面31a、31c、32a、32cの中心が同一円上に配列されるとともに、各内巻内周側金属ピン3aと各外巻内周側金属ピン3cとが当該円の周方向で交互に配列される。なお、各金属ピン3a、3cは必ずしも端面の中心が同一円上に配置されていなくてもよく、少なくとも一部が第1領域5に重なるように配置すればよい。
【0040】
同様に、この実施形態では、各外周側金属ピン3b、3dの端面31b、31d、32b、32dの全体が第2領域6内に収まるように配列されており、第2領域6において、各内巻外周側金属ピン3bおよび外巻外周側金属ピン3dは交互に配列されている。すなわち、各端面31b、31d、32b、32dの中心が同一円上に配列されるとともに、各内巻外周側金属ピン3bと各外巻外周側金属ピン3dとが当該円の周方向で交互に配列される。なお、各金属ピン3b、3dは必ずしも端面の中心が同一円上に配置されていなくてもよく、少なくとも一部が第2領域6に重なるように配置すればよい。また、この実施形態では、第1領域5および第2領域6は所定幅を持つ環状領域に設定されているが、例えば、第1領域5および第2領域6が幅のない円でもよく、この場合、各金属ピン3a〜3dの端面31a〜31d、32a〜32dは当該円と交差するか、もしくは接するように配列される。
【0041】
ここで、図2を参照して、インダクタ電極7の構成を、インダクタ電極7の電流の流れと合わせて説明する。外巻下側配線部2dの1つである21dから入力した電流が、21dに接続された入力金属ピン3eを流れ、所定の外巻上側配線部2cの層に達する。この後、外巻上側配線部2cと外巻下側配線部2dとの間で外巻のコイルを形成し、外巻上側配線部2cの1つである21cに接続された接続金属ピン3fを経由し、電流が内巻下側配線部2bに達する。この後、内巻下側配線部2bと内巻上側配線部2aとの間で内巻のコイルを形成する。そして、内巻上側配線部2aの1つである21aから出力金属ピン3gを経由して外巻下側配線部2dの1つである2eに達し、電流がコイルから出力される。このようにして、コイルコア4を巻回軸とした内巻と外巻の多重のコイルが形成される。
【0042】
なお、図3(a)に示すように、入力金属ピン3eの一方の端面31e、接続金属ピン3fの一方の端面31fは、外巻上側配線部2cにおいて、それぞれ第1領域5、第2領域6に少なくとも一部が重なるように配置され、図3(b)に示すように、出力金属ピン3gの一方の端面31gは、内巻上側配線部2aにおいて、第2領域6に少なくとも一部が重なるように配置される。
【0043】
同様に、図4(a)に示すように、接続金属ピン3fの他方の端面32fは、内巻下側配線部2bにおいて、第2領域6に少なくとも一部が重なるように配置され、図4(b)に示すように、入力金属ピン3eの他方の端面32e、出力金属ピン3gの他方の端面32gは、外巻下側配線部2dにおいて、それぞれ、第1領域5、第2領域6に少なくとも一部が重なるように配置される。
【0044】
なお、樹脂層11の第2樹脂層11bおよび第3樹脂層11cが配線基板であってもよい。この場合、第2樹脂層11bおよび第3樹脂層11cは、ガラスエポキシ樹脂などで形成される。
【0045】
したがって、上記した実施形態によれば、各外周側金属ピン3b、3dの端面の中心が同一円上に配列されるため、インダクタ部品1の大型化を防止しつつ、多重巻き構造のインダクタ電極を実現することができる。また、コイルコア4の内周側の各内周側金属ピン3aおよび3cは、内側に行くほど配列できる本数が減り製造が難しくなるが、各内周側金属ピン3aおよび3cの端面の中心も同一円上に配列することで、スペースの小さいコイルコア4の内周側であっても、各内周側金属ピン3aおよび3cの配列が容易になる。
【0046】
また、平面視において、各上側配線部2aおよび2cが重ならないように配列され、各下側配線部2bおよび2dが重ならないように配列されているため、寄生容量によるコイル特性の劣化を防止することができる。さらに図示していないが、本技術を展開する事により内巻部と外巻部の2巻きだけではなく3巻き以上の多重巻きも可能となる。
【0047】
<第2実施形態>
本発明の第2実施形態にかかるインダクタ部品1bについて、図5図7を参照して説明する。なお、図5はインダクタ部品の斜視図であって、配線構造を示す図である。図6(a)は外巻上側配線部2c、図6(b)は内巻上側配線部2aの平面図、図6(c)は各上側配線部2c、2aを重ね合わせた図、図7(a)は内巻下側配線部2b、図7(b)は外巻下側配線部2dの平面図、図7(c)は各下側配線部2b、2dを重ね合わせた図である。
【0048】
この実施形態にかかるインダクタ部品1bが、図1〜4を参照して説明した第1実施形態と異なるところは、図5図7に示すように、巻回軸が円形ではないこと、コイルコアがないこと、各配線部2a〜2dがエッチングプレートにより形成されていること、および各配線部2a〜2dのコイルコア4の両端部が樹脂層11の周縁まで達していることである。その他の構成は第1実施形態のインダクタ部品1aと同じであるため、同一符号を付すことにより説明を省略する。
【0049】
インダクタ電極7は、図5に示すように、内巻部7aおよび外巻部7bを備える、いわゆる多重巻き構成であり、樹脂層11の主面(樹脂層11の上面または下面)と平行な方向に設定された巻回軸WAの周りを巻回する。なお、巻回軸WAにコイルコアが配置されていてもよい。
【0050】
次に、インダクタ電極7の構成及び配線構造を説明する。インダクタ電極7の内巻部7aは、複数の内巻上側配線部2a(本発明の「第1配線部」に相当)と、複数の内巻下側配線部2b(本発明の「第2配線部」に相当)と、複数の内巻左側金属ピン3A(本発明の「第1金属ピン」に相当)と、複数の内巻右側金属ピン3B(本発明の「第2金属ピン」に相当)とを有する。
【0051】
各内巻上側配線部2aは、いずれも巻回軸WAの上側(本発明の「主面に対して垂直な方向における巻回軸の一方側」に相当)に配置されており、平面視したときに、一端が巻回軸WAの左側(本発明の「巻回軸に対する一方側」に相当)に配置されるとともに、他端が巻回軸WAの右側(本発明の「巻回軸に対する他方側」に相当)に配置された状態で、巻回軸WA方向(巻回軸WAに沿った方向)に並んで配置される。このとき、各内巻上側配線部2aは同一平面上に配置される。
【0052】
各内巻下側配線部2bは、巻回軸WAの下側(本発明の「主面に対して垂直な方向における巻回軸の他方側」に相当)において、各内巻上側配線部2aと複数の対をなすように設けられる。このとき、各内巻下側配線部2bは、各内巻上側配線部2aと同様に、平面視したときに、一端が巻回軸WAの左側に配置されるととともに、他端が回軸WAの右側に配置された状態で、巻回軸WA方向に並んで配置される。このとき、各内巻下側配線部2bは同一平面上に配置される。
【0053】
各内巻左側金属ピン3Aは、いずれも対をなす一組の内巻上側配線部2aおよび内巻下側配線部2bの一端どうしを接続する。この実施形態では、各内巻左側金属ピン3Aは、円柱状に形成され、長さ方向が樹脂層11の上面に対して略垂直な方向になるように配置される。また、内巻左側金属ピン3Aは、上端面が接続対象の内巻上側配線部2aに接続され、下端面が接続対象の内巻下側配線部2bに接続される。また、各内巻左側金属ピン3Aは、平面視したときに、いずれも端面の全体が巻回軸WAの左側の後述する第1領域5に収まるように配置される(図6(b)参照)。
【0054】
各内巻右側金属ピン3Bは、いずれも1つの内巻上側配線部2aの他端と、これと対をなす内巻下側配線部2bに隣接する内巻下側配線部2bの他端とを接続する。この実施形態では、各内巻右側金属ピン3Bは、各内巻左側金属ピン3Aと同様に、円柱状に形成され、長さ方向が樹脂層11の上面に対して略垂直な方向になるように配置される。また、各内巻右側金属ピン3Bは、上端面が接続対象の内巻上側配線部2aに接続され、下端面が接続対象の内巻下側配線部2bに接続される。また、各内巻右側金属ピン3Bは、平面視したときに、いずれも端面の全体が巻回軸WAの右側の後述する第2領域6に収まるように配置される(図7(a)参照)。これらの構成により、巻回軸WAの周囲をらせん状に回するインダクタ電極7の内巻部7aが形成されている。
【0055】
インダクタ電極7の外巻部7bは、図5に示すように、複数の外巻上側配線部2c(本発明の「第3配線部」に相当)と、複数の外巻下側配線部2d(本発明の「第4配線部」に相当)と、複数の外巻左側金属ピン3C(本発明の「第3金属ピン」に相当)と、複数の外巻右側金属ピン3D(本発明の「第4金属ピン」に相当)とを有する。
【0056】
各外巻上側配線部2cは、いずれも巻回軸WAの上側であって、各内巻上側配線部2aよりも巻回軸WAから離れた位置に配置されており、平面視したときに、一端が巻回軸WAの左側に配置されるとともに、他端が巻回軸WAの右側に配置された状態で、巻回軸WA方向に並んで配列される。この時、各外巻上側配線部2cは同一平面上に配置される。
【0057】
各外巻下側配線部2dは、巻回軸WAの下側であって、各内巻下側配線部2bよりも巻回軸WAから離れた位置において、各外巻上側配線部2cと複数の対をなすように設けられる。各外巻下側配線部2dは、各外巻上側配線部2cと同様に、平面視したときに、一端が巻回軸WAの左側に配置されるとともに、他端が巻回軸WAの右側に配置された状態で、巻回軸WAの方向に並んで配列される。この時、各外巻下側配線部2dは同一平面上に配置される。
【0058】
各外巻左側金属ピン3Cは、いずれも対をなす一組の外巻上側配線部2cおよび外巻下側配線部2dの一端どうしを接続する。各外巻左側金属ピン3Cは、円柱状に形成され、長さ方向が樹脂層11の上面に対して略垂直な方向になるように配置される。また、各外巻左側金属ピン3Cは、いずれも上端面が接続対象の各外巻上側配線部2cに接続され、下端面が接続対象の外巻下側配線部2dに接続される。また各外巻左側金属ピン3Cは、平面視したときに、いずれも端面の全体が巻回軸WAの左側の第1領域5に収まるように配列される(図6(a)参照)。
【0059】
各外巻右側金属ピン3Dは、いずれも1つの外巻上側配線部2cの他端と、これと対をなす外巻下側配線部2dに隣接する外巻下側配線部2dの他端とを接続する。各外巻右側金属ピン3Dは、他の金属ピン3A〜3Cと同様に、円柱状に形成され、長さ方向が樹脂層11の上面に対して略垂直な方向になるように配置される。また、各外巻右側金属ピン3Dは、上端面が接続対象の外巻上側配線部2cに接続され、下端面が接続対象の外巻下側配線部2dに接続される。また、各外巻右側金属ピン3Dは、平面視したときに、いずれも端面の全体が巻回軸WAの右側の第2領域6に収まるように配列される(図7(b)参照)。これらの構成により、内巻部7aの外側で巻回軸WAの周囲を螺旋状に巻回するインダクタ電極7の外巻部7bが形成されている。
【0060】
また、図6および図7に示すように、各配線部2a〜2dは、例えば、Cuなどで形成された1枚の金属製のプレート(平面視矩形状)をエッチングすることにより形成することができる。各外巻上側配線部2cが形成される第1エッチングプレート8c(図6(a)参照)の場合、枠9c、各外巻上側配線部2cの領域だけを残し、それ以外をエッチングで除去し、各外巻上側配線部2cのそれぞれの両端部が枠9cで支持された状態の第1エッチングプレート8cを形成する。同様に、図6(b)、図7(a)、(b)に示すように、第2エッチングプレート8a、第3エッチングプレート8b、第4エッチングプレートdを形成することができる。
【0061】
各エッチングプレート8a〜8dと各金属ピン3A〜3Dを接続してインダクタ電極7を形成した後、例えばエポキシ樹脂等を充填して樹脂層を形成した後に、各エッチングプレート8a〜8dの枠9a〜9dをダイシング等により除去することで、各配線部2a〜2dの両端部が樹脂層11の周縁に達しているインダクタ部品1bを形成することができる。尚、金属板と金属ピンの接続は、半田接合、超音波接合、或いは導電性接着剤等の接合材を用いてする事が出来る。
【0062】
次に、外巻上側配線部2cと内巻上側配線部2aの配置について、図6を参照して説明する。
【0063】
図6(a)に示すように、各外巻上側配線部2cは、巻回軸WA方向に沿って、略等間隔に配列されている。また、図6(b)に示すように、各内巻上側配線部2aも、巻回軸WA方向に沿って、略等間隔に配列されている。また、図6(c)に示すように、各外巻上側配線部2cと各内巻上側配線部2aを重ねて見た場合、外巻上側配線部2cと内巻上側配線部2aが交互に配列され、外巻上側配線部2cは、隣接する内巻上側配線部2aと重ならないように配置される。
【0064】
同様に、図7を参照して、内巻下側配線部2bと外巻下側配線部2dの配置について説明する。図7(a)、(b)に示すように、各下側配線部2b、2dも各上側配線部2c、2aと同様に、巻回軸WAに沿って、略等間隔に配置されている。この実施形態では、図7(c)に示すように、各内巻下側配線部2bと各外巻下側配線部2dを重ねて見た場合には、各内巻下側配線部2bと各外巻下側配線部2dは重なる部分を有する。
【0065】
次に、各金属ピン3A〜3Dの配置について説明する。図6に示すように、巻回軸WAの左側には第1領域5、右側には第2領域6が設定されている。第1領域5は各左側金属ピン3A、3Cの端面の最大幅(直径)と同じ幅を有し、巻回軸WAと平行な方向に延びる帯状の領域であり、第2領域6は各右側金属ピン3B、3Dの端面の最大幅(直径)と同じ幅を有し、巻回軸WAと平行な方向に延びる帯状の領域である。
【0066】
図6(a)に示すように、各外巻左側金属ピン3Cは、一方の端面31Cの全体が第1領域5に収まるように配置され、各外巻右側金属ピン3Dは、一方の端面31Dの全体が第2領域6に収まるように配置される。また、図3(b)に示すように、各内巻左側金属ピン3Aは、一方の端面31Aの全体が第1領域5に収まるように配置され、各内巻右側金属ピン3Bは、一方の端面31Bの全体が第2領域6に収まるように配置される。
【0067】
また、図6(c)に示すように、第1領域5において、各外巻左側金属ピン3Cの一方の端面31Cと各内巻左側金属ピン3Aの一方の端面31Aとは交互に配列され、第2領域6において、各外巻右側金属ピン3Dの一方の端面31dと各内巻右側金属ピン3Bの一方の端面31Bも交互に配列される。
【0068】
同様に、図7(a)、(b)に示すように、各金属ピン3A〜3Dの他方の端面32A〜32Dもそれぞれ、端面の全体が第1領域5または第2領域6に収まるように配置される。
【0069】
なお、この実施形態では、各左側金属ピン3A、3Cの端面31A、31C、32A、32Cの全体が第1領域5内に収まるように配列されており、第1領域5において、各内巻左側金属ピン3Aおよび外巻左側金属ピン3Cは交互に配列されている。すなわち、各端面31A、31C、32A、32Cの中心が直線上に配列されるとともに、各内巻左側金属ピン3Aと各外巻左側金属ピン3Cとが当該直線の巻回軸WA方向で交互に配列される。なお、各金属ピン3A、3Cは必ずしも端面の中心が直線に配置されていなくてもよく、少なくとも一部が第1領域5に重なるように配置するか、あるいは、各金属ピン3A〜3Dの端面31A〜31D、32A〜32Dが当該直線と交差するか、もしくは接するように配置すればよい。
【0070】
同様に、この実施形態では、各右側金属ピン3B、3Dの端面31B、31D、32B、32Dの全体が第2領域6内に収まるように配列されており、第2領域6において、各内巻右側金属ピン3Bおよび外巻右側金属ピン3Dは交互に配列されている。すなわち、各端面31B、31D、32B、32Dの中心が直線上に配列されるとともに、各内巻右側金属ピン3Bと各外巻右側金属ピン3Dとが当該直線の巻回軸WA方向で交互に配列される。なお、各金属ピン3B、3Dは必ずしも端面の中心が直線上に配置されていなくてもよく、少なくとも一部が第2領域6に重なるように配置すればよい。
【0071】
また、この実施形態では、第1領域5および第2領域6は所定幅を持つ帯状の領域に設定されているが、例えば、第1領域5および第2領域6が幅のない直線であってもよく、この場合、各金属ピン3A〜3Dの端面31A〜31D、32A〜32Dは当該直線と交差するか、もしくは接するように配列される。
【0072】
ここで、図5を参照して、インダクタ電極7のインダクタ電極7の電流の流れと合わせて説明する。入力金属ピン3eの下端から入力された電流が、外巻上側配線部2cの層に達し、外巻上側配線部2cと外巻下側配線部2dとの間で外巻のコイルを形成する。その後、接続金属ピン3fを経由し、電流が内巻下側配線部2bに達する。この後、内巻下側配線部2bと内巻上側配線部2aとの間で内巻のコイルを形成する。そして、内巻上側配線部2aのうちの1つと接続された出力金属ピン3gから電流が出力される。このようにして、内巻と外巻の多重のコイルが形成される。
【0073】
なお、各内巻下側配線部2bと各外巻下側配線部2dとは重なる部分を有するため、寄生容量が発生する可能性があるが、各内巻下側配線部2bと各外巻下側配線部2dとの間の距離を大きくすることで、寄生容量を低減することもできる。
【0074】
したがって、上記した実施形態によれば、各右側金属ピン3B、3Dの端面の中心が第1領域5、第2領域6に収まるように配列されるため、インダクタ部品1bの大型化を防止しつつ、多重巻き構造のインダクタ電極を実現することができる。
【0075】
また、平面視において、各上側配線部2aおよび2cが重ならないように配列されているため、寄生容量によるコイル特性の劣化を防止することができる。また、各配線部2a〜2dをリードフレームで形成しているため、インダクタ電極7の抵抗値を下げ、インダクタ特性を向上させることができる。各配線部のコイルコアの外側の端部が樹脂層の周縁に達するように形成されているため、インダクタ部品の金属部分が増え、インダクタ部品の放熱性を向上することができる。また、各配線部の一部が樹脂層から露出した状態となり、樹脂層内に溜まった熱が放出されやすくなる。さらに金属板でコイルを形成するので、2巻き以上のコイル形成を容易に実現する事が出来る。
【0076】
なお、本発明は上記した各実施形態に限定されるものではなく、その趣旨を逸脱しない限りにおいて、上記したもの以外に種々の変更を行うことが可能であり、上記した各実施形態の構成をどのように組み合わせてもよい。例えば、上記した各実施形態では、各金属ピン3a〜3d、3A〜3D、3e〜3gが円柱状の場合について説明したが、例えば、長さ方向に垂直な方向の断面形状が矩形を有する角柱状に形成してもよい。
【産業上の利用可能性】
【0077】
本発明は、インダクタ電極が金属ピンと配線部とを有する種々のインダクタ部品に広く適用することができる。
【符号の説明】
【0078】
1a、1b インダクタ部品
2a 内巻上側配線部(第1配線部)
2b 内巻下側配線部(第2配線部)
2c 外巻上側配線部(第3配線部)
2d 外巻下側配線部(第4配線部)
3a 内巻内周側金属ピン(第1金属ピン)
3A 内巻左側金属ピン(第1金属ピン)
3b 内巻外周側金属ピン(第2金属ピン)
3B 内巻右側金属ピン(第2金属ピン)
3c 外巻内周側金属ピン(第3金属ピン)
3C 外巻左側金属ピン(第3金属ピン)
3d 外巻外周側金属ピン(第4金属ピン)
3D 外巻右側金属ピン(第4金属ピン)
4 コイルコア
5 第1領域
6 第2領域
7 インダクタ電極
WA 巻回軸
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8