(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記低音速部を前記弾性波伝搬方向に延長した領域以外の領域において、前記反射器に前記厚みが厚い部分が設けられている、請求項2〜5のいずれか1項に記載の弾性波装置。
前記反射器において、前記少なくとも2本の電極指の前記厚みが厚い部分の長さが、弾性波伝搬方向において、一方側から他方側に向かうにつれて変化している、請求項7に記載の弾性波装置。
前記反射器の前記少なくとも2本の電極指において、前記厚みが厚い部分の長さが、前記IDT電極側から前記IDT電極と遠い側に向かうにつれて順に長くなっている、請求項8に記載の弾性波装置。
前記反射器の前記少なくとも2本の電極指において、前記厚みが厚い部分の長さが、前記IDT電極側から前記IDT電極と遠い側に向かうにつれて順に短くなっている、請求項8に記載の弾性波装置。
前記複数本の電極指において、弾性波伝搬方向において隣り合うn本の電極指(nは2以上の自然数)の電極指の前記厚みが厚い部分の長さが同一とされており、n本電極指毎に、前記厚みが厚い部分の長さが、弾性波伝搬方向において変化している、請求項7に記載の弾性波装置。
前記反射器において、前記厚みが厚い部分が、前記反射器の前記電極指の一端側及び他端側の双方に設けられている、請求項1〜11のいずれか1項に記載の弾性波装置。
前記反射器において、前記厚みが厚い部分が、前記反射器の電極指の長さ方向中心を通り、前記弾性波伝搬方向に延びる仮想線に対して対称に配置されている、請求項12に記載の弾性波装置。
前記一対の反射器のうちの一方の前記反射器における前記厚みが厚い部分の配置と、他方の前記反射器における前記厚みが厚い部分の配置が対称である、請求項1に記載の弾性波装置。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来の弾性波装置では、縦モードによるリップルが大きいという問題があった。また、共振周波数と反共振周波数との間の領域である帯域における損失が大きいという問題もあった。
【0005】
本発明の目的は、縦モードのリップルが小さく、かつ帯域内損失が小さい、弾性波装置、高周波フロントエンド回路及び通信装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係る弾性波装置は、弾性波素子基板と、前記弾性波素子基板上に設けられており、複数本の電極指を有するIDT電極と、前記IDT電極の両側に配置されており、長さ方向を有する複数本の電極指を有する、一対の反射器とを備え、前記反射器の少なくとも1本の電極指が、前記長さ方向において相対的に厚みが厚い部分と、薄い部分とを有しており、前記反射器の前記厚みが厚い部分が、前記IDT電極の前記電極
指の厚みよりも厚くされている。
【0007】
本発明に係る弾性波装置のある特定の局面では、前記IDT電極の前記電極指が、一方電位に接続される第1の電極指と、他方電位に接続される第2の電極指とを有し、前記第1の電極指と前記第2の電極指とが弾性波伝搬方向において重なり合っている領域を交差領域としたときに、前記交差領域において、前記第1の電極指と前記第2の電極指が、中央部と、低音速部と、を有し、前記低音速部は、前記第1の電極指及び前記第2の電極指の延びる方向において、前記中央部の両側に設けられており、前記中央部よりも弾性波の伝搬速度が低い領域である。
【0008】
本発明に係る弾性波装置の他の特定の局面では、前記低音速部の厚みが、前記中央部における電極指の厚みよりも厚くされている。
【0009】
本発明に係る弾性波装置のさらに他の特定の局面では、前記低音速部において、付加膜が積層されており、前記反射器の前記厚みが厚い部分が、前記付加膜と同じ厚みの付加膜を有する。
【0010】
本発明に係る弾性波装置のさらに別の特定の局面では、前記低音速部において、付加膜が積層されており、前記反射器の前記厚みが厚い部分が、前記付加膜と同じ材料からなる付加膜を有する。
【0011】
本発明に係る弾性波装置の別の特定の局面では、前記低音速部を前記弾性波伝搬方向に延長した領域以外の領域において、前記反射器に前記厚みが厚い部分が設けられている。
【0012】
本発明に係る弾性波装置のさらに別の特定の局面では、前記反射器において、前記複数本の電極指のうち、少なくとも2本の電極指が、前記厚みが厚い部分を有している。
【0013】
本発明に係る弾性波装置のさらに他の特定の局面では、前記反射器において、前記少なくとも2本の電極指の前記厚みが厚い部分の長さが、弾性波伝搬方向において、一方側から他方側に向かうにつれて変化している。
【0014】
本発明に係る弾性波装置の別の特定の局面では、前記反射器の前記少なくとも2本の電極指において、前記厚みが厚い部分の長さが、前記IDT電極側から前記IDT電極と遠い側に向かうにつれて順に長くなっている。
【0015】
本発明に係る弾性波装置のさらに他の特定の局面では、前記反射器の前記少なくとも2本の電極指において、前記厚みが厚い部分の長さが、前記IDT電極側から前記IDT電極と遠い側に向かうにつれて順に短くなっている。
【0016】
本発明に係る弾性波装置のさらに別の特定の局面では、前記複数本の電極指において、弾性波伝搬方向において隣り合うn本の電極指(nは2以上の自然数)の電極指の前記厚みが厚い部分の長さが同一とされており、n本電極指毎に、前記厚みが厚い部分の長さが、弾性波伝搬方向において変化している。
【0017】
本発明に係る弾性波装置のさらに他の特定の局面では、前記反射器において、前記厚みが厚い部分が、前記反射器の前記電極指の一端側及び他端側の双方に設けられている。
【0018】
本発明に係る弾性波装置のさらに別の特定の局面では、前記反射器において、前記厚みが厚い部分が、前記反射器の電極指の長さ方向中心を通り、前記弾性波伝搬方向に延びる仮想線に対して対称に配置されている。
【0019】
本発明に係る弾性波装置のさらに他の特定の局面では、前記一対の反射器のうちの一方の前記反射器における前記厚みが厚い部分の配置と、他方の前記反射器における前記厚みが厚い部分の配置が対称である。
【0020】
本発明に係る高周波フロントエンド回路は、本発明に従って構成された弾性波装置と、パワーアンプとを備える。
【0021】
本発明に係る通信装置は、本発明に従って構成された高周波フロントエンド回路と、RF信号処理回路とを備える。
【発明の効果】
【0022】
本発明に係る弾性波装置によれば、縦モードのリップルを小さくすることができ、かつ帯域内損失を小さくすることが可能となる。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、図面を参照しつつ、本発明の具体的な実施形態を説明することにより、本発明を明らかにする。
【0025】
なお、本明細書に記載の各実施形態は、例示的なものであり、異なる実施形態間において、構成の部分的な置換または組み合わせが可能であることを指摘しておく。
【0026】
図1は、本発明の第1の実施形態に係る弾性波装置の電極構造を示す平面図である。本実施形態では、弾性波素子基板上に、
図1に示す電極構造が設けられている。この電極構造は、IDT電極2と、第1,第2の反射器3,4とを有する。第1,第2の反射器3,4は、IDT電極2の弾性波伝搬方向両側に配置されている。それによって、弾性波装置として、弾性波共振子が構成されている。
【0027】
IDT電極2の要部を
図2に部分切欠き平面図で示す。IDT電極2では、長さ方向を有する複数本の第1の電極指11と、長さ方向を有する複数本の第2の電極指12とが互いに間挿し合っている。第1の電極指11は、一端が第1のバスバー13に接続されている。第1のバスバー13は、
図1に示すように、第2のバスバー14と弾性波伝搬方向と直交する方向において隔てられている。第2のバスバー14に、複数本の第2の電極指12の一端が接続されている。
【0028】
弾性波装置1において、弾性波が伝搬する方向は、第1,第2の電極指11,12の長さ方向と直交する方向である。この弾性波伝搬方向において、第1の電極指11と第2の電極指12とが重なっている領域を交差領域Aとする。複数本の第1,第2の電極指11,12に交流電圧が印加されると、交差領域Aにおいて、弾性波が励振される。IDT電極2では、交差領域Aが、第1,第2の電極指11,12が延びる方向中央に位置している中央部Bと、中央部Bの電極指が延びる方向両側に設けられた低音速部Cとを有する。
図2では、一方の低音速部Cが設けられている部分が図示されている。
図1に示すように、第2のバスバー14側においても、第1の電極指11の先端側部分が第2の電極指12と弾性波伝搬方向において重なり合っている部分に、低音速部が設けられている。
【0029】
低音速部Cは、中央部Bに比べて、弾性波の伝搬速度が低い領域である。この低音速部Cが設けられていることにより、横モードリップルを抑制することができる。低音速部Cは、第1,第2の電極指11,12上に付加膜15を積層することにより設けられている。この付加膜15は、上記のように音速を低下させ得る限り、その材料は特に限定されない。質量付加効果が大きいため、付加膜15の材料としては、金属や無機絶縁材料が用いられる。また、より好ましくは、金属が用いられる。さらに好ましくは、第1,第2の電極指11,12と同じ材料を用いることが望ましい。これにより、製造工程の簡略化を図ることができる。
【0030】
図3は、第1の反射器3の一部を拡大して示す部分切欠き平面図である。第1の反射器3では、複数本の電極指16が弾性波伝搬方向と直交する方向に延びている。電極指16の一端が、第1のバスバー17に接続されている。本実施形態では、第1のバスバー17内に、開口部18が設けられている。この開口部18は、電極指16を第1のバスバー17側に延長した領域間に位置している。それによって、第1のバスバー17では、開口部18の電極指16側に細バスバー部17aが設けられている。細バスバー部17aに、電極指16が接続されている。
【0031】
なお、電極指16の反対側の端部においても、同様の構造が設けられている。
図1に示すように、第2のバスバー19の細バスバー部19aに、電極指16が接続されている。
【0032】
なお、上記細バスバー部17a,19aは、前述したIDT電極2の低音速部Cよりも第1,第2の電極指11,12が延びる方向において外側に位置している。従って、電極指16は、弾性波伝搬方向に視たときに、第1,第2の電極指11,12が延びる方向において、交差領域Aよりも外側に至っている。
【0033】
弾性波装置1の特徴は、
図3に示すように、複数本の電極指16において、付加膜21a〜21hがそれぞれ設けられていることにある。
【0034】
本実施形態では、複数本の電極指16において、IDT電極2側から、IDT電極2から遠ざかるにつれて、付加膜21a〜21hの長さが順に長くなっている。また、
図1に示すように、第2のバスバー19に近い側においても、電極指16上に同様に付加膜23a,23bが設けられている。それによって、第1の反射器3では、複数本の電極指16に重み付けが施されている。
【0035】
上記付加膜21a〜21hを設けることにより、電極指16に、残りの部分よりも厚みが厚い部分が設けられている。上記付加膜21a〜21hが設けられて、厚みが厚くされている部分の厚みは、弾性波伝搬方向において、付加膜21a〜21hが設けられている領域と重なっているIDT電極2の電極
指の厚みよりも厚くされている。
【0036】
なお、細バスバー部17a上にも付加膜22が設けられているが、付加膜22は設けられずともよい。本実施形態では、付加膜22に、複数の付加膜21a〜21hの一端が連ねられているため、パターニングにより、付加膜21a〜21hを容易に形成することができる。
【0037】
他方の細バスバー部19aにおいても、同様に、付加膜24が弾性波伝搬方向に延びるように設けられている。
【0038】
第2の反射器4も同様の構造を有する。すなわち、複数本の電極指26の一端が、第1のバスバー27に接続されており、他端が第2のバスバー29に接続されている。そして、複数本の電極指26上にも、上記と同様に、付加膜31a,31b,…,33a,33b,…が設けられている。
【0039】
IDT電極2の弾性波伝搬方向中心を通り、第1,第2の電極指11,12が延びる方向に延びる仮想線Dに対して、第1の反射器3の厚みが異なる部分の配置は、第2の反射器4における厚みが厚い部分の配置と対称とされている。また、第1の反射器3において、相対的に厚みが厚くされている部分の配置は、電極指16の長さ方向中心を通り、弾性波伝搬方向に延びる仮想線Eに対して対称に配置されている。
【0040】
弾性波装置1の特徴は、第1,第2の反射器3,4の電極指16,26において、相対的に厚みが厚い部分と、薄い部分とが設けられていることにある。それによって、縦モードリップルを抑制することができ、かつ帯域内における損失を小さくすることができる。これを、上記実施形態の弾性波装置1について下記の実施例1と、下記の比較例1とを対比することにより明らかにする。
【0041】
実施例1の詳細は以下の通りである。
図4は、実施例1の弾性波装置のIDT電極における交差領域内の中央部における弾性波装置の部分拡大断面図である。
図5は、実施例1の弾性波装置における、電極指の低音速部における弾性波装置の部分拡大断面図である。
図4に示すように、128.5°YカットX伝搬のLiNbO
3からなる弾性波素子基板41上に、NiCr膜42a、Pt膜42b、Ti膜42c、AlCu膜42d及びTi膜42eを順次成膜し、第2の電極指12を形成した。
図5に示すように、低音速部では、Ti膜42e上に、さらにPtからなる付加膜15を積層した。そして、IDT電極2を覆うように、
図4及び
図5に示すSiO
2膜43を形成した。SiO
2膜43上に、SiN膜44を積層した。
【0042】
実施例1において、IDT電極2における電極指の対数は40対、電極指ピッチで定まる波長λは4μm、交差幅すなわち交差領域Aの長さは100μm、デューティは0.5とした。第1,第2の反射器3,4において、電極指16または電極指26の本数は21本とした。
【0043】
実施例1では、前述したように、IDT電極2に最も近い電極指16から、IDT電極2から遠ざかるにつれて、電極指16上に、付加膜21a,21b,…及び23a,23b,…を設けた。第2の反射器4側も同様とした。
【0044】
この付加膜21a,21b,…,23c,23b,…の材料は、付加膜15と同様にPt膜を用いた。付加膜21a,21b,…,23a,23b,…の厚みは、付加膜15と同じ厚みとした。
【0045】
なお、実施例1の弾性波装置の共振周波数は888MHz、反共振周波数は918MHzである。
【0046】
他方、
図6は比較例1の弾性波装置における反射器の一部を拡大して示す部分切欠き平面図である。
図6に示すように、比較例1では、反射器101の複数本の電極指102上に、前述した付加膜21a,21b,…,23a,23b,…を設けなかった。比較例1は、その他の点は実施例1と同様とした。
【0047】
図7に、実施例1及び比較例1のS11リターンロス特性を示す。
図7から明らかなように、矢印Xで示すように、共振周波数付近における損失が、比較例1では、0.5dBだったのに対し、実施例1では0.45dBと小さくなっている。また、矢印Yで示すように、比較例1では、縦モードリップルが最大で2.24dBと大きかったのに対し、実施例1では、1.71dBと低減されていることがわかる。これは、第1,第2の反射器3,4において、厚みが厚くされている部分が、弾性波伝搬方向に沿ってその長さが変化していることによると考えられる。すなわち、交差幅方向の各領域において、反射波の位相が異なることとなり、反射波が互いに打ち消し合っているため、上記縦モードリップルを改善している。
【0048】
従って、弾性波装置1では、縦モードリップルの低減と、帯域内損失の改善とを両立し得ることが分かる。
【0049】
なお、本実施形態では、第1,第2の反射器3,4において、電極指16,26上に、付加膜21a,21b,…,23a,23b,…を設けて、厚みが厚い部分を設けていたが、付加膜を設けずに、エッチング等により電極指の一部を薄くし、相対的に厚みが薄い部分を設けてもよい。
【0050】
図8は、第2の実施形態に係る弾性波装置のIDT電極の一部及び一方の反射器の電極構造を示す部分拡大平面図である。
【0051】
第2の実施形態の弾性波装置では、反射器3Aにおいて、IDT電極2に隣接している側の電極指16から、2本の電極指ごとに付加膜21の長さが変化している。すなわち、IDT電極2から弾性波伝搬方向において遠ざかるにつれて、2本ごとに、電極指16に設けられた付加膜21の長さが長くなってきている。このように、n本(nは2以上の整数)毎に、付加膜21の長さが変化していてもよい。
【0052】
図9は、本発明の第3の実施形態に係る弾性波装置の平面図である。
【0053】
弾性波装置51は、弾性波素子基板52を有する。弾性波素子基板52は、LiTaO
3からなる。もっとも、弾性波素子基板52は、他の圧電単結晶や圧電セラミックスからなるものであってもよい。
【0054】
なお、弾性波素子基板52は、少なくとも表面に圧電性を有する基板である。例えば、表面に圧電薄膜を備え、当該圧電薄膜と音速の異なる膜、及び支持基板などの積層体で構成されていてもよい。また、弾性波素子基板52は、基板全体に圧電性を有していても良い。この場合、弾性波素子基板52は、圧電体層一層からなる圧電基板である。
【0055】
弾性波素子基板52上に、IDT電極53及び反射器54,55が設けられている。反射器54においては、複数本の電極指56の両端が短絡されている。電極指56,56上には、それぞれ、付加膜57が設けられている。付加膜57が設けられている部分が、残りの電極指部分に比べて相対的に厚くされている。この付加膜57が設けられている部分の厚みは、IDT電極53の第1,第2の電極指53a,53bよりも厚くされている。第1,第2の電極指53a,53bの厚みは、長さ方向において均一である。
【0056】
反射器55も、反射器54と同様に構成されており、電極指58上に、付加膜59が設けられている。反射器54では、付加膜59の長さは、IDT電極53に近い側から、IDT電極53から遠ざかるにつれて順次長くされている。
【0057】
弾性波装置51は、正規型のIDT電極53を有する弾性波装置である。
【0058】
本実施形態においても、付加膜57,59が上記のように設けられているため、縦モードリップルを抑制することができる。これを、
図10を参照して説明する。
【0059】
図10は、第3の実施形態の実施例としての実施例2と、比較例2とのリターンロス特性を示す図である。実線が実施例2の結果を、破線が比較例2の結果を示す。
【0060】
なお、実施例2の設計パラメータは以下の通りである。
【0061】
弾性波素子基板52:42°YカットX伝搬のLiTaO
3基板
IDT電極53:
電極指の対数=40対
交差幅=100μm
電極指ピッチで定まる波長λ=4.8μm
【0062】
IDT電極53の電極指の積層構造は、上から順にAlCu膜、Ti膜とした。
【0063】
反射器54,55の電極指の本数=21本
電極指56,58の波長λ=4.8μm
電極指56,58の電極積層構造は、IDT電極53と同じとした。
【0064】
付加膜57,59として、Ptからなる付加膜を設けた。
【0065】
実施例2の弾性波装置の共振周波数は810MHz、反共振周波数は841MHzである。
【0066】
比較例2では、上記付加膜57,59が設けられていないことを除いては、実施例2と同様とした。
【0067】
図10から明らかなように、763〜775MHzの範囲、784〜792MHzの範囲、及び796〜805MHzの範囲の各範囲において、実施例2によれば、比較例2に比べて、縦モードリップルが小さくなっていることがわかる。よって、実施例2においては、帯域内損失を劣化させること無く縦モードリップルを小さくすることができることがわかる。
【0068】
第3の実施形態の弾性波装置51のように、本発明においては、IDT電極は、ピストンモードを利用したものでなくともよい。
【0069】
図11は、第4の実施形態に係る弾性波装置の電極構造を説明するための部分拡大平面図である。第4の実施形態では、IDT電極61に、一方の反射器62が隣接している。反射器62は、複数本の電極指63を有する。そして、電極指63上に、付加膜64が設けられている。この付加膜64は、IDT電極61に最も近接している電極指63では電極指63の長さ方向全長にわたっている。そして、IDT電極61に最も近接している電極指63以外の電極指では、長さ方向中央に設けられたギャップ63aを介して対向するように一対の付加膜64が設けられている。そして、この付加膜64の長さが、IDT電極61から遠ざかるにつれて短くされている。
【0070】
このように、反射器62において厚みが厚い部分は、IDT電極61から遠ざかるにつれて、その長さが短くされていてもよい。
【0071】
図12は、本発明の第5の実施形態に係る弾性波装置の反射器の電極形状を説明するための部分切欠き拡大平面図である。
【0072】
反射器71では、電極指72上に付加膜73が設けられている。この場合、電極指72の長さ方向中央に付加膜73が設けられている構成と、電極指72の長さ方向両端にそれぞれ付加膜73が設けられている構成とが、弾性波伝搬方向において交互に配置されている。このように、本発明において、相対的に厚みが厚い部分の配置は、弾性波伝搬方向において順に変化するものに限らず、様々な形態とすることができる。その場合においても、付加膜が設けられている領域と、それ以外の領域とで、反射波の位相がずれるため、第1〜第4の実施形態と同様に、縦モードリップルの改善と、帯域内における損失の改善とを図ることができる。
【0073】
上記各実施形態の弾性波装置は、高周波フロントエンド回路のデュプレクサなどの部品として用いることができる。このような高周波フロントエンド回路の例を下記において説明する。
【0074】
図13は、高周波フロントエンド回路を有する通信装置の構成図である。なお、同図には、高周波フロントエンド回路230と接続される各構成要素、例えば、アンテナ素子202やRF信号処理回路(RFIC)203も併せて図示されている。高周波フロントエンド回路230及びRF信号処理回路203は、通信装置240を構成している。なお、通信装置240は、電源、CPUやディスプレイを含んでいてもよい。
【0075】
高周波フロントエンド回路230は、スイッチ225と、デュプレクサ201A,201Bと、フィルタ231,232と、ローノイズアンプ回路214,224と、パワーアンプ回路234a,234b,244a,244bとを備える。なお、
図13の高周波フロントエンド回路230及び通信装置240は、高周波フロントエンド回路及び通信装置の一例であって、この構成に限定されるものではない。
【0076】
デュプレクサ201Aは、フィルタ211,212を有する。デュプレクサ201Bは、フィルタ221,222を有する。デュプレクサ201A,201Bは、スイッチ225を介してアンテナ素子202に接続される。なお、上記弾性波装置を有する部品は、デュプレクサ201A,201Bであってもよいし、フィルタ211,212,221,222であってもよい。上記弾性波装置を有する部品は、デュプレクサ201A,201Bや、フィルタ211,212,221,222を構成する弾性波装置であってもよい。
【0077】
さらに、上記弾性波装置は、例えば、3つのフィルタのアンテナ端子が共通化されたトリプレクサや、6つのフィルタのアンテナ端子が共通化されたヘキサプレクサなど、3以上のフィルタを備えるマルチプレクサについても適用することができる。
【0078】
すなわち、上記弾性波装置は、弾性波共振子、フィルタ、デュプレクサ、3以上のフィルタを備えるマルチプレクサを含む。そして、該マルチプレクサは、送信フィルタ及び受信フィルタの双方を備える構成に限らず、送信フィルタのみ、または、受信フィルタのみを備える構成であってもかまわない。
【0079】
スイッチ225は、制御部(図示せず)からの制御信号に従って、アンテナ素子202と所定のバンドに対応する信号経路とを接続し、例えば、SPDT(Single Pole Double Throw)型のスイッチによって構成される。なお、アンテナ素子202と接続される信号経路は1つに限らず、複数であってもよい。つまり、高周波フロントエンド回路230は、キャリアアグリゲーションに対応していてもよい。
【0080】
ローノイズアンプ回路214は、アンテナ素子202、スイッチ225及びデュプレクサ201Aを経由した高周波信号(ここでは高周波受信信号)を増幅し、RF信号処理回路203へ出力する受信増幅回路である。ローノイズアンプ回路224は、アンテナ素子202、スイッチ225及びデュプレクサ201Bを経由した高周波信号(ここでは高周波受信信号)を増幅し、RF信号処理回路203へ出力する受信増幅回路である。
【0081】
パワーアンプ回路234a,234bは、RF信号処理回路203から出力された高周波信号(ここでは高周波送信信号)を増幅し、デュプレクサ201A及びスイッチ225を経由してアンテナ素子202に出力する送信増幅回路である。パワーアンプ回路244a,244bは、RF信号処理回路203から出力された高周波信号(ここでは高周波送信信号)を増幅し、デュプレクサ201B及びスイッチ225を経由してアンテナ素子202に出力する送信増幅回路である。
【0082】
RF信号処理回路203は、アンテナ素子202から受信信号経路を介して入力された高周波受信信号を、ダウンコンバートなどにより信号処理し、当該信号処理して生成された受信信号を出力する。また、RF信号処理回路203は、入力された送信信号をアップコンバートなどにより信号処理し、当該信号処理して生成された高周波送信信号をローノイズアンプ回路224へ出力する。RF信号処理回路203は、例えば、RFICである。なお、通信装置は、BB(ベースバンド)ICを含んでいてもよい。この場合、BBICは、RFICで処理された受信信号を信号処理する。また、BBICは、送信信号を信号処理し、RFICに出力する。BBICで処理された受信信号や、BBICが信号処理する前の送信信号は、例えば、画像信号や音声信号等である。なお、高周波フロントエンド回路230は、上述した各構成要素の間に、他の回路素子を備えていてもよい。
【0083】
なお、高周波フロントエンド回路230は、上記デュプレクサ201A,201Bに代わり、デュプレクサ201A,201Bの変形例に係るデュプレクサを備えていてもよい。
【0084】
他方、通信装置240におけるフィルタ231,232は、ローノイズアンプ回路214,224及びパワーアンプ回路234a,234b,244a,244bを介さず、RF信号処理回路203とスイッチ225との間に接続されている。フィルタ231,232も、デュプレクサ201A,201Bと同様に、スイッチ225を介してアンテナ素子202に接続される。
【0085】
以上のように構成された高周波フロントエンド回路230及び通信装置240によれば、本発明の弾性波装置である、弾性波共振子、フィルタ、デュプレクサ、3以上のフィルタを備えるマルチプレクサ等を備えることにより、本発明の効果を得ることができる。
【0086】
以上、本発明の実施形態に係る弾性波装置、高周波フロントエンド回路及び通信装置について、実施形態及びその変形例を挙げて説明したが、上記実施形態及び変形例における任意の構成要素を組み合わせて実現される別の実施形態や、上記実施形態に対して本発明の主旨を逸脱しない範囲で当業者が思いつく各種変形を施して得られる変形例や、本発明に係る高周波フロントエンド回路及び通信装置を内蔵した各種機器も本発明に含まれる。
【0087】
本発明は、弾性波共振子、フィルタ、デュプレクサ、マルチバンドシステムに適用できるマルチプレクサ、フロントエンド回路及び通信装置として、携帯電話などの通信機器に広く利用できる。