(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の詳細を説明する。なお、本明細書では、「(メタ)アクリル酸」、「(メタ)アクリレート」と表記した場合には、特に説明がない限り、それぞれ、「アクリル酸またはメタクリル酸」、「アクリレートまたはメタクリレート」を表すものとする。「アルキル基の炭素数が8である(メタ)アクリル酸アルキルエステルモノマー(a1)、および反応性官能基を有するモノマー(a2)を0を超えて10質量%以下、を含んだラジカル重合性モノマー混合物の共重合体であるアクリル系共重合体(A)」は、「アクリル系共重合体(A)」と略記することがある。また、「部」および「%」は、特に断りのない限り、それぞれ「質量部」および「質量%」を表す。
【0012】
≪粘着剤≫
本発明の粘着剤は、アクリル系共重合体(A)と硬化剤(B)と酸化防止剤(C)とを含む粘着剤であって、前記アクリル系共重合体(A)は、ガラス転移温度(Tg)が−66〜−52℃であり、かつ前記アクリル系共重合体(A)は、アルキル基の炭素数が8である(メタ)アクリル酸アルキルエステルモノマー(a1)、および反応性官能基を有するモノマー(a2)を含むラジカル重合性モノマー混合物の共重合体であり、前記反応性官能基を有するモノマー(a2)の含有量は、前記ラジカル重合性モノマー混合物100質量%中、0を超えて10質量%以下であり、
前記酸化防止剤(C)はリン系酸化防止剤を含み、前記リン系酸化防止剤の含有量は、前記アクリル系共重合体(A)100質量部に対して、0.15〜1.5質量部である。
【0013】
<アクリル系共重合体(A)>
アクリル系共重合体(A)は、ガラス転移温度(Tg)が−66〜−52℃であり、共重合体を構成するラジカル重合性モノマーとして下記(a1)、(a2)を含むラジカル重合性モノマー混合物の共重合体である。また、前記反応性官能基を有するモノマー(a2)の含有量は、前記ラジカル重合性モノマー混合物100質量%中、0を超えて10質量%以下である。共重合体を構成するモノマーとして、さらに下記(a3)およびその他モノマーを含んでもよい。
(a1)アルキル基の炭素数が8である(メタ)アクリル酸アルキルエステルモノマー
(a2)反応性官能基を有するモノマー
(a3)ホモポリマーのTgが−45℃以上であるラジカル重合性モノマー
【0014】
なお、本発明においてアクリル系共重合体(A)のTgは、下記式(1)(Fox式)に基づいて計算された値であり、Tg(単位:℃)=Tg(単位:K)−273とする。
1/Tg=W1/Tg1+W2/Tg2+・・・+Wn/Tgn (1)
[式(1)中、Tgは(メタ)アクリル系共重合体(A)のTg(単位:K)、Tgi(i=1、2、・・・n)はラジカル重合性モノマーiがホモポリマーを形成した際のTg(単位:K)、Wi(i=1、2、・・・n)はラジカル重合性モノマーiの全モノマー成分中の質量分率を表す。なお、ホモポリマーのTgは文献値やカタログ値などの公表値を使用する。]
上記式(1)は、アクリル系共重合体(A)が、モノマー1、モノマー2、・・・、モノマーnのn種類のモノマー成分から構成される場合の計算式である。
【0015】
アクリル系共重合体(A)のTgは、−65℃以上が好ましく、−63℃以上がより好ましい。また、−53℃以下が好ましい。上記範囲内であると、粘着力と再剥離性を両立しやすくなる。
【0016】
[アルキル基の炭素数が8である(メタ)アクリル酸アルキルエステルモノマー(a1)]
ジッピング現象を抑制し、再剥離性の向上をはかるために、本発明では、アクリル系共重合体(A)を構成するモノマーとして、(a1)を用いる。ここで、アルキル基の炭素数が8である(メタ)アクリル酸アルキルエステルモノマーとは、(メタ)アクリル酸アルキルエステル中のアルキル基の炭素数が8であるものを意味する。アルキル基の構造としては、直鎖構造および分岐構造のものいずれであっても良い。
【0017】
(a1)としては、例えば、(メタ)アクリル酸2−エチルヘキシル、(メタ)アクリル酸ノルマルオクチル、(メタ)アクリル酸イソオクチル等が挙げられる。これらの中でも、アクリル酸2−エチルヘキシルが好ましい。
共重合体を構成する全モノマー100質量%中の(a1)の含有量は、45質量%以上が好ましく、55質量%以上がより好ましい。また、95質量%以下が好ましく、90質量%以下がより好ましい。上記範囲内であると、ジッピング現象が抑制でき、再剥離性を付与しやすくなる。
【0018】
[反応性官能基を有するモノマー(a2)]
凝集力や再剥離性の向上をはかるために、本発明では、アクリル系共重合体(A)を構成するモノマーとして、(a2)を用いる。ここで、反応性官能基を有するモノマーとは、硬化剤(B)と反応しうる官能基を有するラジカル重合性モノマーを意味する。反応性官能基と硬化剤との架橋反応によりポリマーネットワークを形成し、凝集力や再剥離性の向上が期待できる。
【0019】
(a2)としては、カルボキシル基を有するモノマー、水酸基を有するモノマー、およびアミノ基を有するモノマーなどが挙げられ、カルボキシル基を有するモノマーまたは水酸基を有するモノマーが好ましく、水酸基を有するモノマーが剥離感を向上できるためより好ましい。共重合体を構成する全モノマー100質量%中の(a2)の含有量は0を超えて10質量%以下である必要があり、0.4質量%以上が好ましく、0.6質量%以上がさらに好ましい。また、9質量%以下が好ましい。上記範囲内であると、粘着力と再剥離性を両立しやすくなる。
【0020】
カルボキシル基を有するモノマーの具体例としては、(メタ)アクリル酸、(メタ)アクリル酸β−カルボキシエチル等が挙げられる。これらの中でも、(メタ)アクリル酸が好ましい。
共重合体を構成する全モノマー100質量%中のカルボキシル基を有するモノマーの含有率は、2質量%以上がより好ましく、5%以上がさらに好ましくい。また、9質量%以下が好ましく、7質量%以下がより好ましい。含有率が上記範囲内であると凝集力と再剥離性を両立しやすくなる。
【0021】
水酸基を有するモノマーの具体例としては、(メタ)アクリル酸ヒドロキシアルキルエステルが好ましい。具体例としては、(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシエチル、(メタ)アクリル酸4−ヒドロキシブチル、(メタ)アクリル酸6−ヒドロキシヘキシル等が挙げられる。これらの中でも(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシエチル、(メタ)アクリル酸4−ヒドロキシブチルが、剥離感を向上できるため好ましい。
【0022】
共重合体を構成する全モノマー100質量%中の水酸基を有するモノマーの含有量は、0.4質量%以上が好ましく、0.6質量%以上がより好ましい。また、9質量%以下が好ましく、7質量%以下がより好ましい。含有率が上記範囲内であると凝集力と再剥離性を両立しやすくなる。
【0023】
アミノ基を有するモノマーの具体例としては、無置換のアミノ基を有するモノマーおよび置換されたアミノ基を有するモノマーが挙げられるが、好ましくはアルキル基で置換されたアミノ基を有するモノマーであり、より好ましくは(メタ)アクリル酸N−アルキルアミノエステルである。ここで、アルキル基としては、炭素数1〜4のアルキル基が好ましい。アミノ基を有するモノマーの具体例としては、(メタ)アクリル酸アミノエチル等が挙げられる。共重合体を構成する全モノマー100質量%中のアミノ基を有するモノマーの含有量は、0.4質量%以上が好ましく、また、2質量%以下が好ましい。
【0024】
[ホモポリマーのTgが−45℃以上であるラジカル重合性モノマー(a3)]
ラジカル重合性モノマー(a3)は、ホモポリマーのTgが−45℃以上であるラジカル重合性モノマーであって、アルキル基の炭素数が8である(メタ)アクリル酸アルキルエステルモノマー(a1)、および反応性官能基を有するモノマー(a2)以外のラジカル重合性モノマーである。
【0025】
粘着力や再剥離性の向上をはかるために、本発明では、アクリル系共重合体(A)を構成するモノマーとして、(a3)を含有することが好ましい。ここで、ホモポリマーのTgが−45℃以上であるラジカル重合性モノマーとは、ラジカル重合によりホモポリマーを形成したときのTgが−45℃以上であるラジカル重合性モノマーを意味する。なお、ホモポリマーのTgは文献値やカタログ値などの公表値を使用する。(a3)を含有することで、再剥離性を維持しながらより粘着力が向上する。(a3)のTgは、−30℃以上であることで、粘着力が向上しやすくさらに好ましい。
【0026】
(a3)としては、例えば、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸プロピル、(メタ)アクリル酸イソプロピル、メタクリル酸ブチル、(メタ)アクリル酸イソブチル、(メタ)アクリル酸t−ブチル、メタクリル酸ヘキシル、(メタ)アクリル酸シクロヘキシル、(メタ)アクリル酸フェニル、(メタ)アクリル酸ベンジル、(メタ)アクリル酸イソボルニル等の(メタ)アクリル酸エステルモノマー、スチレン、α−メチルスチレン、酢酸ビニル、アクリロニトリル等のビニルモノマー、(メタ)アクリルアミドなどアミド基を有するビニルモノマーなどが挙げられ、これらの中でも(メタ)アクリル酸エステルモノマーが好ましく、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチルが耐熱性を向上できるためさらに好ましい。
【0027】
共重合体を構成する全モノマー100質量%中の(a3)の含有量は、5質量%以上が好ましく、10質量%以上がより好ましく、15質量%以上がさらに好ましい。また、40質量%以下が好ましく、30質量%以下がより好ましい。上記範囲内であると、粘着力と再剥離性を両立しやすくなる。
【0028】
[その他モノマー]
アクリル系共重合(A)は、共重合体を構成するモノマーとして、上記モノマー(a1)〜(a3)以外のその他モノマーを含んでも良い。その他モノマーとしては、上記モノマー(a1)、(a3)以外の(メタ)アクリル酸アルキルエステル、アルコキシ基を有する(メタ)アクリル酸アルキルエステル等が挙げられる。共重合体を構成する全モノマー100質量%中のその他モノマーの含有量は、50質量%以下が好ましく、30質量%以下がより好ましい。
【0029】
上記モノマー(a1)、(a3)以外の(メタ)アクリル酸アルキルエステルとしては、アクリル酸ブチル、アクリル酸ヘキシル、アクリル酸ヘプチル、アクリル酸ノニル、メタクリル酸ドデシル、メタクリル酸テトラデシルなどが挙げられ、その中でもアクリル酸ブチルが好ましい。
【0030】
アルコキシ基を有するモノマーとしては、(メタ)アクリル酸アルコキシアルキルエステルが好ましい。ここで、(メタ)アクリル酸アルコキシアルキルエステル中のアルコキシ基の炭素数は、1〜4であることが好ましく、1または2であることがより好ましい。また、(メタ)アクリル酸アルコキシアルキルエステル中のアルコキシ基に結合したアルキレン基の炭素数は、1〜8であることが好ましく、1〜4であることがより好ましい。
アルコキシ基を有するモノマーの具体例としては、(メタ)アクリル酸2−メトキシメチル、(メタ)アクリル酸2−メトキシエチル、(メタ)アクリル酸2−エトキシメチル、(メタ)アクリル酸2−エトキシエチル、(メタ)アクリル酸3−メトキシプロピル、(メタ)アクリル酸3−エトキシプロピル、(メタ)アクリル酸4−メトキシブチル、(メタ)アクリル酸4−エトキシブチル等が挙げられる。これらの中でも、(メタ)アクリル酸2−メトキシエチル及び(メタ)アクリル酸2−エトキシエチルが好ましい。
【0031】
[アクリル系共重合体の製造方法]
アクリル系共重合(A)は、公知の方法により製造することができるが、溶液重合により製造することが好ましい。溶液重合においては、重合する際に使用する溶剤としては、酢酸メチル、酢酸エチル等のエステル系溶剤、アセトン、メチルエチルケトン等のケトン系溶剤、トルエン、キシレン等の等の炭化水素系溶剤を使用することが好ましい。
【0032】
具体的には、溶剤、モノマー、重合開始剤等を窒素ガスなどの不活性ガス雰囲気下で、反応温度50〜90℃程度に加熱し、4〜12時間で重合反応させるのが一般的である。
【0033】
重合開始剤としては、アゾ系開始剤、過酸化物系開始剤を挙げることができる。これらの重合開始剤は、原料モノマー100質量部に対して、通常は0.01〜5質量部の範囲内の量で使用される。また、重合反応中に、連鎖移動剤、原料モノマー、溶媒を適宜添加してもよい。
【0034】
上記重合開始剤の内、アゾ系化合物としては、例えば、2,2'−アゾビスイソブチロニトリル、2,2'−アゾビス(2−メチルブチロニトリル)、1,1'−アゾビス(シクロヘキサン1−カルボニトリル)、2,2'−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)、2,2'−アゾビス(2,4−ジメチル−4−メトキシバレロニトリル)、ジメチル2,2'−アゾビス(2−メチルプロピオネート)、4,4'−アゾビス(4−シアノバレリック酸)、2,2'−アゾビス(2−ヒドロキシメチルプロピオニトリル)、2,2'−アゾビス[2−(2−イミダゾリン−2−イル)プロパン]等が挙げられる。
【0035】
また、上記重合開始剤の内、有機過酸化物としては、例えば、過酸化ベンゾイル、t-ブチルパーベンゾエイト、クメンヒドロパーオキシド、ジイソプロピルパーオキシジカーボネート、ジ−n−プロピルパーオキシジカーボネート、ジ(2−エトキシエチル)パーオキシジカーボネート、t-ブチルパーオキシネオデカノエート、t-ブチルパーオキシビバレート、(3,5,5−トリメチルヘキサノイル)パーオキシド、ジプロピオニルパーオキシド、ジアセチルパーオキシド等が挙げられる。
【0036】
アクリル系共重合体(A)の重量平均分子量は、50万以上が好ましく、70万以上がより好ましく、80万以上がさらに好ましい。また、200万以下が好ましく、150万以下がより好ましい。重量平均分子量が上記範囲内になることで、粘着力と再剥離性を両立しやすくなる。
【0037】
上記のような条件において、得られる共重合体の重量平均分子量は、使用する溶媒の種類および量、重合開始剤の種類および量、反応時間、反応温度などの反応条件を調整することにより調節することができる。
【0038】
<硬化剤(B)>
本発明の粘着剤は、硬化剤(B)を含む。
硬化剤(B)としては、イソシアネート硬化剤、エポキシ硬化剤、金属キレート硬化剤、アジリジン硬化剤などが挙げられ、その中でもイソシアネート硬化剤、エポキシ硬化剤が好ましい。硬化剤(B)を含むことで、粘着剤の凝集力が高まり再剥離性が向上する。硬化剤(B)は単独または2種以上を併用できる。
【0039】
イソシアネート硬化剤は、例えば、トリレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、水添キシリレンジイソシアネート、ジフェニルメタンジイソシアネート、水添ジフェニルメタンジイソシアネート、テトラメチルキシリレンジイソシアネート、ナフタレンジイソシアネート、トリフェニルメタントリイソシアネート、およびポリメチレンポリフェニルイソシアネート等のジイソシアネートと、トリメチロールプロパン等のポリオール化合物とのアダクト体、ならびにそのビュレット体、ならびにそのイソシアヌレート体、ならびに上記ジイソシアネートと、ポリエーテルポリオール、ポリエステルポリオール、アクリルポリオール、ポリブタジエンポリオール、およびポリイソプレンポリオール等の内のいずれかのポリオールとのアダクト体などの分子内に3個以上のイソシアネート基を有する化合物;またはこれらのアロファネート体等の分子内に2個のイソシアネート基を有する化合物等が挙げられる。これらの中でも、トリレンジイソシアネートのトリメチロールプロパンアダクト体、キシリレンジイソシアネートのトリメチロールプロパンアダクト体が粘着物性を容易に調整できるため好ましい。なお、イソシアネート基の個数は平均個数である。
【0040】
イソシアネート硬化剤の配合量は、アクリル系共重合体(A)100質量部に対して、0.3質量部以上であることが好ましく、1質量部以上であることがさらに好ましい。また8質量部以下であることが好ましく、5質量部以下であることがより好ましく、特に好ましくは3質量部以下である。上記範囲内とすることで粘着力と再剥離性を両立しやすくなる。
【0041】
エポキシ硬化剤は、例えば、ビスフェノールA−エピクロロヒドリン型のエポキシ系樹脂、エチレングリコールジグリシジルエーテル、ポリエチレングリコールジグリシジルエーテル、グリセリンジグリシジルエーテル、グリセリントリグリシジルエーテル、1,6−ヘキサンジオールジグリシジルエーテル、トリメチロールプロパントリグリシジルエーテル、ジグリシジルアニリン、N,N,N',N'−テトラグリシジル−m−キシリレンジアミン、1、3−ビス(N、N’−ジグリシジルアミノメチル)シクロヘキサン、およびN,N,N',N'−テトラグリシジルアミノフェニルメタン等が挙げられる。
【0042】
エポキシ硬化剤は、アクリル系共重合体(A)100質量部に対して、0.01質量部以上であることが好ましく、0.5質量部以上であることがさらに好ましい。また3質量部以下であることが好ましく、2質量部以下であるがさらに好ましい。上記範囲内とすることで粘着力と再剥離性を両立しやすくなる。
【0043】
金属キレート硬化剤は、例えば、アルミニウム、鉄、銅、亜鉛、スズ、チタン、ニッケル、アンチモン、マグネシウム、バナジウム、クロムおよびジルコニウムなどの多価金属と、アセチルアセトンまたはアセト酢酸エチルとの配位化合物等が挙げられる。
【0044】
金属キレート硬化剤は、アクリル系共重合体(A)100質量部に対して、0.5質量部以上であることが好ましく、1質量部以上であることがさらに好ましい。また3質量部以下であることが好ましく、2質量部以下であるがさらに好ましい。上記範囲内とすることで粘着力と再剥離性を両立しやすくなる。
【0045】
アジリジン硬化剤は、例えばN,N’−ジフェニルメタン−4,4'−ビス(1−アジリジンカルボキサイト)、N,N’−トルエン−2,4−ビス(1−アジリジンカルボキサイト)、ビスイソフタロイル−1−(2−メチルアジリジン)、トリ−1−アジリジニルホスフィンオキサイド、N,N’−ヘキサメチレン−1,6−ビス(1−アジリジンカルボキサイト)、2,2’−ビスヒドロキシメチルブタノール−トリス[3−(1−アジリジニル)プロピオネート]、トリメチロールプロパントリ−β−アジリジニルプロピオネート、テトラメチロールメタントリ−β−アジリジニルプロピオネート、およびトリス−2,4,6−(1−アジリジニル)−1、3、5−トリアジン等が挙げられる。
【0046】
アジリジン硬化剤は、アクリル系共重合体(A)100質量部に対して、0.1質量部以上であることが好ましく、0.5質量部以上であることがさらに好ましい。また2質量部以下であることが好ましく、1質量部以下であるがさらに好ましい。上記範囲内とすることで粘着力と再剥離性を両立しやすくなる。
【0047】
<酸化防止剤(C)>
本発明の粘着剤は、酸化防止剤(C)として、リン系酸化防止剤を含む。リン系酸化防止剤を含むことで粘着力を確保しながら再剥離性を向上させることが可能である。酸化防止剤(C)は、例えば、ホスファイト系が挙げられ、具体的にはイルガホス38、イルガホス126、イルガホス168(いずれもBASF社製)、スミライザーGP(住友化学社製)、アデカスタブPEP−8、アデカスタブPEP−36、アデカスタブHP−10、アデカスタブ2112、アデカスタブ1178、アデカスタブ1500、アデカスタブ135A、アデカスタブ3010、アデカスタブC、アデカスタブTPP(いずれもADEKA社製)等が挙げられる。酸化防止剤(C)は固体状であっても液状であっても良いが、25℃において液状であることがより好ましい。液状であることで耐熱性、耐湿熱性がより向上する。
【0048】
酸化防止剤(C)は、アクリル系共重合体(A)100質量部に対して、0.15質量部〜1.5部である必要があり、0.2質量部以上であることが好ましく、0.3質量部以上であることがさらに好ましい。また1質量部以下であることが好ましく、0.8質量部以下であることがさらに好ましい。上記範囲内とすることで粘着力と再剥離性を両立しやすくなる。
【0049】
本発明の粘着剤には、本発明の効果を損なわない範囲であれば、所望により各種樹脂や添加剤を添加することができる。例えば、粘着付与剤、酸化防止剤(C)以外の酸化防止剤、シランカップリング剤、熱または光安定剤、紫外線吸収剤、レベリング剤、消泡剤、抗菌剤、保湿剤、ビタミン類、顔料、染料、香料などを挙げることができる。これらは、必要に応じて有効量を配合する。
【0050】
≪粘着シート≫
本発明の粘着シートは、基材上に本発明の粘着剤の硬化物である粘着剤層を有するものである。粘着シートは、例えば、基材上に粘着剤を塗工、乾燥することにより製造できる。粘着剤層は基材の少なくとも一方の面に設けられていれば良い。
【0051】
粘着剤を塗工するに際し、適当な液状媒体、例えば、トルエン、キシレン、ヘキサン、ヘプタン等の炭化水素系溶剤;酢酸エチル、酢酸ブチル等のエステル系溶剤;アセトン、メチルエチルケトン等のケトン系溶剤;ジクロロメタン、クロロホルム等のハロゲン化炭化水素系溶剤;ジエチルエーテル、メトキシトルエン、ジオキサン等のエーテル系溶剤、その他の炭化水素系溶剤等の有機溶剤を添加して、粘度を調整することもできるし、粘着剤を加熱して粘度を低下させることもできる。
【0052】
基材としては、例えば、セロハン、プラスチックシート、ゴム、発泡体、布帛、ゴム布、樹脂含浸布、ガラス板、木材等が挙げられ、板状であってもフィルム状であっても良い。さらに基材は単独でも用いることもできるし、複数のものを積層してなる多層状態にあるものも用いることができる。更に基材の表面を剥離処理したもの(以下、剥離シートと呼ぶ)を用いることもできる。
【0053】
プラスチックシートとしては、プラスチックフィルムともいわれ、ポリビニルアルコールフィルムやトリアセチルセルロースフィルム、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリシクロオレフィン、エチレン−酢酸ビニル共重合体などのポリオレフィン系樹脂のフィルム、ポリエチレンテレフタレート,ポリブチレンテレフタレート,ポリエチレンナフタレートなどのポリエステル系樹脂のフィルム、ポリ塩化ビニルなどのビニル系樹脂のフィルム、ポリカーボネート系樹脂のフィルム、ポリノルボルネン系樹脂のフィルム、ポリアリレート系樹脂のフィルム、アクリル系樹脂のフィルム、ポリフェニレンサルファイド樹脂のフィルム、ポリスチレン樹脂のフィルム、ポリアミド系樹脂のフィルム、ポリイミド系樹脂のフィルム、エポキシ系樹脂のフィルムなどが挙げられる。
【0054】
本発明において粘着剤の塗工方法は、特に制限は無く、マイヤーバー、アプリケーター、刷毛、スプレー、ローラー、グラビアコーター、ダイコーター、リップコーター、コンマコーター、ナイフコーター、リバースコ−ター、スピンコーター等が挙げられる。乾燥方法には特に制限はなく、熱風乾燥、赤外線や減圧法を利用したものが挙げられる。乾燥条件としては粘着剤の硬化形態、膜厚や選択した溶剤にもよるが、通常60〜130℃程度の熱風加熱でよい。
【0055】
本発明の粘着シートは、(ア)剥離処理されたフィルムの剥離処理面に粘着剤を塗工、乾燥し、基材を粘着剤層の表面に積層したり、(イ)基材に粘着剤を直接塗工、乾燥し、粘着剤層の表面に剥離処理されたフィルムの剥離処理面を積層したりすることによって得ることができる。
【0056】
粘着剤層の厚さは、1〜200μmであることがより好ましく、3〜100μmであることが更に好ましい。
【実施例】
【0057】
以下に実施例及び比較例を挙げて、本発明について具体的に説明する。配合比に関しては、溶剤以外は固形分換算での値を示す。また、以下の例で使用した材料の略号、ラジカル重合性モノマーのTgはホモポリマーのTgを示す。
【0058】
[アルキル基の炭素数が8である(メタ)アクリル酸アルキルエステルモノマー(a1)]
2EHA:アクリル酸2−エチルヘキシル(Tg:−70℃)
OA:アクリル酸ノルマルオクチル(Tg:−65℃)
[反応性官能基を有するモノマー(a2)]
AA:アクリル酸(Tg:106℃)
HEMA:メタクリル酸2−ヒドロキシエチル(Tg:71℃)
4HBA:アクリル酸4−ヒドロキシブチル(Tg:−32℃)
[ホモポリマーのTgが−45℃以上であるラジカル重合性モノマー(a3)]
MA:アクリル酸メチル(Tg:10℃)
EA:アクリル酸エチル(Tg:−24℃)
VAc:酢酸ビニル(Tg:32℃)
[その他モノマー]
BA:アクリル酸ノルマルブチル(Tg:−54℃)
【0059】
<硬化剤(B)>
TDI/TMP:トリレンジイソシアネートのトリメチロールプロパンアダクト体
XDI/TMP:キシリレンジイソシアネートのトリメチロールプロパンアダクト体
TGXA:N,N,N’,N’−テトラグリシジル−m−キシリレンジアミン
【0060】
<酸化防止剤(C)>
IRG168:イルガホス168
(リン系酸化防止剤、25℃性状:白色粉末、BASF社製)
TPP:アデカスタブTPP
(リン系酸化防止剤、25℃性状:無色液体、ADEKA社製)
AO−60:アデカスタブAO−60
(フェノール系酸化防止剤、25℃性状:白色粉末、ADEKA社製)
【0061】
(合成例1)
撹拌機、温度計、還流冷却管、滴下漏斗、窒素導入管を備えた反応容器(以下、単に「反応容器」と称する)に、アクリル酸2−エチルヘキシル47.5部、アクリル酸2.5部、酢酸エチル60部、2,2'−アゾビスイソブチロニトリル(AIBN)0.02部を仕込んだ後、反応容器内の空気を窒素ガスで置換した。更に、滴下漏斗に、アクリル酸2−エチルヘキシル47.5部、アクリル酸2.5部、酢酸エチル20部、AIBN0.02部を仕込んだ。次いで、反応容器内を窒素雰囲気下で撹拌しながら、80℃まで加熱し、反応を開始した後、滴下漏斗内容物を2時間かけて滴下しながら、窒素雰囲気下にて還流温度で8時間重合反応を行った。反応終了後、冷却し、酢酸エチルを加えて希釈し、不揮発分30%のアクリル系共重合体(A)溶液を得た(共重合体1)。また、GPCを用いてアクリル系共重合体(A)の重量平均分子量(Mw)を測定したところ、重量平均分子量は70万であった。
【0062】
(合成例2〜17)
表1、2の材料および配合比率に変更した以外は、合成例1と同様の方法でそれぞれアクリル系共重合体を合成した。
上記合成例で得られたアクリル系共重合体の内、合成例1〜13で得られたアクリル系共重合体はアクリル系共重合体(A)に該当し、合成例14〜17で得られたアクリル系共重合体はアクリル系共重合体(A)ではないアクリル系共重合体に該当する。
【0063】
<重量平均分子量(Mw)>
Mwは、下記の条件により測定した。Mwの決定は、Mwが既知のポリスチレンを標準物質に用いた検量線法により決定した。
装置名:島津製作所社製、LC−GPCシステム「Prominence」
カラム:東ソー社製GMHXL 4本、東ソー社製HXL-H 1本を直列に連結
移動相溶媒:テトラヒドロフラン(THF)
流量:1.0ml/分
カラム温度:40℃
【0064】
【表1】
【0065】
【表2】
【0066】
(実施例1)
<粘着剤の作成>
得られたアクリル系共重合体(A)(共重合体1)の不揮発分100部に対して、硬化剤(B)としてトリレンジイソシネートのトリメチロールプロパンアダクト体を2部、酸化防止剤(C)としてイルガホス168を0.3部、希釈溶剤として酢酸エチルを添加し、撹拌することで、不揮発分を25%に調整した粘着剤を得た。
【0067】
<粘着シートの作成>
厚さ38μmの剥離性シート(ポリエチレンテレフタレート製)上に、乾燥後の厚みが25μmとなるように上記で得られた粘着剤を塗工し、熱風オーブンにて100℃、2分間乾燥して粘着剤層を作製した。乾燥後、厚さ50μmの基材(ポリエチレンテレフタレート製)にラミネートし、さらに23℃50%RHで7日間養生し、粘着シートを得た。
【0068】
(実施例2〜17、比較例1〜7)
表3、4に示す材料、組成、量になるよう変更した以外は、実施例1と同様に、それぞ
れ粘着剤および粘着シートを製造し、測定および評価を行った。尚、表中の数値は、特に
断りがない限り、部を表し、空欄は使用していないことを表す。
ただし、実施例1〜3、5、6、10、および12は参考例である。
【0069】
(1)粘着力
得られた粘着シートを幅25mm、長さ150mmの大きさに切り出した。次いで23℃50%RHの環境下、粘着シートから剥離性シートを剥がして露出した粘着剤層を、ステンレス(SUS)板に貼付し、2kgロールにより1往復させて測定試料を作製した。この測定試料を、23℃50%RHの環境下で24時間保存した後、引張試験機(オリエンテック社製「テンシロン」)を用いて、剥離速度300mm/分、剥離角度180°の条件で、剥離強度を測定した(剥離強度A)。評価は、下記基準に基づいて評価した。
評価基準
◎:剥離強度Aが4N/25mm以上8N/25mm未満(優良)
○:剥離強度Aが2N/25mm以上4N/25mm未満または8N/25mm以上10N/25mm未満(良好)
△:剥離強度Aが0.5N/25mm以上2N/25mm未満または10N/25mm以上12N/25mm未満(使用可)
×:剥離強度Aが0.5N/25mm未満または12N/25mm以上(使用不可)
【0070】
(2)保持力
得られた粘着シートを幅25mm、長さ150mmの大きさに切り出した。切り出した粘着シートから剥離性シートを剥がして露出した粘着剤層を、幅30mm、長さ150mmのSUS板の下端部幅25mm、長さ25mmの部分に貼着し、2kgロールで1往復させて圧着後、80℃雰囲気で粘着シートの下端部に1kgの荷重をかけ、7万秒放置することで保持力を測定した。評価は、粘着シートの貼付面上端部が元の位置から下にずれた長さを測定した。
評価基準
○:ずれた長さが0.5mm未満(良好)
△:ずれた長さが0.5mm以上2mm未満(使用可)
×:ずれた長さが2mm以上(使用不可)
【0071】
(3)耐熱性および耐湿熱性
得られた粘着シートを幅25mm、長さ150mmの大きさに切り出した。次いで23℃50%RHの環境下、試料から剥離性シートを剥がして露出した粘着剤層を、SUS板に貼付し、2kgロールにより1往復させて測定試料を作製した。この測定試料を、85℃5%RHの環境下で7日間保存した後(耐熱性)、あるいは、60℃95%RHの環境下で7日間保存した後(耐湿熱性)、引張試験機(オリエンテック社製「テンシロン」)を用いて、剥離速度300mm/分、剥離角度180°の条件で測定(剥離強度B)、および剥離後のSUS板表面の糊残りを目視で観察し、以下の基準に基づいて評価した。ただし、B/A=剥離強度B/剥離強度Aとする。
評価基準
◎:B/Aが1.5未満かつ糊残りが認められない。(優良)
○:B/Aが1.5以上2.0未満かつ糊残りが認められない。(良好)
△:B/Aが2.0以上3.0未満かつ糊残りが認められない。(使用可)
×:B/Aが3.0以上または糊残りが認められる。(使用不可)
【0072】
(4)剥離感
得られた粘着シートを幅25mm、長さ150mmの大きさに切り出した。次いで23℃50%RHの環境下、粘着シートから剥離性シートを剥がして露出した粘着剤層を、SUS板に貼付し、2kgロールにより1往復させて測定試料を作製した。この測定試料を、23℃50%RHの環境下で7日間保存した後、手による剥離を行い、剥離感および剥離時の引っかかり(ジッピング現象)の有無を確認した。評価は、下記基準に基づいて評価した。
評価基準
◎:剥離は軽く、ジッピング現象が認められない。(優良)
○:剥離は軽いが、わずかにジッピング現象が認められる。(良好)
×:剥離が重い、あるいは、ジッピング現象が認められる。(使用不可)
【0073】
【表3】
【0074】
【表4】
【0075】
表3、4の結果から、本発明の粘着剤は、粘着力が低すぎず適度な粘着力を有しながら剥離時の引っかかり(ジッピング現象)を抑制し、更には高温、高湿熱下に曝された後においても再剥離性に優れることが確認できた。
【課題】粘着力が低すぎず適度な粘着力を有しながら剥離時の引っかかり(ジッピング現象)を抑制し、更には高温、高湿熱下に曝された後においても再剥離性に優れる粘着剤を提供すること。
【解決手段】ガラス転移温度(Tg)が−66〜−52℃であり、かつアルキル基の炭素数が8である(メタ)アクリル酸アルキルエステルモノマー(a1)、および反応性官能基を有するモノマー(a2)を含むラジカル重合性モノマー混合物の共重合体であるアクリル系共重合体(A)と、硬化剤(B)と、リン系酸化防止剤を含む酸化防止剤(C)とを含み、前記反応性官能基を有するモノマー(a2)の含有量は、前記ラジカル重合性モノマー混合物100質量%中、0を超えて10質量%以下であり、前記リン系酸化防止剤の含有量は、前記アクリル系共重合体(A)100質量部に対して、0.15〜1.5質量部である、粘着剤により解決される。