特許第6607336号(P6607336)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】6607336
(24)【登録日】2019年11月1日
(45)【発行日】2019年11月20日
(54)【発明の名称】分離膜モジュール
(51)【国際特許分類】
   B01D 63/12 20060101AFI20191111BHJP
【FI】
   B01D63/12
【請求項の数】6
【全頁数】16
(21)【出願番号】特願2019-537195(P2019-537195)
(86)(22)【出願日】2019年4月12日
(86)【国際出願番号】JP2019016019
【審査請求日】2019年8月23日
(31)【優先権主張番号】特願2018-85398(P2018-85398)
(32)【優先日】2018年4月26日
(33)【優先権主張国】JP
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000003159
【氏名又は名称】東レ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002000
【氏名又は名称】特許業務法人栄光特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】前田 智宏
(72)【発明者】
【氏名】谷口 雅英
【審査官】 中村 泰三
(56)【参考文献】
【文献】 国際公開第2017/213892(WO,A1)
【文献】 特開2017−119237(JP,A)
【文献】 特開2017−047417(JP,A)
【文献】 国際公開第2013/129283(WO,A1)
【文献】 特開2012−217898(JP,A)
【文献】 特開昭59−179106(JP,A)
【文献】 特表2005−512800(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B01D 61/00−58、63/10−12、65/00−10
C02F 1/44
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
分離膜を備えた分離膜リーフを中心管の周囲に巻回した分離膜巻回体と、前記分離膜巻回体の軸方向の少なくとも片側の端部に設けられたテレスコープ防止板を備えた複数のスパイラル型分離膜エレメントを備え、
前記複数のスパイラル型分離膜エレメントは、圧力容器に一列に並ぶように装填され、
前記複数のスパイラル型分離膜エレメントのうちの1つである第1のスパイラル型分離膜エレメントと、前記複数のスパイラル型分離膜エレメントのうちの他の1つである第2のスパイラル型分離膜エレメントとが、前記分離膜リーフの巻回方向が反対方向となるように装填された、分離膜モジュール。
【請求項2】
前記圧力容器の被処理水供給方向の最上流部に前記第1のスパイラル型分離膜エレメントが装填され、前記最上流部から2番目に前記第2のスパイラル型分離膜エレメントが装填された、請求項1に記載の分離膜モジュール。
【請求項3】
互いに隣接するスパイラル型分離膜エレメントの前記分離膜リーフの巻回方向が反対方向となるように装填された、請求項1または2に記載の分離膜モジュール。
【請求項4】
互いに連結するスパイラル型分離膜エレメントの連結部は、互いのスパイラル型分離膜エレメントの回転方向の相対移動を制限する構造を有している、請求項1〜3のいずれか1項に記載の分離膜モジュール。
【請求項5】
前記連結部は前記中心管および前記テレスコープ防止板の少なくとも一方に設けられ、嵌合構造を有している、請求項4に記載の分離膜モジュール。
【請求項6】
浸透圧が2MPa以上の被処理水を処理するものである、請求項1〜5のいずれか1項に記載の分離膜モジュール。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、海水や、塩分等の溶質を含む河川水、地下水、湖水、廃水処理等の原水から、溶質濃度の低い透過水および溶質濃度の高い濃縮水を得るための複数のスパイラル型分離膜エレメントを一列に並ぶように装填した分離膜モジュールに関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、水資源の枯渇が深刻になりつつあり、これまで利用されてこなかった水資源の活用が検討されている。特に、最も身近でそのままでは利用できなかった海水から飲料水を製造する技術、所謂“海水淡水化”、更には下廃水を浄化し、処理水を淡水化する技術、所謂“下廃水再利用”が注目されてきている。
【0003】
海水淡水化は、従来、水資源が極端に少なく、かつ、石油による熱資源が非常に豊富である中東地域で蒸発法を中心に実用化されてきているが、熱源が豊富でない中東以外の地域ではエネルギー効率の高い逆浸透法が採用されている。しかしながら、最近では、逆浸透法の技術進歩による信頼性の向上やコストダウンが進み、中東地域において、逆浸透法を採用した海水淡水化プラントが建設され、世界的な展開を見せつつある。
【0004】
また、内陸や海岸沿いの都市部や工業地域といった水源がないような地域や、排水規制のため放流量が制約されているような地域で、下廃水再利用が適用され始めている。特に、水源が乏しい島国のシンガポールでは、国内で発生する下水を処理後、海に放流せずに貯留し、逆浸透膜で飲料できるレベルの水にまで再生し、水不足に対応している。
【0005】
海水淡水化や下廃水再利用に適用される逆浸透法では、塩分等の溶質を含んだ水に浸透圧以上の圧力を加えて逆浸透膜を透過させることで、溶質が除去された水と溶質が濃縮された水を得ることができる。この技術を適用することで、例えば、海水、かん水、有害物を含んだ水から飲料水を得ることも可能であるし、また、工業用超純水の製造、排水処理、有価物の回収等も可能である。
【0006】
逆浸透膜を適用した水処理装置を安定運転させるためには、原水水質に適した前処理が重要であり、前処理が不十分だと、逆浸透膜が劣化したりファウリング(膜面汚れ)したりして、安定運転ができなくなる。一方、前処理を十分に行っても、長期間運転を継続すると、配管や逆浸透膜モジュール内にバイオフィルムが形成され、その結果、逆浸透膜のバイオファウリングが発生し、安定運転ができなくなる。
【0007】
分離膜は、平膜、管状膜、中空糸膜等様々な形態を有するが、平膜の場合、スパイラル型分離膜エレメントという形態で用いられることが多い。スパイラル型分離膜エレメントの構造としては、例えば、特許文献1に示すように、供給水(=被処理水)と透過水が混合しないように端部が封止された構造の分離膜、並びに供給側流路材及び透過側流路材の積層体の単数または複数が、有孔の中心管の周囲にスパイラル状に巻回され、その分離膜巻回体の少なくとも片端に端板が装着され、分離膜巻回体の外周面をガラス繊維とエポキシ樹脂からなる繊維強化剤(FRP)によってシェル状に固められているものが挙げられる。
【0008】
スパイラル型分離膜エレメントでは、被処理水が一端面より供給され、供給側流路材に沿って流動しながら成分の一部(例えば、海水淡水化の場合は水)が分離膜を透過することによって分離される。このとき、スパイラル状の分離膜巻回体同士が軸方向にずれ、端部が円錐形になるテレスコープ現象と呼ばれる現象が起きることがある。なお、スパイラル型分離膜エレメントの端板は、分離膜巻回体が円錐状に伸張することを防止する役割等を果たすため、テレスコープ防止板と呼ばれている。
【0009】
その後、分離膜を透過した成分(透過水)は、透過側流路材に沿って流動して、中心管内へとその側面の孔から流入し、中心管内を流動し、透過水として取り出される。一方、非透過成分(例えば、海水淡水化の場合は塩分)を高濃度で含有する処理水は、スパイラル型分離膜エレメントの他端面から濃縮水として取り出される。このようなスパイラル型分離膜エレメントは、供給水流路材が均一に配置され、偏流が生じにくいという利点を持っているが、前処理が不十分だった場合、被処理水が供給される膜面上にファウリング物質が蓄積しやすいという問題点を有している。
【0010】
特に、スパイラル型分離膜エレメントは、通常複数のスパイラル型分離膜エレメントを直列接続して、1つの圧力容器に装填して用いられることが多く、この場合、前述のファウリングは、先頭のスパイラル型分離膜エレメントで顕著に発生し易い。更に、海水淡水化の場合、浸透圧の影響によって、溶質濃度の低い先頭スパイラル型分離膜エレメントでは透過流束が大きく、膜面上にファウリング物質が供給され易いため、ファウリングが促進される。一方、溶質の濃縮に伴って浸透圧が上昇した最後方のスパイラル型分離膜エレメントでは、透過流束が小さいため、ファウリングが発生し難くなる傾向がある。
【0011】
ファウリングが発生すると、スパイラル状の分離膜巻回体が軸方向にずれるだけでなく、分離膜巻回体が半径方向に広がり(膨れ)、分離膜巻回体間に歪な隙間が生じるチャネリング現象が発生し易くなり、その結果、テレスコープ現象が発生し易くなる。
【0012】
また、分離膜、供給側流路材及び透過側流路材がクリープ変形し、それらの厚みが減少する場合もある。このように、供給側流路が部分的に狭窄変形あるいは拡大変形することにより、供給側流路中の被処理水の流れが大きく偏流化し、スパイラル型分離膜エレメントの性能低下が起こることが多い。
【0013】
チャネリング現象や分離膜及び供給側流路材の飛び出し発生防止のため、薬液洗浄(=化学洗浄)や、薬液洗浄実施前に、供給水(=被処理水)や透過水を膜の供給側に高流束で流すフラッシング、逆圧で膜の透過側から供給側に透過水を逆流させて付着したファウリング物質を除去する逆圧洗浄といった物理洗浄と呼ばれる洗浄手法が適用されることが多い。
【0014】
例えば、特許文献1では、定期的に濃縮水出口から供給水入口へ透過水を供給し、運転時の供給方向(=正方向)とは逆方向からフラッシング(=逆流フラッシング)を実施する方法が提案されている。特許文献2では、フラッシング方向を切り替えながらフラッシングを実施する方法が提案されている。これらフラッシングによって、スパイラル型分離膜エレメント端部に蓄積したファウリング物質を除去すると共に、正方向のフラッシングでは膜面のフラッシング効果が小さくなり易い後方のスパイラル型分離膜エレメントに蓄積したファウリング物質を除去することが可能となる。
【0015】
また、特許文献3では、運転中に被処理水の供給方向を逆転することで、運転停止時間をほとんど生じさせることなく、膜面上に蓄積したファウリング物質を除去する方法が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0016】
【特許文献1】国際公開第2009/128328号
【特許文献2】日本国特開2004−141846号公報
【特許文献3】日本国特開2004−261724号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0017】
しかし、これら洗浄を適切なタイミングで実施することは容易ではなく、チャネリング現象や分離膜及び供給側流路材の飛び出しを効果的に防止することは未だ困難であった。
また、ファウリング物質を除去するために高頻度で薬液洗浄や物理洗浄を実施すると、分離膜の擦過及び磨耗といった物理的劣化並びに加水分解といった化学的劣化が発生する問題もあった。
【0018】
本発明は、上記従来の実情に鑑みてなされたものであって、本発明の目的は、スパイラル型分離膜エレメントを充填した分離膜モジュールにおいて、分離膜巻回体が半径方向に広がり(膨れ)、分離膜巻回体間に歪な隙間が生じるチャネリング現象や供給側流路剤の飛び出しを効果的に防止できる分離膜モジュールを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0019】
前記課題を解決するために、本発明は次の(1)から(6)の構成からなる。
(1)分離膜を備えた分離膜リーフを中心管の周囲に巻回した分離膜巻回体と、前記分離膜巻回体の軸方向の少なくとも片側の端部に設けられたテレスコープ防止板を備えた複数のスパイラル型分離膜エレメントを備え、
前記複数のスパイラル型分離膜エレメントは、圧力容器に一列に並ぶように装填され、
前記複数のスパイラル型分離膜エレメントのうちの1つである第1のスパイラル型分離膜エレメントと、前記複数のスパイラル型分離膜エレメントのうちの他の1つである第2のスパイラル型分離膜エレメントとが、前記分離膜リーフの巻回方向が反対方向となるように装填された、分離膜モジュール。
(2)前記圧力容器の被処理水供給方向の最上流部に前記第1のスパイラル型分離膜エレメントが装填され、前記最上流部から2番目に前記第2のスパイラル型分離膜エレメントが装填された、(1)に記載の分離膜モジュール。
(3)互いに隣接するスパイラル型分離膜エレメントの前記分離膜リーフの巻回方向が反対方向となるように装填された、(1)または(2)に記載の分離膜モジュール。
(4)互いに連結するスパイラル型分離膜エレメントの連結部は、互いのスパイラル型分離膜エレメントの回転方向の相対移動を制限する構造を有している、(1)〜(3)のいずれか1つに記載の分離膜モジュール。
(5)前記連結部は前記中心管および前記テレスコープ防止板の少なくとも一方に設けられ、嵌合構造を有している、(4)に記載の分離膜モジュール。
(6)浸透圧が2MPa以上の被処理水を処理するものである、(1)〜(5)のいずれか1つに記載の分離膜モジュール。
【発明の効果】
【0020】
スパイラル型分離膜エレメントを充填した本発明の分離膜モジュールは、分離膜巻回体が半径方向に広がり(膨れ)、分離膜巻回体間に歪な隙間が生じるチャネリング現象や供給側流路剤の飛び出しを効果的に防止できる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
図1図1は、本発明の分離膜モジュールに用いられるスパイラル型分離膜エレメント(巻き方向:時計回り)の一実施形態の部分破断斜視図である。
図2図2は、筒状圧力容器に、第1巻回方向スパイラル型分離膜エレメントと第2巻回方向スパイラル型分離膜エレメントを交互に装填した本発明の分離膜モジュールの一実施形態の断面図である。
図3図3は、本発明の分離膜モジュールに用いられるスパイラル型分離膜エレメント(巻き方向:反時計回り)の一実施形態の部分破断斜視図である。
図4図4は、本発明の分離膜モジュールに用いられるスパイラル型分離膜エレメントに適用可能なUカップリングシールの一例を示す断面図である。
図5図5は、本発明の分離膜モジュールに用いられるスパイラル型分離膜エレメントに適用可能なOリングシールの一例を示す断面図である。
図6図6は、本発明の分離膜モジュールに用いられるスパイラル型分離膜エレメントに適用可能なスプリットリング状のシール部材の一例を示す図であり、図6(a)は平面図であり、図6(b)は図6(a)のb−b断面図である。
図7図7は、国際公開第2011/046937号に記載のシール機能を有するテレスコープ防止板を示す図であり、図7(a)はテレスコープ防止板同士の連結部を説明するための要部破断拡大図であり、図7(b)は斜視図であり、図7(c)および図7(d)は平面図である。
図8図8は、本発明の分離膜モジュールに適用可能なH字連結部材を用いたスパイラル型分離膜エレメント連結時の断面図である。
図9図9は、本発明の分離膜モジュールに適用可能な嵌合構造中心パイプを用いたスパイラル型分離膜連結時の断面図である。
図10図10は、本発明の分離膜モジュールに適用可能な嵌合構造テレスコープ防止板を用いたスパイラル型分離膜連結時の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
本発明の分離膜モジュールは、
分離膜を備えた分離膜リーフを中心管の周囲に巻回した分離膜巻回体と、前記分離膜巻回体の軸方向の少なくとも片側の端部に設けられたテレスコープ防止板を備えた複数のスパイラル型分離膜エレメントを備え、
前記複数のスパイラル型分離膜エレメントは、圧力容器に一列に並ぶように装填され、
前記複数のスパイラル型分離膜エレメントのうちの1つである第1のスパイラル型分離膜エレメントと、前記複数のスパイラル型分離膜エレメントのうちの他の1つである第2のスパイラル型分離膜エレメントとが、前記分離膜リーフの巻回方向が反対方向となるように装填されたものである。
【0023】
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照しながら説明するが、本発明はこれら図面に示す実施態様に限定されるものではない。
【0024】
図1は、本発明の分離膜モジュールに用いられるスパイラル型分離膜エレメントの一実施形態の部分破断斜視図である。
図1において、第1のスパイラル型分離膜エレメント20Aは、分離膜21の内側に透過側流路材22を挟み込み、被処理水(供給水)27と透過水28が混合しないように分離膜21端部が封止された構造の分離膜リーフ32と供給側流路材23の積層体の単数または複数が、有孔の中心管24Aの周囲にスパイラル状に巻回され、その分離膜巻回体の外周が外装体で覆われ、この分離膜巻回体及び外装体の端部にテレスコープ防止板25が設置されている。テレスコープ防止板25の外周には、少なくとも1つの周回溝26が設けられ、図示されてない被処理水シール部材が配置される。
【0025】
この第1のスパイラル型分離膜エレメント20Aは、被処理水(供給水)27が一端面より図1に図示する方向(被処理水供給方向)に供給され、供給側流路材23に沿って流動しながら成分の一部(例えば、海水淡水化の場合は水)が分離膜21を透過することによって、透過水28と濃縮水29とに分離される。その後、分離膜21を透過した成分(透過水28)は、透過側流路材22に沿って流動して、中心管24A内へとその側面の孔から流入し、中心管24A内を流動し、透過水28として取り出される。一方、非透過成分(例えば、海水淡水化の場合は塩分)を高濃度に含有する処理水は、第1のスパイラル型分離膜エレメント20Aの他端面から濃縮水29として排出される。
【0026】
本実施形態では、例えば、図2に示すように、図1に例示した第1のスパイラル型分離膜エレメント20A(20a、20c、20e)及び図3に例示した第2のスパイラル型分離膜エレメント20B(20b、20d、20f)を、筒状圧力容器40に一列に並ぶように装填して、分離膜モジュール41を構成する。
【0027】
分離膜モジュール41は、複数のスパイラル型分離膜エレメント20a、20b、20c、20d、20e、20f(以下これらをまとめて「スパイラル型分離膜エレメント20」ともいう。)を、筒状圧力容器40内に一列に並ぶように連結して装填することによって構成される。
【0028】
また、筒状圧力容器40内では、第1のスパイラル型分離膜エレメントと、第2のスパイラル型分離膜エレメントとが、第1のスパイラル型分離膜エレメントの分離膜リーフの巻回方向と第2のスパイラル型分離膜エレメントの分離膜リーフの巻回方向が反対方向となるように装填される。
【0029】
スパイラル型分離膜エレメント20を構成する分離膜巻回体の軸方向の少なくとも片側の端部に設けられたテレスコープ防止板25a、25b、25c、25d、25e、25fの外周と筒状圧力容器40の内周面の間に、被処理水シール部材43a、43b、43c、43d、43e、43f(以下これらをまとめて「被処理水シール部材43」ともいう。)が装着される。
【0030】
なお、図2では、第1のスパイラル型分離膜エレメント20a、20c、20eがそれぞれ図1に示す第1のスパイラル型分離膜エレメント20Aを、第2のスパイラル型分離膜エレメント20b、20d、20fがそれぞれ図3に示す第2のスパイラル型分離膜エレメント20Bを示している。
【0031】
図2に示す実施形態では、被処理水は、被処理水供給口44から供給され、第1のスパイラル型分離膜エレメント20aの端部に供給される。第1のスパイラル型分離膜エレメント20aで処理された濃縮水は、第2のスパイラル型分離膜エレメント20bに供給され、その後、順次第1のスパイラル型分離膜エレメント20c、第2のスパイラル型分離膜エレメント20d、第1のスパイラル型分離膜エレメント20e、第2のスパイラル型分離膜エレメント20fに供給、処理された後、最終的に濃縮水排出口45から排出される。
【0032】
また、それぞれのスパイラル型分離膜エレメント20a〜20fの中心管24a、24b、24c、24d、24e、24f(以下これらをまとめて「中心管24」ともいう。)は、それぞれコネクター46a、46b、46c、46d、46e(以下これらをまとめて「コネクター46」ともいう。)で連接されると共に、モジュール端板47a、47bに設けられた透過水取出口50a、50bに接続されており、それぞれのスパイラル型分離膜エレメント20で得られた透過水が集められ、系外に取り出される。
【0033】
スパイラル型分離膜エレメント20では、被処理水(供給水)27が一端面より供給され、供給側流路材23に沿って流動しながら成分の一部(例えば、海水淡水化の場合は水)が分離膜を透過することによって分離されるが、このとき、ファウリング等でスパイラル型分離膜エレメント20の供給側流路材23が詰まった場合、スパイラル型分離膜エレメント20の流動抵抗が上昇することで、分離膜21や供給側流路材23が軸方向へ飛び出したり、分離膜巻回体が半径方向に広がり(膨れ)、分離膜巻回体間に歪な隙間が生じるチャネリング現象が発生したりすることがある。
【0034】
なお、スパイラル型分離膜エレメント20にテレスコープ防止板25を設けることによって、分離膜巻回体の軸方向の移動は制限され、テレスコープ現象は効果的に防止されている。
【0035】
しかし、テレスコープ防止板25だけでは分離膜巻回体が半径方向に広がることは効果的に抑制できないため、分離膜21や供給側流路材23の飛び出しや、分離膜巻回体が半径方向に広がり(膨れ)、分離膜巻回体間に歪な隙間が生じる現象(チャネリング現象)の効果的な防止は難しい。
【0036】
そこで、本実施形態では、図2に示すように、第1のスパイラル型分離膜エレメント20a、20c、20eと、第2のスパイラル型分離膜エレメント20b、20d、20fが、分離膜リーフの巻回方向が反対方向となるように、圧力容器に一列に並んで装填された分離膜モジュール41という構成をとっている。
【0037】
第1のスパイラル型分離膜エレメント20a、20c、20eは、図1に示すような分離膜21を備えた分離膜リーフ32を中心管24Aの周囲に第1の巻回方向(時計回り)に巻回した第1の分離膜巻回体と、前記第1の分離膜巻回体の軸方向の少なくとも片側の端部に設けられたテレスコープ防止板25を備える。
【0038】
第2のスパイラル型分離膜エレメント20b、20d、20fは、図3に示すような分離膜21を備えた分離膜リーフ32を中心管24Bの周囲に前記第1の巻回方向とは反対の第2の巻回方向(反時計回り)に巻回した第2の分離膜巻回体と、前記第2の分離膜巻体の軸方向の少なくとも片側の端部に設けられたテレスコープ防止板25を備える。
【0039】
本発明者らの知見によると、第1の分離膜巻回体がファウリング等によって半径方向に広がる際には、中心管24Aに対して分離膜リーフ32の巻回が緩む方向に分離膜リーフ32が回転しようとする応力が発生する。実際には、分離膜リーフ32は中心管24Aに接着されているのでこの応力は中心管24Aの回転方向の移動をもたらす。
分離膜モジュール中の全てのスパイラル型分離膜エレメントの巻回方向が同じ場合、全ての中心管は全て同じ方向に回転しようとするので大きな抵抗を受けずに回転してしまう。
【0040】
これに対し、本実施形態は、上記構成をとることによって、第1の分離膜巻回体が半径方向に広がる際に発生する中心管24Aを回転方向に移動させる応力を、第2の分離膜巻回体が半径方向に広がる際に発生する第1の分離膜巻回体に発生する回転方向に対して逆向きに中心管24Bを移動させる応力でキャンセルすることができ、分離膜巻回体間に歪な隙間が生じるチャネリング現象を効果的に防止できる。
【0041】
通常、複数のスパイラル型分離膜エレメント20を直列接続し、1つの圧力容器に装填して用いることが多く、最低濃縮水流量や最高供給水圧力等の制約条件を満たしながら、システム回収率を高くするために、圧力容器内にスパイラル型分離膜エレメント20を6〜8本装填する。この場合、前述したファウリングは、先頭のスパイラル型分離膜エレメント(図2では第1のスパイラル型分離膜エレメント20a)で顕著に発生し易く、特に海水淡水化の場合、浸透圧の影響によって、溶質濃度の低い先頭スパイラル型分離膜エレメントでは透過流束が大きく、膜面上にファウリング物質が供給され易いため、ファウリングが促進される。
【0042】
このため、筒状圧力容器40の被処理水供給方向の最上流部に第1のスパイラル型分離膜エレメントを装填し、最上流部から2番目に第2のスパイラル型分離膜エレメントを装填することで、それぞれのスパイラル型分離膜エレメントに発生する分離膜巻回体を回転方向に移動させる応力が互いにキャンセルされるため、簡便かつ効果的にチャネリング現象を防止できる。
【0043】
本発明の分離膜モジュールに用いられる第1のスパイラル型分離膜エレメントと第2のスパイラル型分離膜エレメントを連結させるエレメント配置は、前述したファウリングの発生し易さの観点から、筒状圧力容器40の中でも上流側に配置することが好ましく、1箇所でも構わないが、複数箇所在っても構わない。
【0044】
また、過度な流量で被処理水が供給された場合、分離膜モジュール内の全てのスパイラル型分離膜エレメントの流動抵抗が上昇し、全てのスパイラル型分離膜エレメントに分離膜21や供給側流路材23の飛び出しやチャネリング現象が発生することがある。そのため、図2に示すように、互いに隣接するスパイラル型分離膜エレメントの分離膜リーフの巻回方向が反対方向となるように装填されていることが好ましい。
【0045】
本発明の分離膜モジュールに適用可能なスパイラル型分離膜エレメントに用いられる分離膜21は平膜状の分離膜であって、逆浸透膜、限外ろ過膜、精密ろ過膜、ガス分離膜、脱ガス膜等が使用できる。分離膜21の膜素材としては、具体的には、酢酸セルロース系、ポリアミド系、架橋ポリアミン系、架橋ポリアミン/ポリエーテル系、架橋ポリエーテル系、ポリアクリロニトリル、ポリエーテル、スルホン化ポリスルホン等がある。
【0046】
これらの膜素材から作られる逆浸透膜の膜形態としては、非対称膜および複合膜等がある。
透過側流路材22および供給側流路材23には、ネット状材料、メッシュ状材料、溝付シート、波形シート等が使用できる。透過側流路材22および供給側流路材23は、いずれも、分離膜21と独立したものでも構わないし、接着や融着する等して一体化したものでも差し支えない。
【0047】
分離膜21の端部を封止するための手段としては、接着法が好適に用いられる。接着法で用いられる接着剤としては、ウレタン系接着剤、エポキシ系接着剤、ホットメルト接着剤等の接着剤を使用することができる。
【0048】
中心管24は、管の側面に複数の孔を有するものであり、中心管24の素材は、樹脂、金属等何れでもよいが、コスト、耐久性を鑑みて、ノリル樹脂、ABS樹脂等のプラスチックが使用されることが一般的である。
【0049】
中心管24同士や中心管24と透過水取出口50a、50bを連接させるコネクター46の素材も、樹脂、金属等何れでもよいが、コスト、耐久性を鑑みて、ノリル樹脂、ABS樹脂等のプラスチックが使用されることが一般的である。
【0050】
また、中心管24とコネクター46の連接部には弾性シール部材が装着されており、素材としては特に制約はなく、ニトリルゴム、スチロールゴム、シリコーンゴム、フッ素ゴム、アクリルゴム、エチレンプロピレンゴム、ウレタンゴム等、一般に多用される弾性シール材を用いることができる。なお、これらの材質には、分離膜モジュール41の対象となる被処理水に含まれる酸、アルカリ及び酸化剤等の成分に対して耐久性があることが好ましい。
【0051】
テレスコープ防止板25は、被処理水が分離膜巻回体を通過する際に発生する圧力によって分離膜巻回体が円錐状に伸張することを防止する役割で設置された、空隙を有する板状物であり、外周側には被処理水シール部材43を装着する周回溝26を有していることが好ましい。テレスコープ防止板25は分離膜巻回体の軸方向の変形防止の機能を有すれば、その材質は特に制限はない。ただし、用途に応じて、耐薬品性や耐熱性等が必要になる場合は、要求仕様に応じて適宜選択することが可能である。一般には、熱可塑性樹脂、熱硬化性樹脂、耐熱性樹脂等の樹脂材が好適である。
【0052】
また、このテレスコープ防止板25は、被処理水の流れを極力妨げずに強度を維持する目的から、外周環状部と内周環状部と放射状スポーク部31とを有するスポーク型構造であることが好ましい。
【0053】
また、スパイラル型分離膜エレメント20は、分離膜巻回体の外周部が外装材により拘束されて拡径しない構造になっていることも好ましい。外装材は、ポリエステル、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリ塩化ビニル等からなるシートや、ガラス繊維とエポキシ樹脂からなる繊維強化剤(FRP)等からなるもので、分離膜巻回体の外周表面に、かかるシートや繊維を巻回してスパイラル型分離膜エレメント20が拡径しないようにシェル状に固められている。
【0054】
図2では、被処理水供給口44と濃縮水排出口45が、モジュール端板47aおよび47bに備えられているが、筒状圧力容器40胴部のモジュール端板47aまたは47b近傍(すなわち、モジュール端板47aと第1のスパイラル型分離膜エレメント20aの間、または濃縮水排出口45がモジュール端板47bと最後尾に位置する第2のスパイラル型分離膜エレメント20fの間)に備えられていても差し支えない。
【0055】
また、筒状圧力容器40とスパイラル型分離膜エレメント20の間(バイパス流路)に、被処理水が通るとスパイラル型分離膜エレメント20で処理される被処理水の流量が減るため、処理効率が低下する。被処理水のバイパス流路への流入を防止するために、一般的にシールすることが多い。
【0056】
具体的には、それぞれのスパイラル型分離膜エレメント20a〜20fのテレスコープ防止板25a〜25fの外周部の周回溝に被処理水シール部材43を装着することで、それぞれのスパイラル型分離膜エレメント20a〜20fの被処理水と濃縮水が隔離する。
なお、図2では、それぞれのスパイラル型分離膜エレメント20a〜20fの片端に被処理水シール部材43が装着されているが、両端に装着することも可能である。
【0057】
被処理水シール部材43として、U−カップリングシールもしくはV−カップリングシールが考案され広く使用されている。このU−カップリングシールは、弾性樹脂を用い、U字状の開いた部分が被処理水を供給する側(上流側)に向くようにスパイラル型分離膜エレメント20のテレスコープ防止板25にセットされる。このU−カップリングシールは、被処理水が供給されたときに、その水圧でU字部分が開き、U−カップリングシールと筒状圧力容器40の隙間を埋める構造になっている。V−カップリングシールも同様である。
【0058】
図4は、スパイラル型分離膜エレメントが筒状圧力容器40内に装填された状態において、被処理水シール部材30(U−カップリングシール)がテレスコープ防止板25の外周の周回溝26に装着され、テレスコープ防止板25の外周と筒状圧力容器40の内周面との間でシールする状態を示すものであって、被処理水シール部材30(U−カップリングシール)装着部分の近傍を拡大して模式的に示す拡大断面図である。
【0059】
図4において、被処理水シール部材30(U−カップリングシール)は、筒状圧力容器40の内壁との接触面積は比較的小さいが、前述した通り、上流から下流(図4の矢印で示すように左から右へ)に被処理水が供給されたときの水圧で被処理水シール部材30(U−カップリングシール)が開き、被処理水シール部材30(U−カップリングシール)と筒状圧力容器40の隙間を埋める構造となっている。
【0060】
一方、従来技術として、Oリングシールを使用する場合もあり、テレスコープ防止板25の外周側の周回溝26に装着されたOリングシールが、筒状圧力容器40の内壁と接触し、Oリングシールがつぶれて変形することで、スパイラル型分離膜エレメントと筒状圧力容器内40の隙間を埋めるため、両側からの被処理水の供給に対して、良好なシール性を発揮することが出来る。
【0061】
図5は、スパイラル型分離膜エレメントが筒状圧力容器40内に装填された状態において、被処理水シール部材30(Oリングシール)が、周回溝26に装着されたテレスコープ防止板25の外周と筒状圧力容器40の内周面との間でシールする状態を示すものであって、被処理水シール部材30(Oリングシール)装着部分の近傍を拡大して模式的に示す部分拡大断面図である。図5における被処理水シール部材30(Oリングシール)は、右への方向に流れる被処理水に対してシール機能を発揮する。
【0062】
図6に示すようなスプリットリング状のシール部材33を用いることも好ましい。スプリットリング状のシール部材33は、国際公開第2011/046944号に記載されている。スプリットリング状のシール部材33は、環状シールが1箇所以上で切断・分割された形状を有するものである。
【0063】
例えば、図6(a)(平面図)に示すようにスプリットリング状のシール部材33のスプリット部34が1箇所存在するものが好ましいが、環状シール部材が2箇所で切断・分割された半円弧状スプリットリング状シール部材を2個テレスコープ防止板25の外周部の周回溝26に装着してもよい。
【0064】
スプリットリング状のシール部材33の横断面形状は、特に限定されるものでは無いが、テレスコープ防止板25の外周部の周回溝26に収まり、移動しない構造であればよく、例えば、図6(b)(図6(a)の矢視b−bでの断面図)に示すように略四角形でもよいし、略多角形でもよい。スプリットリング状のシール部材33の大きさは、スパイラル型分離膜エレメントの外径や素材によって最適化すればよいが、例えば、シールの径方向幅(即ち、スプリットリング状のシール部材の外径35とスプリットリング状のシール部材の内径36との差の半分)が5〜10mm程度、シールの厚み3〜10mm程度を採用することができる。
【0065】
このようなスプリットリング状のシール部材33は、図6(b)に示すように断面形状が矩形であるため、摺動面とシール部材が並行もしくは両方向対称に接触することができる。これによって、分離膜モジュールの両側から被処理流水を供給することが可能となり、しかも、スパイラル型分離膜エレメントを筒状圧力容器40内に装填するときも、また、スパイラル型分離膜エレメントを筒状圧力容器40から抜き取るときも、容易にスパイラル型分離膜エレメントを筒状圧力容器40内で移動させることができるようになる。
【0066】
スプリットリング状のシール部材33は、スパイラル型分離膜エレメントのどちらから被処理水を供給しても十分なシール性を発現することができるという特性を持つ。
このような特性を有するシール部材の形状としては、前述のスプリットリング状だけでなく、シール接触面がとがった、すなわち、断面が例えば三角形になっているデルタリング状や、凸レンズ状、また、接触面が凹凸を保った波板状が適用可能である。
なお、スプリットリング状のシール部材33におけるスプリット部の形状は、特に限定されるものではない。
【0067】
被処理水シール部材を、テレスコープ防止板外周部の片側のみ装着してもよいし、両側に装着してもよい。スプリットリング状のシール部材33を構成する材質は、非弾性材、弾性材のいずれでもよく、非弾性材を用いることが好ましい。
一方、Uカップリングシール、Vカップリングシール、Oリングシールは装着するにあたり、拡張する必要があるため、弾性材を用いることが好ましい。
【0068】
非弾性材としては、有機材料、無機材料が挙げられる。
有機材料としては、ポリテトラフルオロエチレン、ポリフッ化ビニリデン、ポリエチレン、ポリプロピレンを始めとする、様々な硬質プラスチックが挙げられる。無機材料としては、鉄、ステンレス、銅、アルミニウム、チタンやそれらの合金を使うこともできれば、セラミック、黒鉛、石綿、繊維強化剤(FRP)も用いることができる。
【0069】
なお、スプリットリング状のシール部材33を構成する材質には、分離膜モジュール41の対象となる被処理流水に対して耐久性があることが好ましい。例えば、海水を対象にする場合は、鉄合金を用いると腐食し易く、また、有機溶媒を含む場合は、耐久性が不十分な樹脂を使うと劣化し易いので注意を要する。
【0070】
また、圧力容器内の全てのスパイラル型分離膜エレメントにおいて、互いに隣接するスパイラル型分離膜エレメントの分離膜リーフの巻回方向が反対方向となるように装填された場合、全てのスパイラル型分離膜エレメントが一体となって回転する可能性もある。そのため、被処理水シール部材は、スパイラル型分離膜エレメントおよび圧力容器の間の相対回転の応力に対して耐えられる部材であることが好ましく、非弾性部材よりは弾性部材であることが好ましい。
【0071】
スパイラル型分離膜エレメント20は筒状圧力容器40に一列に並ぶように装填された分離膜モジュール41の中で、図2に示すように、スパイラル型分離膜エレメント20の中心管24の端部同士をコネクター46で接続される。
【0072】
また、国際公開第2011/046937号に記載されているようなシール機能を有するテレスコープ防止板60a及び60bに、同心円上の突起部61及び溝部62が形成されスパイラル型分離膜エレメントが直列に配置される際に、図7(a)〜図7(d)に示すように、上流側のスパイラル型分離膜エレメントの下流側テレスコープ防止板60aの突起部61と、下流側のスパイラル型分離膜エレメントの上流側テレスコープ防止板60bの溝部62が嵌合することでスパイラル型分離膜エレメント同士が接続される。
この構成においては、スパイラル型分離膜エレメント同士の接続において、回転方向の相対移動はテレスコープ防止板相互の摺動に伴う摩擦のみにより抑制される。
【0073】
以下のとおり、本実施形態において、さらに、第1のスパイラル型分離膜エレメントと第2のスパイラル型分離膜エレメントの連結部が、互いのスパイラル型分離膜エレメントの回転方向の相対移動を制限する構造を有することで、より効果的にチャネリング現象を防止できる。
【0074】
すなわち、中心管24およびテレスコープ防止板25の少なくとも一方の回転方向の相対移動を制限させる構造を有する連結部、例えば、上流側のスパイラル型分離膜エレメントにおける下流側のスポーク型構造テレスコープ防止板25の放射状スポーク部31と、下流側のスパイラル型分離膜エレメントにおける上流側のスポーク型構造テレスコープ防止板25の放射状スポーク部31に、図8に示すようなH字連結部材63を適用することで、本発明の目的をより確実に達成することができる。
【0075】
さらに、図9に示すような端部に嵌合構造(中心管端部の凸部64、中心管端部の凹部65)を有する中心管24、あるいは、図10に示すような端部に嵌合構造(テレスコープ防止板の凸部66、テレスコープ防止板の凹部67)を有するテレスコープ防止板25を適用することで、部材数を増やすことなく、本発明をより簡便かつ確実に実現できるため好ましい。
【0076】
なお、図8〜10においては、被処理水が、第1のスパイラル型分離膜エレメント20A、第2のスパイラル型分離膜エレメント20Bの順に供給されるように分離膜エレメントが設置されているが、その設置順序は逆でもよい。
【0077】
中心管やモジュール端板の回転方向の移動を制限させる構造を有する連結部数並びに、スパイラル型分離膜エレメントの中心管端部及び当該端部における嵌合構造部数は1つでも構わないが、複数在っても構わない。回転応力をキャンセルする観点では、中心管やモジュール端板の回転方向の移動を制限させる構造は、対称に配置されていることが好ましい。
【0078】
本発明が適用可能な被処理水は、特に制限されるものではなく、河川水、海水、下水処理水、雨水、工業用水、工業廃水等、いろいろな被処理水を挙げることができるが、被処理水に様々な有機物や無機物が含まれている場合に好適である。本発明は、被処理水の浸透圧が、テレスコープ現象が発生することがある2MPa以上である場合に特に好適である。
【0079】
本発明を詳細にまた特定の実施態様を参照して説明したが、本発明の精神と範囲を逸脱することなく様々な変更や修正を加えることができることは当業者にとって明らかである。本出願は2018年4月26日出願の日本特許出願(特願2018−085398)に基づくものであり、その内容はここに参照として取り込まれる。
【産業上の利用可能性】
【0080】
本発明は、スパイラル型分離膜エレメントを充填した分離膜モジュールにおいて、分離膜巻回体が半径方向に広がり(膨れ)、分離膜巻回体間に歪な隙間が生じるチャネリング現象や供給側流路剤の飛び出しを効果的に防止することが可能となる。
【符号の説明】
【0081】
20A、20a、20c、20e:第1のスパイラル型分離膜エレメント
20B、20b、20d、20f:第2のスパイラル型分離膜エレメント
21:分離膜
22:透過側流路材
23:供給側流路材
24A、24B、24a、24b、24c、24d、24e、24f:中心管
25、25a、25b、25c、25d、25e、25f:テレスコープ防止板
26:周回溝
27:被処理水(供給水)
28:透過水
29:濃縮水
30:被処理水シール部材
31:放射状スポーク部
32:分離膜リーフ
33:スプリットリング状のシール部材
34:スプリットリング状のシール部材のスプリット部
35:スプリットリング状のシール部材の外径
36:スプリットリング状のシール部材の内径
40:筒状圧力容器
41:分離膜モジュール
43a、43b、43c、43d、43e、43f:被処理水シール部材
44:被処理水供給口
45:濃縮水排出口
46a、46b、46c、46d、46e:コネクター
47a、47b:モジュール端板
50a、50b:透過水取出口
60a、60b:シール機能を有するテレスコープ防止板
61:シール機能を有するテレスコープ防止板の突起部
62:シール機能を有するテレスコープ防止板の溝部
63:H字連結部材
64:中心管端部の凸部
65:中心管端部の凹部
66:テレスコープ防止板の凸部
67:テレスコープ防止板の凹部
【要約】
本発明は、分離膜を備えた分離膜リーフを中心管の周囲に巻回した分離膜巻回体と、前記分離膜巻回体の軸方向の少なくとも片側の端部に設けられたテレスコープ防止板を備えた複数のスパイラル型分離膜エレメントを備え、前記複数のスパイラル型分離膜エレメントは、圧力容器に一列に並ぶように装填され、第1のスパイラル型分離膜エレメントと、第2のスパイラル型分離膜エレメントとが、前記分離膜リーフの巻回方向が反対方向となるように装填された、分離膜モジュールに関する。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10