特許第6607341号(P6607341)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6607341
(24)【登録日】2019年11月1日
(45)【発行日】2019年11月20日
(54)【発明の名称】小便器
(51)【国際特許分類】
   E03D 13/00 20060101AFI20191111BHJP
【FI】
   E03D13/00
【請求項の数】5
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2015-8763(P2015-8763)
(22)【出願日】2015年1月20日
(65)【公開番号】特開2016-132939(P2016-132939A)
(43)【公開日】2016年7月25日
【審査請求日】2017年11月9日
(73)【特許権者】
【識別番号】000010087
【氏名又は名称】TOTO株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100092093
【弁理士】
【氏名又は名称】辻居 幸一
(74)【代理人】
【識別番号】100082005
【弁理士】
【氏名又は名称】熊倉 禎男
(74)【代理人】
【識別番号】100088694
【弁理士】
【氏名又は名称】弟子丸 健
(74)【代理人】
【識別番号】100095898
【弁理士】
【氏名又は名称】松下 満
(74)【代理人】
【識別番号】100098475
【弁理士】
【氏名又は名称】倉澤 伊知郎
(72)【発明者】
【氏名】関 嘉史
(72)【発明者】
【氏名】松中 仁志
(72)【発明者】
【氏名】古田 祐一
(72)【発明者】
【氏名】山▲崎▼ 洋式
【審査官】 油原 博
(56)【参考文献】
【文献】 実開平06−060684(JP,U)
【文献】 特開2002−339432(JP,A)
【文献】 実開平02−070081(JP,U)
【文献】 米国特許第05257422(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E03D 13/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
排尿を受けて排出する小便器であって、
排尿を受けるボウル面を備えたボウル部と、
上記ボウル部の上部に設けられボウル面に洗浄水を吐水する吐水装置と、
上記ボウル部の底部に設けられた排水口と連通して洗浄水を排出すると共に上記ボウル部の下流側に封水を形成する排水トラップ部と、を有し、
上記排水トラップ部が、上記排水口から下方に延びる下降管路と、この下降管路の出口に接続され横方向に延びる横引管路と、この横引管路の出口に接続され上方に延びる上昇管路と、を備え、
上記排水トラップの下降管路は前壁と後壁を備え、上記上昇管路は前壁と後壁を備え、上記下降管路の後壁と上昇管路の前壁は共通壁により形成され、
上記排水トラップ部の横引管路は、上記共通壁下端と底面を通る上下方向の断面における高さ方向の中央位置より小便器内部側の断面積が上記高さ方向の中央位置より小便器外部側の断面積よりも小さくなるように形成され、または、上記上昇管路は、その共通壁下端より上方の前壁と後壁とを通る前後方向断面における前後方向の中央位置より小便器内部側の断面積が上記前後方向の中央位置より小便器外部側の断面積よりも小さくなるように形成されていることを特徴とする小便器。
【請求項2】
上記排水トラップ部の上昇管路は、その前後方向の断面積が入口から出口までほぼ一定となるように形成されていることを特徴とする請求項1に記載の小便器。
【請求項3】
上記排水トラップ部の下降管路は、その前後方向の断面積が入口から出口まで徐々に減少するように形成されていることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の小便器。
【請求項4】
上記排水トラップ部の下降管路は、その前後方向の断面がほぼ円形に形成されていることを特徴とする請求項1乃至請求項3の何れか1項に記載の小便器。
【請求項5】
上記排水トラップ部の横引管路の共通壁下端と底面を通る上下方向の断面における高さ寸法、および、上昇管路の共通壁下端よりも上方の前壁と後壁を通る前後方向断面における幅寸法は、上記下降管路の出口の前後方向の断面の最小の幅寸法とほぼ同一の大きさとなるように形成されていることを特徴とする請求項1乃至請求項4の何れか1項に記載の小便器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、小便器に係り、特に、排尿を受けて排出する小便器に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1および特許文献2に示されているように、使用者の尿を受けるボウル部の下方に排水トラップを備えた小便器が知られている。
特許文献1および特許文献2に示された小便器において、排水トラップは、下向きに延びる下降管路と、下降管路から緩やかに屈曲して横向きに延びる横引管路と、横引管路から同様に緩やかに屈曲して上向きに延びる上昇管路と、を有し、ほぼU字形状となっている。
排水トラップの底部には、排水配管からの臭気等のトイレ空間への侵入を防ぐために常に所定量の溜水が溜められており、この溜水によって封水が形成されるようになっている。
【0003】
このような従来の小便器において、使用者が放尿を行うと、排水トラップ内に尿が流れ込み、この流れ込んだ尿によって溜水の大部分が排出され、排水トラップ内には尿と水とが混ざり合った尿濃度の高い液体が溜水として存在することになる。
使用者の使用後のボウル部を洗浄するためにボウル部に洗浄水を流すと、この洗浄水が新たにボウル部から排水トラップ内に流入し、尿濃度の高い溜水が排水トラップから排出され、排水トラップ内の尿と水とが混ざり合った尿濃度の高い溜水が新たに排水トラップ内に流入する尿濃度の低い洗浄水に置換される。
【0004】
この排水トラップ内の尿と水とが混ざり合った尿濃度の高い溜水が、新たに排水トラップ内に流入する尿濃度の低い洗浄水に置換される際の置換率(排水トラップ内に溜まっていた溜水が新たな洗浄水により置換される割合)が低いと、置換後の溜水における尿濃度が高くなり、排水トラップ内に尿石が発生しやすくなり、従来から問題となっていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2013−14965号公報
【特許文献2】特開2011−214262号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
一方、近年、環境意識の高まりによる節水化の要請が更に高まっており、ボウル部を洗浄する洗浄水量の低減が求められている。
しかしながら、洗浄水量を減少させると、尿濃度の高い溜水を置換するための洗浄水量が減少してしまい、溜水の置換率が低くなりやすくなり、置換後の溜水における尿濃度が高いままとなるため、排水トラップ内に尿石が生じやすくなってしまう。
そのため、比較的少ない洗浄水量であっても、尿濃度の高い溜水を置換して、置換率を向上させることが要望されている。
【0007】
この解決課題に関し、本発明者らは鋭意研究することにより以下の知見を見出した。
先ず、置換率を向上させるためには、排水トラップをコンパクトに形成して少ない溜水量で封水を形成することが考えられるが、排水トラップをコンパクトに形成すると、排水トラップの下降管路から横引管路への屈曲および横引管路から上昇管路への屈曲が急になり、排水トラップ内の流れ方向が各管路の接続部で急激に変化する。
これにより、各管路の接続部において小便器の内部側と小便器の外部側との間で洗浄水の流速差が発生しやすくなる。
【0008】
このように、各管路の接続部において小便器内部側と小便器外部側との間で洗浄水の流速差が発生してしまうと、洗浄水の流れの淀みが管路内で生じやすくなり、排水トラップ内の溜水の置換率を向上させることができないことを見出した。
【0009】
そこで、本発明は、従来技術の欠点を解決するためになされたものであり、溜水の置換率を向上させて、排水トラップにおける尿石の堆積を抑制することができる小便器を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記の目的を達成するために、本発明は、排尿を受けて排出する小便器であって、排尿を受けるボウル面を備えたボウル部と、ボウル部の上部に設けられボウル面に洗浄水を吐水する吐水装置と、ボウル部の底部に設けられた排水口と連通して洗浄水を排出すると共にボウル部の下流側に封水を形成する排水トラップ部と、を有し、排水トラップ部が、排水口から下方に延びる下降管路と、この下降管路の出口に接続され横方向に延びる横引管路と、この横引管路の出口に接続され上方に延びる上昇管路と、を備え、排水トラップの下降管路は前壁と後壁を備え、上昇管路は前壁と後壁を備え、下降管路の後壁と上昇管路の前壁は共通壁により形成され、排水トラップ部の横引管路は、共通壁下端と底面を通る上下方向の断面における高さ方向の中央位置より小便器内部側の断面積が高さ方向の中央位置より小便器外部側の断面積よりも小さくなるように形成され、または、上昇管路は、その共通壁下端より上方の前壁と後壁とを通る前後方向断面における前後方向の中央位置より小便器内部側の断面積が前後方向の中央位置より小便器外部側の断面積よりも小さくなるように形成されている。
このように構成された発明においては、排水トラップ部の横引管路は、共通壁下端と底面を通る上下方向の断面における高さ方向の中央位置より小便器内部側の断面積が高さ方向の中央位置より小便器外部側の断面積よりも小さくなるように形成され、または、上昇管路は、その共通壁下端より上方の前壁と後壁とを通る前後方向断面における前後方向の中央位置より小便器内部側の断面積が前後方向の中央位置より小便器外部側の断面積よりも小さくなるように形成されているので、排水トラップ部の横引管路または上昇管路の断面の中央位置より内側の流速と断面の中央位置より外側の流速との速度差が抑制され、これにより、横引管路または上昇管路における流れの淀みが抑制されるため、排水トラップ部内の溜水の置換率が向上し、横引管路または上昇管路における尿石の堆積を抑制することができる。
【0011】
本発明において、好ましくは、排水トラップ部の上昇管路は、その前後方向の断面積が入口から出口までほぼ一定となるように形成されている。
このように構成された発明においては、排水トラップ部の上昇管路は、その前後方向の断面積が入口から出口までほぼ一定となるように形成されているので、排水トラップ部の上昇管路内で流速の変化が生じにくくなり、排水トラップ部の上昇管路における流れの淀みが抑制されるため、上昇管路における尿石の堆積をさらに抑制することができる。
なお、ここでいう「ほぼ一定」とは、断面積が完全に一定である場合を含むとともに、完全に一定である場合と同様な効果を奏する程度の「ほぼ一定」の場合を含むものである。
【0012】
本発明において、好ましくは、排水トラップ部の下降管路は、その前後方向の断面積が入口から出口まで徐々に減少するように形成されている。
このように構成された発明においては、排水トラップ部の下降管路は、その前後方向の断面積が入口から出口まで徐々に減少するように形成されているので、下流側に向かうにつれて下降管路内の流速が高まることで排水トラップ部内の溜水の置換が速やかに行われるため、横引管路および上昇管路における尿石の堆積をさらに抑制することができる。
【0013】
本発明において、好ましくは、排水トラップ部の下降管路は、その前後方向の断面がほぼ円形に形成されている。
このように構成された発明においては、排水トラップ部の下降管路は、その前後方向の断面がほぼ円形に形成されているので、下降管路の断面積が横引管路の入口の面積より大きくなり、横引管路内に流入する流れが下降管路内より加速されることで、横引管路における流れの淀みを抑制されるため、横引管路における尿石の堆積をさらに抑制することができる。
なお、ここでいう「ほぼ円形」とは、完全に円形である場合を含むとともに、完全に円形である場合と同様な効果を奏する程度の楕円等の「ほぼ円形」の場合を含むものである。
【0014】
本発明において、好ましくは、排水トラップ部の横引管路の共通壁下端と底面を通る上下方向の断面における高さ寸法、および、上昇管路の共通壁下端よりも上方の前壁と後壁を通る前後方向断面における幅寸法は、下降管路の出口の前後方向の断面の最小の幅寸法とほぼ同一の大きさとなるように形成されている。
このように構成された発明においては、排水トラップ部の横引管路の共通壁下端と底面を通る上下方向の断面における高さ寸法、および、上昇管路の共通壁下端よりも上方の前壁と後壁を通る前後方向断面における前後方向の幅寸法は、下降管路の出口の前後方向の断面の最小の幅寸法とほぼ同一の大きさとなるように形成されているので、排水トラップ部内の排水の流速が維持された状態となり、乱流が発生し難くなることで横引管路または上昇管路における流れの淀みを抑制されるため、排水トラップ部内の溜水の置換が速やかに行われ、横引管路および上昇管路における尿石の堆積をさらに抑制することができる。
なお、ここでいう「ほぼ同一」とは、完全に同一である場合を含むとともに、完全に同一である場合と同様な効果を奏する程度の「ほぼ同一」の場合を含むものである。
【発明の効果】
【0015】
本発明の小便器によれば、溜水の置換率が向上させて、排水トラップにおける尿石の堆積を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】本発明の実施形態による小便器を前方の上方から見た正面斜視図である。
図2図1のII−II線に沿って見た断面図である。
図3図2に示す小便器の排水トラップ部近傍の部分拡大断面図である。
図4図2のIV−IV線に沿って見た部分断面図である。
図5図2のV−V線に沿って見た部分断面図である。
図6】本発明の実施形態による小便器における洗浄水の流れを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、添付図面を参照して、本発明の実施形態による小便器の基本構造を説明する。
図1は本発明の実施形態による小便器を前方の上方から見た正面斜視図であり、図2図1のII−II線に沿って見た断面図である。
【0018】
図1および図2に示すように、本発明の実施形態による小便器1は、前方側にボウル状に形成されたボウル部10を備えている。
【0019】
またボウル部10には、使用者の排尿を受けるボウル面12が形成されており、このボウル面12は、上下方向に沿って見たとき、その上部が比較的大きな曲率半径を有する円弧面として形成され、その下部が比較的小さな曲率半径を有する円弧面として形成され、その底部が鉢状に湾曲しながら収束するような形状として形成されている。
【0020】
ボウル部10の上方には、ボウル面12を洗浄する洗浄水Wを吐水する吐水装置30が設けられており、この吐水装置30の後方側には、洗浄水Wを供給する給水管32が接続されている。
吐水装置30は、人体検知センサ(図示されない)からの検知信号および所定の制御プログラム等に基づいて、ボウル面12に洗浄水Wを吐水するようになっている。
【0021】
ボウル部10内の下方領域R1の最低位置には、ボウル面12を洗浄した洗浄水が排水される排水口14が形成されており、この排水口14の下流側には、排水口14と連通する排水トラップ部40が形成されている。
そしてボウル部10には、排水口14を覆う目皿20が載置されている。
【0022】
また、排水トラップ部40は、排水口14から下方に延びる下降管路42と、この下降管路42の出口42d(図3参照)と接続されると共に下降管路42から緩やかに屈曲して水平方向に延びる横引管路44と、この横引管路44の横引管路出口44d(図3参照)と接続されると共に横引管路44から同様に緩やかに屈曲して上向きに延びる上昇管路46と、を備えている。
【0023】
横引管路44には洗浄水が溜水として溜まり、これによって排水トラップ部40内に封水が形成され、この封水により小便器1の外部の下水等からの臭気等がボウル部10やその周囲のトイレ空間内へ溢れ出ることを防止している。
【0024】
そして、下降管路42と上昇管路46とは共通壁48を介して隣接し、これにより排水トラップ部40の大きさが小型化され、排水トラップ部40内に貯留される溜水の量が従来の小便器と比べて低減される。
【0025】
また、排水トラップ部40の下流側には、排水室60が接続され、この排水室60により、ボウル面12を洗浄して排水口14から排水トラップ部40に流れ込んだ洗浄水(排水)を小便器1の背面外側の排水管路部50に排出させるようになっている。
排水管路部50は、一端が排水室60と接続される排水ソケット52と、この排水ソケット52の他端に接続される排水用の排水配管54とを備えている。
なお、本実施形態においては、排水室60に排水ソケット52が接続されているが、排水ソケット52を設けることなく、排水室60に排水用の排水配管54を直接的に接続するようにしてもよい。
【0026】
また、本実施形態では、排水室60については、排水トラップ部40の上昇管路46に一体的に形成されているが、樹脂等を用いて排水トラップ部40と別体に形成してもよい。
【0027】
次いで、図3乃至図5を用いて、本発明の実施形態による小便器の排水トラップ部について詳細に説明する。
図3図2に示す小便器の排水トラップ部近傍の部分拡大断面図であり、図4図3のIV−IV線に沿って見た部分断面図であり、図5図3のV−V線に沿って見た部分断面図である。
【0028】
図4に示すように、排水トラップ部40の下降管路42は、その断面がほぼ円形形状である。
さらに図3に示すように、下降管路42は、下降管路42の前方側の下降管路前壁42aと、下降管路42の後方側の下降管路後壁42bを形成する共通壁48とにより形成されている。
下降管路42の下降管路前壁42aと下降管路後壁42bとは、下降管路42の中心軸線Cに対してほぼ対称であり、且つ、下流に向かうほど断面積が小さくなるように形成されている。
このため、下降管路42の入口42cの断面積が最も大きく、出口42dが最も小さくなるように形成されている。
【0029】
排水トラップ部40の横引管路44は、下降管路42の出口42dに接続される横引管路入口44aと、上下方向の流路を水平方向の流路へと変える第一屈曲部44bと、この第一屈曲部44bの下流側に接続され水平方向の流路を形成する水平部44cと、この水平部44cの下流端にあり後述する上昇管路46と接続される横引管路出口44dと、を備えており、この第一屈曲部44bにより、下降する洗浄水をスムーズに横引管路44の水平部44cに導入し易くしている。
【0030】
図5に示すように、横引管路44の水平部44cの断面Aの形状は、断面Aの垂直方向の中央線C1に対して、小便器外部側(下方側)はほぼ半円形状であり、小便器内部側(上方側)はほぼ台形形状である。
このため、横引管路44の水平部44cの断面Aにおいて、小便器内部側の面積S1は、小便器外部側の面積S2より小さくなっている。
【0031】
なお、排水トラップ部40の横引管路44の断面の上下方向の高さ寸法は、下降管路42の出口42dの流路断面の最小の幅寸法とほぼ同一である。
また、横引管路44の第一屈曲部44bの断面形状は、流れ方向の全域にわたって横引管路44の水平部44cと同一の形状となっているが、下降管路42の断面形状から横引管路44の水平部44cの断面形状へと下流側につれて連続的に変化してもよい。
【0032】
排水トラップ部40の上昇管路46は、その入口が横引管路44の横引管路出口44dと接続され水平方向の流路を上下方向の流路へと変える第二屈曲部46aと、この第二屈曲部46aの出口と接続され上方に延びる上昇部46bとを備えており、この第二屈曲部46aにより、洗浄水をスムーズに上昇管路46の上昇部46bに供給し易くなっている。
【0033】
また、上昇管路46の上昇部46bは、共通壁48により形成される前方側の上昇部前壁46cと、後方側の上昇部後壁46dとを備えており、この上昇部前壁46cと上昇部後壁46dとは、前後方向においてほぼ平行で傾斜しているため、上昇部前壁46cと上昇部後壁46dとの間の距離は、上昇部46bの入口から出口までほぼ一定である。
【0034】
図4に示すように、上昇管路46の上昇部46bの断面Bは、断面Bの前後方向の中央線C2に対して、小便器外部側(後方側)はほぼ山型形状であり、小便器内部側(前方側)はほぼ台形形状である。
また、上昇管路46の上昇部46bの断面Bにおいて、小便器内部側の面積S3は、小便器外部側の面積S4より小さい。
【0035】
なお、上昇管路46の断面の前後方向の幅寸法は、下降管路42の出口42dの流路断面の最小の幅寸法とほぼ同一である。
また、上昇管路46の第二屈曲部46aの断面形状は、流れ方向の全域にわたって水平部44cの断面Aと同一の形状であるが、横引管路44の水平部44cの断面形状から上昇管路46の上昇部46bの断面Bの形状へと下流側につれて連続的に変化してもよい。
【0036】
上昇管路46の上昇部46bの断面Bは、上昇管路46の上昇部46bの入口から出口までほぼ同一形状であるため、上昇管路46の上昇部46bの断面Bの断面積は、上昇管路46の上昇部46bの入口から出口までほぼ一定である。
【0037】
上述したように共通壁48は、下降管路42の後方側の側面である下降管路後壁42aおよび上昇管路46の前方側の側面である上昇管路前壁46cによって形成されている。
これにより、排水トラップ部40内の洗浄水の流れは、下降管路42内においては下方に流れ、共通壁48近傍では共通壁48の下端の折り返し流路形成部48aを中心として、横引管路44を通りながら半回転近くするように向きを変えながら流れ、上昇管路46内においては上方に流れる。
すなわち、本実施形態の排水トラップ部40は、下降管路42を流下する流れから、横引管路44を通りながら急激に折り返して向きを変え、共通壁48を挟んだ裏側(後方側)に形成された上昇管路46内をほぼ180度流れの向きを上向きに変えて上昇するような流れを生じるように形成されている。
【0038】
次に、上述した本発明の実施形態による小便器の動作について説明する。
使用者が排尿する前においては、排水トラップ部40内は尿濃度の低い洗浄水が溜水として存在している。
そして、使用者が小便器1に排尿すると、ボウル部10の排水口14から排水トラップ部40内に尿が流れ込み、この流れ込んだ尿によって、もともと存在していた尿濃度の低い溜水の大部分が排出され(置換され)、排水トラップ部40内には尿と水とが混ざり合った尿濃度の非常に高い溜水が存在することになる。
【0039】
そして、使用者が排尿を終えて小便器1の前から立ち去ると、人体検知センサ(図示されない)の出力により、所定量の洗浄水Wが吐水装置20からボウル部10に吐水され、ボウル部10を広がりながら流下して、排水口14に到達する。
洗浄水Wは、このとき排水口14へ向けて全周方向からほぼ均一な流量の流れとして流下する。
【0040】
ここで、下降管路42の下降管路前壁42aと下降管路後壁42bとは、下降管路42の中心軸線Cに対して対称であるため、下降管路42内を流下する洗浄水の流れが中心軸線Cに対して対称になる。
したがって、洗浄水は、前後左右方向においてほぼ均等に下方に向かって流下する流れとなり、洗浄水は下降管路42において流れの淀みを発生させることなくスムーズに流れることができるため、横引管路44の横引管路入口44aに流入する洗浄水も、前後左右方向においてほぼ均等に下方に向かって流入する流れを形成する。
【0041】
また、上述した排水トラップ部40の下降管路42の断面積が、入口42cから出口42dまで徐々に減少しているため、下流側に向かうにつれて下降管路42内の流速が高まり、横引管路44における流れの淀みを抑制される。
【0042】
さらに、排水トラップ部40の下降管路42の断面形状が、ほぼ円形であるので、下降管路42の断面積が横引管路44の入口部の面積より大きくなり、横引管路44内に流入する流れが下降管路42内より加速され、これにより横引管路44における流れの淀みを抑制される。
【0043】
次に、排水トラップ部40の横引管路44内の流れについて説明する。
横引管路44の横引管路入口44aに流入する洗浄水は、前後左右方向においてほぼ均等に下方に向かって流入する流れを形成しており、横引管路入口44aから水平部44cに至る第一屈曲部44bの排水方向の断面形状は、上述したように、断面の中央線より内側の面積が断面の中央線より外側の面積よりも小さい。
そのため、横引管路44の第一屈曲部44bの断面形状が略円形形状の場合におきる、断面の中央線より内側の流速と断面の中央線より外側の流速との速度差が抑制される。
これにより、第一屈曲部44bにおいて、断面Aの中央線C1より内側の流速と断面Aの中央線C1より外側の流速が略均一となり、第一屈曲部44bにおける流れの淀みが抑制される。
また、第一屈曲部44bに接続される水平部44cについても、第一屈曲部44bと同様の断面形状を有しているため、断面Aの中央線C1より内側の流速と断面Aの中央線C1より外側の流速がほぼ均一となり、水平部44cおける流れの淀みが抑制される。
【0044】
次に、排水トラップ部40の上昇管路46内の流れについて説明する。
横引管路44の横引管路出口44dから上昇管路46の上昇部46bの入口までを連通する第二屈曲部46aの排水方向の断面形状は、上述したように、断面の中央線より内側の面積が断面の中央線より外側の面積よりも小さい。
そのため、上昇管路46の第二屈曲部46aの断面形状がほぼ円形形状の場合に生じる、断面の中央線より内側の流速と断面の中央線より外側の流速との速度差が抑制されるため、上昇管路46の第二屈曲部46aにおいて、断面の中央線より内側の流速と断面の中央線より外側の流速がほぼ均一となり、第二屈曲部46aにおける流れの淀みが抑制される。
【0045】
さらに、上昇管路46の上昇部46bは、第二屈曲部46aと同様の断面形状を有しているため、断面Bの中央線C2より内側の流速と断面Bの中央線C2より外側の流速がほぼ均一となり、上昇部46bおける流れの淀みが抑制される。
ここで、上昇管路46の上昇部46bの断面積が入口から出口までほぼ一定であるため、上昇管路46の上昇部46bに流入した洗浄水は、上昇管路46の上昇部46b内を、流速分布をほぼ維持した状態で入口から出口まで流れることができる。
【0046】
上述のように、上昇管路46の上昇部46bは、上昇部前壁46cと上昇部後壁46dとは、前後方向において平行な壁面を形成し、且つ同一の傾斜及び傾斜角度を有するように形成されているので、共通壁48に沿った流れF3と、上昇管路後壁40bに沿った流れF4とが前後方向において比較的平行な上昇する流れが形成される。
加えて、上昇部前壁46cと上昇部後壁46dとの間の距離が、上昇管路46の上昇部46bの入口部から出口部まで一定に形成されているため、各壁面に沿った流れが乱れにくく、流れ同士が干渉したり、淀みを発生させたりすることなく、流れることができる。
【0047】
上述した本実施形態の小便器1によれば、排水トラップ部40を上述のような構造としたので、排水トラップ部40内の尿と水とが混ざり合った尿濃度の非常に高い溜水が、新たな排水トラップ部40に流入する洗浄水によって効率よく置換されるように(入れ替えられるように)排出される。
よって、洗浄水量が低減される場合においても、比較的少ない洗浄水量により、排水トラップ部40内の尿濃度の非常に高い溜水を効率よく置換することが可能となり、溜水の置換率が向上される。
【0048】
そして、排水トラップ部40の上昇管路46から流出する洗浄水は、排水室60に流入し、排水室60から排水ソケット52を介して排水配管54に排出される。
【0049】
吐水装置30は一定時間ボウル部10に向かって吐水を行った後に吐水を停止し、小便器1の一連の洗浄動作が終了する。
【0050】
この小便器1の一連の洗浄動作が終了した直後において、排水トラップ部40内には尿濃度の低い洗浄水が溜水として存在しており、このように溜水の置換率が向上したため、小便器1の各回の一連の洗浄動作が終了した後において、排水トラップ部40内の溜水に残存する尿の濃度が一定の基準以下に低減され、溜水に残存する尿成分による排水トラップ部40内への尿石の付着(発生)を抑制できる。
【0051】
上述した本発明の実施形態による小便器1によれば、排水トラップ部40の横引管路44及び上昇管路46の少なくとも何れか一方の排水方向に直交する断面は、この断面の中央より小便器内部側が断面の中央より小便器外部側よりも小さな断面積となるように形成されているので、排水トラップ部40の横引管路44または上昇管路46の断面の中央より内側の流速と断面の中央より外側の流速との速度差が抑制され、これにより、横引管路44または上昇管路46における流れの淀みが抑制されるため、排水トラップ部40内の溜水の置換率が向上し、横引管路44または上昇管路46における尿石の堆積を抑制することができる。
【0052】
また、本実施形態による小便器1によれば、排水トラップ部40の上昇管路46は、その断面積が入口から出口までほぼ一定となるように形成されているので、排水トラップ部40の上昇管路46内で流速の変化が生じにくくなり、排水トラップ部40の上昇管路46における流れの淀みが抑制されるため、上昇管路46における尿石の堆積をさらに抑制することができる。
【0053】
さらに、本実施形態による小便器1によれば、排水トラップ部40の下降管路42は、その断面積が入口から出口まで徐々に減少するように形成されているので、下流側に向かうにつれて下降管路42内の流速が高まることで排水トラップ部40内の溜水の置換が速やかに行われるため、横引管路44および上昇管路46における尿石の堆積をさらに抑制することができる。
【0054】
また、本実施形態による小便器1によれば、排水トラップ部40の下降管路42は、その断面がほぼ円形に形成されているので、下降管路42の断面積が横引管路44の横引き管路入口44aの面積より大きくなり、横引管路44内に流入する流れが下降管路42内より加速されることで、横引管路42における流れの淀みを抑制されるため、横引管路42における尿石の堆積をさらに抑制することができる。
【0055】
さらに、本実施形態による小便器1によれば、排水トラップ部40の横引管路44及び上昇管路46は、それぞれ、その断面の幅寸法が、下降管路42の出口42dの流路断面の最小の幅寸法とほぼ同一の大きさとなるように形成されているので、排水トラップ部40内の排水の流速が維持された状態となり、乱流が発生し難くなることで横引管路44または上昇管路46における流れの淀みを抑制されるため、排水トラップ部40内の溜水の置換が速やかに行われ、横引管路44および上昇管路46における尿石の堆積をさらに抑制することができる。
【符号の説明】
【0056】
1 小便器
10 ボウル部
12 ボウル面
14 排水口
30 吐水装置
40 排水トラップ部
42 下降管路
42c 入口
42d 出口
44 横引管路
46 上昇管路
図1
図2
図3
図4
図5
図6