(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記特許文献1に開示される助手席用エアバッグ装置において、車両の衝突などで乗員が車幅方向内側へ向けて斜め前方に移動したときに、展開した状態のエアバッグとの接触の仕方によっては、乗員の頭部がエアバッグの表面上を回転してしまい適切に受け止めることができない場合があるため、改善の余地があった。
【0006】
以上のことから、本発明は、上述したような課題を解決するために為されたものであって、車両の衝突などによって乗員が車幅方向内側へ向けて斜め前方に移動する場合でも、乗員の頭部を的確に拘束して、乗員に加わる衝撃を効果的に緩和することができるエアバッグ装置を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前述した課題を解決する第1の発明に係るエアバッグ装置は、ガス圧により車両用シートに着座する乗員に向けて展開するエアバッグを有するエアバッグ装置であって、前記エアバッグが、前記乗員の車幅方向右側の領域に展開される右バッグと、前記乗員の車幅方向左側の領域に展開される左バッグと、前記右バッグの後端部における車幅方向左側の部位に形成される右側凹部と、前記左バッグの後端部における車幅方向右側の部位に前記右側凹部と対向して形成される左側凹部と、前記右バッグの車幅方向左側の内側端部と前記左バッグの車幅方向右側の内側端部とを分離可能に連結する連結部と、を備え、無拘束の展開状態で、前記エアバッグの後端部における前記右バッグと前記左バッグとの間に、前記右側凹部と前記左側凹部によって前記車両シートに着座する前記乗員の頭部と対向する凹部が形成されるよう構成したことを特徴とする。
【0008】
前述した課題を解決する第2の発明に係るエアバッグ装置は、第1の発明に係るエアバッグ装置であって、前記エアバッグは、前記右バッグの内部に設けられ、前記右バッグの車両後端部における車幅方向左側の部位に接続されて前記右側凹部を形成するよう前記右バッグの展開形状を規制する右ストラップと、前記左バッグの内部に設けられ、前記左バッグの車両後端部における車幅方向右側の部位に接続されて前記左側凹部を形成するよう前記左バッグの展開形状を規制する左ストラップと、を備えることを特徴とする。
【0009】
前述した課題を解決する第3の発明に係るエアバッグ装置は、第2の発明に係るエアバッグ装置であって、前記エアバッグは、前記右バッグおよび前記左バッグの車両前方側の部位が互いに連通されると共に、車両後方側の部位が分岐部より分岐されるように構成されており、前記分岐部は、無拘束の展開状態にて、前記エアバッグが収納される車両内装部材の車両後方側縁部よりも車両後方側に位置するよう設定されていることを特徴とする。
【0010】
前述した課題を解決する第4の発明に係るエアバッグ装置は、第3の発明に係るエアバッグ装置であって、前記連結部は、前記右バッグの内側端部および前記左バッグの内側端部において、前記分岐部から後端部に亘って設けられることを特徴とする。
【0011】
前述した課題を解決する第5の発明に係るエアバッグ装置は、第2から第4の何れか一つの発明に係るエアバッグ装置であって、前記右ストラップおよび前記左ストラップは、これらの後端部側が、無拘束の展開状態で前端部側よりも前記車両用シートの車幅方向中央部側に配置されることを特徴とする。
【0012】
前述した課題を解決する第6の発明に係るエアバッグ装置は、第1から第5の何れか一つの発明に係るエアバッグ装置であって、前記エアバッグの車両前方側に配置され、前記エアバッグが収納される車両内装部材の車両後方側縁部よりも車両後方側まで展開される内チャンバーをさらに備えることを特徴とする。
【0013】
前述した課題を解決する第7の発明に係るエアバッグ装置は、第1から第6の何れか一つの発明に係るエアバッグ装置であって、前記右バッグおよび前記左バッグの内、車幅方向内側に配置される側の外側端部に、同外側端部よりも車幅方向内側へ張り出す第一サブバッグをさらに備えることを特徴とする。
【0014】
前述した課題を解決する第8の発明に係るエアバッグ装置は、第1から第6の何れか一つの発明に係るエアバッグ装置であって、前記エアバッグの車幅方向内側の側方に隣接して設けられ、前記右バッグもしくは前記左バッグの車両前側への変形を抑制する第二サブバッグをさらに備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0015】
本発明に係るエアバッグ装置によれば、車両の衝突などによって、乗員が車両の正面前方へ移動する場合には、エアバッグの乗員と対向する凹部によって乗員の頭部を受け止めるとともに、乗員の移動に追随して左右のバッグが車幅方向へ変形(分離)しながら乗員を拘束する。一方、乗員が車両の斜め前方側へ移動する場合には、左右のバッグの左側凹部および右側凹部の何れかで乗員の頭部を受け止めるとともに、乗員の移動に追随して左右何れかのバッグが車幅方向へ変形しつつ乗員を拘束することができる。つまり、乗員の頭部が回転することを抑制しつつ乗員を的確に拘束することができるので、乗員に加わる衝撃を効果的に緩和して乗員の安全性を向上することができる。
【発明を実施するための形態】
【0017】
本発明に係るエアバッグ装置の各実施形態について、図面を用いて説明するが、以下に説明する実施形態のみに限定されるものではない。
【0018】
[第一の実施形態]
本発明の第一の実施形態に係るエアバッグ装置について、
図1を用いて以下に説明する。なお、本実施形態では、車幅方向左側および車幅方向右側がそれぞれ運転席および助手席であり、エアバッグ装置を助手席側に適用した場合について説明する。
図1においては、シートクッションに着座する乗員の右肩および腰が3点式のシートベルト装置(図示せず)で拘束されている。
【0019】
本実施形態に係るエアバッグ装置10は、
図1(a)に示すように、助手席側の車両用シート1の正面に対応してインストルメントパネル4に収納されており、高圧ガスを発生するインフレータ11と、インフレータ11が発生したガスによって車室内に展開する袋状のエアバッグ12などを備える。車両用シート1は、乗員Pが着座するシートクッション2と、乗員Pの背中を支持するシートバック3と、乗員Pの頭部を支持するヘッドレスト(図示せず)とを備える。なお、車両用シート1の右側が車幅方向外側(車室外側)であり、左側が車幅方向内側(車室内側)である。
【0020】
エアバッグ12は、左バッグ12Lおよび右バック12Rと、左ストラップ13Lおよび右ストラップ13Rとを備える。エアバッグ12には、凹部14が形成されると共に、連結部15が設けられる。
【0021】
左バッグ12Lは、主として、車両用シート1の車幅方向中央部Cに対し車幅方向左側(車室内側)、すなわち車両用シート1に着座する乗員Pの車幅方向左側(車室内側)の領域にて車両後方側に向けて展開するように構成されている。右バッグ12Rは、主として、車両用シート1の車幅方向中央部Cに対し車幅方向右側(車室外側)、すなわち車両用シート1に着座する乗員Pの車幅方向右側(車室外側)の領域にて車両後方側に向けて展開するように構成されている。左バッグ12Lおよび右バック12Rは、車両前方側にて互いが連通しており、分岐部Xより車両後方側の部分が分岐(分割)されている。つまり、エアバッグ12は、車両前方側の分岐部Xで左バッグ12Lと右バック12Rに分岐(分割)された構成となっている。なお、分岐部Xは、エアバッグ12の無拘束の展開状態で、インストルメントパネル4の車両後方側縁部4aよりも車両後方側に位置するよう設定されることが好ましい。これは、エアバッグ12で乗員Pを受け止めた(拘束した)際に、左バッグ12Lおよび右バッグ12Rがそれぞれ左右方向へ変形して乗員Pが車両前方側へ移動したとしても、インストルメントパネル4と接触しないよう乗員Pを確実に拘束するためである。
【0022】
左バッグ12Lおよび右バッグ12Rの分岐部Xより車両後方側の部分は、連結部15によって分離可能に連結されている。これにより、エアバッグ12が展開される際の左バッグ12Lと右バッグ12Rの展開挙動を安定させている。
【0023】
連結部15は、左バッグ12Lの右側(車両用シート1の車幅方向中央部C側)の内側端部12Lbおよび右バッグ12Rの左側(車両用シート1の車幅方向中央部C側)の内側端部12Rbに設けられ、左バッグ12Lの内側端部12Lbと右バッグ12Rの内側端部12Rbとを接合した状態で連結している。つまり、連結部15は、左バッグ12Lおよび右バッグ12Rの互いに対向する内側端部12Lb、12Rbが接合するように設けられている。連結部15は、車幅方向(左右方向)に左バッグ12Lと右バッグ12Rとが互いに離れる方向に所定以上の荷重が作用した場合に分離されるよう連結されている。より具体的には、連結部15は、車両の衝突などにより乗員Pが車両前方側へ移動され、展開した状態のエアバッグ12に接触した(受け止められた)際に、乗員Pの移動に追随してエアバッグ12(左バッグ12Lおよび右バッグ12R)が左右に変形(分離)できる程度の強さで左バッグ12Lの内側端部12Lbと右バッグ12Rの内側端部12Rbとを連結している。連結部15は、例えば、縫製や接着剤などを用いて接合されている。連結部15が、縫製を用いて接合したものである場合には、連結部15自体の長さおよびその縫製の強さを容易に調整することができ、エアバッグ12の製造コスト増を抑制することができる。
【0024】
連結部15は、左バッグ12Lの内側端部12Lbにおいて分岐部Xと重なる前端部12Lbaから後端部12Lbbに亘って設けられると共に、右バッグ12Rの内側端部12Rbにおいて分岐部Xと重なる前端部12Rbaから後端部12Rbbに亘って設けられることが好ましい。これにより、左バッグ12Lと右バッグ12Rの分岐部Xより車両後方側の大部分が接合(接着・縫製)された状態で連結されるため、エアバッグ12の展開挙動をより安定させることができる。また、乗員Pがエアバッグ12に接触し、左バッグ12Lと右バッグ12Rとが左右に変形(分離)される際に、車両後方側から徐々に連結部15の接合(接着・縫製)を剥離させることができるので、左バッグ12Lおよび右バッグ12Rの急激な変形(変位)を抑制しながら衝撃を緩和することができる。
【0025】
なお、ここでは、連結部15は、左バッグ12Lの内側端部12Lbと右バッグ12Rの内側端部12Rbを直接接合(接着、縫製)して連結する構成となっているが、内側端部12Lbと内側端部12Rbとを別部材を介して連結する構成であってもよい。
【0026】
左ストラップ13Lは、左バッグ12L内に設けられる。左ストラップ13Lの一方の端部(前端部)13Laは、左バッグ12Lの前端部側に固定される。左ストラップ13Lの他方の端部(後端部)13Lbは、左バッグ12Lの後端部12Laにおける車幅方向右側の内側端部12Lb側の部位に固定される。このように左ストラップ13Lを設けることで、左バッグ12Lが車両後方側に向けて展開したときに、左バッグ12Lの後端部12La側における車幅方向右側の内側端部12Lb側に車両前方かつ車幅方向右側へ凹んだ左側凹部12Laaが形成される。
【0027】
右ストラップ13Rは、右バッグ12R内に設けられる。右ストラップ13Rの一方の端部(前端部)13Raは、右バッグ12Rの前端部側に固定される。右ストラップ13Rの他方の端部(後端部)13Rbは、右バッグ12Rの後端部12Raにおける車幅方向左側の内側端部12Rb側の部位に固定される。このように右ストラップ13Rを設けることで、右バッグ12Rが車両後方側に向けて展開したときに、右バッグ12Rの後端部12Ra側における車幅方向左側の内側端部12Rb側に車両前方かつ車幅方向左側へ凹んだ右側凹部12Raaが形成される。この右側凹部12Raaと上述した左側凹部12Laaとは、車幅方向で互いに対向するよう設けられる。
【0028】
上記のように、左ストラップ13Lおよび右ストラップ13Rは、それぞれ左バッグ12Lと右バッグ12Rの後端部12La、12Raにおける車幅方向中央側の部位に、互いに対向する左側凹部12Laaと右側凹部12Raaを形成するよう左バッグ12Lおよび右バッグ12Rの展開形状を規制している。そして、この右側凹部12Raaと上述した左側凹部12Laaによりエアバッグ12の後端部の車幅方向中央部、すなわち左バッグ12Lの後端部12Laと右バッグ12Rの後端部12Raとの間に車両前方へ凹んだ凹部14が構成される。
【0029】
左ストラップ13Lおよび右ストラップ13Rは、これらの後端部13Lb,13Rb側が、エアバッグ12の無拘束の展開状態で、前端部13La,13Ra側よりも車両用シート1の車幅方向中央部C側に配置されることが好ましい。これは、前端部13La,13Ra側にて左ストラップ13Lと右ストラップ13Rとで距離を確保し、折り畳まれた状態の左バッグ12Lおよび右バッグ12Rを円滑に展開させることができるからである。
【0030】
上述したように左ストラップ13Lおよび右ストラップ13Rを設けたことにより、エアバッグ12の無拘束の展開状態で、エアバッグ12の車両後方部における車両用シート1の車幅方向中央部Cと対向する箇所に上述した凹部14が形成されることになる。すなわち、エアバッグ12には、無拘束の展開状態にて、車両用シート1に着座する乗員Pの頭部hと対向する箇所に凹部14が形成されることになる。
【0031】
左ストラップ13Lおよび右ストラップ13Rは、例えば、インフレータ11からのガスとの反応性が無く、エアバッグ12と同じ素材であることが好ましい。
【0032】
次に、車両衝突時の乗員Pの移動方向に応じたエアバッグ装置10の作用・効果について
図1を用いて説明する。
本実施形態のエアバッグ装置10では、主に車両が前面衝突して前方から所定の大きさよりも強い衝撃が入力された際に、エアバッグ12の左バッグ12Lおよび右バッグ12Rが車両後方側に向けて展開される。
【0033】
ここで、
図1(b)に示すように、乗員Pが正面前方(矢印A1方向)へ移動した場合には、乗員Pの頭部hの正面部haと対向する箇所にエアバッグ12の凹部14があることから、乗員Pの頭部hの正面部ha側がエアバッグ12の凹部14と面接触される。そして、エアバッグ12は、乗員Pの移動に追随して左バッグ12Lと右バッグ12Rが左右方向に押し広げられるように変形することになる。この変形の進行に伴い、連結部15の接合(接着・縫合)が車両後方側から剥がれていき、左バッグ12Lおよび右エアバッグ12Rが左右に分離されながら、乗員P(頭部h)を受け止める(拘束する)。このため、乗員Pに加わる衝撃を効果的に緩和することができる。なお、連結部15の接合が最後まで剥離されると乗員Pを分岐部Xの部位で拘束することになるが、分岐部Xがインストルメントパネル4の車両後方側縁部4aより車両後方側に位置されているので乗員P(頭部h)がインストルメントパネル4に接触することは抑制される。
【0034】
一方、乗員Pが斜め前方、例えば、ここでは、
図1(c)に示すように、乗員Pが車幅方向内側である左斜め前方(矢印A2方向)へ移動した場合には、乗員Pの頭部hの正面部haと対向する箇所に左バッグ12Lの左側凹部12Laaがあることから、乗員Pの頭部hの正面部ha側が左バッグ12Lの左側凹部12Laaと面接触される。そして、エアバッグ12は、乗員Pの移動に追随して左バッグ12Lが変形することになる。この変形の進行に伴い、連結部15の接合が剥がれていき、左バッグ12Lが左斜め前方へ変形しながら乗員P(頭部h)を受け止める(拘束する)。このとき、連結部15の接合が車両後方側から剥離されていくので、左バッグ12Lの急激な変形が抑制されるとともに衝撃が緩和される。このため、乗員Pが斜め前方へ移動した場合であっても乗員Pを的確に拘束するとともに乗員Pに加わる衝撃を効果的に緩和することができる。特に乗員Pの頭部hが、左バッグ12Lの左側凹部12Laaによって確実に受け止められることで、乗員Pの頭部hが、エアバッグ12(左バッグ12L)から外れてエアバッグ12の表面上で回転するような現象を抑制することができるので、乗員の安全性を向上することができる。
【0035】
なお、乗員Pが右斜め前方(車幅方向外側)へ移動されるような衝突の場合でも、乗員Pを拘束する部分が右バッグ12Rの右側凹部12Raaとなるだけで、基本その作用・効果は同じである。
【0036】
以上説明したように、本実施形態に係るエアバッグ装置10によれば、エアバッグ12を左バッグ12Lと右バッグ12Rとに分岐させた構成とし、左ストラップ13Lおよび右ストラップ13Rで左バッグ12Lおよび右バッグ12Rの車両後端の車幅方向中央側に比較的大きな凹部14を形成したので、衝突時に、乗員Pの移動方向が正面前方側か斜め前方側かに拘わらず乗員Pの頭部hを凹部14で確実に受け止めた後、乗員Pの移動に追随して左バッグ12Lおよび右バッグ12Rが左右方向へ変形しながら乗員Pを拘束するので、乗員Pの頭部hの回転を抑制しつつ乗員Pを的確に拘束することができる。しかも、左バッグ12Lと右バッグ12Rとの分岐部Xが、インストルメントパネル4の車両後方側縁部4aより車両後方側に位置するよう設定されているので乗員P(頭部h)がインストルメントパネル4に接触することを抑制することができる。これにより、乗員Pに加わる衝撃を効率よく緩和することができ、乗員Pの安全性を向上させることができる。
【0037】
また、左バッグ12Lと右バッグ12Rとを分離可能に連結する連結部15を設けたことにより、エアバッグ12の展開挙動が安定するため、エアバッグ12の無拘束の展開状態で、車両用シート1の車幅方向中央部Cに対して車幅方向左側の領域および車幅方向右側の領域にて、左バッグ12Lおよび右バッグ12Rをそれぞれ確実に展開させることができる。
【0038】
また、連結部15を左バッグ12Lの内側端部12Lbと右バッグ12Rの内側端部12Rbの分岐部Xと重なる前端部12Lba、12Rbaから後端部12Lbb、12Rbbに亘って設けたことにより、乗員Pの移動に追随して左バッグ12Lと右バッグ12Rが変形(分離)する際に、連結部15の接合が車両後方側から徐々に剥がれていくこととなるので、エアバッグ12(左バッグ12Lと右バッグ12R)の急激な変形(分離)を抑制するとともに衝撃をより効果的に緩和することができる。
【0039】
また、左ストラップ13Lおよび右ストラップ13Rの長さや左ストラップ13Lおよび右ストラップ13Rの後端部13Lb,13Rbの固定箇所を調整するだけで凹部14の深さや幅を簡単に調整することができ、エアバッグ12の製造コスト増を抑制することができる。
【0040】
[第二の実施形態]
本発明の第二の実施形態に係るエアバッグ装置について、
図2を用いて以下に説明する。なお、本実施形態では、上述した第一の実施形態(
図1)に示したエアバッグ装置に内チャンバーを追加した構成となっている。本実施形態に係るエアバッグ装置は、第一の実施形態のエアバッグ装置と概ね同一であり、同一の機器には同一の符号を付記し重複する説明を適宜省略する。
図2においては、
図1と同様、シートクッションに着座する乗員の右肩および腰が3点式のシートベルト装置(図示せず)で拘束されている。
【0041】
本実施形態に係るエアバッグ装置10Aは、
図2(a)に示す様に、上述したエアバッグ装置10と同一の機器を備えると共に、エアバッグ12の内部に袋状の内チャンバー16を備えている。
【0042】
内チャンバー16は、エアバッグ12の無拘束の展開状態で、分岐部Xよりも車両前側の空間と分岐部Xより後側の空間とを区画するようにエアバッグ12内部に設けられる。内チャンバー16は、エアバッグ12が無拘束の展開状態でその後端部がインストルメントパネル4の車両後方側縁部4aよりも後方側となるように、内チャンバー16の側端部16a,16bがエアバッグ12の側端部である右バッグ12Rの右側の外側端部12Rcおよび左バッグ12Lの左側の外側端部12Lcに固定される。内チャンバー16は、複数の連通孔16cを有して左バッグ12Lおよび右バッグ12Rの車両後方側の部分と連通されている。インフレータ11は、内チャンバー16内に設けられ、インフレータ11から発生したガスは、内チャンバー16内から当該内チャンバー16とエアバッグ12の左バッグ12Lおよび右バッグ12Rで囲まれる空間内へ流通される。このように、本実施形態のエアバッグ12は、無拘束の展開状態で、左バッグ12Lおよび右バッグ12Rとともに、車両前方側(分岐部Xより前方側)の内部に内チャンバー16が展開される構成となっている。なお、内チャンバー16内の空間の圧力は、内チャンバー16とエアバッグ12の左バッグ12Lおよび右バッグ12Rとで囲まれる空間の圧力よりも高い状態となる。
【0043】
本実施形態のエアバッグ装置10Aによれば、
図2(b)に示すように、衝突時に乗員Pが正面前方(矢印A1方向)へ移動した場合に、第一の実施形態の作用・効果に加えて、乗員Pをより的確に拘束することができるようになる。具体的には、乗員Pの移動に追随してエアバッグ12の左バッグ12Lと右バッグ12Rが変形され、分岐部Xの位置まで連結部15の接合が剥がれて左バッグ12Lと右バッグ12Rが分離された際に、より圧力の高い内チャンバー16で乗員P(頭部h)を受け止める(拘束する)ことができる。すなわち、乗員Pに対する拘束力を左バッグ12Lおよび右バッグ12Rのみによる拘束力と比べて強くすることができる。そのため、乗員Pとインストルメントパネル4との接触がより確実に抑制され、乗員Pの安全性をさらに高めることができる。
【0044】
[第三の実施形態]
本発明の第三の実施形態に係るエアバッグ装置について、
図3を用いて以下に説明する。なお、本実施形態では、上述した第一の実施形態(
図1)に示したエアバッグ装置に第一サブバッグを追加した構成となっている。本実施形態に係るエアバッグ装置は、第一の実施形態のエアバッグ装置と概ね同一であり、同一の機器には同一の符号を付記し重複する説明を適宜省略する。
図3においては、
図1と同様、シートクッションに着座する乗員の右肩および腰が3点式のシートベルト装置(図示せず)で拘束されている。
【0045】
本実施形態に係るエアバッグ装置10Bは、
図3(a)に示す様に、上述したエアバッグ装置10と同一の機器を備えると共に、車幅方向内側(車室内側)に配置される左エアバッグ12Lに袋状の第一サブバッグ17を備えている。
【0046】
第一サブバッグ17は、エアバッグ12の車幅方向左側端部(車幅方向内側)である左バッグ12Lの左側の外側端部12Lcに設けられる。第一サブバッグ17は、左バッグ12Lと連通して設けられており、インフレータ11が発生したガスが左バッグ12Lを介して第一サブバッグ17内に流通可能になっている。第一サブバッグ17は、エアバッグ12および第一サブバッグ17の無拘束の展開状態で、左バッグ12Lの外側端部12Lcにて当該左バッグ12Lの外側端部12Lcよりも車幅方向左側(車幅方向内側)へ張り出すように設けられる。すなわち、左バッグ12Lの車幅方向での容量が増加された構造となっている。
【0047】
本実施形態に係るエアバッグ装置10Bによれば、
図3(b)に示すように、衝突時に乗員Pが左斜め前方(矢印A2方向)、すなわち車幅方向内側斜め前方へ移動した場合に、第一の実施形態の作用・効果に加えて、エアバッグ12(左バッグ12L)による衝撃吸収の効率を向上させることができる。具体的には、乗員Pの移動に追随してエアバッグ12の左バッグ12Lが左斜め前方へ変形(変位)された際に、第一サブバッグ17がインストルメントパネル4と左バッグ12Lとの間に介在されることとで、第一サブバッグ17の容量の分だけエネルギー吸収ストロークが増える。また、左バッグ12Lのみの場合よりも第一サブバッグ17の分だけ左バッグ12Lの変形による移動量が抑制されるため、乗員Pの加速も抑制される。そのため、乗員Pが車幅方向内側斜め前方へ移動した場合に、乗員Pに加わる衝撃をより効率よく緩和することができるので、乗員Pの安全性をより向上させることができる。
【0048】
[第四の実施形態]
本発明の第四の実施形態に係るエアバッグ装置について、
図4を用いて以下に説明する。なお、本実施形態では、上述した第一の実施形態(
図1)に示したエアバッグ装置に第二サブバッグを追加した構成となっている。本実施形態に係るエアバッグ装置は、第一の実施形態のエアバッグ装置と概ね同一であり、同一の機器には同一の符号を付記し重複する説明を適宜省略する。
図4においては、
図1と同様、シートクッションに着座する乗員の右肩および腰が3点式のシートベルト装置(図示せず)で拘束されている。
【0049】
本実施形態に係るエアバッグ装置10Cは、
図4(a)に示す様に、上述したエアバッグ装置10と同一の機器を備えると共に、インストルメントパネル4側に袋状の第二サブバッグ18を備える。
【0050】
第二サブバッグ18は、エアバッグ12とは別に、エアバッグ12に対し左斜め前側、すなわち車幅方向内側斜め前方に隣接してインストルメントパネル4に設けられる。第二サブバッグ18は、後端部18aがエアバッグ12のインストルメントパネル4への収納箇所よりも後方側へ無拘束で展開する形状を有する。なお、第二サブバッグ18は、エアバッグ12と同様、所定の大きさよりも強い衝撃が入力されると、インフレータ(図示せず)からガスが発生し車両後方側に向けて展開されるにようになっている。第二サブバッグ18は展開された状態で、エアバッグ12の左バッグ12Lが左斜め前方へ変形(変位)した際に当接されて左バッグ12Lの変形を抑制する位置に配置されている。
【0051】
本実施形態に係るエアバッグ装置10Cによれば、
図4(b)に示すように、衝突時に乗員Pが左斜め前方(矢印A2方向)、すなわち車幅方向内側斜め前方へ移動した場合に、第三の実施形態同様、第一の実施形態の作用・効果に加えて、エアバッグ12(左バッグ12L)による衝撃吸収の効率を向上させることができる。具体的には、乗員Pの移動に追随してエアバッグ12の左バッグ12Lが左斜め前方へ変形(変位)された際に、インストルメントパネル4上に展開されている第二サブバッグ18に変形(変位)された左バッグ12Lが当接されることで、インストルメントパネル4と左バッグ12Lとの間に第二サブバッグ18が介在された状態となる。そのため第二サブバッグ18の容量の分だけエネルギー吸収ストロークが増える。また、左バッグ12Lのみの場合よりも第二サブバッグ18の分だけ左バッグ12Lの変形による移動量が抑制されるため、乗員Pの加速も抑制される。これにより、乗員Pが車幅方向内側斜め前方へ移動した場合に、乗員Pに加わる衝撃をより効率よく緩和することができるので、乗員Pの安全性をより向上させることができる。
【0052】
なお、上記では、車幅方向左側および車幅方向右側をそれぞれ運転席および助手席とし、助手席側に本発明のエアバッグ装置を適用した場合について説明したが、運転席と助手席の位置が逆の場合にも適用可能であるし、運転席側に適用することも可能である。
また、前席だけでなく、セカンドシートやサードシート等の後席においても適用可能である。この場合、エアバッグは、インストルメントパネルではなく、前方のシートの後部、例えば、シートバックの背面に設けられるのが好ましい。
【0053】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は、勿論、上述の実施形態に限定されるものではなく、その趣旨を逸脱しない範囲で、適宜変更かつ組み合わせが可能なものである。