特許第6607368号(P6607368)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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  • 特許6607368-連続式真空焼結装置 図000002
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6607368
(24)【登録日】2019年11月1日
(45)【発行日】2019年11月20日
(54)【発明の名称】連続式真空焼結装置
(51)【国際特許分類】
   B22F 3/10 20060101AFI20191111BHJP
   F27B 9/02 20060101ALI20191111BHJP
【FI】
   B22F3/10 L
   F27B9/02
【請求項の数】6
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2014-255883(P2014-255883)
(22)【出願日】2014年12月18日
(65)【公開番号】特開2016-113691(P2016-113691A)
(43)【公開日】2016年6月23日
【審査請求日】2017年10月23日
(73)【特許権者】
【識別番号】000003713
【氏名又は名称】大同特殊鋼株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100098615
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 学
(72)【発明者】
【氏名】石浜 克則
(72)【発明者】
【氏名】岡田 康史
【審査官】 藤長 千香子
(56)【参考文献】
【文献】 特開2004−053046(JP,A)
【文献】 特開平07−242929(JP,A)
【文献】 特開平05−106973(JP,A)
【文献】 中国特許出願公開第103801688(CN,A)
【文献】 特開平05−025505(JP,A)
【文献】 特開2011−137202(JP,A)
【文献】 特開平09−157036(JP,A)
【文献】 特開2005−232541(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B22F 1/00−8/00
C22C 1/04−1/05
C22C 33/02
F27B 9/00−9/40
F27D 7/00−15/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ワックスを含有する金属粉末成形品を脱ワックスし、更に脱ワックスされた金属粉末成形品を連続して真空雰囲気中で焼結する連続式真空焼結設備であって、
上記粉末成形品の搬入口および搬出口を有し、搬入された該粉末成形品を大気圧より僅かに高圧の不活性ガスが循環する雰囲気中で加熱して脱ワックスするための雰囲気脱ワックス室と、
上記雰囲気脱ワックス室の搬出口側に扉を介して連設され、脱ワックスされた上記粉末成形品を真空中で焼結するための単数または複数の真空焼結室と、を含
上記雰囲気脱ワックス室の搬入口側あるいは搬出口側において、対向する側壁に設けた搬入口および搬出口と、これらの間に配置された搬送手段とを有し、且つ上記側壁を含んで構成される室内を真空にする雰囲気排出手段に接続されている真空置換室を更に連設してなる
ことを特徴とする連続式真空焼結設備。
【請求項2】
前記雰囲気脱ワックス室は、前記搬入口と搬出口との間に配置された加熱手段および搬送手段と、該雰囲気脱ワックス室の室内に不活性ガスを循環して供給および排出する不活性ガス循環手段と、上記不活性ガスを加熱する加熱手段とを備えている、
ことを特徴とする請求項1に記載の連続式真空焼結設備。
【請求項3】
前記雰囲気脱ワックス室は、その室内を真空にする雰囲気排出手段に更に接続されている、
ことを特徴とする請求項1または2に記載の連続式真空焼結設備。
【請求項4】
前記真空置換室は、その室内に不活性ガスを循環して供給および排出する不活性ガス循環手段を更に備えている、
ことを特徴とする請求項1乃至3の何れか一項に記載の連続式真空焼結設備。
【請求項5】
前記真空置換室は、その室内を加熱する加熱手段を更に備えている、
ことを特徴とする請求項1乃至の何れか一項に記載の連続式真空焼結設備。
【請求項6】
前記雰囲気脱ワックス室の搬出口側に前記真空置換室を連設すると共に、係る雰囲気脱ワックス室の搬入口側に対し、室内の雰囲気を不活性ガスに置換する不活性ガス置換室を更に連設してなる、
ことを特徴とする請求項1乃至の何れか一項に記載の連続式真空焼結設備。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、金属粉末をワックスなどの油脂成分または樹脂バインダなどの樹脂成分と混合して所要の形状に成形された粉末成形品を、脱ワックス処理(以下、脱脂処理という)し、更に真空雰囲気中で焼結するための連続式真空焼結設備に関する。
【背景技術】
【0002】
前記のような金属粉末成形品を、脱脂した後、引き続いて真空中で焼結するに際し、炉体内部へのバインダ付着を防ぎ且つ脱脂処理の所要時間を短縮するため、例えば、脱脂時に粉末成形品を収容したタイトボックスなどの内部をバインダの気化に適した減圧雰囲気とし、係る脱脂後に漏出したバインダを炉体内部の低い位置から外部に排出することにより、炉体内を清浄とし、係る清浄な炉内で焼結処理するようにした真空脱脂焼結炉が提案されている(例えば、特許文献1)。
しかし、上記真空脱脂焼結炉のようなバッチ方式の単一炉内において、準真空雰囲気中での脱脂処理を行う場合、脱脂時に炉内に凝縮して付着したワックス成分が高温の焼結時に再蒸発するため、金属粉末成形品を汚染し易くなると共に、多数の金属粉末成形品を効率良く脱脂処理と焼結処理とを行うことが困難であった。
【0003】
一方、不活性な雰囲気ガス中で脱脂処理する場合でも、該脱脂後の焼結処理は高温度域で行われるので、金属粉末成形品を構成している金属粉末の性質が変化する事態を防ぐため、真空雰囲気中での焼結処理をせざるを得ない。しかし、これまでのところ、不活性な雰囲気ガス中で脱脂処理した後、連続して真空焼結処理を効率良く確実に行えるようにした連続式の真空焼結設備は、提案されていなかった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平9−145257号公報(第1〜4頁、図1,2)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、背景技術で説明した問題点を解決し、金属粉末成形品を不活性な雰囲気ガス中で脱脂処理した後、連続して真空焼結処理を効率良く行えるようにした連続式真空焼結設備を提供する、ことを課題とする。
【課題を解決するための手段および発明の効果】
【0006】
本発明は、前記課題を解決するため、金属粉末成形品を大気圧より僅かに高圧の不活性ガスが循環する雰囲気中で脱脂できる雰囲気脱ワックス室と、該脱ワックス室の搬出口側に扉を介在させた任意数の真空焼結室とを連設する、ことに着想して成されたものである。
即ち、本発明の真空焼結設備(請求項1)は、ワックスを含有する金属粉末成形品を脱ワックスし、更に脱ワックスされた金属粉末成形品を連続して真空雰囲気中で焼結する連続式真空焼結設備であって、上記粉末成形品の搬入口および搬出口を有し、搬入された該粉末成形品を大気圧より僅かに高圧の不活性ガスが循環する雰囲気中で加熱して脱ワックスするための雰囲気脱ワックス室と、該雰囲気脱ワックス室の搬出口側に扉を介して連設され、脱ワックスされた上記粉末成形品を真空中で焼結するための単数または複数の真空焼結室と、を含上記雰囲気脱ワックス室の搬入口側あるいは搬出口側において、対向する側壁に設けた搬入口および搬出口と、これらの間に配置された搬送手段とを有し、且つ上記側壁を含んで構成される室内を真空にする雰囲気排出手段に接続されている真空置換室を更に連設してなる、ことを特徴とする。
【0007】
これによれば、以下の効果(1)〜()を奏することが可能となる。
(1)脱脂(脱ワックス)処理を、雰囲気脱ワックス室内における大気圧より僅かに高圧の不活性ガスが循環する雰囲気中で金属粉末成形品を加熱しつつ行うので、該粉末成形品中に含まれていたワックス成分(油脂成分や樹脂成分)は、上記室内を循環する不活性ガスと共に、外部に排出された後、燃焼される。その結果、上記室内(炉内)や該室内に連通する配管の管壁にワックス成分が付着しにくくなり、比較的短時間で効率良く脱脂処理を施せる。しかも、前記ワックス成分を除去するための清掃などのメンテナンスや、排気管中のワックストラップ設備などが不要となるので、係るコストを低減することもできる。
(2)前記雰囲気脱ワックス室の搬出口側に、任意数の真空焼結室が扉を介して連設されているので、脱脂処理された粉末成形品を真空焼結室内において順次適正に且つ効率良く真空焼結処理することができ、既存の多室連続式焼結炉と同等か、それ以上に生産性を高めることが可能となる。
(3)脱脂処理および真空焼結処理される金属粉末成形品を、油脂成分などによる汚染が殆ど皆無で且つ寸法や形状などの精度の良い粉末焼結製品として確実に提供できる。
(4)、前記雰囲気脱ワックス室の搬出口側に真空置換室を連設する形態では、雰囲気脱ワックス室の大気圧より僅かに高圧の不活性ガス雰囲気中で脱脂処理された前記金属粉末成形品を、該ワックス室の搬出口側の扉および真空置換室の搬入口側の扉を通って、該真空置換室の真空雰囲気中に迅速且つスムースに搬送することができる一方、前記雰囲気脱ワックス室の搬入口側に真空置換室を連設する形態では、金属粉末成形品を真空置換室内で予め真空雰囲気中に置き、同様に真空化されている雰囲気脱ワックス室の室内に搬入した後、該脱ワックス室の室内を大気圧より僅かに高圧の不活性ガスの雰囲気に置換することで、脱脂処理が施せると共に、窒素などの比較的高価な不活性ガスの使用量を低減することもできる従って、これらによれば、前記効果(2)、(3)を確実に奏することができる尚、上記形態の場合、前記雰囲気脱ワックス室の雰囲気排出手段を省略することも可能である
【0008】
尚、前記不活性ガスは、窒素、Ar、ネオン、ヘリウムなど、あるいはこれらの2種以上の混合ガスである。
また、前記雰囲気脱ワックス室の搬入口および搬出口は、該脱ワックス室を構成する気密性の室本体において、対向する一対の側壁ごとに開口する開口部と、該開口部を断熱性および気密性をもって開閉する断熱扉とからなる。
更に、前記「扉」とは、前記雰囲気脱ワックス室の搬出口側の扉のみ、または、該雰囲気脱ワックス室の搬出口側の扉と隣接する真空焼結室の扉との双方を指している。後者の場合、前記「扉を介して」は、隣接する上記2つの室間に位置し且つ両者の扉に挟まれた中間室も含むものとなる。
加えて、本発明は、前記任意数の真空焼結室における最終の搬出口側に、係る真空焼結室内の真空中で焼結処理された前記金属粉末成形品をハンドリングが可能な温度域まで冷却するガス冷却室を、扉を介して連設した形態としても良い。
【0009】
また、本発明には、前記雰囲気脱ワックス室は、前記搬入口と搬出口との間に配置された搬送手段と、該雰囲気脱ワックス室の室内に不活性ガスを循環して供給および排出する不活性ガス循環手段と、上記不活性ガスを加熱する加熱手段とを備えている、真空焼結設備(請求項2)も含まれる、
これによれば、前記雰囲気脱ワックス室内で循環しつつ加熱された不活性ガスの雰囲気中において、金属粉末成形品を搬入口側から搬出口側へ搬送させつつ、所要の脱脂処理を施せる。従って、前記効果(1)を確実に奏することができる。
尚、前記加熱手段は、例えば、ヒータあるいはバーナなどを内蔵する直線(垂直)型のラジアントチューブ式加熱装置が好適であるが、これに限られない。
また、前記搬送手段には、例えば、複数のローラを平行に配設した搬送ローラ、チェーン型コンベア、あるいは、メッシュ型コンベアなどが含まれる。
更に、前記不活性ガス循環手段は、少なくとも、上記不活性ガスの給気管および排気管と、該不活性ガスを圧送するポンプとを含む。加えて、前記室本体内において不活性ガスを攪拌するファンなどの攪拌手段を付設した形態も含まれる。
【0010】
更に、本発明には、前記雰囲気脱ワックス室は、その室内を真空にする雰囲気排出手段に接続されている、真空焼結設備(請求項3)も含まれる、
これによれば、雰囲気脱ワックス室の室内をほぼ真空にできるので、脱脂処理された前記金属粉末成形品を搬出口側から、隣接する真空焼結室の搬入口を経て該真空焼結室内にわたり連続する真空雰囲気中によって、迅速且つスムースに搬送することができる。従って、前記効果(2)、(3)を確実に奏することができる。
尚、前記雰囲気排出手段は、少なくとも、不活性ガスの排気管と該排気管に接続した真空ポンプとを含む。更に、該真空ポンプの上流側に位置する上記排気管の途中にワックス成分回収手段を付設した形態も含まれる。
【0011】
更に、本発明には、前記真空置換室は、その室内に不活性ガスを供給する不活性ガス供給手段を更に備えている、真空焼結設備(請求項4)も含まれる
【0012】
れによれば、前記雰囲気脱ワックス室の搬出口側に真空置換室を連設する形態では、雰囲気脱ワックス室の不活性ガス雰囲気中で脱脂処理された前記金属粉末成形品を、そのまま上記真空置換室内の不活性ガス雰囲気中に搬入できる。そのため、当該搬入後に搬入口側の扉を閉じて、該真空置換室内を真空雰囲気に置き換えることにより、隣接する真空焼結室の搬入口を経て該真空焼結室内に連続する真空雰囲気中を通って、迅速且つスムースに搬送できる。一方、前記雰囲気脱ワックス室の搬入口側に真空置換室を連設する形態でも、係る2つの室内を不活性ガス雰囲気とすることで、前記金属粉末成形品を当該2つの室内の間において迅速且つスムースに搬送できる。従って、上記何れの形態であっても、前記効果(2)を一層確実に奏することができる。
尚、前記不活性ガス供給手段から真空置換室内に供給された不活性ガスは、その搬入口側から隣接する雰囲気脱ワックス室の排出口側から該脱ワックス室内に送給された後、当該脱ワックス室から外部に排出するようにしても良い。この形態では、雰囲気脱ワックス室と真空置換室との間に、両者の扉間に挟まれた中間室を配設した場合には、該中間室にも不活性ガス供給手段を接続すると良い。
【0013】
また、本発明には、前記真空置換室は、その室内を加熱する加熱手段を更に備えている、真空焼結設備(請求項)も含まれる、
これによれば、脱脂処理された前記金属粉末成形品を真空置換室内において加熱することよって、次の真空焼結室内における焼結処理の高温処理温度帯に近似する温度域に予熱することができる。従って、前記効果(2)乃至(4)をより一層確実に奏することが可能となる。
尚、前記真空置換室の室内を配置する加熱手段は、脱脂された後の金属粉末成形品に対し、上記室内を真空雰囲気化した際における該粉末成形品の温度低下を防止ないし抑制するものでもある。
【0014】
加えて、本発明には、前記雰囲気脱ワックス室の搬出口側に前記真空置換室を扉を介して連設すると共に、上記雰囲気脱ワックス室の搬入口側に対し、室内の雰囲気を不活性ガスに置換する不活性ガス置換室を室内同士が連通可能にして設けてなる、真空焼結設備(請求項)も含まれる、
これによれば、雰囲気脱ワックス室の搬入口側に不活性ガス置換室が室内同士が連通可能に更に連設されているので、エアと共に搬入された上記不活性ガス置換室室内の金属粉末成形品を、予め脱脂処理時と同じ不活性ガス雰囲気中に置くことができる。従って、前記効果(2)を一層確実に奏することが可能となる。
尚、前記不活性ガス置換室は、エアと共に金属粉末成形品が搬入された室内を、例えば、窒素雰囲気(大気圧より僅かに高圧、以下、ほぼ大気圧という)に置換して、上記金属粉末成形品を酸化させる酸素をパージする設備である。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】(A)は本発明の前提となる参考形態の連続式真空焼結設備の概略を示す垂直断面図、(B)は(A)中のX−X線の矢視に沿った雰囲気脱ワックス室の垂直断面図、(C)は異なる形態の雰囲気脱ワックス室を示す(B)と同様な垂直断面図。
図2】(A)は本発明による一形態の連続式真空焼結設備の概略を示す垂直断面図、(B)は前記(A)の変形形態である連続式真空焼結設備の概略を示す垂直断面図。
図3】(A)は図2(A)の連続式真空焼結設備の応用形態の概略を示す垂直断面図、(B)は前記(A)に示す連続式真空焼結設備の応用形態の概略を示す垂直断面図。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下において、本発明を実施するための形態について説明する。
図1(A)は、本発明の前提となる参考形態の連続式真空焼結設備(以下、単に真空焼結設備という)1aの概略を示す垂直断面図である。
係る真空焼結設備1aは、図1(A)に示すように、床面FL上に沿って、左端側に位置する雰囲気脱ワックス室2aと、該脱ワックス室2aの右側に中間室18,19を介して連設され且つ直線状に連設された複数(本形態では4個以上)の真空焼結室10a〜10nと、右端の真空焼結室10nの右側に中間室19を介して連設され冷却室(雰囲気ガス冷却室)20と、をほぼ直線状に備えている。
上記雰囲気脱ワックス室2aは、図1(A)に示すように、全体が円筒形状を呈し且つ黒鉛などの断熱材からなる室本体3と、該室本体3の左側の端壁の開口部を開閉する扉(搬入口)4と、室本体3の右側の端壁の開口部を開閉する扉(搬出口)5と、室本体3の床面に沿って扉4,5間に水平に且つ並列に配置された複数の搬送ローラ(搬送手段)rと、室本体3の天井部を垂直方向に沿って貫通し且つ下端部が複数の搬送ローラr,r間ごとに位置する左右一対で且つ複数組のラジアントチューブ(加熱手段)6とを備えている。該ラジアントチューブ6は、円筒形状を呈する外筒体の内側にヒータ(図示せず)を内蔵している。
【0017】
前記室本体3は、図1(B)に示すように、その表面を金属板3aで覆われ、前記搬送ローラrごとの中央側には、金属粉末成形品Wを案内するため、円錐形状を呈する左右一対のガイドgが取り付けられている。各搬送ローラrは、該室本体3の外側に突出した端部で、図示しない駆動手段に駆動されることよって回転可能とされている。上記室本体3の天井には、外側のモータmによって駆動され且つ脱ワックス室2aの室内の雰囲気を攪拌するファンfが配置されている。
また、前記脱ワックス室2aには、その室本体3を径方向に沿って貫通する真空排気管(雰囲気排気手段)9が配設され、該排気管9は、脱ワックス室2aの室内の真空化を可能とするもので、図示しない真空ポンプに接続されている。
更に、前記室本体3は、図1(C)に示すように、表面側の金属板3aと共に断面が矩形(正方形または長方形)で且つ全体が直方体状を呈する形態としても良い。係る形態では、室本体3内が真空化された際の強度を得るため、係る室本体3の金属板3aの外側に沿って、型鋼などからなる複数の補強材3cが適宜固定される。尚、図1(C)では、上記真空排気管9の図示を省略している。
【0018】
図1(A)に示すように、雰囲気脱ワックス室2aにおける搬入口側および搬出口側の扉4,5は、それらの外側面全体を断熱性のカバーcで覆われ、該カバーcの室本体3側の外周縁に沿って、気密用のOリングなどの気密パッキン(図示せず)が配置されている。上記カバーcは、上下一対で且つ左右(前後)一対のリンク片jを介して支持板tに接続されて支持され、該支持板tは、垂直姿勢に配設されたエアシリンダsから昇降可能に垂下するピストンロッドpの下端に接続されている。即ち、上記扉4,5は、ピストンロッドpが下降した際に、脱ワックス室2aの搬入口(4)と搬出口(5)とを閉鎖し、且つピストンロッドpが上昇した際に、脱ワックス室2aの搬入口(4)と搬出口(5)を開放可能としている。
また、前記室本体3の天井部には、窒素などの不活性ガスを脱ワックス室2aの室内に供給し且つ不活性ガス循環手段の一方を構成する不活性ガス供給管7と、上記不活性ガスを脱ワックス室2aの室内から排出し且つ不活性ガス循環手段の他方を構成する不活性ガス排気管8とが互いに離れた位置で貫通している。係る供給管7と排気管8との間に前記ファンfが配置されているので、脱ワックス室2aの室内に循環しつつ供給される不活性ガスは、該室内で均一状に攪拌される。
【0019】
更に、図1(A)に示すように、前記真空焼結室10a〜10nは、雰囲気脱ワックス室2aの右側に隣接する真空焼結室10aで例示するように、円筒形状または直方体状の外箱体11と、該外箱体11の内側に配置され且つ前記同様の断熱材からなる円筒形状または直方体状の断熱室12と、該断熱室12の左側の端面の開口部を開閉する扉(搬入口)13と、右側の端面の開口部を開閉する扉(搬出口)14と、上記断熱室12の床面に沿って扉13,14間に水平に且つ並列に配置された複数の搬送ローラrと、上記断熱室12の床面および天井面に沿って配設された上下一対のヒータ16とを備えている。
加えて、真空焼結室10a〜10nには、上記外箱体11の適所を貫通する前記同様の真空排気管17が、断熱室12内ごとに接続されている。
【0020】
前記雰囲気脱ワックス室2aと真空焼結室10aとの間には、中間室18が介在し、真空焼結室10a〜10nの間には、それぞれ中間室19が介在している。該中間室18,19は、それの天井面の上側に前記同様のシリンダsが垂設され、該シリンダsから室内ごとの中央部に垂下したピストンロッドpの下部に連結された前記同様の支持板tと複数のリンク片j、あるいは該リンク片jと前記同様のカバーcとを介して、前記扉13,14が搬入口または搬出口を開閉可能とするように支持されている。尚、上記カバーcは、断熱性を要する位置ごとの扉14に配置されている。
加えて、図1(A)に示すように、最右側の真空焼結室10nにおける搬出口(14)側には、前記同様の中間室19を介して、前記冷却室20が連設されている。該冷却室20は、気密性を有する円筒体または直方体形状の室本体22と、搬入口側および搬出口側の扉23,24と、前記同様の複数の搬送ローラrと、前記同様のファンfおよびモータmとを備えている。
【0021】
ここで、前述した構成を備えた真空焼結設備1aの作用について説明する。
予め、雰囲気脱ワックス室2aの室内を、不活性ガス供給管7から供給した窒素ガス(不活性ガス)によって、ほぼ大気圧の不活性ガス雰囲気で満たしておく。
次に、搬入口側の扉4をカバーcと共に開放して、前記金属粉末成形品Wを室内の搬送ローラr,r,…上に搬入した後、搬入口側の扉4を閉じる。
係る状態で、不活性ガス供給管7および不活性ガス排出管8から窒素ガスが供給および排出されることで、前記脱ワックス室2aの室内に係る窒素ガスを循環させると共に、前記ファンfによって該窒素ガスを攪拌する。平行して、前記複数のラジアントチューブ6に通電することによって、記脱ワックス室2aの室内に窒素ガスを所要の温度帯(例えば、約800℃)に加熱する。
【0022】
上記加熱され且つ循環および攪拌された窒素ガスによって、搬送ローラr,…,r上に位置している上記金属粉末成形品Wを所要時間にわたり加熱する。その結果、該粉末成形品W中に含まれていた油脂や樹脂などのワックス成分は、蒸発して前記脱ワックス室2aの室内を循環する窒素ガスと共に不活性ガス排出管8から外部に排出された後、燃焼される。そのため、蒸発した油脂などのワックス成分が雰囲気脱ワックス室2aの室内などに凝縮して付着しにくくなる。
更に、上記金属粉末成形品Wの脱脂(脱ワックス)処理が終了すると、前記不活性ガス供給管7および不活性ガス排出管8を閉鎖すると共に、前記真空排気管9から雰囲気脱ワックス室2aの室内に残留している窒素ガスを外部に排気し、該脱ワックス室2aの室内を真空雰囲気化する。
この間において、雰囲気脱ワックス室2aに隣接する前記中間室18と真空焼結室10aとの室内は、両者間の扉13を開放した状態で、真空焼結室10aに接続された前記真空排気管17により、予め所定の真空雰囲気とされている。
【0023】
そのため、中間室18を挟んだ扉5,13をこれらのカバーcと共に上昇させ、脱脂処理された前記金属粉末成形品Wを、真空中の雰囲気脱ワックス室2aの室内から真空焼結室10aの断熱室12内の搬送ローラr,r上に搬送できる。
続いて、上記金属粉末成形品Wは、焼結処理のヒートパターンに応じた焼結温度(約1100℃)に設定された真空焼結室10a〜10nの室内を順次搬送され、次に脱脂処理される金属粉末成形品Wも、同様にして真空焼結室10a〜10nの室内を順次搬送されることにより、真空中で所要の焼結処理を施される。
そして、前記真空焼結処理された金属粉末成形品Wは、図1(A)に示すように、真空焼結室10nから中間室19を経て、搬入側の扉23から冷却室20の室内における搬送ローラr,r上に搬送された後、前記ファンfによる強制的な不活性ガス雰囲気の攪拌によって冷却される。
【0024】
その結果、上記金属粉末成形品Wは、ハンドリングが可能な温度域(例えば、100℃以下、望ましくは50℃以下)に冷却された後、搬出側の扉24から外部に搬出され、目的とする製品の金属粉末成形品Wとなる。
以上のような真空焼結設備1aによれば、粉末成形品Wを不活性な雰囲気ガス中で脱脂処理した後、連続して真空焼結処理を効率良く行えるので、前述した効果(1)〜(3)を確実に奏することができる。
尚、前記雰囲気脱ワックス室2aの室内における脱脂処理において、該室内の雰囲気を窒素ガスに置換し、更に該室内に前記粉末成形品Wを搬入した後、前記不活性ガス排気管8および真空排気管9の少なくとも一方から上記窒素ガスを排出して、上記室内を真空状態としてから、該室内に新たな窒素ガスをほぼ大気圧レベルに充填した状態で前記脱脂処理を行うようにしても良い。係る形態の処理方法によれば、上記室内の雰囲気を一層確実に不活性状態にすることができる。
【0025】
図2(A)は、前記真空焼結設備1aの応用形態であって、且つ本発明による一形態の真空焼結設備1bの概略を示す前記同様の垂直断面図である。
係る真空焼結設備1bは、図2(A)に示すように、左端側の真空置換室30a、該真空置換室30aの右側に前記同様の中間室18を介して連設された前記同様の雰囲気脱ワックス室2a、該脱ワックス室2aの右側に前記同様に連設された複数の真空焼結室10a〜10n、および図示で最右側の真空焼結室10nの右側に前記同様に連設された冷却室20をほぼ直線状に備えている。
上記真空置換室30aは、全体が円筒形状または直方体形状を呈し且つ気密性を有する置換室本体31、該置換室本体31の対向する側壁に設けられた搬入口側および搬出口側の扉33,34、上記置換室本体31の床面に沿って前記同様に配設された複数の搬送ローラr、および上記置換室本体31の天井部を垂直状に貫通し、中間に真空ポンプ39を有する真空排気管(雰囲気排出手段)37を備えている。
尚、上記置換室本体31の内側には、その形状と相似形で且つ前記同様の断熱材からなる断熱室32を配置し、その内側に真空排気管37を連通させても良い。
また、上記搬入口側の扉33は、前記同様のリンク片jおよび支持板tを介したピストンロッドpとエアシリンダsにより、上記搬入口を開閉可能としている。
【0026】
以上のような真空焼結設備1bの使用方法は、以下の通りである。
先ず、前記扉33から真空置換室30a内の置換室本体31内の搬送ローラr上に金属粉末成形品Wを搬入した後、前記真空ポンプ39および真空排気管37によって、上記置換室本体31内のエアを外部へ排出して真空化する。平行して、前記雰囲気脱ワックス室2aの室内を、前記真空排気管9によって真空化すると共に、真空置換室30と雰囲気脱ワックス室2aとの間に位置する中間室18内も、該中間室18を挟む扉34,4を開放することで真空化されている。
係る状態で、上記金属粉末成形品Wを、真空置換室30aの断熱室32から中間室18を経て雰囲気脱ワックス室2aの室内の搬送ローラr,r,…上に搬送する。次に、雰囲気脱ワックス室2aの室内を、前記不活性ガス供給管7および不活性ガス排気管8により、ほぼ大気圧である窒素ガスの雰囲気とした後、係る窒素ガスの雰囲気を複数の前記ラジアントチューブ6により加熱することによって、上記金属粉末成形品Wに対して前記同様の脱脂処理を施す。
【0027】
次いで、雰囲気脱ワックス室2aの右側に隣接する中間室18の室内の雰囲気を大気圧の窒素ガスとし、且つ該中間室18の右側に隣接する真空焼結室10a内の雰囲気を大気圧より若干高い窒素ガスとした状態で、前記扉5,13を開放して、脱脂処理された前記金属粉末成形品Wを真空焼結室10a内に搬入する。
更に、上記金属粉末成形品Wに対して、真空引きした真空焼結室10aの断熱室12内で前記同様の真空焼結処理を施すと共に、予め真空化されている前記中間室19内を介して、前記同様に真空化されている真空焼結室10b〜10nの断熱室12内ごとに順次搬送しつつ、当該金属粉末成形品Wに対して前記同様の真空焼結処理を施す。
最後に、図2(A)で最右端側の前記中間室19を介して、冷却室20の室本体22内に搬入し、且つ所定の温度域まで冷却した後、外部に搬出される。
以上のような本発明の真空焼結設備1bによれば、前述した効果(1)〜()を確実に奏することができ、しかも、例えば、窒素ガスのような高価な不活性ガスの使用量を更に低減できるので、処理コストを一層低減することも可能となる。
【0028】
図2(B)は、前記真空焼結設備1変形形態である真空焼結設備1cの概略を示す前記同様の垂直断面図である。
係る真空焼結設備1cは、図2(B)に示すように、左端側の雰囲気脱ワックス室2b、該脱ワックス室2bの右側に中間室25を介して連設された前記同様の真空置換室30a、該真空置換室30aの右側に前記同様にして連設された複数の真空焼結室10a〜10n、および、図示で最右側の真空焼結室10nの右側に前記同様に連設された冷却室20をほぼ直線状に備えている。
上記雰囲気脱ワックス室2bは、前記同様の断熱材からなり且つ前後方向の側壁が対称に若干傾斜した室本体3b、前記傾斜した側壁ごとの搬入口側および搬出口側の扉4b,5b、前記同様である複数のラジアントチューブ6、前記同様である複数の搬送ローラr、前記不活性ガス供給管7と不活性ガス排気管8、前記真空排気管9(図示略)、および前記同様のファンfとモータmを備えている。
【0029】
前記扉4b,5bは、傾斜したワイヤロープwを介して上方の巻き上げドラム26から個別に吊り下げされており、該ドラム26の正回転および逆回転によって、前記雰囲気脱ワックス室2bの搬入口および搬出口を開閉可能としている。
また、雰囲気脱ワックス室2bと真空置換室30aとの間に位置する前記中間室25は、気密性の室内を有し、その天井付近に前後一対の巻き上げドラム26が配置され、図2(B)で右(下流)側の巻き上げドラム26は、前記真空置換室30aにおける搬入口側の扉33をカバーcと共に、垂直姿勢のワイヤロープwを介して昇降可能に吊り下げている。係る中間室25の天井面には、窒素ガスを室内に供給するための不活性ガス給気管27が接続されている。
更に、上記真空置換室30aは、置換室本体31の内側に断熱室32を配置しており、該断熱室32内に窒素などの不活性ガスを供給する不活性ガス給気管(活性ガス供給手段)38が更に接続されている。
加えて、上記真空置換室30aの右側には、前記同様の中間室18または中間室19を介して、前記同様である複数の真空焼結室10a〜10nが前記同様にして連設され、右端側の真空焼結室10nの右側には、前記同様の中間室19を介して、前記同様の冷却室20が前記同様に連設されている。
【0030】
以上のような真空焼結設備1cの使用方法は、以下の通りである。
予め、雰囲気脱ワックス室2bの室内をほぼ大気圧の窒素ガス雰囲気とし、且つ該雰囲気を前記ラジアントチューブ6により所定の脱脂処理温度帯に加熱しておく。一方、隣接する中間室25内には、その給気管27から窒素ガスが供給されており、該中間室25に隣接する真空置換室30aの断熱室32内には、窒素ガスが不活性ガス給気管38から供給されている。
係る状態で、搬入口側の扉4bを開放して、前記同様の金属粉末成形品Wを雰囲気脱ワックス室2bの室内に搬入し、前後の扉4b,5bを閉鎖後した後、上記金属粉末成形品Wに対し、前記同様の脱脂処理を施す。
【0031】
次に、前記扉5b,33を開放して、脱脂処理された金属粉末成形品Wを真空置換室30aの断熱室32内に搬送する。次いで、上記扉33を閉鎖し、前記不活性ガス給気管38を閉鎖した後、前記真空ポンプ39に連通する真空排気管37から前記窒素ガスを排出して、上記断熱室32内を真空化する。
更に、真空置換室30aの断熱室32における搬出口側の扉34と、最右側の真空焼結室10aの搬入口側の扉13とを開放して、且つ予め真空化されている前記中間室18を経て、真空雰囲気中の金属粉末成形品Wを上記真空焼結室10aの室内に搬入した後、前記同様の真空焼結処理を施す。尚、この間において、前記雰囲気脱ワックス室2b内には、新たな金属粉末成形品Wが搬入されており、前記同様のプロセスにより脱脂処理が平行して行われている。
そして、上記金属粉末成形品Wは、予め真空化されている前記中間室19内を通過して、真空焼結室10b〜10nの断熱室12内ごとに順次搬送されつ、当該金属粉末成形品Wに対して前記同様の真空焼結処理を施された後、前記冷却室20の室本体22内で前記同様に冷却される。
【0032】
以上のような真空焼結設備1cによれば、前述した効果(1)〜()を確実に奏することができると共に、更に、雰囲気脱ワックス室2bへの窒素ガスの充填時間を短縮でき、且つその後の真空雰囲気への移行時間も短縮できるので、処理コストを更に低下させることが可能となる。
尚、前記雰囲気脱ワックス室2bの運転パターンは、前述した形態に限らず、適宜のパターンに変更することが可能である。
また、前記雰囲気脱ワックス室2bの扉4b,5bを有する傾斜した側壁は、巻き上げドラム式で扉4b,5bを昇降させるが、係る形態に限らず、前記同様の垂直姿勢の側壁とし、且つ前記同様にして扉4b,5bを昇降させても良い。
【0033】
図3(A)は、前記真空焼結設備1cの応用形態である真空焼結設備1dの概略を示す前記同様の垂直断面図である。
上記真空焼結設備1dは、図3(A)に示すように、左端側に位置する前記同様の雰囲気脱ワックス室2b、該脱ワックス室2bの右側に中間室25を介して連設された真空置換室30b、該真空置換室30bの右側に前記同様にして連設された複数の真空焼結室10a〜10n、および、最右側の真空焼結室10nの右側に前記同様に連設された前記同様の冷却室20を直線状に備えている。
上記真空置換室30bは、前記同様の置換室本体31、断熱室32、扉33,34、複数の搬送ローラr、真空排気管37、および不活性ガス給気管38を備えている共に、更に、置換室本体31および断熱室32の天井部を垂直に貫通し、且つ下端部が該断熱室32の床面付近に近接しつつ、上記搬送ローラr,r間ごとに位置する複数のラジアントチューブ(加熱手段)36を垂設したものである。
【0034】
以上のような真空焼結設備1dを使用した場合、前述した真空焼結設備1cの使用方法の場合と同様に、雰囲気脱ワックス室2b内において脱脂処理された前記金属粉末成形品Wは、真空雰囲気中で記真空置換室30bの断熱室32内に搬入した後、該断熱室32内が複数のラジアントチューブ36によって予熱される。その結果、真空化する際の温度低下を防止できるので、比較的短時間に図3(A)で右側に隣接する真空焼結室10aの断熱室12内へ搬送して、以後の真空焼結処理に迅速に移行するこができる。
以上のような真空焼結設備1dによれば、前述した効果(1)〜()を一層確実に奏することができると共に、前記真空焼結設備1cに比べて、脱脂処理から真空焼結処理への移行時間を短縮でき、且つ真空焼結室10a〜10nの総数も低減し得るので、処理コストおよび設備コストを一層低下させることが可能となる。
【0035】
図3(B)は、前記真空焼結設備1dの応用形態である真空焼結設備1eの概略を示す前記同様の垂直断面図である。
上記真空焼結設備1eは、図3(B)に示すように、左端側に位置する不活性ガス置換室40、その右側に順次隣接する前記同様の雰囲気脱ワックス室2b、中間室25、真空置換室30b、複数の真空焼結室10a〜10n、および最右端側の冷却室20を直線状に備えている。換言すると、係る真空焼結設備1eは、前記真空焼結設備1dの雰囲気脱ワックス室2bにおける搬入口側の扉4bに隣接して、不活性ガス置換室40を直に連設したものである。
上記不活性ガス置換室40は、図3(B)中に示すように、全体が直方体または円筒体形状を呈し且つ気密性を有する置換室本体42、該置換室本体42の搬入口43側の扉44、前記置換室本体42の天井面を垂直姿勢で且つ互いに離れて貫通する不活性ガスの給気管45および排気管46、上記天井面の雰囲気脱ワックス室2b側に位置する突出部47、および置換室本体42の床面(FL)付近に沿って水平に配置された前記同様の複数の搬送ローラrを備えている。
【0036】
前記扉44は、ワイヤーロープwを介して、上方に適宜配置された前記同様の巻き上げドラム26の回転によって昇降可能とされ、搬入口43を開閉する。
また、前記天井面の突出部47内にも、上記同様の巻き上げドラム26が配置され、前記雰囲気脱ワックス室2bにおける搬入口側の扉4bを、ワイヤーロープwを介して昇降可能に支持している。
以上のような真空焼結設備1eを使用した場合、前記同様の金属粉末成形品Wは、予め、大気中(外部)から開放された扉44を通じて、前記不活性ガス置換室40の置換室本体42内における複数の搬送ローラr,r,…上に搬入され、且つ上記扉44を閉鎖した状態で、前記給気管45から置換室本体42内に供給される窒素ガスと、前記排気管46から排出されるエアとによって、ほぼ大気圧の窒素ガスの雰囲気中に置かれる。その結果、上記金属粉末成形品Wを、隣接する雰囲気脱ワックス室2bの室内に扉4bを経て搬入した際に、該粉末成形品Wに対して、迅速に窒素ガス雰囲気中における脱脂処理を施すことが可能となる。
【0037】
以上のような真空焼結設備1eによれば、前述した効果(1)〜()を更に一層確実に奏することができると共に、前記真空焼結設備1dに比べて、脱脂処理の開始時間を早めて短縮でき、且つ該真空焼結設備1dと共通する設備構成によって、処理コストおよび設備コストをより一層低下させることが可能となる。
尚、前記不活性ガス置換室40の置換室本体42内にも、前記同様のファンfを取り付けて、前記エアの排出および窒素ガスの導入を促進させても良い。
また、上記置換室本体42内への窒素などの不活性ガスを供給する給気管45と外部へ排出する排気管46は、該置換室本体42の天井面を貫通する前記形態に限らず、適宜設計変更され、例えば、給気管45を置換室本体42の床面側に開口させ、且つ排気管46を天井面または側壁の上部に開口させても良い。
【0038】
本発明は、以上において説明した各形態に限定されるものではない。
例えば、前記雰囲気脱ワックス室の室本体内に供給する不活性ガスは、前記窒素ガス以外のAr、ネオン、またはヘリウムガスなどとしたり、あるいはこれら同士の混合ガスや、上記Arなどとと窒素ガスとの混合ガスとしても良い。
また、前記真空焼結室は、複数個(10a〜10n)を直線状に連接したが、処理すべき金属粉末成形品Wが少ない場合には、1個のみとしても良い。あるいは、1個の真空焼結室およびその内部に設ける断熱室を、前記搬送方向に沿ってそれぞれ長尺なサイズにして構成し、該搬送方向に沿って加熱すべき温度パターンの焼結処理ゾーンを複数の箇所(ゾーン)に区分するようにした形態としても良い。
【0039】
更に、前記雰囲気脱ワックス室の室本体内や真空置換室30bの断熱室内を加熱する手段は、前記ラジアントチューブに限らず、耐熱性金属あるいは黒鉛などからなる電気(抵抗熱)ヒータを用いても良い。
また、前記複数の搬送ローラrは、上下に2段以上を平行に配置した形態とすることにより、比較的寸法の小さな金属粉末成形品Wの搬送用としても良い。
加えて、前記複数の搬送ローラrに替えて、ユニット形態とされた複数のチェーン型コンベアあるいはメッシュ型コンベアを適用しても良い。
【産業上の利用可能性】
【0040】
本発明によれば、金属粉末成形品を不活性な雰囲気ガス中で脱脂処理した後、連続して真空焼結処理を効率良く行えるようにした連続式真空焼結設備を確実に提供することが可能となる。
【符号の説明】
【0041】
〜1e………連続式真空焼結設備
2a,2b………雰囲気脱ワックス室
4,4b…………扉(搬入口)
5,5b…………扉(搬出口)
6…………………ラジアントチューブ(加熱手段)
7…………………不活性ガス供給管(不活性ガス循環手段)
8…………………不活性ガス排出管(不活性ガス循環手段)
9…………………真空排気管(不活性ガス排出手段)
10a〜10n…真空焼結室
30a,30b…真空置換室
33………………扉(搬入口)
34………………扉(搬出口)
36………………ラジアントチューブ(加熱手段)
37………………真空排気管(雰囲気排出手段)
38………………不活性ガス給気管(不活性ガス供給手段)
40………………不活性ガス置換室
W…………………金属粉末成形品
r…………………搬送ローラ(搬送手段)
図1
図2
図3