特許第6607392号(P6607392)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6607392花卉の下葉取装置及びこれを備えた花卉選別機
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6607392
(24)【登録日】2019年11月1日
(45)【発行日】2019年11月20日
(54)【発明の名称】花卉の下葉取装置及びこれを備えた花卉選別機
(51)【国際特許分類】
   A01G 5/00 20060101AFI20191111BHJP
【FI】
   A01G5/00 A
【請求項の数】5
【全頁数】19
(21)【出願番号】特願2016-8170(P2016-8170)
(22)【出願日】2016年1月19日
(65)【公開番号】特開2017-127230(P2017-127230A)
(43)【公開日】2017年7月27日
【審査請求日】2018年11月13日
(73)【特許権者】
【識別番号】594072801
【氏名又は名称】有限会社今村機械
(74)【代理人】
【識別番号】110001427
【氏名又は名称】特許業務法人前田特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】今村 幸稔
【審査官】 吉田 英一
(56)【参考文献】
【文献】 特開平08−023781(JP,A)
【文献】 実開平02−049842(JP,U)
【文献】 欧州特許出願公開第00383410(EP,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A01G 5/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
左右に寝かせた姿勢で前後の搬送方向に搬送される花卉のから下葉を除去するための下葉取装置であって、
搬送方向の前側に配置され、茎における下葉取領域の下側部の下葉を、第1回転軸を中心に回転する第1線状体で叩き落すように構成された第1下葉取部と、
前記第1下葉取部より搬送方向の後側かつ花卉先端側に配置され、前記下葉取領域の残部の下葉を、第2回転軸を中心に回転する第2線状体で叩き落すように構成された第2下葉取部とを備え、
前記第1回転軸と前記第2回転軸の少なくとも一方の回転軸は、他方の回転軸に対して傾きを調整できるように構成されている
ことを特徴とする下葉取装置。
【請求項2】
請求項1記載の下葉取装置であって、
前記傾き調整手段は、
前記回転軸の一端部を回転可能に軸支する軸受部と、
前記軸受部が移動一体に固定され、搬送直交方向に移動可能な移動部と、
前記移動部が所定位置に移動した状態で該移動部の移動を規制する移動規制部とを有している
ことを特徴とする下葉取装置。
【請求項3】
請求項1に記載の下葉取装置において、
前記第1回転軸は、実質的に前後方向に延び、
前記第2回転軸は、前記第1回転軸に対して傾きを調整できるように構成されている
ことを特徴とする下葉取装置。
【請求項4】
請求項1に記載の下葉取装置において、
前記第2線状体の先端の回転半径は、前記第1線状体の先端の回転半径よりも小さい
ことを特徴とする下葉取装置。
【請求項5】
請求項1から4のうちのいずれか1項に記載の下葉取装置と、
前記下葉取装置で下葉取された花卉の選別情報を取得する選別情報取得部と、
前記選別情報取得部で取得された選別情報に基づいて花卉を選別する選別部とを備えている
ことを特徴とする花卉選別機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、花卉の下葉取装置及び花卉選別機に関するものであり、特に、搬送される花卉の下葉を除去する下葉取装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、菊やその他の茎の長い植物等の茎から葉を除去する葉除去装置が開示されている。このものでは、多数の突片を植設した上下一対の回転ブラシを回転させた後、菊の茎部を挟みこむように近づけた状態で茎の長手方向に移動させる。その結果、突片により茎から葉が葉板と共に除去される。
【0003】
また、特許文献2には、上下対のブラシ材を回転させながら、花卉の基端部に接触させて花卉の葉を落とす葉落とし機が開示されている。
【0004】
しかしながら、上記特許文献1の技術では、突片に弾性材を使用しているものの、茎をしごくようにして下葉取を行うため、茎を痛めてしまうという問題がある。特許文献2のように、ブラシを擦り使用する場合においても、下葉を落とす過程において花卉の茎に多数の擦り傷が生じ、花卉の茎を痛めるという問題がある。
【0005】
これに対し、発明者らは、特許文献3に開示されているように、花卉の茎と直交するように配置された回転軸に弾性ヒモを結着し、これを回転させることにより下葉を衝撃して落とすことを提案している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特許第2577695号公報
【特許文献2】実公平7−48038号公報
【特許文献3】実用新案登録第2548320号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ところで、近年、花卉の販売場所や販売形態が多様化し、花卉販売店や花卉購入者のニーズが多様化している。このような背景から、農家において、花卉販売店の要望に応じて、花卉販売店毎に花卉の全長や、花卉の下葉取長さを異ならせて出荷したいというニーズが出てきた。
【0008】
しかしながら、特許文献3に記載の技術において下葉取範囲(長さ)を異ならせるには、下葉取範囲の変更毎に回転軸に対して異なる長さの弾性ヒモを装着するか、回転軸ごと交換する必要がある。また、弾性ヒモの長さが変わると軸の高さ位置調整、モータ位置調整、動作確認等の作業が必要であり、手間がかかるという問題がある。したがって、改良の余地があった。
【0009】
本発明は、上記問題に鑑みてなされたものであり、従来よりも容易な方法で下葉の除去範囲を変更可能に構成された花卉の下葉取装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明に係る花卉の下葉取装置は、実質的に花卉の搬送方向に沿って延び、駆動部によって回転駆動される回転軸と、基端部が回転軸に固定された複数の線状体からなる下葉取部とを備えている。回転軸は、搬送方向に対する傾きが調整可能に構成されており、回転軸の傾きを調整する傾き調整手段を設けた。このように、回転軸の傾きが調整可能に構成されていることで、下葉取範囲の変更が従来よりも容易になる。
【0011】
具体的には、本発明の第1態様は、搬送路を、茎が搬送方向と直交する搬送直交方向に配置されて搬送される花卉の茎から下葉を除去するための下葉取装置であって、実質的に花卉の搬送方向に沿って延びる回転軸と、前記回転軸を回転駆動する駆動部と、前記回転軸に基端部にて固定され、かつ、該回転軸の長手方向に沿って所定のピッチで配設された複数の線状体からなり、該複数の線状体が前記回転軸と一体的に回転して、該各線状体の先端側の下葉取領域部で花卉の下葉を除去する下葉取部とを備え、前記回転軸は、前記搬送方向に対する傾きが調整可能に構成されており、前記回転軸の前記傾きを調整する傾き調整手段が設けられていることを特徴とする。
【0012】
傾き調整手段により搬送方向に対して回転軸が傾けられると、回転軸の一端側における下葉取部の回転中心と、回転軸の他端側における下葉取部の回転中心とが、花卉の長手方向において異なるようになる。すなわち、回転軸の一端側と他端側とで、花卉の茎の長手方向の異なる位置での下葉取が可能になる。したがって、傾き調整手段によって回転軸の傾きを調整するだけで、容易に下葉の除去範囲を変更することができる。これにより、例えば、従来よりも容易に下葉取範囲を調整することができるようになる。
【0013】
前記傾き調整手段は、前記回転軸の一端部を回転可能に軸支する軸受部と、前記軸受部が移動一体に固定され、搬送直交方向に移動可能な移動部と、前記移動部が所定位置に移動した状態で該移動部の移動を規制する移動規制部とを有している、としてもよい。
【0014】
この態様では、軸受部が移動部と一体的に移動し、移動した状態で移動規制部により位置決めされる。このようにして、傾き調整手段を具体化することができる。
【0015】
前記傾き調整手段は、前記回転軸の一端部を支点として、前記回転軸の他端部を花卉先端側に向かって位置調整することで、前記回転軸の前記搬送方向に対する傾きを調整する、としてもよい。
【0016】
この態様によると、回転軸の一端部が、他端部を支点として花卉先端側に向かって位置調整されるので、花卉先端側に向かう方向において下葉取範囲を増やす調整ができるようになる。また、前記回転軸の他端部が支点となっているため、下葉取可能な花卉基端位置を確定させることができる。
【0017】
本発明の第2態様は、搬送路を、茎が搬送方向と直交する搬送直交方向に配置されて搬送される花卉の該茎から下葉を除去するための下葉取装置であって、搬送路上の花卉の茎の基端部から先端部までの範囲において、互いに異なる位置に配置され、実質的に花卉の搬送方向に沿って延びる複数の回転軸と、前記各回転軸を回転駆動する駆動部と、前記各回転軸に基端部にて固定され、かつ、該回転軸の長手方向に沿って所定のピッチで配設された複数の線状体からなり、該複数の線状体が前記各回転軸と一体的に回転して、該各線状体の先端側の下葉取領域部で花卉の下葉を除去する下葉取部とを備え、前記花卉の先端側に最も近い先端側回転軸は、該先端側回転軸の前記搬送方向に対する傾きが調整可能な可動回転軸に構成されており、前記先端側回転軸の前記傾きを調整する傾き調整手段が設けられていることを特徴とする。
【0018】
第2態様では、花卉の先端側に最も近い先端側回転軸の傾きを調整する傾き調整手段が設けられているため、第1態様と同様に、傾き調整手段による先端側回転軸の傾き調整により、花卉の先端側において、従来技術よりも容易に下葉取範囲を調整することができる。
【0019】
また、下葉除去処理を複数の回転軸にそれぞれ固定された線状体に分散させることができる。換言すると、単一の回転体に固定された線状体ですべての下葉を除去する場合と比較して、1つの線状体あたりの下葉除去量は少なくてすむ。したがって、線状体の変形等による下葉除去漏れを抑制することができ、より確実に下葉を除去できるようになる。
【0020】
本発明の第3態様に係る花卉選別機は、第1態様または第2態様記載の下葉取装置と、該下葉取装置で下葉取された花卉の選別情報を取得する選別情報取得部と、前記選別情報取得部で取得された選別情報に基づいて花卉を選別する選別部とを備えている。
【0021】
この態様によると、花卉選別機が第1態様または第2態様記載の下葉取装置を備えているため、従来よりも容易に下葉の除去範囲を調整可能に構成された花卉選別機を提供することができる。
【発明の効果】
【0022】
本発明によると、線状体が回転一体に固定された回転軸の搬送方向に対する傾きを調整することができるように構成したので、回転軸に固定された線状体の長さを長くすることなく、従来技術よりも容易に下葉の除去範囲を調整することができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
図1】実施形態に係る花卉選別機の全体構成を示す側面図である。
図2】下葉取装置近傍の拡大側面図である。
図3】下葉取装置のカバー及び上側ユニットを外した状態におけるヘッド部の平面図である。
図4】下葉取装置の上側ユニットの平面図である。
図5】回転軸の取付位置及び下葉取領域部を説明するための図であり、下葉取装置を正面から見た概念図である。
図6】カバーを外した状態における下葉取装置前側の拡大側面図である。
図7】下葉取装置の上側ユニットの一部を破断した拡大平面図である。
図8】下葉取装置後側の拡大側面図である。
図9】下葉取装置の上側ユニットの背面図である。
図10】下葉取装置のカバー及び上側ユニットを外した状態におけるヘッド部の背面図である。
図11】下葉取装置のカバー及び上側ユニットを外した状態におけるヘッド部の平面図である。
図12】下葉取装置の上側ユニットの平面図である。
図13】回転軸及び線状体の拡大斜視図である。
図14】下葉取領域部を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。以下の好ましい実施形態の説明は、本質的に例示に過ぎず、本発明、その適用範囲あるいはその用途を制限することを意図するものではない。なお、同一又は類似の構成には、同じ符号を付してその詳細な説明を省略する場合がある。
【0025】
まず、図1を参照して本実施形態に係る花卉選別機の全体構成について詳細に説明する。図1に示すように、花卉選別機1は、作業者が花卉を乗せる花卉乗せ台10と、花卉を搬送しつつその搬送過程で下葉を除去するヘッド部2と、下葉が除去された花卉を選別する選別装置8とを備えている。
【0026】
<ヘッド部の構成>
次に図2図6を参照してヘッド部2の構成について、詳細に説明する。
【0027】
図2及び図3に示すように、ヘッド部2は、ヘッド本体部3と、作業者によって載置された花卉11を搬送方向に搬送する搬送路4と、搬送中の花卉11の先端部の位置を揃える位置調整部(図示しない)と、花卉の下葉を除去する下葉取装置5と、下葉取装置5の上側ユニット51を固定支持する上側ユニット支持部6(図4参照)を備えている。なお、本実施形態において、説明の便宜上、花卉11が搬送される方向を搬送方向と称する。また、搬送方向手前側(上流側)を前と称し、搬送方向奥側(下流側)を後と称することがある。さらに、搬送される花卉11(その茎12)の先端部側を左と称し、花卉11の基端部側を右と称する。
【0028】
ヘッド本体部3は、左右両端の上隅角部で前後方向に向かって斜め後ろ上がりに延びる左右一対の上枠31,31と、各上枠31の後端から下側に延びるように一体形成された左右一対の縦枠32,32と、各上枠31の搬送方向中間位置から下側に延びるように一体形成された左右一対の縦枠32,32と、前後の各縦枠32,32,…間を架け渡された底枠34,34,…とを備えている。上枠31,31には、前後左右方向に延びるヘッドベース部35が固着されている。ヘッドベース部35には、後述する一対の前側回転軸52,52と対応する位置及び一対の後側回転軸52,52と対応する位置に、それぞれ、上下方向に関するする貫通孔35a,35aが形成されている。
【0029】
さらに、ヘッド本体部3は、各上枠の前後両端に取り付けられた軸受36,36,…と、左右方向の対応する軸受36,36,…間に架け渡されて軸支された前後一対のチェーン駆動軸37,37と、複数のスプロケット38,38,…とを備えている。より具体的には、後側のチェーン駆動軸37には、左右方向の中間位置及び右端寄りの位置の2箇所において、スプロケット38,38が嵌められた状態で固定されている。また、前側のチェーン駆動軸37には、左右方向の中間位置、該中間位置の右側及び右端寄りの位置の3箇所において、スプロケット38,38,…が嵌められた状態で固定されている。なお、後側のチェーン駆動軸37において、スプロケット38の固定位置は、上記2箇所(2個)に限定されず、上記と異なる2箇所であってもよく、互いに離れた3箇所以上(3個以上)であってもよい。同様に、前側のチェーン駆動軸37において、スプロケット38の固定位置は、互いに離隔した2箇所又は4箇所以上であってもよい。
【0030】
そして、ヘッド本体部3の前後方向の中間位置には、前後のチェーン駆動軸37の右端寄りのスプロケット38に対応する位置に、スプロケット38が設けられている。同様に、前側チェーン駆動軸37の中間位置の右側のスプロケット38に対応する位置に、スプロケット38が設けられている。
【0031】
ヘッド本体部3の後側縦枠32,32は、後述する選別装置8の枠体80aの前側縦枠の上端部に取付固定される。また、後側のチェーン駆動軸37は、花卉選別機1の左外側において、後述する選別装置8の前方上側に設けられたスプロケット81と一体回転可能に連結されている。
【0032】
搬送路4は、対応するスプロケット38,38,…間で掛け回された複数の無端チェーン41,41,…を備えている。各無端チェーン41には、上方向(無端チェーン41の回行方向外側)に向かって突出する複数の送りピン42,42,…が等間隔で移動一体に固着されている。さらに、搬送路4には、各無端チェーン41に沿って搬送路表面上を搬送方向に延びる薄板状のチェーンカバー43が設けられていて、搬送路4を搬送される花卉11の茎12(以下、単に茎12ともいう)を支持している。ヘッド本体部3の左右方向中間位置及び右端寄りの位置に設けられたチェーンカバー43,43の後端には、それぞれ、後側に向かって延びる花卉案内杆44,44が一体的に突設されている。
【0033】
また、ヘッド本体部3の左右方向の中間位置には、搬送路4に沿って延びており、茎12の先端部分を押さえる花抑え部45が設けられている。花抑え部45は、後述する下葉取装置5の切断部58で茎12の基端部を切断する際や、各下葉取部53で下葉取を行う際に、茎12の先端部分を押さえる。これにより、花卉11の位置ずれや回動が生じるのを防ぐことができる。なお、花抑え部45の形状は、既存の技術を適用することが可能である。図示しないが、例えば、花抑え部45が樹脂製やゴム製の板状材からなっていてもよく、花抑え部45が搬送路4に沿って延びる可撓性又は弾性変形可能な花抑え板を左右方向に延びる軸心回りに回行させるようなローラ構造であってもよい。
【0034】
図4に示すように、上側ユニット支持部6は、平面視の外形がL字形状であり、3つの格子状枠からなる支持部上枠61と、支持部上枠61の隅角部とヘッド本体部3の左右上枠31,31との間を上下方向に一体的に連結する複数の支持部縦枠63,63,…(図6参照)とを備えている。
【0035】
−下葉取装置の構成−
次に、下葉取装置5の構成について、詳細に説明する。
【0036】
図3及び図4に示すように、下葉取装置5は、実質的に花卉11の搬送方向に沿って延びる4本の回転軸52,52,…と、各回転軸を回転駆動する4個のモータ56,56,…と、各回転軸52に固定された4個の下葉取部53,53,…と、基端部寄りの茎12を切断する切断部58とを備えている。後述するとおり、後側回転軸52,52は、傾き調整手段7によって搬送方向に対して傾きが調整できるようになっており、実質的に搬送方向に沿った回転軸とは、この搬送方向に対して少し傾けられた回転軸も含む概念である。
【0037】
4本の回転軸52,52,…は、上下一対の前側回転軸52,52と、上下一対の後側回転軸52,52とからなる。また、4本の回転軸52,52,…は、円柱状の金属棒である。なお、図示しないが、軽量化のために、回転軸52を円筒状の金属棒としてもよく、他の材質でもよい。また、下葉取装置5は、上側ユニット51(図2参照)によって外部を覆われている。
【0038】
切断部58は、茎12を切断する丸鋸58aと、丸鋸を回転駆動するモータ58bとを備えており、一対の前側回転軸52,52搬送方向前側(上流側)の位置において、支持部縦枠63に固着された鉄板66に取付固定されている。
【0039】
図5に示すように、上下一対の前側回転軸52,52は、花卉11の茎12の基端部12aと茎12の第1中間部12bとの中間位置において、左右方向の位置が同じになるように、かつ、茎12の上下方向に離間して設けられている。同様に、上下一対の後側回転軸52,52は、前側回転軸52,52よりも後側に配置され、茎12の第1中間部12bより茎基端部側の第3中間部12cと、第1中間部12bより茎先端側の第4中間部12dとの中間位置において、左右方向の位置が同じになるように、かつ、茎12の上下方向に離間して設けられている。なお、左右方向の位置が同じとは、実質的に位置が同じであるものを含む概念である。すなわち、製造誤差、組付誤差等により互いの左右方向の位置が若干ずれているものを含む概念である。
【0040】
ここで、図5では、複数の線状体53a,53a,…の回転軌跡を模式的に示している。実線円(直径:L1)が一対の前側回転軸52,52に固定された下葉取部53,53(線状体53a,53a,…)の回転軌跡であり、一点鎖線の円(直径:L2)が一対の後側回転軸52,52に固定された下葉取部53,53(線状体53a,53a,…)の回転軌跡である。図5に示すように、前方上側(図5の右上側)の回転軸52に固定された線状体53aの回転範囲(回転半径)と、後方上側(図5の左上側)の回転軸52に固定された線状体53aの回転範囲(回転半径)とが重複する重複領域AR1を有するように構成されている。同様に、前方下側(図5の右下側)の回転軸52に固定された線状体53aの回転範囲(回転半径)と、後方下側(図5の左下側)の回転軸52に固定された線状体53aの回転範囲(回転半径)とが重複する重複領域AR1を有するように構成されている。
【0041】
図6に示すように、前方上側の回転軸52の基端部が連結されたモータ56は、支持部上枠61に固着された鉄板64に固定されている。各回転軸52の基端部と各モータ56の出力軸56aとの間は、接続ジョイント57によって一体回転可能に連結されている。また、前方上側の回転軸52の先端部は、支持部上枠61に鉄板65を介して固定された軸受59によって軸支されている。
【0042】
前方下側の回転軸52の基端部が連結されたモータ56は、ヘッドベース部35に固定された側面視がコ字状の鉄板39に固定されている。また、前方下側の回転軸52の先端部は、ヘッドベース部35に鉄板35bを介して固定された軸受59によって軸支されている。
【0043】
以下において、後方上側及び後方下側の回転軸52,52の揺動機構について詳細に説明する。ここで、後方上側と後方下側との両回転軸52,52は同様の構造であるので、まず後方上側の回転軸52について詳細に説明し、後方下側の回転軸52については、異なる点を中心に説明し、重複する構成の説明を省略する場合がある。
【0044】
図7及び図8に示すように、後方上側の回転軸52の基端部が駆動連結されたモータ56は、支持部上枠61に対して、上下方向の揺動中心回りに揺動可能に支持されている。
【0045】
より詳細に説明すると、モータ56には、モータ56の上側及び後側を覆うL字形状の下側L字板67が出力軸56aを貫通させた状態で固定されている。支持部上枠61には、下方に延び、下端部が前方に折り返されたL字形状の上側L字板68が固定されている。上側L字板68の下板68a及び下側L字板67の上板67aには、それぞれの中央位置に上下方向のねじ貫通孔(図示しない)が形成されている。そして、上側L字板68の下板68aと下側L字板67の上板67aとが、両者間にスペーサ69aを介在させた状態でボルト69b及びナット69cによりねじ止めされ、支持構造が構成されている。この支持構造により、モータ56は、支持部上枠61に対して、ボルト69b及びナット69cの位置を揺動中心として水平面内で揺動可能に支持されている。
【0046】
また、後方上側の回転軸52の先端部(図7及び図8では右端部)は軸受59によって軸支され、この軸受59は回転軸52の先端部を左右方向に移動させて、回転軸52の傾きを調整する傾き調整手段7に固定されている。
【0047】
傾き調整手段7は、上端部前側にスライドブッシュ71が固定された矩形板状の移動部70を備え、この移動部70の左右方向中央の下端部後面に軸受59が固定されている。支持部上枠61後端には、一対のピロ形ユニット72,72が左右方向に所定の間隔を空けて固定されている。一対のピロ形ユニット72,72間には、支持部上枠61後端に沿って左右方向に延びる案内棒73が架け渡され、この案内棒73は、スライドブッシュ71内に揺動可能に挿通されている。これにより、移動部70は、一対のピロ形ユニット72,72間で案内棒73に沿って左右方向に移動可能に支持されている。
【0048】
図9に示すように、移動部70右上の隅角部には、レバーハンドル75が、鉛直面内で上下方向に揺動可能に係合支持されている。このレバーハンドル75は、基端部から上方に延びた後、右方向に折り曲げられ、その右先端部には把持部75aが設けられている。支持部上枠61後端における右側ピロ形ユニット72の右側には、上下左右方向に延びた後、上板部が後方に折り曲げられた断面L字形状の固定板76が取付固定されている。
【0049】
図7に示すように、固定板76の上板部には、レバーハンドル75と前後方向の対応する位置において、左右方向に所定のピッチで形成された複数の貫通孔77a,77a,…からなる被係止部77が設けられている。レバーハンドル75の下面には、被係止部77の貫通孔77a,77a,…に挿入可能な大きさのピン状の係止部75bが下向きに一体的に突設されている。
【0050】
そして、移動部70を案内棒73に沿って移動させることにより、回転軸52は搬送路4上の花卉11の搬送方向に対する傾きが調整されるようになっている。またその移動部70が所定の位置に移動したとき、その状態でレバーハンドル75の係止部75bを固定板76の上板部の被係止部77の1つの貫通孔77aに挿入することで、その移動部70を所定位置に固定して移動を規制し、回転軸52の傾きをロック固定するようにしている。例えば、図3及び図4は、移動部70を案内棒73の右端部まで移動させ、その位置において、レバーハンドル75の係止部75bと被係止部77とを係止させた状態を示しており、図11及び図12は、移動部70を案内棒73の左右方向の中間位置まで移動させて、レバーハンドル75の係止部75bと被係止部77とを係止させた状態を示している。
【0051】
後方下側の回転軸52の揺動機構の構成は、図8及び図10等に示しており、後方上側の回転軸52の揺動機構とは、傾き調整手段7において軸受59が移動部70の左右方向中央の下端部前面に設けられている点で異なっている。それ以外については、同様の構成であり、ここではその詳細な説明を省略する。
【0052】
各回転軸52の軸長手方向の中間位置には、軸直径方向に貫通し、軸長手方向に並ぶ例えば2個の貫通孔52a,52aが設けられており、該2個の貫通孔52a,52aの組が所定のピッチで長手方向に4箇所設けられている。
【0053】
各2個の貫通孔52a,52aには、図13に示すように、2本の線状体53a,53aの基端部が固定されている。より具体的には、2本の線状体53a,53a(以下、単に線状体53aともいう)は、それぞれ、相互に異なる方向から2個の貫通孔52a,52a(以下、単に貫通孔52aともいう)に、その一方の貫通孔52aを通った後にUターンして他方の貫通孔52aを通るように挿通され、Uターン後の線長が相互に等しくなるような位置で基端部を結束バンド53b等で固定されている。
【0054】
ここで、図3に示すように、一対の前側回転軸52,52間において、貫通孔52a,52a,…は、ヘッドベース部35の前側の貫通孔35aと対応する位置に設けられている。また、図6に示すように、上下の回転軸52,52で互いの貫通孔52a,52a,…の前後方向の位置が重ならないように構成されている。これにより、一対の前側回転軸52,52間の両線状体53a,53a,…の長さを、回転軸心間の距離の1/2より長くした場合においても、上下の回転軸52,52に配置された線状体53a,53a,…同士が衝突したり、絡まったりするのを防ぐことができる。図3に戻り、一対の後側回転軸52,52において、貫通孔52a,52a,…は、ヘッドベース部35の後側の貫通孔35aと対応する位置に設けられている。また、図示しないが、一対の前側回転軸52,52と同様に、上下の回転軸52,52で互いの貫通孔52a,52a,…の前後方向の位置が重ならないように構成されている。
【0055】
また、本実施形態では、前側後側共に、上下一対の回転軸52,52のそれぞれにおいて、固定された線状体53a,53a,…の基端から先端までの長さを上下の回転軸52,52で互いに等しくし、かつ、それぞれの長さを上下の回転軸心間の距離の1/2より長くしている。さらに、一対の後側回転軸52,52,…に固定された線状体53a,53a,…の長さを、一対の前側回転軸52,52,…に固定された線状体53a,53a,…の長さより短く設定している(図3及び図4参照)。
【0056】
<選別装置の構成>
図1に戻り、選別装置8は、選別本体部80と、前後上下の隅角部に配置された4個のスプロケット81,81,…と、4個のスプロケット81,81,…に掛け回された搬送コンベア82と、搬送コンベア82を駆動回転させる本体モータ83と、複数の支持腕84,84,…を備えている。選別本体部80は、矩形箱状の枠体80aで囲まれていて、前後左右の下側隅角部にはキャスター80bが取り付けられている。
【0057】
各支持腕84は、搬送コンベア82に固定された基部84a(図2参照)と、基端部が基部84aに固定され、基部84aから後側に向かって略V字状に延びる腕部84b(図2参照)とを備えている。各支持腕84は、搬送コンベア82の回転に伴って一体的に回転するように構成されている。また、支持腕84の腕部84bは、ヘッド部2の花卉案内杆44の左右方向の間隙部分を、下から上側に向かって通過可能に構成されている。
【0058】
さらに、選別装置8は、選別情報取得部としての重量センサ部85と、複数の通過センサ部86,86,…と、選別された花卉が収容される複数の収容部87,87,…と、制御部88とを備えている。選別部は、複数の通過センサ部86,86,…と、複数の収容部87,87,…と、制御部88とを含む。
【0059】
重量センサ部85は、各支持腕84によって搬送される過程において、花卉11の重さを検出する。重量センサ部85には、既存の秤技術を適用することができる。
【0060】
通過センサ部86,86,…は、各収容部87上に対応するように設けられており、各支持腕84の通過を検出するものである。
【0061】
制御部88は、重量センサ部85で検出した花卉11の重さ情報、及び通過センサ部86,86,…からの各支持腕84の通過情報に基づいて、対応する支持腕84を下側に向かって回動させて、支持腕84上の花卉11を重さ情報に基づく適切な収容部87に収容させる制御を行う。
【0062】
以下において、花卉選別機1の動作について詳細に説明する。
【0063】
<事前準備>
作業者は、必要に応じて、花卉選別機1を動作させる前に、傾き調整手段7による一対の後側回転軸52,52の傾き調整を行う。具体的には、作業者は、レバーハンドル75を持ち上げ、移動部70を案内棒73上でスライドさせながら左右方向の所望の位置に移動させる。そして、移動後の位置でレバーハンドル75を下ろし、係止部75bを被係止部77の1つの貫通孔77aに係止させることで、移動部70(軸受59)を所望の位置に位置決めすることができる。このとき、モータ56は、回転軸52の延長線上にある支持構造の中心を支点として回動する。したがって、後側回転軸52の基端部側(モータ56側)では、花卉長手方向における下葉取部53の回転中心位置は、ほとんど動かない。これにより、後側回転軸52の基端部側で下葉取ができる領域を予め確定させることができるため、例えば、切断部58の位置に応じて、モータ56の位置決めをすればよいというメリットがある。
【0064】
なお、本発明において、回転軸とは、回転軸52のみに限定されず、回転軸52の延長線上における仮想線上の回転軸も含む概念である。すなわち、本実施形態のように、回転軸がモータ56の中まで延びている場合があり、基端部は、その回転軸上で設定されていればよい。例えば、回転軸の基端部が、仮想線上の回転軸と、モータ56の中央付近を支持する支持構造との交点(図7及び図8ではボルト69b及びナット69cの位置)のようなものであってもよい。
【0065】
図14には、一対の後側回転軸52,52を傾けた場合の下葉取領域部53d,53dを示しており、一点鎖線及び二点鎖線が、後側回転軸52に固定された複数の線状体53a,53a,…の回転軌跡を示している。一点鎖線は、各後側回転軸52の前側端部に固定された線状体53aの回転軌跡を、また二点鎖線は、各後側回転軸52の後側端部に固定された線状体53aの回転軌跡をそれぞれ示している。図14に示すように、一対の後側回転軸52,52を傾けることによって、後側回転軸52の下葉取領域部53dを花卉先端側に向かって広げることができる。換言すると、作業者は、傾き調整手段7による一対の後側回転軸52,52の傾き調整を行うことで、下葉取領域部53dの広さを調整することができる。なお、一対の後側回転軸52,52の傾き調整を行った場合と、行わない場合とで花卉選別機1の動作は同様である。以下、具体的に説明する。
【0066】
<ヘッド部の動作>
まず、選別装置8の本体モータ83(図1参照)が駆動されると、選別装置8の搬送コンベア82(図1参照)が所定の速度で駆動回転されるとともに、ヘッド部2の無端チェーン41,41,…が搬送コンベア82(図1参照)と同じ速度で駆動回転される。
【0067】
図3に示すように、花卉乗せ台10(図1参照)からヘッド部2の前端側に供給された花卉11は、無端チェーン41,41,…に固定された送りピン42,42,…に係止されて、チェーンカバー43,43,…上を搬送方向に向かって搬送される。送りピン42,42,…に押されて搬送された花卉11は、図示しない位置調整部によって先端部が右方向に押されて、花卉11先端部が基準位置に揃えられる。その後、花卉11は下葉取装置5内に搬送される。
【0068】
−下葉取装置の動作−
次に下葉取装置5の動作について、詳細に説明する。花卉11の搬送方向への搬送が開始されると、下葉取装置5では、4個のモータ56,56,…が回転駆動を開始し、各回転軸52,52,…に固定された複数の線状体53a,53a,…が回転軸心回りに円弧を描くように高速回転する(例えば、1000〜1500rpm)。
【0069】
まず、下葉取装置5内に花卉11が搬送されると、切断部58が、花卉11の基端部寄りの茎12を切断する(図5の破線参照)。
【0070】
下葉取装置5は、基端部寄りの茎12を切断した後、一対の前側回転軸52,52間を通過する際に、茎12の基端部12aと第1中間部12bとの間の下葉を除去する。より具体的には、各前側回転軸心回りに回転する複数の線状体53a,53a,…が回転運動して、線状体先端側の下葉取領域部53cで花卉11の下葉を叩き落とす。ここで、下葉取領域部とは、線状体53aのうち、その線状体53aの回転軌跡と茎12とが重複している領域部を指すものとする。これにより、上下の前側回転軸52,52に固定された線状体53a,53a,…の下葉取領域部53c,53cの下葉、すなわち、茎12の基端部12aと第1中間部12bとの間の下葉が除去される。
【0071】
一対の前側回転軸52,52による下葉除去の後、一対の後側回転軸52,52間を通過する際に、茎12の第3中間部12cと、第4中間部12dとの間の下葉が除去される。より具体的には、各後側回転軸心回りに回転する複数の線状体53a,53a,…が回転運動して、線状体53a,53a,…先端側の下葉取領域部53dで花卉の下葉を叩き落とす。これにより、上下の後側回転軸52,52に固定された線状体53a,53a,…の下葉取領域部53d,53dの下葉、すなわち、茎12の第3中間部12cと第4中間部12dとの間の下葉が除去される。
【0072】
以上のようにして、下葉取装置5では、図5のL3部分の下葉が除去され、花卉11は、搬送路4上をヘッド部2後端に設けられた花卉案内杆44まで搬送される。ここで、作業者が、傾き調整手段7により、少なくとも一方の後側回転軸52の先端部を花卉先端側に傾けていた場合には、後側回転軸52の下葉取領域部53dが広がる、すなわち、図5のL3の範囲が花卉11の先端側に広がることになる。
【0073】
<花卉選別機の選別動作>
花卉案内杆44まで搬送された花卉11は、支持腕84,84,…によって選別装置8上を搬送方向に搬送される。具体的には、支持腕84,84,…が、搬送コンベア82の駆動回転に伴って、花卉案内杆44上の花卉11を下からすくいあげて、花卉11を搬送方向に移動させる。
【0074】
その後、重量センサ部85が各支持腕84,84,…に置かれた花卉11の重量を検出し、制御部88が、重量センサ部85で検出された花卉11(選別対象花卉11)の重さ情報を取得する。そして、制御部88は、通過センサ部86,86,…からの上記選別対象花卉11が乗った支持腕84の通過情報に基づいて、該重さ情報を受けた選別対象花卉11が乗った支持腕84を下側に向かって回動させる。これにより、支持腕84上の花卉11を対応する重量ごとに収容部87,87,…に収容することができる。
【0075】
<本実施形態の作用効果>
以上のように、本実施形態によると、傾き調整手段7によって、後側回転軸52の先端部を軸支する軸受59の位置を花卉の先端側に移動させ、移動位置で保持させることができるように構成されている。そうすると、後側回転軸52の前端側(モータ56側)と後端側(傾き調整手段7側)とにおいて、茎12の長手方向の互いに異なる位置で下葉取が可能になる。すなわち、回転軸52が移動できない場合と比較して、花卉先端側に向かって下葉取範囲を広げることができるようになる。これにより下葉取範囲を従来よりも容易に広げることができるようになる。
【0076】
また、本実施形態では、花卉11の搬送方向に沿って延びる前側回転軸52,52と、傾き調整手段7によって傾き調整が可能に構成された後側回転軸52,52に分けて下葉取を行っている。これにより、例えば、花卉販売店から要望された下葉取領域部が広く、かつ、下葉取領域部の広さを容易に調整したいような場合においても、より安定的な下葉取を実施することができるようになる。
【0077】
具体的には、単一の回転軸を傾けて、全下葉取領域部をカバーしようとした場合において、下葉取領域部を広げることで、花卉搬送方向に対する回転軸の傾きが大きくなる場合がある。この花卉搬送方向と回転軸52との傾きが大きくなりすぎると、下葉取部53の葉へのあたりが悪くなり、安定した下葉取ができなくなることも考えられる。これに対して、本実施形態のように、複数の回転軸52,52,…を花卉11の茎12の基端部から先端部までの互いに異なる位置に配置し、少なくとも花卉11の先端側に最も近い回転軸52(本実施形態では、後側回転軸52)に傾き調整手段を設けることで、より広い下葉取領域部への対応が可能になる。
【0078】
さらに、下葉取領域を広げた場合においても、下葉除去処理を前側回転軸52,52の下葉取部53,53と後側回転軸52,52の下葉取部53,53とに分散させることができる。これにより、前側回転軸52,52の下葉取部53,53と後側回転軸52,52の下葉取部53,53との搬送方向の位置が同じ場合と比較して、下葉除去による衝撃力を分散させることができる。すなわち、花卉11が線状体53a,53a,…の進行方向に引き込まれる力を弱めることができ、下葉取り中に花卉11を押さえる必要がないか、又は、その力を弱くすることができる。
【0079】
また、本実施形態では、前後の回転軸52,52において、それぞれの下葉取領域部53c,53dに重複領域AR2を設けている。これにより、それぞれの下葉取領域部53c,53dの間における下葉除去漏れを防ぐことができる。また、特許文献1に示されている従来技術のように、茎12の長手方向に下葉取部53を動かす必要がなく、従来技術と比較して茎を痛めることなく下葉取を実施することができる。また、特許文献2の図5に示されるようにブラシを茎の長手方向に併設する場合において、ブラシを茎の長手方向に動かさない場合には、その回転範囲(回転半径)が重ならない部分における下葉は除去することができないが、本発明に係る下葉取装置5では、そのようなことは生じない。
【0080】
<他の実施形態>
なお、上記の実施形態では、前後一対の回転軸52,52が、搬送路4上の茎12の基端部から先端部までの互いに異なる位置に配置されているものとしたが、これに限定されない。例えば、回転軸が単一の回転軸または左右方向の位置が等しい上下一対の回転軸で構成され、該回転軸が傾き調整手段を備えるようにしてもよい。ただし、前述のとおり、下葉取領域部が広い場合には、回転軸52を花卉11の茎12の基端部から先端部までの互いに異なる複数の位置に配置するのが好ましい。また、この複数の位置は2箇所に限定されず、花卉11の茎12の長さに応じて、3箇所以上であってもよい。
【0081】
また、上記の実施形態では、傾き調整手段の一例を例示したが、その構成は実施形態の構成に限定されず、回転軸の花卉搬送方向に対する傾きを調整可能に構成されていれば、どのような構成であってもよい。同様に、移動規制部として例示した被係止部77及びレバーハンドル75の係止部75bの構成も実施形態の構成に限定されず、所定位置において、移動部70の花卉長手方向への移動を規制することができれば、どのような構成であってもよい。
【0082】
また、上記の実施形態では、回転軸52の先端側に傾き調整手段7を設ける例を示したが、回転軸52の基端側(モータ56)側に傾き調整手段を設けてもよい。その場合には、モータ56と回転軸52の基端部とを一緒に左右方向に移動させるような構成にすればよい。また、回転軸の先端側と基端側の両方に傾き調整手段を設けてもよく、同様の効果が得られる。
【0083】
さらに、上記の実施形態では、後側回転軸52の先端部を軸支する軸受59の位置を花卉11の先端側に移動させる例について説明したが、移動方向は花卉先端側に限定されない。例えば、図示しないが、傾き調整手段7は、後側回転軸52の先端部を軸支する軸受59の位置を花卉11の基端側に移動させるような構成であってもよい。
【0084】
同様に、傾き調整手段は、回転軸の基端部及び先端部をそれぞれ花卉の先端側及び基端側に移動させて回転軸を傾けるような構成であってもよい。すなわち、傾き調整手段は、回転軸の傾きを調整することができれば、その構成は限定されるものではなく、傾き調整手段による回転軸の傾き調整によって、上記の実施形態と同様に、従来よりも容易に下葉の除去範囲を調整することができるという効果が得られる。
【0085】
また、上記実施形態では、4個のモータ56,56,…を同時に駆動し、花卉11の基端部12aから第2中間部12cまでの下葉取りをする例について説明したが、これに限定されない。例えば、一対の後側回転軸52,52の駆動/停止を選択可能にすることで、下葉取長さを変更することができるようにすることができる。これにより、容易に下葉取長さを異ならせることができるようになる。すなわち、下葉取長さの変更毎に回転軸に対して異なる長さの弾性ヒモを装着したり、回転軸ごと交換したりする等の作業が不要になる。
【0086】
さらに、図示しないが、一対の前側回転軸52,52及び一対の後側回転軸52,52について、相互の搬送方向の位置が同じであってもよく、同様の効果が得られる。この場合には、上下一対に加えて、左右方向に配置された回転軸52との間においても、2個の貫通孔52a同士の位置が前後方向で重ならないようにするのがよい。これにより、線状体が衝突したり、絡まったりするのをより確実に防ぐことができる。
【0087】
また、上記実施形態では、前後の回転軸52,52において、それぞれの下葉取領域部53c,53dに重複領域AR2を設けているものとしたが、これに限定されない。例えば、一対の後側回転軸の基端部の左右方向の位置が前述の実施形態(図5の一点鎖線)と比較して、茎の先端部側の位置に設けられているような場合においても、前述の実施形態と同様の効果が得られる。すなわち、前後の回転軸52,52において、それぞれに固定された線状体53aの回転範囲(回転半径)が重複する重複領域AR1を設けることで、それぞれの下葉取領域部53c,53dに重複領域AR2が設けられていなくても、従来技術(例えば特許文献2)と比較して、より確実に下葉を除去することができるようになるという効果が得られる。換言すると、例えば、図3及び図5において、前側回転軸52の下葉取領域部53cの回転範囲(回転半径)と、後側回転軸52の基端部に固定された下葉取領域部53dの回転範囲(回転半径)とに、重複領域AR1を設けるようにすれば、従来と比較して、より確実に下葉を除去できるという効果が得られる。
【0088】
また、切断部58は、前側回転軸52の搬送方向上流側に配置されるものとしたがこれに限定されない。例えば、前側回転軸52と後側回転軸52との搬送方向中間位置に配置されてもよく、後側回転軸52の下流側に配置されてもよい。
【0089】
ただし、前側回転軸52の搬送方向上流側に配置することにより、茎12の切断後における茎12の上下振動が少なくなり、その後の下葉取工程において、より確実に下葉を取ることができるとともに、搬送方向への遅れが少ないという利点がある。
【0090】
また、例えば、線状体53aの種類は、特に限定されないが、弾性紐状体、例えば、ウレタンゴム製、またはアメゴム製の紐状体であるのが好ましい。このようなものは、表面柔軟性が高く、かつ、下葉を打ち叩いた際の衝撃にも強いため、茎を痛めることなく下葉を除去することができる。また、線状体53aがウレタンゴム製の場合の線状体の外径は、例えば、2〜3mmであるのが好ましい。また、線状体53aは、弾性紐状体であるものとしたが、紐状体に限定されず、紐状の部材が撚られたような線状体(線状集合体)であってもよく、同様の効果が得られる。また、線状体53aは、単一線である必要はなく、単一線を別の部材で被覆したような被覆線状体であってもよい。すなわち、本実施形態に係る線状体とは、線状体が撚られたものである線状集合体や上記被覆線状体を含む概念である。また、線状体53aは、例えば、柔軟性及び弾性のある金属線のようなものであってもよい。さらに、線状体53aに代えて弾性棒状体を用いても同様の効果が得られる。
【0091】
また、軸長手方向に並べられる貫通孔52aの数は2個に限定されず、3個以上であってもよい。さらに、2個の貫通孔52aが設けられる設置箇所数も4箇所に限定されず、4箇所よりも少なくてもよいし、多くても同様の効果が得られる。
【0092】
また、線状体53aは、結束バンド53bで固定されるものとしたが、固定方向は結束バンド53bに限定されず、例えば、軸に固定手段を設けて、この固定手段で固定するようにしてもよい。また、2個の貫通孔52aを挿通させる線状体の本数、挿通方法、結束場所においても、図6に図示した方法に限定されず、対象となる花卉11の種類に応じて適宜選択することができる。
【0093】
また、前側回転軸52及び後側回転軸52は、それぞれ、上下一対設けられるものとしたが、上下のいずれか一方であってもよい。
【0094】
また、後側回転軸52に固定された線状体53aの長さを、前側回転軸52に固定された線状体53aの長さより短く設定しているものとしたが、これに限定されない。すなわち、後側回転軸52に固定された線状体53aの長さを、前側回転軸52に固定された線状体53aの長さより長くしてもよく、互いの線状体の長さを同じにしてもよく、同様の効果が得られる。
【産業上の利用可能性】
【0095】
本発明に係る下葉取装置は、下葉取の際に花卉の茎を痛めることなく、下葉取領域を広げることができるので、花卉選別機、特に、菊等の花選別機用の下葉取装置として極めて有用である。
【符号の説明】
【0096】
1 花卉選別機
4 搬送路
5 下葉取装置
7 傾き調整手段
11 花卉
12 茎
52 回転軸
53 下葉取部
53a 線状体
53c,53d 下葉取領域部
56 モータ(駆動部)
59 軸受
70 移動部
85 重量センサ部(選別情報取得部)
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14