【実施例】
【0034】
以下に本発明の実施例を示すが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
【0035】
実施例1
TiO
2として100g/リットルの四塩化チタン水溶液を室温に保持しながら、TiO
2に対して3質量%の無水クエン酸を添加し、30分間撹拌した(pHは0以下であった)。これを92℃に昇温し、30分間撹拌保持して加水分解した。その後、70℃まで冷却し、アンモニア水でpH=6.5まで中和した。得られた酸化チタン含有スラリーをろ過洗浄し、乾燥して、高純度微粒子酸化チタン粉末(試料A)を得た。
【0036】
実施例2
実施例1の酸化チタン粉末を電気炉で500℃の温度で2時間焼成して、高純度微粒子酸化チタン粉末(試料B)を得た。
【0037】
実施例3
四塩化チタン水溶液にアンモニア水を添加してpH=3.4とし、これを65℃に昇温し、30分間撹拌保持して第一加水分解した。次いで、質量比で、TiO
2として第一加水分解した生成物:TiO
2として第二加水分解した生成物=5:95となるように四塩化チタン水溶液を添加し、混合した。次いで、70℃に昇温し、アンモニア水を添加してpH=6.7とし、30分間撹拌保持して第二加水分解した。得られた酸化チタン含有スラリーをろ過洗浄し、乾燥して、高純度微粒子酸化チタン粉末(試料C)を得た。
【0038】
実施例4
70℃に加熱したイオン交換水1リットル中に、TiO
2として100g分の四塩化チタン水溶液とアンモニア水をそれぞれ60分かけて同時に添加し、pH=0.8〜1.2を保持して加水分解した。得られた酸化チタン含有スラリーをろ過洗浄し、乾燥して、高純度微粒子酸化チタン粉末(試料D)を得た。
【0039】
実施例5
実施例4の酸化チタン粉末を電気炉で400℃の温度で2時間焼成して高純度微粒子酸化チタン粉末(試料E)を得た。
【0040】
実施例6
60℃に加熱したイオン交換水1リットル中に、TiO
2として100g分の四塩化チタン水溶液とアンモニア水をそれぞれ60分かけて同時に添加し、pH=5.8〜6.2を保持して加水分解した。得られた酸化チタン含有スラリーをろ過洗浄し、乾燥して、高純度微粒子酸化チタン粉末(試料F)を得た。
【0041】
実施例7
実施例6の酸化チタン粉末を電気炉で370℃の温度で2時間焼成して、高純度微粒子酸化チタン粉末(試料G)を得た。
【0042】
実施例8
実施例6の酸化チタン粉末を電気炉で410℃の温度で2時間焼成して、高純度微粒子酸化チタン粉末(試料H)を得た。
【0043】
実施例9
実施例6の酸化チタン粉末を電気炉で530℃の温度で2時間焼成して、高純度微粒子酸化チタン粉末(試料I)を得た。
【0044】
実施例10
60℃に加熱したイオン交換水1リットル中に、TiO
2として100g分の四塩化チタン水溶液と水酸化ナトリウム水溶液をそれぞれ60分かけて同時に添加し、pH=10.8〜11.2を保持して加水分解した。得られた酸化チタン含有スラリーをろ過洗浄し、乾燥して微粒子酸化チタン粉末(試料J)を得た。
【0045】
実施例11
60℃に加熱したイオン交換水1リットル中に、TiO
2として50g分の四塩化チタン水溶液とアンモニア水をそれぞれ60分かけて同時に添加し、pH=0.8〜1.2を保持して第一加水分解した。次いで、TiO
2として50g分の四塩化チタン水溶液を添加混合し、pH1以下に調整した。次いで、これを92℃に昇温し、30分間撹拌保持して第二加水分解した。得られた酸化チタン含有スラリーをアンモニア水でpH=6.5まで中和後、ろ過洗浄し、乾燥して、高純度微粒子酸化チタン粉末(試料K)を得た。この反応は、すべて一つの反応槽内で実施した。
【0046】
実施例12
60℃に加熱したイオン交換水1リットル中に、TiO
2として50g分の四塩化チタン水溶液とアンモニア水をそれぞれ60分かけて同時に添加し、pH=5.8〜6.2を保持して第一加水分解した。次いで、TiO
2として50g分の四塩化チタン水溶液を添加混合し、pH1以下に調整した。次いで、これを92℃に昇温し、30分間撹拌保持して第二加水分解した。得られた酸化チタン含有スラリーをアンモニア水でpH=6.5まで中和後、ろ過洗浄し、乾燥して、高純度微粒子酸化チタン粉末(試料L)を得た。この反応は、すべて一つの反応槽内で実施した。
【0047】
実施例13
60℃に加熱したイオン交換水1リットル中に、TiO
2として50g分の四塩化チタン水溶液とアンモニア水をそれぞれ60分かけて同時に添加し、pH=7.8〜8.2を保持して第一加水分解した。次いで、TiO
2として50g分の四塩化チタン水溶液を添加混合し、pH1以下に調整した。次いで、これを92℃に昇温し、30分間撹拌保持して第二加水分解した。得られた酸化チタン含有スラリーをアンモニア水でpH=6.5まで中和後、ろ過洗浄し、乾燥して、高純度微粒子酸化チタン粉末(試料M)を得た。この反応は、すべて一つの反応槽内で実施した。
【0048】
実施例14
TiO
2として30g/リットルの四塩化チタン水溶液1リットルを室温に保持しながら、TiO
2に対して3質量%の無水クエン酸を添加し、30分間撹拌した(pHは0以下であった)。これを92℃に昇温し、30分間撹拌保持して第一加水分解した。次いで、92℃の温度下TiO
2として70g分の四塩化チタン水溶液とアンモニア水をそれぞれ60分かけて同時に添加し、pH=0.8〜1.2を保持して第二加水分解した。得られた酸化チタン含有スラリーをアンモニア水でpH=6.5まで中和後、濾過洗浄し、乾燥して高純度微粒子酸化チタン粉末(試料N)を得た。この反応は、すべて一つの反応槽内で実施した。
【0049】
実施例15
実施例14の酸化チタン粉末を電気炉で400℃の温度で2時間焼成して高純度微粒子酸化チタン粉末(試料O)を得た。
【0050】
実施例16
TiO
2として50g/リットルの四塩化チタン水溶液1リットルを室温に保持しながら、TiO
2に対して3質量%の無水クエン酸を添加し、30分間撹拌した(pHは0以下であった)。これを92℃に昇温し、30分間撹拌保持して第一加水分解した。次いで、92℃の温度下TiO
2として50g分の四塩化チタン水溶液とアンモニア水をそれぞれ60分かけて同時に添加し、pH=0.8〜1.2を保持して第二加水分解した。得られた酸化チタン含有スラリーをアンモニア水でpH=6.5まで中和後、ろ過洗浄し、乾燥して高純度微粒子酸化チタン粉末(試料P)を得た。この反応は、すべて一つの反応槽内で実施した。
【0051】
実施例17
TiO
2として70g/リットルの四塩化チタン水溶液1リットルを室温に保持しながら、TiO
2に対して3質量%の無水クエン酸を添加し、30分間撹拌した(pHは0以下であった)。これを92℃に昇温し、30分間撹拌保持して第一加水分解した。次いで、92℃の温度下TiO
2として30g分の四塩化チタン水溶液とアンモニア水をそれぞれ60分かけて同時に添加し、pH=0.8〜1.2を保持して第二加水分解した。得られた酸化チタン含有スラリーをアンモニア水でpH=6.5まで中和後、ろ過洗浄し、乾燥して高純度微粒子酸化チタン粉末(試料Q)を得た。この反応は、すべて一つの反応槽内で実施した。
【0052】
実施例18
TiO
2として50g/リットルの四塩化チタン水溶液1リットルを室温に保持しながら、TiO
2に対して3質量%の無水クエン酸を添加し、30分間撹拌した(pHは0以下であった)。これを92℃に昇温し、30分間撹拌保持して第一加水分解した。次いで、92℃の温度下TiO
2として50g分の四塩化チタン水溶液と水酸化ナトリウム水溶液をそれぞれ60分かけて同時に添加し、pH=10.8〜11.2を保持して第二加水分解した。得られた酸化チタン含有スラリーを塩酸でpH=6.5まで中和後、ろ過洗浄し、乾燥して高純度微粒子酸化チタン粉末(試料R)を得た。この反応は、すべて一つの反応槽内で実施した。
【0053】
実施例19
60℃に加熱したイオン交換水1リットル中に、TiO
2として50g分の四塩化チタン水溶液とアンモニア水をそれぞれ30分かけて同時に添加し、pH=5.8〜6.2を保持して第一加水分解した。次いで、TiO
2として50g分の四塩化チタン水溶液とアンモニア水をそれぞれ30分かけて同時に添加し、pH=0.8〜1.2を保持して第二加水分解した。得られた酸化チタン含有スラリーをアンモニア水でpH=6.5まで中和後、ろ過洗浄し、乾燥して、高純度微粒子酸化チタン粉末(試料S)を得た。この反応は、すべて一つの反応槽内で実施した。
【0054】
実施例20
60℃に加熱したイオン交換水1リットル中に、TiO
2として50g分の四塩化チタン水溶液とアンモニア水をそれぞれ30分かけて同時に添加し、pH=0.8〜1.2を保持して第一加水分解した。次いで、TiO
2として50g分の四塩化チタン水溶液とアンモニア水をそれぞれ30分かけて同時に添加し、pH=5.8〜6.2を保持して第二加水分解した。得られた酸化チタン含有スラリーをアンモニア水でpH=6.5まで中和後、ろ過洗浄し、乾燥して、高純度微粒子酸化チタン粉末(試料T)を得た。この反応は、すべて一つの反応槽内で実施した。
【0055】
実施例21
TiO
2として50g/リットルの四塩化チタン水溶液1リットルを室温に保持しながら、TiO
2に対して3質量%の無水クエン酸を添加し、30分間撹拌した(pHは0以下であった)。これを92℃に昇温し、30分間撹拌保持して第一加水分解した。次いで、TiO
2として50g分の四塩化チタン水溶液を添加混合し、pH1以下に調整した。次いで、これを92℃に昇温し、30分間撹拌保持して第二加水分解した。得られた酸化チタン含有スラリーをアンモニア水でpH=6.5まで中和後、ろ過洗浄し、乾燥して、高純度微粒子酸化チタン粉末(試料U)を得た。この反応は、すべて一つの反応槽内で実施した。
【0056】
実施例22
TiO
2として30g/リットルの四塩化チタン水溶液1リットルを室温に保持しながら、TiO
2に対して3質量%の無水クエン酸を添加し、30分間撹拌した(pHは0以下であった)。これを92℃に昇温し、30分間撹拌保持して第一加水分解した。次いで、TiO
2として70g分の四塩化チタン水溶液を添加混合し、pH1以下に調整した。次いで、これを92℃に昇温し、30分間撹拌保持して第二加水分解した。得られた酸化チタン含有スラリーをアンモニア水でpH=6.5まで中和後、ろ過洗浄し、乾燥して、高純度微粒子酸化チタン粉末(試料V)を得た。この反応は、すべて一つの反応槽内で実施した。
【0057】
実施例23
四塩化チタン水溶液にアンモニア水を添加してpH=7.0とし、これを70℃に昇温し、30分間撹拌保持後、90℃に昇温し、120分間撹拌保持した。得られた酸化チタン含有スラリーをろ過洗浄し、乾燥して、高純度微粒子酸化チタン粉末(試料W)を得た。
【0058】
比較例1
室温に保持したアンモニア水中に、60分かけて四塩化チタン水溶液を加え、pH=6.5として加水分解した。得られた酸化チタン含有スラリーをアンモニア水でpH=6.5まで中和後、ろ過洗浄し、乾燥して高純度微粒子酸化チタン粉末(試料a)を得た。
【0059】
比較例2
30℃に加熱したイオン交換水1リットル中に、TiO
2として100g分の四塩化チタン水溶液とアンモニア水をそれぞれ60分かけて同時に添加し、pH=5.8〜6.2を保持して加水分解した。得られた酸化チタン含有スラリーをろ過洗浄し、乾燥して高純度微粒子酸化チタン粉末(試料b)を得た。
【0060】
評価1
BET比表面積(m
2/g):流動式比表面積自動測定装置(商品名FlowSorbII 2300、島津製作所社製)を用いて、窒素吸着法により求めた。このとき、脱離は窒素ガス流通下、室温の温度条件で行い、吸着は77Kの温度条件で行った。このBET比表面積から式:d=6/(ρ・a)より、一次粒子径(BET径)を算出した。
【0061】
評価2
結晶形及び結晶子径:X線回折装置(商品名UltimaIV、リガク社製)を用いて、X線管球:Cu、管電圧:40kV、管電流:40mA、発散スリット:1/2°、散乱スリット:8mm、受光スリット:開放、サンプリング幅:0.020度、走査速度:10.00度/分の条件でX線回折スペクトルを測定し、このスペクトルから結晶形及び結晶子径を求めた。
【0062】
評価3
細孔容積(ml/g):自動比表面積/細孔分布測定装置(商品名BELSORP−miniII、日本ベル社製)を用いて、BJH法により細孔径1〜100nmの範囲について求めた。
【0063】
評価4
評価用スラリー作製:酸化チタン乾燥粉末3gに純水30ml及びポリカルボン酸系分散剤を酸化チタンに対して、3質量%を加えたスラリーを作製する。このスラリー及びメディアとして0.09φmmジルコンビーズ60gを容積70mlのマヨネーズ瓶に入れ、ペイントシェーカーで60分間分散させた。
凝集粒子径(nm):レーザー回折・散乱式粒子径分布測定装置(日機装社製NanotracUPA)を用いて測定した。測定された粒度分布における50%累積質量粒度分布径(D50)を凝集粒子径とした。
【0064】
評価1〜4の結果を表1に示す。また、実施例の試料(A〜I、K〜Q)の電子顕微鏡写真を
図1〜
図16に示す。実施例1〜23で製造した試料A〜Wは、一次粒子径が小さく、凝集粒子径も小さく、それらの比(凝集粒子径/BET径)が小さいものであった。また、TiO
2の純度も99.9質量%以上であり、十分高いこと、細孔容積も比較的大きいことがわかった。なお、微粒子酸化チタンに含まれる不純物の測定は、ICP分析で行った。
【0065】
【表1】
注)表中、Aはアナタース形結晶を示し、Rはルチル形結晶を示す。A/rはアナタースリッチであることを示す。R/Aはアナタース及びルチルが同程度であることを示す。R/aはルチルリッチであることを示す。ルチル%は、X線回折のルチルピークとアナタースピークからそれぞれの含有量を推定し、次の式から算出する。
ルチル%=ルチル含有量/(ルチル含有量+アナタース含有量)*100
なお、空白部分は未測定を表し、「−」は測定不可のものを示す。
【0066】
チタン酸リチウムの製造
Li/Ti比を0.81に設定し、SUS製容器に所定量のLiOH・H
2Oを秤量し、濃度が4.5mol/Lとなるように純水を張り込み水溶液とした。その後、常温にてスラリー固形分が60g/Lとなるよう試料A〜Wのそれぞれの粉末を投入し、30分程撹拌させて分散させた。その後、スプレードライ(Yamato社製:ノズル式)で噴霧乾燥を行い、乾燥粉を得た。(噴霧条件:入口温度190℃、出口温度85℃、Air圧0.25MPa)
得られた乾燥粉を所定量るつぼに仕込み、マッフル炉にて400〜600℃の範囲で焼成を行った。得られた試料をX線回折、及びTG−DTA熱分析などの評価を行った結果、比較的低い温度域でLi
4Ti
5O
12への相変化・結晶化が始まり、リチウムとの反応性がよいことがわかった。
【0067】
チタン酸バリウムの製造
試料A〜Wのそれぞれの微粒子酸化チタン粉末100gとイオン交換水1リットルとをビーカーに入れ、水性懸濁液とした。次いで、この水性懸濁液と市販の水酸化バリウム(Ba(OH)
2・8H
2O)(Ba/Tiモル比=1.5)を3リットルのオートクレーブに入れた後、加熱し、150℃の温度で1時間保持して飽和水蒸気圧下で水熱処理を行った。次いで、得られた生成物を吸引濾過器で濾過し、洗浄し、105℃の温度で乾燥してチタン酸バリウム粉末を得た。
【0068】
更に、前記の方法で得た乾燥物10gを550℃の温度で1時間焼成してチタン酸バリウム粉末を得た。
【0069】
得られたチタン酸バリウム試料をX線回折、及びTG−DTA熱分析などの評価を行った結果、それぞれの試料は結晶性がよく、一次粒子径が小さい化合物であって、バリウムとの反応性がよいことがわかった。