特許第6607407号(P6607407)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6607407
(24)【登録日】2019年11月1日
(45)【発行日】2019年11月20日
(54)【発明の名称】微粒子酸化チタン及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
   C01G 23/047 20060101AFI20191111BHJP
   C01G 23/053 20060101ALI20191111BHJP
【FI】
   C01G23/047
   C01G23/053
【請求項の数】15
【全頁数】23
(21)【出願番号】特願2016-531382(P2016-531382)
(86)(22)【出願日】2015年6月30日
(86)【国際出願番号】JP2015068781
(87)【国際公開番号】WO2016002755
(87)【国際公開日】20160107
【審査請求日】2018年2月22日
(31)【優先権主張番号】特願2014-136810(P2014-136810)
(32)【優先日】2014年7月2日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000000354
【氏名又は名称】石原産業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000855
【氏名又は名称】特許業務法人浅村特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】梶 誠司
(72)【発明者】
【氏名】下井田 博謙
(72)【発明者】
【氏名】大森 由里絵
【審査官】 村岡 一磨
(56)【参考文献】
【文献】 国際公開第2012/017752(WO,A1)
【文献】 特開2010−120841(JP,A)
【文献】 特開2007−190514(JP,A)
【文献】 特開2003−286011(JP,A)
【文献】 特開昭63−008218(JP,A)
【文献】 特開2012−144399(JP,A)
【文献】 特開2006−273646(JP,A)
【文献】 特開2013−203929(JP,A)
【文献】 特開2014−015340(JP,A)
【文献】 特開2006−290680(JP,A)
【文献】 特開平09−067125(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2006/0110318(US,A1)
【文献】 米国特許第03528773(US,A)
【文献】 特開平02−022127(JP,A)
【文献】 特開平02−283617(JP,A)
【文献】 ソ連国特許発明第01646992(SU,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C01G 1/00−23/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
50〜110℃の温度に加熱した水系溶媒のpHを0〜12の範囲になるように(オキシ)塩化チタンとアルカリを同時に混合して、(オキシ)塩化チタンを第一加水分解し、次いで、第一加水分解した生成物を含み50〜110℃の温度に調整した水系溶媒のpHを0〜12の範囲になるように(オキシ)塩化チタンとアルカリを同時に混合して、(オキシ)塩化チタンを第二加水分解することを含む、BET径が1〜50nmであり、凝集粒子径が1〜200nmであり、しかも、それらの比(凝集粒子径/BET径)が1〜40である微粒子酸化チタンの製造方法
【請求項2】
50〜110℃の温度に加熱した水系溶媒のpHを0〜12の範囲になるように(オキシ)塩化チタンとアルカリを同時に混合して、(オキシ)塩化チタンを第一加水分解し、次いで、第一加水分解した生成物を含む水系溶媒に(オキシ)塩化チタンを混合してpHを0以下の範囲に調整した後、50〜110℃の温度に調整して、(オキシ)塩化チタンを第二加水分解することを含む、BET径が1〜50nmであり、凝集粒子径が1〜200nmであり、しかも、それらの比(凝集粒子径/BET径)が1〜40である微粒子酸化チタンの製造方法
【請求項3】
50〜110℃の温度に加熱した水系溶媒のpHを0〜12の範囲になるように(オキシ)塩化チタンとアルカリを同時に混合して、(オキシ)塩化チタンを第一加水分解し、次いで、第一加水分解した生成物を含む水系溶媒に(オキシ)塩化チタンを混合し、次いで、水系溶媒のpHを2〜7の範囲になるようにアルカリを混合した後、50〜110℃の温度に調整して、(オキシ)塩化チタンを第二加水分解することを含む、BET径が1〜50nmであり、凝集粒子径が1〜200nmであり、しかも、それらの比(凝集粒子径/BET径)が1〜40である微粒子酸化チタンの製造方法
【請求項4】
(オキシ)塩化チタンを含む水系溶媒のpHを0以下の範囲に調整した後、50〜110℃の温度に加熱して、(オキシ)塩化チタンを第一加水分解し、次いで、第一加水分解した生成物を含み50〜110℃の温度に調整した水系溶媒のpHが0〜12の範囲になるように(オキシ)塩化チタンとアルカリとを同時に混合して、(オキシ)塩化チタンを第二加水分解することを含む、BET径が1〜50nmであり、凝集粒子径が1〜200nmであり、しかも、それらの比(凝集粒子径/BET径)が1〜40である微粒子酸化チタンの製造方法
【請求項5】
(オキシ)塩化チタンを含む水系溶媒のpHを0以下の範囲に調整した後、50〜110℃の温度に加熱して、(オキシ)塩化チタンを第一加水分解し、次いで、第一加水分解した生成物を含む水系溶媒に(オキシ)塩化チタンを混合してpHを0以下の範囲に調整した後、50〜110℃の温度に調整して、(オキシ)塩化チタンを第二加水分解することを含む、BET径が1〜50nmであり、凝集粒子径が1〜200nmであり、しかも、それらの比(凝集粒子径/BET径)が1〜40である微粒子酸化チタンの製造方法
【請求項6】
(オキシ)塩化チタンを含む水系溶媒のpHを0以下の範囲に調整した後、50〜110℃の温度に加熱して、(オキシ)塩化チタンを第一加水分解し、次いで、第一加水分解した生成物を含む水系溶媒に(オキシ)塩化チタンを混合し、次いで、水系溶媒のpHを2〜7の範囲になるようにアルカリを混合した後、50〜110℃の温度に調整して、(オキシ)塩化チタンを第二加水分解することを含む、BET径が1〜50nmであり、凝集粒子径が1〜200nmであり、しかも、それらの比(凝集粒子径/BET径)が1〜40である微粒子酸化チタンの製造方法
【請求項7】
(オキシ)塩化チタンを含む水系溶媒のpHが2〜7の範囲になるようにアルカリを混合した後、50〜110℃の温度に加熱して、(オキシ)塩化チタンを第一加水分解し、次いで、第一加水分解した生成物を含み50〜110℃の温度に調整した水系溶媒のpHが0〜12の範囲になるように(オキシ)塩化チタンとアルカリとを同時に混合して、(オキシ)塩化チタンを第二加水分解することを含む、BET径が1〜50nmであり、凝集粒子径が1〜200nmであり、しかも、それらの比(凝集粒子径/BET径)が1〜40である微粒子酸化チタンの製造方法
【請求項8】
(オキシ)塩化チタンを含む水系溶媒のpHが2〜7の範囲になるようにアルカリを混合した後、50〜110℃の温度に加熱して、(オキシ)塩化チタンを第一加水分解し、次いで、第一加水分解した生成物を含む水系溶媒に(オキシ)塩化チタンを混合してpHを0以下の範囲に調整した後、50〜110℃の温度に調整して、(オキシ)塩化チタンを第二加水分解することを含む、BET径が1〜50nmであり、凝集粒子径が1〜200nmであり、しかも、それらの比(凝集粒子径/BET径)が1〜40である微粒子酸化チタンの製造方法
【請求項9】
(オキシ)塩化チタンを含む水系溶媒のpHが2〜7の範囲になるようにアルカリを混合し、次いで、水系溶媒を50〜110℃の温度に加熱して、(オキシ)塩化チタンを第一加水分解し、次いで、第一加水分解した生成物を含む水系溶媒に(オキシ)塩化チタンを混合し、次いで、水系溶媒のpHを2〜7の範囲になるようにアルカリを混合した後、50〜110℃の温度に調整して、(オキシ)塩化チタンを第二加水分解することを含む、BET径が1〜50nmであり、凝集粒子径が1〜200nmであり、しかも、それらの比(凝集粒子径/BET径)が1〜40である微粒子酸化チタンの製造方法
【請求項10】
(オキシ)塩化チタンを含む水系溶媒のpHが2〜7の範囲になるようにアルカリを混合し、次いで、水系溶媒を50〜110℃の温度に加熱して、(オキシ)塩化チタンを第一加水分解し、次いで、第一加水分解した生成物を含む水系溶媒に(オキシ)塩化チタンを混合し、次いで、50〜110℃の温度に調整した後、水系溶媒のpHを2〜7の範囲になるようにアルカリを混合して、(オキシ)塩化チタンを第二加水分解することを含む、BET径が1〜50nmであり、凝集粒子径が1〜200nmであり、しかも、それらの比(凝集粒子径/BET径)が1〜40である微粒子酸化チタンの製造方法
【請求項11】
第一加水分解した生成物と第二加水分解した生成物との質量比が3:97〜70:30の範囲である、請求項1〜10のいずれか一項に記載の微粒子酸化チタンの製造方法
【請求項12】
第一加水分解と第二加水分解の反応を一つの反応槽内で行う、請求項1〜11のいずれか一項に記載の微粒子酸化チタンの製造方法
【請求項13】
第一加水分解した生成物の粒子表面に、第二加水分解した生成物が析出し成長する、請求項1〜12のいずれか一項に記載の微粒子酸化チタンの製造方法
【請求項14】
前記の請求項1〜13のいずれか一項に記載の方法で製造した微粒子酸化チタンを含む水系溶媒にアルカリ又は酸を添加してpHを6.0〜8.0の範囲に調整し、次いで、ろ過し、乾燥することを含む、微粒子酸化チタン粉末の製造方法
【請求項15】
前記の請求項1〜14のいずれか一項に記載の方法で製造した微粒子酸化チタンを焼成することを含む、微粒子酸化チタン粉末の製造方法
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、微粒子酸化チタン及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
平均一次粒子径が0.1μm以下の酸化チタンは微粒子酸化チタンと呼ばれ、可視光に対して透明性を有し、紫外線に対しては遮蔽能を有するため、この特性を利用して日焼け止め化粧料や紫外線遮蔽塗料として利用されている。また、高比表面積であることから脱硝触媒やダイオキシン分解触媒等の触媒担体に用いられ、紫外線の照射により励起して光触媒作用や、親水性作用や、防曇作用を発現し、光触媒や太陽電池用電極等に用いられる。更に、チタン酸バリウムや、チタン酸ストロンチウムや、チタン酸リチウム等のチタン複合酸化物を製造するための原料に用いられる。
【0003】
微粒子酸化チタンを製造する方法として、四塩化チタン水溶液を液相で加水分解する方法が知られている。例えば、特許文献1には、四塩化チタン水溶液の加水分解により発生する塩化水素の反応槽からの逸出を抑制しながら加水分解を行うことが記載され、特許文献2には、四塩化チタン、水及び多価カルボン酸を50℃未満の温度で混合し、次いでその混合溶液を加熱して加水分解反応を行い、酸化チタンを生成させることを記載している。特許文献3には、四塩化チタン水溶液を5〜30℃に保持しながら、アルカリ溶液で中和加水分解してコロイド状の非晶質水酸化チタンを析出させ、これを60〜80℃の温度で1〜10時間熟成して、平均結晶子径が5〜13nmである微小チタニアゾルを得ることを記載している。特許文献4には、65〜90℃の水に対し、四塩化チタン及び塩酸を各々1〜5質量%混合し、65℃〜混合液の沸点の温度範囲に混合液の温度を保持しながら加水分解して、ルチル含有率が50〜99.9質量%であり、BET比表面積が50m2/g超300m2/g以下であり、一次粒子の平均粒子径は、5〜100nmの範囲内である酸化チタン粒子を製造することを記載している。更に、特許文献5には、四塩化チタン水溶液等のチタン化合物水溶液と塩基を混合・反応させてチタン化合物を加水分解する工程において、予め水性媒体中にアナターゼ型酸化チタン微粒子を分散された分散液を調製し、前記分散液に、チタン化合物水溶液と塩基を混合・反応させてチタン化合物を加水分解することを記載している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平9−67125号公報
【特許文献2】特開平9−278443号公報
【特許文献3】特開2001−26423公報
【特許文献4】特開2006−335619公報
【特許文献5】特開2009−120422公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
前記の従来技術の方法では、四塩化チタンを出発物質としているためにTiOの純度が高く、一次粒子径の小さい微粒子酸化チタンが製造できる。しかしながら、湿式法(液相法)であるため、一次粒子が多数凝集した凝集粒子を形成し、その凝集粒子径は著しく大きくなり易い。そのため、透明性、紫外線遮蔽能等が低下し易く、チタン酸バリウム、チタン酸リチウム等のチタン複合酸化物を製造する際のバリウムやリチウム等との反応性が低くなったり、触媒成分を分散して担持し難く、被処理成分の吸着性が低下して触媒、光触媒、吸着剤等の活性が低くなったりするなどの問題がある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは、(オキシ)塩化チタン(本願において、「(オキシ)塩化チタン」とは、塩化チタン又はオキシ塩化チタンという意である。)の加水分解条件を見直した結果、(オキシ)塩化チタンを水系溶媒中で加水分解する際のpH範囲と温度範囲が重要であり、それらを制御することにより一次粒子径が小さく、しかも、凝集粒子径も比較的小さい微粒子酸化チタンを製造することができること、更に、前記のpH範囲と温度範囲を保持しながら、(オキシ)塩化チタンを水系溶媒中で加水分解し、次いで、該水系溶媒に(オキシ)塩化チタンとアルカリを同時に添加し加水分解する方法などの二回の加水分解を行うことにより、より一層所望される微粒子酸化チタンを製造することができることを見出し、本発明を完成した。
すなわち、本発明は、
1. BET径が1〜50nmであり、凝集粒子径が1〜200nmであり、しかも、それらの比(凝集粒子径/BET径)が1〜40である、微粒子酸化チタン、
2. 50〜110℃の温度に加熱した水系溶媒のpHが0〜12の範囲になるように(オキシ)塩化チタンとアルカリを混合して、(オキシ)塩化チタンを加水分解する微粒子酸化チタンの製造方法、
3. (オキシ)塩化チタンを含む水系溶媒のpHを1以下の範囲に調整した後、水系溶媒を50〜110℃の温度に加熱して、(オキシ)塩化チタンを加水分解する微粒子酸化チタンの製造方法、
4. (オキシ)塩化チタンを含む水系溶媒のpHが0〜9の範囲になるようにアルカリを混合した後、50〜110℃の温度に加熱して、(オキシ)塩化チタンを加水分解する微粒子酸化チタンの製造方法、
5. 前記の2〜4の方法で第一加水分解を行った後に、再度2〜4のそれぞれ一の方法を行って第二加水分解を行う、微粒子酸化チタンの製造方法、などである。
本発明は、より具体的には、以下の通りである。
(1) BET径が1〜50nmであり、凝集粒子径が1〜200nmであり、しかも、それらの比(凝集粒子径/BET径)が1〜40である、微粒子酸化チタン、
(2) アナタース形及び/又はルチル形の結晶形を有する、(1)に記載の微粒子酸化チタン、
(3) 細孔径1〜100nmの範囲の細孔容積が0.2〜0.7ml/gである、(1)又は(2)に記載の微粒子酸化チタン、
(4) 50〜110℃の温度に加熱した水系溶媒のpHが0〜12の範囲になるように(オキシ)塩化チタンとアルカリを混合して、(オキシ)塩化チタンを加水分解することを含む、微粒子酸化チタンの製造方法、
(5) (オキシ)塩化チタンを含む水系溶媒のpHを1以下の範囲に調整した後、50〜110℃の温度に加熱して、(オキシ)塩化チタンを加水分解することを含む、微粒子酸化チタンの製造方法、
(6) (オキシ)塩化チタンを含む水系溶媒のpHが0〜9の範囲になるようにアルカリを混合した後、50〜110℃の温度に加熱して、(オキシ)塩化チタンを加水分解することを含む、微粒子酸化チタンの製造方法、
(7) 50〜110℃の温度に加熱した水系溶媒のpHを0〜12の範囲になるように(オキシ)塩化チタンとアルカリを混合して、(オキシ)塩化チタンを第一加水分解し、次いで、第一加水分解した生成物を含み50〜110℃の温度に調整した水系溶媒のpHを0〜12の範囲になるように(オキシ)塩化チタンとアルカリを混合して、(オキシ)塩化チタンを第二加水分解することを含む、微粒子酸化チタンの製造方法、
(8) 50〜110℃の温度に加熱した水系溶媒のpHを0〜12の範囲になるように(オキシ)塩化チタンとアルカリを混合して、(オキシ)塩化チタンを第一加水分解し、次いで、第一加水分解した生成物を含む水系溶媒に(オキシ)塩化チタンを混合してpHを1以下の範囲に調整した後、50〜110℃の温度に調整して、(オキシ)塩化チタンを第二加水分解することを含む、微粒子酸化チタンの製造方法、
(9) 50〜110℃の温度に加熱した水系溶媒のpHを0〜12の範囲になるように(オキシ)塩化チタンとアルカリを混合して、(オキシ)塩化チタンを第一加水分解し、次いで、第一加水分解した生成物を含む水系溶媒に(オキシ)塩化チタンを混合し、次いで、水系溶媒のpHを0〜9の範囲になるようにアルカリを混合した後、50〜110℃の温度に調整して、(オキシ)塩化チタンを第二加水分解することを含む、微粒子酸化チタンの製造方法、
(10) (オキシ)塩化チタンを含む水系溶媒のpHを1以下の範囲に調整した後、50〜110℃の温度に加熱して、(オキシ)塩化チタンを第一加水分解し、次いで、第一加水分解した生成物を含み50〜110℃の温度に調整した水系溶媒のpHが0〜12の範囲になるように(オキシ)塩化チタンとアルカリとを混合して、(オキシ)塩化チタンを第二加水分解することを含む、微粒子酸化チタンの製造方法、
(11) (オキシ)塩化チタンを含む水系溶媒のpHを1以下の範囲に調整した後、50〜110℃の温度に加熱して、(オキシ)塩化チタンを第一加水分解し、次いで、第一加水分解した生成物を含む水系溶媒に(オキシ)塩化チタンを混合してpHを1以下の範囲に調整した後、50〜110℃の温度に調整して、(オキシ)塩化チタンを第二加水分解することを含む、微粒子酸化チタンの製造方法、
(12) (オキシ)塩化チタンを含む水系溶媒のpHを1以下の範囲に調整した後、50〜110℃の温度に加熱して、(オキシ)塩化チタンを第一加水分解し、次いで、第一加水分解した生成物を含む水系溶媒に(オキシ)塩化チタンを混合し、次いで、水系溶媒のpHを0〜9の範囲になるようにアルカリを混合した後、50〜110℃の温度に調整して、(オキシ)塩化チタンを第二加水分解することを含む、微粒子酸化チタンの製造方法、
(13) (オキシ)塩化チタンを含む水系溶媒のpHが0〜9の範囲になるようにアルカリを混合した後、50〜110℃の温度に加熱して、(オキシ)塩化チタンを第一加水分解し、次いで、第一加水分解した生成物を含み50〜110℃の温度に調整した水系溶媒のpHが0〜12の範囲になるように(オキシ)塩化チタンとアルカリとを混合して、(オキシ)塩化チタンを第二加水分解することを含む、微粒子酸化チタンの製造方法、
(14) (オキシ)塩化チタンを含む水系溶媒のpHが0〜9の範囲になるようにアルカリを混合した後、50〜110℃の温度に加熱して、(オキシ)塩化チタンを第一加水分解し、次いで、第一加水分解した生成物を含む水系溶媒に(オキシ)塩化チタンを混合してpHを1以下の範囲に調整した後、50〜110℃の温度に調整して、(オキシ)塩化チタンを第二加水分解することを含む、微粒子酸化チタンの製造方法、
(15) (オキシ)塩化チタンを含む水系溶媒のpHが0〜9の範囲になるようにアルカリを混合し、次いで、水系溶媒を50〜110℃の温度に加熱して、(オキシ)塩化チタンを第一加水分解し、次いで、第一加水分解した生成物を含む水系溶媒に(オキシ)塩化チタンを混合し、次いで、水系溶媒のpHを0〜9の範囲になるようにアルカリを混合した後、50〜110℃の温度に調整して、(オキシ)塩化チタンを第二加水分解することを含む、微粒子酸化チタンの製造方法、
(16) 第一加水分解した生成物と第二加水分解した生成物との質量比が3:97〜70:30の範囲である、(7)〜(15)のいずれかに記載の微粒子酸化チタンの製造方法、
(17) 第一加水分解と第二加水分解の反応を一つの反応槽内で行う、(7)〜(16)のいずれかに記載の微粒子酸化チタンの製造方法、
(18) 第一加水分解した生成物の粒子表面に、第二加水分解した生成物が析出し成長する、(7)〜(17)のいずれかに記載の微粒子酸化チタンの製造方法、
(19) 前記の(4)〜(18)のいずれかに記載の方法で製造した微粒子酸化チタンを含む水系溶媒にアルカリ又は酸を添加してpHを6.0〜8.0の範囲に調整し、次いで、ろ過し、乾燥することを含む、微粒子酸化チタン粉末の製造方法、
(20) 前記の(4)〜(19)のいずれかに記載の方法で製造した微粒子酸化チタンを焼成することを含む、微粒子酸化チタン粉末の製造方法、
(21) 前記の(1)〜(3)のいずれかに記載の微粒子酸化チタンと少なくとも一種の金属元素(チタンを除く)との反応生成物を含む、複合酸化物。
【発明の効果】
【0007】
本発明の微粒子酸化チタンは、一次粒子径が小さく、しかも、凝集粒子径も小さく、凝集程度が低いものである。このため、バリウム、リチウム等との反応性がよく、チタン複合酸化物を製造するための原料として適している。また、高比表面積であるため触媒成分の分散担持がし易く、被処理成分の吸着性がよいことから、触媒担体、触媒、光触媒、吸着剤等にも好適に用いられる。
本発明の微粒子酸化チタンの製造方法は、(オキシ)塩化チタンを水系溶媒中で加水分解する際のpH範囲と温度範囲を制御するという簡便な方法である。更に、前記のpH範囲と温度範囲を保持しながら、(オキシ)塩化チタンを水系溶媒中で第一加水分解を行い、次いで、(オキシ)塩化チタンを添加し第二加水分解を行うなど、二段の加水分解を行うという簡便な方法であり、また、一つの反応槽でも行えることから設備面でも利点がある。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】実施例1の試料Aの電子顕微鏡写真である。
図2】実施例2の試料Bの電子顕微鏡写真である。
図3】実施例3の試料Cの電子顕微鏡写真である。
図4】実施例4の試料Dの電子顕微鏡写真である。
図5】実施例5の試料Eの電子顕微鏡写真である。
図6】実施例6の試料Fの電子顕微鏡写真である。
図7】実施例7の試料Gの電子顕微鏡写真である。
図8】実施例8の試料Hの電子顕微鏡写真である。
図9】実施例9の試料Iの電子顕微鏡写真である。
図10】実施例11の試料Kの電子顕微鏡写真である。
図11】実施例12の試料Lの電子顕微鏡写真である。
図12】実施例13の試料Mの電子顕微鏡写真である。
図13】実施例14の試料Nの電子顕微鏡写真である。
図14】実施例15の試料Oの電子顕微鏡写真である。
図15】実施例16の試料Pの電子顕微鏡写真である。
図16】実施例17の試料Qの電子顕微鏡写真である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本発明において酸化チタンとは、二酸化チタン、一酸化チタンのほかに、含水酸化チタン、水和酸化チタン、メタチタン酸、オルトチタン酸等といわれるものを含み、アナタース形及び/又はルチル形の結晶形を有してもよく、アモルファス(無定形)であってもよく、それらが適宜混合したものであってもよい。酸化チタンの結晶形はX線回折により同定することができる。酸化チタンの純度は、特にバリウム、リチウム等とのチタン複合酸化物の原料に用いるとの観点から99質量%以上が好ましく、99.9質量%以上がより好ましい。酸化チタンに含まれる不純物は、塩素、硫黄、アルカリ金属、アルカリ土類金属等であり、酸化チタンに存在する不純物を蛍光X線分析、ICP分析等で測定する。
【0010】
本発明の酸化チタンは、BET径が1〜50nmであり、凝集粒子径が1〜200nmであり、しかも、それらの比(凝集粒子径/BET径)が1〜40である。微粒子酸化チタンの一次粒子径は下記のBET径で表し、その値は、1〜50nmであり、好ましくは5〜30nmであり、より好ましくは5〜15nmであり、微細なものほどバリウム、リチウム等との反応性がよい。微粒子酸化チタンのBET径は、窒素吸着法(BET法)による比表面積a(m/g)を用いて、下記式により求める。
式:d=6/(ρ・a)
ただし、dは一次粒子径(BET径)(μm)、ρは酸化チタンの比重(g/cm)である。微粒子酸化チタンの比表面積aは、大きいものほどBET径が小さくなるので好ましく、具体的には50〜400m/gが好ましく、100〜300m/gがより好ましい。アナタース形酸化チタンの比重は3.9であり、ルチル形の比重は4.2であるので、比表面積aが50m/gであるとBET径は約30nm程度であり、100m/gであると約15nm、300m/gであると約5nm程度となる。
【0011】
微粒子酸化チタンの凝集粒子径は、酸化チタン乾燥粉末3gに純水30ml及びポリカルボン酸系分散剤を酸化チタンに対して3質量%を加えたスラリーを作製する。このスラリーとメディアとして0.09φmmのジルコンビーズ60gを、容積70mlのマヨネーズ瓶に入れ、ペイントシェーカーで60分間分散させた後、レーザー回折・散乱式粒子径分布測定装置(日機装社製NanotracUPA)にかけて、粒度分布を測定する。このようにして測定された粒度分布における50%累積質量粒度分布径(D50)を凝集粒子径とする。この凝集粒子径が小さいと凝集程度が低いことを示すため、より小さい凝集粒子径が好ましく、具体的には1〜200nmであり、10〜150nmが好ましく、10〜120nmがより好ましく、10〜100nmが更に好ましい。この凝集粒子径と上記のBET径との比(凝集粒子径/BET径)は凝集程度を表し、この比が小さいと凝集程度が小さいことを表し、具体的には1〜40であり、3〜30が好ましく、5〜15がより好ましい。
【0012】
微粒子酸化チタンは一次粒子がある程度凝集して凝集粒子を形成しているため、その一次粒子同士の隙間を細孔として考えることができ、細孔容積を上記の窒素吸着法(BET法)の比表面積測定装置で測定することができる。細孔容積量が大きいとバリウム、リチウム等との接触面積が大きく反応性がよい。具体的には、細孔径(直径)1〜100nmの範囲の細孔容積が0.2〜0.7ml/gの範囲であることが好ましく、0.3〜0.5ml/gであることがより好ましい。
【0013】
微粒子酸化チタンの一次粒子径は、結晶子が集合して構成されているため、一次粒子径をより微細にするにはこの結晶子径をより小さくするのが好ましい。この結晶子径は、(110)面等のX線回折ピークより下記のシェラーの公式を用いて算出することができ、例えば、20〜250Åであり、20〜150Åが好ましく、50〜100Åがより好ましい。
シェラ−の公式:DHKL=K*λ/βcosθ
ここで、DHKL:平均結晶子径(Å)、λ:X線の波長、β:回折ピークの半価幅、θ:Bragg’s角、K:定数を表す。
【0014】
本発明の微粒子酸化チタンの製造方法は、(オキシ)塩化チタンの加水分解を1段で行う方法と、前記の方法で第一加水分解(即ち、一段目の加水分解)を行った後に、再度第二加水分解(即ち、二段目の加水分解)を行う方法(即ち、2段で加水分解を行う方法)がある。第二加水分解後に、再度第三加水分解(即ち、三段目の加水分解)を行ったり、第三加水分解後に再度第四加水分解(即ち、四段目の加水分解)等を行ったりしても差し支えない。1段で加水分解を行うには、(1)50〜110℃の温度に加熱した水系溶媒のpHが0〜12の範囲になるように(オキシ)塩化チタンとアルカリを混合して、(オキシ)塩化チタンを加水分解する方法(以下、同時中和加水分解法という場合がある)、(2)(オキシ)塩化チタンを含む水系溶媒のpHを1以下の範囲に調整した後、50〜110℃の温度に加熱して、(オキシ)塩化チタンを加水分解する方法(以下、酸性下加熱加水分解法という場合がある)、(3)(オキシ)塩化チタンを含む水系溶媒のpHが0〜9の範囲になるようにアルカリを混合した後、50〜110℃の温度に加熱して、(オキシ)塩化チタンを加水分解する方法(以下、アルカリ添加加水分解法という場合がある)がある。
原料の(オキシ)塩化チタンは、四塩化チタン、三塩化チタン、オキシ塩化チタン等を用いることができ、四塩化チタンが好ましい。
また、水系溶媒とは、水又は水にアルコール等の有機溶媒を混合した溶媒であり、有機溶媒の含有量は10質量%以下程度が好ましい。
アルカリとしては、アルカリ性を呈する化合物であればどのようなものでも使えるが、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等のアルカリ金属の水酸化物、アンモニア水、アンモニアガス等のアンモニウム化合物、アルキルアミン、エタノールアミン等のアミン化合物等が挙げられ、微粒子酸化チタンに不純物として残留しないアンモニウム化合物やアミン化合物が好ましい。また、pH調整に用いる酸としては、塩酸、硫酸、硝酸等の鉱酸、酢酸等の有機酸を用いることができ、微粒子酸化チタンに不純物として残留しない塩酸や有機酸が好ましい。
【0015】
また、水系溶媒に、(オキシ)塩化チタンとアルカリとカルボン酸、多価カルボン酸及びそれらの塩から選ばれる少なくとも一種とを混合して、(オキシ)塩化チタンを加水分解するのが好ましく、カルボン酸、多価カルボン酸及びそれらの塩から選ばれる少なくとも一種を水系溶媒に混合した後に、(オキシ)塩化チタンを混合してもよいし(オキシ)塩化チタンとアルカリを混合してもよく、(オキシ)塩化チタンとアルカリとカルボン酸、多価カルボン酸及びそれらの塩から選ばれる少なくとも一種とを同時並行的に混合してもよい。前記のカルボン酸、多価カルボン酸はカルボキシル基を有する化合物であり、制限なく用いることができるが、例えば、次のようなものを用いることができ、特にクエン酸及び/又はその塩を用いるのが好ましい。
(a)カルボン酸、例えば、ギ酸、酢酸、プロピオン酸。
(b)ポリ(多価)カルボン酸、特にジカルボン酸、トリカルボン酸、例えば、シュウ酸、フマル酸。
(c)ヒドロキシポリ(多価)カルボン酸、特にヒドロキシジ−又はヒドロキシトリ−カルボン酸、例えばリンゴ酸、クエン酸又はタルトロン酸。
(d)(ポリヒドロキシ)モノカルボン酸、例えばグルコヘプトン酸又はグルコン酸。
(e)ポリ(多価)(ヒドロキシカルボン酸)、例えば酒石酸。
(f)ジカルボキシルアミノ酸及びその対応するアミド、例えばアスパラギン酸、アスパラギン又はグルタミン酸。
(g)ヒドロキシル化され又はヒドロキシル化されていないモノカルボキシルアミノ酸、例えばリジン、セリン又はトレオニン。
カルボン酸塩としては、どのような塩でも制限なく用いることができるが、例えばナトリウム、カリウム等のアルカリ金属塩、アンモニウム塩等を用いることができる。カルボン酸、多価カルボン酸及びその塩の量は、微粒子酸化チタンに対する質量%で表して、0.5〜10質量%が好ましく、1〜5質量%がより好ましい。上記範囲であるとカルボン酸等の添加により生成した酸化チタンを任意の結晶形にコントロールし易く、粒子形状が粒状になり易い。上記範囲より多くしても、更なるカルボン酸等の添加による効果が得られ難い。
【0016】
(1)同時中和加水分解法
この方法は、50〜110℃の温度に加熱した水系溶媒を用意し、これにpHが0〜12の範囲になるように(オキシ)塩化チタンとアルカリを混合して、(オキシ)塩化チタンを加水分解する方法である。(オキシ)塩化チタンとアルカリは同時並行的に添加するのが好ましいが、断続的に添加してもよい。添加時間は適宜設定することができ、10分〜5時間程度が適当である。pHとしては、凝集程度を低くすることができるという点で、0〜2あるいは2〜7あるいは7〜9あるいは9〜12から一の範囲を選択するのが好ましい。
【0017】
(2)酸性下加水分解法
この方法は、(オキシ)塩化チタンを含む水系溶媒を用意し、このpHを1以下の範囲に調整した後、50〜110℃の温度に加熱して、(オキシ)塩化チタンを加水分解する方法である。pH調整には、(オキシ)塩化チタンの量で制御することができ、また、上記の酸を添加してもよい。好ましいpH範囲は−1〜1であり、通常のpH計では測定できない0以下であってもよい。加熱時間は適宜設定することができ、10分〜5時間程度が適当である。
【0018】
(3)アルカリ添加加水分解法
この方法は、(オキシ)塩化チタンを含む水系溶媒を用意し、このpHが0〜9の範囲になるようにアルカリを混合した後、50〜110℃の温度に加熱して、(オキシ)塩化チタンを加水分解する方法である。pH0〜9の調整は、アルカリを混合して行い、pHとしては、凝集程度を低くすることができるという点で、0〜2あるいは2〜7あるいは7〜9から一の範囲を選択するのが好ましい。加熱時間は適宜設定することができ、10分〜5時間程度が適当である。
【0019】
次に2段で加水分解を行う方法であるが、具体的には、前記の(1)〜(3)の方法で第一加水分解を行った後に、再度(1)〜(3)のそれぞれ一の方法を行って第二加水分解を行う方法である。温度、時間、pHや、カルボン酸等の添加などのそれぞれの加水分解条件は、前記の条件に沿って行うことができる。第一加水分解した生成物と第二加水分解した生成物との質量比が1:99〜99:1の範囲であることが好ましく、2:98〜90:10の範囲であることがより好ましく、3:97〜70:30の範囲であることがより好ましく、5:95〜50:50の範囲であることが更に好ましい。
また、第一加水分解反応後に続いて第二加水分解を行って、第一加水分解と第二加水分解の反応を一つの反応槽内で行うのが好ましい。一方、第一加水分解反応後に生成物をろ過し、必要に応じて洗浄した後に、水系溶媒にレパルプし、次いで第二加水分解反応を行うこともでき、この場合、反応槽は二槽使用することになる。
更に、第一加水分解した生成物の粒子表面に、第二加水分解した生成物が析出し成長させるのが好ましく、粒子成長させることにより凝集粒子の形成を抑制することができる。しかしながら、第一加水分解の生成物と第二加水分解の生成物とは別々の生成物を形成しても差し支えない。
【0020】
(4)同時中和加水分解法→同時中和加水分解法
この方法は、50〜110℃の温度に加熱した水系溶媒を用意し、このpHを0〜12の範囲になるように(オキシ)塩化チタンとアルカリを混合して、(オキシ)塩化チタンを第一加水分解する。次いで、第一加水分解した生成物を含み50〜110℃の温度に調整した水系溶媒を準備し、このpHを0〜12の範囲になるように(オキシ)塩化チタンとアルカリを混合して、(オキシ)塩化チタンを第二加水分解する。つまり、第二加水分解では、前記第一加水分解した生成物(一段目の(オキシ)塩化チタンの加水分解で得られる生成物)を含み50〜110℃の温度に調整した水系溶媒に対して(オキシ)塩化チタンとアルカリを再度、pHを0〜12の範囲に維持しながら混合して、二段目の(オキシ)塩化チタンの加水分解を行う。
【0021】
(5)同時中和加水分解法→酸性下加水分解法
この方法は、50〜110℃の温度に加熱した水系溶媒を用意し、このpHを0〜12の範囲になるように(オキシ)塩化チタンとアルカリを混合して、(オキシ)塩化チタンを第一加水分解する。次いで、第一加水分解した生成物を含む水系溶媒を準備し、これに(オキシ)塩化チタンを混合してpHを1以下の範囲に調整した後、50〜110℃の温度に調整して、(オキシ)塩化チタンを第二加水分解する。
【0022】
(6)同時中和加水分解法→アルカリ添加加水分解法
この方法は、50〜110℃の温度に加熱した水系溶媒を用意し、このpHを0〜12の範囲になるように(オキシ)塩化チタンとアルカリを混合して、(オキシ)塩化チタンを第一加水分解する。次いで、第一加水分解した生成物を含む水系溶媒を準備し、これに(オキシ)塩化チタンを混合し、次いで、水系溶媒のpHを0〜9の範囲になるようにアルカリを混合した後、50〜110℃の温度に調整して、(オキシ)塩化チタンを第二加水分解する。
【0023】
(7)酸性下加水分解法→同時中和加水分解法
この方法は、(オキシ)塩化チタンを含む水系溶媒を用意し、このpHを1以下の範囲に調整した後、50〜110℃の温度に加熱して、(オキシ)塩化チタンを第一加水分解する。次いで、第一加水分解した生成物を含み50〜110℃の温度に調整した水系溶媒を準備し、このpHが0〜12の範囲になるように(オキシ)塩化チタンとアルカリとを混合して、(オキシ)塩化チタンを第二加水分解する。
【0024】
(8)酸性下加水分解法→酸性下加水分解法
この方法は、(オキシ)塩化チタンを含む水系溶媒を用意し、このpHを1以下の範囲に調整した後、50〜110℃の温度に加熱して、(オキシ)塩化チタンを第一加水分解する。次いで、第一加水分解した生成物を含む水系溶媒を準備し、これに(オキシ)塩化チタンを混合してpHを1以下の範囲に調整した後、50〜110℃の温度に調整して、(オキシ)塩化チタンを第二加水分解する。
【0025】
(9)酸性下加水分解法→アルカリ添加加水分解法
この方法は、(オキシ)塩化チタンを含む水系溶媒を用意し、このpHを1以下の範囲に調整した後、50〜110℃の温度に加熱して、(オキシ)塩化チタンを第一加水分解する。次いで、第一加水分解した生成物を含む水系溶媒を準備し、これに(オキシ)塩化チタンを混合し、次いで、水系溶媒のpHを0〜9の範囲になるようにアルカリを混合した後、50〜110℃の温度に調整して、(オキシ)塩化チタンを第二加水分解する。
【0026】
(10)アルカリ添加加水分解法→同時中和加水分解法
この方法は、(オキシ)塩化チタンを含む水系溶媒を用意し、このpHが0〜9の範囲になるようにアルカリを混合した後、50〜110℃の温度に加熱して、(オキシ)塩化チタンを第一加水分解する。次いで、第一加水分解した生成物を含み50〜110℃の温度に調整した水系溶媒を用意し、このpHが0〜12の範囲になるように(オキシ)塩化チタンとアルカリとを混合して、(オキシ)塩化チタンを第二加水分解する。
【0027】
(11)アルカリ添加加水分解法→酸性下加水分解法
この方法は、(オキシ)塩化チタンを含む水系溶媒を用意し、このpHが0〜9の範囲になるようにアルカリを混合した後、50〜110℃の温度に加熱して、(オキシ)塩化チタンを第一加水分解する。次いで、第一加水分解した生成物を含む水系溶媒を準備し、これに(オキシ)塩化チタンを混合してpHを1以下の範囲に調整した後、50〜110℃の温度に調整して、(オキシ)塩化チタンを第二加水分解する。
【0028】
(12)アルカリ添加加水分解法→アルカリ添加加水分解法
この方法は、(オキシ)塩化チタンを含む水系溶媒を用意し、このpHが0〜9の範囲になるようにアルカリを混合し、次いで、水系溶媒を50〜110℃の温度に加熱して、(オキシ)塩化チタンを第一加水分解する。次いで、第一加水分解した生成物を含む水系溶媒を準備し、これに(オキシ)塩化チタンを混合し、次いで、水系溶媒のpHを0〜9の範囲になるようにアルカリを混合した後、50〜110℃の温度に調整して、(オキシ)塩化チタンを第二加水分解する。
【0029】
前記のいずれかの方法で製造した微粒子酸化チタンを含む水系溶媒にアルカリ又は酸を添加してpHを0〜9の範囲に調整し、水系溶媒の温度を50〜90℃に保持して熟成してもよい。熟成時間は10分〜5時間程度である。熟成することにより微粒子酸化チタンの結晶性を高め、凝集程度を抑制したり、一次粒子径(BET径)を適当な範囲に調整したりすることもできる。また、前記のいずれかの方法で製造した微粒子酸化チタンを含む水系溶媒にアルカリ又は酸を添加してpHを6.0〜8.0の範囲に調整し、次いで、ろ過し、乾燥することにより、微粒子酸化チタン粉末を製造することができる。
また、前記のいずれかの方法で製造した微粒子酸化チタンを焼成してもよい。焼成温度は150〜800℃程度が好ましく、バリウム、リチウム等との反応性がよく比表面積の低下が生じ難いことから150〜600℃の範囲がより好ましい。焼成時間は適宜設定することができ、1〜10時間程度が適当である。焼成の雰囲気は、大気等の酸素ガス含有雰囲気下、窒素等の不活性ガス雰囲気下で行うことができる。
【0030】
また、得られた微粒子酸化チタンを、必要に応じて公知の方法により湿式粉砕、整粒を行ってもよく、その後更に従来の顔料用二酸化チタンや微粒子酸化チタンで通常行われているのと同様にして、粒子表面をアルミニウム、ケイ素、ジルコニウム、スズ、チタニウム、亜鉛から成る群より選ばれた少なくとも1種の含水酸化物、水酸化物や酸化物等で被覆してもよい。被覆処理量としては、基体の微粒子酸化チタンに対して全量で1〜50質量%が好ましく、より好ましくは5〜30質量%である。また、得られた微粒子酸化チタンを触媒担体、触媒、光触媒、吸着剤として用いる場合、通常の方法により触媒成分、例えば、白金、タングステン、銅、銀、金等の金属や化合物を担持してもよい。
【0031】
また、微粒子酸化チタンの表面に、脂肪酸やその塩、アルコール、アルコキシシラン化合物、アミノアルコキシシラン化合物等の有機化合物を被覆処理してもよい。アルコキシシラン化合物及び/又はアミノアルコキシシラン化合物等は、加水分解された状態で被覆されてもよい。有機化合物の被覆処理量としては、基体の微粒子酸化チタンに対して全量で1〜50質量%好ましく、より好ましくは5〜30質量%である。この範囲は、被覆処理量が1質量%未満と少なすぎると所望の耐光性などの効果が得られず、逆に被覆処理量が50質量%を超えるように多すぎると凝集が生じるばかりでなく、経済的にも不利であるという問題を避けることができる点で好ましい。なお、被覆処理する有機化合物は用途、目的に応じて二種類以上を併用してもよい。アルコキシシラン化合物の例としては、ビニルトリメトキシシラン、メチルトリメトキシシラン、プロピルトリメトキシシラン、i−ブチルトリメトキシシラン、n−ブチルトリメトキシシラン、n−ヘキシルトリメトキシシラン、オクチルトリメトキシシラン、オクチルトリエトキシシラン、n−デシルトリメトキシシラン、フェニルトリメトキシシラン等を挙げることができる。アミノアルコキシシラン化合物の例としてγ−アミノプロピルトリメトキシシラン、γ−アミノプロピルトリエトキシシラン、N−β(アミノエチル)γ−アミノプロピルトリメトキシシラン等を挙げることができる。
【0032】
微粒子酸化チタンに有機化合物を被覆するには、例えば(1)微粒子酸化チタンをヘンシェルミキサーなどの高速撹拌機に入れて撹拌しながら、有機化合物、またはこれらの水あるいはアルコール溶液を滴下、あるいはスプレーにより添加し、均一になるように撹拌した後、乾燥する乾式法、(2)微粒子酸化チタンを水中に分散させたスラリーに、撹拌しながら有機化合物、またはこれらの水あるいはアルコール溶液を添加し、充分に撹拌した後、ろ過、洗浄、乾燥する湿式方法、のいずれを用いることができる。
【0033】
本発明の微粒子酸化チタンと少なくとも一種の金属元素(チタンを除く)との反応生成物を含む複合酸化物は、微細であって結晶性がよい。金属元素には、典型金属元素(アルカリ金属元素(第1族元素)、アルカリ土類金属元素(第2族元素)、第12族元素、第13族元素、第14族元素、第15族元素)、遷移金属元素(チタンをのぞく)から選ばれる少なくとも一種が挙げられる。例えば、チタン酸リチウムはリチウム二次電池の負極活物質として、チタン酸ナトリウムは各種チタン酸化合物製造用の原料・中間体として、チタン酸カリウムはフィラーとして有用である。また、チタン酸カルシウム、チタン酸ストロンチウム、チタン酸バリウムは誘電体等として有用である。そのほか、例えば、チタン酸アルミニウム、チタン酸アルミニウムマグネシウム等は耐熱性材料として、チタン酸鉛等は圧電体として有用である。これらの複合酸化物は、本発明の微粒子酸化チタンと少なくとも一種の金属化合物とを混合し、必要に応じて焼成して製造することができる。
【実施例】
【0034】
以下に本発明の実施例を示すが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
【0035】
実施例1
TiOとして100g/リットルの四塩化チタン水溶液を室温に保持しながら、TiOに対して3質量%の無水クエン酸を添加し、30分間撹拌した(pHは0以下であった)。これを92℃に昇温し、30分間撹拌保持して加水分解した。その後、70℃まで冷却し、アンモニア水でpH=6.5まで中和した。得られた酸化チタン含有スラリーをろ過洗浄し、乾燥して、高純度微粒子酸化チタン粉末(試料A)を得た。
【0036】
実施例2
実施例1の酸化チタン粉末を電気炉で500℃の温度で2時間焼成して、高純度微粒子酸化チタン粉末(試料B)を得た。
【0037】
実施例3
四塩化チタン水溶液にアンモニア水を添加してpH=3.4とし、これを65℃に昇温し、30分間撹拌保持して第一加水分解した。次いで、質量比で、TiOとして第一加水分解した生成物:TiOとして第二加水分解した生成物=5:95となるように四塩化チタン水溶液を添加し、混合した。次いで、70℃に昇温し、アンモニア水を添加してpH=6.7とし、30分間撹拌保持して第二加水分解した。得られた酸化チタン含有スラリーをろ過洗浄し、乾燥して、高純度微粒子酸化チタン粉末(試料C)を得た。
【0038】
実施例4
70℃に加熱したイオン交換水1リットル中に、TiOとして100g分の四塩化チタン水溶液とアンモニア水をそれぞれ60分かけて同時に添加し、pH=0.8〜1.2を保持して加水分解した。得られた酸化チタン含有スラリーをろ過洗浄し、乾燥して、高純度微粒子酸化チタン粉末(試料D)を得た。
【0039】
実施例5
実施例4の酸化チタン粉末を電気炉で400℃の温度で2時間焼成して高純度微粒子酸化チタン粉末(試料E)を得た。
【0040】
実施例6
60℃に加熱したイオン交換水1リットル中に、TiOとして100g分の四塩化チタン水溶液とアンモニア水をそれぞれ60分かけて同時に添加し、pH=5.8〜6.2を保持して加水分解した。得られた酸化チタン含有スラリーをろ過洗浄し、乾燥して、高純度微粒子酸化チタン粉末(試料F)を得た。
【0041】
実施例7
実施例6の酸化チタン粉末を電気炉で370℃の温度で2時間焼成して、高純度微粒子酸化チタン粉末(試料G)を得た。
【0042】
実施例8
実施例6の酸化チタン粉末を電気炉で410℃の温度で2時間焼成して、高純度微粒子酸化チタン粉末(試料H)を得た。
【0043】
実施例9
実施例6の酸化チタン粉末を電気炉で530℃の温度で2時間焼成して、高純度微粒子酸化チタン粉末(試料I)を得た。
【0044】
実施例10
60℃に加熱したイオン交換水1リットル中に、TiOとして100g分の四塩化チタン水溶液と水酸化ナトリウム水溶液をそれぞれ60分かけて同時に添加し、pH=10.8〜11.2を保持して加水分解した。得られた酸化チタン含有スラリーをろ過洗浄し、乾燥して微粒子酸化チタン粉末(試料J)を得た。
【0045】
実施例11
60℃に加熱したイオン交換水1リットル中に、TiOとして50g分の四塩化チタン水溶液とアンモニア水をそれぞれ60分かけて同時に添加し、pH=0.8〜1.2を保持して第一加水分解した。次いで、TiOとして50g分の四塩化チタン水溶液を添加混合し、pH1以下に調整した。次いで、これを92℃に昇温し、30分間撹拌保持して第二加水分解した。得られた酸化チタン含有スラリーをアンモニア水でpH=6.5まで中和後、ろ過洗浄し、乾燥して、高純度微粒子酸化チタン粉末(試料K)を得た。この反応は、すべて一つの反応槽内で実施した。
【0046】
実施例12
60℃に加熱したイオン交換水1リットル中に、TiOとして50g分の四塩化チタン水溶液とアンモニア水をそれぞれ60分かけて同時に添加し、pH=5.8〜6.2を保持して第一加水分解した。次いで、TiOとして50g分の四塩化チタン水溶液を添加混合し、pH1以下に調整した。次いで、これを92℃に昇温し、30分間撹拌保持して第二加水分解した。得られた酸化チタン含有スラリーをアンモニア水でpH=6.5まで中和後、ろ過洗浄し、乾燥して、高純度微粒子酸化チタン粉末(試料L)を得た。この反応は、すべて一つの反応槽内で実施した。
【0047】
実施例13
60℃に加熱したイオン交換水1リットル中に、TiOとして50g分の四塩化チタン水溶液とアンモニア水をそれぞれ60分かけて同時に添加し、pH=7.8〜8.2を保持して第一加水分解した。次いで、TiOとして50g分の四塩化チタン水溶液を添加混合し、pH1以下に調整した。次いで、これを92℃に昇温し、30分間撹拌保持して第二加水分解した。得られた酸化チタン含有スラリーをアンモニア水でpH=6.5まで中和後、ろ過洗浄し、乾燥して、高純度微粒子酸化チタン粉末(試料M)を得た。この反応は、すべて一つの反応槽内で実施した。
【0048】
実施例14
TiOとして30g/リットルの四塩化チタン水溶液1リットルを室温に保持しながら、TiOに対して3質量%の無水クエン酸を添加し、30分間撹拌した(pHは0以下であった)。これを92℃に昇温し、30分間撹拌保持して第一加水分解した。次いで、92℃の温度下TiOとして70g分の四塩化チタン水溶液とアンモニア水をそれぞれ60分かけて同時に添加し、pH=0.8〜1.2を保持して第二加水分解した。得られた酸化チタン含有スラリーをアンモニア水でpH=6.5まで中和後、濾過洗浄し、乾燥して高純度微粒子酸化チタン粉末(試料N)を得た。この反応は、すべて一つの反応槽内で実施した。
【0049】
実施例15
実施例14の酸化チタン粉末を電気炉で400℃の温度で2時間焼成して高純度微粒子酸化チタン粉末(試料O)を得た。
【0050】
実施例16
TiOとして50g/リットルの四塩化チタン水溶液1リットルを室温に保持しながら、TiOに対して3質量%の無水クエン酸を添加し、30分間撹拌した(pHは0以下であった)。これを92℃に昇温し、30分間撹拌保持して第一加水分解した。次いで、92℃の温度下TiOとして50g分の四塩化チタン水溶液とアンモニア水をそれぞれ60分かけて同時に添加し、pH=0.8〜1.2を保持して第二加水分解した。得られた酸化チタン含有スラリーをアンモニア水でpH=6.5まで中和後、ろ過洗浄し、乾燥して高純度微粒子酸化チタン粉末(試料P)を得た。この反応は、すべて一つの反応槽内で実施した。
【0051】
実施例17
TiOとして70g/リットルの四塩化チタン水溶液1リットルを室温に保持しながら、TiOに対して3質量%の無水クエン酸を添加し、30分間撹拌した(pHは0以下であった)。これを92℃に昇温し、30分間撹拌保持して第一加水分解した。次いで、92℃の温度下TiOとして30g分の四塩化チタン水溶液とアンモニア水をそれぞれ60分かけて同時に添加し、pH=0.8〜1.2を保持して第二加水分解した。得られた酸化チタン含有スラリーをアンモニア水でpH=6.5まで中和後、ろ過洗浄し、乾燥して高純度微粒子酸化チタン粉末(試料Q)を得た。この反応は、すべて一つの反応槽内で実施した。
【0052】
実施例18
TiOとして50g/リットルの四塩化チタン水溶液1リットルを室温に保持しながら、TiOに対して3質量%の無水クエン酸を添加し、30分間撹拌した(pHは0以下であった)。これを92℃に昇温し、30分間撹拌保持して第一加水分解した。次いで、92℃の温度下TiOとして50g分の四塩化チタン水溶液と水酸化ナトリウム水溶液をそれぞれ60分かけて同時に添加し、pH=10.8〜11.2を保持して第二加水分解した。得られた酸化チタン含有スラリーを塩酸でpH=6.5まで中和後、ろ過洗浄し、乾燥して高純度微粒子酸化チタン粉末(試料R)を得た。この反応は、すべて一つの反応槽内で実施した。
【0053】
実施例19
60℃に加熱したイオン交換水1リットル中に、TiOとして50g分の四塩化チタン水溶液とアンモニア水をそれぞれ30分かけて同時に添加し、pH=5.8〜6.2を保持して第一加水分解した。次いで、TiOとして50g分の四塩化チタン水溶液とアンモニア水をそれぞれ30分かけて同時に添加し、pH=0.8〜1.2を保持して第二加水分解した。得られた酸化チタン含有スラリーをアンモニア水でpH=6.5まで中和後、ろ過洗浄し、乾燥して、高純度微粒子酸化チタン粉末(試料S)を得た。この反応は、すべて一つの反応槽内で実施した。
【0054】
実施例20
60℃に加熱したイオン交換水1リットル中に、TiOとして50g分の四塩化チタン水溶液とアンモニア水をそれぞれ30分かけて同時に添加し、pH=0.8〜1.2を保持して第一加水分解した。次いで、TiOとして50g分の四塩化チタン水溶液とアンモニア水をそれぞれ30分かけて同時に添加し、pH=5.8〜6.2を保持して第二加水分解した。得られた酸化チタン含有スラリーをアンモニア水でpH=6.5まで中和後、ろ過洗浄し、乾燥して、高純度微粒子酸化チタン粉末(試料T)を得た。この反応は、すべて一つの反応槽内で実施した。
【0055】
実施例21
TiOとして50g/リットルの四塩化チタン水溶液1リットルを室温に保持しながら、TiOに対して3質量%の無水クエン酸を添加し、30分間撹拌した(pHは0以下であった)。これを92℃に昇温し、30分間撹拌保持して第一加水分解した。次いで、TiOとして50g分の四塩化チタン水溶液を添加混合し、pH1以下に調整した。次いで、これを92℃に昇温し、30分間撹拌保持して第二加水分解した。得られた酸化チタン含有スラリーをアンモニア水でpH=6.5まで中和後、ろ過洗浄し、乾燥して、高純度微粒子酸化チタン粉末(試料U)を得た。この反応は、すべて一つの反応槽内で実施した。
【0056】
実施例22
TiOとして30g/リットルの四塩化チタン水溶液1リットルを室温に保持しながら、TiOに対して3質量%の無水クエン酸を添加し、30分間撹拌した(pHは0以下であった)。これを92℃に昇温し、30分間撹拌保持して第一加水分解した。次いで、TiOとして70g分の四塩化チタン水溶液を添加混合し、pH1以下に調整した。次いで、これを92℃に昇温し、30分間撹拌保持して第二加水分解した。得られた酸化チタン含有スラリーをアンモニア水でpH=6.5まで中和後、ろ過洗浄し、乾燥して、高純度微粒子酸化チタン粉末(試料V)を得た。この反応は、すべて一つの反応槽内で実施した。
【0057】
実施例23
四塩化チタン水溶液にアンモニア水を添加してpH=7.0とし、これを70℃に昇温し、30分間撹拌保持後、90℃に昇温し、120分間撹拌保持した。得られた酸化チタン含有スラリーをろ過洗浄し、乾燥して、高純度微粒子酸化チタン粉末(試料W)を得た。
【0058】
比較例1
室温に保持したアンモニア水中に、60分かけて四塩化チタン水溶液を加え、pH=6.5として加水分解した。得られた酸化チタン含有スラリーをアンモニア水でpH=6.5まで中和後、ろ過洗浄し、乾燥して高純度微粒子酸化チタン粉末(試料a)を得た。
【0059】
比較例2
30℃に加熱したイオン交換水1リットル中に、TiOとして100g分の四塩化チタン水溶液とアンモニア水をそれぞれ60分かけて同時に添加し、pH=5.8〜6.2を保持して加水分解した。得られた酸化チタン含有スラリーをろ過洗浄し、乾燥して高純度微粒子酸化チタン粉末(試料b)を得た。
【0060】
評価1
BET比表面積(m/g):流動式比表面積自動測定装置(商品名FlowSorbII 2300、島津製作所社製)を用いて、窒素吸着法により求めた。このとき、脱離は窒素ガス流通下、室温の温度条件で行い、吸着は77Kの温度条件で行った。このBET比表面積から式:d=6/(ρ・a)より、一次粒子径(BET径)を算出した。
【0061】
評価2
結晶形及び結晶子径:X線回折装置(商品名UltimaIV、リガク社製)を用いて、X線管球:Cu、管電圧:40kV、管電流:40mA、発散スリット:1/2°、散乱スリット:8mm、受光スリット:開放、サンプリング幅:0.020度、走査速度:10.00度/分の条件でX線回折スペクトルを測定し、このスペクトルから結晶形及び結晶子径を求めた。
【0062】
評価3
細孔容積(ml/g):自動比表面積/細孔分布測定装置(商品名BELSORP−miniII、日本ベル社製)を用いて、BJH法により細孔径1〜100nmの範囲について求めた。
【0063】
評価4
評価用スラリー作製:酸化チタン乾燥粉末3gに純水30ml及びポリカルボン酸系分散剤を酸化チタンに対して、3質量%を加えたスラリーを作製する。このスラリー及びメディアとして0.09φmmジルコンビーズ60gを容積70mlのマヨネーズ瓶に入れ、ペイントシェーカーで60分間分散させた。
凝集粒子径(nm):レーザー回折・散乱式粒子径分布測定装置(日機装社製NanotracUPA)を用いて測定した。測定された粒度分布における50%累積質量粒度分布径(D50)を凝集粒子径とした。
【0064】
評価1〜4の結果を表1に示す。また、実施例の試料(A〜I、K〜Q)の電子顕微鏡写真を図1図16に示す。実施例1〜23で製造した試料A〜Wは、一次粒子径が小さく、凝集粒子径も小さく、それらの比(凝集粒子径/BET径)が小さいものであった。また、TiOの純度も99.9質量%以上であり、十分高いこと、細孔容積も比較的大きいことがわかった。なお、微粒子酸化チタンに含まれる不純物の測定は、ICP分析で行った。
【0065】
【表1】

注)表中、Aはアナタース形結晶を示し、Rはルチル形結晶を示す。A/rはアナタースリッチであることを示す。R/Aはアナタース及びルチルが同程度であることを示す。R/aはルチルリッチであることを示す。ルチル%は、X線回折のルチルピークとアナタースピークからそれぞれの含有量を推定し、次の式から算出する。
ルチル%=ルチル含有量/(ルチル含有量+アナタース含有量)*100
なお、空白部分は未測定を表し、「−」は測定不可のものを示す。
【0066】
チタン酸リチウムの製造
Li/Ti比を0.81に設定し、SUS製容器に所定量のLiOH・HOを秤量し、濃度が4.5mol/Lとなるように純水を張り込み水溶液とした。その後、常温にてスラリー固形分が60g/Lとなるよう試料A〜Wのそれぞれの粉末を投入し、30分程撹拌させて分散させた。その後、スプレードライ(Yamato社製:ノズル式)で噴霧乾燥を行い、乾燥粉を得た。(噴霧条件:入口温度190℃、出口温度85℃、Air圧0.25MPa)
得られた乾燥粉を所定量るつぼに仕込み、マッフル炉にて400〜600℃の範囲で焼成を行った。得られた試料をX線回折、及びTG−DTA熱分析などの評価を行った結果、比較的低い温度域でLiTi12への相変化・結晶化が始まり、リチウムとの反応性がよいことがわかった。
【0067】
チタン酸バリウムの製造
試料A〜Wのそれぞれの微粒子酸化チタン粉末100gとイオン交換水1リットルとをビーカーに入れ、水性懸濁液とした。次いで、この水性懸濁液と市販の水酸化バリウム(Ba(OH)・8HO)(Ba/Tiモル比=1.5)を3リットルのオートクレーブに入れた後、加熱し、150℃の温度で1時間保持して飽和水蒸気圧下で水熱処理を行った。次いで、得られた生成物を吸引濾過器で濾過し、洗浄し、105℃の温度で乾燥してチタン酸バリウム粉末を得た。
【0068】
更に、前記の方法で得た乾燥物10gを550℃の温度で1時間焼成してチタン酸バリウム粉末を得た。
【0069】
得られたチタン酸バリウム試料をX線回折、及びTG−DTA熱分析などの評価を行った結果、それぞれの試料は結晶性がよく、一次粒子径が小さい化合物であって、バリウムとの反応性がよいことがわかった。
【産業上の利用可能性】
【0070】
本発明の微粒子酸化チタンは、高純度の酸化チタンであり、凝集程度も小さいことから、バリウム、リチウム等との反応性がよく、チタン複合酸化物を製造するための原料、触媒担体、触媒、光触媒、吸着剤等として好適である。
図1
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