特許第6607411号(P6607411)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6607411燃料電池の単セル構造、及び該燃料電池単セルを積層した燃料電池のスタック構造
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6607411
(24)【登録日】2019年11月1日
(45)【発行日】2019年11月20日
(54)【発明の名称】燃料電池の単セル構造、及び該燃料電池単セルを積層した燃料電池のスタック構造
(51)【国際特許分類】
   H01M 8/0273 20160101AFI20191111BHJP
   H01M 8/0258 20160101ALI20191111BHJP
   H01M 8/2483 20160101ALI20191111BHJP
   H01M 8/10 20160101ALN20191111BHJP
【FI】
   H01M8/0273
   H01M8/0258
   H01M8/2483
   !H01M8/10 101
【請求項の数】9
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2017-548590(P2017-548590)
(86)(22)【出願日】2015年11月6日
(86)【国際出願番号】JP2015081286
(87)【国際公開番号】WO2017077634
(87)【国際公開日】20170511
【審査請求日】2018年4月25日
(73)【特許権者】
【識別番号】000003997
【氏名又は名称】日産自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100102141
【弁理士】
【氏名又は名称】的場 基憲
(74)【代理人】
【識別番号】100137316
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 宏
(72)【発明者】
【氏名】市原 敬士
(72)【発明者】
【氏名】柳沼 基
(72)【発明者】
【氏名】安武 明
【審査官】 守安 太郎
(56)【参考文献】
【文献】 国際公開第2014/174959(WO,A1)
【文献】 国際公開第2011/158551(WO,A1)
【文献】 国際公開第2014/174944(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 8/02
H01M 8/24
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
膜電極接合体と、
該膜電極接合体を支持する低剛性フレームと、
該低剛性フレームと上記膜電極接合体を挟持する一対のセパレータと、
該一対のセパレータ間の上記膜電極接合体にガスを供給するガス流路と、
上記低剛性フレーム及び上記一対のセパレータに形成され上記ガス流路にガスを供給するマニホールド部と、
該マニホールド部近傍で上記低剛性フレームを拘束する拘束リブと、
該拘束リブよりも上記マニホールド部側に突出する上記低剛性フレームの突出部と、 該突出部に形成され上記マニホールド部から上記ガス流路にガスを供給するガス流通部と、を備え
上記ガス流通部が、上記低剛性フレームを貫通する貫通孔であることを特徴とする燃料電池の単セル構造。
【請求項2】
上記拘束リブ間に上記ガスが流通するチャンネルが区画形成されることを特徴とする請求項1に記載の燃料電池の単セル構造。
【請求項3】
上記ガス流通部の形状が異方性を有しかつ長径方向がガス流通方向であることを特徴とする請求項に記載の燃料電池の単セル構造。
【請求項4】
上記ガス流通部の形状が楕円形であることを特徴とする請求項に記載の燃料電池の単セル構造。
【請求項5】
上記低剛性フレームの突出部が、セパレータの拘束リブよりマニホールド部側に形成されたセパレータ開放端部より、更にマニホールド部側に突出したものであることを特徴とする請求項1〜のいずれか1つの項に記載の燃料電池の単セル構造。
【請求項6】
上記セパレータの開放端部よりも、さらにマニホールド側に突出した突出長さXが、下記(1)式を満たすことを特徴とする請求項に記載の燃料電池の単セル構造。

X ≧ δ(1/sinθ−1/tanθ)+部品公差+部品積層公差 ・・・(1)
但し、(1)式中、δは低剛性フレームの変形量を表し、θはフレームの変形角を表す。
【請求項7】
上記低剛性フレームの上記マニホールド部に対応する開放端部から拘束リブの端部までの長さが、上記セパレータの上記マニホールド部に対応する開放端部から拘束リブの端部までの長さよりも長いことを特徴とする請求項1〜のいずれか1つの項に記載の燃料電池の単セル構造。
【請求項8】
上記マニホールド部に対応するセパレータの開放端部よりも上記膜電極接合体側の突出部に上記ガス流通部を備えることを特徴とする請求項1〜のいずれか1つの項に記載の燃料電池の単セル構造。
【請求項9】
膜電極接合体と、
該膜電極接合体を支持する低剛性フレームと、
該低剛性フレームと上記膜電極接合体を挟持する一対のセパレータと、
該一対のセパレータ間の上記膜電極接合体にガスを供給するガス流路と、
上記低剛性フレーム及び上記一対のセパレータに形成され上記ガス流路にガスを供給するマニホールド部と、
上記マニホールド部近傍で上記低剛性フレームを拘束する拘束リブと、
該拘束リブよりも上記マニホールド部側に突出する上記低剛性フレームの突出部と、
該突出部に形成され上記マニホールド部から上記ガス流路にガスを供給するガス流通部と、を備え、
上記ガス流通部が、上記低剛性フレームを貫通する貫通孔である単セルを複数積層したことを特徴とする燃料電池のスタック構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、燃料電池の単セル構造に係り、更に詳細には、ロバスト性を向上させた燃料電池単セル、及び該燃料電池単セルを積層した燃料電池のスタック構造に関する。
【背景技術】
【0002】
燃料電池単セルは、例えば、電解質膜の一方の面にアノード側電極、他方の面にカソード側電極を対設した膜電極接合体(MEA;Membrane Electrode Assembly)をフレームによって支持し、上記膜電極接合体及び上記フレームを一対のセパレータで挟持することで形成される。そして、上記燃料電池単セルは、所定数を積層した燃料電池スタックとして使用される。
【0003】
上記燃料電池単セルのアノード側電極に供給された燃料ガス、例えば、主に水素を含有するガスは、電極触媒上で水素がイオン化され、電解質を介してカソード側電極側へと移動する。
そして、カソード側電極には、酸化剤ガス、例えば、主に酸素を含有するガスあるいは空気が供給されて、上記水素イオン、電子及び酸素が反応して水が生成され、その間に生じた電子が外部回路に取り出されて、直流の電気エネルギとして利用される。
【0004】
一般的に、上記燃料電池単セルの外縁部には、上記フレーム及び上記セパレータを積層方向に貫通するマニホールド部が形成される。そして、上記マニホールド部から供給された反応ガスは、一対のセパレータの間を通り、アノード側電極又はカソード側電極に供給される。
【0005】
特許文献1の日本国特開2005−108506号公報には、上記マニホールド部に対応するセパレータの開口端部をシール部材で覆い、反応ガスを流通させる反応ガス連結流路を上記シール部材に形成することが開示されている。
そして、上記反応ガス連結流路が形成されたシール部材によれば、反応ガスの流通が妨げられることがなく、ガス漏れがなく気密性が高い燃料電池を形成できる旨が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】日本国特開2005−108506号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
近年においては、上記膜電極接合体等を薄くすることによって燃料電池単セルの性能向上が図られている。しかし、上記膜電極接合体を支持するフレームを薄くすると、充分な剛性を得ることが困難であり、上記フレームが変形してマニホールド部から供給される反応ガスの流通を妨げることがある。
【0008】
本発明は、このような従来技術の有する課題に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、簡単な構成で反応ガスを膜電極接合体に良好に流通させることができる、ロバスト性を向上させた燃料電池単セル、及び該燃料電池単セルを用いた燃料電池スタックを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者らは、上記目的を達成すべく鋭意検討を重ねた結果、フレームに反応ガス流通させるガス流通部を設けることで、フレームが変形しても反応ガスの流通が妨げられず、上記目的を達成できることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0010】
即ち、本発明の燃料電池の単セル構造は、膜電極接合体と、該膜電極接合体を支持する低剛性フレームと、該低剛性フレーム及び上記膜電極接合体を挟持する一対のセパレータと、を備える。
そして、上記一対のセパレータ間に、上記膜電極接合体にガスを供給するガス流路を有し、該ガス流路にガスを供給するマニホールド部が、上記低剛性フレーム及び上記一対のセパレータに形成される。
さらに、上記ガス流路の上記マニホールド部近傍に、上記低剛性フレームを拘束する拘束リブを有し、上記低剛性フレームが、上記拘束リブよりも上記マニホールド部側に突出する突出部を有し、該突出部に上記マニホールド部から上記ガス流路にガスを供給するガス流通部を備え
上記ガス流通部が、上記低剛性フレームを貫通する貫通孔であることを特徴とする。
【0011】
また、本発明の燃料電池のスタック構造は、上記単セル構造を有する燃料電池を複数積層して成るものである。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、上記低剛性フレームの突出部にガス流通部を備えることとしたため、上記低剛性フレームが変形した場合であっても、一対のセパレータ間のガス流路が閉塞することなく、簡単な構成で反応ガスを良好に流通させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1図2に示す燃料電池単セルを積層して成る燃料電池スタックを説明する分解斜視図(A)及び組立後の斜視図(B)である。
図2】本発明の燃料電池単セルの一実施形態を説明する分解状態の平面図である。
図3図2に示す燃料電池単セルの低剛性フレームの平面図である。
図4】本発明の燃料電池単セルを積層した状態を示す概略図である。
図5図3中、点線で示すガス流路Iの模式的な拡大図である。
図6図6(a)は、本発明の燃料電池単セルの第1の実施形態の反応ガスの流れを説明する図であり、図6(b)は、マニホールド部からガス流路方向を見た概略図である。
図7】本発明の燃料電池単セルの第2の実施形態のガス流路Iの模式的な拡大図である。
図8】本発明の燃料電池単セルの第3の実施形態のガス流路Iの模式的な拡大図である。
図9】本発明の燃料電池単セルの第4の実施形態のガス流路Iの模式的な拡大図である。
図10】本発明の燃料電池単セルの第4の実施形態の突出長Xを説明する図である。
図11】本発明の第5の実施形態のフレームの要部を反応ガスが流通する面を積層方向から見た図である。
図12】本発明の第5の実施形態のフレームの外形を示す図である。
図13】異方性を有する形状のガス流通部を部分的に配置した状態の一例を示す概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
<燃料電池スタック>
本発明の燃料電池スタックFSは、後述する燃料電池単セルCを複数積層して成る。
燃料電池スタックFSは、図1に示すように、燃料電池単セルCを複数積層したものである。そして、図1(a)に示すように、燃料電池単セルCの積層体Aに対し、単セル積層方向の一端部(図1中で右側端部)に、集電板4A及びスペーサ5を介してエンドプレート6Aが設けてあると共に、他端部に、集電板4Bを介してエンドプレート6Bが設けてある。
【0015】
また、燃料電池スタックFSは、積層体Aに対し、燃料電池単セルCの長辺側となる両面(図1中で上下面)に、締結板7A,7Bが設けてあると共に、短辺側となる両面に補強板8A,8Bが設けてある。
【0016】
そして、燃料電池スタックFSは、各締結板7A,7B及び補強板8A,8BをボルトBにより両エンドプレート6A,6Bに連結する。このようにして、燃料電池スタックFSは、図1(b)に示すようなケース一体型構造となり、積層体Aを単セル積層方向に拘束・加圧して個々の燃料電池セルCに所定の接触面圧を加え、ガスシール性や導電性等を良好に維持する。
【0017】
<燃料電池単セル>
本発明の燃料電池単セルについて詳細に説明する。
上記燃料電池単セルは低剛性フレームに支持された膜電極接合体と、上記低剛性フレーム及び上記膜電極接合体を挟持する一対のセパレータを備えるものである。
【0018】
まず、燃料電池単セルを構成する各部材について説明する。
(低剛性フレーム)
上記低剛性フレーム1は、ほぼ一定の厚さの薄板状を成しており、その縁部を除く大部分が膜電極接合体2の厚さよりも薄いものである。上記低剛性フレーム1の厚さは0.01mm以上0.5mm以下である。
【0019】
上記低剛性フレーム1としては樹脂フレームを用いる。該樹脂フレームは、樹脂成形(例えば射出成形)により膜電極接合体2と一体化されている。この実施形態では、膜電極接合体2を中央にして長方形状を成している。
【0020】
上記樹脂フレームを構成する樹脂は、絶縁性を有するものであり、例えば、PET(ポリエチレンテレフタレート)、PEN(ポリエチレンナフタレート)、SPS(シンジオタクチックポリスチレン)、PI(ポリイミド)等が挙げられる。
【0021】
(膜電極接合体)
上記膜電極接合体2は、一般に、MEA(Membrane Electrode Assembly)と呼ばれるものであり、例えば、固体高分子から成る電解質層を空気極層(カソード)と燃料極層(アノード)とで挟持した構造を有している。
この膜電極接合体2は、空気極層に反応ガスである酸化剤ガス(空気)が供給され、燃料極層には反応ガスである燃料ガス(水素)が供給されることで、電気化学反応により発電する。
なお、上記膜電極接合体2は、空気極層と燃料極層の表面に、カーボンペーパや多孔質体等から成るガス拡散層を備えたものであってもよい。
【0022】
(セパレータ)
上記一対のセパレータ3a、3bは、導電性を有するものであり、例えば、ステンレス等の金属板をプレス成形した金属セパレータを用いる。
【0023】
(第1の実施形態)
図2図5は、本発明の燃料電池単セルの実施形態を説明する図である。
【0024】
燃料電池単セルCは、図2に示すように、低剛性フレーム1に支持された膜電極接合体2と、上記低剛性フレーム1及び上記膜電極接合体2を挟持する一対のセパレータ3a、3bを備える。
【0025】
上記低剛性フレーム1及び上記一対のセパレータ3a,3bは、いずれもほぼ同じ縦横寸法を有する略長方形状であり、上記低剛性フレーム1に支持された膜電極接合体2と、一対のセパレータ3a,3bとが重ね合わせられて燃料電池単セルCを構成する。
【0026】
上記燃料電池単セルCは、一対のセパレータ間の膜電極接合体にガスを供給するガス流路Iと、上記低剛性フレーム1及び上記一対のセパレータ3a、3bの両端部に形成されたマニホールド部H1〜H6を有する。上記マニホールド部は上記ガス流路Iにガスを供給する。
【0027】
上記各マニホールド部H1〜H3は、酸化剤ガス供給用(H1)、冷却流体供給用(H2)及び燃料ガス供給用(H3)であり、それぞれ、積層方向に連通してそれぞれ流路を形成する。
また、図2の右側に示す他方の各マニホールド部H4〜H6は、燃料ガス排出用(H4)、冷却流体排出用(H5)及び酸化剤ガス排出用(H6)であり、積層方向に連通してそれぞれ流路を形成する。なお、供給用と排出用は、一部または全部が逆の位置関係でもよい。
【0028】
さらに、図3に示すように、上記ガス流路Iにはディフューザ部Dを設ける。ディフューザ部Dは、ガス流通部から導入された反応ガスを整流するものであり、所定間隔で、一体成形された円錐台形状の突部13が配置される。上記突部13の形状は、反応ガスの流通を妨げないものであればとくに限定されるものではない。また、上記突部13はセパレータ3a,3bに形成されていてもよい。
【0029】
上記発電部Gは、膜電極接合体2に対応するセパレータ3a,3bの中央部分が、短辺方向の断面が波形状に形成され、この波形状は図2に示すように長辺方向に連続している。これにより、各セパレータ3a、3bの波形状の凸部分が膜電極接合体2に接触し、波形状における各凹部分に反応ガスが流れる。
【0030】
また、燃料電池セルCは、図2に示すように、低剛性フレーム1と一対のセパレータ3a,3bの縁部同士の間や、マニホールド部H1〜H6の周囲に、ガスシールSLが設けられる。
【0031】
上記ガスシールSLは、個々の層間において、酸化剤ガス、反応ガス及び冷却流体それぞれの流通域を気密的に分離すると共に、マニホールド部H1〜H6の周縁部の適当な箇所に開口が設けられる。
【0032】
そして、燃料電池単セルCを複数積層した状態では、燃料電池単セル同士、すなわち隣接するセパレータ3a,3b同士の間にもガスシールSLが設けられる。この実施形態では、隣接するセパレータ間に冷却流体を流通させる構造である。
【0033】
図4は、燃料電池単セルCを複数積層したものを、図2中A−A’で切った状態を示す断面図である。図4中、1は低剛性フレーム、3はセパレータ、31は拘束リブ、15は極間シール、Iはガス流路、Rは冷却体の流路である。
【0034】
また、図3中、点線で示すガス流路Iの模式的な拡大図を図5に示す。図5(a)は、低剛性フレーム1の反応ガスが流通する面を積層方向から見た状態を示すものであり、図5(b)は、図5(a)のA−A’で切ったときの断面図である。
【0035】
上記燃料電池セルCは、図5に示すように、上記ガス流通部Iの上記マニホールド部近傍に、上記低剛性フレーム1を拘束する拘束リブ31を有する。そして、上記拘束リブ31は、図5(b)に示すように、積層方向に離間する一対のセパレータ3a,3bの間に配置された低剛性フレーム1をセパレータ3aに押し付けて挟持する。
【0036】
上記低剛性フレーム1は、図5に示すように、上記拘束リブ31よりも上記マニホールド部側に突出する突出部14を有しており、該突出部14には、上記マニホールド部から上記ガス流路にガスを供給するガス流通部11を備える。
【0037】
上記マニホールド部から供給された反応ガスは、上記一対のセパレータ3a、3bの間を流通する。しかし、上記一対のセパレータ間の低剛性フレーム1の突出部14が上記拘束リブ31によって拘束されていないため、低剛性フレーム1が変形して反応ガスの流通を妨げることがある。
【0038】
図6は、低剛性フレーム1が変形してセパレータ3bに接した状態を示す概略図である。図6(a)は、図5(a)のA−A’で切ったときの断面図であり、図6(b)は、図6(a)を90°回転させ、マニホールド部からガス流路方向を見た状態を示す図である。
【0039】
つまり、第1の実施形態によれば、図6(a)中、点線で示す位置にあった低剛性フレーム1が変形してセパレータ3bに接したとしても、図6(b)に示すように、ガス流通部を介してマニホールド部からガス流路を見通せる。したがって、図6(a)中、矢印で示すように、反応ガスは低剛性フレームに設けられたガス流通部を通り、低剛性フレームによってガスの流通が妨げられることなく、上記マニホールド部からガス流路に供給される。
【0040】
また、上記ガス流通部11から拘束リブ31のマニホールド部側の端部311までの距離は、拘束リブ31の高さよりも短いことが好ましい。上記ガス流通部11が拘束リブ31の近傍に形成されることで、低剛性フレーム1の変形量が大きくなっても確実に反応ガスを流通させることができる。
【0041】
第1の実施形態では、上記のように、上記拘束リブ31よりもマニホールド部側に突出した突出部14に貫通孔等のガス流通部11を備える。そして、上記ガス流通部11により、上記マニホールド部から上記ガス流路にガスを供給することとしたため、低剛性フレーム1が変形してセパレータ3bに接したとしても上記ガス流通部11によって反応ガスの流通が確保され、ガス流路が閉塞することが防止される。
【0042】
(第2の実施形態)
図7は、本発明の第2の実施形態に係る燃料電池単セルCのガス流路Iを説明するものであり、低剛性フレーム1の反応ガスが流通する面の模式図である。
【0043】
第2の実施形態では、ガス流路Iの拘束リブ31が反応ガスの流通方向と直交する方向に整列して複数設けられる。反応ガスは拘束リブ間に区画形成された図7中点線で示すチャンネル12を流れる。
そして、上記ガス流通部11が、上記チャンネル12とガス流通方向に直線状に並んで配置されて形成される。
【0044】
第2の実施形態によれば、上記チャンネル12と直線状に並んだ上記ガス流通部11を備えることとしたため、ガス流通部11を通過した反応ガスは、拘束リブ31に衝突せずにチャンネル12を流れる。したがって、圧力損失が低減されると共に、発電部Gで生成した水の排出が容易になる。
【0045】
(第3の実施形態)
本発明の第3の実施形態に係る燃料電池Cの反応ガス導入部Iを、図8により説明する。図8(a)は低剛性フレーム1の反応ガスが流通する面の模式図であり、図8(b)は、図8(a)中のA−A’断面図である。なお、図8(a)において、裏面側の極間シール15を点線で示している。また、先の実施形態と同一の構成部位は、同一符号を付して詳細な説明を省略する。
【0046】
第3の実施形態では、低剛性フレーム1の突出部14に形成されたガス流通部11が、上記低剛性フレームを貫通する貫通孔であり、該貫通孔の形状が異方性を有する。そして、上記貫通孔の長径方向がガス流通方向と同じ方向に設けられる。
上記貫通孔が、ディフューザ―部Dのマニホールド部側に設けられる極間シール15までの間、つまり、貫通孔が突出部14だけでなく、拘束リブ31間のチャンネル12にまで延伸して形成される。
なお、図(a)では、楕円形の貫通孔を示したが、長方形等の多角形であってもよい。
【0047】
第3の実施形態によれば、異方性を有する貫通孔が、突出部14から拘束リブ31間のチャンネル12内まで連続して形成されている。したがって、図8(b)に示すように、低剛性フレーム1の厚み分、チャンネルの高さが高くなり、圧力損失が低減されると共に、発電部Gで生成した水の排出が容易になる。
【0048】
(第4の実施形態)
本発明の第4の実施形態に係る燃料電池Cのガス導入部Iを図9により説明する。図9は、燃料電池Cの積層方向のガス導入部Iを模式的に示す断面図である。
なお、先の実施形態と同一の構成部位は、同一符号を付して詳細な説明を省略する。
【0049】
第4の実施形態では、低剛性フレーム1の突出部14を、マニホールド部に対応する一対のセパレータ3a,3bの開放端部32よりも、さらにマニホールド側部に突出して形成する。
すなわち、上記低剛性フレーム1の上記マニホールド部に対応する開放端部141から拘束リブ31の端部311までの長さが、上記セパレータの上記マニホールド部に対応する開放端部32から拘束リブ31の端部311までの長さよりも長い。
【0050】
上記突出部14が、セパレータの開放端部32よりも、さらにマニホールド部側に突出する突出長さXは、下記(1)式を満たす。

X ≧ δ(1/sinθ−1/tanθ)+部品公差+部品積層公差 ・・・(1)

但し、(1)式中、δは低剛性フレームの変形量を表し、θは低剛性フレームの変形角を表す。
【0051】
上記低剛性フレーム1の変形量δは、図10に示すように、典型的にはガス流路の高さ、すなわち、拘束リブ31の高さであり、低剛性フレーム1の変形角θは、拘束リブ31の頂部と該頂部に向かう斜面とが交差する角度である。
【0052】
そして、上記マニホールド部に対応するセパレータの開放端部32よりも上記膜電極接合体2側に上記ガス流通部11を形成する。
【0053】
燃料電池単セルCの一対のセパレータ3a,3b間を狭くすると、上記一対のセパレータ3a,3bのいずれかが少し変形するだけでもセパレータ3aとセパレータ3bとが接触しショートすることがある。
【0054】
第4の実施形態によれば、低剛性フレーム1の突出部14が、マニホールド部に対応するセパレータ3a,3bの開放端部32よりも、さらにマニホールド側部に突出している。したがって、低剛性フレーム1が変形したとしても、図10に示すように、絶縁性を有する低剛性フレーム1がセパレータ3aの開放端部とセパレータ3bの開放端部との間に存在し、一対のセパレータ3a、3bが、確実に低剛性フレーム1で隔てられる。
加えて、上記ガス流通部11がセパレータの開放端部32よりも上記膜電極接合体2側に形成されているため、セパレータ3aとセパレータ3bとが上記ガス流通部11を介して接触することも防止される。
【0055】
したがって、燃料電池単セルCを積層方向に拘束・加圧しても、セパレータ3aとセパレータ3bとが直接接触することが防止され、確実に絶縁することができ、セパレータ3a、セパレータ3b間でショートすることがない。また、車両に搭載した場合には、大きな衝撃を受けたとしてもセパレータ3a、3bがショートすることが防止される。
【0056】
(第5の実施形態)
本実施形態においては、ガス流路Iのディフューザ―部Dが、マニホールド部H1とマニホールド部H3との間、及びマニホールド部H4とマニホールド部H6との間に設けられる。マニホールド部から供給される反応ガスを、ディフューザ―部Dで流通方向を略直角方向に大きく変えて発電Gに供給する低剛性フレーム及びセパレータを用いる他は上記実施形態1〜4と同様である。
【0057】
反応ガスが低剛性フレーム1上を流通する面の要部を積層方向から見た状態を図11(a)に示す。また、図11(a)中まるで囲んだガス導入部Iの拡大図を図11(b)に示す。
【0058】
図11中、1は低剛性フレーム、2は膜電極接合体、H1〜H3はマニホールド部、SLはガスシール、13は突部、15は極間シール、11はガス流通部、14は突出部 31は拘束リブである。
【0059】
第5の実施形態によれば、マニホールド部H1とマニホールド部H3との間にディフューザ―部Dを設け、反応ガスの流通方向を略直角方向に大きく変えることとしたため、反応ガスの流れが分散し、発電Gに反応ガスを均一に供給することができる。
【0060】
また、上記低剛性フレーム1及び一対のセパレータ3a,3bは、長方形状だけでなく、図12に示すH型であるものを用いることができる。H型の低剛性フレーム及びセパレータを用いることで軽量化することができる。
【0061】
(第6の実施形態)
本発明の第6の実施形態に係る燃料電池Cのガス導入部Iを図13により説明する。
本実施形態においては、図13に示すように、マニホールド部がガス流路に向かって凸形状をしており、該凸形状に対応する低剛性フレーム1の凹部に設けられたガス流通部のみを異方性を有する形状にする他は、上記第5の実施形態と同様である。
【0062】
第6の実施形態によれば、低剛性フレーム1の凹部に設けられたガス流通部を異方性を有する形状にしたため圧力損失が低減される。
【符号の説明】
【0063】
1 低剛性フレーム
11 ガス流通部
12 チャンネル
13 突部
14 突出部
141 開放端部
15 極間シール
2 膜電極接合体
3a、3b セパレータ
31 拘束リブ
311 端部
32 開放端部

C 燃料電池単セル
H1〜H6 マニホールド部
I ガス流路
D ディフューザ部
G 発電部
SL ガスシール

FS 燃料電池スタック
A 積層体
4A,4B 集電板
5 スペーサ
6A,6B エンドプレート
7A,7B 締結板
8A,8B 補強板
B ボルト
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13