特許第6607435号(P6607435)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6607435超音波溶着機用集塵機および超音波溶着機
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6607435
(24)【登録日】2019年11月1日
(45)【発行日】2019年11月20日
(54)【発明の名称】超音波溶着機用集塵機および超音波溶着機
(51)【国際特許分類】
   B23K 20/10 20060101AFI20191111BHJP
   B23K 20/26 20060101ALI20191111BHJP
   B01D 45/08 20060101ALI20191111BHJP
   B29C 65/08 20060101ALI20191111BHJP
【FI】
   B23K20/10
   B23K20/26
   B01D45/08 Z
   B29C65/08
【請求項の数】10
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2015-113148(P2015-113148)
(22)【出願日】2015年6月3日
(65)【公開番号】特開2016-221566(P2016-221566A)
(43)【公開日】2016年12月28日
【審査請求日】2018年4月26日
(73)【特許権者】
【識別番号】000002897
【氏名又は名称】大日本印刷株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100091982
【弁理士】
【氏名又は名称】永井 浩之
(74)【代理人】
【識別番号】100117787
【弁理士】
【氏名又は名称】勝沼 宏仁
(74)【代理人】
【識別番号】100127465
【弁理士】
【氏名又は名称】堀田 幸裕
(74)【代理人】
【識別番号】100184181
【弁理士】
【氏名又は名称】野本 裕史
(72)【発明者】
【氏名】尾 崎 博 子
(72)【発明者】
【氏名】梶 原 周
【審査官】 岩見 勤
(56)【参考文献】
【文献】 特開平04−098669(JP,A)
【文献】 特開2012−204304(JP,A)
【文献】 米国特許第03586122(US,A)
【文献】 欧州特許出願公開第02848353(EP,A1)
【文献】 中国特許出願公開第104475962(CN,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B23K 20/10
B23K 20/26
B01D 45/08
B29C 65/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
超音波溶着機のホーンの周囲を覆うように配置されるノズルと、
前記ノズルの内側の空間から異物を吸引する集塵部と、
を備え、
前記ノズルには、当該ノズルの内側の空間と外側の空間とを連通する給気流路および排気流路が形成されており、
前記排気流路の内側の開口は、前記給気流路の内側の開口よりも前記ノズルの先端側に位置しており、
前記集塵部は、前記排気流路の外側の開口に気密に接続され
前記ノズルは、前記ホーンとともに移動して被融着物に接触することで、前記ホーンと前記被融着物との接触部分の周囲を密閉する
ことを特徴とする超音波溶着機用集塵機。
【請求項2】
前記排気流路の内側の開口は、前記ノズルの周方向に沿って環状に形成されている
ことを特徴とする請求項1に記載の超音波溶着機用集塵機。
【請求項3】
超音波溶着機のホーンの周囲を覆うように配置されるノズルと、
前記ノズルの内側の空間から異物を吸引する集塵部と、
を備え、
前記ノズルには、当該ノズルの内側の空間と外側の空間とを連通する給気流路および排気流路が形成されており、
前記排気流路の内側の開口は、前記給気流路の内側の開口よりも前記ノズルの先端側に位置しており、
前記集塵部は、前記排気流路の外側の開口に気密に接続され、
前記排気流路の内側の開口は、前記ノズルの周方向に沿って環状に形成されている
ことを特徴とする超音波溶着機用集塵機。
【請求項4】
前記ノズルは、当該ノズルの軸線方向に伸縮可能な弾性部材により支持されている
ことを特徴とする請求項1〜3のいずれか一項に記載の超音波溶着機用集塵機。
【請求項5】
超音波溶着機のホーンの周囲を覆うように配置されるノズルと、
前記ノズルの内側の空間から異物を吸引する集塵部と、
を備え、
前記ノズルには、当該ノズルの内側の空間と外側の空間とを連通する給気流路および排気流路が形成されており、
前記排気流路の内側の開口は、前記給気流路の内側の開口よりも前記ノズルの先端側に位置しており、
前記集塵部は、前記排気流路の外側の開口に気密に接続され、
前記ノズルは、当該ノズルの軸線方向に伸縮可能な弾性部材により支持されている
ことを特徴とする超音波溶着機用集塵機。
【請求項6】
前記給気流路の内側の開口と前記排気流路の内側の開口との間には、前記ノズルの内側表面から突出するように整流部が設けられている
ことを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載の超音波溶着機用集塵機。
【請求項7】
超音波溶着機のホーンの周囲を覆うように配置されるノズルと、
前記ノズルの内側の空間から異物を吸引する集塵部と、
を備え、
前記ノズルには、当該ノズルの内側の空間と外側の空間とを連通する給気流路および排気流路が形成されており、
前記排気流路の内側の開口は、前記給気流路の内側の開口よりも前記ノズルの先端側に位置しており、
前記集塵部は、前記排気流路の外側の開口に気密に接続され、
前記給気流路の内側の開口と前記排気流路の内側の開口との間には、前記ノズルの内側表面から突出するように整流部が設けられている
ことを特徴とする超音波溶着機用集塵機。
【請求項8】
前記排気流路のうち内側の開口と外側の開口との間には、環状のインナールームが形成されており、当該インナールームには、異物逆流防止部が設けられている
ことを特徴とする請求項1〜7のいずれかに記載の超音波溶着機用集塵機。
【請求項9】
超音波溶着機のホーンの周囲を覆うように配置されるノズルと、
前記ノズルの内側の空間から異物を吸引する集塵部と、
を備え、
前記ノズルには、当該ノズルの内側の空間と外側の空間とを連通する給気流路および排気流路が形成されており、
前記排気流路の内側の開口は、前記給気流路の内側の開口よりも前記ノズルの先端側に位置しており、
前記集塵部は、前記排気流路の外側の開口に気密に接続され、
前記排気流路のうち内側の開口と外側の開口との間には、環状のインナールームが形成されており、当該インナールームには、異物逆流防止部が設けられている
ことを特徴とする超音波溶着機用集塵機。
【請求項10】
請求項1〜9のいずれかに記載の超音波溶着機用集塵機を備えたことを特徴とする超音波溶着機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、超音波溶着機用集塵機および超音波溶着機に関する。
【背景技術】
【0002】
超音波溶着とは、熱可塑性のプラスチックに超音波振動を加えながら圧着する加工技術である。超音波溶着では、溶着時に、振動するホーンとプラスチックとの接触部分が擦れることで、粒径1mm以下の細かい異物が瞬時に飛散し、作業環境を悪化させることがある。
【0003】
特許文献1には、刃物の周囲を覆うように配置されたノズルと、ノズルの内部に負圧を与える集塵部と、を備え、被切削物を刃物により切削加工する際に、発生する切削粉を集塵する切削機用集塵機が開示されている。しかしながら、超音波溶着の溶着時に発生する、切削粉より細かい異物を集塵可能な超音波溶着機用集塵機は知られていない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平7−209146号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、特許文献1に記載の集塵機を超音波溶着機用集塵機として利用する場合、次のような問題がある。すなわち、この集塵機では、ノズルの先端と被融着物との間に給気用の隙間が空けられ、異物発生源の周囲が密閉される構造ではないため、発生した異物がノズルの外側に飛散することを十分に防ぐことができない。また、ノズルの内側の空間には先端側から基端部側へと向かう気流が形成されるため、発生した異物は気流により舞い上げられてホーンに付着し、ホーンを汚染してしまう。
【0006】
本発明は、このような点を考慮してなされたものである。本発明の目的は、溶着時に発生する異物を効率的に収集できるとともに発生する異物がホーンに付着して汚染することを抑制できる超音波溶着機用集塵機および超音波溶着機を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明による超音波溶着機用集塵機は、
超音波溶着機のホーンの周囲を覆うように配置されるノズルと、
前記ノズルの内側の空間から異物を吸引する集塵部と、
を備え、
前記ノズルには、当該ノズルの内側の空間と外側の空間とを連通する給気流路および排気流路が形成されており、
前記排気流路の内側の開口は、前記給気流路の内側の開口よりも前記ノズルの先端側に位置しており、
前記集塵部は、前記排気流路の外側の開口に気密に接続されている。
【0008】
本発明による超音波溶着機用集塵機において、
前記排気流路の内側の開口は、前記ノズルの周方向に沿って環状に形成されていてもよい。
【0009】
本発明による超音波溶着機用集塵機において、
前記ノズルは、当該ノズルの軸線方向に伸縮可能な弾性部材により支持されていてもよい。
【0010】
本発明による超音波溶着機用集塵機において、
前記給気流路の内側の開口と前記排気流路の内側の開口との間には、前記ノズルの内側表面から突出するように整流部が設けられていてもよい。
【0011】
本発明による超音波溶着機用集塵機において、
前記排気流路のうち内側の開口と外側の開口との間には、環状のインナールームが形成されており、当該インナールームには、異物逆流防止部が設けられていてもよい。
【0012】
本発明による超音波溶着機は、
前記したいずれかの特徴を有する超音波溶着機用集塵機を備える。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、溶着時に発生する異物を効率的に収集できるとともに発生する異物がホーンに付着して汚染することを抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1図1は、本発明の一実施の形態による超音波溶着機を示す概略図である。
図2図2は、図1の超音波溶着機のホーンとノズルとを拡大して示す断面図である。
図3図3は、図2に対応する図面であって、ノズルの内側の空間に形成される気流を説明するための図である。
図4図4は、図1の超音波溶着機のフィルタ部を拡大して示す概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下に、添付の図面を参照して、本発明の実施の形態を詳細に説明する。なお、本明細書に添付する図面においては、図示の理解のしやすさの便宜上、適宜縮尺および縦横の寸法比等を、実物のそれらから変更し誇張してある。
【0016】
図1は、本発明の一実施の形態による超音波溶着機を示す概略図である。
【0017】
本実施の形態による超音波溶着機1は、被溶着物に振動エネルギーを伝達するホーン2と、ホーン2と被溶着物との接触部分から発生する異物を収集する超音波溶着機用集塵機10と、を備えている。
【0018】
このうちホーン2は、それ自体は公知の超音波溶着機の一構成要素であり、ホーン2の形状および材料は、被溶着物の種類や溶着目的に応じて適宜決定され得る。一例を挙げれば、ホーン2の先端部は円筒形状を有しており、ホーン2の先端部の直径は10mmである。
【0019】
図1に示すように、超音波溶着機用集塵機10は、ホーン2の周囲を覆うように配置されるノズル14と、ノズル14の内側の空間から異物を吸引する集塵部17と、を備えている。
【0020】
図示された例では、ノズル14は、略円筒形状を有しており、ホーン2の先端部の周囲を覆うように、ホーン2と同軸状に配置されている。ノズル14の内径は、ホーン2の先端部の外径より大きく、ホーン2の先端部とノズル14との間には環状の隙間が形成されている。隙間の幅は、たとえば3mm〜5mmである。
【0021】
本実施の形態では、ノズル14は、ノズル14の軸線方向に伸縮可能な弾性部材13(たとえば、螺旋バネ)により支持されている。図示された例では、ノズル14の基端部は径方向に広がるフランジ形状を有しており、ノズル14の基端部の上面とホーンカバー11の下面との間に弾性部材13(螺旋バネ)が挟み込まれた状態で、ノズル14の基端部の下面に当接する取付治具12が、ホーンカバー11に固定されている。ノズル14に軸方向上向きの外力が加わると、この外力に応じて弾性部材13が収縮することで、ノズル14は軸方向上向きに変位され、この外力が解消されると、弾性部材13の復元力により、ノズル14は軸方向下向きに変位されて元の位置に戻される。
【0022】
図1に示すように、ノズル14には、当該ノズル14の内側の空間と外側の空間とを連通する給気流路15および排気流路16が形成されており、集塵部17は、排気流路16の外側の開口16bに気密に接続されている。
【0023】
図3に示すように、後述する集塵部17の動作により、ノズル14の内側の空間の空気が排気流路16を通って排出されると、ノズル14の内側の空間が減圧され、ノズル14の内側の空間と外側の空間との圧力差により、ノズル14の外側の空間の空気が給気流路15を通ってノズル14の内側の空間へと供給され得る。そのため、特許文献1に記載の集塵機のようにノズル14の先端と被融着物との間に給気用の隙間を空ける必要がなく、ノズル14の先端を被融着物に当接させて、異物発生源の周囲を密閉することが可能である。
【0024】
ノズル14の軸方向において、排気流路16の内側の開口16aは、給気流路15の内側の開口15aよりもノズル14の先端側に位置している。これにより、図3に示すように、ノズル14の内側の空間、より詳しくはホーン2とノズル14との間の環状の隙間には、ノズル14の基端部側から先端側へと向かう気流(図示された例では、下向きの気流)が形成され得る。これにより、ノズル14の内側の空間で発生した異物が気流により舞い上げられてホーン2に付着することが抑制され得る。
【0025】
図2に示すように、給気流路15の内側の開口15aと排気流路16の内側の開口16aとの間には、ノズル14の内側表面から突出するように整流部18が設けられている。図示された例では、整流部18は、断面略半円形状であり、ノズル14の周方向に沿って環状に設けられている。本件発明者らの実際の検証によれば、整流部18が設けられていない場合、ホーン2とノズル14との間の環状の隙間では、ホーン2の近くを通る気流がノズル14の近くを通る気流より流速が速くなり、乱流を引き起こす可能性がある。一方、整流部18が設けられている場合、ホーン2の近くを通る気流とノズル14の近くを通る気流との間の流速差が低減され、乱流の発生が効果的に抑制され得る。
【0026】
本実施の形態では、給気流路15は、周方向に90°ずつ離れて、合計4つ形成されている。各給気流路15は、内側の開口15aから外側の開口15bまでノズル14の径方向に沿って直線状に延びている。なお、図面上では、手前側に延びる給気流路15と奥側に延びる給気流路15の図示が省略されている。
【0027】
一方、排気流路16の内側の開口16aは、ノズル14の周方向に沿って環状に形成されている。これにより、排気流路16の内側の開口16aが大きく確保されるため、ノズル14の内側の空間で発生した異物を排気流路16内へと効率的に吸引することができる。
【0028】
図2に示すように、排気流路16のうち内側の開口16aと外側の開口16bとの間には、環状のインナールーム19が形成されている。インナールーム19は、排気流路16の外側の開口16bから集塵部17により空気が吸引される時、インナールーム19の周方向全体に吸引力が作用し、外側の開口16bに近い角度位置と遠い角度位置との間での圧力差が低減されるような大きさに設計されている。これにより、ノズル14の内側で発生した異物を、排気流路16の内側の開口16aから周方向に関して一様な吸引力で吸引することができる。
【0029】
本実施の形態では、インナールーム19には、異物逆流防止部20が設けられている。図示された例では、異物逆流防止部20は、インナールーム19のうち内周側壁面の下端部から径方向外向き且つ斜め上向きに突き出るように設けられている。排気流路16の内側の開口16aから吸引された異物は、インナールーム19の外周側壁面に沿って上向きに案内された後、インナールーム19の天井で折り返されてインナールーム19の内周側壁面に沿って下向きに案内されるが、ここで異物逆流防止部20により再び折り返されることで、排気流路16の内側の開口16aへと戻ることが抑制され得る。これにより、排気流路16内に吸引された異物の逆流が抑制され、集塵効率が向上され得る。
【0030】
以上のような構成からなる排気流路16および給気流路15が形成されたノズル14は、たとえば、3Dプリンタを用いた積層造形法により容易に製造することができる。
【0031】
図1に示すように、集塵部17は、ノズル14の排気流路16に配管21を介して気密に接続されたフィルタ部17aと、フィルタ部17aに配管22を介して気密に接続された吸引排気部17bと、を有している。
【0032】
このうち吸引排気部17bとしては、たとえば市販の排気ファンが用いられる。
【0033】
図4は、フィルタ部17aの内部構造を示す概略図である。
【0034】
図4に示すように、フィルタ部17aは、筐体31と、筐体31の互いに対向する壁面にそれぞれ形成された流入口33および流出口34と、流入口33と流出口34との間を遮るように筐体31内に設けられたフィルタ32と、を有している。
【0035】
図示された例では、流入口33は、筐体31の左側壁に形成されており、流出口34は、筐体31の右側壁に形成されている。フィルタ32は、筐体31の底面から上向きに突き出すように設けられており、フィルタ32の上端部と筐体31の天面との間には隙間が空けられている。
【0036】
図4に示すように、配管21を通って流入口33から右向きに流入する空気は、フィルタ32により上向きに進路が曲げられる。ここで、流入口33から右向きに流入する空気中の異物Pは、空気より慣性が大きいため、曲がりきれずにフィルタ32に衝突して付着する。これにより、空気中から異物Pが除去される。異物Pが除去された空気は、フィルタ32の上端部と筐体31の天面との間の隙間を通過したのち、流出口34から配管22へと流出される。このような態様により、軽量かつコンパクトな構造で空気中から異物Pを除去することができる。
【0037】
次に、このような構成からなる本実施の形態の作用について説明する。
【0038】
まず、ノズル14の先端が被融着物の表面に当接される。また、集塵部17が動作され、ノズル14の内側の空間の空気が排気流路16を通って排出される。これにより、ノズル14の内側の空間が減圧され、ノズル14の内側の空間と外側の空間との圧力差により、ノズル14の外側の空間の空気が給気流路15を通ってノズル14の内側の空間へと供給される。
【0039】
ここで、排気流路16の内側の開口16aは、給気流路15の内側の開口15aよりもノズル14の先端側に位置しているため、図3に示すように、ノズル14の内側の空間、より詳しくはホーン2とノズル14との間の環状の隙間には、ノズル14の基端部側から先端側へと向かう気流(図示された例では、下向きの気流)が形成される。
【0040】
本実施の形態では、給気流路15の内側の開口15aと排気流路16の内側の開口16aとの間に整流部18が設けられているため、ホーン2とノズル14との間の環状の隙間では、ホーン2の近くを通る気流とノズル14の近くを通る気流との間の流速差が低減され、流速差により乱流が発生することが抑制され得る。
【0041】
次に、ホーン2とホーンカバー11とが一緒に被融着物に向かって移動され、ホーン2の先端が被融着物に当接される。この時、ノズル14の先端には被融着物から軸方向上向きの圧力がかかり、この圧力に応じて弾性部材13が収縮され、その復元力によりノズル14の先端は被融着物に押し付けられるため、ホーン2と被融着物との接触部分の周囲がノズル14により確実に密閉される。
【0042】
ホーン2から伝達される振動エネルギーにより被融着物の超音波融着が行われる。この時、振動するホーン2と被溶着物との接触部分が擦れることで、接触部分から粒径1mm以下の細かい異物が瞬時に飛散する。
【0043】
本実施の形態では、ホーン2と被融着物との接触部分の周囲がノズル14により密閉されているため、発生した異物がノズル14の外側に飛散することが防止され得る。
【0044】
また、図3に示すように、ノズル14の内側の空間には、ノズル14の基端部側から先端側へと向かう気流が形成されているため、発生した異物の舞い上がりが低減され、発生した異物がホーン2に付着して汚染することが抑制され得る。
【0045】
集塵部17による吸引力により、発生した異物は、排気流路16の内側の開口16aから排気流路16内へと吸引される。ここで、排気流路16の内側の開口16aは、ノズル14の周方向に沿って環状に形成されているため、排気流路16の内側の開口16aが大きく確保され、発生した異物は排気流路16の内側の開口16aから効率的に吸引され得る。
【0046】
排気流路16の内側の開口16aから吸引された異物は、インナールーム19の外周側壁面に沿って上向きに案内された後、インナールーム19の天井で折り返されてインナールーム19の内周側壁面に沿って下向きに案内され、次いで、異物逆流防止部20により再び折り返されることで、排気流路16の内側の開口へと戻ることが抑制され得る。
【0047】
インナールーム19内に吸引された異物は、排気流路16の外側の開口16bから配管21を通って集塵部17のフィルタ部17aへと流入される。図4に示すように、フィルタ部17aの流入口33から筐体31内へと右向きに流入する空気は、フィルタ32により上向きに進路が曲げられる。ここで、空気中の異物Pは、空気より慣性が大きいため、フィルタ32で曲がりきれずに、フィルタ32に衝突して付着する。これにより、空気中から異物Pが除去される。異物Pが除去された空気は、フィルタ32の上端部と筐体31の天面との間の隙間を通過したのち、流出口34から配管22を通って吸引排気部17bへと流出される。
【0048】
以上のような本実施の形態によれば、ノズル14に給気流路15が形成されているため、特許文献1の集塵機のようにノズル14の先端と被融着物との間に給気用の隙間を空ける必要がなく、ノズル14の先端を被融着物に当接させて、異物発生源の周囲を密閉することができる。これにより、溶着時に発生する細かい異物をノズルの外側に飛散させることなく効率的に収集することができる。
【0049】
また、本実施の形態によれば、排気流路16の内側の開口16aは、給気流路15の内側の開口15aよりもノズル14の先端側に位置しているため、ノズル14の内側の空間には基端部側から先端側へと向かう気流が形成される。これにより、発生した異物が気流により舞い上げられてホーン2に付着して汚染することを抑制できる。
【0050】
また、本実施の形態によれば、排気流路16の内側の開口16aがノズル14の周方向に沿って環状に形成されているため、排気流路16の内側の開口16aが大きく確保され、発生した異物を排気流路16の内側の開口16aから効率的に吸引することができる。
【0051】
また、本実施の形態によれば、ノズル14は、当該ノズル14の軸線方向に伸縮可能な弾性部材13により支持されているため、ノズル14の先端が被融着物に当接される際に、弾性部材13が収縮され、その復元力によりノズル14の先端が被融着物に押し付けられる。これにより、異物発生源の周囲がノズル14により確実に密閉され得る。
【0052】
また、本実施の形態によれば、給気流路15の内側の開口15aと排気流路16の内側の開口16aとの間には、ノズル14の内側表面から突出するように整流部18が設けられているため、ノズル14の内側の空間に形成される基端部側から先端側へと向かう気流は、整流部18により効果的に整流され得る。これにより、ノズル14の内側で発生した異物の舞い上がりが低減され、発生した異物がホーン2に付着して汚染することが顕著に抑制され得る。
【0053】
また、本実施の形態によれば、排気流路16のうち内側の開口16aと外側の開口16bとの間には、環状のインナールーム19が形成されており、当該インナールーム19には、異物逆流防止部20が設けられているため、排気流路16内に吸引された異物がノズル14の内側の空間へと逆流することが防止され、集塵効率が向上され得る。
【0054】
なお、本実施の形態では、ホーン2の先端およびノズル14の先端は、下向きに向けられており、被融着物の上面に当接されるように構成されていたが、これに限定されず、ホーン2の先端およびノズル14の先端は、上向きに向けられており、被融着物の下面に当接されるように構成されていてもよいし、ホーン2の先端およびノズル14の先端は、横向きに向けられており、被融着物の側面に当接されるように構成されていてもよい。このような態様によっても、本実施の形態と同様の作用効果を奏する。
【符号の説明】
【0055】
1 超音波溶着機
2 ホーン
10 超音波溶着機用集塵機
11 ホーンカバー
12 取付治具
13 弾性部材
14 ノズル
15 給気流路
15a 内側の開口
15b 外側の開口
16 排気流路
16a 内側の開口
16b 外側の開口
17 集塵部
17a フィルタ部
17b 吸引排気部
18 整流部
19 インナールーム
20 異物逆流防止部
21 配管
22 配管
31 筐体
32 フィルタ
33 流入口
34 流出口
図1
図2
図3
図4